説明

捕捉追尾装置

【課題】簡易な構成で、初期捕捉および高精度捕捉を行い、受信部で受光する光ビームの損失を最小限に低減し、受光量が微量な場合でも捕捉追尾を行う。
【解決手段】光ビームを偏向する第1の光路偏向手段1と、光ビームを集光する集光手段3と、光ビームを偏向する第2の光路偏向手段5と、第2の光路偏向手段5に設け、光ビームが基準光軸30と一致する際の集光スポット近傍かつ集光スポットサイズ以上のピンホール4と、第2の光路偏向手段5を通過した光ビームを受信する受信部10と、第2の光路偏向手段5により偏向された光ビームに基づき光ビームと基準光軸との角度ズレを検出する第1の光検出手段6と、光ビームを分岐する光分岐手段2と、分岐された光ビームに基づき光ビームと基準光軸30との角度ズレを高精度に検出する第2の光検出手段7と、角度ズレに基づき、第1の光偏向手段1の偏向方向を補正する偏向方向補正手段8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ビームの捕捉追尾を行う捕捉追尾装置に関し、特に光空間通信用の捕捉追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各光空間通信装置では、双方向通信を成立させるため、互いの送信光(光ビーム)を捕捉追尾する捕捉追尾装置を搭載している。この捕捉追尾装置では、装置の振動や大気擾乱などの小さな振動の影響だけではなく、装置が移動体に設置されている場合であっても対応可能とするため、広範囲の領域で光ビームを捕捉可能な装置が求められており、通信用の光ビームとは別に初期捕捉用にビーコン光が用いられることが多い。しかし、広範囲の領域でビーコン光を捕捉するためにはこのビーコン光の拡がり角を大きくする必要がある。特に長距離通信の場合、光の強度は距離の2乗に反比例するため、受信側の捕捉追尾センサに必要な光量を確保するためには大電力を要するといった問題が生じる。
【0003】
一方、ビーコン光を用いずに、拡がり角の小さな通信用の光ビームを走査することで初期捕捉を行う光空間通信方式(以下、ビーコンレス光空間通信と称する)を採用した捕捉追尾装置が存在する。このビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置では、ビーコン光用ユニットが不要となり、装置の小型化や低消費電力化のメリットがある。しかし、広範囲の領域を塗りつぶしなく走査するためには非常に高精度なビーム指向精度が要求される。また、通信用の光ビームと捕捉追尾用の光ビームが共通化されているため、ビーコン光を用いた方式のように通信光と捕捉追尾光を波長で分離できず、通信用の光ビームの一部を初期捕捉用の捕捉追尾センサに分岐する必要がある。そのため、長距離通信の場合には受信側での受信光強度が極めて小さくなり、ビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置では受信光の効率的な利用が課題となる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載されたビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置では、外部からの光ビームを光検出装置側に偏向させるガルバノミラー(可動ミラー)を反射面に水平な2軸まわりに回転可能に配置している。このガルバノミラーで曲げられた光ビームは、光検出装置の集光レンズで集光されて光ファイバやフォトデテクタなどの受光面で受光される。ここで、光ビームの光軸が集光レンズの基準光軸とずれている場合には、この光ビームは、集光レンズを介してプリズムの反射面で反射され、結像レンズを介してCCDで検出される。そして、制御手段は、CCDで検出された検出信号に基づき光軸のズレを演算し、基準光軸に一致させる方向にガルバノミラーを回転調整する。これにより、損失を生じることなく広い範囲の入射角を有する光を検出して、光ビームのズレを抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−249430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来のビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置において、光ビームの光軸が基準光軸と完全に一致した場合には、光ビームの全強度が受光面に入射されるため、CCD側への反射光がなくなってしまう。この場合、ガルバノミラーのクローズドループ制御が不能となり、その後、光ビームが受光面からはみ出した際にガルバノミラーの回転調整を再開することとなる。そのため、受光面の中心位置に常に光ビームを固定し続けることができないという課題があった。また、これにより受光面に入射される光ビームの光強度にふらつきが生じ安定しないという課題もあった。
