説明

排出ガスセンサのヒータ制御装置

【課題】酸素センサを低コスト化しながら、酸素センサの素子温度(センサ素子の温度)を監視することができ、素子温度の制御精度を向上させることができるようにする。
【解決手段】酸素センサ26のヒータ28とグランドとの間にスイッチング素子36を直列に接続し、このスイッチング素子36と並列(つまりヒータ28と直列)に電圧検出用抵抗37を接続する。ヒータ28の温度変化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化してヒータ端子電圧情報Vadが変化することに着目して、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadに基づいて酸素センサ26の素子温度を推定し、推定した素子温度が目標素子温度になるようにヒータ28の通電を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出ガス通路に設けられた排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータの通電を制御して該センサ素子の温度を制御する排出ガスセンサのヒータ制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御化された内燃機関では、排気管に排出ガスの空燃比やリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ(空燃比センサ、酸素センサ等)を設置し、この排出ガスセンサの出力に基づいて排出ガスの空燃比を目標空燃比に一致させるように燃料噴射量等をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御を実行するようにしている。一般に、排出ガスセンサは、センサ素子の温度(以下「素子温度」という)が活性温度まで昇温しないと検出精度が悪い(又は検出不能である)ため、内燃機関の始動後に排出ガスセンサに内蔵したヒータでセンサ素子を加熱して排出ガスセンサの活性化を促進するようにしている。
【0003】
排出ガスセンサのヒータ制御装置においては、例えば、特許文献1(特開平2003−148206号公報)に記載されているように、排出ガスセンサに素子温度を検出する温度センサを設け、この温度センサで検出した素子温度が目標素子温度になるようにヒータの通電を制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2003−148206号公報(第5頁等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の技術では、排出ガスセンサに素子温度を検出する温度センサを設ける必要があるため、排出ガスセンサのコストが高くなり、近年の重要な技術的課題である低コスト化の要求を満たすことができないという欠点がある。また、素子温度を検出する温度センサを省略して低コスト化した排出ガスセンサは、素子温度を監視することができず、素子温度を精度良く制御することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、排出ガスセンサを低コスト化しながら、排出ガスセンサの素子温度を監視することができ、素子温度の制御精度を向上させることができる排出ガスセンサのヒータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排出ガス通路に設けられた排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータの通電を制御して該センサ素子の温度(以下「素子温度」という)を制御するヒータ通電制御手段を備えた排出ガスセンサのヒータ制御装置において、ヒータと直列に接続された電圧検出用抵抗と、この電圧検出用抵抗と並列に接続されたスイッチ手段と、このスイッチ手段が通電オフ状態のときにヒータと電圧検出用抵抗との中間点の電位又はそれに相関する情報(以下これらを「ヒータ端子電圧情報」と総称する)を検出し、該ヒータ端子電圧情報に基づいて素子温度を推定する素子温度推定手段とを備えた構成としたものである。
【0008】
この構成では、ヒータの温度変化によってヒータの抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチ手段が通電オフ状態(通電停止状態)のときのヒータ端子電圧(ヒータと電圧検出用抵抗との中間点の電位)が変化する。従って、スイッチ手段が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報(例えば、ヒータ端子電圧、ヒータ端子電圧を分圧用抵抗で分圧した電圧等)は、ヒータの温度を精度良く反映したパラメータとなり、ヒータの温度に応じて素子温度が変化するため、スイッチ手段が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報を用いれば、素子温度を精度良く推定することができる。これにより、排出ガスセンサの素子温度を監視することができるため、素子温度をフィードバック制御等により精度良く制御することが可能となり、素子温度の制御精度を向上させることができる。しかも、排出ガスセンサに素子温度を検出する温度センサを設ける必要がないため、排出ガスセンサを低コスト化することができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、ヒータ通電制御手段は、素子温度推定手段で推定した素子温度が目標素子温度になるようにヒータの通電を制御するようにすると良い。このようにすれば、排出ガスセンサの素子温度を速やかに目標素子温度(例えば活性温度)に制御することができるため、排出ガスセンサを速やかに活性化させて、排出ガスセンサの出力に基づいた空燃比フィードバック制御を早期に開始することができ、排気エミッションを向上させることができる。
