説明

排ガス処理装置及び排ガス処理方法

【課題】 触媒脱硝におけるコストを低減するとともに、硫酸腐食を防止しつつ排熱回収効率を高めることができる、排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】 燃焼炉1から排出された排ガスの熱を回収する排熱ボイラ3と、排熱ボイラ3による熱回収によって400〜700℃の温度域にある排ガスに尿素水を噴霧するための尿素水噴霧装置2Aと、排熱ボイラ3によって熱回収されるとともに尿素水を噴霧された低温排ガスから更に熱を回収する低温熱回収器4と、低温熱回収器4によって熱回収された排ガス中の塵を集塵する集塵設備6と、集塵設備6によって塵を除去された排ガスを触媒脱硝する触媒脱硝塔8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置及び排ガス処理方法に関し、詳しくは、都市ごみや産業廃棄物等を焼却する焼却炉、ガス化溶融炉に付設されるガス燃焼炉、発電や温水利用等に使用される燃焼ボイラの火炉等の燃焼炉から排出される排ガスを化学的に処理する排ガス処理装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばごみ焼却炉等の燃焼炉から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOX)を除去する方法として、無触媒脱硝法と触媒脱硝法とが知られている。
【0003】
無触媒脱硝法では、尿素を水に溶かした尿素水を燃焼炉の燃焼室内に噴霧することにより、窒素酸化物を分解する。尿素水を噴霧する燃焼室内の温度は、高温であるほど窒素酸化物の除去効率が高いとされる。そのため、尿素水は、750〜950℃の範囲の炉内領域に噴霧され、この場合、30%程度の窒素酸化物除去効率が期待できる。過剰な尿素水の噴霧は、塩化アンモニウムを発生させる原因となり、煙突から紫煙を発生させる。
【0004】
触媒脱硝法では、触媒表面上において、燃焼排ガス中の窒素酸化物をアンモニアの存在下で窒素ガスに分解する。触媒脱硝法では、95%程度の除去効率が期待できるが、触媒が非常に高価であることに加え、アンモニアを気化させて触媒脱硝塔の上流で吹き込む必要があるため、危険物であるアンモニアを貯留する貯留槽や、アンモニアを気化させるための設備などが必要となり、構成設備が複雑かつ高価なものになる。
【0005】
図3は、従来のごみ焼却施設を示す概略図である。ごみ焼却炉1には、炉内に尿素水を噴霧するための尿素水貯水槽2が付設されている。ごみ焼却炉1で発生する燃焼排ガスは、ボイラ3及び低温熱回収器4の一種であるエコノマイザ4aで排熱を回収された後、減温塔5、集塵装置の一種であるバグフィルタ6、再加熱器7、触媒脱硝設備を構成する触媒脱硝塔8、誘引通風器9を通じて煙突10から放出される。脱気器11は、ボイラ3への給水中に溶存している酸素、炭酸ガスを除去するものである。減温塔5は、バグフィルタ6の濾布材質の耐熱温度(250℃以下)まで排ガスの温度を下げる。バグフィルタ6の手前の煙道に、消石灰とともに特殊反応助剤を噴霧する乾式排ガス処理装置12が設置され、濾布の目詰まり防止とともに、HCl、SOxの中和促進が行われる。また、触媒脱硝塔8内にアンモニアガスを送るため、アンモニア気化装置13及びアンモニア貯留槽14が設置されている。なお、触媒脱硝塔8の触媒は、ダスト、硫黄酸化物(SOx)、アルカリ金属の堆積によって劣化するため、触媒脱硝塔8は、バグフィルタ6及び乾式排ガス処理装置の下流側に設置される。再加熱器7は、触媒反応の生じやすい温度に燃焼排ガスの温度を高める。
【0006】
触媒脱硝は上記したようにコスト高であるため、このコストを低減するため、尿素水を焼却炉内の上段に噴霧し、尿素の加水分解によりアンモニアを生成せしめ、生成したアンモニアの一部によりごみ焼却炉内で無触媒反応を起こさせ、ついで、ごみ焼却炉内の未反応アンモニアを用いて、ごみ焼却炉の下流側に接続された触媒脱硝塔内で触媒脱硝反応させることにより、触媒脱硝塔の入口におけるアンモニアの注入を不要にした排ガス脱硝方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−269634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アンモニアは、600℃付近から徐々に酸化分解してアンモニア由来の窒素酸化物を発生させ、この窒素酸化物は、800℃をピークとして1000℃程度まで発生することが報告されている(高橋康光、他6名「希薄燃焼法によるディーゼルエンジンの脱臭・分解装置としての適用」岐阜県保険環境研究所 所報 平成18年、第14号)。
【0008】
一般にごみ焼却炉等における炉内温度は800℃以上であるため、高温の炉内へ尿素水を噴霧した場合には、アンモニアが熱分解していまい、下流に設置された触媒脱硝塔での脱硝が不十分になることがある。
【0009】
