説明

排出ガス流中におけるNOxを低減するための触媒、系及び方法

内燃機関エンジンのNOx排出を低減するための触媒、系、及び方法が記載されている。一の実施形態において、銀タングステートをアルミナ担体に含むSCR触媒を有する、排気流の排出物質処理系を提供する。排出物質処理系は、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンの排気流を処理に使用された。排出物質処理系は、更に、触媒の上流側で炭化水素還元剤を分配するように作動する噴射装置を備えていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ガス処理システム(exhaust emissions treatment system)及び内燃機関用の触媒、並びに触媒の製造方法及びディーゼルエンジン及び希薄燃焼ガソリンエンジンを含む希薄燃焼エンジンでの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジン及び希薄燃焼ガソリンエンジンの運転では、使用者に、良好な燃料節約を提供し、そして燃料希薄条件下における高い空気/燃料割合でのエンジンの運転に起因して、極めて低い排出の気相の炭化水素及び一酸化炭素を有する。また、ディーゼルエンジンは、特に、その耐久性、及びその、低速で高いトルクを発生するための能力に関して、ガソリンエンジンに対して顕著な利点を示す。しかしながら、希薄燃焼ガソリンエンジンからの排気は、化学量論の空気/燃料条件下又は化学量論の空気/燃料に近い条件下で運転する一般的なガソリンエンジンと比較して、NOxに関して比較的高い排出という性質を有している。希薄燃焼エンジンからのNOxの十分な減少は、達成困難である。なぜなら、高いNOx転化率では、一般に、還元剤リッチな条件を必要とするからである。排気流におけるNOx成分を無害な成分に転化するには、燃料希薄条件下で運転する場合に特定のNOx減少戦略を必要とするのが一般的である。
【0003】
ディーゼル及び希薄燃焼ガソリンの排気からの窒素酸化物(NOx=NO+NO2)を効果的に減少するのは、更なる排出基準を満たし、そして乗り物の燃料節約を改善するために重要である。種々の規制基準を満たすために、過剰な酸素を含む排気フィード流からNOx排出を低減するのは、自動車の製造の場合に難題である。例えば、米国のBin 5の基準を準拠するには、FTP(連邦テスト法:Federal test procedure)サイクルにおいて、現在予測されているエンジンアウトNOx水準に対して、70〜90%のNOx転換効率を可能にする後処理系を必要とする場合と推測されている。希薄燃焼エンジンの排気流中におけるNOxの低減に対する一のこのような戦略では、“NOxトラップ”として当該分野で公知であるNOx吸蔵還元型(NSR)触媒を使用する。NSR触媒は、希薄条件下で窒素の酸化物を吸着又は“トラップ”することが可能なNOx収着剤及び白金族の金属成分を含んで、触媒に酸化及び還元機能を与える。運転中に、NSR触媒は、以下の等式1〜5に示される一連の素過程を促進する。酸化環境において、NOをNO2に酸化し(等式1)、これは、NOxの吸蔵(貯蔵)に重要なステップである。低温条件下、かかる反応は、白金族の金属成分、例えば白金成分によって触媒されるのが一般的である。酸化処理は、この場合に停止しない。原子酸素を導入して、更にNO2をニトレートに酸化するのは、触媒化反応でもある(等式2)。NO2をNOx供給源として使用する場合であっても、白金族の金属成分の不存在下でニトレートを殆ど形成しない。白金族の金属成分は、酸化及び還元の二重機能を有する。その還元の役割に関して、白金族の金属成分は、第1に、還元剤、例えばCO(一酸化炭素)又はHC(炭化水素)(等式3)を排出物質に導入した時にNOxの放出に触媒作用を及ぼす。かかるステップは、NOx吸蔵側の一部を回復するものの、NOx種の還元の一因とはならない。その後、これにより放出されたNOxを、リッチな環境下で気体のN2に更に還元する(等式4及び5)。NOxの放出は、正味酸化環境下であっても、燃料噴射によって引き起こされ得る。しかしながら、これにより放出されたNOxをCOによって効果的に還元するには、リッチな条件を必要とする。また、温度サージは、NOxの放出を引き起こすことも可能である。なぜなら、金属ニトレートは、高温条件下での安定性が低いからである。NOxトラップ触媒作用は、循環作業である。金属化合物は、希薄/リッチ運転中に、主要パスとしてカーボネート/ニトレート転換に付されると考えられている。
【0004】
【化1】

【0005】
等式2及び3において、Mは、2価の金属カチオンを表す。また、Mは、1価又は3価の金属化合物であっても良く、その場合、等式を再平衡する必要がある。
【0006】
NO及びNO2をN2に還元するのは、リッチ周期中にNSR触媒の存在下で生じるものの、アンモニア(NH3)が、NSR触媒のリッチパルス再生の副生成物として形成される場合もあることが観察された。例えば、CO及びH2OでのNOの還元を、以下の等式(6)に示す。
【0007】
【化2】

【0008】
NSR触媒のこのような特性では、それ自体有害な成分であるNH3を、この場合、無毒種に転換してから、排出物質を大気に排出する必要があることを要求している。
【0009】
