説明

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法

【課題】PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】出ガス側セル236の上流端28とを栓部231によって閉塞してなるハニカム構造体2を備える排ガス浄化フィルタ1及びその製造方法である。入りガス側セル235の壁面237には、酸化触媒を担持することなくPM燃焼触媒3が担持され、出ガス側セル236の壁面238には少なくとも酸化触媒4が担持されている。排ガス浄化フィルタ1の製造にあたっては、PM燃焼触媒担持工程と酸化触媒担持工程とを行なう。PM燃焼触媒担持工程においては、PM燃焼触媒分散液をハニカム構造体2の少なくとも壁面237に含浸させ、乾燥後に焼成する。酸化触媒担持工程においては、酸化触媒分散液を、ハニカム構造体2の壁面237に含浸させることなく、壁面238に含浸させ、乾燥後に焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレート(PM)等の有害物質が含まれる。そのため、排ガス管には、PMを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが装備されている。該排ガス浄化フィルタは、多数の細孔を有する多孔質のセル壁と、該セル壁により仕切られたセルとを有するハニカム構造体を有している。
【0003】
上記排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、排ガスを上記セル内に導入し、多孔質の上記セル壁を通過させて隣のセルへ移動させる。このとき、上記排ガス中のパティキュレートが上記セル壁に捕集され、上記排ガスが浄化される。また、上記セル壁にPM燃焼触媒を担持させておくことにより、捕集したパティキュレートを触媒反応により分解除去することができる。
【0004】
PM燃焼触媒としては、Pt等の貴金属が用いられていた。ところが、Pt触媒は、PMの自燃温度よりわずかに低い温度(570〜580℃)でしかPMを燃焼することができない。したがって、実際には、PMの自燃温度である600℃以上にまで排ガスを加熱してPMを燃焼させていた。その結果、排ガス温度を上昇させるために必要な燃料噴射量が増大し、燃費が悪化してしまう。また、Pt等の高価な貴金属を用いると排ガス浄化フィルタの製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
そこで、PM燃焼触媒としてAgを含有する排ガス浄化フィルタが開発されている(特許文献1及び2参照)。金属触媒成分としてAgを含有するPM燃焼触媒は、Ptを含有する触媒に比べて、PMの燃焼温度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−45584号公報
【特許文献2】特開2007−296518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、PMの燃焼時には有害なCOやHCが発生し、PM燃焼触媒自体はこれらを除去できない。特に、Ag/Al23系のPM燃焼触媒においては、COが発生し易くなる。
近年の排ガス規制に対する要求から、PMだけでなく、COを十分に浄化できる排ガス浄化フィルタが望まれている。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、内燃機関の排ガス通路に配設され、上記内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタにおいて、
外周壁と、該外周壁内に多角形格子状に配設された多孔質のセル壁と、該セル壁内に区画されてなる複数のセルとを有し、該セルのうち、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セルの下流端と、上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セルの上流端とを栓部によって閉塞してなるハニカム構造体を備え、
上記セル壁には、Agを含有するPM燃焼触媒と、上記排ガス中の少なくともCOを酸化させる酸化触媒とが担持されており、
上記入りガス側セルの壁面には、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持され、上記出ガス側セルの壁面には少なくとも上記酸化触媒が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタの製造方法において、
上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液を上記ハニカム構造体の少なくとも上記入りガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成するPM燃焼触媒担持工程と、
上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液を、上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に含浸させることなく、上記出ガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する酸化触媒担持工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて最も注目すべき点は、上記入りガス側セルの壁面には、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持され、上記出ガス側セルの壁面には少なくとも上記酸化触媒が担持されていることにある。
