説明

排気ガス処理用の汚染制御装置において汚染制御要素を実装するためのマット

内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)と共に用いるのに好適で、不織実装マットを備えたケースに配列された汚染制御要素を含み、不織実装マットは、ケースと汚染制御要素との間に配置され、数平均直径が5μ以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーをマットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む非膨張性マットであり、ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まない汚染制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染制御装置において汚染制御要素を実装する実装マットを含む汚染制御装置に関する。特に、本発明は、内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の排気処理のための汚染制御装置に関する。汚染制御装置の実装マットは、ディーゼル触媒コンバータまたはディーゼルエンジンの排気から汚染を減じるために適応されたその他汚染制御要素のような低温用途に特に好適となるように設計することができる。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル汚染制御装置には、触媒コンバータとディーゼル微粒子フィルタまたはトラップが含まれる。汚染制御装置は、通常、金属筐体またはケースと、弾性のある可撓性実装マットによりケース内に固定して実装されている汚染制御要素とを有している。汚染制御装置は、大気汚染を制御するために自動車に一般的に用いられている。触媒コンバータとディーゼル微粒子フィルタの2種類の装置が現在広く用いられている。触媒コンバータは触媒を含んでおり、一般的に、金属筐体内に実装されたモノリシック構造にコートされている。金属モノリスも用いられているが、モノリシック構造は、一般的にセラミックである。触媒は、一酸化炭素および炭化水素を酸化し、自動車排気ガス中の窒素酸化物を減じて大気汚染を制御する。
【0003】
ディーゼル微粒子フィルタまたはトラップは、一般的に多孔性結晶セラミック材料から作成されたハニカムモノリシック構造を持つ壁フローフィルタである。ハニカム構造の交互のセルは、排気ガスが1つのセルに入って、多孔性壁を通って近接するセルに押されて、構造から出るように栓がされているのが一般的である。このようにして、ディーゼル排気ガス中に存在する小さな煤粒子が集められる。
【0004】
汚染制御装置に用いられるモノリス、特に、セラミック汚染制御モノリスは脆性で、振動や衝撃による損傷や破損を受けやすい。その熱膨張係数は、それが含まれている金属筐体よりも通常遥かに小さい。すなわち、汚染制御装置が加熱されるにつれて、筐体の内部周囲壁とモノリスの外側壁の間が増大するということである。マットの絶縁効果のために金属筐体の温度変化が小さくても、金属筐体の熱膨張係数が大きいため、モノリシック要素の膨張よりも早く大きな周囲サイズまで膨張する。かかる熱サイクルは、汚染制御装置の寿命および使用中に数百回と生じる。
【0005】
セラミックモノリスの道路の衝撃や振動による損傷を防ぎ、熱膨張の差を補償し、モノリスと金属筐体間に排気ガスが流れるのを防ぐために(触媒をバイパスし)、実装マットはセラミックモノリスと金属筐体間に配置される。これらのマットは、モノリスを所望の温度範囲にわたって定位置に保持するのに十分だが、セラミックモノリスに損傷を与えるほど大きくはない圧力を出すものではなくてはならない。
【0006】
業界では多くの実装マットが、高温で操作されるガソリンエンジンからの排気処理のための触媒コンバータを実装するために開発されている。公知の実装マットとしては、セラミックファイバー、膨張材料、ならびに有機および/または無機バインダーから構成された膨張シート材料が挙げられる。触媒コンバータを筐体に実装するのに有用な膨張シート材料は、例えば、米国特許第3,916,057号明細書(ハッチら(Hatch et al.))、同第4,305,992号明細書(レンジャーら(Langer et al.))、同第5,151,253号明細書(メリーら(Merry et al.))、同第5,250,269号明細書(レンジャー(Langer))および同第5,736,109号明細書(ホワースら(Howorth et al.))に記載されている。近年、多結晶セラミックファイバーとバインダーから構成された非膨張マットが、非常に薄いセル壁のために非常に強度の低い、いわゆる超薄壁モノリスに特に用いられている。非膨張マットとしては、例えば、米国特許第4,011,651号明細書(ブラッドベリーら(Bradbury et al.))、同第4,929,429号明細書(メリー(Merry))、同第5,028,397号明細書(メリー(Merry))、同第5,996,228号明細書(ショウジら(Shoji et al.))および同第5,580,532号明細書(ロビンソンら(Robinson et al.))に記載されたものが例示される。多結晶ファイバーは、通常の溶融形成セラミックファイバーより遥かに高価であるため、これらのファイバーを用いるマットは、例えば、超薄壁モノリスのように絶対的に必要な場合にのみ用いられている。
【0007】
米国特許第5,290,522号明細書には、直径が5マイクロメートルを超える少なくとも60重量%のショットフリーの高強度マグネシウムアルミノシリケートガラスファイバーを含む不織実装マットを有する触媒コンバータが記載されている。この参考文献に教示されている実装マットは、マットに700℃を超える排気ガス温度を与えている実施例の試験データから分かるように、主に高温用途のものである。
【0008】
米国特許第5,380,580号明細書には、(a)少なくとも20重量%の結晶であるアルミノシリケート系ファイバーの総重量に基づいて60〜約85重量%の酸化アルミニウムと40〜約15重量%の酸化ケイ素とを含むアルミノシリケートファイバーと、(b)結晶水晶ファイバーと、(c)(a)と(b)の混合物とからなる群より選択されるショットフリーの酸化セラミックファイバーを含み、前記アルミノシリケートファイバーと前記結晶水晶ファイバーの合算重量が前記不織マットの総重量の少なくとも50重量%である可撓性の不織マットが記載されている。可撓性不織マットは、さらに、炭化ケイ素ファイバー、窒化ケイ素ファイバー、カーボンファイバー、窒化ケイ素ファイバー、ガラスファイバー、ステンレス鋼ファイバー、真鍮ファイバー、フュージティブファイバーおよびこれらの混合物からなる群より選択される高強度ファイバーを含むことができる。
【0009】
