説明

排気流路制御弁

【課題】 ハウジングに形成した排気流路を開閉する弁体と、この弁体を閉じ方向に付勢する弁ばねを備え、排気流路を流れる排気ガスの圧力が所定値を超えると排気流路を開く排気流路制御弁において、弁体の開弁時の応答性を高める。
【解決手段】 排気流路制御弁のハウジング30の弁座30aに着座する弁体31は、排気ガスの流れに向かって凹形状の排気ガス受部31aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用などのエンジンからの排気ガスが流れる排気流路に設けられる排気流路制御弁、特に、その弁体の開弁時の応答性を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンからの排気ガスが流通する排気流路が形成されたハウジング30(60)と、ハウジング30(60)に形成された弁座に着座にすることにより排気流路を閉じ、弁座から浮揚することにより排気流路を開く弁体20(70)と、弁体20(70)を弁座側に付勢するばね40を備え、排気ガスの圧力が所定値以上になると弁体20(70)が弁ばね40の付勢力に抗して弁座から浮揚し、排気流路を開くようにした排気流路制御弁は、既に知られている(後記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−188974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1に示されるものは、弁体20(70)は、排気ガスの流れに向かって凸形状になっているため、排気ガスの圧力(静圧力)が上昇して弁体20(70)が開き始めて(浮揚を始めて)排気ガスが流れ出したときに、排気ガスの流れ(動圧力)に逆らう抵抗が小さく、排気ガスの流れによって弁体20(70)が受ける開弁方向(浮揚方向)への力が小さい。したがって、弁体20(70)が開き出しても完全に開いた状態(ストッパに当たった状態)まで一気に移行せず、開閉弁の応答性が良くないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、弁体が受ける開弁方向の排気ガスの動圧力に抵抗する力が大きくなるように弁体を改良して、その弁体の開弁時の応答性を高めるようにした、新規な排気流路制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本請求項1記載の発明は、エンジンからの排気ガスが流通する排気流路が形成されたハウジングと、
ハウジングに形成された弁座に着座することにより排気流路を閉じ、弁座から浮揚することにより排気流路を開く弁体と、弁体を弁座側に付勢する弁ばねと、を備え、
排気ガスの圧力が所定値以上になると弁体が弁ばねの付勢力に抗して弁座から浮揚し、排気流路を開く排気流路制御弁であって、
弁体は、排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本請求項1記載の発明によれば、弁体は排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部を備えているので、排気ガスの圧力(静圧力)が上昇して弁体が開き始めて(浮揚し始めて)排気ガスが流れ出したときに、排気ガスの流れ(動圧力)に逆らう抵抗が大きくなり、排気ガスの流れによって弁体が受ける開弁方向(浮揚方向)への力が大きくなる。したがって、弁体が開き出すと完全に開いた状態(ストッパに当たった状態)にまで一気に移行するようになり、弁体の開弁時の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】排気流路制御弁をもつ消音器を備えた車両用エンジンの排気系の全体平面図
【図2】図1の2矢視の消音器の破断斜視図
【図3】図2の3矢視の断面図
【図4】図3の4−4線に沿う拡大断面図
【図5】図4の5−5線に沿う拡大断面図
【図6】図3の6−6線に沿う拡大断面図
【図7】図6の7−7線に沿う断面図
【図8】図6の8−8線に沿う断面図
【図9】図6の9−9線に沿う断面図
【図10】排気流路制御弁の斜視図
【図11】本発明の第2実施例にかかる排気流路制御弁の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
まず、図面1〜10を参照して本発明の第1実施例について説明する。
【0011】
この実施例は、本発明による排気流路制御弁を、車両用V型エンジンの排気系に実施した場合であり、以下の説明において、前後、左右および上下とは、車両の前進方向を基準にしていう。
【0012】
