説明

排気ガス浄化装置

【課題】排気ガスが低温域でもNOx浄化率を高くできる排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン10からの排気ガスを排気する排気管20に、尿素選択型ハニカム触媒(SCR)を設けて排ガス中のNOxを発生したアンモニアで還元浄化する排気ガス浄化装置において、前記尿素選択型ハニカム触媒32の担体33に尿素送液装置34を接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル車等のエンジンから排気される排気ガス中のNOxを除去するための排気ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル車等のエンジンの排気ガス中のNOx浄化を目的に加水分解や熱分解を経て得られたNH3を還元剤として使用する尿素SCR車載システムが知られている。
このシステムは、特許文献1,2に提案されるように、エンジン排気ポート側から前段の酸化触媒(CO・HC浄化、NO酸化用)、尿素噴射ノズル、SCR触媒、後段の酸化触媒(R−DOC/NH3分解)の順で配置・構成されている。
【0003】
図6は、過給機付きディーゼルエンジンの吸排気システムにおける排気ガス浄化装置を示したものである。
【0004】
ディーゼルエンジン10の吸気マニホールド11と排気マニホールド12は、過給機13のコンプレッサ14とタービン15にそれぞれ連結され、上流側吸気管16aからの空気がコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10に供給され、ディーゼルエンジン10からの排気ガスは、タービン15を駆動した後、排気管20に排気される。また排気管20と上流側吸気管16aには排気ガスの一部をエンジン10の吸気系に戻してNOxを低減するためのEGR管21が接続され、そのEGR管21にEGRクーラ22とEGRバルブ23とが接続される。
【0005】
この排気管20には、前段の酸化触媒(F−DOC)24、尿素供給装置25、SCR触媒26が設けられる。尿素供給装置25は、尿素水タンク27からの尿素水をドージングユニット(分注ポンプ)28にて、排気管20に設けた尿素水スプレーノズル29から噴射するようになっている。SCR触媒26の下流にはNOxセンサ18が設けられ、そのセンサ値で尿素水スプレーノズル29から噴射する尿素水量を制御するようになっている。また図には示していないがSCR触媒26の下流に後段の酸化触媒(R−DOC)が設けられる。
【0006】
排気管20を通る排気ガスは、前段の酸化触媒(F−DOC)24で、排ガス中のCO・HC浄化、NO酸化され、尿素水スプレーノズル29から噴射された尿素水が、SCR触媒26で尿素が選択的に還元されてNH3とされ、そのNH3により、排ガス中のNOxが、窒素と酸素に還元されて浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−41454号公報
【特許文献2】特開2006−212591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、尿素の分解(融点)温度は、132.7℃であり、排気ガス温度が175℃以下の低温では、尿素の分解が促進しないため噴射できない。また、排ガス温度が高くても、尿素を噴射した後、十分な拡散時間が得られないため、NH3の生成率が低い。
【0009】
以上の理由からSCRのポテンシャルを引き出せず、そのため、十分なNOx浄化率を得られない問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、排気ガスが低温域でもNOx浄化率を高くできる排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、エンジンからの排気ガスを排気する排気管に、尿素選択型ハニカム触媒(SCR)を設けて排ガス中のNOxを発生したアンモニアで還元浄化する排気ガス浄化装置において、前記尿素選択型ハニカム触媒の担体に尿素送液装置を接続したことを特徴とする排気ガス浄化装置である。
【0012】
請求項2の発明は、前記尿素選択型ハニカム触媒の上流側の排気管に前段酸化触媒が設けられる請求項1記載の排気ガス浄化装置である。
【0013】
請求項3の発明は、前記尿素選択型ハニカム触媒は、高気孔率ハニカム担体の各ハニカム通路にSCR触媒が担持されて全体に円筒状に形成され、その円筒状の尿素選択型ハニカム触媒が、排気管を拡径して設けた拡径部に収容され、その拡径部に尿素送液装置の送液パイプを接続した請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置である。
【0014】
