説明

振幅一定回路

【課題】本発明の課題は、周波数選択特性を有する回路の出力の振幅をほぼ一定にすることである。
【解決手段】制御回路12は、インダクタL0とキャパシタC0と抵抗R0からなる共振回路にキャパシタC1を並列に接続した場合の共振周波数を予め算出し、その共振周波数において、インピーダンスZがほぼ一定値になるような抵抗値を算出しておく。そして、その抵抗値となるようにスイッチSW3とSW4を切り換えて、抵抗R1、可変抵抗R2を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタまたはソース接地のトランジスタ回路において、周波数変化によらず出力振幅を一定にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動型アクチュエータへの供給電力を制御する自励発振回路において、振動型アクチュエータの固定子巻線の逆起電力と、振動型アクチュエータの振幅に比例する負荷検出信号に基づいて電圧信号を発生する電圧アンプと、その電圧アンプの出力に応じて振動型アクチュエータの固定子巻線の電流を制御する電流アンプとを備えることが記載されている。これにより振動型アクチュエータの振動振幅を略一定にすることができる。
【0003】
特許文献2には、テレビ受信器のチューナなど高い周波数でQの大きな(10乃至30)バンドパスフィルタにおいて、共振回路の電圧を電流に変換して共振回路に帰還する電圧電流変換手段を設けることが記載されている。
【0004】
ところで、周波数選択特性を有する増幅回路においては、共振周波数を変化させたときに、増幅回路の出力信号の振幅が変化してしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−197714号公報
【特許文献2】特開平6−314951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、周波数選択特性を有する、例えば増幅回路の出力振幅をほぼ一定にする振幅一定回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共振回路を有し、周波数選択特性を有する振幅一定回路であって、前記共振回路を駆動するトランジスタと、前記共振回路に接続された1以上のキャパシタと、前記キャパシタの接続を切り換える第1のスイッチと、前記キャパシタと接続された1以上の抵抗と、前記抵抗の接続を切り換える第2のスイッチと、前記第1のスイッチのオン、オフを制御して、前記共振回路に接続される容量値を変化させたときに、選択度Qがほぼ一定となるように前記第2のスイッチのオン、オフを制御する制御部とを備える。
【0007】
この発明によれば、キャパシタの容量値を変化させたときに、共振回路の選択度Qがほぼ一定となるように第2のスイッチを制御することで、増幅回路の出力信号の振幅をほぼ一定にすることができる。
【0008】
上記の振幅一定回路において、前記キャパシタと並列に接続されたMOSトランジスタと、前記トランジスタの出力信号のピーク値を検出するピーク値検出回路と、前記ピーク値検出回路で検出されるピーク値のレベルに応じた信号を前記MOSトランジスタに供給して、前記MOSトランジスタの抵抗値を制御するレベル変換回路とを備える。
【0009】
このように構成することで、トランジスタの出力信号のピーク値がほぼ一定の値となるようにMOSトランジスタの抵抗値を制御することができる。これにより、増幅回路の出力信号の振幅をほぼ一定に調整する微調整回路を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周波数選択特性を有する回路の出力の振幅をほぼ一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、実施の形態の周波数選択特性を有する振幅一定回路11の回路図である。
振幅一定回路11は、エミッタ接地のバイポーラトランジスタTR1と、そのトランジスタTR1のコレクタに接続されたインダクタLと、キャパシタC0と、抵抗R0と、キャパシタC1、C2と、抵抗R1と、可変抵抗R2と、キャパシタC1C2とにそれぞれ直列に接続されたスイッチSW1、SW2と、抵抗R1、可変抵抗R2とにそれぞれ直列に接続されたスイッチSW3、SW4とを有する。インダクタLとキャパシタC0は、L、Cの並列共振回路を構成している。抵抗R0は、L,Cの寄生抵抗である。
【0012】
制御回路12は、スイッチSW1〜SW4を個別にオン、オフする制御信号を出力して、並列共振回路に並列に接続される容量値と抵抗値を変化させる。