【0010】
更に、請求項3のように、スイッチ手段が通電オフ状態のときにヒータ端子電圧情報を検出し、該ヒータ端子電圧情報に基づいてヒータの劣化診断を行うヒータ劣化診断手段を備えた構成としても良い。ヒータの劣化によってヒータの抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチ手段が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧が変化する。従って、スイッチ手段が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報に基づいてヒータの劣化診断を行えば、ヒータの劣化を精度良く診断することができる。
【0011】
ヒータ劣化診断手段によりヒータの劣化有りと判定されたときには、ヒータ端子電圧情報に基づいた素子温度の推定精度が低下する可能性があるため、請求項4のように、ヒータ劣化診断手段によりヒータの劣化無し(ヒータが正常)と判定されたときにヒータ端子電圧情報に基づいて素子温度を推定するようにすると良い。このようにすれば、ヒータの劣化有りと判定されたときにはヒータ端子電圧情報に基づいた素子温度の推定を禁止して、ヒータの劣化無し(ヒータが正常)と判定されたときにだけ、ヒータ端子電圧情報に基づいて素子温度を推定することができ、素子温度の推定精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
【図2】図2はヒータ劣化診断及びヒータ通電制御システムの概略構成図である。
【図3】図3はヒータ劣化診断ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】図4はヒータ通電制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0014】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0015】
一方、エンジン11の排気管23(排出ガス通路)には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒24が設けられている。この触媒24の上流側に、排出ガスの空燃比に応じたリニアな空燃比信号を出力する空燃比センサ25(排出ガスセンサ)が設けられ、触媒24の下流側に、排出ガスの空燃比が理論空燃比に対してリッチかリーンかによって出力電圧が反転する酸素センサ26(排出ガスセンサ)が設けられている。これらの空燃比センサ25と酸素センサ26には、それぞれセンサ素子を加熱するヒータ27,28が内蔵されえいる(又は外付けされている)。
【0016】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ29や、ノッキングを検出するノックセンサ30が取り付けられている。また、クランク軸31の外周側には、クランク軸31が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ32が取り付けられ、このクランク角センサ32の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0017】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)33に入力される。このECU33は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁21の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期を制御する。更に、ECU33は、エンジン運転中に空燃比センサ25と酸素センサ26のセンサ素子温度を活性温度範囲に維持するように、空燃比センサ25のヒータ27と酸素センサ26のヒータ28の通電デューティをフィードバック制御する。
【0018】
次に、図2に基づいて酸素センサ26のヒータ28の劣化診断や通電制御を行うヒータ劣化診断及びヒータ通電制御システムの構成を説明する。
車両に搭載されたバッテリ34に、イグニッションスイッチ(図示せず)によりオン/オフされるリレー35を介して酸素センサ26のヒータ28が接続されている。このヒータ28とグランドとの間にスイッチング素子36(スイッチ手段)が直列に接続され、このスイッチング素子36をオン/オフすることでヒータ28の通電を制御するようになっている。また、スイッチング素子36と並列(つまりヒータ28と直列)に電圧検出用抵抗37が接続され、この電圧検出用抵抗37と並列に2つの分圧用抵抗38,39の直列回路が接続されている。
【0019】
