説明

排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法

【課題】ハニカム構造体と金属電極との組合せを容易にし、製造効率を向上した排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックを材料として形成されたハニカム構造体2の内部に、複数の貫通孔2a、及び貫通孔2aを画定する隔壁2bが形成されている。ハニカム構造体2の外周部を金属電極3aが覆っており、金属電極3aが貫通孔2aに沿って延在している。ハニカム構造体2の隔壁2b内には金属電極3b〜3eが埋め込まれており、金属電極3b〜3eが貫通孔2aに沿って延在している。ハニカム構造体2を押出し成形する際に、金属電極3a〜3eはハニカム構造体2の押出し成形に用いる金型の内部に配置される。したがって、ハニカム構造体2を押出し成形する際に、ハニカム構造体2と金属電極3a〜3eとが一体となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガスに含まれる有害成分を浄化する、排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多孔質のセラミックからなるハニカム構造体を備えた排気ガスのプラズマ処理装置が開示されている。これによれば、ハニカム構造体の内部には、菱形の断面形状を有する複数の貫通孔が格子状に形成されており、これらの貫通孔を画定している隔壁に、排気ガスに含まれる有害成分である煤が捕集される。貫通孔の頂点部に位置する隔壁の内部には、貫通孔に沿って延びる導線状の金属電極が埋め込まれており、これらの金属電極が電源に接続されている。電源が金属電極に電圧を印加すると、貫通孔の内部にプラズマが発生し、隔壁に捕集された煤が酸化され、ハニカム構造体から除去される。
【0003】
【特許文献1】特表2005−531401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のプラズマ処理装置のように、金属電極が、ハニカム構造体の内部を貫通孔に沿って延びる構成とする場合、プラズマ処理装置の製造時に、ハニカム構造体の内部に金属電極を埋め込む作業が必要になる。しかしながら、ハニカム構造体は割れやすいセラミックを材料として形成されているため、ハニカム構造体と金属電極とを組み合わせることは容易ではなく、製造効率を向上することが困難であるという問題点を有していた。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、ハニカム構造体と金属電極との組合せを容易にし、製造効率を向上した排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法は、排気ガスが通過する複数の貫通孔を内部に有し、誘電体からなるハニカム構造体と、貫通孔を間に挟んで配置されるとともに、貫通孔に沿って延在する複数の金属電極とを備え、金属電極に電圧を印加して、貫通孔の内部にプラズマを発生させることによって、排気ガスの有害成分を浄化する排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法において、ハニカム構造体を押出し成形するための金型内に金属電極を配置し、誘電体の材料から、ハニカム構造体を押出し成形することによって、ハニカム構造体と金属電極とを一体とすることを特徴とするものである。
【0007】
ハニカム構造体を押出し成形するための金型内に金属電極を配置して、ハニカム構造体の押出し成形を行なうので、ハニカム構造体の材料である誘電体材料が硬化して割れやすくなる前に、ハニカム構造体と金属電極とが一体となる。また、ハニカム構造体と金属電極とが予め一体となるので、プラズマ処理装置の組立工程時における部品点数が低減される。したがって、排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法において、ハニカム構造体と金属電極との組合せを容易にし、製造効率を向上することが実現できる。
【0008】
誘電体の材料が、貫通孔を通過する排気ガスに含まれる煤を捕集する多孔質材料であってもよい。排気ガス中の煤を除去するためのプラズマ処理装置の製造方法において、ハニカム構造体と金属電極との組合せを容易にし、製造効率を向上することが可能となる。
貫通孔に沿った方向への、ハニカム構造体に対する、金属電極の移動を拘束する脱落防止部材を設けてもよい。金属電極がハニカム構造体から剥離した場合においても、金属電極がハニカム構造体から脱落することを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法において、ハニカム構造体と金属電極とを容易に組み合わせ、製造効率を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この実施の形態1に係る排気ガスのプラズマ処理装置1(以下、プラズマ処理装置1と略称する)の構造について、図1〜4を用いて説明する。尚、プラズマ処理装置1を車両へ搭載する場合において、プラズマ処理装置1は図示しないエンジンの排気管に設けられ、エンジンの排気ガスがプラズマ処理装置1内に流入するように構成される。