制御回路12は、スイッチSW1、SW2のオン、オフを制御して並列に接続される容量を変化させ共振周波数を切り換える。また、制御回路12は、スイッチSW1、SW2のオン、オフにより決まる並列容量に応じて、スイッチSW3、SW4のオン、オフを制御して、並列に接続される抵抗値を変化させる。スイッチSW1〜SW4全体をスイッチ回路13と呼ぶ。
【0013】
並列共振回路の選択度Qは、C≫Lの条件のもとで、Q≒ωL/Rと表すことができる。従って、周波数が変化すると選択度Qの値も変化する。選択度Qは、共振回路のインピーダンスの周波数変化を示すものであるので、並列共振回路の容量を変化させて共振周波数を変化させたときに、振幅一定回路11の出力信号の振幅を一定にするためには、選択度Qがほぼ一定になるように制御すれば良い。
【0014】
インダクタL、キャパシタC0、抵抗R0、キャパシタC1、C2の値は予め分かっているので、例えば、スイッチSW1をオン、SW2をオフにして、キャパシタC1を並列に接続した場合の共振周波数は予め算出することができる。そして、算出した共振周波数における選択度Qが、キャパシタC1を接続する前の共振周波数における選択度Qとほぼ等しくなる並列抵抗の値を予め算出しておくことができる。従って、キャパシタC1を並列に接続して共振周波数を変化させた場合に、スイッチSW3、SW4のオン、オフを制御して並列に接続される抵抗値を切り換えることで、選択度Qを変更前の値とほぼ同じ値にすることができる。なお、可変抵抗R2は、抵抗値を微調整するために使用される。
【0015】
同様に、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンにし、共振回路にキャパシタC2を並列に接続した場合の共振周波数も予め算出することができる。そして、算出した共振周波数における選択度Qが、キャパシタC2を接続する前の選択度Qとほぼ等しくなる並列抵抗の値を予め算出しておくことができる。従って、キャパシタC2を接続して共振周波数を変化させた場合に、スイッチSW3、SW4のオン、オフを制御して並列に接続される抵抗値を切り換えることで、選択度Qを変更前の値とほぼ同じ値にすることができる。
【0016】
スイッチSW1とSW2を同時にオンにして、並列容量としてキャパシタC1とC2を接続した場合にも、同様に選択度Qが一定となるような抵抗値を選択することができる。
従って、共振回路の並列容量を切り換えて共振周波数を変化させたときに、スイッチSW3、SW4を切り換えて並列抵抗の値を変化させることで、振幅一定回路11の出力信号の振幅をほぼ一定に制御することができる。
【0017】
この第1の実施の形態によれば、周波数選択特性を有する振幅一定回路11の並列容量を変化させる場合に、並列抵抗の値を適宜切り換えることで、振幅一定回路11の出力の振幅をほぼ一定にすることができる。
【0018】
次に、図2は、第2の実施の形態の振幅一定回路21の回路図である。この振幅一定回路21は、並列抵抗の値を微調整する微調整部23を設けたものである。
第2の実施の形態において、振幅一定回路11のスイッチ回路13とキャパシタC1、C2、抵抗R1、R2は、キャパシタC1、C2の接続を切り換えて共振周波数を変化させたときに、出力信号の振幅をほぼ一定にするための粗調整部22として機能する。
【0019】
微調整部23は、MOSトランジスタTR2と、ピーク検出回路24と、レベル変換回路25とを有する。
MOSトランジスタTR2は、抵抗R1、R2と並列に接続されており、ゲートに印加される電圧によりドレイン・ソース間の抵抗値が変化して可変抵抗として機能する。
【0020】
ピーク検出回路24は、増幅器26と、ダイオードD1と、ダイオードD1のカソードに一端が接続され、他端が接地されたキャパシタC3を有する。
レベル変換回路25は、抵抗R4、R5、R6と、オペアンプ27とを有する。
【0021】
増幅器26にはトランジスタTR1のコレクタ電圧、すなわち振幅一定回路11の出力電圧が印加されており、増幅器26はその出力電圧を増幅した電圧をダイオードD1に出力する。増幅器26の出力電圧は、ダイオードD1により整流され、抵抗R3と並列に接続されたキャパシタC3を充電する。
【0022】
キャパシタC3の電圧は、抵抗R4を介してオペアンプ27の一方の入力端子(例えば、非反転入力端子)に入力する。オペアンプ27の他方の入力端子(例えば、反転入力端子)は、抵抗R5を介して接地されている。オペアンプ27の出力電圧は、抵抗R6とR4で分圧され、一方の入力端子に帰還されている。オペアンプ27は、ピーク検出回路24の出力電圧に応じた電圧をMOSトランジスタTR2のゲートに出力して、MOSトランジスタTR2のドレイン・ソース間の抵抗値を変化させる。オペアンプ27と抵抗R4、R6等は、ピーク検出回路24の出力電圧のレベル変換を行うレベル変換回路25として機能する。