請求項4の発明は、前記尿素送液装置は、尿素水タンクと、尿素水タンクに接続されると共に拡径部に接続される送液パイプと、その送液パイプに接続された送液ポンプからなり、送液パイプからの尿素水が、尿素選択型ハニカム触媒の外周から送液されると共に尿素選択型ハニカム触媒に含浸される請求項3記載の排気ガス浄化装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、尿素選択型ハニカム触媒の担体に直接尿素水を送液することで、毛細管現象により尿素選択型ハニカム触媒に浸透し、その間に尿素が加水分解や熱分解でアンモニアが低温域でも生成できるためNOx浄化率を高くすることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態を示す全体図である。
【図2】図1における尿素選択型ハニカム触媒(SCR)の拡大斜視図である。
【図3】本発明において、尿素選択型ハニカム触媒の担体に尿素水が拡散する状態を説明する図である。
【図4】本発明において、尿素選択型ハニカム触媒の担体に拡散した尿素水が、SCR触媒に浸透吸着してアンモニアを生成する状態を説明する図である。
【図5】本発明と従来の尿素選択型ハニカム触媒の排ガス入口温度とNOx浄化率の関係を示す図である。
【図6】従来の排気ガス浄化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、過給機付きディーゼルエンジンの吸排気システムにおける排気ガス浄化装置を示したもので、吸排気システムは、排気ガス浄化装置を除いて図6で説明した吸排気システムと同じであり、同一機能のものには同一符号を付している。
【0019】
ディーゼルエンジン10の吸気マニホールド11と排気マニホールド12は、過給機13のコンプレッサ14とタービン15にそれぞれ連結され、上流側吸気管16aからの空気がコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10に供給され、ディーゼルエンジン10からの排気ガスは、タービン15を駆動した後、排気管20に排気される。また排気管20と上流側吸気管16aには排気ガスの一部をエンジン10の吸気系に戻してNOxを低減するためのEGR管21が接続され、そのEGR管21にEGRクーラ22とEGRバルブ23とが接続される。
【0020】
本発明の排気ガス浄化装置は、排気管20に形成した拡径部30内に、前段酸化触媒(F−DOC)31が設けられると共にその下流に尿素選択型ハニカム触媒(SCR)32を設け、その尿素選択型ハニカム触媒32の担体33に尿素送液装置34を接続して構成される。
【0021】
尿素送液装置34は、尿素水タンク35と、尿素水タンク35に接続されると共に拡径部30に接続される送液パイプ36と、その送液パイプ36に接続された送液ポンプ37からなる。送液パイプ36の先端は、図2に示すようにSCR32の外周の複数箇所に送液できるように拡径部30の軸方向に複数本に分岐した注入部36a〜36dが形成される。
【0022】
また、SCR32の下流側の拡径部30には、NH3センサ38が設けられ、そのNH3センサ38の検出値で送液ポンプ37による尿素注入量が制御される。
【0023】
なお、図には示していないが、SCR32の下流側の排気管20に、後段の酸化触媒(R−DOC)が設けられ、また図6で説明したNOxセンサも適宜設けられる。
【0024】
尿素選択型ハニカム触媒32は、図3、図4に示すように高気孔率ハニカム担体33の各ハニカム通路40にSCR触媒41が担持されて全体に円筒状に形成されて拡径部30に収容され、その拡径部30に尿素送液装置34の送液パイプ36の先端の分岐された注入部36a〜36dが接続される。
【0025】
次に本実施の形態の作用を説明する。
【0026】
エンジン10からの排気ガスは排気マニホールド12から過給機13のタービン15を駆動した後、排気管20に排気され、前段酸化触媒(F−DOC)31から尿素選択型ハニカム触媒(SCR)32を通って浄化されて排気される。
【0027】
この際、尿素送液装置34にて、すなわち尿素水タンク35から送液パイプ36を介し送液ポンプ37から各注入部36a〜36dを通して送液することで、図3に矢印42で示したように尿素水Urが、毛細管現象で、尿素選択型ハニカム触媒32の担体33に直接注入・浸透し、図4に矢印43で示したように、SCR触媒41内で尿素Urが加水分解・熱分解され、尿素水の使用量を必要最低限にするとともに効率よくNH3を通路40内に生成することができる。
【0028】
その結果、SCRシステムのNOx浄化率を向上できる。さらにNOxを低温から浄化するには、低温時に排ガス中のCOを利用し前段酸化触媒(F−DOC)31にNOxを酸化保持し、排ガス温度が160℃〜200℃以上の温度で反応性の強いNO2として放出させる。放出されたNO2は尿素選択型ハニカム触媒32に流通した後に、尿素選択型ハニカム触媒32で容易に浄化される。
【0029】