【0007】
また、例えば送信光と受信光の光路が一部共通化され、送信光と受信光が共にガルバノミラーを通過するような光空間伝送装置では、ガルバノミラーのふらつきの影響で、長距離通信で送信光に要求される非常に高精度な指向安定性が得られないといった課題があった。また、実際にプリズムやミラー上に受光面である光ファイバやフォトデテクタを構成するには高度な技術が必要であり、容易には実現できないといった課題もあった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置において、簡易な構成で、広範囲の領域での光ビームの初期捕捉および初期捕捉後の高精度な捕捉を実行し、かつ、受信部で受光する光ビームの損失を最小限に低減することができ、長距離通信において光ビームの受光量が微量な場合であっても捕捉追尾が可能となる捕捉追尾装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る捕捉追尾装置は、入射された光ビームを所定方向に偏向させる第1の光路偏向手段と、第1の光路偏向手段により偏向された光ビームを集光する集光手段と、集光手段により集光された光ビームを所定方向に偏向させる第2の光路偏向手段と、第2の光路偏向手段に設けられ、集光手段に入射された光ビームの光軸が当該集光手段の基準光軸と一致するときに第2の光路偏向手段上に形成される集光スポット位置の近傍、かつ、当該集光スポットサイズより大きなサイズであるピンホールと、受光面が基準光軸上に位置し、ピンホールを介して第2の光路偏向手段を通過した光ビームを受信する受信部と、第2の光路偏向手段により偏向されて入射された光ビームに基づき、集光手段に入射された光ビームの光軸と基準光軸との角度ズレを検出する第1の光検出手段と、第1の光路偏向手段から受信部までの間のいずれかの位置に設けられ、光ビームの一部を分岐する光分岐手段と、光ビームがピンホールを介して第2の光路偏向手段を通過する状態となることで光分岐手段により分岐された光ビームが入射され、当該光ビームに基づき、集光手段に入射された光ビームの光軸と基準光軸との角度ズレを第1の光検出手段より高精度に検出する第2の光検出手段と、第1の光検出手段および第2の光検出手段により検出された角度ズレに基づいて、第1の光路偏向手段の偏向方向を補正する偏向方向補正手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、簡易な構成で、広範囲の領域での光ビームの初期捕捉および初期捕捉後の高精度な捕捉を実行でき、かつ、受信部で受光する光ビームの損失を最小限に低減することができ、長距離通信において光ビームの受光量が微量な場合であっても捕捉追尾が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る捕捉追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
捕捉追尾装置は、相手側光空間通信装置(不図示)との間で双方向通信を行う自機側光空間通信装置(不図示)に搭載され、相手側光空間通信装置からの送信光(光ビーム)を捕捉追尾するビーコンレス光空間通信用の捕捉追尾装置である。この捕捉追尾装置は、図1に示すように、可動ミラー(第1の光路偏向手段)1、ビームスプリッタ(光分岐手段)2、集光レンズ(集光手段)3、ピンホール4を有するミラー(第2の光路偏向手段)5、粗捕捉用光検出部(第1の光検出手段)6、精捕捉用光検出部(第2の光検出手段)7、可動ミラー制御部(偏向方向補正手段)8、集光レンズ9および受信部10から構成される。
【0013】
可動ミラー1は、入射された入射光ビーム20aを反射して所定方向に偏向させるものである。ここで、入射光ビーム20aは、相手側光空間通信装置の送信側ターミナル(不図示)から送信された通信用および捕捉追尾用を兼ねたコリメート光ビームであり、一般的には、ジンバル機構により角度制御可能な光アンテナ(不図示)などを介して捕捉追尾装置に入射される。