【0023】
振幅一定回路11の出力電圧が所定値より大きくなると、ピーク検出回路24のキャパシタC3の充電電圧が基準値より大きくなり、オペアンプ27の一方の入力端子の入力電圧が大きくなる。オペアンプ27は、一方の入力端子の電圧と他方の入力端子の電圧の電圧差に比した電圧を出力するので、このときオペアンプ27の出力電圧は増加する。オペアンプ27の出力電圧が増加すると、MOSトランジスタTR2のゲート電圧が高くなり、ドレイン・ソース間の抵抗値が小さくなる。
【0024】
すなわち、微調整部23は、振幅一定回路11の出力電圧が所定値より大きくなると、MOSトランジスタTR2のドレイン・ソース間の抵抗値が小さくなる方向に制御する。これにより、共振回路の並列抵抗の値が小さくなり、振幅一定回路11の出力信号の振幅がほぼ一定に保たれる。
【0025】
他方、振幅一定回路11の出力電圧が所定値より小さくなると、ピーク検出回路24のキャパシタC3の充電電圧が基準値より低くなり、オペアンプ27の一方の入力端子の入力電圧が低くなる。オペアンプ27の一方の入力端子の電圧が低くなると、オペアンプ27の出力電圧は減少し、MOSトランジスタTR2のゲート電圧が低くなり、MOSトランジスタTR2のドレイン・ソース間の抵抗値が大きくなる。
【0026】
すなわち、この場合、微調整部23は、振幅一定回路11の出力電圧が所定値より小さくなると、MOSトランジスタTR2のドレイン・ソース間の抵抗値が大きくなる方向に制御する。これにより、共振回路の並列抵抗の値が大きくなり、振幅一定回路11の出力信号の振幅がほぼ一定に保たれる。
【0027】
上述した第2の実施の形態によれば、周波数選択特性を有する振幅一定回路21の共振周波数を変化させたときに、出力信号の振幅をほぼ一定に保つことができる。さらに、ピーク検出回路24とレベル変換回路25とMOSトランジスタTR2とからなる微調整部23で、共振回路の並列抵抗値を微調整することができる。これにより、振幅一定回路21の出力の振幅をより正確に一定値に制御することができる。
【0028】
本発明は、実施の形態に示したインダクタとキャパシタからなるL,C並列共振回路に限らず、他の共振回路にも適用できる。また、共振回路の共振周波数を変更するスイッチ回路は、2個のキャパシタC1,C2と、2個の抵抗R1、R2を切り換える回路に限らず、3個以上のキャパシタと抵抗を切り換える回路であっても良い。また、ピーク検出回路24、レベル変換回路25も実施の形態に示した回路に限らず、他の回路構成のものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態の振幅一定回路の回路図である。
【図2】第2の実施の形態の振幅一定回路の回路図である。
【符号の説明】
【0030】
11,21 振幅一定回路
12 制御回路
13 スイッチ回路
22 粗調整部
23 微調整部
24 ピーク検出回路
25 レベル変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振回路を有し、周波数選択特性を有する振幅一定回路であって、
前記共振回路を駆動するトランジスタと、
前記共振回路に接続された1以上のキャパシタと、
前記キャパシタの接続を切り換える第1のスイッチと、
前記キャパシタと接続された1以上の抵抗と、
前記抵抗の接続を切り換える第2のスイッチと、
前記第1のスイッチのオン、オフを制御して、前記共振回路に接続される容量値を変化させたときに、選択度Qがほぼ一定となるように前記第2のスイッチのオン、オフを制御する制御部と、を備える振幅一定回路。
【請求項2】
前記キャパシタと並列に接続されたMOSトランジスタと、
前記トランジスタの出力信号のピーク値を検出するピーク値検出回路と、
前記ピーク値検出回路で検出されるピーク値のレベルに応じた信号を前記MOSトランジスタに供給して、前記MOSトランジスタの抵抗値を制御するレベル変換回路とを備える請求項1記載の振幅一定回路。
【請求項3】
前記共振回路は、並列共振回路であり、前記キャパシタと前記抵抗は、前記並列共振回路と並列に接続されている請求項1記載の振幅一定回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−260512(P2009−260512A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105320(P2008−105320)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】