スイッチング素子36が通電オン状態のときには、ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位がグランドと等電位(0V)になるため、ヒータ28の温度変化やヒータ28の劣化によってヒータ28の抵抗値が変化しても、その影響がヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)に現れない。
【0020】
一方、スイッチング素子36が通電オフ状態(通電停止状態)のときには、ヒータ28の温度変化やヒータ28の劣化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化し、それに伴って2つの分圧用抵抗38,39の中間点43の電位(ヒータ端子電圧を2つの分圧用抵抗38,39で分圧した電圧)が変化する。この分圧用抵抗38,39の中間点43の電位が抵抗40を介してA/D変換部41に入力され、このA/D変換部41の出力がヒータ端子電圧情報Vadとして検出される。
【0021】
尚、スイッチング素子36の通電オフ状態とは、ヒータ28の通電制御中に所定のデューティ比でスイッチング素子36のオン/オフを切り換えているときの一時的な通電オフ状態を含むものとする。
【0022】
ECU33は、後述する図3のヒータ劣化診断ルーチンを実行することで、ヒータ劣化診断部44(図2参照)としての機能を実現し、酸素センサ26のヒータ28の劣化の有無を判定するヒータ劣化診断を次のようにして行う。スイッチング素子36が通電オフ状態のときに、ヒータ端子電圧情報Vadとバッテリ電圧Vb (バッテリ34の電圧)を検出し、バッテリ電圧Vb に応じた劣化判定値Kをマップ等により算出する。この後、ヒータ端子電圧情報Vadを劣化判定値Kと比較してヒータ28の劣化の有無を判定する。
【0023】
ヒータ28の劣化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化してヒータ端子電圧情報Vadが変化する。従って、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadに基づいてヒータ28の劣化診断を行えば、ヒータ28の劣化を精度良く診断することができる。
【0024】
更に、ECU33は、後述する図4のヒータ通電制御ルーチンを実行することで、ヒータ通電制御部45(図2参照)としての機能を実現し、酸素センサ26のヒータ28の通電を制御するヒータ通電制御を次のようにして行う。ヒータ劣化診断部44でヒータ28の劣化無し(ヒータ28が正常)と判定され且つスイッチング素子36が通電オフ状態のときに、ヒータ端子電圧情報Vadとバッテリ電圧Vb を検出し、ヒータ端子電圧情報Vadとバッテリ電圧Vb に基づいて酸素センサ26のセンサ素子の温度(以下「素子温度」という)Test を推定する。この後、推定した素子温度Test が目標素子温度Ttrg になるようにヒータ28の通電を制御する。
【0025】
ヒータ28の温度変化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化してヒータ端子電圧情報Vadが変化する。従って、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadは、ヒータ28の温度を精度良く反映したパラメータとなり、ヒータ28の温度に応じて素子温度が変化するため、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadを用いれば、素子温度Test を精度良く推定することができる。
【0026】
以下、ECU33が実行する図3のヒータ劣化診断ルーチン及び図4のヒータ通電制御ルーチンの処理内容を説明する。
【0027】
[ヒータ劣化診断ルーチン]
図3に示すヒータ劣化診断ルーチンは、ECU33の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいうヒータ劣化診断手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、ヒータ28の通電を制御するスイッチング素子36が通電オフ状態であるか否かを判定する。このステップ101で、スイッチング素子36が通電オフ状態ではない(スイッチング素子36が通電オン状態である)と判定された場合には、ステップ102以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0028】
一方、上記ステップ101で、スイッチング素子36が通電オフ状態であると判定された場合には、ステップ102に進み、ヒータ端子電圧情報Vad(A/D変換部41の出力)とバッテリ電圧Vb を読み込む。
【0029】
この後、ステップ103に進み、バッテリ電圧Vb に応じた劣化判定値Kをマップ等により算出する。ここで、バッテリ電圧Vb が高くなるほどヒータ端子電圧が高くなるため、劣化判定値Kのマップは、バッテリ電圧Vb が高くなるほど劣化判定値Kが大きくなるように設定されている。
【0030】
尚、バッテリ電圧Vb とヒータ温度Th (ヒータ28の温度)に応じた劣化判定値Kをマップ等により算出するようにしても良い。ここで、バッテリ電圧Vb が高くなるほどヒータ端子電圧が高くなり、また、ヒータ温度Th が高くなるほどヒータ28の抵抗値が大きくなってヒータ端子電圧が低くなるため、劣化判定値Kのマップは、バッテリ電圧Vb が高くなるほど劣化判定値Kが大きくなり、且つ、ヒータ温度Th が高くなるほど劣化判定値Kが小さくなるように設定されている。