図1において、全体を符号Eで示す車両用エンジンは、V型多気筒エンジンであって、対をなす左、右バンクBL,BRを備え、それらのバンクBL,BRの排気マニホールドには、第1の排気管P1と第2の排気管P2がそれぞれ接続されている。第1および第2の排気管P1,P2は、車体Fの幅方向に離れてその前後方向に延長されており、それらの排気管P1,P2には、その上流側から下流側に順に、一次触媒CA1、二次触媒CA2、および補助消音器(プリチャンバ)PCが直列に接続されている。そして、第1および第2の排気管P1,P2の下流端は、ジョイントJ,Jを介して消音器Mに並列に接続されている。補助消音器PC,PC同士は相互に連結されて相互間の距離が規制され、また、第1および第2の排気管P1,P2の補助消音器PC,PCよりも下流側は、弾性支持部材S1,S1を介して車体Fに吊下支持され、さらに消音器Mの左右両端は他の弾性支持部材S2,S2を介して車体Fに吊下支持されている。
【0013】
そして、エンジンEの運転により、そこから排出された排気ガスは、一次および二次触媒コンバータCA1,CA2により、そこに含まれるHC、CO、NOxなどの有害成分が浄化されたのち、補助消音器PCを通って補助的に消音されたのち、消音器Mにより主たる消音がなされて外部に排出される。
【0014】
つぎに、前記消音器Mの構成について、図1に図2〜10を併せ参照して詳細に説明する。
【0015】
消音器Mは、その縦中心軸線L−Lが車体Fの前後方向に対して横切る方向の配設されており、その主体部をなす消音器本体1と、エンジンEからの排気ガスを消音器本体1に導く左右一対の第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rと、消音器本体1の膨張室20,21,21内の排気ガスを外部に排出する左右一対の排気ガス排出管5,5とを備えている。
【0016】
消音器本体1は、消音器Mのハウジングを構成しており、左右両端面を開放した円筒状のシェル10と、このシェル10に左側開口端に気密に固定される左端壁11と、このシェルの右側開口端に気密に固定される右端壁12とより密閉の円筒状に形成され、その内部に消音室が形成される。そして、この消音器本体1は、その縦中心軸線L−Lを左右方向に向けて車体Fに支持にされる。
【0017】
消音器本体1の内面の長手方向の中央部分には、前記左右端壁11,12と略平行に、パンチング孔よりなる多数の小孔15を穿設した左右一対の内側セパレータ13,13が固定され、一対の内側セパレータ13,13間には、膨張室20が形成されている。また、消音器本体1の内面の長手方向の左、右端壁11,12寄りの部分には、前記左、右端壁11,12と略平行に、左右一対の外側セパレータ14,14が固定されており、内側セパレータ13,12と外側セパレータ14,14との間には膨張室21,21が形成され、外側セパレータ14と左端壁11との間、および外側セパレータ14と右端壁12との間には、共鳴室21Rがそれぞれ形成されている。
【0018】
消音室本体1の、長手方向の中央よりも左右端壁11,12寄りに偏らせて、シェル10には、左右一対の第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rがそれぞれ貫通接続されている。第1の排気ガス導入管2Lの上流端および第2の排気ガス導入管2Rの上流端は、消音器本体1の外部において前記第1の排気管P1の下流端および第2の排気管P2の下流端にジョイントJ,Jを介してそれぞれ接続されており、また、第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rは、消音器本体1の膨張室21,21内において、一方の分岐管3,3と、他方の分岐管4,4とに二又状にそれぞれ分岐されている。一方の分岐管3,3は、消音器本体1内の中央に向かって延びており、その下流側端部が内側セパレータ13,13の中央部に貫通支持されて、膨張室20の中央部、すなわち消音器本体1の縦中心軸線L−L上に開口されている。そして、図2,3に示すように、左右一対の一方の分岐管3,3の下流側端部開口は、膨張室21内の中央部において空間を存して相互に対向配置されている。一方、左右一対の他方の分岐管4,4は、消音器本体1内を左右端壁11,12に向かってそれぞれ延びており、その下流側端部が外側セパレータ14,14の径方向に偏った位置に形成される開口44に貫通支持されて、後述の排気流路制御弁Vの入口に連通されている。
【0019】
前記排気流路制御弁Vとは離隔して径方向の偏った位置において、左右一対の外側セパレータ14,14と、左右端壁11,12との間には、前記共鳴室21Rを貫通する左右一対の排気ガス排出管5,5がそれぞれ消音器本体1の軸方向に沿って支持されており、それらの排気ガス排出管5,5の上流端は、末広状に拡開されて内側および外側セパレータ13,13,14,14間の膨張21,21内に開口され、また、その下流端には、外部に開口するテールパイプ23,23がそれぞれ接続される。