【0011】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、矩形の断面形状を有する箱形のハニカム構造体2を備えている。ハニカム構造体2は、誘電体である多孔質のセラミックを材料として形成されたスルーフロータイプのディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと略称する)であって、その内部には、矩形の断面形状を有する複数の貫通孔2a、及び貫通孔2aを画定する隔壁2bが形成されている。複数の貫通孔2aは、格子状に配置されるとともに互いに平行に延びており、ハニカム構造体2の一方の側面2cから他方の側面2dに貫通している。プラズマ処理装置1内に流入した排気ガスは、図1の矢印Aで示される方向に流通してハニカム構造体2の貫通孔2a内を通過し、この通過の際に、排気ガスに含まれる煤(ディーゼルパティキュレート、以下PMと略称する)が、隔壁2bに捕集される。
【0012】
また、プラズマ処理装置1は、ハニカム構造体2の外周部を覆う金属電極3aと、ハニカム構造体2の内部に埋め込まれた金属電極3b〜3eとを備えている。これらのうち、金属電極3a〜3d(図2参照)は、薄板状の金属を、両側部が開口した中空の箱形に形成した電極となっている。金属電極3a〜3dは、互いに異なる大きさを有する矩形の断面形状を有しており、金属電極3aの内周側に、金属電極3b〜3dが順次重ねられるように配置されている。一方、金属電極3eは、金属電極3a〜3dを形成する金属を導線状に形成した電極であって、金属電極3a〜3dのうち、最も内周側に位置する金属電極3dの中心部を貫通するように配置されている。
【0013】
図3に示すように、金属電極3a〜3eのうち、最も外周側に位置する金属電極3aは、ハニカム構造体2の外周部に当接した状態でハニカム構造体2を覆っている。一方、金属電極3aの内周側に配置された金属電極3b〜3eは、ハニカム構造体2の貫通孔2aを画定する隔壁2bの内部に埋め込まれた状態となっている。また、各金属電極3a〜3eは、図3の矢印Xで示す方向、及び矢印Yで示す方向に隣り合う金属電極との間に、ともに2列の貫通孔2aを挟んだ状態となるように配置されている。すなわち、金属電極3a〜3eは、その両面または片面を隔壁2bに覆われた状態、且つ、互いに隣り合う金属電極同士が、貫通孔2a及び隔壁2bを間に挟んだ状態で、図3の矢印X及びY方向において一定の間隔で配置された構造となっている。また、図4に示すように、以上のように配置された金属電極3a〜3eが、ハニカム構造体2の外周部及び内部を、貫通孔2aに沿って延在する構造となっている。
【0014】
図1に戻って、金属電極3a〜3eには、プラズマ処理装置1の外部に設けられた交流電源4が接続されている。金属電極3a〜3eと交流電源4とを接続する2本の配線のうち、一方は金属電極3a、3c、3eに、他方は金属電極3b、3dに接続されており、隣り合う金属電極に接続される交流電源4の極性が、互いに異なった状態となっている。尚、金属電極3a〜3eのうち、最も外周側に配置されてハニカム構造体2の外周部を覆う金属電極3aを、交流電源4のクール側、すなわち接地される側に接続することにより、金属電極3aをプラズマ処理装置1の容器として用いることも可能である。
【0015】
次に、この発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置1の動作について説明する。
図1に示すように、図示しないエンジンの排気ガスは矢印Aで示される方向に流通してプラズマ処理装置1内に流入し、ハニカム構造体2の各貫通孔2a内を通過する。ここで、ハニカム構造体2は、多孔質のセラミックを材料として形成されているため、排気ガスに含まれるPMは、排気ガスが貫通孔2a内を通過する際に、貫通孔2aを画定している隔壁2bに捕集される。
【0016】
ハニカム構造体2に捕集されたPMが堆積して所定の量になると、交流電源4が、金属電極3a〜3eに電圧を印加する。ここで、金属電極3a〜3eと交流電源4とは、隣り合う金属電極に対して極性が互いに異なるように接続されている。したがって、金属電極3aの片面、及び金属電極3b〜3eを覆う隔壁2bが誘電体となり、金属電極3a〜3eの間に位置している各貫通孔2aの内部にプラズマが発生する。貫通孔2aの内部にプラズマが発生すると、ハニカム構造体2の隔壁2bに捕集されていたPMが酸化されて除去される。
【0017】