移動の用途ための開発下でNOxの低減に関する別の戦略(希薄燃焼エンジンの排出物質を処理することを含む)は、選択的触媒還元(SCR)触媒戦略を使用する。かかる戦略は、固定汚染源に対して利用される、例えば燃料ガスの処理という点において効果的であることが分かっている。かかる戦略において、NOxは、塩基材料から構成されるのが一般的であるSCR触媒において、還元剤、例えばNH3にて、窒素(N2)に還元される。かかる戦略は、90%を超えるNOxの還元を可能であるので、積極的なNOx還元の目的を達成する一の最も良好な試みを表す。
【0010】
アンモニアは、SCR技術を使用する希薄条件下、NOxに対して最も効果的な還元剤の1つである。ディーゼルエンジン(殆どの場合、大型車両用ディーゼルエンジン)でNOxを低減する場合に研究されるべき試みの1つでは、還元剤として尿素を利用する。加水分解時に、アンモニアを生成する尿素を、200〜600℃の範囲の温度のSCR触媒の前における排出物質に注入する。かかる戦略の主たる課題の1つは、乗り物への搭載時に尿素を収容するために特大の貯蔵器を必要とすることである。別の重要な概念は、貯蔵器に必要される尿素を充足するためにかかる乗り物における運転者の責任と、尿素を運転者に供給するためのインフラの必要性である。従って、排出ガスのSCR処理に用いられる還元剤NH3を供給する場合に負担が少なく且つ代わりとなる供給源が望ましい。
【0011】
NH3又はNH3前駆体の外部貯蔵器に代えて、排出物質中におけるNOxの接触還元を利用して、NH3を生成する排出物質処理系が、当該分野において知られている。すなわち、排出物質における一部のNOx成分を、かかる系においてNH3前駆体として使用する。例えば、米国特許第6176079号は、希薄及びリッチ条件で交互に運転される燃焼系からの排出ガスを処理する方法を開示している。この方法において、窒素酸化物を希薄運転中に中間貯蔵し、そしてリッチ運転中に放出して、NH3を形成し、これを貯蔵する。これにより貯蔵されたNH3を放出するので、次のリーン運転中に窒素酸化物を還元することが可能である。
【0012】
ハイドロカーボン(HC−SCR)を使用するNOxの選択的接触還元は、酸素リッチ条件下でNOxを除去する見込みのある代わりの方法として広く研究されてきた。イオン交換卑金属ゼオライト触媒(例、Cu−ZSM5)は、一般的な乗り物運転条件下で十分な活性を有さないのが一般的であり、二酸化硫黄及び浸水による劣化の影響を受けやすい。白金族の金属を使用する触媒(例、Pt/Al23)は、狭い温度範囲で効果的に作動し、そしてN2Oの生成に対して高い選択性である。
【0013】
アルミナ担持銀(Ag/Al23)を使用する触媒装置が、かかる装置の、種々のハイドロカーボン種を用いる希薄な排出条件下でNOxを選択的に還元するための能力により、注目を集めてきた。更に、ディーゼル燃料を還元剤として供給することが可能であった。ディーゼル燃料は、ディーゼル車に追加のタンクを必要としない。ディーゼル燃料は、エンジンのエンジン管理を変更するか、又はディーゼル燃料の追加的な噴射装置を排出列(emission train)に供給することによって、排出系に供給され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6176079号
【発明の概要】
【0015】
このような種々の代替案があるにも拘わらず、実用的なハイドロカーボンSCR触媒が存在しない。従って、自動車及び希薄燃焼内燃機関における他の用途の場合に排出ガス流中のNOxを選択的に低減するために効果的な方法及び装置が必要である。
【0016】
〔発明の概要〕
本発明の実施形態によると、希薄燃焼エンジンの排ガス流からのNOx排出ガスを低減する触媒を提供し、これは、アルミナ担体に銀タングステートを含む。特定の実施形態において、触媒は、銀タングステートをヒドロキシル化アルミナに含浸させることによって製造される。銀タングステートは、化学量論化合物のAg2WO4又はその複合体を含む。
【0017】
一以上の実施形態によると、アルミナは、ベーマイト,擬ベーマイト又はゼラチン状ベーマイト、ダイアスポア、ノルドストランド、バイヤライト、ギブサイト、表面に添加されるヒドロキシル基を有するアルミナ、及びこれらの混合物から選択される。本発明の別の態様は、銀タングステートをアルミナ担体に含む触媒を含む、排気流の排出物質処理系に関する。一の実施形態において、系は、触媒の上流側の排気流における空気/燃料比を周期的に低下させるための制御装置を更に備える。一の実施形態において、制御装置は、少なくとも1種のハイドロカーボン燃料、純粋な炭化水素、一酸化炭素及び水素から選択される還元剤を触媒の上流側の排気流に周期的に計量導入して、リッチな気体流を形成する噴射装置を備える。
【0018】
一以上の実施形態において、触媒は、セラミック又は金属製のハニカム状フロースルー型基材に配置される。一以上の実施形態によると、系は、第2のセラミック又は金属製のハニカム状フロースルー型基材に対して配置される第2の触媒を含む。
【0019】
排出物質処理系は、一以上の実施形態によると、ディーゼル用酸化触媒、触媒化スートフィルタ、スートフィルタ、NOxトラップ、炭化水素部分酸化触媒、硫黄トラップ、基材に配置される貴金属触媒、リントラップ、及び1種以上のこれらの組み合わせから選択される構成要素を更に含んでいても良い。
【0020】
一以上の実施形態によると、触媒は、スートフィルタに配置され、そしてハイドロカーボンSCR触媒としての役割を果たす。スートフィルタは、フォールフロー型フィルタであっても良い。一の実施形態において、スートフィルタは、入口端部と、出口端部と、入口端部から出口端部まで延在し、そして入口条溝側面と出口条溝側面とを含み、且つ開口入口及び塞がれた(栓付き)出口を有する入口条溝と、開口出口及び塞がれた入口を有する出口条溝とを含む交互の条溝を有する複数の通路を規定するインターナル壁部と、を含み、且つ触媒が、出口条溝側に配置されるウォールフロー型フィルタである。