【0020】
左右一対の外側セパレータ14,14には、各一対の連通管16,17が貫通支持され、これらの連通管16,17は、内側および外側セパレータ13,14間の膨張室21,21と、共鳴室21Rとを相互に連通している。
【0021】
左右一対の内側セパレータ13,13と左右一対の外側セパレータ14,14とは、周方向の間隔をあけてそれらの外周部に固定される複数本(3本)の連結棒18によりそれぞれ連結されている。
【0022】
前記共鳴室21R内には、その共鳴室21Rとは遮断される、断面楕円形状の排気通路管33が設けられる。この排気通路管33は、外側セパレータ14と左端壁11間および外側セパレータ14と右端壁12間とに跨がって設けられており、その上流側端部開口は、外側セパレータ14に形成した開口44に接続されて他方の分岐管4の下流側端部開口に連通され、またその下流側端部開口は、テールパイプ24に連通されている。前記排気通路管33内には、排気流路制御弁Vが設けられる。
【0023】
つぎに、この排気流路制御弁Vの構造について、主に、図3,6〜10を参照して説明する。
【0024】
この排気流路制御弁Vは、排気通路管33内の排気流路35に設けられるハウジング30と、このハウジング30の弁座30aに着座する弁体31と、この弁体31を弁座30a側に付勢するねじりコイルばねよりなる弁ばね32と、排気流路34の軸線l−lに垂直な面v−v方向に弁体31の位置を規制する弁体31の位置規制機構Aを備えている。前記ハウジング30は、短円筒状に形成されていて、その内部に前記排気流路35に連通する排気流路34が形成されて、その上流側端部が、前記排気通路管33と共に外側セパレータ14の開口44に支持されて、他方の分岐管4の下流側端部に連通されている。またハウジング30の下流側端部開口は排気流路35内に臨んでおり、その周縁に外側フランジ30bが径方向外側に向けて一体に形成されていて、この外側フランジ30bの外面に、環状の弁座30aが形成されている。この弁座30aには環状の金属メッシュシート37が重ね合わされている。図8,9に示すように、この金属メッシュシート37は、その内周側半部37aが、ハウジング30内の内周面に向けて折り曲げられて、金属メッシュ37がハウジング30に固定されるための固定部F2を形成し、固定部F2はハウジング30の内周面に固定されるリング状部材36によりハウジング30の内周面に圧着される。そして、このリング状部材36は、固定部F2を内側から覆うため、固定部F2が、ハウジング30内を流れる排気ガスに直接曝されることがなくなる。
【0025】
ところで、金属メッシュシート37の固定部F2が排気ガスのガス流に直接曝されると、シール部Sを含めた金属メッシュシート37の温度が過度に上昇して、その金属メッシュシート37に歪みを生じシール性能の低下が懸念されるが、前記固定部F2は、リング状部材36によりハウジング30の内周面との間に圧着され、しかも、前述のように、リング状部材36は固定部F2を内側から覆い、固定部F2は排気ガスのガス流に直接曝されることがないので、金属メッシュシート37の温度上昇が抑制される。
【0026】
図6,7,10に示すように、前記外側フランジ30bの外周には、周方向に間隔をあけて複数のカシメ片30c…が一体に形成されており、これらのカシメ片30c…を金属メッシュシート37の外周面に向けて折曲げて、そこにカシメることにより、この金属メッシュシート37は前記弁座30aに圧着固定される。そして、この金属メッシュシート37は、その外周面の径方向外側に前記カシメ片30c…によりカシメられた、圧着による他の固定部F1が、また、その径方向内側に弁体31が着座されるシール部Sが形成される。
【0027】
しかして、前述したように、金属メッシュシート37は、ハウジング30の内周面に固定部F2をもって圧着固定され、またハウジング30の弁座30aに、前記他の固定部F1をもって圧着固定されており、この圧着による金属メッシュシート37のハウジング30への固定は、金属メッシュシート37の固定に伴う成形形状の変化の周囲への拡がりが、溶接による固定に比べてきわめて小さくなり、金属メッシュシート37をハウジング30に固定した後もシール部Sの成形形状を確実に成形初期の状態に維持することができ、弁体31閉弁時における、排気ガスのシール性能が高められる。
【0028】