以上本発明は、尿素水をハニカムに直接供給し、ハニカム内部に含浸・拡散させることで、含浸・拡散した尿素水は温度上昇に伴い、加水分解や熱分解でNH3を生成し、生成したNH3はSCR触媒層に拡散し吸着することができる。従って、NH3の生成率は10%以下と低いものの尿素の加水分解は100℃以上で生じるため、低温域においてもNOx浄化率の高い尿素SCRシステムとして成立する。また、尿素水の供給を液送ポンプ37で行うため、小容量・高精度の尿素供給が可能となり、尿素水の使用量を低減できる。この際、NH3センサ38で未反応のアンモニア量を検出し、液送ポンプ37で、尿素水の供給を制御することで、NOx量に応じた尿素水を供給でき、後段DOCでのアンモニア分解などの負荷を減らすことができる。
【0030】
さらにDOCとSCRを近接することができるので、DOCの小型化、SCRシステムの小型化、DOCに供給して温度上昇源にする軽油等のHC量を減らすことができ、燃費低減を図ることができる。
【実施例】
【0031】
図5は、図6に示した従来の排気ガス浄化装置と、図1に示した本発明の排気ガス浄化装置で、排気ガス中のNOxを除去したときの尿素選択型ハニカム触媒(SCR)入口温度とNOx浄化率の関係を示したもので、図示の実線aが本発明を、点線bが従来例の性能曲線を示している。
【0032】
従来例では、DOCとSCRの間の排気管に尿素を散布して、拡散・霧化→加水分解・熱分解を得てNH3を生成させるため、尿素の分解が促進しない低温(例えば175℃以下)では尿素を噴射しない。また、尿素噴射位置からSCR触媒の間で、尿素が十分に分解しない。よって、入口温度200℃以下では著しくNOx浄化率が低く、また200℃以上でも十分な除去率が得られない。
【0033】
このため、従来ではSCR直前に加水分解触媒を設置したり、SCR触媒に加水分解触媒を添加するなどの改良を行い尿素の分解を促進する場合もあるが、これは、スペース大、コスト大、SCR触媒のNOx浄化性能低下等の問題が生じる。
【0034】
これに対し、本発明は、尿素をSCR触媒の担体に注入し、ハニカム触媒温度の上昇により加水分解や熱分解で生じたNH3がSCR触媒に吸着するため、200℃の低温域でも浄化率が高く、かつ200℃以上でも浄化率を従来例よりさらに高くすることができる。
【0035】
また、従来例の尿素水ドージングユニットの尿素噴射量0.5〜30ml/minに対して、本発明は、送液ポンプ37として、液相ポンプを使用することができるので、尿素噴射量0.1m1〜40ml/minと、より小容量からの供給が可能である。また噴射形態は従来例が間欠噴射であるのに対して、本発明は連続噴射が可能である。
【0036】
このように本発明では、尿素水を直接ハニカムに含浸・拡散できるため、あらかじめ低温で、ハニカム内に尿素水を含浸させ、温度の上昇に伴って生成するNH3を有効に利用できる。そのため、従来例の尿素噴射方式と比べて低温のNOx浄化率を向上できる。
【符号の説明】
【0037】
10 エンジン
20 排気管
31 前段酸化触媒(F−DOC)
32 尿素選択型ハニカム触媒(SCR)
33 担体
34 尿素送液装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気ガスを排気する排気管に、尿素選択型ハニカム触媒(SCR)を設けて排ガス中のNOxを発生したアンモニアで還元浄化する排気ガス浄化装置において、前記尿素選択型ハニカム触媒の担体に尿素送液装置を接続したことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記尿素選択型ハニカム触媒の上流側の排気管に前段酸化触媒が設けられる請求項1記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記尿素選択型ハニカム触媒は、高気孔率ハニカム担体の各ハニカム通路にSCR触媒が担持されて全体に円筒状に形成され、その円筒状の尿素選択型ハニカム触媒が、排気管を拡径して設けた拡径部に収容され、その拡径部に尿素送液装置の送液パイプを接続した請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記尿素送液装置は、尿素水タンクと、尿素水タンクに接続されると共に拡径部に接続される送液パイプと、その送液パイプに接続された送液ポンプからなり、送液パイプからの尿素水が、尿素選択型ハニカム触媒の外周から送液されると共に尿素選択型ハニカム触媒に含浸される請求項3記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265856(P2010−265856A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119780(P2009−119780)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】