ディーゼル酸化触媒(DOC)は、放出されているディーゼル微粒子の可溶有機フラクション(SOF)を酸化するために最新のディーゼルエンジンに用いられている。非常に低い排気ガス温度のために、従来の実装材料でのDOCの実装には問題がある。ターボ過給直噴(TDI)エンジンのような最新のディーゼルエンジンの排気ガスは300℃を超えることはない。この温度は、たいていの膨張マットを膨張させるのに必要な温度より低い。膨張は、触媒コンバータ内の適正な圧力を発生させ維持するのに必要である。さらに、この温度は、膨張マット材料に含有される有機バインダーをバーンアウトするには低すぎる。これらの温度ではバインダーは軟化するのみで、セラミックファイバーの弾性を妨げる。その結果、従来の膨張実装マットを用いると、DOCで電界破壊が生じる。これらの問題点を回避するために、コンバータは、蛭石を膨張しバインダーをバーンアウトするために取り付ける前に熱処理されることがある。これは高価で、時間がかかる。補助ワイヤメッシュ「L」シールを用いて、低温で膨張マットの保持力を増大するばかりか、コストやアセンブリの複雑さも増大させる。やや良好に機能するたいていの非膨張マットはそれでも有機バインダーを含有しており、200〜300℃の温度範囲でファイバーの弾性を大幅に減じる。これは、希薄NOx触媒、連続再生トラップ(CRT)およびNOxトラップをはじめとする他のディーゼル排気汚染制御装置にも当てはまるものと考えられる。
【0010】
米国特許第6,231,818号明細書は、アモルファスの無機ファイバーから構成される非膨張マットを用いることにより、低温ディーゼル触媒を実装する問題点を回避することを試みている。この特許には、マットは有機バインダーフリーとすることができると教示されているが、実施例で用いたマットのいくつかには大量のバインダーの使用を必要としていると考えられる。さらに、この米国特許で開示されている実装マットは、ディーゼルエンジン、特にTDIエンジンから排気の処理を適切に行えない。
【0011】
このように、ディーゼルエンジンからの排気処理用の汚染制御装置の金属ケースにおいてディーゼル汚染制御モノリスを実装する代替の実装マットを見出すことが望まれていた。特に、手頃なコストで容易かつ簡便なやり方で製造可能なかかる改善された実装マットを得ることが望まれていた。さらに、実条件固定試験(RCFT)、周期的圧縮試験および熱振動試験のうち少なくとも1つ以上において良〜優の性能を示す実装マットを見出すことが望まれていた。装着マットはまた、健康、安全および環境の側面においても許容されるのが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様において、数平均直径が5μm以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーをマットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む不織非膨張性マットであって、ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まない不織非膨張性マットが提供される。「実質的に含まない」とは、マットの重量に基づいてバインダーの量が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることを意味する。マットは、機械の内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の排気処理のための汚染制御装置に用いられる。エンジンは、例えば、発電機や自動車のような定置型機械に含まれる。実装マットは、汚染制御要素(例えば、ディーゼル汚染制御モノリス)を汚染制御装置の筐体(例えば、金属ケース)に実装し、ケースと汚染制御要素の間に配置されるのが一般的である。
【0013】
特定の態様によれば、汚染制御装置の筐体(例えば、金属ケース)に汚染制御要素(例えば、ディーゼル汚染制御モノリス)を実装するマットであって、マットは、数平均直径が5μm以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーをマットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む非膨張性マットであり、ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まず、チョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーの少なくとも2つの層を含み、2つの層のガラスファイバー組成が異なるマットが提供される。本態様によるマットは、ディーゼルエンジン排気のための汚染制御装置用実装マットの性能および製造コストを最適化するのに特に好適であることが分かった。
【0014】
本発明の他の態様において、排気ガスを汚染制御装置に与えることにより、内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)から排気ガスを処理する方法であって、汚染制御装置は、不織実装マットを備えた筐体(例えば、金属ケース)に配列された汚染制御要素(例えば、ディーゼル汚染制御モノリス)を含み、不織実装マットは、ケースと汚染制御要素の間に配置され、数平均直径が5μm以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーをマットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む非膨張性マットであり、ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まない方法が提供される。
【0015】
「ディーゼル汚染制御モノリス」という用語は、ディーゼルエンジンからの排気により生じる汚染を減じるのに好適および/または適応されるモノリシック構造のことを意味し、特に、低温、例えば、350℃以下で汚染を減じる作用をするモノリシック構造が挙げられる。ディーゼル汚染制御モノリスには、触媒コンバータ、ディーゼル微粒子フィルタおよびNOxアブソーバまたはトラップが挙げられるがこれらに限られるものではない。
【0016】
「マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバー」という用語には、ケイ素、アルミニウムおよびマグネシウムの酸化物を含むガラスファイバーが含まれるが、その他の酸化物、特にその他の金属酸化物の存在を排除するものではない。
【0017】