上記上流端と上記下流端に上記栓部が形成されたハニカム構造体を有する排ガス浄化フィルタにおいては、排ガスは上記上流端の開口部から上記入りガス側セル内に侵入し、多孔質の上記セル壁を通過して隣接する上記出ガス側セルから上記排ガス浄化フィルタ外へ排出される。そのため、パティキュレート(PM)の燃焼時には、上記排ガス浄化フィルタ内に導入される高温の排ガスが、上記入りガス側セルの壁面に担持された上記PM燃焼触媒を活性化してPMの燃焼を促進させ、上記セル壁を通過して上記出ガス側セル内に到達する。次いで、該出ガス側セルの壁面に担持された上記酸化触媒の作用により、排ガス中に含まれるCO等を酸化して浄化することができる。したがって、上記排ガス浄化フィルタにおいては、PM及びCOのいずれをも浄化することができる。
【0012】
上述のごとく、本発明の排ガス浄化フィルタにおいては、上記PM燃焼触媒は、上記セル内の排ガスの流れにおける上流側に担持され、上記酸化触媒は下流側に担持される。そのため、上流側の上記PM燃焼触媒によるPMの燃焼時に発生するCOを下流側の上記酸化触媒で浄化させることができ、排ガスをその流れに沿って機能的に浄化させることができる。また、上記排ガス浄化フィルタは、Agを含有するPM燃焼触媒を備えている。そのため、例えば550℃程度の低温でも十分にPMを燃焼除去することができる。
【0013】
また、上記排ガス浄化フィルタにおいて、上記酸化触媒は、上記出ガス側セルの壁面に担持させ、上記入りガス側セルの壁面には担持させない。そのため、上記酸化触媒として、例えばPt等の高価な貴金属を使用しても製造コストが増大することを防止することができる。即ち、上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記酸化触媒を上記ハニカム構造体の全体に担持させる必要がなく、その担持量を減らすことが可能になる。そして上記酸化触媒の担持量を減らしても、上記PM燃焼触媒と上記酸化触媒とを上記のごとく特定の配置関係で担持させるため、PM及びCOのいずれをも十分に浄化させることができる。
また、上記酸化触媒を担持しているため、COだけでなく排ガス中のHCを酸化により浄化することもできる。
【0014】
このように、第1の発明によれば、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0015】
次に、上記第2の発明においては、上記PM燃焼触媒担持工程と上記酸化触媒担持工程とを行なう。
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液を上記ハニカム構造体の少なくとも上記入りガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。これにより、上記ハニカム構造体に少なくとも上記PM燃焼触媒を担持させることができる。
【0016】
また、上記酸化触媒担持工程においては、上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液を、上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に含浸させることなく、上記出ガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。
これにより、上記入りガス側セルの上記セル壁には担持させることなく、上記出ガス側セルの上記セル壁に上記酸化触媒を担持させることができる。
このようにして、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、排ガス通路の途中に配置された排ガス浄化フィルタを示す説明図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの全体を示す説明図。
【図3】実施例1における、排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図4】実施例1における、PM燃焼触媒及び酸化触媒が担持されたセル壁を拡大して示す説明図。
【図5】実施例1における、ハニカム構造体をPM燃焼触媒分散液に浸漬した状態を示す説明図。
【図6】実施例1における、ハニカム構造体の下流端における開口部から酸化触媒分散液を導入する様子を示す説明図。
【図7】実施例1における、PM燃焼触媒担持量とPM燃焼速度との関係を示す説明図。
【図8】実施例1における、酸化触媒担持量と排ガス浄化フィルタを通って排出された排ガス中のCO濃度との関係を示す説明図。
【図9】入りガス側セルの断面形状と出ガス側セルの断面形状を非対称としたハニカム構造体を一方の端面側を観察した様子を示す説明図(a)及びもう一方の端面側から観察した様子を示す説明図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記排ガス浄化フィルタの上記ハニカム構造体においては、上記のごとく、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セルの下流端と、上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セルの上流端とが栓部によって閉塞されている。上記ハニカム構造体の上記セルの伸長方向における両端面においては、栓部と、該栓部が形成されていない開口部とを交互に形成することができる。そして、上記ハニカム構造体の上記両端面のうち、上記排ガス浄化フィルタを排ガス流路に配置したときに上記内燃機関に近い側に配置される端面を上流端とし、上記内燃機関から遠い側に配置される端面を下流端とすると、上記セルには、上記上流端に開口するセルと、上記下流端に開口するセルとが存在する。
上記上流端に開口するセルが上記入りガス側セルで、上記下流端に開口するセルが上記出ガス側セルである。
【0019】
