説明

排ガス処理方法及びシステム

【課題】 集塵フィルタを備えた高温集塵装置を採用した排ガス処理にて、集塵フィルタの目詰まりを防止し、ダイオキシン類の排出を低減することを可能とした排ガス処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 廃棄物に焼却等の熱処理を施す熱処理設備10と、前記熱処理設備の排ガスを集塵フィルタに通して飛灰を濾過集塵する高温集塵装置20と、該高温集塵装置から排出された排ガスから熱回収するボイラ21と、該ボイラにより降温された排ガスが導入される低温集塵装置23と、を備え、前記排ガスに含有されるダイオキシン類等の有害物質を除去する排ガス処理システムにおいて、前記高温集塵装置20の出口側の排ガス温度を500〜1000℃の温度域とするとともに、該高温集塵装置20の上流側に、シリカ、アルミナを主成分とした高融点物質の粉体からなる緩衝剤30を排ガス中に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物等の各種焼却炉、熱分解ガス化炉、炭化炉、焙焼炉、溶融炉から排出される排ガスに含有されるダイオキシン類を含む有害物質を分解・除去して浄化する技術に関し、特に、排ガス処理系統に高温集塵装置と低温集塵装置からなる2基の集塵装置を備えた排ガス処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物に焼却、熱分解ガス化、炭化、焙焼或いは溶融等の熱処理を施すことにより発生する排ガス中には、高濃度の煤塵、ダイオキシン類、SO及びHCl等の酸性ガス、NO等の窒素酸化物などの有害物質が多く存在している。従来、これらの有害物質を無害化・安定化するために、排ガス処理系統に複数の処理装置を組み合わせて設け、排ガスの無害化処理を行なっている。
一般的な排ガス処理システムでは、まず熱処理設備から排出された高温排ガスの排熱をボイラにより回収し、熱回収後の排ガスを減温塔にて水噴霧等により約150〜200℃程度まで冷却し、冷却した排ガス中の煤塵を集塵装置により集塵した後、再加熱器により加熱した排ガスを触媒塔に導入し、該触媒塔にてダイオキシン類、窒素酸化物等を触媒作用により分解除去していた。
【0003】
このような排ガス処理システムによれば、バグフィルタ、電気集塵機、或いはサイクロン等の集塵装置により排ガス中の煤塵を捕集するとともに、飛灰に付着したダイオキシン類等も同時に捕集し、残留するダイオキシン類は後段の触媒塔により除去していた。
一般にダイオキシン類は、排ガス中に含有されるダイオキシン前駆物質や塩素、塩酸などの酸性物質が排ガスの冷却過程で再合成され、ダイオキシン類が生成されることが判っている。ダイオキシン類は250〜500℃の温度域で再合成されるため、飛灰を高温で捕集することが可能であれば、飛灰中のダイオキシン類の低減とともに、排ガス処理でのダイオキシン再合成の抑制が期待される。
【0004】
高温で飛灰を集塵する高温集塵機を備えた排ガス処理方法が、特許文献1(特開2001−212427号公報)等に開示されている。この方法は、廃棄物焼却炉の燃焼排ガスからダストを除去する高温集塵機を設け、該高温集塵機の前段或いは後段の高温場において燃焼排ガスを重金属吸着剤と接触させて重金属を除去するものである。しかし、この方法はPb、Cd、As、Se等の重金属を除去することを目的としており、ダイオキシン類の除去については考慮されていない。
【0005】
高温集塵機を備え、且つダイオキシン類低減を目的とした排ガス処理方法については、特許文献2(特開2001−108216号公報)に開示されている。これは、焼却炉若しくは溶融炉の排ガス出口にセラミックスフィルタを設け、該セラミックスフィルタを700℃以上に保持して排ガスを0.3秒以上通過させるものである。
このような条件下で排ガス中の飛灰を捕集することにより、飛灰中の未燃分や排ガスに随伴してくる未燃分が高温で十分に撹拌・混合されて完全燃焼され、ダイオキシン類の排出を抑制することが可能となる。
また、特許文献2では、セラミックスフィルタの下流側に低温集塵機を備えた2段集塵方式を採用しており、このため排ガスの冷却により析出する物質を低温集塵機にて除去することができるため、飛灰除去率を大幅に向上させることができる。
【0006】
また、特許文献3(特開2001−248837号公報)では、焼却炉と、熱回収用第1熱交換器と、高温集塵機と、熱回収用第2熱交換器と、低温集塵機とを備え、前記高温集塵機の温度を400〜500℃として捕集された飛灰中の塩素及び硫黄含有率を低減させ、クリーンな焼却飛灰を得ることを可能とした排ガス処理装置が開示されている。このように、飛灰中の塩素を低減させることにより排ガス中におけるダイオキシン類の再合成を抑制することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−212427号公報
