説明

排気流路バルブ

【課題】メインシール及びダストシールを備えるにもかかわらず、メインシールにかかる漏れ検査を実施可能とすることのできる排気流路バルブを提供する。
【解決手段】内燃機関の排気ガスが流れる排気流路13を有する弁ハウジング12と、弁ハウジング12の軸受部21内に回動可能に挿通された弁軸17と、弁軸17に取付けられかつ弁軸17の回動により排気流路13を開閉する弁体18と、軸受部21と弁軸17との間の環状隙間に設けられるメインシール45と、メインシール45よりも大気側における環状隙間に設けられるダストシール47とを備える。ダストシール47は、弁軸17に弾性的に接触するシールリップ52を備える。シールリップ52に、弁軸17に接触する突起54が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスの流路切替用や流量調整用等に用いられる排気流路バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排気流路バルブの従来例としては、例えば特許文献1に記載されたバルブアセンブリがある。そのバルブアセンブリについて説明する。図22はバルブアセンブリを示す断面図、図23は密封装置を示す側断面図である。
図22に示すように、バルブアセンブリは、エキゾーストマニホールドとインテークマニホールドとを連通する流路101を有するハウジング100と、流路101の流路断面積を調整するバタフライバルブ200とを備える。バタフライバルブ200は、ハウジング100の左右の両軸受部103,104内に回転可能に挿通された弁軸201と、前記流路101内に配置されると共に前記弁軸201に取付けられた円盤状の弁体202とを備えている。両軸受部103,104内には、弁軸201を回転可能に支持する軸受203,204が設けられている。また、右側の軸受部104の外端部は閉塞されている。また、左側の軸受部103からハウジング100の外部へ突出した弁軸201の外端にレバー205が取付けられている。レバー205がモータからの駆動力を受けることによって、弁軸201を介して弁体202が回動される。これにより、流路101の流路断面積が変化させられる。
【0003】
前記ハウジング100の両軸受部103,104と弁軸201との間で、両軸受203,204の流路101側における環状隙間に、密封装置310が設けられている。密封装置310は、図23に示されるように、外環311と内環312とシールリップ313とを備えている。外環311は、金属(例えばステンレス鋼板)製で、両軸受部103,104内に圧入固定されている。また、内環312は、金属(例えばステンレス鋼板)製で、外環311の内周にカシメ固定されている。外環311及び内環312には、互いに軸方向に並んだ内向き鍔部311a,312aが形成されている。また、シールリップ3131は、耐熱性及び耐酸性に優れたフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により円環板状に形成されている。シールリップ313の外径部313aは、外環311の鍔部311aと内環312の鍔部312aとの間に保持されている。また、シールリップ313の内径部313bは、前記弁軸201を挿入した状態(図22参照)では、流路101側を向いた状態に変形(図23中、一点鎖線参照)され、その変形状態で弁軸201の外周面に摺動可能に密接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−65729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例によると、ハウジング100の左側の軸受部103と弁軸201との間の環状隙間から大気側の外部ダストが侵入し、そのダストが軸受203と弁軸201との間の隙間を介して密封装置(本明細書でいう「メインシール」に相当する)310のシールリップ313と弁軸201との間に至ることにより、シールリップ313のシール性が損なわれるという問題があった。
【0006】
また、前記した問題の対策としては、ハウジング100の左側の軸受部103と弁軸201との間で左側の軸受203の大気側における環状隙間にダストシールを設け、密封装置310を外部ダストから保護することが考えられる。しかし、これでは、密封装置310及びダストシールの組付けによって二重シール構造となることから、密封装置310にかかる漏れ検査を実施することできないという問題があった。すなわち、ダストシールによって空気漏れのない状態ができるため、密封装置(メインシール)310の組付不良、破損等を確認することができず、バルブアセンブリの品質保証が困難となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、メインシール及びダストシールを備えるにもかかわらず、メインシールにかかる漏れ検査を実施可能とすることのできる排気流路バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする排気流路バルブにより解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された排気流路バルブによると、内燃機関の排気ガスが流れる排気流路を有する弁ハウジングと、弁ハウジングの軸受部内に回動可能に挿通された弁軸と、弁軸に取付けられかつ弁軸の回動により排気流路を開閉する弁体と、弁ハウジングの軸受部と弁軸との間の環状隙間に設けられかつ排気ガスの大気側への漏れを防止するメインシールと、メインシールよりも大気側における環状隙間に設けられかつメインシールを外部ダストから保護するダストシールとを備え、ダストシールは、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保する構成とされている。したがって、メインシール及びダストシールを備えるにもかかわらず、ダストシールで確保される通気性によって、メインシールにかかる漏れ検査を実施可能とすることができる。