【0031】
この後、ステップ104に進み、ヒータ端子電圧情報Vadが劣化判定値Kよりも小さいか否かを判定する。その結果、ヒータ端子電圧情報Vadが劣化判定値Kよりも小さいと判定された場合には、ヒータ28が劣化してヒータ28の抵抗値が異常に大きくなったと判断して、ステップ105に進み、ヒータ28の劣化有りと判定する。この場合、異常フラグをONにセットし、運転席のインストルメントパネルに設けられた警告ランプ(図示せず)を点灯したり、或は、運転席のインストルメントパネルの警告表示部(図示せず)に警告表示して運転者に警告すると共に、その異常情報(異常コード等)をECU33のバックアップRAM(図示せず)等の書き換え可能な不揮発性メモリ(ECU33の電源オフ中でも記憶データを保持する書き換え可能な記憶手段)に記憶して、本ルーチンを終了する。
【0032】
これに対して、上記ステップ104で、ヒータ端子電圧情報Vadが劣化判定値K以上であると判定された場合には、ステップ106に進み、ヒータ28の劣化無し(ヒータ28が正常)と判定して異常フラグをOFFに維持して、本ルーチンを終了する。
【0033】
[ヒータ通電制御ルーチン]
図4に示すヒータ通電制御ルーチンは、ECU33の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいうヒータ通電制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、図3のヒータ劣化診断ルーチンの診断結果に基づいてヒータ28の劣化無し(ヒータ28が正常)か否かを判定する。
【0034】
このステップ201で、ヒータ28の劣化有りと判定された場合には、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定精度が低下する可能性があると判断して、ステップ202以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了することで、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定を禁止する。
【0035】
一方、上記ステップ201で、ヒータ28の劣化無し(ヒータ28が正常)と判定された場合には、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定精度を確保できると判断して、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定を許可して、ステップ202以降の処理を次のようにして実行する。
【0036】
まず、ステップ202で、ヒータ28の通電を制御するスイッチング素子36が通電オフ状態であるか否かを判定する。このステップ202で、スイッチング素子36が通電オフ状態ではない(スイッチング素子36が通電オン状態である)と判定された場合には、ステップ203以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0037】
一方、上記ステップ202で、スイッチング素子36が通電オフ状態であると判定された場合には、ステップ203に進み、ヒータ端子電圧情報Vad(A/D変換部41の出力)とバッテリ電圧Vb を読み込む。
【0038】
この後、ステップ204に進み、ヒータ端子電圧情報Vadとバッテリ電圧Vb とに基づいてヒータ28の抵抗値Rを算出した後、ステップ205に進み、ヒータ28の抵抗値Rに基づいて素子温度Test をマップ又は数式等により算出(推定)する。素子温度Test のマップ又は数式等は、例えば、ヒータ28の抵抗値R(ヒータ28の温度の情報)と素子温度Test との関係を規定したものであり、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU33のROMに記憶されている。これらのステップ201〜205の処理が特許請求の範囲でいう素子温度推定手段としての役割を果たす。
【0039】
尚、ヒータ端子電圧情報Vadとバッテリ電圧Vb に基づいて直接、素子温度Test をマップ又は数式等により算出(推定)するようにしても良い。また、バッテリ電圧Vb がほぼ一定の場合には、ヒータ端子電圧情報Vadのみに基づいて素子温度Test をマップ又は数式等により算出(推定)するようにしても良い。
【0040】
この後、ステップ206に進み、エンジン運転状態(例えば、始動時水温、始動後経過時間等)に基づいて目標素子温度Ttrg を算出する。この後、ステップ207に進み、目標素子温度Ttrg と素子温度Test との偏差が小さくなるようにPID制御等によりヒータ28の通電デューティDutyを算出した後、ステップ208に進み、その通電デューティDutyでヒータ28に通電するようにスイッチング素子36のオン/オフを制御する。これにより、推定した素子温度Test が目標素子温度Ttrg になるようにヒータ28の通電デューティDutyをフィードバック制御する。
【0041】