【特許文献2】特開2001−108216号公報
【特許文献3】特開2001−248837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、排ガスに含有される飛灰を高温にて捕集することができれば、ダイオキシン類を分解、或いは再合成の抑制が可能となり、系外へ排出されるダイオキシン類総量の低減が期待できる。
しかしながら、高温集塵機を用いると以下の問題が生じる。
高温雰囲気下では、飛灰中に含有されるナトリウム、カリウム等の塩類を始めとする低融点物質が液状化しており、飛灰中の液状物質の含有率が大きいため、飛灰の付着性が増大する。そうすると、高温集塵機の集塵フィルタの目詰まりが発生し易くなり、集塵フィルタの差圧が上昇し、熱処理炉の安定運転が阻害されてダイオキシン類の発生を増大や処理設備の運転を停止せざるおえないなどの問題があった。
また、高温集塵機の集塵フィルタに飛灰が強固に付着してしまうため、逆洗等により飛灰を払い落とす際に剥離性が悪く、飛灰が集塵フィルタに残存してしまい、圧損上昇を引き起こしてしまう惧れがあった。
【0009】
ここで、前記特許文献1は、重金属類の除去を目的としたもので、本発明のようにダイオキシン類を除去することは考慮していない。
一方、特許文献2では、ダイオキシン類の低減を目的とした高温集塵機を採用しているが、これは上記したように高温下における飛灰の付着力の増大については何ら対処法が示されておらず、集塵フィルタの目詰まりは回避できない。
また、特許文献3では、高温集塵機としてマルチサイクロンを想定しているため、集塵フィルタの目詰まり等の問題は生じないが、マルチサイクロンは集塵フィルタを備えた高温集塵機程度の集塵率を得ることはできない。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、集塵フィルタを備えた高温集塵機を採用した排ガス処理にて、集塵フィルタの目詰まりを防止し、ダイオキシン類の排出を低減することを可能とした排ガス処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、廃棄物に焼却、熱分解ガス化、炭化、焙焼、溶融のうち少なくとも一を施す熱処理設備を備え、該熱処理設備から排出された排ガスを高温集塵装置に導入して集塵フィルタにより集塵した後、ボイラで熱回収して降温した排ガスを低温集塵装置に導入して集塵し、ダイオキシン類を含む有害物質を除去する排ガス処理方法において、
前記高温集塵装置の出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにするとともに、該高温集塵装置の上流側で、高融点物質の粉体からなる緩衝剤を前記排ガスに供給するようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように、高温集塵装置内の排ガス温度を高温に保持することにより、ダイオキシン類の分解の促進、再合成の抑制が可能となり、系外へ排出されるダイオキシン類総量の低減が可能となる。これは、ダイオキシン類の再合成温度が250〜500℃の温度域であるため、この温度域以上の高温とすることでダイオキシン類の分解を促進するとともに再合成を抑制し、且つ飛灰中の未燃分を燃焼させて低減するためである。
しかし、前記高温集塵装置内を上記温度域の高温とすると、飛灰中に含まれるナトリウム、カリウム等の塩類などの低融点物質が液状化しているため、飛灰の付着性が増大して集塵フィルタの目詰まりが発生してしまう。
従って、高融点物質からなる緩衝剤を導入することにより高温集塵飛灰中の低融点物質の含有率を相対的に低下させ、飛灰の付着力を低下させる。これにより、高温集塵装置の集塵フィルタの目詰まりを防止することができ、集塵フィルタの差圧の上昇を抑え、熱処理設備の安定運転が可能となり、ダイオキシン類の発生を最小限に抑制することができる。
さらにまた、前記集塵フィルタへ飛灰が強固に付着することを防止できるため、フィルタに堆積するダスト層の剥離性が向上し、容易にダスト層の払い落としを行なうことができる。従って、集塵フィルタに飛灰が残存することがなく、圧損上昇を防止できる。
【0012】
また、前記緩衝剤が、シリカ若しくはアルミナを主成分とする高融点物質の粉体であることが好適である。例えば、シリカサンド、珪藻土等が挙げられる。
さらに、前記緩衝剤は、前記熱処理設備から排出された主灰であっても良い。これにより、廃棄物の再利用が可能となり、且つ排出する飛灰量を低減することができ、飛灰処理コストを削減できる。
【0013】
さらにまた、前記高温集塵装置にて捕集された飛灰を前記熱処理設備から排出された主灰とともに溶融処理することを特徴とする。