本発明を限定するわけではなく、本発明を例証し理解を深める目的で、図面を添付する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照すると、汚染制御装置10は、略裁頭円錐形入口および出口端部12および13をそれぞれ備えた金属ケースまたは筐体11を有している。ケース11内に配置されているのが、例えば、複数のガスフローチャネル(図示せず)が通っているハニカムモノリシック本体から形成されたディーゼル汚染制御モノリス20である。周囲のディーゼル汚染制御モノリス20は、ケース11内でモノリシック要素20をしっかりと、だが弾性的に支持するチョップドマグネシウムアルミノシリケートガラスファイバーを含む実装マット30である。実装マット30は、ケースの適所にディーゼル汚染制御モノリス20を保持し、ディーゼル汚染制御モノリス20とケース11の間のギャップを封止して、ディーゼル排気ガスがディーゼル汚染制御モノリス20をバイパスすることを防ぐ、または最小にする。
【0019】
金属ケースは、ステンレス鋼をはじめとする業界に公知の材料から作成することができる。
【0020】
汚染制御装置10に用いられるディーゼル汚染制御モノリスとしては、触媒コンバータおよびディーゼル微粒子フィルタまたはトラップが例示される。触媒コンバータは触媒を含んでおり、一般的に、金属筐体内に実装されたモノリシック構造にコートされている。触媒は、低温、一般的には350℃以下で作用し有効となるように適用されるのが一般的である。金属モノシスも用いられているが、モノリシック構造は、一般的にセラミックである。触媒は、一酸化炭素および炭化水素を酸化し、排気ガス中の窒素酸化物を減じて大気汚染を制御する。ガソリンエンジンにおいては、これら3つの汚染物質全てをいわゆる「三方向コンバータ」において同時に反応させることができるが、たいていのディーゼルエンジンにはディーゼル酸化触媒コンバータ一つしか備わっていない。ディーゼルエンジンについてのみに今日では使用が制限されている、窒素酸化物を減じるための触媒コンバータは、通常、別個の触媒コンバータからなっている。触媒を担持する好適なセラミックモノリスは、コーニング(Corning Inc.)(ニューヨーク州コーニング(Corning N.Y))より「セルコア(CELCOR)」という商品名で、そしてNGKインシュレーテッド(NGK Insulated Ltd)(日本、名古屋(Nagoya,Japan))より「ハニセラム(HONEYCERAM)」という商品名でそれぞれ市販されている。
【0021】
ディーゼル微粒子フィルタまたはトラップは、一般的に多孔性結晶セラミック材料から作成されたハニカムモノリシック構造を持つ壁フローフィルタである。ハニカム構造の交互のセルは、排気ガスが1つのセルに入って、多孔性壁を通って近接するセルに押されて、構造から出るように栓がされているのが一般的である。このようにして、ディーゼル排気ガス中に存在する小さな煤粒子が集められる。コージェライトから作製される好適なディーゼル微粒子フィルタは、コーニング(Corning Inc.)(ニューヨーク州コーニング(Corning N.Y))およびNGKインシュレーテッド(NGK Insulated Ltd)(日本、名古屋(Nagoya,Japan)より市販されている。炭化ケイ素でできたディーゼル微粒子フィルタは、イビデン株式会社(Ibiden Co.Ltd.(日本(Japan))より市販されており、例えば、特開2002−047070A号公報に記載されている。
【0022】
不織実装マットに用いるマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーの平均直径は少なくとも5μm、長さは0.5〜15cm、好ましくは1〜12cmである。平均直径は少なくとも7μm、一般的には7〜14μmの範囲内であるのが好ましい。ガラスファイバーは個別であるのが好ましい。個別の(すなわち、ファイバーが互いに分離している)ファイバーとするには、ファイバーのトウまたはヤーンを、例えば、ガラスロービングカッター(例えば、カリフォルニア州パコマのフィン&フラム(Finn&Fram,Inc.,Pacoma,Calif.)より「型番90ガラスロービングカッター(MODEL 90 GLASS ROVING CUTTER)」)を用いてチョップして、所望の長さ(一般的に約0.5〜約15cmの範囲)とすることができる。ファイバーは一般的にショットフリーまたは、ファイバーの総重量に基づいて非常に低量、一般的には1重量%未満のショットを含有している。さらに、ファイバーの直径はほぼ均一であり、直径が平均の+/−3μm以内であるファイバーの量は、通常、マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーの総重量の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%である。
【0023】
マットは、マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバー以外のファイバーを10重量%まで含有していてもよい。しかしながら、マットはマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーのみからなっているのが好ましい。その他のファイバーがマットに含まれている場合には、一般的にはアモルファスファイバーであり、好ましくは、平均直径は少なくとも5μmとする。マットは直径3μm以下のファイバーを含まない、または実質的に含まないのが好ましく、直径5μm未満のファイバーを含まない、または実質的に含まないのがより好ましい。実質的に含まないとは、かかる直径の小さなファイバーの量がマット中のファイバーの総重量の2重量%以下、好ましくは1重量%以下であることを意味する。
【0024】
不織マットを製造する好ましい方法において、カットまたはチョップドファイバーは、2つのゾーンの従来のラロシュ開繊装置(Laroche Opener )(例えば、フランス、クールラヴィルのラロシュS.A.,(Laroche S.A.,Cours la Ville,France)より市販)に通過させることにより分離することができる。ファイバーはまた、ハンマーミル、好ましくはブローディスチャージハンマーミル(例えば、オハイオ州ティフィンのC.S.ベル(C.S. Bell Co. Tiffin,Ohio)より「ブロワディスチャージ型番20ハンマーミル(BLOWER DISCHARGE MODEL 20 HAMMER MILL)」という商品名で市販)に通過させることによっても分離することができる。あまり効率的ではないが、イリノイ州シカゴのW.W.グレインジャー(W. W. Grainger、Chicago,IL)より「デイトンラジアルブロワ(DAYTON RADIAL BLOWER)」型番3C539、31.1cm(12.25インチ)、3馬力という商品名で市販されているような従来のブロワを用いてファイバーを個別化することができる。チョップドファイバーは、通常、ラロシュ開繊装置を1回通過させる必要があるだけである。ハンマーミルを用いるときは、通常、2回通過させなければならない。ブロワのみを用いる場合は、ファイバーは、一般的に、少なくとも2回通過させる。不織マットへと形成される前に、ファイバーの少なくとも50重量パーセントが個別化しているのが好ましい。