そして、可動ミラー1は、この光アンテナが形成する射出瞳近傍に設置され、例えばミラーを反射面に対して水平な2軸まわりに回転可能とすることで、入射光ビーム20aを任意の光軸方向に偏向可能とする。
【0014】
ビームスプリッタ2は、可動ミラー1により偏向されて入射された入射光ビーム20aを2分岐するものであり、入射光ビーム20aのうちの一部は透過し、残りは反射して所定方向に偏向する。
集光レンズ3は、ビームスプリッタ2を透過して入射された入射光ビーム20a(第1の分岐光ビーム20b)を集光するものである。
【0015】
ミラー5は、集光レンズ3により集光されて入射された第1の分岐光ビーム20bを反射して所定方向に偏向するものである。また、ミラー5には、集光レンズ3に入射された第1の分岐光ビーム20bの入射角度(光軸)が集光レンズ3の基準光軸30と一致するときにミラー5上に形成される集光スポットの位置の近傍にピンホール4が設けられている。なお、ピンホール4は、集光スポットサイズより大きなサイズに構成されている。
このようにミラー5にピンホール4を設けることで、集光レンズ3に入射された第1の分岐光ビーム20bの光軸が基準光軸30に概ね一致する場合には、第1の分岐光ビーム20bはピンホール4を介してミラー5を通過する。一方、第1の分岐光ビーム20bの光軸が基準光軸30に対してずれている場合(例えば図1に示す角度ズレ光ビーム20d)には、ミラー5上に形成される集光スポットの位置がピンホール4の形成位置から外れるため、第1の分岐光ビーム20bはミラー5により反射される。なお図1に示す角度ズレ光ビーム20dは、見易くするために、ビームの傾きを誇張し、瞳位置も考慮せずに示している。
【0016】
粗捕捉用光検出部6は、可動ミラー制御部8とともに粗捕捉(初期捕捉)制御を行うため、ミラー5により偏向されて入射された第1の分岐光ビーム20b(反射光ビーム20e)に基づいて、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを検出するものである。この粗捕捉用光検出部6は、集光レンズ61および光検出器62から構成されている。
集光レンズ61は、ミラー5からの反射光ビーム20eを集光するものである。
光検出器62は、集光レンズ61の集光面上に配置され、集光レンズ61により集光されて入射された反射光ビーム20eを受光し、その受光位置と集光面の中心位置との位置ズレを検出することで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを検出するものである。この光検出器62は、例えばCCDセンサやCMOSセンサ、PSDセンサ、4象限フォトダイオードなどの受光位置を検出可能な光検出器から構成される。
【0017】
精捕捉用光検出部7は、第1の分岐光ビーム20bがピンホール4を介してミラー5を通過する状態となることでビームスプリッタ2により反射された入射光ビーム20a(第2の分岐光ビーム20c)が入射され、可動ミラー制御部8とともに精捕捉(高精度な捕捉)制御を行うため、この第2の分岐光ビームに基づいて、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを高精度に検出するものである。この精捕捉用光検出部7は、粗捕捉用光検出部6と同様に、集光レンズ71および光検出器72から構成されている。
集光レンズ71は、ビームスプリッタ2からの第2の分岐光ビーム20cを集光するものである。
光検出器72は、集光レンズ71の集光面上に配置され、集光レンズ71により集光されて入射された第2の分岐光ビーム20cを受光し、その受光位置と集光面の中心位置との位置ズレを検出することで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを検出するものである。
【0018】
なお、精捕捉用光検出部7では、最低でもμ[rad]オーダーの捕捉追尾精度が要求されるが、捕捉追尾領域が非常に狭いため、例えば集光レンズ71に長焦点のレンズを用いることで高分解能化を実現する。また、装置の振動や大気の擾乱を抑制するためには、光検出器72に高速応答性が求められるが、光検出器72の受光面積を小さくすることが可能であるため、高速応答性を実現可能である。
【0019】
可動ミラー制御部8は、粗捕捉用光検出部6および精捕捉用光検出部7により検出された角度ズレに基づいて、この角度ズレを低減させる方向に可動ミラー1の回転調整を行うことで、入射光ビーム20aに対する偏向方向を補正するものである。