上記排ガス浄化フィルタにおいて、上記入りガス側セルは、その壁面に上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒を担持する。一方、上記出ガス側セルは、その壁面に少なくとも上記酸化触媒を担持し、上記PM燃焼触媒を担持していてもしていなくてもよい。
【0020】
上記PM燃焼触媒は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料からなることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ハニカム構造体への上記PM燃焼触媒の担持量を減らすことができるため、圧損を小さくすることができる。一方、この場合には、PM燃焼時におけるCOの発生量が増大し易い。しかし、本発明の排ガス浄化フィルタは、上記出ガス側セルのセル壁に上記酸化触媒を担持しているため、例えCOが発生してもこれを十分に浄化することができる。したがって、上記のごとく上記PM燃焼触媒として層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料を用いた場合には、PMだけでなくCOを浄化できるという本発明の作用効果がより一層顕著になる。
【0021】
上記PM燃焼触媒の担持量は10〜50g/Lであることが好ましい(請求項3)。
上記PM燃焼触媒の担持量が10g/L未満の場合には、PMに対する燃焼促進効果が小さくなるおそれがある。一方、50g/Lを超える場合には、圧損が大きくなるおそれがある。
より好ましくは、上記PM燃焼触媒の担持量は15g/L以上がよく、30g/L以下がよい。例えば上記PM燃焼触媒として層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料を用いると、上記PM燃焼触媒の担持量を例えば30g/L以下にしても十分にPMを燃焼させることが可能になり、圧損も小さくできる。
【0022】
上記酸化触媒としては、COに対して酸化作用を有する物質を用いることができる。
COに対する酸化作用は、例えば次のようにして調べることができる。
即ち、まず、酸化触媒の候補となる物質をガス管中に配置する。そして、例えば温度550℃の条件下でガス管の上流からCOを流し、下流から出てくるガスを90%以上CO2に酸化できる物質を酸化触媒として採用することができる。
かかる酸化触媒としては、例えば貴金属触媒、貴金属以外の金属触媒、酸化物触媒、炭化物触媒、窒化物触媒等の公知の酸化触媒を用いることができる。
【0023】
具体的には、貴金属触媒としては、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上がある。
また、貴金属以外の金属触媒としては、例えばCo、Ni、Re、Ag、W、及びMoから選ばれる1種以上がある。
【0024】
また、酸化物触媒としては、単一酸化物、ペロブスカイト構造又はスピネル構造の金属複合酸化物等を用いることができる。より具体的には、単一酸化物としては、例えばCo、W、Mo、Mn、Fe、Cr、Cu、Zn、V、Re、Sb、又はBiの酸化物を採用することができる。また、金属複合酸化物としては、希土類金属及び/又はアルカリ土類金属等と遷移金属との複合酸化物を採用することができる。
炭化物触媒としては、例えばMo2C、WC、TiC、ZrC、HfC、VC、NbC、及びTaCから選ばれる1種以上がある。
【0025】
好ましくは、上記酸化触媒は、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上からなることがよい(請求項4)。
この場合には、Pt、Pd、及びRhが有する優れた酸化特性を生かして、上記排ガス浄化フィルタにおけるCOに対する浄化特性をより向上させることができる。また、この場合には、上記酸化触媒は、HCに対しても優れた浄化性能を発揮することができる。
【0026】
上記酸化触媒として貴金属を用いた場合には、上記PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、上記酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、0.01≦QB/QA≦0.1であることが好ましい(請求項5)。
B/QA>0.1の場合には、貴金属等の高価な酸化触媒を用いたときに、製造コストが増大してしまうおそれがある。一方、0.01未満の場合には、COに対する浄化効果が小さくなるおそれがある。同様の観点から酸化触媒の担持量は0.1〜1g/Lが好ましい。また、酸化触媒として、貴金属以外の金属触媒を用いた場合においても、0.01≦QB/QA≦0.1であることが好ましい。
また、酸化物触媒として、酸化物、又は炭化物を用いた場合には、貴金属の場合と同様の理由から、0.1≦QB/QA≦10であることが好ましい。
【0027】
上記ハニカム構造体としては、コーディエライト、SiC、チタン酸アルミ、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のいずれかからなるものを採用することができる(請求項6)。
なお、上記ハニカム構造体の形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば円筒形状等とすることができる。また、上記セルの断面形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば三角形、四角形、六角形等とすることができる。
【0028】
また、上記ハニカム構造体においては、全てのセルの断面形状を同じ形状にすることもできるが、1つのハニカム構造体内でセルの断面形状を変更することもできる。例えば、図2には、全てのセル230の断面形状を同じ形状(四角形)としたハニカム構造体2の例を示し、図9(a)及び(b)には、ハニカム構造体内部のセル630の断面形状を異なる形状(六角形と三角形)としたハニカム構造体5の例を示す。