【0021】
一以上の実施形態において、排出物質処理系は、開口入口から塞がれた出口までの少なくとも一部の距離として入口端部から延在するNSR触媒と、開口出口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に出口端部から延在するSCR触媒と、を更に含む。一の実施形態によると、NSR触媒の一部に層として配置され、開口入口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に入口端部から延在する入口酸化触媒を設け、及び/又はSCR触媒の一部に層として配置され、開口出口から塞がれた出口までの少なくとも一部の距離として出口端部から延在する出口酸化触媒を設ける。
【0022】
本発明の別の態様は、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排ガス中におけるNOxをN2に転化する方法であって、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排ガスを、銀タングステートをアルミナ担体に含む触媒と接触させる工程を含む方法に関する。方法は、更に、少なくとも1種のハイドロカーボン燃料、ドデカン、m−キシレン、一酸化炭素及び水素からなる群から選択される還元剤を触媒の上流側の排気流に注入して、リッチな気体流を形成する工程を含んでいても良い。
【0023】
本発明の別の態様は、アルミナを含む担体を準備する工程と、担体に銀タングステートを含浸させる工程と、これにより含浸された担体をか焼する工程と、を含む触媒の製造方法に関する。特定の実施形態において、触媒の製造方法は、表面ヒドロキシル化アルミナを含む担体を準備する工程と、担体に銀化合物を含浸させる工程と、これにより含浸された担体を乾燥する工程と、これにより含浸された担体をか焼する工程と、これにより得られた材料を熱水処理する工程と、を含む。一の実施形態において、方法は、銀タングステートを水酸化アンモニウム溶液に溶解する工程と、溶液中でアルミナを含浸する工程と、を更に含む。一以上の実施形態において、方法は、これにより含浸された担体を、400〜700℃の範囲、好ましくは約650℃の温度条件下で、1〜48時間に亘って10%の水蒸気中で熱水処理する工程を含んでいても良い。
【0024】
本発明のこのような態様及び他の態様は、実施形態に関する以下の詳細な説明を読み、そして理解することにより、当業者に明らかとなるであろう。
【0025】
本発明は、所定の部分及び部分の配置に関する物理的形態を挙げることが可能であり、その実施形態は、以下に詳細に記載され、その一部を形成する添付図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、銀タングステートサンプルの場合の温度に対するNOx転化率のプロットを示すグラフである。
【図2】図2は、銀タングステートに対する銀触媒のNOx転化率を比較するグラフである。
【図3】図3は、種々の銀タングステートに対する銀触媒のNOx転化率を示すグラフである。
【図4】図4は、ディーゼル燃料還元剤にて使用される銀タングステート触媒のNOx転化率を示すグラフである。
【0027】
〔発明の実施形態の詳細な説明〕
本発明の幾つかの具体的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下に記載される構成及び方法の工程の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態であっても良く、種々の方法で実施可能である。
【0028】
具体的な銀タングステートアルミナ触媒は、アルミナに担持させる約1〜10質量%の範囲の銀タングステートを含むアルミナを含む。以下の実施例で試験された所定の触媒は、1平方インチのコージライトのモノリス基材当たりに400個のセルにおいて担持された。触媒を、約650℃の条件下、空気及び約10%の水蒸気を使用して少なくとも約1時間、一般的には約16時間に亘って熱水熟成させた後に、試験する。従って、一以上の実施形態によると、希薄燃焼エンジンの排ガス流からのNOx排出を低減する触媒を提供し、かかる触媒は、アルミナ担体に銀タングステートを含む。
【0029】
触媒組成物の調製
本発明の一の態様は、触媒及び触媒組成物の製造方法に関する。従って、アルミナ担体に、以下に記載されるように銀タングステートを含浸する。
【0030】
一以上の実施形態によると、表面ヒドロキシル化アルミナ担体を担体として使用する。本願の明細書で使用されるように、“ヒドロキシル化”なる用語は、アルミナの表面が、例えばベーマイト,擬ベーマイト又はゼラチン状ベーマイト、ダイアスポア、ノルドストランド、バイヤライト及びギブサイトとして得られるようなアルミナにおいて高濃度の表面ヒドロキシル基を有することを意味する。擬ベーマイト及びゼラチン状ベーマイトは、非結晶性又はゼラチン状の材料として分類されるのが一般的であるのに対し、ダイアスポア、ノルドストランド、バイヤライト、ギブサイト、及びベーマイトは、結晶性と分類されるのが一般的である。本発明の一以上の実施形態によると、ヒドロキシル化アルミナは、式Al(OH)xy(但し、x=3−2y及びy=0〜1又はその分数である。)で表される。その調製において、かかるアルミナは、多くの又は殆どの表面ヒドロキシル基を追い出すであろう高温のか焼に付されない。