【0020】
集光レンズ9は、基準光軸が集光レンズ3の基準光軸30上に位置し、ピンホール4を介してミラー5を通過して入射された第1の分岐光ビーム20b(通過光ビーム20f)を集光するものである。なおレンズ9は、レンズ8との組合せによってアフォーカル光学系(焦点距離が無限大の光学系)を構成しており、受信部10に対して最適なビーム径のコリメート光を形成することができる。
受信部10は、受光面の中心位置が基準光軸30上に位置し、集光レンズ9により集光されて入射された通過光ビーム20fを受信するものである。
【0021】
次に、上記のように構成された捕捉追尾装置の動作について説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係る捕捉追尾装置の動作を示すフローチャートである。
この捕捉追尾装置の動作では、図2に示すように、相手側光空間通信装置の送信側ターミナルから光ビームが送信され、光アンテナを介して捕捉追尾装置に入射されると、まず、可動ミラー1は、この光ビーム(入射光ビーム20a)を反射して所定方向に偏向する(ステップST1)。そして、ビームスプリッタ2は、この入射光ビーム20aのうち一部は透過して残りは反射することで2分岐する(ステップST2)。このビームスプリッタ2を透過した入射光ビーム20a(第1の分岐光ビーム20b)は、集光レンズ3を介してミラー5に入射される。
【0022】
ここで、初期捕捉の段階では、集光レンズ3に入射された第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30とが一致している可能性は非常に低いため、一般的には、第1の分岐光ビーム20bはミラー5により反射されて、粗捕捉用光検出部6に入射される(ステップST3)。
そして、粗捕捉用光検出部6の集光レンズ61は、この第1の分岐光ビーム20b(反射光ビーム20e)を集光し、光検出器62は、反射光ビーム20eの受光位置と集光面の中心位置との位置ズレを検出することで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを検出する。そして、可動ミラー制御部8は、粗捕捉用光検出部6により検出された角度ズレに基づいて、この角度ズレを低減する方向に可動ミラー1の回転調整を行うことで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30とを概ね一致させることができる(ステップST4)。
【0023】
この粗捕捉用光検出部6および可動ミラー制御部8による粗捕捉制御によって、第1の分岐光ビーム20bがピンホール4を介してミラー5を通過できる程度にまでビーム角度を追い込んだ段階になると、ビームスプリッタ2により反射された入射光ビーム20a(第2の分岐光ビーム20c)が精捕捉用光検出部7の集光レンズ71により集光され、光検出器72に入射されるようになる(ステップST5)。また、第1の分岐光ビーム20bがピンホール4を介してミラー5を通過し、粗捕捉用光検出部6側には反射されなくなるため、粗捕捉制御は終了する。
【0024】
そして、光検出器72は、第2の分岐光ビーム20cの受光位置と集光面の中心位置との位置ズレを検出することで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30との角度ズレを高精度に検出する。そして、可動ミラー制御部8は、精捕捉用光検出部7により検出された角度ズレに基づいて、この角度ズレを低減する方向に可動ミラー1の回転調整を行うことで、第1の分岐光ビーム20bの光軸と基準光軸30とを高精度に一致させることができる(ステップST6)。以後、可動ミラー1の回転調整を継続することで、相手側光空間通信装置から送信された光ビームを捕捉追尾することができる。
【0025】
そして、精捕捉用光検出部7および可動ミラー制御部8による精捕捉制御によって、第1の分岐光ビーム20bの光軸が基準光軸30と高精度に一致すると、第1の分岐光ビーム20bの全光強度がピンホール4を介してミラー5を通過するようになる。このミラー5を通過した第1の分岐光ビーム20b(通過光ビーム20f)は、集光レンズ9により集光されて最適なビーム径のコリメート光となった後、受信部10に入射される(ステップST7)。
