説明

排出オーガ操作装置の配置構造

【課題】従来、グレンタンクから穀粒を取り出す排出オーガを、収納位置から排出位置に移動させるための手動操作レバー等の操作装置は、運転席の後側に配置されており、排出オーガの操作レバーがどこにあるか判らないことがあった。そこで、初心者でも排出オーガの操作レバーを容易に認識できるようにしようとする。
【解決手段】 運転席21側部にアームレスト38を備えるコンバイン1であって、グレンタンク13内の穀粒を外部に取り出す排出オーガ18を操作する手段39を、アームレスト38に回動自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈り取って脱穀するコンバインの、排出オーガの操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グレンタンクから穀粒を取り出す排出オーガを、収納位置から排出位置に移動させるための手動操作レバー等の操作装置は、運転席の後側に配置されていた(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2000−166371号公報
【特許文献2】実開昭60−125843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような構成において、運転席に着席した操縦者は、排出オーガの操作を行なう場合において、排出オーガの操作レバーがどこにあるか判らないことがある。つまり、コンバインを使い慣れていない作業者や初めてグレンタンク仕様のコンバインに買替えて作業する場合に、フロントコラム上やサイドコラム上に排出オーガの操作レバーがないために、どこにあるか探し回ることがあり、判らないときには、取扱説明書を開いたり、販売店に問い合わせたりしなければならなかった。
そこで、初心者でも排出オーガの操作レバーを容易に認識できるようにしようとする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、運転席側部にアームレストを備えるコンバインであって、グレンタンク内の穀粒を外部に取り出す排出オーガを操作する手段を、アームレストに回動自在に設けたものである。
【0006】
請求項2においては、運転席側部にアームレストを備えるコンバインであって、グレンタンク内の穀粒を外部に取り出す排出オーガを操作する手段をアームレストまたはアームレスト近傍に設け、該操作手段にカバー設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、排出オーガ操作手段が、運転席の操縦者の手元に位置することとなるため、操縦者は立ち上がって操作することもでき、運転席に着席したままでも、容易に排出オーガの操作を行なうことができる。また、前記排出オーガ操作手段は、アームレストに回動自在に設けられているので、例えば、下向きになるように排出オーガ操作手段を回動させることで、排出オーガ操作手段を収納状態とすることができる。すなわち、コンバイン走行時などの排出オーガ不使用時において、排出オーガ操作手段を収納状態として、排出オーガ操作手段に誤って肘等が当たることで、誤作動してしまうことを防止することができる。また、操作手段のレバー等の不要な突起物がなくなるため、藁、塵などのひっかかりがなくなる。そして、排出オーガ操作手段は、容易な構成で収納可能に取り付けられることとなる。
【0009】
請求項2においては、排出オーガ操作手段がカバーにより覆われるので、コンバイン走行時などの排出オーガ不使用時においては、肘等が当たって、誤って作動してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図である。図3は排出オーガの昇降旋回部の説明図、図4は排出オーガの操作装置の平面図、図5は同じく側面図、図6は握り部にスイッチを設けたクロスレバーを示す図、図7は制御装置の機能ブロック図、図8はサイドパネルに操作装置を配置した平面図、図9は同じく側断面図である。
【実施例1】
【0011】
まず、コンバイン1の全体構成について、図1乃至図3を用いて説明する。本発明に係るコンバイン1において、クローラ式走行装置4L・4R上には機体フレーム2が載置され、この機体フレーム2の前端には刈取部29が昇降可能に配設されている。この刈取部29の前端からは穀稈を分草するための分草板24が突出しており、この分草板24の後部には引起しケース65(引起し装置)が立設されている。そして、引起しケース65からはタイン6が突出しており、このタイン6の回転により穀稈を引き起し、前記分草板24後部に配設される刈刃7により穀稈の株元を刈り取る構成となっている。刈り取られた穀稈は、下部搬送装置8a、上部搬送装置8b、縦搬送装置8cにより後方へ搬送され、株元が縦搬送装置8cの上端からフィードチェーン9に受け継がれて脱穀部28内に搬送される。フィードチェーン9の後端には排藁チェーン10が配設されており、この排藁チェーン10の後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベア等からなる排藁処理部11が形成されている。この排藁処理部11により、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出、あるいは切断せずに放出するようにしている。
【0012】