【0009】
また、請求項2に記載された排気流路バルブによると、ダストシールは、弁軸に弾性的に接触するシールリップを備え、シールリップに、弁軸に接触することによって通気性を確保するための突起が形成されている。したがって、ダストシールに備えたシールリップが弁軸に弾性的に接触するとともに、シールリップに形成された突起が弁軸に接触する。これにより、シールリップにおける突起の周辺部分が弁軸から離されるため、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0010】
また、請求項3に記載された排気流路バルブによると、ダストシールは、弁ハウジングの軸受部内に圧入によって装着され、ダストシールの外周面に、通気性を確保するための通気溝が形成されている。したがって、ダストシールの外周面に形成された通気溝により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0011】
また、請求項4に記載された排気流路バルブによると、ダストシールの通気溝は、迷路状に形成されている。したがって、外部ダストがダストシールの通気溝を通過しにくくなることにより、ダストシールの耐ダスト性を向上することができる。
【0012】
また、請求項5に記載された排気流路バルブによると、ダストシールに、軸方向に貫通することによって通気性を確保するための通気孔が形成されている。したがって、ダストシールに形成された軸方向に貫通する通気孔により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0013】
また、請求項6に記載された排気流路バルブによると、ダストシールの通気孔が、通気性を有する繊維材により形成された通気栓で塞がれている。したがって、外部ダストが通気栓の繊維材で捕捉されることにより、ダストシールの耐ダスト性を向上することができる。
【0014】
また、請求項7に記載された排気流路バルブによると、ダストシールは、弁軸に弾性的に接触しかつ通気性を確保するための通気性を有する繊維材により形成されたシールリップを備えている。したがって、ダストシールに備えた通気性を有する繊維材により形成されたシールリップが弁軸に弾性的に接触する。これにより、シールリップの繊維材の通気性により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保するとともに、外部ダストがシールリップの繊維材で捕捉されることにより、ダストシールの耐ダスト性を向上することができる。
【0015】
また、請求項8に記載された排気流路バルブによると、ダストシールは、弁軸に弾性的に接触するシールリップを備え、シールリップに、通気性を確保するための凹溝が形成されている。したがって、ダストシールに備えたシールリップが弁軸に弾性的に接触するとともに、シールリップに形成された凹溝により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施の形態にかかるEGRクーラーバイパスバルブを示す正面図である。
【図2】EGRクーラーバイパスバルブを一部破断して示す示す側面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面図である。
【図6】図3のVI部を示す断面図である。
【図7】ダストシールを示す側断面図である。
【図8】通気路を示す断面図である。
【図9】ダストシールの変更例1を示す側断面図である。
【図10】ダストシールの変更例2を示す側断面図である。
【図11】ダストシールの変更例3を示す側断面図である。
【図12】ダストシールを示す正面図である。
【図13】ダストシールの通気溝の別例を部分的に示す正面図である。
【図14】ダストシールの変更例4を示す側面図である。
【図15】ダストシールを図14の紙面裏側から見た側面図である。
【図16】ダストシールの変更例5を示す側面図である。
【図17】ダストシールを図16の紙面裏側から見た側面図である。
【図18】ダストシールの変更例6を示す側断面図である。
【図19】ダストシールの変更例7を示す側断面図である。
【図20】ダストシールの変更例8を示す側断面図である。
【図21】ダストシールの変更例9を示す側断面図である。
【図22】従来例にかかるバルブアセンブリを示す断面図である。
【図23】密封装置を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本発明の一実施の形態を説明する。本実施の形態では、排気流路バルブとして、内燃機関に設けられるEGR装置(排気ガス再循環装置)のEGRクーラー付きのEGR装置に用いられるEGRクーラーバイパスバルブを例示する。EGRクーラーバイパスバルブは、排気ガス(EGRガス)をEGRクーラーに流す状態と、EGRクーラーをバイパスする状態とに切替えるためのものである。図1はEGRクーラーバイパスバルブを示す正面図、図2は同じく一部破断して示す側面図、図3は図1のIII−III線矢視断面図、図4は図1のIV−IV線矢視断面図、図5は図1のV−V線矢視断面図、図6は図3のVI部を示す断面図である。なお、本明細書では、図1の正面図を基準としてEGRクーラーバイパスバルブの左右上下の各方向を定めることにする。