【0031】
本発明の実施形態によると、針状粒子と対照的に、平坦な、板状の粒子の形である実質的に非結晶性のヒドロキシル化アルミナが、触媒の調製に対して有用である。本発明の一以上の実施形態で使用されるヒドロキシル化アルミナの形状は、平坦な板の形であり、3〜100の平均アスペクト比及び平坦な板状平面に対して0.3〜1.0の縦横比を有する。アスペクト比は、粒子の“厚さ”に対する“直径”の割合によって表される。本願の明細書で使用されるような“直径”なる用語は、粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径を意味し、これは、顕微鏡又は透過型電子顕微鏡(TEM)でアルミナ白を観察することによって得られた。縦横比は、アスペクト比と同じ方法で観察された場合、平坦な板状平面における最大直径に対する最小直径の割合を意味する。
【0032】
本発明の実施形態による触媒の製造で使用されても良い平坦で、板状の粒子状ヒドロキシル化アルミナは、公知であり、市販されている。かかるアルミナの製造方法についても公知である。擬ベーマイトを製造する具体的な方法は、例えば米国特許第5880196号及びPCT国際特許出願第WO97/22476号に記載されている。
【0033】
擬ベーマイトは、ベーマイト様構造を有する。しかしながら、X線回折パターンは、極めて幅広いバンド又はハロから構成されている。広範な反射の間隔は、結晶性ベーマイトのパターンの主要なラインの間隔にほぼ相当するものの、特に、第1の反射は、ベーマイトの020ラインに対する0.611ナノメートルの反射と比較して、0.66〜0.67ナノメートル規模の数値に相当する変位を示すのが一般的である。構造は、所定の点においてベーマイトの構造に似ているものの、オーダーは、極めて短い範囲にすぎない。一般に、擬ベーマイトはは、ベーマイトと異なる特徴的な相であることが当業者によって認められている。Encyclopedia of Chemical Technology, 第5版, 第2巻, Wiley Inter science, 2004, 421-433頁、及び"Oxides and Hydroxides of Aluminum," Alcoa Techincal Paper 第19巻, Revised, by Karl Wefers and Chanakya Misra, 1987, Copyright Aluminum Company of Americaを参照されたい。
【0034】
或いは、か焼されたアルミナを所定の方法で処理して、例えば、アルミナを水蒸気に所定の時間に亘って曝すことによって表面ヒドロキシル基を添加することが可能である。一以上の実施形態において、銀の含浸に使用されるアルミナは、γ−アルミナを実質的に含まない。銀の含浸、乾燥、か焼、及び/又は熱水処理の後の最終的な触媒は、γ−アルミナ又は他の高温アルミナ相を含んでいても良い。
【0035】
一以上の実施形態において、アルミナに、銀タングステートを含む溶液を含浸する。銀タングステート触媒は、希薄燃焼エンジンの排出物質を処理する場合に十分なHC SCR活性を有する。γ−アルミナ、ベーマイト又は擬ベーマイト又はこれらの混合物等のアルミナに担持される化学量論化合物のAg2WO4(又はその複合体(multiples))は、炭化水素還元剤の存在下でNOxをN2に効率的に転化する。アルミナ上における銀の触媒と比較して、NOxの類似の転化率を、ほぼ半分の正味銀充填量にて得られる。銀タングステート触媒の場合に銀(Ag2O)充填量は、銀だけの触媒の充填量の半分に過ぎないにも拘わらず、2%の、アルミナ上銀タングステート触媒(silver tungstate on alumina catalyst)により、同じアルミナにおける2%の銀(Ag2Oとして)と同様のNOxの転化率を得る。
【0036】
銀タングステート触媒は、市販の銀タングステートを水酸化アンモニウム溶液に溶解し、そしてアルミナを、所望の銀タングステート水準まで含浸することによって作製され得る。その後、これにより得られる材料を乾燥し、そして約540℃までの温度にか焼する。その後、材料を、650℃の条件下、10%の水蒸気中で加熱しても良い。銀タングステート触媒により、約275〜525℃の範囲の広範な温度において高い転化率を得ることが見出された。
【0037】
アルミナの表面に対する銀の堆積は、種々の含浸法、例えばincipient wetness法及び湿式含浸法によって達成され得る。湿式含浸法において、過剰量の溶液を担体と混合し、その後、過剰の液体を蒸発させる。銀の堆積は、他のコーティング技術、例えば化学蒸着によっても達成され得る。
【0038】
排出ガス処理システム