前記低温集塵装置にて回収される飛灰には、冷却により析出した低融点物質を多く含むが、前記高温集塵装置にて回収される飛灰は、主灰と同様に未燃分や塩類等の低融点物質の含有量が少ない。従って、主灰とともに高温集塵装置で回収された飛灰を溶融炉へ導入することにより未燃分や低融点化合物を減らすことができ、溶融炉の排ガス処理設備の閉塞や高濃度ダイオキシン類の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
また、廃棄物に焼却、熱分解ガス化、炭化、焙焼、溶融のうち少なくとも一を施す熱処理設備と、前記熱処理設備の排ガスを集塵フィルタに通して集塵する高温集塵装置と、該高温集塵装置から排出された排ガスより熱回収するボイラと、該ボイラにより降温された排ガスから集塵する低温集塵装置と、を備え、前記排ガスに含有されるダイオキシン類等の有害物質を除去する排ガス処理システムにおいて、
前記高温集塵装置は、その出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにし、該高温集塵装置の上流側に、高融点物質の粉体からなる緩衝剤を前記排ガス中に供給する緩衝剤供給手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、前記緩衝剤が、前記熱処理設備から排出された主灰であることが好適である。
さらに、前記高温集塵装置にて捕集された飛灰を前記熱処理設備から排出された主灰とともに溶融炉に導入し、溶融処理することを特徴とする。
さらにまた、前記高温集塵装置もしくは低温集塵装置にて少なくとも一方に触媒が担持されている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、高温集塵装置内の排ガス温度を高温に保持することにより、ダイオキシン類の分解促進、再合成の抑制が可能となり、系外へ排出されるダイオキシン類総量の低減が可能となる。
また、緩衝剤を導入することにより、高温集塵飛灰の組成比率において塩類等の低融点物質の含有率が相対的に低下し、飛灰の付着力を低下させることができるため、集塵フィルタの目詰まりを防止することができる。従って、集塵フィルタの差圧の上昇を抑え、熱処理設備の安定運転が可能となり、ダイオキシン類の発生を最小限に抑制することができる。
さらに、高温集塵装置にて、飛灰の付着力低下により集塵フィルタへ飛灰が強固に付着することを防止できるため、剥離性が向上し、容易にダスト層の払い落としができるようになる。従って、集塵フィルタに飛灰が残存することがなく、圧損上昇を防止できる。
さらに、緩衝剤として主灰を利用することにより、廃棄物の再利用が可能となり、且つ排出する飛灰量を低減することができ、飛灰処理コストを削減できる。
さらにまた、高温集塵装置もくしは低温集塵装置の少なくとも一方に担持された触媒により、気相中ダイオキシンの分解が可能となり、ダイオキシン類排出を最小限に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図、図2は本発明の実施例2に係る排ガス処理システムの概略構成図、図3は本発明の実施例3に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
本実施例の処理対象である廃棄物は、都市ごみ等の一般廃棄物或いは各種産業廃棄物であり、熱処理により発生する排ガス中にダイオキシン類等の有害物質を含有するものである。
【実施例1】
【0018】
図1に示すように、本実施例1に係る排ガス処理システムは、廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉10と、該焼却炉10から排出される800〜1200℃程度、酸素濃度約8〜14%の高温排ガスが導入され、該高温排ガス中の飛灰を集塵フィルタにより捕集する高温集塵装置20と、該高温集塵装置20の後段に設けられ、排ガスの熱を回収するとともに該排ガスを降温するボイラ21と、水噴霧等により前記排ガスをさらに200〜250℃程度まで冷却する減温塔22と、冷却された排ガス中に含有する飛灰を捕集する低温集塵装置23と、該低温集塵装置23の後段に設けられ、排ガスを触媒と接触させて脱硝及び残留するダイオキシン類を除去する触媒塔24と、これらにより浄化された排ガスを大気放出する煙突25とから構成される。尚、前記排ガスの数値条件に関しては上記した値に限定されるものではない。
【0019】
前記ストーカ式焼却炉10は、廃棄物を炉内に供給する投入ホッパ11と、焼却処理後の主灰33を排出する灰排出口12と、前記廃棄物を撹拌・移送しながら一次空気18の導入により焼却する火格子13と、排ガス中の未燃分を二次空気19の導入により燃焼させる2次燃焼室14と、発生した排ガスを排出する排ガス出口16と、を備えている。
本実施例では一例としてストーカ式焼却炉10につき説明したが、他にも流動床式焼却炉、ロータリーキルン式焼却炉、熱分解ガス化炉、溶融炉、炭化炉、焙焼炉等を用いることができる。