【0019】
図1に示すように、EGRクーラーバイパスバルブ10は、弁ハウジング12を備えている。弁ハウジング12には、左右に並ぶ第1排気流路13及び第2排気流路14が形成されている(図3参照)。両排気流路13,14は、弁ハウジング12を前後方向(図1において紙面表裏方向、図3において上下方向)に貫通している。また、弁ハウジング12には、両排気流路13,14の中心線と直交する方向すなわち左右方向に貫通する一連状の弁軸挿通孔(符号省略)が形成されている。弁軸挿通孔には、弁軸17が両排気流路13,14を横断する状態で挿通されている。弁軸17には、第1排気流路13を開閉する板状の第1弁体18、及び、第2排気流路14を開閉する板状の第2弁体19がねじ止めにより取付けられている。なお、弁軸17と両弁体18,19によりバタフライバルブ16が構成されている。
【0020】
前記両弁体18,19は、前記弁軸17の回動によって両排気流路13,14を相反的に開閉する。すなわち、第1弁体18が閉じたとき(図4の実線18参照)は、第2弁体19が開く(図5の実線19参照)。また逆に、第1弁体18が開いたとき(図4の二点鎖線18参照)は、第2弁体19が閉じる(図5の二点鎖線19参照)。
【0021】
図3に示すように、前記弁ハウジング12において、前記弁軸17の両端部に対応する弁軸挿通孔を形成する壁部は、それぞれ軸受部21,22となっている。両軸受部21,22内には、弁軸17が左右の軸受24,25を介して回転可能に支持されている。両軸受24,25には、例えば滑り軸受(ブッシュ)が用いられている。また、右側の軸受部22の開口端部は、プラグ26によって閉塞されている。また、弁軸17の左端部は、左側の軸受部21を貫通して弁ハウジング12の外部へ突出されている。また、弁軸17の左端部の突出端には、レバー28の一端部が固定状に取付けられている(図2参照)。また、弁軸17の外周面に形成された環状溝29には、位置決め部材30が軸方向に位置決めされた状態で相対的に回転可能に係合されている(図6参照)。位置決め部材30は、左側の軸受部21の外端部に取付けられている。これにより、弁軸17のスラスト方向(軸方向)の移動が規制される。なお、弁ハウジング12と弁軸17との間に設けられるシール構造については後で説明する。
【0022】
図1に示すように、前記弁ハウジング12の左側部には、前記弁軸17を駆動すなわち回動するためのダイアフラム式のアクチュエータ32が配置されている。アクチュエータ32のアクチュエータ本体33は、弁ハウジング12の左側面にブラケット34を介して支持されている。図2に示すように、アクチュエータ本体33内は、ダイアフラム35により前後2室に区画されている。前室は、大気室36として大気に開放されている。また、後室は、アクチュエータ本体33の負圧管38を介して負圧が付与される負圧室37となっている。また、ダイアフラム35は、スプリング39により常に前方へ付勢されている。
【0023】
前記アクチュエータ32は、前記ダイアフラム35に連動して軸方向に進退移動する出力軸40を備えている。出力軸40は、アクチュエータ本体33から前方へ向けて突出されている。出力軸40の先端部(前端部)には、前記レバー28の先端部がピン42を介して回動可能に連結されている。したがって、負圧室37に負圧が付与されると出力軸40がスプリング39の付勢力に抗して後方の後退位置へ後退され、また、その負圧がパージされると出力軸40がスプリング39の付勢力により前方の進出位置へ進出される。この出力軸40の軸移動にともない、レバー28を介して前記弁軸17が回動される。これにより、前記弁ハウジング12の第1排気流路13と第2排気流路14とが選択的に開閉される。なお、アクチュエータ32としては、ダイアフラム式のアクチュエータに限らず、電動モータや電磁ソレノイド等の電動式のアクチュエータを用いることができる。
【0024】
前記EGRクーラーバイパスバルブ10において、前記第1排気流路13は、図示しないEGRクーラー付きのEGR装置における排気ガス(EGRガス)がEGRクーラーをバイパスするバイパス流路と連通される。また、前記第2排気流路14は、前記EGR装置における排気ガス(EGRガス)がEGRクーラーに流れるクーラー流路と連通される。また、前記アクチュエータ32の負圧室37に作用する負圧は、負圧制御装置(図示省略)により制御される。負圧制御装置は、例えば内燃機関の冷却水温度が低いエンジン始動時や寒冷時には、アクチュエータ32の負圧室37に負圧を作用させ、また、前記冷却水温度が所定の温度以上に上昇した時には、アクチュエータ32の負圧室37を大気に開放させる。
【0025】
したがって、エンジン始動時や寒冷時には、アクチュエータ32の負圧室37に負圧が作用されることにより、出力軸40がスプリング39の付勢力に抗して後退位置へ後退される。これにともない、前記レバー28を介して前記弁軸17が正方向(図4及び図5において右回り方向)へ回動されることにより、第1弁体18が開状態(図4中、二点鎖線18参照)で第2弁体19が閉状態(図5中、二点鎖線19参照)とされる。この状態においては、内燃機関の排気ガス(EGRガス)がバイパス通路を通って吸気通路へ再循環される。