この受信部10に入射された光ビーム(受信光)は、精捕捉用光検出部7および可動ミラー制御部8により高精度に捕捉され、光強度変動が小さいため、安定した通信が可能となる。また、精捕捉制御時には粗捕捉用光検出部6側には光ビームが分岐されず、受信部10で効率的に受信できるため、微量の光量しか受信できない長距離間の光空間通信であっても通信を成立することができる。また、送信側ターミナルの送信光源の出力要求レベルを下げることにもつながる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、集光レンズ3に入射された光ビームの光軸が基準光軸30と一致するときにミラー5上に形成される集光スポット位置の近傍、かつ、この集光スポットサイズ以上のサイズであるピンホール4を有するミラー5を備え、この光ビームの光軸が基準光軸30に対してずれている場合にはこの光ビームをミラー5で反射して、粗捕捉用光検出部6で広範囲領域での角度ズレ検出を行い、この光ビームの光軸が基準光軸30に概ね一致した場合にはピンホール4を介してミラー5を通過させて精捕捉用光検出部7で高分解能かつ高速応答可能な角度ズレ検出を行うように構成したので、簡易な構成で、広範囲の領域での光ビームの初期捕捉および初期捕捉後の高精度な捕捉を実行することができる。また、粗捕捉用光検出部6による粗捕捉制御時では、受信部10には光ビームが入射されず、精捕捉用光検出部7による精捕捉制御時では、粗捕捉用光検出部6には光ビームが入射されず、受信部10に光ビームが入射されるため、受信部10で受光する光ビームの損失を最小限に低減することができ、長距離通信において光ビームの受光量が微量な場合であっても捕捉追尾および通信が可能となる。
【0027】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
図3に示す実施の形態2に係る捕捉追尾装置は、図1に示す実施の形態1に係る捕捉追尾装置の構成に対して、ビームスプリッタ2および精捕捉用光検出部7の設置位置を、可動ミラー1と集光レンズ3との間から集光レンズ9と受信部10との間に変更したものである。その他の構成は同様であり、同様の構成については同一の符号を付記し説明は省略する。
【0028】
実施の形態1に係る捕捉追尾装置では、ピンホール4を有するミラー5の前段にビームスプリッタ2および精捕捉用光検出部7を配置したが、実施の形態2に係る捕捉追尾装置では、ピンホール4を有するミラー5の後段にビームスプリッタ2および精捕捉用光検出部7を配置している。
これにより、粗捕捉用光検出部6による粗捕捉制御時には、ビームスプリッタ2による光ビームの分岐が発生せず、光ビーム(反射光ビーム20e)の全光強度が粗捕捉用光検出部6に入射されることとなる。そのため、捕捉追尾装置に入射される光ビームの光量が微量の場合であっても粗捕捉制御を行うことが可能となる。
【0029】
なお、粗捕捉制御によって集光レンズ3に入射された入射光ビーム20aの光軸と基準光軸30とが概ね一致し、ピンホール4を介してミラー5を通過した入射光ビーム20a(通過光ビーム20f)は、集光レンズ9で最適なビーム径のコリメート光となった後、ビームスプリッタ2に入射される。そして、ビームスプリッタ2を透過した通過光ビーム20f(第1の分岐光ビーム20b)は受信部10に入射され、ビームスプリッタ2により反射された通過光ビーム20f(第2の分岐光ビーム20c)は精捕捉用光検出部7に入射されて精捕捉制御が行われる。その他の動作については実施の形態1に係る捕捉追尾装置の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0030】
以上のように、この実施の形態2によれば、ビームスプリッタ2および精捕捉用光検出部7をピンホール4を有するミラー5の後段に配置したので、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、粗捕捉制御時には光ビームの全光強度が粗捕捉用光検出部6に入射されるため、微量な受信光量であっても粗捕捉制御を行うことができる。
【0031】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る捕捉追尾装置の構成を示す図である。
図4に示す実施の形態3に係る捕捉追尾装置は、図3に示す実施の形態2に係る捕捉追尾装置のビームスプリッタ2を偏光ビームスプリッタ(PBS)2bに変更し、1/4λ波長板11、1/2λ波長板12および回転機構13を追加したものである。その他の構成は同様であり、同様の構成については同一の符号を付記し説明は省略する。なお以下では、相手側光空間通信装置から送信され、捕捉追尾装置に入射される光ビームは円偏光のビームであるとする。