【0029】
図2及び図3に示すハニカム構造体2においては、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セル235の断面形状と、セル壁22を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セル236の断面形状は同じ形状(四角形状)となり、ハニカム構造体2の一方の端面(上流端)28に開口するセルの断面形状と、他方の端面(下流端)29に開口するセル230の断面形状は互いに対称となっている。
また、図9(a)及び(b)に示すハニカム構造体5においては、入りガス側セル630aの断面形状が六角形で、出ガス側セル630bの断面形状が三角形であり、ハニカム構造体5の一方の端面(上流端)68に開口するセル630(630a)の断面形状と、他方の端面(下流端)69に開口するセル630(630b)の断面形状は互いに非対称である。
このように、本発明においては、上記ハニカム構造体としては、全てのセルの断面形状を同じ形状のものを採用することができるが、セルの断面形状が異なるものを採用することもできる。
【0030】
上記排ガス浄化フィルタは、上記PM燃焼触媒担持工程と上記酸化触媒担持工程とを行なうことにより製造することができる。
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上述のごとく、上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液を上記ハニカム構造体の少なくとも上記入りガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。
上記PM燃焼触媒分散液は、PM燃焼触媒やハニカム構造体と化学反応等を起こさない水などの溶媒に、上記PM燃焼触媒を分散させて作製することができる。
【0031】
上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体全体を上記PM燃焼触媒分散液に浸漬することが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記PM燃焼触媒担持工程を簡単に行なうことができると共に、上記入りガス側セルと上記出ガス側セルとの両方の壁面に上記PM燃焼触媒を担持させることができる。そのため、PMに対する浄化効果をより向上させることができる。
【0032】
また、上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記上流端における上記入りガス側セルの開口部から上記PM燃焼触媒分散液を導入して上記壁面に含浸させることができる(請求項9)。
この場合には、上記PM燃焼触媒を、上記出ガス側セルの壁面に担持させることなく、上記入りガス側セルの壁面への担持を容易に行なうことが可能になる。そのため、上記PM燃焼触媒の担持量を抑制し、製造コストを低減することができる。
【0033】
上記のごとく、上記PM燃焼触媒を上記出ガス側セルの壁面に担持させることなく、上記入りガス側セルの壁面に担持させる場合には、上記PM燃焼触媒担持工程は次のようにして行なうことができる。
まず、上記上流端における上記入りガス側セルの開口部から上記PM燃焼触媒分散液を導入して上記入りガス側セルの壁面に上記PM燃焼触媒分散液を含浸させる。次いで、上記上流端の開口部から上記PM燃焼触媒分散液を排出し、上記下流端の上記出ガス側セルの上記開口部から空気等の気体を導入し、上記セル壁内に侵入した上記PM燃焼触媒分散液を吹き飛ばす。その後、乾燥して焼成することにより、上述のごとく、上記PM燃焼触媒を上記出ガス側セルの壁面に担持させることなく、上記入りガス側セルの壁面に担持させることができる。乾燥は例えば温度100〜200℃、焼成は、例えば温度800〜1000℃で行なうことができる。
【0034】
次に、上記酸化触媒担持工程においては、上述のごとく、上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液を、上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に含浸させることなく、上記出ガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。
上記酸化触媒分散液は、酸化触媒やハニカム構造体と化学反応等を起こさない水などの溶媒に、上記酸化触媒を分散させて作製することができる。
【0035】
上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記下流端における上記出ガス側セルの開口部から上記酸化触媒分散液を導入することが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記酸化触媒を上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に担持させることなく、上記出ガス側セルの壁面に担持させることを容易に行なうことができる。
【0036】
上記下流端における上記出ガス側セルの上記開口部から上記酸化触媒分散液を導入後、上記下流端の上記開口部から上記酸化触媒分散液を排出し、上記上流端における上記入りガス側セルの上記開口部から気体を導入し、上記セル壁内に侵入した上記酸化触媒分散液を吹き飛ばすことが好ましい(請求項11)。
この場合には、より確実に、上記酸化触媒を上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に担持させることなく、上記出ガス側セルの壁面に担持させることができる。