本発明の一以上の実施形態による排出物質処理系(emission treatment system)は、上述したアルミナ担体に担持させた銀タングステートのNOx低減触媒及び種々の他の成分を含んでいても良い。従って、アルミナ担体に担持させた銀タングステートの触媒(アルミナ担体上銀タングステート触媒(silver tungstate on alumina support catalyst))は、多数のモノリス又は基材に含まれていても良く、且つ一以上の基材は、アルミナ担体上銀タングステート触媒を一部に又は全体的に含む。アルミナ担体上銀タングステート触媒は、ハイドロカーボンSCR(HC SCR)系の一部であっても良く、且つハイドロカーボンは、エンジン制御又はエンジン管理によって供給される。或いは、アルミナ担体上銀タングステート触媒は、ハイドロカーボンを独立した噴射装置によって供給するHC SCR系の一部であっても良い。別の実施形態において、HC SCR系は、例えば、POx反応器、水素のオンボード型供給を使用するか、又は分解された時に水素を放出する化合物又は錯体を使用し、排出系に加えられる水素を有することが可能である。1%以上の還元剤が、分子を含む酸化炭素、例えばアルデヒド、アルコール又は一酸化炭素を含むHC SCR系を提供することが可能である。上述したNOx触媒は、ディーゼル用酸化触媒、触媒化スートフィルタ、スートフィルタ、NOxトラップ、NSR触媒、炭化水素部分酸化触媒、エアポンプ、外部加熱装置、貴金属触媒、硫黄トラップ、リントラップ等を含む(これらに限定されない)排出系の一以上の追加の構成要素を含む系の一部であっても良い。
【0039】
排出物質処理系は、NOxを処理するために上述したアルミナ担体上銀タングステート触媒を含んでいても良い。アルミナ担体上銀タングステート触媒を、NSR触媒の下流側に配置することが可能である。アルミナ担体上銀タングステート触媒は、自己担持型触媒粒子の形であるか、又はSCR触媒組成物を形成するハニカム状モノリスとして構成されても良い。一以上の実施形態において、アルミナ担体上銀タングステート触媒組成物は、ウォッシュコートとして、又はウォッシュコートの組み合わせとして、セラミック又は金属製基材、好ましくはハニカム状フロースルー型基材に配置される。
【0040】
一以上の実施形態によると、ハニカム状モノリス型基材に堆積された場合、かかるアルミナ担体上銀タングステート触媒は、所望のNOx低減を達成することを保証し、そして延長使用に対して適当な耐久性を確保するために、少なくとも1g/in3の濃度で堆積される。一の実施形態において、少なくとも1.6g/in3のSCR組成物、特に、少なくとも1.6〜4.0g/in3のSCR組成物をモノリスに対して配置する。
【0041】
基材
一以上の実施形態において、1種以上の触媒組成物を基材に対して配置する。基材は、触媒を調製する場合に一般的に使用される任意の材料であっても良く、セラミック又は金属製のハニカム構造を含むのが好ましいであろう。好適な基材、例えば、基材の入口又は出口端面を通過して延在する微細で、平行な気体流路を有する種類のモノリス型基材を使用すると、通路が開口して、流体が流れる(ハニカム状フロースルー型基材と称される)。流体の入口から出口まで本質的に直線の路である通路は、触媒材料をウォッシュコートとして被覆して、通路を流れる気体と触媒材料とを接触させる壁部によって規定される。モノリス型基材における流路は、薄肉条溝であり、これは、適当な断面形状及び寸法、例えば台形、矩形、正方形、シヌソイド、六角形、楕円、円形等であっても良い。かかる構造物は、1平方インチの断面積当たり、約60〜600個以上の気体導入口(すなわち、セル)を含んでいても良い。
【0042】
また、基材は、ウォールフロー型フィルタ基材であっても良く、かかる基材では、条溝を交互に閉鎖し、これにより、気体の流れが、一方向(入口方向)から条溝に入って、条溝の壁部を通り、他の方向(出口方向)から条溝を出ることが可能である。NSR及び/又はSCR触媒組成物を、ウォールフロー型フィルタに被覆することが可能である。かかる基材を利用する場合、これにより得られる系は、気体の汚染物質と一緒に粒子状の物質を除去することが可能であろう。ウォールフロー型フィルタ基材は、当該分野で一般的に知られている材料、例えばコージライト又は炭化ケイ素から作製され得る。
【0043】
セラミック製基材は、適当な耐火性材料、例えばコージライト、コージライト−アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、アルミナ、アルミノシリケート等から作製され得る。
【0044】
本発明の触媒に有用な基材は、事実上、金属であっても良く、1種以上の金属又は金属合金から構成されていても良い。金属製基材は、種々の形状、例えば波形又はモノリスの形で使用されても良い。好ましい金属担体は、耐熱性金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレススチール、並びに鉄が実質的成分又は主成分である他の合金を含む。かかる合金は、1種以上のニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを含んでいても良く、かかる金属の合計量は、少なくとも15質量%の合金、例えば10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウム及び20質量%以下のニッケルを有利に含んでいても良い。また、合金は、少量又は微量の1種以上の他の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンを含んでいても良い。金属基材の表面は、高温、例えば1000℃以上の条件下で酸化されて、基材の表面に酸化物の層を形成することによって合金の耐腐食性を改良することが可能である。かかる高温−誘導酸化により、耐熱性金属酸化物担体及び触媒促進金属成分の基材に対する接着を高めることが可能である。
【0045】
別の実施形態において、1種以上の触媒組成物を、連続気泡フォーム基材に対して堆積させることが可能である。かかる基材は、当該分野で周知であり、耐熱性のセラミック又は金属材料から形成されるのが一般的である。