【0025】
約15cmを超えるカットまたはチョップドファイバーもまた不織マットを作成するのに有用であるが、処理が難しい傾向にある。ファイバーの分離によって、不織マットを作成するファイバーの嵩だか性を増大(すなわち、バルク密度を減少)させる傾向があり、これによって、得られるマットの密度が減少する。
【0026】
破損が最小のチョップドまたはカットファイバーの処理および分離を促すために、帯電制御潤滑材(例えば、ニュージャージー州ハットフィールドのシムコ(Simco Co. Inc.,Hatfield,N.J.)より「ニュートロスタット(NEUTROSTAT)」)を、ファイバーを分離しながらハンマーミルにスプレーすることができる。
【0027】
マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーは、10〜30重量%の酸化アルミニウム、52〜70重量%の酸化ケイ素および1〜12重量%の酸化マグネシウムを含むのが好ましい。上述した酸化物の重量パーセンテージは、Al23、SiO2およびMgOの理論量に基づいている。さらに、マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーが追加の酸化物を含有していてもよいものと考えられる。例えば、存在させてもよい追加の酸化物としては、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム、酸化ホウ素および酸化カルシウムが挙げられる。マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーとしては、SiO2を約55%、Al23を11%、B23を6%、CaOを18%、MgOを5%および他の酸化物を5%の組成を一般的に有するE−ガラスファイバー、SiO2を約65%、Al23を25%およびMgOを10%の組成を一般的に有するSおよびS−2ガラスファイバー、SiO2を約60%、Al23を25%、CaOを9%およびMgOを6%の組成を一般的に有するR−ガラスファイバーが具体的に例示される。E−ガラス、S−ガラスおよびS−2ガラスは、例えば、アドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)より入手可能であり、R−ガラスはセイント−ゴバインベトロテックス(Saint−Gobain Vetrotex)より入手可能である。
【0028】
不織マットを製造する方法によれば、チョップド個別ファイバー(好ましくは長さ約2.5〜約5cm)を従来のウェブ形成機(ニューヨーク州マセドンのランドーマシーン(Rando Machine Corp.Macedon, N.Y)より「ランドーウェバー(RANDO WEBBER)」、デンマークのスキャンウェブ(ScanWeb Co.of Denmark)より「ダンウェブ(DAN WEB)」という商品名で市販されている)に供給し、ファイバーをワイヤスクリーンまたはメッシュベルト(例えば、金属またはナイロンベルト)上に延伸する。「ダンウェブ(DAN WEB)」型のウェブ形成機を用いる場合には、ファイバーはハンマーミルそしてブロワを用いて個別化するのが好ましい。長さ約2.5cmを超えるファイバーは、ウェブ形成プロセス中に交絡する傾向がある。マットの取扱い性を促進させるために、マットをスクリム上で形成またはスクリム上に配置させることができる。ファイバーの長さに応じて、得られるマットは、一般に、支持体(例えば、スクリム)を必要とせずにニードルパンチ機に移動させるのに十分な取扱い性を有している。
【0029】
不織マットはまた、従来の湿式成形またはテキスタイルカーディングを用いて作成することもできる。湿式形成プロセスについて、ファイバーの長さは約0.5〜約6cmであるのが好ましい。テキスタイルプロセスについて、ファイバーの長さは約5〜約10cmであるのが好ましい。
【0030】
ニードルパンチされた不織マットとは、例えば、バーブドニードルにより複数回マットを完全に、または部分的に(完全に、が好ましい)貫通させることによりファイバーを物理的に交絡させたマットのことを指す。不織マットは、従来のニードルパンチング装置(例えば、ドイツのディーロ(Dilo of Germany)より「ディーロ(DILO)」という商品名で市販されているニードルパンチャー、バーブドニードル(例えば、ウィスコンシン州マニトワックのフォスターニードルカンパニー(Foster Needle Company,Inc.,Manitowoc,Wis.)より市販されている)付きを用いてニードルパンチして、ニードルパンチされた不織マットとすることができる。ファイバーを交絡させるニードルパンチングには、一般的には、マットの圧縮と、バーブドニードルでマットをパンチングし引き抜くことが含まれる。マットの面積当たりのニードルパンチの最適数は、特定の用途に応じて異なる。一般的に、不織マットをニードルパンチすると、約5〜約60ニードルパンチ/cm2となる。マットをニードルパンチして、約10〜約20ニードルパンチ/cm2とするのが好ましい。
【0031】
ニードルパンチされた不織マットは、単位面積値当たりの重量が約1000〜約3000g/m2の範囲、他の態様においては厚さが約0.5〜約3センチメートルの範囲であるのが好ましい。5kPAの負荷での一般的な嵩密度は0.1〜0.2g/ccである。
【0032】
不織マットは、従来の技術(不織マットのステッチボンディングの教示について、その開示内容がここに参考文献として組み込まれる米国特許第4,181,514号明細書(レフコヴィッツら(Lefkowitz et al.)参照)を用いてステッチボンドすることができる。一般的に、マットは有機スレッドでステッチボンドされる。有機または無機シート材料の薄層は、スレッドがマットを切断するのを防ぐ、または最小にするために、ステッチボンディング中、マットの片側または両側に配置させることができる。ステッチスレッドが使用中に分解されないのが望ましい場合には、セラミックや金属(例えば、ステンレス鋼)のような無機スレッドを用いることができる。ステッチの間隔は、ファイバーがマットの全領域を均一に圧縮するよう、通常、3〜30mmである。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、マットは、マグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーの複数の層から構成されていてもよい。かかる層は、用いるファイバーの平均直径、用いるファイバーの長さおよび/または用いるファイバーの化学組成において互いに区別される。その組成、そして程度は少ないがファイバー直径により、ある温度のファイバーの耐熱性および機械強度は異なるため、ファイバー層はコストを最小にしつつ性能を最適にするように選択することができる。例えば、E−ガラス層と組み合わせたS−2ガラス層からなる不織マットを用いてディーゼル触媒コンバータを実装する。使用中、S−2ガラス層は、触媒コンバータの熱いモノリス側に直接配置され、一方、E−ガラス層は触媒コンバータの冷たい金属筐体側とされる。層を組み合わせたマットは、S−2ガラスファイバーのみからなるマットと比べて、大幅にコストの減じたE−ガラスファイバーのみからなるマットよりもかなりの高温に耐えられる。層状マットは、まず、前述した形成技術を用いて、特定の種類のファイバーを有する別個の不織層を形成することにより作成される。これらの層を併せてニードルボンドして、所望の別個の層を有する最終マットを形成する。