上記上流端から導入する気体としては、例えば空気等の不活性ガスを用いることができる。
【0037】
上記酸化触媒担持工程においては、バインダを含有する上記酸化触媒分散液を採用することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記酸化触媒分散液の粘度を高め、上記ハニカム構造体のセル壁への含浸時に、上記酸化触媒分散液が多孔質の上記セル壁を通り抜けて上記出ガス側セルの壁面から上記入りガス側セルの壁面へ移動する速度を低下させることができる。その結果、上記酸化触媒を上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に担持させることなく、上記出ガス側セルの壁面に担持させることをより容易に実施することができる。
【0038】
上記酸化触媒担持工程においては、粘度200〜700mPa・sの上記酸化触媒分散液を用いることが好ましい(請求項13)。
上記酸化触媒分散液の粘度が200mPa・s未満の場合には、上記酸化触媒を上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に担持させることなく、上記出ガス側セルの壁面に担持させる操作が困難になるおそれがある。一方、粘度が700mPa・sを超える場合には、上記酸化触媒がハニカム構造体のセルの壁面に大きな厚みで保持され、排ガスの通路となるセルを塞いで圧損を増加させてしまうおそれがある。より好ましくは、上記酸化触媒分散液の粘度は300〜500mPa・sがよい。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタについて、図1〜図8を用いて説明する。
図1に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、ディーゼルエンジン等の内燃機関8から排出される排ガスが通る排ガス通路(排ガス管)80に配設され、排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なうために用いられる。同図において、排ガス浄化フィルタ1は、排ガス管80の直径を拡大した筒状の捕集器85内に収容されている。
【0040】
図2及び図3に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、外周壁21と、該外周壁21内に四角形格子状に配設された多孔質のセル壁22と、該セル壁22内に区画されてなる多数のセル23とを有するハニカム構造体2を備える。本例において、ハニカム構造体2は、コーディエライトからなり、その全体形状は、直径160mm、高さ(長さ)100mmの円柱状である。
【0041】
各セル23は、ハニカム構造体2の両端面28、29のうちいずれか一方の端面28(29)に開口する開口部230を有し、もう一方の端面29(28)には、開口部に栓部231が形成されている。即ち、セル23のうち、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セル235の下流端29と、セル壁22を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セル236の上流端28とを栓部231によって閉塞してなる。ハニカム構造体2の端面28、29においては、栓部231と、栓部を設けていない開口部230とが交互に配置される。
【0042】
図4に示すごとく、セル壁22には、Agを含有するPM燃焼触媒3と、排ガス中のCOを酸化させる酸化触媒4とが担持されている。排ガス浄化フィルタ1を排ガス流路80に配置したときに、ハニカム構造体2のセル23の伸長方向における両端面28、29のうち、内燃機関8に近い側の端面を上流端28とし、内燃機関8から遠い側の端面を下流端29とすると(図1参照)、上流端28に開口するセル23(入りガス側セル235)の壁面237には、酸化触媒を担持することなくPM燃焼触媒3が担持され、下流端29に開口するセル23(出ガス側セル236)の壁面238には少なくとも酸化触媒4が担持されている。
本例においては、下流端29に開口するセル、即ち出ガス側セル236には、その壁面238に、PM燃焼触媒3と酸化触媒4との両方が担持されており、酸化触媒4は、PM燃焼触媒3上に担持されている。
【0043】
また、本例において、PM燃焼触媒3は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料(Ag/Al23触媒)からなる。
また、酸化触媒4はPtからなる。
ハニカム構造体2には、PM燃焼触媒3が7g/L担持されており、酸化触媒4が0.2g/L担持されている。
【0044】
本例の排ガス浄化フィルタ1は、PM燃焼触媒担持工程と酸化触媒担持工程とを行なって製造することができる。
PM燃焼触媒担持工程においては、PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液をハニカム構造体の少なくとも入りガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。本例においては、図5に示すごとく、ハニカム構造体2の全体をPM燃焼触媒分散液30に浸漬する。これにより、入りガス側セル235の壁面237だけでなく、出ガス側セル236の壁面238にもPM燃焼触媒3を担持することができる(図4参照)。
【0045】
また、酸化触媒担持工程においては、図6に示すごとく、酸化触媒を分散した酸化触媒分散液40を、ハニカム構造体2の入りガス側セル235の壁面に含浸させることなく、出ガス側セル236の壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する。
【0046】