図6,8,10に示すように、前記ハウジング30の下流側端部開口には、この開口を開閉する円盤状の弁体31が相対向して配置されており、この弁体31の背面、すなわちハウジング30内を流れる排気ガスと対面しない側の面の中央部には、ばね取付部材38が固定されている。このばね取付部材38には、半円筒状のばね受部38aが形成されており、このばね受部38aの凹部には金属メッシュよりなる緩衝材39を介して捩りコイルばねよりなる弁ばね32が収容支持されている。ハウジング30の外側フランジ30bには、その対角位置に対をなすばね取付舌片30d,30dが、その軸線方向に向けて一体に起立形成されており、それらのばね係止舌片30d,30dにそれぞれ開口した係止孔40,40に、前記弁ばね32の両端32a,32aが係合されている。そして、弁ばね32の弾発力は、弁体31を、弁座30aに着座するように付勢している。図10に明瞭に示すように、ばね受部38aの上部および側部には、それぞれ一対の上部および側部ばね抑え38b,38cが一体に形成され、これらのばね抑え38b,38cは、弁ばね32の外方および側方への遊動を抑止する。
【0029】
図8に示すように、弁体31の正面、すなわちハウジング30内を流れる排気ガスと対面する面の中央部には、排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部31aが一体に成形されている。また、弁体31の内面の排気ガス受部31aの外側には、ハウジング30側に隆起する環状の隆起部31bが前記排気ガス受部31aの同心状に一体に成形されている。
【0030】
しかして、排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部31aは、ハウジング30の排気流路34を流れる排気ガスの圧力の上昇により弁体31が開き始めて排気ガスが流れ出したときに排気ガスの動圧力に逆らう抵抗を大きくし、これにより排気ガスの流れによって弁体31が受ける開弁方向の力を大きくし、弁体31の開弁開始からその全開に至るまでの弁体31の応答性を高めるように作用する。
【0031】
前記ハウジング30と弁体31には、排気流路34の軸線l−lに垂直な面v−v方向の弁体31の位置を規制する、一対の弁体31の位置規制機構Aが設けられる。
【0032】
以下に、この弁体31の位置規制機構Aの構造を、主に、図6,9,10を参照して説明するに、前記ハウジング30の外側フランジ30bの径方向の対角位置には、対をなす突出片30f,30fが一体に突設され、各突出片30f,30fには挿通孔41が形成され、この挿通孔41には、ブッシュ42が嵌着される。このブッシュ42は、そのフランジ部42aが、突出片30fと、そこに固着される挟持プレート43とで挟持固定される。前記ブッシュ42には、特殊形状の嵌合孔45が形成されている。すなわち、図9に示すように、この嵌合孔45は、その軸線方向の中央cの内径dが最小で、かつ前記軸線方向に両端部に近づくにつれて内径が対称的に漸増する断面鼓状のくびれ孔により構成されている。そして、このくびれ孔よりなる嵌合孔45には、後述する案内軸47が摺動自在に貫通嵌合される。
【0033】
一方、前記弁体31の径方向の対角位置には、前記一対の突出片30fとに対応して対をなす取付片31c,31cが一体に形成されており、各取付片31cにはハウジング30の軸線方向に延びる案内軸47の一端が固定されており、この案内軸47は、断面円形の真直軸よりなり、くびれ孔よりなる嵌合孔45に摺動自在に貫通嵌合されており、この案内軸47と、嵌合孔45とは、それらの相対位置の如何にかかわらず常に点当たり、すなわち、点接触される。案内軸47の自由端にはストッパ48が固定されており、このストッパ48は、挟持プレート43と係合することにより、弁体31の全開状態を規制する。そして、前記弁体31の位置規制機構Aは、弁体31がハウジング30の軸線上を平行に開閉移動するように、ハウジング30の軸線l−lに対して垂直な面v−v方向の弁体31の位置を規制している。
【0034】
しかして、前記ブッシュ42は、グラファイト(黒鉛)またはSiC(炭化ケイ素)により構成される外、案内軸47が嵌合孔45に点当り、すなわち点接触するときの、異音の発生をより確実に防止させるべく、金属メッシュにより構成してもよく、また案内軸47が嵌合孔45に点接触するときの、摩擦をより確実に低減すべく、案内軸47または嵌合孔45にDLC(ダイアモンドライクカーボン)などの摩擦低減材をコーティングしてもよい。
【0035】
前記排気流路制御弁Vは、その入口が他方の分岐管4の下流側開口に直接連通され、またその出口は、共鳴室21R内に設けられる排気通路管33に連通され、共鳴室21Rを経ることなく、直接外部に開口される。第1および第2の排気ガス導入管2L,2R内の排気ガス圧力が所定値以下のときは、弁体31は、弁ばね32の弾発力により他方の分岐管4の下流側開口を閉じて閉弁され、他方の分岐管4と外部とが遮断状態に維持され、また、第1および第2の排気ガス導入管2L,2R内の排気ガス圧力が所定値を超えるときは、弁体31は弁ばね32の弾発力に抗して浮揚して開弁され、他方の分岐管4の下流側開口を排気通路管33を介して外部に開放させる。このとき、弁体31の位置規制機構Aの案内軸47は、その嵌合孔45内を点接触しつつ弁体31と共に摺動して弁体31が浮揚したときの摩擦(フリクション)を低減する。そして、弁体31の全開時には、ストッパ48は、ハウジング30に固着の挟持プレート43に係合して、その全開位置を規制する。