【0034】
本発明の実装マットは、汚染制御装置においてディーゼル汚染制御モノリスを実装するのに特に好適である。一般的に、マットの実装密度、すなわち、組立後のマットの嵩密度は、モノリスを適所に固定するのに十分な圧力を与えるため、少なくとも0.2g/cm3でなければならない。約0.70g/cm3を超える実装密度だと、ファイバーは砕けてしまう。同様に、非常に高い実装密度だと、汚染制御装置の組立中、モノリスが破損する恐れがある。実装密度は約0.25g/cm3〜0.45g/cm3とするのが好ましい。汚染制御装置は、ディーゼルエンジン排気処理のような低温用途に用いるのに優れた性能特性を有している。汚染制御装置は、中にあるディーゼルエンジンから排出される排気を処理する定置型機械に用いてもよい。かかる定置型機械としては、例えば、発電機または流体圧送の電源が挙げられる。
【0035】
汚染制御装置は、自動車のディーゼルエンジンからの排気処理に特に好適である。かかる自動車としては、列車、バス、トラックおよび「少人数用」車両が例示される。「少人数用」車両とは、少人数の乗客、一般的には15人以下を輸送するべく設計された自動車のことを意味する。乗用車、バンおよびいわゆる一人乗り乗用車が例示される。汚染制御装置は、特に欧州の自動車に頻繁に用いられるようになっているターボ過給直噴ディーゼルエンジン(TDI)の排気処理に特に好適である。
【0036】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0037】
実施例で用いた材料
S−2ガラスファイバー、直径約9μm、長さ1.0インチ(25.4mm)までチョップされたもの、401 S−2ガラスチョップドストランド(Glass Chopped Strands)としてアドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)(米国サウスカロライナ州のエーケン(Aiken, South Carolina/USA))より入手可能
Eチョップドガラスストランド、直径9μm、長さ1インチ(25.4mm)までチョップされたもの、アドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)(米国、サウスカロライナ州のエーケン(Aiken, South Carolina/USA))製
Rガラスファイバー(一般組成60%SiO2、25%Al23、9%CaOおよび6%MgO)、直径約10μm、長さ36mmまでチョップドされたもの、ドイツ、ヘルツォーゲンラスのサンゴバンベトロテックスドイチュランド(Saint−Gobain Vetrotex Deutschland GmbH,Herzogenrath/Germany)より入手可能
【0038】
試験方法
実条件備品試験(RCFT)
本試験は、モノリスまたはディーゼル微粒子トラップを備えた汚染制御装置の一般使用中の実際の条件をモデル化して、これらのモデル化された使用条件下での実装材料が出す圧力を測定するものである。RCFT方法は、自動汚染制御装置の材料の側面(Material Aspects in Automotive Pollution control devices)、ハンスボーデ(Hans Bode)編、ウィリー−VCH(Wiley−VCH)2002、206〜208頁に詳細が記載されている。
【0039】
独立制御される2つの50.8mm×50.8mmの加熱ステンレス鋼プラテンを異なる温度まで加熱して、それぞれ金属筐体とモノリス温度をシミュレートする。同時に、特定の種類の代表的な汚染制御装置の温度および熱膨張係数から計算した値によりプラテン間のスペースまたはギャップを増やす。ディーゼル汚染制御装置の通常のドライブ条件は、300℃までのモノリス温度および100までの金属筐体温度によりシミュレートされるが、例えば、自動車道路上のような、高速での連続ドライブ中に生じるようなより厳しい条件は、500℃までのモノリス温度および200℃までの金属筐体温度でシミュレートした。
【0040】
RCFTの3回のサイクルを、各実装マット試料で領域マット当たり1200〜1400g/m2を用いて実施した。試験試料中に実装したときのマットの密度は0.35g/cm3であった。膨張した比較例は1.0g/ccの密度で試験した。
【0041】
3回のRCFTサイクルを実施した後、データ曲線を生成する。曲線によれば、温度の関数として2つのプレート間の圧力が示される。第1および第2のプレートの温度は、それぞれ、最初は増大し、15分間温度が保持されてから減少した。
【0042】
熱振動試験
熱振動試験を用いて、本発明による実装マットが、ディーゼルエンジン用低温汚染制御装置の実装マットとして好適かどうかさらに評価した。熱振動試験には、排気ガスを金属ケース中に実装マットを実装した汚染制御装置要素(以降、試験組立品と呼ぶ)に通過させ、同時に、コンバータ組立品に、加速耐久試験として作用するのに十分な機械的振動を与えた。
【0043】
試験組立品は、以下のものより構成されていた。
1)350セル/in2で壁の厚さが5.5ミル(0.14mm)の円柱状セラミックモノリス(直径4.66インチ(11.8cm)×長さ3.0インチ(7.6cm)、
2)モノリスと金属筐体間に円柱状に配置された以下の実施例および比較例に記載した実装マット、および
3)内径が約4.88インチ(12.4cm)の409ステンレス鋼を含む円柱状缶形筐体。
【0044】