【0046】
ウォッシュコートの調製
本発明の触媒組成物は、当該分野で周知の方法によって容易に調製され得る。2層のウォッシュコートを調製する代表的な方法を以下に記載する。以下の方法を、本発明の異なる実施形態により変更して、第2の層を施す工程を省略することにより単一の層のウォッシュコートを調製するか、或いは1層以上の追加の層を以下に記載の2層ウォッシュコートに加えることが可能である。
【0047】
触媒組成物は、モノリス型ハニカム基材に対して1層以上の層にて容易に調製され得る。2層ウォッシュコートの場合、底部層,すなわち、γ−アルミナ等の高表面積の耐熱性金属酸化物における微細な粒子を適当な賦形剤、例えば水においてスラリーにする。その後、基材を、かかるスラリー中に1回以上浸漬するか、又はスラリーを基材(例、ハニカム状フロースルー型基材)に対して施して、基材に対して、所望の充填量の金属酸化物を堆積させる。成分、例えば銀金属、貴金属又は白金族の金属、遷移金属の酸化物、安定剤、促進剤及びNOx収着成分を、水溶性又は水分散性の化合物又は錯体の混合物としてスラリーに対して取り込むことが可能である。その後、これにより被覆された基材は、例えば400〜600℃の条件下で1〜3時間に亘って加熱することによってか焼されるのが一般的である。
【0048】
一以上の実施形態において、スラリーを粉砕することにより、実質的に全ての固体は、平均直径で、20μm未満の粒径、すなわち、1〜15μmの粒径を有する。粉砕は、ボールミル又は他の同様の器具中で行われても良く、そしてスラリーにおける固体含有量は、例えば20〜60質量%であり、35〜45質量%であるのが好ましい。
【0049】
その後、各層を調製し、そして上述したのと同じ方法で、か焼された複合材料における予め形成された層に対して堆積させる。全てのコーティング操作が完了した後、複合材料は、例えば400〜600℃の条件下で1〜3時間に亘って加熱することによって、再びか焼される。
【0050】
以下の実施例で、本発明を更に説明するが、勿論、かかる実施例は、本発明の範囲をいかなる方法で限定するように構成されるべきではない。
【実施例】
【0051】
触媒の調製
含浸の手順
アルミナ担体の有効な細孔容積は、露出担体を水で滴定すると共に、incipient wetnessが達成されるまで混合することによって測定された。これにより、担体1g当たりの液体の体積を得た。最終的な目標の金属水準及び担体1g当たりの有効な体積を使用して、必要とされる溶液の量を計算した。必要により、脱イオン水(DI)を銀タングステート溶液に添加することにより、液体の合計体積は、incipient wetnessに対して、担体サンプルを含浸するために必要とされる量と等しくなった。必要とされる溶液の量が担体の細孔容積を超過した場合、複数の含浸を行った。適当な体積の溶液を、混合しながら担体に対してゆっくり添加した。incipient wetnessが達成された後、これにより得られる固体を90℃で16時間乾燥し、その後、540℃で2時間か焼した。また、触媒を、必要により、空気中における約10%の水蒸気の流動流に、650℃の条件下で、少なくとも約1時間、一般的には約16時間に亘って付した。
【0052】
Ag2WO4触媒の調製
銀タングステートを、Aldrich Chemical Company又はAlfa Aesarより購入した。0.3MのAg2WO4の溶液は、脱イオン水と、約0.5〜16時間に亘って撹拌した後、銀タングステートの溶解を促進するために十分に濃縮された水酸化アンモニウムとを使用して調製された。かかる溶液を使用して、担体を適当な水準まで含浸した。最終的な目標のAg2WO4水準及び担体1g当たりの有効な体積を使用して、必要とされるAg2WO4溶液の量を計算した。必要により、DI水を銀溶液に添加することにより、液体の合計体積は、incipient wetnessに対して、担体サンプルを含浸するために必要とされる量と等しくなった。必要とされるAg2WO4溶液の量が担体の細孔容積を超過した場合、複数の含浸を行った。
【0053】
incipient wetnessが達成された後、これにより得られる固体を90℃で16時間乾燥し、その後、540℃で2時間か焼した。触媒を、必要により、空気中における約10%の水蒸気の流動流に、約650℃の条件下で少なくとも約16時間に亘って付した。
【0054】
購入された銀タングステートのラマンスペクトルでは、881cm-1でのピークを示していた。含浸前の担体のラマン分析により、その位置でピークを示さなかった。含浸及び55℃で2時間に亘るか焼により形成された触媒に対するラマン分析により、純粋な銀タングステートと同一のバンドを示していた。従って、タングステートは、触媒調製物を無傷のまま残存させた。銀タングステート又は担体に起因するバンド以外の他のバンドは、存在していなかった。
【0055】
アルミナにおける2%のAg2O触媒の調製
硝酸銀の1M溶液は、脱イオン水を使用して調製された。これにより得られた溶液を、光源から離して暗色瓶に保存した。最終的な目標のAg2O水準及び担体1g当たりの有効な体積を使用して、必要とされる1MのAgNO3溶液の量を計算した。必要により、DI水を銀溶液に添加することにより、液体の合計体積は、incipient wetnessに対して、担体サンプルを含浸するために必要とされる量と等しくなった。必要とされるAgNO3溶液の量が担体の細孔容積を超過した場合、複数の含浸を行った。これにより得られる固体を90℃で16時間乾燥し、その後、540℃で2時間か焼した。触媒を、必要により、空気中における約10%の水蒸気の流動流に、650℃の条件下で約16時間に亘って付した。