以上説明した本実施例では、ヒータ28の温度変化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化してヒータ端子電圧情報Vadが変化することに着目して、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadに基づいて素子温度Test を推定するようにしたので、素子温度Test を精度良く推定することができる。これにより、酸素センサ26の素子温度を監視することができるため、素子温度をフィードバック制御等により精度良く制御することが可能となり、素子温度の制御精度を向上させることができる。しかも、酸素センサ26に素子温度を検出する温度センサを設ける必要がないため、酸素センサ26を低コスト化することができる。
【0042】
更に、本実施例では、推定した素子温度Test が目標素子温度Ttrg になるようにヒータ28の通電デューティをフィードバック制御するようにしたので、酸素センサ26の素子温度を速やかに目標素子温度(例えば活性温度)に制御することができ、酸素センサ26を速やかに活性化させて、酸素センサ26の出力に基づいた空燃比フィードバック制御を早期に開始することができ、排気エミッションを向上させることができる。
【0043】
また、本実施例では、ヒータ28の劣化によってヒータ28の抵抗値が変化すると、それに応じてスイッチング素子36が通電オフ状態のときのヒータ端子電圧(ヒータ28と電圧検出用抵抗37との中間点42の電位)が変化してヒータ端子電圧情報Vadが変化することに着目して、スイッチング素子36が通電オフ状態のときに検出したヒータ端子電圧情報Vadを劣化判定値Kと比較してヒータ28の劣化診断を行うようにしたので、ヒータ28の劣化を精度良く診断することができる。
【0044】
更に、本実施例では、ヒータ28の劣化有りと判定されたときには、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定精度が低下する可能性があると判断して、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいた素子温度Test の推定を禁止し、ヒータ28の劣化無し(ヒータ28が正常)と判定されたときにだけ、ヒータ端子電圧情報Vadに基づいて素子温度Test を推定するようにしたので、素子温度Test の推定精度を確保できる。
【0045】
尚、上記実施例では、ヒータ端子電圧に応じて変化するヒータ端子電圧情報Vadを検出して該ヒータ端子電圧情報Vadに基づいて素子温度の推定やヒータ28の劣化診断を行うようにしたが、ヒータ端子電圧を直接検出して該ヒータ端子電圧に基づいて素子温度の推定やヒータ28の劣化診断を行うようにしても良い。
【0046】
また、上記実施例では、酸素センサ26の素子温度の推定や酸素センサ26のヒータ28の劣化診断に本発明を適用したが、空燃比センサ25の素子温度の推定や空燃比センサ25のヒータ27の劣化診断に本発明を適用しても良い。
【0047】
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0048】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管(排出ガス通路)、26…酸素センサ(排出ガスセンサ)、28…ヒータ、33…ECU(ヒータ通電制御手段、素子温度推定手段、ヒータ劣化診断手段)、34…バッテリ、36…スイッチング素子(スイッチ手段)、37…電圧検出用抵抗、44…ヒータ劣化診断部、45…ヒータ通電制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排出ガス通路に設けられた排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータの通電を制御して該センサ素子の温度(以下「素子温度」という)を制御するヒータ通電制御手段を備えた排出ガスセンサのヒータ制御装置において、
前記ヒータと直列に接続された電圧検出用抵抗と、
前記電圧検出用抵抗と並列に接続されたスイッチ手段と、
前記スイッチ手段が通電オフ状態のときに前記ヒータと前記電圧検出用抵抗との中間点の電位又はそれに相関する情報(以下これらを「ヒータ端子電圧情報」と総称する)を検出し、該ヒータ端子電圧情報に基づいて前記素子温度を推定する素子温度推定手段と
を備えていることを特徴とする排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項2】
前記ヒータ通電制御手段は、前記素子温度推定手段で推定した素子温度が目標素子温度になるように前記ヒータの通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項3】
前記スイッチ手段が通電オフ状態のときに前記ヒータ端子電圧情報を検出し、該ヒータ端子電圧情報に基づいて前記ヒータの劣化診断を行うヒータ劣化診断手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項4】
前記素子温度推定手段は、前記ヒータ劣化診断手段により前記ヒータの劣化無しと判定されたときに前記ヒータ端子電圧情報に基づいて前記素子温度を推定する手段を有することを特徴とする請求項3に記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−169863(P2011−169863A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36261(P2010−36261)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】