従来のシェーカテーブル(米国コネチカット州のウォリングフォードのアンホルツ−ディッキー(Unholtz−Dickie Corp.Wallingford,Conn./USA)より市販)を用いて試験組立品に振動を与えた。熱源は、1000℃までのガス入口温度をコンバータに供給可能な中和ガスバーナから構成されていた。コンバータは、モノリスの外側表面と実装マットの内側表面の間の界面温度を測定する熱電対を備えていた。排気ガス温度をサイクルさせ(繰り返し上下させ)、過剰の応力を実装マット材料に与えた。試験の振動セグメントを開始する前に、15時間の熱調整段階を実施した。熱調整段階は、選択した高温で2時間、その後50℃で1時間の5サイクルからなっていた。試験の振動セグメント中、「サインオンランダム」タイプの振動を用いて、さらに応力を生成し、使用条件下での試験アセンブリの加速老化をシミュレートした。第1の工程において、振動は、ランダム.01g2/Hz(約10gピーク)の振動レベル1.75g(この振動試験において「g」は重力を表す)で開始された。振動は選択した高温で3時間続けてから停止した。試験組立品を50℃まで冷やし、振動せずに1時間保持した。第2の工程において、試験組立品をさらに3時間その温度まで加熱しながら振動レベルを2倍にした(すなわち、3.5gサインオン.02g2/hzランダム)。振動を2時間停止し、50℃まで冷却し保持した。第3の工程において、上述した振動パラメータを2倍にし、サイクル(選択した高温で3時間、50°で1時間振動)を繰り返した。第4の工程において、4つの工程合計で、28gオン0.16g2/hzランダム(約61gピーク)の振動が得られるまで、振動パラメータを再びに倍にした。試験組立品が不合格となるまで、または28gサインオン0.16g2/hzランダムで少なくとも14サイクルに達するまで、試験組立品にさらに最後の組の振動パラメータを与えた。
【0045】
循環圧縮試験
循環圧縮試験の試験装置は以下のものより構成されていた。
a)下部固定部分と、「クロスヘッド速度」と定義されるレートで垂直方向に下部部分から離れて可動する上部部分とを含み、30kNまでの力を測定可能な荷重計(MTS(商標)型番アライアンス(Alliance)RT/30、ノースカロライナ州ケアリーのマテリアルテストシステムズ(Material Test Systems,Cary,North carolina))を備えた市販の試験機器(引張り試験機として一般的に知られている)、
b)機器の固定下部部分に垂直に取り付けられた第1の水晶管(直径50.8mm×長さ20cm)、
c)機器の上部部分の荷重計に垂直に取り付けられた第2の水晶管(直径50.8mm×長さ20cm)、
d)試験組立品と接触する、上部水晶管を通して延在している熱電対、
e)互いに最も近い2本の水晶管の部分を密着して囲むように配置された管形孔を有するレンガライニングを有する電気的に加熱されたオーブン。
【0046】
試験組立品は、互いに積層された3枚の以下のディスクからなっていた。
a)試験試料を支持する大きな下部水晶ディスク(厚さ20.0mm、直径75mm)、
b)直径約2インチ(51mm)の試験される実装マットの秤量済みディスクを含む試験される実装マットの試験試料、
c)試験試料の上に位置する小さな上部水晶ディスク(厚さ12.5mm、直径51mm)。
【0047】
試験組立品は、試験組立品の3枚のディスクが互いに垂直に配置されるよう、下部水晶管の上端と、上部水晶管の下端の間に配置された。
【0048】
次の2つのギャップ距離を選択した。
1)ギャップ1−2枚の水晶ディスク間の第1の短い距離、
2)ギャップ2−2枚の水晶ディスク間の第2の長い距離。
【0049】
ギャップ距離は、試験される実装マット試料が、小さな「ギャップ1」、および小さな「ギャップ1」の密度より10%高い密度である「大きなギャップ2」で、与えられた材料の推奨マット密度に対応する密度となるように選択された。これらのパラメータは、実装マットを実際の使用条件で用いたときに一般的に生じるマット密度に基づいて選択される。
【0050】
このように選択された2つのギャップ距離を機器にプログラムし、試験組立品を入れてオーブンを閉じ、250℃まで加熱して保持し、最終的に機器を一方のギャップ距離から他方へと繰り返し移動するようプラグラムして、2つの水晶ディスク間で試験組立品に配置された試料ディスクの圧力を繰り返し増減させた。クロスヘッド速度は5.0mm/分であり、「ギャップ1」または「ギャップ2」位置のいずれでも休止時間は実質的になかった。
【0051】
1回で試料ディスクから出た圧力をキロパスカル(kPa)単位で記録した。圧縮サイクルを1000回繰り返した。
【0052】
機器を圧縮サイクルの小さな「ギャップ1」位置として、(初期圧力)における試験の始めに試料ディスクにより出た圧力を記録した。再び、機器を圧縮サイクルの小さな「ギャップ1」位置として、250℃(最終圧力)で1000圧縮サイクル後の試料ディスクにより出た圧力も記録した。
【0053】
これらの2つの数字を(最終圧力/初期圧力)×100%=パーセント保持で比較した。
【0054】
実施例1
平均直径約9μm、長さ2.54cmのS−2ガラスファイバー40リットルをアドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)から入手した。ファイバーは実質的にショットフリーであった。
【0055】
ガラスファイバーを2ゾーンラロシュ開繊装置で開繊した。第1のゾーンの供給速度は2m/分であり、リッカーリンロール速度は2,500回転/分であった。第2のゾーンの供給速度は4m/分であり、リッカーリンロール速度は2,500回転/分であった。出力速度は6.5m/分であった。
【0056】
開繊ファイバーを従来のウェブ形成機(ニューヨーク州マセドンのランドーマシーン(Rando Machine Corp.Macedon, N.Y)より「ランドーウェバー(Rando Webber)」という商品名で市販)に供給して、ファイバーを多孔性金属ロール上にブローして連続ウェブを形成した。連続ウェブを従来のニードルタッカーでニードルボンドした。ニードル速度は100サイクル/分であり、出力速度は1.1m/分であった。実装マットの「面積当たりの重量」は所望により調整することができた。「面積当たりの重量」の値が試験結果に実質的に影響する試験においては、このパラメータを試験結果と共に示してある。実施例1の実装マットの組成は下記の表1にまとめてある。
【0057】
実施例1のマットは、試験方法について上述したRCFT方法に従って試験した。それぞれ3つのサイクルを表す3つのデータ曲線系列を生成した。実施例1の実装マットは、試験した温度範囲にわたって非常に均一な圧力を示し、モノリスを適所に固定保持するのに必要な最小圧力(約40kPa)より相当高い圧力を与えた。実施例1のRCFTデータを図2に示す。図2において、X軸は、シミュレートされたモノリス温度およびシミュレータされた表面温度の温度目盛りを表している。モノリス温度について、図1に示した温度範囲は、「A」で示された線で20から300℃へ、300(線「B」で示される)から50℃に戻った。シミュレートされた表面温度については、範囲はそれぞれ20〜100℃、100℃〜25℃であった。線AとBの間の間隔は、試料を最大温度に保持した15分間の時間を示している。Y軸は測定された圧力を表している。目盛りは0〜500kPaであった。曲線1〜3は、第1〜第3のサイクルの結果をそれぞれ表している。試験した全温度範囲にわたる適切な保持力は図2に示す通りとなった。
【0058】