また、燃焼排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物等の発生量は、ごみの性質や炉負荷等によって変動し、ごみ焼却炉内での未反応アンモニア濃度を制御できないため、触媒脱硝塔において安定した脱硝ができないことがある。
【0010】
さらに、都市ごみ焼却施設等の大型の施設では、排熱回収ボイラによって排熱を回収する場合が多いが、この種の排熱回収ボイラは、熱回収効率を高めるために、ボイラ出口における燃焼ガスの顕熱を利用してボイラに送る給水を予熱する低温熱回収器を備えることが多い。排熱回収ボイラの排熱回収効率を向上させるためには、給水温度を低くすることが考えられるが、いわゆる硫酸腐食(低温腐食)を考慮しなければならない。この硫酸腐食は、ごみ中の硫黄分が燃焼して生じる硫黄酸化物(SO)が排ガス中の水分と反応して硫酸となることによって発生する。ごみの燃焼によって生じる硫黄酸化物は大半がSOであるが、わずかにSOも含まれており、このSOが数ppm含まれているだけでも硫酸露点が120〜130℃となる。そのため、エコノマイザ等の低温熱回収器の給水管等が硫酸腐食の影響を受けないように、排熱回収ボイラへの給水温度は140℃以上に設定される。すなわち、排ガスに含まれるSO3が排ガス中の水分と反応して硫酸となってエコノマイザの給水管等を腐食させる低温腐食を防止するため、排熱回収ボイラへの給水温度は硫酸露点温度である140℃以下にすることができず、その結果、排熱回収効率を高めることができなかった。
【0011】
そこで本発明は、触媒脱硝におけるコストを低減するとともに安定した脱硝を行うことができる排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、硫酸腐食を防止しつつ排熱回収効率を高めることができる、排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る排ガス処理装置は、燃焼炉から排出された排ガスを冷却するガス冷却設備と、該ガス冷却設備によって400〜700℃の温度域にある排ガスに尿素水を噴霧するための尿素水噴霧装置と、尿素水を噴霧された排ガス中の塵を集塵する集塵設備と、該集塵設備によって塵を除去された排ガスを触媒脱硝する触媒脱硝設備と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る排ガス処理装置は、燃焼炉から排出された排ガスの熱を回収する排熱ボイラと、前記排熱ボイラによる熱回収によって400〜700℃の温度域にある排ガスに尿素水を噴霧するための尿素水噴霧装置と、前記排熱ボイラによって熱回収されるとともに尿素水を噴霧された低温排ガスから更に熱を回収する低温熱回収器と、を有することを特徴とする。この場合において、前記低温熱回収器によって熱回収された排ガス中の塵を集塵する集塵設備と、該集塵設備によって塵を除去された排ガスを触媒脱硝する触媒脱硝設備と、を更に有することが好ましい。
【0015】
さらに、尿素水噴霧装置の下流位置において排ガス中のアンモニアガス濃度を検出するための検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記尿素水噴霧装置による尿素水の噴霧量を制御する制御部と、を更に有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る排ガス処理方法は、燃焼炉から排出され窒素酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスによって排ガスを触媒脱硝することにより排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る排ガス処理方法は、燃焼炉から排出され硫黄酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスで排ガス中のSO3を中和させることにより、硫酸腐食を防止することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る排ガス処理方法は、燃焼炉から排出され窒素酸化物及び硫黄酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスで排ガス中のSO3を中和させることにより硫酸腐食を防止するとともに、SOと反応せずに残ったアンモニアガスによって排ガスを触媒脱硝することにより排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることを特徴とする。
【0019】