【0026】
また、内燃機関の冷却水温度が所定の温度以上に上昇した時においては、アクチュエータ32の負圧室37が大気に開放されることにより、出力軸40がスプリング39の付勢力により進出位置に進出される。これにともない、前記レバー28を介して前記弁軸17が逆方向(図4及び図5において左回り方向)へ回動されることにより、第1弁体18が閉状態(図4中、実線18参照)で第2弁体19が開状態(図4中、実線19参照)とされる。この状態においては、内燃機関の排気ガス(EGRガス)がクーラー通路を通ることにより、EGRクーラーで冷却されてから吸気通路へ再循環される。
【0027】
次に、前記弁ハウジング12と弁軸17との間に設けられるシール構造について説明する。
図3に示すように、前記弁ハウジング12の両軸受部21,22と弁軸17の両端部との間で、両軸受24,25の排気流路13,14側の環状隙間には、メインシール45が設けられている。メインシール45は、前記従来技術で述べた密封装置310(図23参照)と同様の構成のものであるから、その説明を省略する。また、右側の軸受部22の開口端部はプラグ26によって閉塞されていることから、その軸受部22と弁軸17との間の環状隙間には大気側の外部ダストが侵入することがなく、外部ダストによるシールリップ313のシール性が損なわれない。
【0028】
ところで、前記左側の軸受部21と前記弁軸17との間の環状隙間に設けられたメインシール45は、排気ガス(EGRガス)、特に排気ガス中に含まれるスス、凝縮水、未燃焼物等のデポジット)の大気側への漏れを防止するものである。また、左側の軸受部21と弁軸17との間の環状隙間に大気側の外部ダストが侵入し、その外部ダストがメインシール45のシールリップ313と弁軸17との間に至ることで、シールリップ313のシール性が損なわれるおそれがある。そこで、左側の軸受部21と弁軸17との間で、軸受24の大気側の環状隙間には、メインシール45を外部ダストから保護するためにダストシール47が設けられている(図6参照)。
【0029】
次に、前記ダストシール47について説明する。図7はダストシールを示す側断面図である。
図7に示すように、ダストシール47は、補強環48とシール本体50とを一体に備えている。補強環48は、金属製の環状部材である。補強環48は、円筒状の円筒部48aと、円筒部48aの一端部(図7において右端部)から径方向内方へ折り曲げられたフランジ部48bとを有する断面L字状に形成されている。また、シール本体50は、ゴム状弾性材からなり、補強環48を全体的に被覆する環状の装着部51と、装着部51の内周部に一体形成されたシールリップ52とを有している。
【0030】
前記シールリップ52は、前記装着部51の内周部における前記補強環48のフランジ部48b側から他端部側(図7において左側)に向かって径方向内方へ斜めに延びる円錐筒状に形成されている。シールリップ52の内周面、詳しくは弁軸17に面する大気側の斜面には、例えば6個(図7では4個を示す)の突起54が周方向に等間隔で形成されている。突起54は、シールリップ52の周方向の断面が直角三角形状をなしている。突起54の長辺側はシールリップ52の基部側に配置され、短辺側が先端部側に配置されている。なお、突起54は、6個に限らず、少なくとも1個以上形成されていればよく、本実施の形態のようにバランスを考慮してシールリップ52の周方向に等間隔で複数個形成されているのが望ましい。また、突起54の形状、大きさ、突出量、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0031】
図6に示すように、前記ダストシール47を前記弁ハウジング12の左側の軸受部21と前記弁軸17との間の環状隙間に装着したときには、前記シール本体50の装着部51の外周部が、軸受部21の内周面に対して所定の締め代をもって弾性的に圧入される。また、シールリップ52が、弁軸17の外周面に対して所定の締め代をもって弾性的にかつ周方向に相対的に摺動可能に接触される。これにともない、突起54の頂部が、弁軸17の外周面に対して摺動可能に接触する。これにより、図8に示すように、シールリップ52における突起54の周辺部分が弁軸17から離されることにより、シールリップ52と弁軸17と突起54とで取り囲まれた断面三角状の隙間55が形成される。その隙間55により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通する通気性を確保することができる。
【0032】
前記したEGRクーラーバイパスバルブ10によると、弁ハウジング12の軸受部21と弁軸17との間の環状隙間に設けられかつ排気ガスの大気側への漏れを防止するメインシール45と、メインシール45よりも大気側における環状隙間に設けられかつメインシール45を外部ダストから保護するダストシール47とを備え、ダストシール47は、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保する構成とされている。したがって、メインシール45及びダストシール47を備えるにもかかわらず、ダストシール47で確保される通気性によって、メインシール45にかかる漏れ検査を実施可能とすることができる。
【0033】