実施例1のマットに、試験方法について上述した熱振動試験も行った。熱振動試験は、300℃と500℃の2つの温度でそれぞれ実施した。300℃で、実施例1のマットは72時間後でも不合格とならなかった。500℃では、実施例1のマットは80時間後でも不合格とならなかった。熱振動試験結果を以下の表2にまとめてある。
【0059】
実施例2
E−ガラスファイバー(チョップドガラスストランド、直径9μm、長さ1インチ(25.4mm)までチョップされたもの、アドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)(米国サウスカロライナ州のエーケン(Aiken, SC/USA))より入手可能)を用いた以外は、実施例1に記載された方法により、実施例2を作成した。実施例2のマットの組成は表1にまとめてある。
【0060】
実施例2のマットの試験には循環圧縮試験が含まれている。結果は表3にまとめてあり、ディーゼル汚染制御装置温度(平均マット温度250℃)で、マットは1000回の圧縮サイクル後、元の圧力を86.3%保持していることが分かる。
【0061】
実施例1で用いたのと同じ条件を用いて実施例2もRCFTで試験した。実施例2は、全温度範囲にわたって適切な保持力を維持していた。
【0062】
実施例3
直径約10μm、長さ36mmまでチョップドされたセイント−ゴバインベトロテックスドイチュランド(Saint−Gobain Vetrotex)より入手したR−ガラスファイバー(60%SiO2、25%Al23、9%CaOおよび6%MgO)を実施例1に記載した方法によりウェブへと処理した。実施例4のマットの組成は表1にまとめてある。
【0063】
実施例3のR−ガラスマットの試験には循環圧縮試験が含まれている。結果は表3にまとめてあり、ディーゼル汚染制御装置温度(平均マット温度250℃)で、マットは1000回の圧縮サイクル後、元の圧力を95.5%保持していることが分かる。
【0064】
さらに、シミュレートされた温度範囲がモノリスについては25℃〜500℃、表面については25〜200℃であった以外は実施例1のマットについてと同じやり方で実施例3のマットにRCFT試験を行った。実施例3は、全温度範囲にわたって適切な保持力を維持していた。
【0065】
実施例4
2つの別個に作成した層を併せてラミネートすることにより2層のマットを作成した。第1の層はR−ガラスから構成されていた。第2の層はE−ガラスから構成されていた。2層をニードルボンディングにより併せた。このやり方で形成された実装マットは異なる組成のガラスの2つの別個の層を有していた。実施例4の2層マットの組成は表1にまとめてある。
【0066】
実施例4の2層のマットに、実施例3の温度条件を用いてRCFT試験を行った。実施例4の実装マットは、全温度範囲にわたって適切な保持力を維持していた。
【0067】
実施例5
2つの別個に作成した層を併せてラミネートすることにより2層のマットを作成した。第1の層はS−2ガラスから構成されていた。第2の層はE−ガラスから構成されていた。2層をニードルボンディングにより併せた。このやり方で形成された実装マットは異なる組成のガラスの2つの別個の層を有していた。実施例5のマットの組成は表1にまとめてある。
【0068】
実施例5のマットの試験には循環圧縮試験が含まれている。結果は表3にまとめてあり、ディーゼル汚染制御装置温度(平均マット温度250℃)で、マットは1000回の圧縮サイクル後、元の圧力を82.2%保持していることが分かる。
【0069】
比較例1
比較例1(C1)は、ドイツブランド−エルビスドルフのベルヒェムファイバーマテリアルズ(Belchem Fiber Materials GmbH,Brand−Erbisdorf,Germany)より入手したファイバー直径9ミクロンのベルコテックス(Belcotex)シリカファイバーでできたバインダーを含まない不織ファイバーマットから構成されていた。
【0070】
この材料に、実装密度0.4g/cm3で実条件固定試験(RCFT)を行った。用いた温度範囲は上記の実施例3と同じであった。試験結果を表3に曲線C1で示してある。図3に、第3のサイクル結果を示してある。実施例1のマットに、比較例1のマットについてのRCFT試験に用いたのと同じ条件を与えた。図3に曲線1として示してある。図3から、比較例1のマットは、シミュレートされた条件下ではモノリスを適所に保持するのに十分な圧力を維持しなかったが、実施例1のマットはモノリスを保持するのに十分な圧力を維持したことが分かる。
【0071】
比較例2
比較例2(C2)は、バージニア州アルタヴィスタのBGFインダストリーズ(BGF industries、Altvista,Virginia)よりシルコソフト(Silcosoft)(商標)という名称で市販されているシリカファイバーでできた不織のバインダーを含まないファイバーから構成されていた。マット中のファイバーの平均直径は9ミクロンである。
【0072】
この材料に、実装密度0.4および0.45g/cm3で比較例1のシミュレートされた温度条件を用いて実条件固定試験(RCFT)を行った。第3のサイクルの試験結果をC2a(0.45g/cm3実装密度)およびC2b(0.40g/cm3実装密度)として図3に示す。ディーゼルエンジンの場合をシミュレートした条件下で適所にモノリスを保持するのに十分な圧力を比較例2のマットは維持していなかったことがわかる。圧力を表す図3のY軸の目盛りは0〜600kPaであった。
【0073】
比較例3
比較例3(C3)は、市販の膨張性汚染制御装置実装マットから構成されていた。約55%の未膨張の蛭石、約37%のファイバーおよび約8%の有機バインダーとを含んでいる。ファイバーは、直径約2〜3ミクロン、長さが0.5インチ以下の溶融形成されたアモルファスショット含有のアルミナ/シリカファイバーである。
【0074】
比較例3を熱振動試験に従って300℃で試験した。試料は8時間後に不合格となった。熱振動試験結果を表2にまとめてある。比較例3も循環圧縮試験で試験した。結果は表3にまとめてあり、ディーゼル汚染制御装置温度(平均マット温度250℃)で、マットは1000回の圧縮サイクル後、元の圧力を25.3%しか保持していないことが分かる。
【0075】
実施例1の温度条件を用いて実施例3もRCFTで試験した。第1のサイクル後で既に許容されない低保持力であった。
【0076】
比較例4
比較例4(C4)は、市販の還元蛭石膨張性汚染制御装置実装マットから構成されていた。約37%の未膨張の蛭石、約54%のファイバーおよび約9%の有機バインダーとを含んでいた。ファイバーは比較例3と同じであった。
【0077】
比較例4を熱振動試験に従って300℃および500℃で試験した。試料は300℃では8時間後、500℃では18時間後に不合格となった。熱振動試験結果を表2にまとめてある。
【0078】
比較例5