以下、本例の排ガス浄化フィルタの製造方法について、詳細に説明する。
まず、以下のようにして、PM燃焼触媒分散液を作製した。
即ち、出発原料としてのθアルミナ(Al23)と酸化銀I(Ag2O)、及び添加剤としての酢酸を水に混合した。混合は、θアルミナの濃度が0.1mol/L、酸化銀の濃度が0.1mol/L、酢酸の濃度が0.4mol/Lとなるように行なった。混合液を圧力容器中に入れ、温度175℃、大気圧条件で24時間反応させた。これにより、アルミナに対するAgのモル比率が50%のPM燃焼触媒を得た。このPM燃焼触媒を水に分散させて、PM燃焼触媒分散液を得た。
【0047】
次に、端面28、29の開口部230に栓部231を設け、隣接する開口部230を交互に閉塞させたコーディエライトからなるハニカム構造体2(図2参照)を準備した。ハニカム構造体2としては、気孔率50%、平均気孔径12μmのものを採用した。そして、ハニカム構造体2の全体を、図5に示すごとく、PM燃焼触媒分散液30中に完全に浸漬させた。その後、エアーでハニカム構造体2に付着する過剰のPM燃焼触媒分散液を吹き飛ばした。
【0048】
次いで、ハニカム構造体2を大気雰囲気にて温度150℃で3時間乾燥させ、温度1000℃で3時間焼成した。これにより、ハニカム構造体2に、PM燃焼触媒3を7g/L担持させた(図4参照)。
【0049】
次に、Pt粒子を水に分散させてなる酸化触媒分散液を準備した。酸化触媒分散液中のPt濃度は0.01mol/Lである。また、酸化触媒分散液に有機バインダとしてメチルセルロースを混合し、酸化触媒分散液の粘度を400mPa・sに調整した。メチルセルロースの濃度は1wt%である。
そして、図6に示すごとく、ハニカム構造体2の下流端29における出ガス側セル236の開口部230から酸化触媒分散液40を出ガス側セル236内に導入し、その壁面238の全面が酸化触媒分散液40に浸され後直ちに、下流端29の開口部230から酸化触媒分散液40を排出した。次いで、上流端28における入りガス側セル235の開口部から空気を導入し、セル壁22内に侵入した過剰の酸化触媒分散液を吹き飛ばした。
【0050】
次に、ハニカム構造体2を大気雰囲気にて温度150℃で3時間乾燥させ、温度600℃で3時間焼成した。これにより、ハニカム構造体2の出ガス側セル236の壁面238に、Ptからなる酸化触媒4を0.2g/L担持させた(図4参照)。
このようにして、図2〜図4に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1を得た。これを試料S1とする。
【0051】
また、本例においては、上記試料S1とはPM燃焼触媒の担持量が異なるさらに5種類の排ガス浄化フィルタ(試料S2〜試料S6)を作製した。
PM燃焼触媒の担持量は、PM燃焼触媒分散液中のPM燃焼触媒の濃度又は担持回数を変更することにより調整することができる。
【0052】
試料S1は、上述のごとく、PM燃焼触媒の担持量が7g/Lの排ガス浄化フィルタである。PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、試料S1においては、QB/QA=約0.029である。
試料S2は、PM燃焼触媒の担持量を15g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S2においてはQB/QA=約0.013である。
【0053】
試料S3は、PM燃焼触媒の担持量を30g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S3においてはQB/QA=約0.0067である。
試料S4は、PM燃焼触媒の担持量を45g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S4においてはQB/QA=約0.0044である。
【0054】
試料S5は、PM燃焼触媒の担持量を90g/Lに変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。試料S5においてはQB/QA=約0.0022である。
試料S6は、PM燃焼触媒担持工程を行なわずに、酸化触媒担持工程だけを行なって作製したものであり、PM燃焼触媒の担持量0g/Lの排ガス浄化フィルタである。
【0055】
次に、試料S1〜試料S6の排ガス浄化フィルタについて、PM燃焼速度を以下のようにして測定した。
まず、直径160mm、長さ100mm、セル密度300cpsi、壁厚12milのハニカム構造体に上述のごとくPM燃焼触媒及び酸化触媒を担持させた排ガス浄化フィルタ(試料S1〜試料S6)の重量を測定した。次に、エンジンベンチにて所定量のPM(パティキュレート)をディーゼルエンジンを用いて、吸気量20g/s、回転数1800rpm、排ガス浄化フィルタ温度300℃、スモーク値15%の条件で90分間作動させ、重量測定を行いPMを各試料に8g/L堆積させた。再び各試料の排ガス浄化フィルタをエンジンにセットし、吸気量30g/s、回転数2400rpm、排ガス浄化フィルタ温度550℃、スモーク値5%の条件で25分間作動させ、各試料が担持するPMを燃焼させた。その後、各試料の重量を測定した。重量の測定結果からPM燃焼量を求め、以下に示す式によってPM燃焼速度を求めた。
PM燃焼速度(g/L・min)=PM燃焼量(g/L)/PM燃焼時間(min)
その結果を図7に示す。図7においては、横軸はPM燃焼触媒の担持量(g/L)を示し、縦軸は温度550℃におけるPM燃焼速度(g/L・min)を示す。
【0056】
図7より知られるごとく、Agを含有するPM燃焼触媒を担持した試料S1〜試料S5は、いずれも温度550℃という低温でPMに対する燃焼促進効果を示すことがわかる。また、同図より知られるごとく、30g/Lを超えて担持させてもPMに対する燃焼促進効果はもはやほとんど向上しないため、PM燃焼触媒の担持量は30g/L以下が好ましいことがわかる。また、十分な燃焼促進効果を得るためには、PM燃焼触媒の担持量は10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましいことがわかる。