【0020】
前記高温集塵装置20は、セラミックフィルタ等の耐熱性フィルタを例示することができる。ここで、前記セラミックフィルタとしては、キャンドル型のフィルタ、チューブラー型のフィルタ、クロスフロー型のフィルタ、ハニカム型のフィルタ等を挙げることができる。また、該高温集塵装置20には、捕集した飛灰の払い落とし手段が設けられている。これは、逆洗ノズル、加圧空気供給手段等から構成される。
前記低温集塵装置23は、電気集塵機、セラミックフィルタ、バグフィルタ、マルチサイクロン等を例示することができ、特にセラミックフィルタまたはバグフィルタが好ましい。
【0021】
本実施例では、前記高温集塵装置20の出口側、即ちボイラ入口における排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにし、さらに該高温集塵装置20の上流側で緩衝剤30を排ガス中に供給するようにしている。
前記緩衝剤30は高融点物質からなる粉体とし、好適にはアルミナ、シリカを主成分とする高融点物質の粉体であると良い。この緩衝剤としては、例えば、シリカサンド、珪藻土、粘土鉱物、パーライト等が挙げられる。
【0022】
このように、高温集塵装置20内の排ガス温度を高温に保持することにより、ダイオキシン類の分解の促進、再合成の抑制が可能となり、系外へ排出されるダイオキシン類総量の低減が可能となる。
さらに、高融点物質からなる緩衝剤30を導入することにより、高温集塵飛灰31の組成比率において、ナトリウム、カリウム等の塩類などの低融点物質の含有率が相対的に低下し、飛灰の付着力を低下させることができるため、高温集塵装置20の集塵フィルタの目詰まりを防止することができる。従って、集塵フィルタの差圧の上昇を抑え、焼却炉10の安定運転が可能となり、ダイオキシン類の発生を最小限に抑制することができる。
さらにまた、前記集塵フィルタへ飛灰が強固に付着することを防止できるため、剥離性が向上し、該集塵フィルタに堆積したダスト層の払い落としが容易となる。従って、集塵フィルタに飛灰が残存することがなく、圧損上昇を防止できる。
【0023】
また、前記高温集塵装置20において、集塵フィルタに触媒を担持させた触媒フィルタを用いた構成としても良い。このように、高温集塵装置20に触媒を担持させると、触媒効果により効率良くダイオキシン類を分解することができる。
さらに、前記低温集塵装置23において、集塵フィルタに触媒を担持させた触媒フィルタを用いた構成としても良い。このように、低温集塵装置23に触媒を担持させることにより、脱塩・脱硫、低融点化合物除去、脱硝を同時に行なうことができるようになり、装置のコンパクト化が図れる。
【0024】
尚、ダイオキシン類分解作用を奏する触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、チタン(Ti)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、リン(P)、ボロン(B)から選ばれる少なくとも一種からなる担体又はこれらの二種以上の元素を含む複合酸化物からなる担体に、例えばバナジウム(V)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)等の酸化物のうち少なくとも一種類の酸化物からなる活性成分を担持してなるもの等の触媒や公知のダイオキシン類分解触媒を用いることができる。
また、前記高温集塵装置20で用いる場合には高温雰囲気下でも使用できる貴金属系触媒、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)等が好ましい。
また、前記低温集塵装置23にて脱硝を同時に行う場合には、アンモニアガス等を噴霧することにより、効率良く脱硝処理を行うことができる。
【0025】
このようにして、前記高温集塵装置20にて飛灰が捕集、除去された排ガスはボイラ21に導入され、該ボイラ21にて熱回収された後、減温塔22に導入されて水噴霧等によりさらに冷却される。該減温塔22は後段の低温集塵装置23に導入する排ガス温度に応じて、具備しない構成としても良い。前記ボイラ21、減温塔22により200〜250℃程度まで冷却された排ガスは、消石灰等の酸性ガス中和剤を噴霧されて低温集塵装置23に導入される。該中和剤によって、排ガス中の酸性成分である塩化水素、硫黄酸化物等は中和されて、この反応生成物や煤塵は該低温集塵装置23にて集塵される。このとき、前記中和剤とともに、活性炭等の吸着剤や反応助剤を同時に供給しても良い。該低温集塵装置23では、排ガスの冷却により析出した低融点の塩類を含む酸性ガスを飛灰とともに除去する。さらに、前記低温集塵装置23から排出された排ガスを触媒塔24に導入し、該触媒塔24にて硫黄酸化物、残留するダイオキシン類等を除去する。このとき、前記触媒塔24に導入する前に排ガスを再加熱することが好ましい。そして、浄化された排ガスは煙突25より大気放出される。