前記脱穀部28の下方には選別部が配設されており、この選別部によって脱穀部28から流下する穀粒や藁屑などから穀粒を選別し、選別後の穀粒を脱穀部28の側方に配設されるグレンタンク13に搬送して貯溜したり、藁屑などを機外に排出したりするようにしている。このグレンタンク13後方には穀粒排出装置15が構成されて縦排出オーガ17が立設されている。この縦排出オーガ17を中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とされており、機体内部側に配置される駆動系や油圧系のメンテナンスが容易に行われるようになっている。グレンタンク13の底部には排出コンベア(図示せず)が前後方向に配設されており、この排出コンベアから前記穀粒排出装置15に動力を伝達することで、穀粒排出装置15に設けられた排出口19から外部へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。前記穀粒排出装置15は、主に、下端が前記排出コンベアと連通され穀粒を縦送りする前記縦排出オーガ17と、この縦排出オーガ17の上端に連通され穀粒を横送りする排出オーガ18とからなり、グレンタンク13の後側に立設された縦排出オーガ17の上端に、受継ぎケース30を介して排出オーガ18の基端側が上下回動可能に枢着されている。
【0013】
前記排出オーガ18は中間部において、グレンタンク13の上部側方に配置したオーガレスト31に載置支持させ、本機上面の対角線方向に略水平に排出オーガ18を収納させる構成となっている。図3に示したように、縦排出オーガ17の中途部には排出オーガ18を旋回移動させる電動旋回モータ32が配設され、該縦排出オーガ17の上部には排出オーガ18の先端側を昇降回動させる昇降シリンダ35が配設されている。つまり、排出オーガ18は電動旋回モータ32の駆動により、穀粒排出位置またはオーガレスト31載置位置に、縦排出オーガ17を支点に旋回され、電磁ソレノイド型旋回ブレーキ33により旋回位置で停止され、ポテンショメータ型旋回センサ34により旋回位置を検知している。排出オーガ18は油圧式昇降シリンダ35により受継ぎケース30を支点に上下回動され、ポテンショメータ型昇降センサ36により昇降角度(昇降高さ)を検知している。
【0014】
そして、グレンタンク13の前方には運転部14が構成されている。運転部14においては、前部に丸形の操向用ハンドル16が設けられるとともに、主変速レバー25、副変速レバー22、作業レバー等が配設されるサイドパネルが進行方向左側に設けられており、エンジンルーム20の上部に運転席21が載置支持されている。運転席21の左右両側には、アームレスト38R、38Lが配設されている。サイドパネル37側のアームレスト38Lは、サイドパネル37内に配置されている。そして、該アームレスト38Lの前方には、排出オーガ18の操作装置であるクロスレバーユニット39が設けられている。
【0015】
次に、排出オーガ18の操作手段であるクロスレバーユニット39について、図4乃至図9を用いて詳細に説明する。
図4、図5に示したように、操作手段はアームレスト38Lの前上部に設けられ、該排出オーガ操作手段を上下反転させることで収納できるようにしている。前記クロスレバーユニット39は、前記排出オーガ18先端の投出口を手動で昇降及び旋回させるクロスレバー40と、排出オーガ18を穀粒排出位置に自動的に移動させる右セットスイッチ41及び後セットスイッチ42と、排出オーガ18を本機収納位置に自動的に戻す収納スイッチ43と、排出オーガ18にエンジン動力を伝えるオーガクラッチを入切するオーガクラッチスイッチ44とが、操作ボックス45に配置されて、構成されている。
【0016】
なお、図6に示したように、右セットスイッチ41及び後セットスイッチ42や、収納スイッチ43等は、クロスレバーの握り部40aの上端付近等に配置することもできる。すなわち、クロスレバー40以外の排出オーガ18の操作手段を、クロスレバー40の近傍に配置することで、排出オーガ18の操作を効率的に行なうことができる。
【0017】
本実施形態では、前記クロスレバー40を前方に傾動させると、昇降シリンダ35が伸長して排出オーガ18が上向き回動し、後方に傾動させると、昇降シリンダ35が短縮して排出オーガ18が下向き回動し、右方に傾動させると、前記排出オーガ18が平面視で右旋回(図1では時計方向旋回)し、左方に傾動させると、前記排出オーガ18が平面視で左旋回(図1では反時計方向旋回)するように設定されている。操縦者がクロスレバー40から手を離すと、クロスレバー40は自動復帰して、排出オーガ18の作動が停止する。
【0018】
前記クロスレバーユニット39は、アームレスト38L側部に固設されたクロスレバーユニット固定板46に回動可能に取り付けられており、排出オーガ18使用時以外には、クロスレバーユニット39を回動支点39aを中心に、クロスレバー40が下方に向くように回転させて収納することができる。但し、クロスレバーユニット39は、本実施例では左右方向の回動支点軸を中心に前後方向に回転させて収納できる構成としているが、前後方向の回動支点軸を中心に左右方向に回転させて収納する構成とすることもできる。また本実施例では、クロスレバー40を下方に向くように回転させて収納する構成としているが、側方や斜め下方に向くように回転させて収納する構成としてもよい。また、クロスレバーユニット39を覆うカバー等を設けてもよい。また、クロスレバーユニット39をスライドさせ、アームレスト38L内に収納できるように構成してもよい。また、クロスレバーユニット39を着脱可能に構成することもできる。すなわち、クロスレバー40等を、作業者の肘などが当たって誤作動を起こす可能性のある位置から、退避させることができる構成であればよい。このようにして、クロスレバー40等の不要な突起物をなくすことで、藁、塵などのひっかかりをなくすこともできる。なお、収納状態としたことを検知手段を用いて検知し、収納時には操作手段(クロスレバー40等)の操作ができないようにロックしておく。そして収納時には、オーガクラッチモータ48を作動させ、排出オーガ18を停止させる。