【0057】
また、本例においては、上記試料S1とは酸化触媒の担持量を変更した5種類の排ガス浄化フィルタ(試料S7〜試料S11)を作製した。
酸化触媒の担持量は、酸化触媒担持工程において、酸化触媒分散液中の酸化触媒の濃度又は担持回数を変更することにより調整することができる。試料S7〜試料S11におけるPM燃焼触媒の担持量は、試料S1と同様に7g/Lである。
【0058】
試料S1は、上述のごとく、酸化触媒の担持量0.2g/Lの排ガス浄化フィルタである。試料S1においては上述のごとくQB/QA=約0.029である。
試料S7は、酸化触媒の担持量0.5g/Lの排ガス浄化フィルタである。試料S7においてはQB/QA=約0.071である。
【0059】
試料S8は、酸化触媒の担持量1g/Lの排ガス浄化フィルタである。試料S8においてはQB/QA=約0.14である。
試料S9は、酸化触媒の担持量3g/Lの排ガス浄化フィルタである。試料S9においてはQB/QA=約0.43である。
【0060】
試料S10は、酸化触媒の担持量5g/Lの排ガス浄化フィルタである。試料S10においてはQB/QA=約0.71である。
また、試料S11は、ハニカム構造体全体を酸化触媒分散液に浸漬させずに作製した排ガス浄化フィルタであり、酸化触媒の担持量は0g/Lである。
これらの試料S7〜S11は、酸化触媒の担持量を上記のごとく変更した点を除いては上記試料S1と同様にして作製した排ガス浄化フィルタである。
【0061】
次に、図1〜図3に示すごとく、排ガスの流れ方向100において、上流端28が上流側に、下流端29になるように試料S1及び試料S7〜試料S11の排ガス浄化フィルタ1を排ガス管80内に配置し、排ガス浄化フィルタ1を通過した後の排ガス中に含まれるCO濃度を以下のようにして測定した。
具体的には、上述のPM燃焼速度測定法と同様にエンジンベンチでの評価を行った。エンジンベンチ付属の分析計にて、排ガス浄化フィルタ(試料S1及び試料S7〜試料S11)の後流側のCO濃度を測定した。
その結果を図8に示す。同図において、横軸は酸化触媒の担持量(g/L)を示し、縦軸は温度550℃の条件下で各排ガス浄化フィルタ(試料S1、試料S7〜試料S11)を通過した排ガス中に含まれるCO濃度(ppm)を示す。
【0062】
図8より知られるごとく、出ガス側セルの壁面に酸化触媒が担持された試料S1、及び試料S7〜試料S10の排ガス浄化フィルタは、COを十分に浄化できることがわかる。これに対し、酸化触媒を担持していない試料S11は、COを浄化できず、下流から150ppmを超えるCOが検出された。
また、担持量1g/L以上酸化触媒を担持させても、高価な酸化触媒の担持量に見合ったCO浄化の向上効果がほとんど得られない。したがって、出ガス側セルの壁面への酸化触媒の担持量は、1g/L以下が好ましいことがわかる。また、図8より知られるごとく、酸化触媒の担持量は0.1g/L以上が好ましく、0.15g/L以上がより好ましく、0.2g/以上がさらにより好ましい。
【0063】
図2〜図4に示すごとく、本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタ1(試料S1〜試料S5及び試料S7〜試料S10)においては、上流端28に開口する入りガス側セル235の壁面237は、酸化触媒を担持することなくPM燃焼触媒3を担持し、下流端29に開口する出ガス側セル236の壁面238は少なくとも酸化触媒4を担持する。
【0064】
端面28、29において開口部に設けた栓部231と、栓部を設けていないセルの開口部230とが交互に配置されたハニカム構造体2を有する排ガス浄化フィルタ1においては、排ガス100は上流端28の開口部230から入りガス側セル235内に侵入し、多孔質のセル壁22を通過して隣接する出ガス側セル236の下流端29の開口部230から排ガス浄化フィルタ1外へ排出される(図3参照)。
そのため、図3及び図4に示すごとく、パティキュレート(PM)の燃焼時には、排ガス浄化フィルタ1内に導入される高温の排ガス100が、入りガス側セル235の壁面237に担持されたPM燃焼触媒3を活性化してPMの燃焼を促進させ、セル壁22を通過して出ガス側セル236内に到達する。次いで、このセル236の壁面238に担持された酸化触媒4の作用により、排ガス中に含まれるCO等を酸化して浄化することができる。したがって、排ガス浄化フィルタ1においては、PM及びCOのいずれをも浄化することができる。
【0065】
上述のごとく、排ガス浄化フィルタ1においては、PM燃焼触媒3は、セル23内の排ガス100の流れにおける上流側に担持され、酸化触媒4は下流側に担持される。そのため、上流側のPM燃焼触媒3によるPMの燃焼時に発生するCOを下流側の酸化触媒4で浄化させることができ、排ガス100をその流れに沿って機能的に浄化することができる。また、排ガス浄化フィルタ1は、Agを含有するPM燃焼触媒を備えている。そのため、550℃程度の低温でも十分にPMを燃焼除去することができる。
【0066】
また、排ガス浄化フィルタ1において、酸化触媒4は、下流端29に開口部230を有する出ガス側セル236の壁面238に担持させるが、上流端28に開口部230を有する入りガス側セル235の壁面237には担持させない。そのため、酸化触媒4として、本例のようにPt等の高価な貴金属を使用しても、排ガス浄化フィルタ1の製造コストが増大することを防止することができる。即ち、排ガス浄化フィルタ1においては、酸化触媒4をハニカム構造体2の全体に担持させる必要がなく、その担持量を減らすことが可能になる。そして酸化触媒4の担持量を減らしても、PM燃焼触媒3と酸化触媒3とを上記のごとく特定の配置関係で担持させるため、PM及びCOのいずれをも十分に浄化させることができる。