【0032】
1/4λ波長板11は、可動ミラー1と集光レンズ3との間に基準光軸30に対して光学軸が略垂直となるように配置され、可動ミラー1により偏向されて入射された円偏光の入射光ビーム20aを直線偏光のビームに変換するものである。
1/2λ波長板12は、レンズ9とPBS2bとの間に基準光軸30に対して光学軸が略垂直となるように配置され、1/4λ波長板11により直線偏光に変換され、集光レンズ9により集光されて入射された入射光ビーム20a(通過光ビーム20f)の偏光面と光学軸とのなす角度に応じて、偏光面を所定角度回転させるものである。なお、1/2λ波長板12による偏光面の回転角度は、通過光ビーム20fの偏光面と1/2λ波長板12の光学軸とがなす角度の2倍である。
回転機構13は、1/2λ波長板12を支持し、精捕捉用光検出部7により検出された第2の分岐光ビーム20cの光強度に基づいて、1/2λ波長板12を基準光軸30まわりに回転させるものである。
【0033】
PBS2bは、1/2λ波長板12により偏光面が回転されて入射された通過光ビーム20fをP偏光とS偏光の光ビームに分離する光学素子であり、P偏光の光ビームは透過し、S偏光の光ビームは反射して所定方向に偏向する。このPBS2bを透過したP偏光の光ビーム(第1の分岐光ビーム20b)は受信部10に入射され、PBS2bにより反射されたS偏光の光ビーム(第2の分岐光ビーム20c)は精捕捉用光検出部7に入射される。
なお、精捕捉用光検出部7の光検出器72では、実施の形態1,2における機能に加えて、受光した第2の分岐光ビーム20cの光強度を検出する。
【0034】
次に、上記のように構成された捕捉追尾装置の動作について説明する。
実施の形態2に係る捕捉追尾装置では、精捕捉用光検出部7および受信部10への光分岐手段として一般的なビームスプリッタ2を備え、ある一定の分岐比で光分岐を行っていた。これに対し実施の形態3に係る捕捉追尾装置では、まず、1/4λ波長板11が、入射された円偏光の入射光ビーム20aを直線偏光のビームに変換する。そして、粗捕捉用光検出部6による粗捕捉制御によって、集光レンズ3に入射される直線偏光の入射光ビーム20aの光軸が基準光軸30と概ね一致すると、この入射光ビーム20aがピンホール4を介してミラー5を通過する。そして、この入射光ビーム20aは、集光レンズ9で最適なビーム径のコリメート光となった後、回転機構13に支持された1/2波長板12を介してPBS2bに入射する。そして、PBS2bによりS偏光の入射光ビーム20aが反射されて精捕捉用光検出部7に入射される。
【0035】
ここで、精捕捉用光検出部7では、精捕捉制御を行うにあたり最適な入射光量があり、多すぎても少なすぎても捕捉追尾精度や安定性が劣化する。そこで、精捕捉用光検出部7の光検出器72で、受光した第2の分岐光ビーム20cの光強度を検出し、回転機構13に通知する。そして回転機構13は、この光強度に基づいて、1/2波長板12を回転させて、PBS2bに入射する入射光ビーム20aの偏光面の方向を調整することで分岐光量が最適となるように自動調整する。これによって、精捕捉用光検出部7で常に高精度な捕捉追尾が可能となる。また、精捕捉用光検出部7に無駄に多くの光量を分岐することがなくなるため、受信部10に入射される光ビームに無駄な損失が一切生じない。その他の動作については実施の形態1に係る捕捉追尾装置の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0036】
以上のように、この実施の形態3によれば、円偏光の光ビームを1/4λ波長板11で直線偏光のビームに変換し、ピンホール4を介してミラー5を通過した光ビームを、回転機構13に支持された1/2λ波長板12で、精捕捉用光検出部7への分岐光量が最適となるようにPBS2bへ入射する光ビームの偏光面の方向を自動調整するように構成したので、実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、精捕捉用光検出部7で常に高精度な捕捉追尾が実現可能となる。また、精捕捉用光検出部7に無駄に多くの光量を分岐することがなくなるため、受信部10に入射される光ビームに無駄な損失が一切生じない。
【0037】