【0019】
このようにして、排出オーガ18の操作装置であるクロスレバーユニット39を、アームレスト38Lの前側に設けることで、操縦者は運転席21に着席した状態、または運転席21付近(ステップ上)で立った状態であっても、後方を向いた状態であっても容易に排出オーガ18の操作を行なうことができる。また、クロスレバーユニット39は、回転させることで収納することができるので、路上走行時や刈取作業時等の不使用時には主変速レバー25等の操作の邪魔にならず、レバーの誤作動が防止できる。
【0020】
前記クロスレバー40やスイッチ41、42、43、44は、図7に示したように、オーガコントローラ(制御回路)47に接続されている。前記オーガコントローラ47には、前記各センサ34、36と、旋回モータ32と、旋回ブレーキ33と、昇降シリンダ35と、オーガクラッチスイッチ44と、排出オーガ18の駆動力を入切するオーガクラッチモータ48と、排出オーガ18を駆動して穀粒を排出している状態を点灯表示させる排出ランプ49とが接続されている。
そして、クロスレバー40を操作して、前記昇降シリンダ35及び旋回モータ32を作動させて、排出オーガを昇降及び旋回させる。また、オーガクラッチスイッチ44の操作によって、オーガクラッチモータ48を正逆転させて、排出オーガ18を駆動または停止させる。また、収納スイッチ43の操作によって昇降シリンダ35及び旋回モータ32を作動させて排出オーガ18を収納位置に自動的に戻し、右セットスイッチ41、後セットスイッチ42の操作によって昇降シリンダ35及び旋回モータ32を作動させて排出オーガ18を穀粒排出位置に自動的に移動させる。
【0021】
なお、クロスレバーユニット39は、図8、図9に示したように、主変速レバー25等が配設されるサイドパネル37内において、アームレスト38L近傍に配置することもできる。
そして、クロスレバーユニット39を収納するため、クロスレバーユニット39の上部を覆うカバー50を設ける。クロスレバーユニット39の上面は、サイドパネル37の最上面より低く設定し、前記カバー50がクロスレバーユニット39に被せられた状態で、クロスレバーユニット39の上面が、サイドパネル37の最上面と同じ高さ、またはそれより低くなるように設定する。
このように構成することで、カバー50を被せて収納した状態のクロスレバーユニット39が、サイドパネル37上面に突出することがなく、走行時等に、クロスレバーユニット39が主変速レバー25等の操作の邪魔にならず、レバーの誤作動を防止することができる。なお、カバー50は一端をヒンジ等により枢支し、または、本体側にレールを設けてカバーをスライドさせるように構成し、操作する場合のみカバーを開けられる構成とする。
但し、クロスレバーユニット39を前述のようにサイドパネル37上で反転させるように構成することも可能である。また、クロスレバーユニット39をスライドさせ、アームレスト38L内に収納できるように構成してもよい。また、クロスレバーユニット39を着脱可能に構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】排出オーガの昇降旋回部の説明図。
【図4】排出オーガの操作装置の平面図。
【図5】同じく側面図。
【図6】握り部にスイッチを設けたクロスレバーを示す図。
【図7】制御装置の機能ブロック図。
【図8】サイドパネルに操作装置を配置した平面図。
【図9】同じく側断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 コンバイン
13 グレンタンク
18 排出オーガ
21 運転席
37 サイドパネル
38R アームレスト
38L アームレスト
39 クロスレバーユニット
40 クロスレバー
41 右セットスイッチ
42 後セットスイッチ
43 収納スイッチ
44 オーガクラッチスイッチ
45 操作ボックス
46 クロスレバーユニット固定板
50 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席側部にアームレストを備えるコンバインであって、グレンタンク内の穀粒を外部に取り出す排出オーガを操作する手段を、アームレストに回動自在に設けたことを特徴とする排出オーガ操作装置の配置構造。
【請求項2】
運転席側部にアームレストを備えるコンバインであって、グレンタンク内の穀粒を外部に取り出す排出オーガを操作する手段をアームレストまたはアームレスト近傍に設け、該操作手段にカバー設けたことを特徴とする排出オーガ操作装置の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−244241(P2007−244241A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69590(P2006−69590)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】