また、本例の排ガス浄化フィルタ1は、酸化触媒4を担持しているため、COだけでなく排ガス中のHCを酸化により浄化することもできる。
【0067】
以上のように、本例によれば、PM及びCOを浄化でき、低コストで製造できる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 排ガス浄化フィルタ
2 ハニカム構造体
21 外周壁
22 セル壁
23 セル
28 上流端
29 下流端
3 PM燃焼触媒
4 酸化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス通路に配設され、上記内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタにおいて、
外周壁と、該外周壁内に多角形格子状に配設された多孔質のセル壁と、該セル壁内に区画されてなる複数のセルとを有し、該セルのうち、排ガスを流入させる流入側通路となる入りガス側セルの下流端と、上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる出ガス側セルの上流端とを栓部によって閉塞してなるハニカム構造体を備え、
上記セル壁には、Agを含有するPM燃焼触媒と、上記排ガス中の少なくともCOを酸化させる酸化触媒とが担持されており、
上記入りガス側セルの壁面には、上記酸化触媒を担持することなく上記PM燃焼触媒が担持され、上記出ガス側セルの壁面には少なくとも上記酸化触媒が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒は、層状アルミナにAgを分散してなる触媒材料からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒の担持量は10g/L〜50g/Lであることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記酸化触媒は、Pt、Pd、及びRhから選ばれる1種以上からなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項4に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記PM燃焼触媒の担持量をQAg/Lとし、上記酸化触媒の担持量をQBg/Lとすると、0.01≦QB/QA≦0.1であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記ハニカム構造体は、コーディエライト、SiC、チタン酸アルミ、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のいずれかからなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、
上記PM燃焼触媒を分散したPM燃焼触媒分散液を上記ハニカム構造体の少なくとも上記入りガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成するPM燃焼触媒担持工程と、
上記酸化触媒を分散した酸化触媒分散液を、上記ハニカム構造体の上記入りガス側セルの壁面に含浸させることなく、上記出ガス側セルの壁面に含浸させ、乾燥後に焼成する酸化触媒担持工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法において、上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体全体を上記PM燃焼触媒分散液に浸漬することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の製造方法において、上記PM燃焼触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記上流端における上記入りガス側セルの開口部から上記PM燃焼触媒分散液を導入して上記壁面に含浸させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法において、上記酸化触媒担持工程においては、上記ハニカム構造体の上記下流端における上記出ガス側セルの開口部から上記酸化触媒分散液を導入することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法において、上記下流端における上記出ガス側セルの上記開口部から上記酸化触媒分散液を導入後、上記下流端の上記開口部から上記酸化触媒分散液を排出し、上記上流端における上記入りガス側セルの上記開口部から気体を導入し、上記セル壁内に侵入した上記酸化触媒分散液を吹き飛ばすことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法において、上記酸化触媒担持工程においては、バインダを含有する上記酸化触媒分散液を採用することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載の製造方法において、上記酸化触媒担持工程においては、粘度200〜700mPa・sの上記酸化触媒分散液を用いることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−218295(P2011−218295A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90304(P2010−90304)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】