【実施例2】
【0026】
図2に本実施例2に係る排ガス処理システムを示す。以下、図2及び図3に示した実施例2、3の排ガス処理システムにおいて、前記実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図2に示した排ガス処理システムは、廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉10と、該焼却炉10から排出される高温排ガスが導入され、該高温排ガス中の飛灰を集塵フィルタにより捕集する高温集塵装置20と、該高温集塵装置20の後段に設けられ、排ガスの熱を回収するとともに該排ガスを降温するボイラ21と、水噴霧等により前記排ガスをさらに冷却する減温塔22と、冷却された排ガス中に含有する飛灰を捕集する低温集塵装置23と、該低温集塵装置23の後段に設けられ、排ガスを触媒と接触させて脱硝及び残留するダイオキシン類等を除去する触媒塔24と、これらにより浄化された排ガスを大気放出する煙突25とから構成される。
【0027】
本実施例では、前記高温集塵装置20の出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにし、さらに該高温集塵装置20の上流側で緩衝剤30を排ガス中に供給するようにしている。
前記緩衝剤としては、前記ストーカ式焼却炉10から排出される主灰33を用いている。このとき、主灰33を粉砕手段により粉砕して微粉化して用いることが好ましい。焼却炉10から排出される主灰33は、高融点を有するシリカ、アルミナを主成分とする。さらに、前記主灰33に加えて他の高融点物質の粉体を混入しても良い。他の高融点物質の粉体として、好適にはアルミナ、シリカを主成分とし、例えば、シリカサンド、珪藻土、パーライト等が挙げられる。
【0028】
このように、高温集塵装置20内の排ガス温度を高温に保持することにより、ダイオキシン類の分解の促進、再合成の抑制が可能となり、系外へ排出されるダイオキシン類総量の低減が可能となる。
また、前記緩衝剤30を導入することにより高温集塵装置20の集塵フィルタの目詰まりを防止することができる。従って、集塵フィルタの差圧の上昇を抑え、焼却炉の安定運転が可能となり、ダイオキシン類の発生を最小限に抑制することができる。さらに、捕集された飛灰の剥離性が向上するため、逆洗の際に、集塵フィルタに堆積したダスト層を容易に払い落とすことができる。
さらにまた、前記緩衝剤30として主灰33を用いているため、廃棄物の再利用が可能となり、且つ排出する飛灰量を低減することができるため飛灰処理コストを削減できる。
【実施例3】
【0029】
図3に示した本実施例3の排ガス処理システムは、廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉10と、該焼却炉10から排出される高温排ガスが導入され、該高温排ガス中の飛灰を集塵フィルタにより捕集する高温集塵装置20と、該高温集塵装置20の後段に設けられ、排ガスの熱を回収するとともに該排ガスを降温するボイラ21と、水噴霧等により前記排ガスをさらに冷却する減温塔22と、冷却された排ガス中に含有する飛灰を捕集する低温集塵装置23と、該低温集塵装置23の後段に設けられ、排ガスを触媒と接触させて脱硝及び残留するダイオキシン類等を除去する触媒塔24と、これらにより浄化された排ガスを大気放出する煙突25とから構成される。
【0030】
本実施例では、前記高温集塵装置20の出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにし、さらにその上流側で緩衝剤30を排ガス中に供給するようにしている。
このように、高温集塵装置20内の排ガス温度を高温に保持することにより、ダイオキシン類の分解の促進、再合成の抑制が可能となり、また、前記緩衝剤30の導入により、飛灰の付着力を低下させることができるため、高温集塵装置20の集塵フィルタの目詰まりを防止することができ、ダイオキシン類の発生を最小限に抑制することができる。
【0031】
一方、前記ストーカ式焼却炉10から排出された主灰33及び前記高温集塵装置20にて回収された高温集塵飛灰31は、主灰導入ライン34及び高温集塵飛灰導入ライン35を介して溶融炉40に導入される。
前記溶融炉40で溶融処理された灰はスラグ化され無害化された後、再利用或いは埋立てされる。該溶融炉40で発生した排ガスは、2次燃焼室41、減温塔42、集塵装置43を経て有害物質を除去された後、ファン44により前記低温集塵装置23に導かれ、前記焼却炉10の排ガスとともに処理される。
【0032】
前記高温集塵装置20にて回収した飛灰31は、主灰33と同様に未燃分や塩類等の低融点物質の含有量が少ないため、これらを溶融炉へ導入することにより未燃分や低融点化合物を減らすことができ、溶融炉の排ガス処理設備の閉塞や高濃度ダイオキシン類の発生を抑制することが可能となる。