なお、メインシール45の漏れ検査は、例えば排気流路13,14の開口端面を閉鎖した状態で、排気流路13,14内に空気を印加し、左側の軸受部21内からの空気の漏れの有無を判断することによって行われる。このとき、空気が漏れない場合は、メインシール45の組付不良、破損等がなく、メインシール45が正規の装着状態であることを確認することができる。また、空気が漏れた場合は、メインシール45の組付不良、破損等が発生している状態であることが判明する。
【0034】
また、ダストシール47は、弁軸17に弾性的に接触するシールリップ52を備え、シールリップ52に、弁軸17に接触することによって通気性を確保するための突起54が形成されている(図7参照)。したがって、ダストシール47に備えたシールリップ52が弁軸17に弾性的に接触するとともに、シールリップ52に形成された突起54が弁軸17に接触する(図8参照)。これにより、シールリップ52における突起54の周辺部分が弁軸17から離されるため、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性すなわち隙間55を確保することができる。
【0035】
次に、前記ダストシール47の変更例について説明する。なお、各変更例は、前記実施の形態におけるダストシール47に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
[変更例1]
ダストシール47の変更例1について説明する。図9はダストシールを示す側断面図である。
図9に示すように、本変更例は、シール本体50の装着部51の内周部にシールリップ58が形成されている。シールリップ58は、装着部51の内周部における補強環48のフランジ部48b側から大気側と反対側(図9において右側)に向かって径方向内方へ斜めに延びる円錐筒状に形成されている。シールリップ58の内周面(詳しくは弁軸17に面する側の面)には、例えば12個(図9では3個を示す)の突起54(前記実施の形態と同一符号を付す)が周方向に所定の間隔で形成されている。なお、装着部51の大気側と反対側の端面(図9において右端面)には、周方向に連続する環状凹部59が形成されている。
【0036】
前記シールリップ58は、弁軸17の外周面に対して所定の締め代をもって弾性的にかつ周方向に相対的に摺動可能に接触される。これにともない、シールリップ58の突起54の頂部が、弁軸17の外周面に対して摺動可能に接触することより、前記実施の形態と同様、シールリップ58の突起54の周辺部分が弁軸17から離されるため、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0037】
[変更例2]
ダストシール47の変更例2について説明する。本変更例は、前記変更例1(図9参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図10はダストシールを示す側断面図である。
図10に示すように、本変更例は、前記変更例1(図9参照)におけるシールリップ58を省略し、前記シール本体50の装着部51の内周部にシールリップ60が形成されている。シールリップ60は、前記装着部51の内周部における前記補強環48のフランジ部48b側から他端部側(図10において左側)に向かって延びる円筒状に形成されている。そして、シールリップ60の内周面には、弁軸17に面する先端側(図10において左側)の斜面61と、その斜面61に対して軸方向に対称状をなす基端側(図10において右側)の斜面62とが断面山形状をなすように形成されている。先端側の斜面61には、例えば12個(図9では3個を示す)の突起54(前記実施の形態と同一符号を付す)が周方向に所定の間隔で形成されている。
【0038】
前記シールリップ60の両斜面61,62の頂部は、弁軸17の外周面に対して所定の締め代をもって弾性的にかつ周方向に相対的に摺動可能に接触される。これにともない、シールリップ60の突起54の頂部が、弁軸17の外周面に対して摺動可能に接触することより、前記実施の形態と同様、シールリップ60の突起54の周辺部分が弁軸17から離されるため、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0039】
[変更例3]
ダストシール47の変更例3について説明する。本変更例は、前記変更例2(図10参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図11はダストシールを示す側断面図、図12は同じく正面図(ダストシールを図11の右方から見た図)である。
図11及び図12に示すように、本変更例は、前記変更例2(図10参照)におけるシールリップ60における突起54が省略されている。また、シール本体50の装着部51の内周部に、前記変更例1(図9参照)におけるシールリップ58と同様のシールリップ58(前記変更例1と同一符号を付す)が形成されている。なお、変更例1(図9参照)におけるシールリップ58における突起54が省略されている。
【0040】
前記シール本体50の装着部51における外周面には、軸方向に貫通する2個の通気溝64が周方向に等間隔で形成されている。通気溝64は、断面四角形状をなしている。したがって、ダストシール47のシール本体50の装着部51における外周面に形成された通気溝64により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0041】