なお、図4に示す捕捉追尾装置では、図3に示す実施の形態2に係る捕捉追尾装置の構成を基に各機能部の変更・追加を行った場合について示したが、これに限るものではなく、図1に示す実施の形態1に係る捕捉追尾装置の構成を基に各機能部の変更・追加を行うようにしてもよい。また、その場合においても、同様の効果を奏する。
また、実施の形態3に係る捕捉追尾装置では、相手側光空間通信装置から円偏光の光ビームが送信され、捕捉追尾装置に入射される場合について説明したが、相手側光空間通信装置から直線偏光の光ビームが送信され、捕捉追尾装置に入射される場合についても同様に適用可能である。なおこの場合には、1/4λ波長板11は不要となる。
【0038】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 可動ミラー(第1の光路偏向手段)、2 ビームスプリッタ(光分岐手段)、2b 偏光ビームスプリッタ(PBS)、3 集光レンズ(集光手段)、4 ピンホール、5 ミラー(第2の光路偏向手段)、6 粗捕捉用光検出部(第1の光検出手段)、7 精捕捉用光検出部(第2の光検出手段)、8 可動ミラー制御部(偏向方向補正手段)、9 集光レンズ、10 受信部、11 1/4λ波長板、12 1/2λ波長板、13 回転機構、20a〜20f 光ビーム、30 基準光軸、61 集光レンズ、62 光検出器、71 集光レンズ、72 光検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光ビームを所定方向に偏向させる第1の光路偏向手段と、
上記第1の光路偏向手段により偏向された光ビームを集光する集光手段と、
上記集光手段により集光された光ビームを所定方向に偏向させる第2の光路偏向手段と、
上記第2の光路偏向手段に設けられ、上記集光手段に入射された光ビームの光軸が当該集光手段の基準光軸と一致するときに上記第2の光路偏向手段上に形成される集光スポット位置の近傍、かつ、当該集光スポットサイズより大きなサイズであるピンホールと、
受光面が上記基準光軸上に位置し、上記ピンホールを介して上記第2の光路偏向手段を通過した光ビームを受信する受信部と、
上記第2の光路偏向手段により偏向されて入射された光ビームに基づき、上記集光手段に入射された光ビームの光軸と上記基準光軸との角度ズレを検出する第1の光検出手段と、
上記第1の光路偏向手段から上記受信部までの間のいずれかの位置に設けられ、上記光ビームの一部を分岐する光分岐手段と、
上記光ビームが上記ピンホールを介して上記第2の光路偏向手段を通過する状態となることで上記光分岐手段により分岐された光ビームが入射され、当該光ビームに基づき、上記集光手段に入射された光ビームの光軸と上記基準光軸との角度ズレを上記第1の光検出手段より高精度に検出する第2の光検出手段と、
上記第1の光検出手段および上記第2の光検出手段により検出された角度ズレに基づいて、上記第1の光路偏向手段の偏向方向を補正する偏向方向補正手段と
を備えたことを特徴とする捕捉追尾装置。
【請求項2】
上記光分岐手段は、上記第2の光路偏向手段の前段に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の捕捉追尾装置。
【請求項3】
上記光分岐手段は、上記第2の光路偏向手段の後段に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の捕捉追尾装置。
【請求項4】
上記光分岐手段は偏光ビームスプリッタであり、
上記第2の光検出手段は、上記偏光ビームスプリッタにより分岐された光ビームの光強度を検出し、
上記偏光ビームスプリッタの前段に上記基準光軸に対して光学軸が略垂直となるように設けられ、入射された光ビームの偏光面と当該光学軸とのなす角度に応じて、当該偏光面を所定角度回転させる1/2λ波長板と、
上記第2の光検出手段により検出された光ビームの光強度に基づいて、上記1/2λ波長板を上記基準光軸まわりに回転させる回転機構とを備え、
上記1/2λ波長板に入射される光ビームは直線偏光である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の捕捉追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237628(P2012−237628A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106260(P2011−106260)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】