続いて、この発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置1の製造方法について説明する。
図5に、ハニカム構造体2を成形するための押出し成形機5を示す。押出し成形機5は、内部にセラミック原料が充填される筒状の原料通路6を備えており、その先端部6aの内部には、ハニカム構造体2を成形するための金型7が設けられている。ここで、セラミック原料とは、ハニカム構造体2の材料であるセラミックの粉体に、水やバインダー等が混合されて粘土状になったものである。また、押出し成形機5は、図示しない加圧装置を備えており、原料通路6内に充填されたセラミック原料に対して、図5の矢印Cで示す方向に圧力を加える。圧力を加えられた原料通路6内のセラミック原料は、金型7の内部を通過してハニカム構造体2の形状に成形され、押出し成形機5の外部に押出される。
【0018】
このように、押出し成形機5によってハニカム構造体2を成形する際に、金型7の内部に金属電極3a〜3eが配置される。図6に示すように、金型7は、原料通路6の先端部6aの内周面に当接する外周部7aを有しており、その内周側に、ハニカム構造体2の貫通孔2aを形成するための貫通孔形成部7bが形成されている。金属電極3a〜3eのうち、最も外周側に位置する金属電極3aは、金型7の外周部7aに当接し、且つ、その内周側に位置する貫通孔形成部7bに当接しない状態で、金型7の内部に配置される。また、金属電極3aの内周側に位置する金属電極3b〜3eは、その両面側に位置する貫通孔形成部7bと当接しない状態で、金型7の内部に配置される。
【0019】
金属電極3a〜3eを以上のように配置した状態で、金型7内にセラミック材料を導入すると、セラミック原料は、金属電極3aの内周側である片面、及び金属電極3b〜3eを覆いながら金型7の内部を通過し、金属電極3a〜3eとともに押出し成形機5の外部に押出される。金属電極3a〜3eとともに押出し成形機5の外部に押出されたセラミック原料は、乾燥及び焼成等の工程を経ることにより、金属電極3aが外周部に配置され、金属電極3b〜3eが内部に埋め込まれた状態のハニカム構造体2となる。ここで、ハニカム構造体2の外周部に金属電極3aが配置され、且つハニカム構造体2の内部に金属電極3b〜3eが埋め込まれているため、ハニカム構造体2の強度は、金属電極3a〜3eに補強されて向上した状態となっている。
【0020】
このように、ハニカム構造体2を押出し成形するための金型7の内部に金属電極3a〜3eを配置して、ハニカム構造体2の押出し成形を行なうので、ハニカム構造体2の材料であるセラミックが硬化して割れやすくなる前に、ハニカム構造体2と金属電極3a〜3eとが一体となる。また、ハニカム構造体2と金属電極3a〜3eとが予め一体となるので、プラズマ処理装置1の組立工程時における部品点数が低減される。したがって、排気ガスのプラズマ処理装置1の製造方法において、ハニカム構造体2と金属電極3a〜3eとの組合せを容易にし、製造効率を向上することが実現できる。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る排気ガスのプラズマ処理装置について、図7を用いて説明する。尚、以下の実施の形態において、図1〜6の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
実施の形態2に係る排気ガスのプラズマ処理装置は、実施の形態1に係るプラズマ処理装置の製造方法によって、ハニカム構造体2と金属電極3a〜3eとを一体とした後に、ハニカム構造体2の両側部に、脱落防止部材を設けたものである。
【0022】
図7に示すように、金属電極3a〜3eと一体となったハニカム構造体2の一方の側面2c、及び他方の側面2dには、セラミックを材料として形成された脱落防止部材12、13がそれぞれ設けられており、ハニカム構造体2に対して、接着等によって固定されている。脱落防止部材12、13は、ハニカム構造体2と同様の断面形状を有する箱形の部材であって、その内部には、ハニカム構造体2の貫通孔2aと同様の貫通孔12a、13a、及びこれらを画定する隔壁12b、13bがそれぞれ形成されている。すなわち、排気ガスが、脱落防止部材12の貫通孔12a、ハニカム構造体2の貫通孔2a、脱落防止部材13の貫通孔13aを順次通過する構成となっている。また、脱落防止部材12、13の外周部及び内部には金属電極が設けられておらず、金属電極3a〜3eの両端部が、脱落防止部材12、13の隔壁12b、13bに当接する。したがって、金属電極3a〜3bが貫通孔2aに沿って延在する方向において、金属電極3a〜3bは、その両端部においても脱落防止部材12、13によって支持されて、ハニカム構造体2に対して固定された状態となっている。その他の構成、及びプラズマ処理装置1の製造方法については、実施の形態1と同様である。