なお、通気溝64は、2個に限らず、少なくとも1個以上形成されていればよく、本実施の形態のようにバランスを考慮してシール本体50の装着部51の周方向に等間隔で複数個形成されているのが望ましい。また、通気溝64の形状、大きさ、突出量、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、通気溝64は、図13に示すように、V字状の通気溝65に変更することができる。
【0042】
[変更例4]
ダストシール47の変更例4について説明する。本変更例は、前記変更例3(図11及び図12参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図14はダストシールを示す側面図、図15はダストシールを図14の紙面裏側から見た側面図である。
図14に示すように、本変更例は、前記変更例3(図11及び図12参照)の通気溝64を、ダストシール47の軸方向に二分して、大気側に開口する大気側溝部64aと、大気側と反対側に開口するメインシール側溝部64bが形成されている。大気側溝部64aとメインシール側溝部64bとの対向端部は、外周面に沿って周方向にC字環状に形成された周方向溝部64c(図15参照)を介して連通されている。すなわち、ダストシール47の通気溝64が、大気側溝部64aとメインシール側溝部64bと周方向溝部64cとを有する迷路状に形成されている。したがって、外部ダストがダストシール47の通気溝64を通過しにくくなることにより、ダストシール47の耐ダスト性を向上することができる。
【0043】
[変更例5]
ダストシール47の変更例5について説明する。本変更例は、前記変更例4(図14及び図15参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図16はダストシールを示す側面図、図17はダストシールを図16の紙面裏側から見た側面図である。
図16及び図17に示すように、本変更例は、前記変更例4(図14及び図15参照)の通気溝64における周方向溝部(符号、64dを付す)を四角波状に形成したものである。したがって、外部ダストがダストシール47の通気溝64における周方向溝部64dを一層通過しにくくなることにより、ダストシール47の耐ダスト性を向上することができる。なお、周方向溝部64dは、四角波状の他、三角波状、正弦波状等のように適宜変更することができる。
【0044】
[変更例6]
ダストシール47の変更例6について説明する。本変更例は、前記変更例3(図11及び図12参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図18はダストシールを示す側断面図である。
図18に示すように、本変更例では、前記変更例3(図11参照)のシール本体50の装着部51における通気溝64が省略されている。また、シール本体50の装着部51には、軸方向(図18において左右方向)に貫通する通気孔66が形成されている。通気孔66は、補強環48のフランジ部48bを貫通するとともに前記環状凹部59に開口されている。したがって、ダストシール47に形成された軸方向に貫通する通気孔66により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。
【0045】
[変更例7]
ダストシール47の変更例7について説明する。本変更例は、前記変更例6(図18参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図19はダストシールを示す側断面図である。
図19に示すように、本変更例では、前記変更例6(図18参照)の通気孔66が通気栓68で塞がれている。通気栓68は、通気性を有する繊維材により形成されている。したがって、外部ダストが通気栓68の繊維材で捕捉されることにより、ダストシール47の耐ダスト性を向上することができる。なお、通気栓68の繊維材としては、例えば、繊維を圧縮して形成した柱状のフェルト状材を用いることができる。
【0046】
[変更例8]
ダストシール47の変更例8について説明する。本変更例は、前記変更例1(図9参照)におけるダストシール47に変更を加えたものである。図20はダストシールを示す側断面図である。
図20に示すように、本変更例では、前記変更例1(図9参照)におけるシールリップ58が省略されている。また、シール本体50の装着部51の内周部の大気側と反対側(図20において右側)の端面には、通気性を有する繊維材により形成された円環板状のシールリップ70の外周部が装着されている。シールリップ70の内周部は、弁軸17の外周面に弾性的に接触する。シールリップ70の繊維材の通気性により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保するとともに、外部ダストがシールリップ70の繊維材で捕捉されることにより、ダストシール47の耐ダスト性を向上することができる。なお、シールリップ70の繊維材としては、例えば、繊維を圧縮して形成したフェルト状材を用いることができる。
【0047】
[変更例9]
ダストシール47の変更例9について説明する。図21はダストシールを示す側断面図である。