【0036】
前記排気ガス排出管5,5の下流端および排気通路33の下流端は、左端板11と右端端板12に接続されるテールパイプ23,24にそれぞれ連通され、外部に開口される。またテールパイプ23の途中にサイドブランチ(共鳴型消音器)25が接続される(図1参照)。
【0037】
つぎに、この第1実施例の作用について説明する。
【0038】
いま、V型エンジンEの運転によれば、左右バンクBL,BRから排出される排気ガスは、第1排気管P1および第2の排気管P2を流れ、一次および二次触媒CA1,CA2をそれぞれ流れてNx、CO、HCなどの有害成分を浄化したのち、プリチャンバPC,PCに入り、ここで一次消音されたのち、第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rを経て消音器Mへと導かれて、ここで後述するように主たる消音がなされた後、外部へと排出される。
【0039】
エンジンEのアイドリング運転、始動運転を含む低速運転域では、エンジンEの燃焼圧力が低く、そこから排出される排気ガスの圧力も低いため、第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rより消音器本体1に流入した排気ガスの圧力は、排気流路制御弁Vの弁ばね32の弾発力よりも弱いため、排気流路制御弁Vの弁体32は、図8,9実線位置に示すように、ハウジング30に形成された弁座30aに着座されて排気流路34を閉じ状態を維持している。したがって、第1および第2の排気ガス導入管2L,2Rに導入された排気ガスは、その全量が図3実線矢印aに示すように、左右の一方の分岐管3,3内を通って膨張室20内に流入し、その後左右の内側セパレータ13,13の小孔15を通過して左右の膨張室21,21へと分流し、左右の排気ガス排出管5,5を通って外部に排出される。この過程で、排気ガスの排気音は膨張室20,21,21内での膨張による消音効果と、共鳴室21R,21R内での共鳴による消音効果とにより効果的に消音される。
【0040】
ところで、エンジンEの低速運転域では、第1および第2の排気ガス導入管2L,2Rに導入された排気ガスは、その全量が左右の一方の分岐管3,3内を通って膨張室20内に流入するので、膨張室20内に流入する排気ガスの量が増加し、その上、膨張室20内では、左右一方の分岐管3,3の下流側端部開口が相対向しているので、干渉に関与する排気ガスの量が可及的に増え、排気ガスの干渉量も増える。その結果、排気ガスの干渉に基づく消音効果が大幅に高められる。
【0041】
特に、図2,3に示すように、第1の排気ガス導入管2Lの、一方の分岐管3の下流側端部開口および第2の排気ガス導入管2Rの、一方の分岐管3の下流側端部開口は、消音器M本体の縦中心軸線L−L上にあって、膨張室20の中央部で空間を存して相互に対向しているので、干渉させた後の排気ガスを膨張室20内で均等に膨張させることができ、排気ガスの膨張による消音効果も高めることができる。
【0042】
一方、エンジンEの燃焼が完爆状態となって、それが高速運転域に達すると、燃焼圧力が高くなり、そこから排出される排気ガスの圧力も高くなると、第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rに流入する排気ガスの圧力も高くなり、これが所定値以上になると、ハウジング30内に流入した排気ガスの圧力は、排気流路制御弁Vの弁ばね32のばね力よりも高くなり、図8,9に鎖線で示すように、弁体31は、弁ばね32の付勢力に抗して浮揚し、排気流路制御弁Vの弁体31は開弁される。
【0043】
このとき、前記弁体31の位置規制機構Aが、弁体31の軸線l−lに垂直な面v−v方向の位置を規制する。すなわち、一対の案内軸47,47は、ブッシュ42の嵌合孔45に案内されて摺動する。その際に、案内軸47,47と嵌合孔45,45とは、前述したように、常に点当り(点接触)しているので、弁体31が浮揚するときの摩擦が小さくなり、弁体31の開閉が安定する。また、案内軸47,47と嵌合孔45,45との接触面積が減り、それらが接触摺動するときに発生する異音はきわめて小さい。そして、排気流路制御弁V,Vが開弁すると、第1の排気ガス導入管2Lおよび第2の排気ガス導入管2Rに流入した排気ガスの大部分は、膨張室20,12,21を経由することなく、他方の分岐管4,4、排気流路制御弁V、排気流路管33を通って直接外部に排出されるようになり、排気ガスの流通抵抗が大幅に低減される。