前記排ガス処理方法において、尿素水を噴霧された排ガス中のアンモニアガス濃度を検出し、該アンモニアガス濃度の検出結果に基づいて、尿素水の噴霧量を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ごみ焼却炉等の炉から排出された後に温度を400℃〜700℃に低下させた排ガス中に尿素水を吹き込むことによって、アンモニアガスを発生させる。アンモニアガスは、400℃〜600℃の範囲では殆ど熱分解しない。アンモニアガスは、600℃付近から徐々に熱分解し始めるが、600℃〜700℃の範囲で熱分解する割合は少ないので、高い生成率でアンモニアガスが得られる。従って、触媒脱硝反応において安定した触媒脱硝が可能となる。
【0021】
発生したアンモニアガスは、排ガス中に硫黄酸化物が含まれている場合には、250℃〜400℃の温度領域で排ガス中のSO3と反応して硫酸アンモニウムを生成させる。その結果、排熱ボイラ及び低温熱回収器を備える排ガス系統では、排ガス中のSO3が、エコノマイザ等の低温熱回収器に至るまでに大幅に除去され、排ガス中の硫酸露点温度を低下させることができる。排ガスは、ボイラによる熱回収および尿素水の蒸発によって、250℃〜400℃に温度が低下する。従って、この温度領域において前記した如く排ガス中のSO3が除去されて硫酸露点温度が下がるので、エコノマイザに導入されるボイラ給水等の低温熱回収器における温度を140℃より低く設定し、排熱回収能力を高めることができる。
【0022】
また、エコノマイザに導入されるボイラ給水等の低温熱回収器における温度を下げることにより、低温熱回収器を通過した排ガスの温度を低下させることができ、それによって、バグフィルタ等の集塵装置の保護を目的として設置されるガス減温塔を省略するかあるいは小型化することが可能となる。
【0023】
また、排ガス中のSOと未反応のアンモニアガスによって排ガスを触媒脱硝することにより、アンモニア気化装置及びアンモニア貯留槽を設置不要とすることができ、コスト削減が可能となる。
【0024】
さらに、尿素水噴霧により生じるアンモニアガスの濃度を検出して、尿素水の噴霧量を制御することで、触媒脱硝塔の触媒量に応じた所望濃度のアンモニアガスを安定供給することが可能となり、また、ゴミの性質や炉負荷等に応じてSOXの発生量が変動しても、SOを確実に除去できるとともに、過剰なアンモニアガスの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について、以下、図面を参照して説明する。なお、図3の従来装置を含め、全図及び全実施例において、同様の構成部分には同符号を付した。まず、本発明に係る排ガス処理装置の第1実施形態として、第1実施形態の排ガス処理装置を含むごみ焼却施設について、図1を参照して説明する。
【0026】
図1に示すごみ焼却施設は、燃焼炉の一種であるごみ焼却炉1、ボイラ3、低温熱回収器4、脱気器11、乾式排ガス処理装置12、集塵装置の一種であるバグフィルタ6、再加熱器7、触媒脱硝設備を構成する触媒脱硝塔8、誘引通風器9、煙突10などを備え、それらが直接もしくは煙道等を介して接続されている。低温熱回収器4は、ボイラ3から出る排ガスの熱量を回収する機器であり、エコノマイザ4a、脱気器用ヒータ4b、あるいは、空気加熱器(図示せず)等を含む。
【0027】
図示例のごみ焼却炉1は、ストーカー式のごみ焼却炉であり、炉内に燃焼室1aを備えている。燃焼室1aの上部に排ガス出口1bが設けられ、排ガスは、誘引通風器9の作用によって誘引され、図1の点線の矢印に沿って流れる。
【0028】
図1に示されたボイラ3は、ごみ焼却炉1と一体型であり、輻射伝熱部、ドラム3a、及び、ドラム3aに連通する水管3bで構成される接触伝熱部3B、等を備える水管式ボイラが例示されている。ごみ焼却炉1の排ガス出口1bから接触伝熱部3Bに至る煙道20は、図示しない蒸発管及びフィンによる水冷壁によって、公知の輻射伝熱部が形成されている。
【0029】
ごみ焼却炉1の内部(燃焼室1a)は800〜1000℃程度である。ゴミ焼却炉1から排出された排ガスは、ボイラ3内で熱を奪われ、ボイラ3の入り口付近で700℃程度であり、ボイラ3の出口付近では400℃程度となる。
【0030】
排ガスが400〜700℃の範囲となる領域に、尿素水を排ガス中に噴霧するための尿素水噴霧装置2Aが設置されている。尿素水噴霧装置2Aは、尿素水を貯留する尿素水貯留槽2aと、尿素水を図示しないポンプによって所定箇所へ導く導管2bと、導管2bの先端に取り付けられたスプレーノズル2cとを備えることができる。尿素水の噴霧部位は、排ガスが400〜700℃の範囲となる領域に、一カ所または複数箇所設けられる。
【0031】
400℃〜700℃の排ガスに噴霧された尿素水は、アンモニアガスを発生させる。アンモニアは、400℃〜600℃の範囲では殆ど熱分解しない。また、600℃付近から徐々に熱分解し始めて窒素酸化物を発生させ、800℃をピークとして1000℃程度まで窒素酸化物を発生させるが、600℃〜700℃の範囲ではアンモニアが熱分解する割合は非常に少なく700℃を超えたあたりから急激にアンモニアの熱分解が進行するため、600℃〜700℃の排ガスに尿素水を吹き込んだ場合にも高い生成率でアンモニアガスが得られる。なお、尿素水は、400℃〜600℃の排ガスに噴霧するようにしても良い。