図21に示すように、本変更例では、前記実施の形態(図7参照)のシールリップ52における突起54が省略されている。また、シールリップ52の先端部に、例えば4個(図21では2個を示す)の凹溝72が周方向に所定の間隔で形成されている。凹溝72は、例えば四角溝状をなしている。したがって、シールリップ52に形成された凹溝72により、環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保することができる。なお、凹溝72は、4個に限らず、少なくとも1個以上形成されていればよく、バランスを考慮してシールリップ52の周方向に等間隔で複数個形成されているのが望ましい。また、凹溝72の形状、大きさ、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0048】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の排気流路バルブは、EGRクーラーバイパスバルブ10に限らず、内燃機関の排気系のバルブ、例えば自動車の排気ブレーキ用バルブとしても適用することができる。また、前記実施の形態及び前記変更例で説明した技術的要素は組合せることもできる。また、メインシール45については、前記実施の形態のものに限らず、適宜変更することが可能である。また、前記実施の形態及び前記変更例で説明したダストシール47における大気側と大気側と反対側のメインシール側とは、前記下向きに限らず、その向きとは逆向きにして配置することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…EGRクーラーバイパスバルブ(排気流路バルブ)
12…弁ハウジング
13,14…排気流路
17…弁軸
18,19…弁体
21,22…軸受部
45…メインシール
47…ダストシール
50…シール本体
51…装着部
52…シールリップ
54…突起
64…通気溝
66…通気孔
68…通気栓
70…シールリップ
72…凹溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスが流れる排気流路を有する弁ハウジングと、
前記弁ハウジングの軸受部内に回動可能に挿通された弁軸と、
前記弁軸に取付けられかつ該弁軸の回動により前記排気流路を開閉する弁体と、
前記弁ハウジングの軸受部と前記弁軸との間の環状隙間に設けられかつ前記排気ガスの大気側への漏れを防止するメインシールと、
前記メインシールよりも大気側における前記環状隙間に設けられかつ前記メインシールを外部ダストから保護するダストシールと
を備え、
前記ダストシールは、前記環状隙間におけるメインシール側の空間部と大気側とを連通するための通気性を確保する構成とされている
ことを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールは、前記弁軸に弾性的に接触するシールリップを備え、
前記シールリップに、前記弁軸に接触することによって前記通気性を確保するための突起が形成されている
ことを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項3】
請求項1に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールは、前記弁ハウジングの軸受部内に圧入によって装着され、
前記ダストシールの外周面に、前記通気性を確保するための通気溝が形成されている
ことを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項4】
請求項3に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールの通気溝は、迷路状に形成されていることを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項5】
請求項1に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールに、軸方向に貫通することによって前記通気性を確保するための通気孔が形成されていることを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項6】
請求項5に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールの通気孔が、通気性を有する繊維材により形成された通気栓で塞がれていることを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項7】
請求項1に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールは、前記弁軸に弾性的に接触しかつ前記通気性を確保するための通気性を有する繊維材により形成されたシールリップを備えていることを特徴とする排気流路バルブ。
【請求項8】
請求項1に記載の排気流路バルブであって、
前記ダストシールは、前記弁軸に弾性的に接触するシールリップを備え、
前記シールリップに、前記通気性を確保するための凹溝が形成されている
ことを特徴とする排気流路バルブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−256942(P2011−256942A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131919(P2010−131919)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】