【0056】
触媒の評価
触媒の性能を、2種類の方法で評価した。第1の選択肢では、触媒による約12.6mm3の吸着床を含むマイクロチャネル接触反応器を使用することを必要とした。15sccmの反応材料(以下の表1に示される濃度条件)並びに0.75sccmの水蒸気の流量(標準温度及び圧力)を、種々の温度条件下(150、175、200、225、250、300、350、400、500℃)、吸着床に通過させて、触媒の反応性を測定した。NOxの転化率は、マススペクトル分析器を使用して、100*(NOx供給−NOx出力)/(NOx供給)によって測定された。n−オクタンを、炭化水素還元剤として使用した。
【0057】
【表1】

【0058】
触媒は、周知の標準的な技術によりモノリスを触媒の水性スラリー中にディップコーティングすることによって、400個のセル/in3の小さな円筒形のコージライトモノリス(3/4”直径×1.0”長さ)に対して触媒粉末をウォッシュコーティングすることによって評価された。最終的な触媒充填量は、一般に2.5〜3.0g/in3であった。触媒は、以下の実施例において、類似の充填量及び同等の空間速度の条件下で比較された。
【0059】
これらのサンプルの性能に関する分析は、菅型のフロースルー型反応器を使用することによって達成された。模造の排ガスフィード流が、模造のディーゼルエンジンを使用して、1インチ平方当たり400個のセルのコージライトモノリス基材におけるAg−タングステート触媒のサンプルに通過された。反応器系は、SCR触媒に入り/出るNOx濃度水準(及び他の種類)を測定するためのフーリエ変換赤外分光計、及び触媒の空間速度(SV)に移動可能な排気流速を測定するための流量計を含む適当なセンサを備えていた。空間速度は、触媒の単位体積当たり、体積での気体の供給速度を表し、逆時間の単位(h-1(時-1))を有する。基準の実験室条件は、模造の排出フィード流における以下の標準気体を含んでいた:すなわち、10%のO2、5%のCO2、5%のH2O、750ppmのCO、及び250ppmのH2。n−オクタンを、全ての実験室用反応器機構の炭化水素還元剤として使用した(33体積%の芳香族化合物)。
【0060】
実施例1:モノリスを使用するAg2O触媒に対するAg2WO4触媒の比較
以下の表では、触媒が、市販の擬ベーマイト開始材料担体を使用して調製されたことを示していた。これにより得られる触媒を、モノリスに対してウォッシュコートし、そして上述したように菅型反応器中で試験した。
【0061】
【表2】

【0062】
この表から、銀のみの触媒(A)は、銀タングステートサンプル(B、C及びD)の銀よりも更に十分な銀を有することが明確であった。更に、充填量は、触媒Aの場合に高かった。従って、銀タングステート触媒(B、C及びD)と比較して、Aの場合に更に有効な触媒であった。
【0063】
触媒試験の結果を表1に示し、3種類の銀タングステートサンプルの場合の温度に対するNOx転化率のプロットを示している。全ての3種類の触媒により、約350〜600℃の範囲の温度条件下で良好なNOx転化率を得たことが明確であった。
【0064】
図2は、2%のAg2WO4触媒に対する2%のAg2O触媒を比較している。Ag2WO4触媒の銀含有量は、銀触媒の銀含有量の半分であった。図2に示されるように、銀含有量が異なるにも拘わらず、転化率が同様であることは明確であった。更に、モノリスに対する銀触媒の充填量は、Ag2WO4触媒を不利にする著しく高いものであった。
【0065】
図3は、同一のグラフにおいて4種類の全ての触媒を示している。3種類の銀タングステートサンプルが全て、銀触媒より少ない銀含有量であるにも拘わらず、2.5及び3.0%の銀タングステート触媒の性能は、明らかに優れていた。
【0066】
実施例2:ディーゼル燃料を使用する銀タングステートのNOx活性
擬ベーマイト担体から調製された2%の銀タングステートのサンプルを、1インチの円筒形による3/4インチの直径である、1平方インチ当たり300個のセルのコージライトモノリスに対して被覆した。触媒の充填量は、2g/in3であった。触媒を、550℃の条件下、空気中における10%の水蒸気で24時間に亘って処理した。種々の温度条件下でのNOx転化率は、10%の酸素、400ppmのNO及び8%の水蒸気を含む気体のフィード流を用い、100000hr−1の空間速度の実験室用菅型反応器中を使用して測定された。還元剤は、極低硫黄#2ディーゼル燃料であった。Nに対するC1比を、図示のように変化させた。フィード流の平衡は窒素であった。図4により、銀タングステートが、効果的なNOx低減触媒であることを示していた。
【0067】
実施例3
1%のAg2O又は1%のAg2WO4を含む触媒が、上述したように種々のアルミナ担体から作製された。各々触媒は、擬ベーマイト、ベーマイト及び新鮮な再水和されたか焼ギブサイトから調製された。材料を、上述したようにマイクロチャネル接触反応器において試験した。以下の表に示されるように、1%のAg2O及び1%のAg2WO4触媒は、同一の担体において同様の転化率を有していた。2つの場合、銀タングステート触媒は、銀タングステートの銀含有量が、銀のみの触媒の1/2であっても、高い活性を有していた。表に列挙される表面積は、銀化合物を添加する前の担体に対するものであった。
【0068】
【表3】

【0069】