【0044】
また、弁体31に形成される、排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部31aは、ハウジング30内を流れる排気ガスに対向しているので、排気ガスの圧力が上昇して弁体31が開弁し排気ガスが流れ出したときに、排気ガスの流れ(動圧力)に逆らう抵抗を大きくして、排気ガスの流れによって弁体31が受ける開弁方向への力を大きくするように作用している。そして、弁体31は開き出し、ストッパ48が挟持プレート43に係合して完全に開いた状態となるまで一気に移行する。したがって、弁体31は、その開弁開始から完全に開弁した状態に至るまで一気に移行するようになり、弁体31の開弁時の応答性が高められる。
【0045】
また、第1および第2の排気ガス導入管2L,2Rは、左右端壁11,12間でシェル10を貫通して消音器本体1に接続され、それらの排気ガス導入管2L,2Rの、排気流路制御弁V,Vを設けた側の他方の分岐管4,4は、左右端壁11,12から直接消音器本体1の外部に開口するので、排気流路制御弁V,Vが開弁したときに、第1および第2の排気ガス導入管2L,2R内の排気ガスが他方の分岐管4,4を経由して消音器本体1の外部開口にたどり着くまでの管長が短くなり、排気ガスの流通抵抗を低減することができ、さらに、排気流路制御弁V,Vが開弁したときの前記外部開口までの流通抵抗の低減により、排気流路制御弁V,Vが開弁したときに膨張室20,21,21を経由することなく、他方の分岐管4,4を介して前記外部開口から直接外部に排出される排気ガスの量が増えて、排気流路制御弁V,Vを有しない一方の分岐管3,3を介して膨張室20に流れる排気ガスの量が少なくなるので、排気ガスが膨張室20,21,21経由で排出されることによる流通抵抗の増加も大幅に低減することができる。その結果、全体として、消音器本体1内を流れる排気ガスの流通抵抗を可及的に低減することができ、それにより、エンジンの出力向上効果を高めることができる。
【0046】
つぎに、図11を参照して本発明の第2実施例について説明するに、この第2実施例において、前記第1実施例と同じものには同じ符号が付される。
【0047】
この第2実施例は、ハウジング30の弁座30aに着座して閉弁され、また、そこから浮揚して開弁される弁体の構造が前記第1実施例のものと若干相違している。すなわち、板状に成形される弁体131の、排気ガスの流れ方向に向かう面の中央部には、その排ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部131aが溶接により固定されている。そして、この排気ガス受部131aは、前記第1実施例の排気ガス受部31aと同じ機能、すなわち排気流路34を排気ガスが流れ出したときに、排気ガスの動圧力に逆らう抵抗を大きくして排気ガスの流れによって弁体31が受ける開弁方向への力を大きくする。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0049】
たとえば、前記実施例では、本発明消音器Mを車両用V型エンジンEの排気系に実施した場合を説明したが、これを汎用など、他の用途のエンジンの排気系にも実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
30・・・・ハウジング
30a・・・弁座
31・・・・弁体
131・・・弁体
31a・・・排気ガス受部
131a・・排気ガス受部
32・・・・弁ばね
34・・・・排気流路
E・・・・・エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)からの排気ガスが流通する排気流路(34)が形成されたハウジング(30)と、
ハウジング(30)に形成された弁座(30a)に着座することにより排気流路(34)を閉じ、弁座(30a)から浮揚することにより排気流路(34)を開く弁体(31;131)と、
弁体(31;131)を弁座(30a)側に付勢する弁ばね(32)と、
を備え、
排気ガスの圧力が所定値以上になると弁体(31;131)が弁ばね(32)の付勢力に抗して弁座(30a)から浮揚し、排気流路(34)を開く排気流路制御弁であって、
弁体(31;131)は、排気ガスの流れに向かって凹形状となる排気ガス受部(31a;131a)を備えることを特徴とする排気流路制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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