比較例5(C5)は、ジョージア州オーガスタのサーマルセラミクス(Thermal Ceramics、Augusta,Georgia)よりカオウールバルクファイバー(Kaowool Bulk Fibers)として入手可能な溶融形成されたショット含有アルミナシリケートファイバーから作成された湿式マットから構成されていた。ファイバーの直径は2〜3ミクロン、長さは約0.5インチである。
【0079】
比較例5を、試験方法について上述した循環圧縮試験に従って試験したところ、ディーゼルエンジンの汚染制御装置に用いるには許容されない49.8%のパーセント保持を示した。循環圧縮試験結果を表3にまとめてある。
【0080】
比較例6
比較例6(C6)は、イギリス、マージーサイド、ウィレルのサーマルセラミクスUK(Thermal Ceramics UK Lmtd.Wirrel,Merseyside,England)より密度12lb/ft3(0.2g/cm3)のウルトラフェルト(Ultrafelt)(商標)ペーパーとして市販されている「不織のバインダーを含まないマット材料」から構成されていた。このマットはアルミナ/シリカファイバーのニードルボンドマット(47%Al23および53%SiO2)である。マットのメーカーの技術データシートに従うと、ファイバーの長さは、製紙に一般的に用いられるものよりも長くなる。これは、ファイバーの長さが0.5インチを超えることを示している。
【0081】
比較例6も、試験方法について上述した循環圧縮試験に従って試験したところ、許容されない低い41.2%のパーセント保持を示した。
【0082】
循環圧縮試験結果を表3にまとめてある。
【0083】
比較例7
比較例7(C7)は、高アルミナ多結晶セラミックファイバーでできた市販の非膨張性汚染制御装置実装マットから構成されていた。マットは実質的にショットフリーであり、平均直径は3ミクロンである。
【0084】
比較例7も、試験方法について上述した循環圧縮試験に従って試験したところ、81.1%のパーセント保持を示した。循環圧縮試験結果を表3にまとめてある。これらの非常に高価なファイバーの保持力は許容されるものであったが、本発明のようには良好ではなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】分解した状態で示した本発明の触媒コンバータの斜視図である。
【図2】実条件固定試験における実施例1および比較例1および2のマットの結果である。
【図3】実条件固定試験における実施例1および比較例1および2のマットの結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織実装マットを備えたケースに配された汚染制御要素を含み、前記不織実装マットは、前記ケースと前記汚染制御要素との間に配置され、数平均直径が5μm以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーを前記マットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む非膨張性マットであり、前記ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、前記マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まない、汚染制御装置。
【請求項2】
前記ガラスファイバーが、前記ガラスファイバーの総重量に基づいて10〜30重量%の酸化アルミニウムと、52〜70重量%の二酸化ケイ素と、1〜12重量%の酸化マグネシウムとを含み、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および酸化マグネシウムの重量パーセンテージはそれぞれAl23、SiO2およびMgOとして理論値基準で計算されている、請求項1に記載の汚染制御装置。
【請求項3】
前記ガラスファイバーは、E−ガラス、S−ガラス、S2−ガラス、R−ガラスおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の汚染制御装置。
【請求項4】
前記不織マットが、ガラスファイバー組成が異なる2つ以上の層を含む、請求項1に記載の汚染制御装置。
【請求項5】
前記異なるガラスファイバー組成は、前記ガラスファイバーの長さおよび/または前記ガラスファイバーの平均直径が異なる、請求項4に記載の汚染制御装置。
【請求項6】
前記異なるガラスファイバー組成は、前記ガラスファイバーの化学組成が異なる、請求項4に記載の汚染制御装置。
【請求項7】
前記不織マットの実装密度が0.2〜0.7g/cm3である、請求項1に記載の汚染制御装置。
【請求項8】
ディーゼルエンジンと請求項1〜7のいずれか1項に記載の汚染制御装置とを含む機械。
【請求項9】
前記機械が自動車であり、前記ディーゼルエンジンがターボ過給直噴ディーゼルエンジンである、請求項8に記載の機械。
【請求項10】
前記機械がトラック、バスまたは少人数用車両から選択される自動車である、請求項8に記載の機械。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の汚染制御装置に排気ガスを与えることによりディーゼルエンジンから排気ガスを処理する方法。
【請求項12】
汚染制御装置のケースに汚染制御要素を実装するマットであって、前記マットは、数平均直径が5μm以上および長さが0.5〜15cmのチョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーを、前記マットの総重量に基づいて少なくとも90重量%含む非膨張性マットであり、前記ガラスファイバーはニードルパンチまたはステッチボンドされており、前記マットは有機バインダーを含まないまたは実質的に含まず、前記チョップドマグネシウムアルミニウムシリケートガラスファイバーの少なくとも2つの層を含み、前記2つの層のガラスファイバー組成が異なるマット。
【請求項13】
前記ガラスファイバー組成は、前記ガラスファイバーの長さおよび/または前記ガラスファイバーの平均直径が異なる、請求項12に記載のマット。
【請求項14】
前記ガラスファイバー組成は、前記ガラスファイバーの化学組成が異なる、請求項12に記載のマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−516043(P2006−516043A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524580(P2004−524580)
【出願日】平成15年7月8日(2003.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/021455
【国際公開番号】WO2004/011785
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】