このように、ハニカム構造体2の両側部に、脱落防止部材12、13を設けたので、金属電極3a〜3eが、その両端部においても脱落防止部材12、13によって支持された状態でハニカム構造体2に対して固定される。したがって、金属電極3a〜3eがハニカム構造体2から剥離した場合においても、金属電極3a〜3eがハニカム構造体2から脱落することが防止される。
【0023】
実施の形態1、2において、ハニカム構造体の形状を箱形とし、金属電極の形状を箱形または導線状としたが、これらの形状を限定するものではない。例えば、図8に示すように、ハニカム構造体22を円筒形状とし、その内部に、薄板状の金属電極23a、23bを平行に配置した層状の構成とすることも可能である。
実施の形態1、2において、ハニカム構造体をスルーフロータイプのDPFとしたが、DPFの方式を限定するものではない。例えば、金属電極をメッシュ状の金属で形成して排気ガスが通過可能とすることにより、ハニカム構造体をウォールフロータイプのDPFとすることも可能である。
また、実施の形態1、2において、ハニカム構造体は、排気ガス中のPMを捕集するDPFとして成形されたが、ハニカム構造体がDPFの機能を有することに限定するものではない。ハニカム構造体を、PMを捕集しない材料から成形した場合においても、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や一酸化窒素(NO)等の有害成分を、プラズマによって酸化して、排気ガスを浄化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排気ガスのプラズマ処理装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における金属電極を概略的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る排気ガスのプラズマ処理装置の構造を示す部分正面図である。
【図4】実施の形態1に係る排気ガスのプラズマ処理装置の構造を説明するため、図3のIII−III断面を示した部分断面側面図である。
【図5】実施の形態1における押出し成形機を概略的に示す断面側面図である。
【図6】実施の形態1における金型を概略的に説明するため、図5のIV−IV断面を示した正面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る排気ガスのプラズマ処理装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図8】この発明に係る排気ガスのプラズマ処理装置におけるハニカム構造体及び金属電極を、実施の形態1、2以外の形状とした場合の構成を概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 排気ガスのプラズマ処理装置、2,22 ハニカム構造体、2a 貫通孔、3a,3b,3c,3d,3e,23a 金属電極、7 金型、12,13 脱落防止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが通過する複数の貫通孔を内部に有する、誘電体からなるハニカム構造体と、
前記貫通孔を間に挟んで配置されるとともに、前記貫通孔に沿って延在する複数の金属電極と
を備え、前記金属電極に電圧を印加して、前記貫通孔の内部にプラズマを発生させることによって、前記排気ガスに含まれる有害成分を浄化する排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法において、
前記ハニカム構造体を押出し成形するための金型内に前記金属電極を配置し、
前記誘電体の材料から、前記ハニカム構造体を押出し成形することによって、前記ハニカム構造体と前記金属電極とを一体とすることを特徴とする排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法。
【請求項2】
前記誘電体の前記材料が、前記貫通孔を通過する前記排気ガスに含まれる煤を捕集する多孔質材料である請求項1に記載の排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔に沿った方向への、前記ハニカム構造体に対する、前記金属電極の移動を拘束する脱落防止部材を設ける請求項1または2に記載の排気ガスのプラズマ処理装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−137212(P2009−137212A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317553(P2007−317553)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】