【0032】
ボイラ3に熱を奪われ、尿素水の蒸発により気化熱を奪われた排ガスは、250〜400℃程度に冷却される。こうしてボイラ3を通過した排ガスは、低温熱回収器4に至るまでに、250〜400℃まで温度が低下する。そして、250〜400℃の温度範囲で排ガス中のSO3と、尿素水由来のアンモニアガスとが反応することにより硫酸アンモニウムが生成され、その結果、硫酸露点低下の原因となる排ガス中のSO3は減少する。
【0033】
ボイラ3の上流に尿素水を吹き込まない場合、低温熱回収器4の入口付近のSO3濃度は17ppm(乾燥状態)であったが、一定量の尿素水を吹き込んだ場合には、SO3濃度が2ppm(乾燥状態)となり、約90%のSO3を低減できることが実験的に確認されている。
【0034】
なお、排ガス中のSO濃度を100ppm、SO3の割合(SO3/(SO2+SO3))を3%、尿素水噴霧によるSO除去率を90%、排ガス中の水分含有率を15vol%とすると、硫酸露点温度は110℃となる。従って、エコノマイザ4aや脱気器用ヒータ4bの給水温度等、低温熱回収器4の熱媒温度を140℃より低くすることが可能となり、従来に比較して熱回収能力を向上させることが可能となる。
【0035】
さらに、エコノマイザ4aの出口付近の排ガス温度は、従来では220℃程度となるように設計されていたが、本発明においては、たとえば、ボイラ3の給水温度を120℃に制御し、エコノマイザ4aの伝熱面積を増やすことで排ガス温度を170℃に低下させることができる。その結果、バグフィルタ6の保護を目的としていた減温塔(図3の符合5を参照)を図示例の如く省略するか、或いは小型化することが可能となる。
【0036】
さらに、SO3と反応しなかった尿素水由来のアンモニアガスは、下流のバグフィルタ6を通過し、触媒脱硝塔8での脱硝反応に使用するためのアンモニアとして作用し得る。その結果、触媒脱硝塔8にアンモニアガスを供給するためのアンモニア気化設備(図3の符合13参照)やアンモニア貯槽(図3の符合14参照)等のアンモニア供給装置一式が、図示例の如く不要となるか、あるいは、小型化が可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について、図2を参照して説明する。図2は、第2実施形態の排ガス処理装置を含むごみ焼却施設を示す概略図である。
【0038】
第2実施形態は、排ガス中のアンモニアガス濃度を検出するための検出部21と、検出部21の検出結果に基づいて、尿素水噴霧装置2Aによる尿素水の噴霧量を制御する制御部22と、を備える点が上記第1実施形態と相違し、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0039】
検出部21は、図示例では、排ガス中のSOと反応前のアンモニア濃度が測定可能な位置であるボイラ3の出口位置21(a)と、SOと反応後の残存アンモニアガスのアンモニア濃度が測定可能な位置であるエコノマイザ4aの出口位置21(b)とに配置されている。
【0040】
ごみの燃焼によって発生するSOX等の量は、ごみの性質や炉負荷等に応じて変動するため、尿素水噴霧装置2Aから噴霧する尿素水の量によっては、排ガス中のSOと反応しなかったアンモニアガスが過度に発生する可能性がある。排ガス中のSOと反応しなかったアンモニアガスは、バグフィルタ6で補修される飛灰に含有され、刺激臭の発生原因となる。また、排ガス中にアンモニアが過度に含まれると煙突から紫煙を発生させる。
【0041】
ボイラ3の出口位置21(a)では尿素水噴霧により発生したアンモニアガスの濃度を検出し、エコノマイザ4aの出口位置21(b)では、SOとの中和反応により消費されて残存したアンモニアガスの濃度を検出する。これらの検出結果から、触媒脱硝塔8の触媒量に応じて必要なアンモニア濃度になるように演算し、尿素水の噴射量を制御することで、未反応アンモニアによる問題を解消し得る。
【0042】
アンモニアガス濃度の検出部21は、たとえば、半導体レーザー式アンモニア濃度計を採用することができ、制御部22は、たとえば、検出部21の検出値信号を受けて、予め記録された制御プログラムに従い、触媒脱硝塔8において必要なアンモニア濃度となるように尿素水噴霧量を演算し、電磁弁等の流量制御手段2dをPID制御等により開閉制御することにより、尿素水噴霧装置2Aの噴霧量を制御することで、紫煙の発生等を防止することができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。たとえば、上記実施形態において、ごみ焼却炉1は、ストーカー式であるが、これに限定されないし、ボイラ3の形式、配置等も図示例に限定されない。
【0044】
また、アンモニアガスの濃度計は、図示例の個数及び配置に限定されず、たとえば、位置21(b)に設けずに位置21(a)にのみ設けることもできるし、あるいは、脱気器用ヒータ4bの直後、触媒脱硝塔8の直前や直後に設けることもできる。
【0045】