本発明は、上述したように実施形態及びその修正に対して特に参照しつつ説明された。明細書を読み、そして理解した場合に、その他に対して、更に修正及び変更することは可能である。かかる修正及び変更が本発明の範囲内にある限り、かかる全ての修正及び変更を含む意図である。
【0070】
〔政府からの契約上の権利〕
米国政府は、米国エネルギー省により認められたDE−FC26−02NT41218の条件によって規定されているように、本願の一括払いライセンス及び妥当な条件で他人に許諾するために特許権者を必要とするための限られた状況下での権利を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体及びその上の銀タングステートを含む、希薄燃焼エンジンの排ガス流からNOx排出ガスを低減するための触媒。
【請求項2】
銀タングステートが、化学量論化合物のAg2WO4又はその複合体を含む請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
WO3に対するAg2Oの割合が、約2:1〜1:2の範囲である請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
アルミナが、ベーマイト,擬ベーマイト又はゼラチン状ベーマイト、ダイアスポア、ノルドストランド、バイヤライト、ギブサイト、表面に付加されたヒドロキシル基を有するアルミナ、及びこれらの混合物のヒドロキシル化アルミナから選択される請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
アルミナが、ガンマ、デルタ、シータ、カッパ、及びローアルミナのか焼アルミナから選択される請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
請求項1に記載の触媒を含む、排気流の排出ガス処理システム。
【請求項7】
触媒が、セラミック又は金属製のハニカム状フロースルー型基材に配置される請求項6に記載の排出ガス処理システム。
【請求項8】
更に、第2のセラミック又は金属製のハニカム状フロースルー型基材に配置される第2の触媒を含む請求項7に記載の排出ガス処理システム。
【請求項9】
更に、ディーゼル用酸化触媒、触媒化スートフィルタ、スートフィルタ、NOxトラップ、炭化水素部分酸化触媒、硫黄トラップ、基材に配置される貴金属触媒、リントラップ、及び1種以上のこれらの組み合わせから選択される構成要素を含む請求項6に記載の排出ガス処理システム。
【請求項10】
触媒が、スートフィルタに配置され、ハイドロカーボンSCR触媒として機能する請求項6に記載の排出ガス処理システム。
【請求項11】
スートフィルタが、ウォールフロー型フィルタである請求項10に記載の排出ガス処理システム。
【請求項12】
スートフィルタが、入口端部と、
出口端部と、
入口端部から出口端部まで延在し、そして入口条溝側面と出口条溝側面とを含み、且つ開口入口及び塞がれた出口を有する入口条溝と、開口出口及び塞がれた入口を有する出口条溝とを含む交互の条溝を有する複数の通路を規定するインターナル壁部と、を含み、
且つ触媒が、出口条溝側に配置されるウォールフロー型フィルタである請求項11に記載の排出ガス処理システム。
【請求項13】
更に、開口入口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に入口端部から延在するNSR触媒と、開口出口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に出口端部から延在するSCR触媒と、を含む請求項12に記載の排出ガス処理システム。
【請求項14】
NSR触媒の一部に層として配置され、開口入口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に入口端部から延在する入口酸化触媒が設けられ、及び/又はSCR触媒の一部に層として配置され、開口出口から塞がれた出口までの距離の少なくとも一部に出口端部から延在する出口酸化触媒が設けられる請求項13に記載の排出ガス処理システム。
【請求項15】
アルミナを含む担体を準備する工程と、
担体に銀タングステートを含浸させる工程と、
含浸された担体をか焼する工程と、
を含む触媒の製造方法。
【請求項16】
更に、銀タングステートを水酸化アンモニウム溶液に溶解する工程と、溶液中にアルミナを含浸する工程と、を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
更に、含浸された担体を、少なくとも約650℃の温度条件下、10%の水蒸気中で処理する工程を含む請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−504204(P2010−504204A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529386(P2009−529386)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/078992
【国際公開番号】WO2008/036797
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【氏名又は名称原語表記】BASF Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, NJ 07932, USA
【Fターム(参考)】