これに対して前記低温集塵装置23にて回収された飛灰32には、冷却により析出した低融点の塩類や、脱塩、脱硫処理のために添加したアルカリ剤が含有されているため、これらを溶融炉40に導入すると高温雰囲気により炉体の腐食が促進されたり、クリンカの発生、排ガスダクトの閉塞が生じてしまう。
従って、本実施例のように、高温集塵装置20にて回収した飛灰31のみを溶融炉40に導入することにより、これらの不具合を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明では、廃棄物の熱処理排ガスに対して高温集塵装置と低温集塵装置からなる2段集塵を行なっているためクリーンな排ガスとすることができるとともに、高温集塵装置から排出された排ガスの廃熱を有効利用することによりごみ焼却発電プラント等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【図3】本発明の実施例3に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ストーカ式焼却炉
20 高温集塵装置
21 ボイラ
22 減温塔
23 低温集塵装置
24 触媒塔
30 緩衝剤
31 高温集塵飛灰
32 低温集塵飛灰
33 主灰
34 主灰導入ライン
35 高温集塵飛灰導入ライン
40 溶融炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物に焼却、熱分解ガス化、炭化、焙焼、溶融のうち少なくとも一を施す熱処理設備を備え、該熱処理設備から排出された排ガスを高温集塵装置に導入して集塵フィルタにより集塵した後、ボイラで熱回収して降温した排ガスを低温集塵装置に導入して集塵し、ダイオキシン類を含む有害物質を除去する排ガス処理方法において、
前記高温集塵装置の出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにするとともに、該高温集塵装置の上流側で、高融点物質の粉体からなる緩衝剤を前記排ガスに供給するようにしたことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
前記緩衝剤が、シリカ若しくはアルミナを主成分とする高融点物質の粉体であることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記緩衝剤が、前記熱処理設備から排出された主灰であることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記高温集塵装置にて捕集された飛灰を前記熱処理設備から排出された主灰とともに溶融処理することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
廃棄物に焼却、熱分解ガス化、炭化、焙焼、溶融のうち少なくとも一を施す熱処理設備と、前記熱処理設備の排ガスを集塵フィルタに通して集塵する高温集塵装置と、該高温集塵装置から排出された排ガスより熱回収するボイラと、該ボイラにより降温された排ガスから集塵する低温集塵装置と、を備え、前記排ガスに含有されるダイオキシン類等の有害物質を除去する排ガス処理システムにおいて、
前記高温集塵装置は、その出口側の排ガス温度が500〜1000℃の温度域となるようにし、該高温集塵装置の上流側に、高融点物質の粉体からなる緩衝剤を前記排ガス中に供給する緩衝剤供給手段を設けたことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項6】
前記緩衝剤が、前記熱処理設備から排出された主灰であることを特徴とする請求項5記載の排ガス処理システム。
【請求項7】
前記高温集塵装置にて捕集された飛灰を前記熱処理設備から排出された主灰とともに溶融炉に導入し、溶融処理することを特徴とする請求項5記載の排ガス処理システム。
【請求項8】
前記高温集塵装置もしくは低温集塵装置にて少なくとも一方に触媒が担持されたことを特徴とする請求項1もしくは4記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
前記高温集塵装置もしくは低温集塵装置にて少なくとも一方に触媒が担持されていることを特徴とする請求項5もしくは7記載の排ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−159036(P2006−159036A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351856(P2004−351856)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】