さらに、上記実施形態ではごみ焼却設備に適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、窒素酸化物及び/又は硫黄酸化物を含む排ガスを処理する装置及び方法に広く適用可能であり、たとえば、ガス化溶融炉に付設されるガス燃焼炉、発電や温水利用等に使用される燃焼ボイラの火炉等の燃焼炉から排出される排ガスの処理に適用可能である。
【0046】
また、燃焼炉から排出された高温の排ガスを冷却する設備として、ボイラや低温熱回収器に代えて、他のガス冷却設備、たとえば、公知の水噴射式冷却設備を備えることもできる。ボイラや低温熱回収器を備えない場合、尿素水噴霧によるアンモニア濃度の制御は、ガス冷却設備の下流位置に配置した検出部によってアンモニア濃度を検出し、その検出値が予め定めた触媒脱硝塔の触媒量に応じたアンモニア濃度になるように、尿素水噴射量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る排ガス処理装置の第1実施形態を含むごみ焼却施設を示す概略図である。
【図2】本発明に係る排ガス処理装置の第2実施形態を含むごみ焼却施設を示す概略図である。
【図3】従来のごみ焼却施設を示す概略図である。
【符号の説明】
【0048】
1 燃焼炉(ごみ焼却炉)
2A 尿素水噴霧装置
3 ボイラ
4 低温熱回収器
6 集塵設備(バグフィルタ)
7 再加熱器
8 触媒脱硝塔
9 誘引通風器
10 煙突
11 脱気器
12 乾式排ガス処理装置
13 アンモニア気化装置
14 アンモニア貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉から排出された排ガスを冷却するガス冷却設備と、該ガス冷却設備によって400〜700℃の温度域にある排ガスに尿素水を噴霧するための尿素水噴霧装置と、尿素水を噴霧された排ガス中の塵を集塵する集塵設備と、該集塵設備によって塵を除去された排ガスを触媒脱硝する触媒脱硝設備と、を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
燃焼炉から排出された排ガスの熱を回収する排熱ボイラと、前記排熱ボイラによる熱回収によって400〜700℃の温度域にある排ガスに尿素水を噴霧するための尿素水噴霧装置と、前記排熱ボイラによって熱回収されるとともに尿素水を噴霧された低温排ガスから更に熱を回収する低温熱回収器と、を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
前記低温熱回収器によって熱回収された排ガス中の塵を集塵する集塵設備と、該集塵設備によって塵を除去された排ガスを触媒脱硝する触媒脱硝設備と、を更に有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記尿素水噴霧装置の下流位置において排ガス中のアンモニアガス濃度を検出するための検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記尿素水噴霧装置による尿素水の噴霧量を制御する制御部と、
を更に有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
燃焼炉から排出され窒素酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスによって排ガスを触媒脱硝することにより排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることを特徴とする、排ガス処理方法。
【請求項6】
燃焼炉から排出され硫黄酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスで排ガス中のSO3を中和させることにより、硫酸腐食を防止することを特徴とする、排ガス処理方法。
【請求項7】
燃焼炉から排出され窒素酸化物及び硫黄酸化物を含む排ガスを400℃〜700℃に冷却し、400〜700℃に冷却された排ガスに尿素水を噴霧してアンモニアガスを発生させ、発生したアンモニアガスで排ガス中のSO3を中和させることにより硫酸腐食を防止するとともに、SOと反応せずに残ったアンモニアガスによって排ガスを触媒脱硝することにより排ガス中の窒素酸化物濃度を低減させることを特徴とする、排ガス処理方法。
【請求項8】
尿素水を噴霧された排ガス中のアンモニアガス濃度を検出し、該アンモニアガス濃度の検出結果に基づいて、尿素水の噴霧量を制御することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−48456(P2010−48456A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212579(P2008−212579)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】