説明

排気浄化装置

【課題】低温でNOxの還元を行なえる排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排気管1に組み込まれるグランド電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体2と、触媒担体2よりも排気管1の上流側に組み込まれる高圧電極を兼ね且つ触媒担体2側に向けて還元剤3を噴霧し得る添加ノズル4と、添加ノズル4に高電圧をパルス状に印加し得る電源5とを備えている。
すなわち、添加ノズル4に高電圧を印加することにより、低温プラズマ18を発生させ、添加ノズル4から触媒担体2側に向かう還元剤3を低温プラズマで活性化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンでは燃料を空気が過剰な状態で燃焼を行なうので、HC及びCOの不完全燃焼成分の排出量が少ないが、燃焼に寄与しなかった残余のO2と空気中のN2が反応して生成されるNOxの排出量が多くなる。
【0003】
そこで、NOxを硝酸塩の状態で一時的に吸蔵してから無害なN2として還元浄化するNOx還元触媒(吸蔵還元型触媒)を担持した触媒担体、及びO2を活性化させるためのプラズマ発生装置をディーゼルエンジンの排気経路に組み込んだ排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
NOx吸蔵還元触媒は、触媒Ptによりエンジン排気が含有しているNOxと酸素からNO2を生成し、当該NO2が吸蔵剤Baに反応して硝酸塩Ba(NO32となり保持される。
【0005】
また、触媒Ptによりエンジン排気が含有しているSOxと酸素からSO4を生成し、当該SO4が吸蔵剤Baに反応して硫酸塩BaSO4となり保持される。
【0006】
この後、排気経路に燃料を添加し且つプラズマ発生装置を作動させると、H2、COを含んだHCによりN2、CO2、H2Oが脱離し、Ba(NO32がBaに戻る。
【0007】
つまり、結果的にNO2がN2に還元される。
【0008】
同時に、H2、CO、HCによりN2、CO2、H2O、SO2が脱離し、BaSO4がBaに戻る。
【0009】
更に、V(バナジウム)、Ti(チタン)、W(タングステン)などの酸化物、またはCuやゼオライトで組成したNOx還元触媒(選択還元型触媒)を、ディーゼルエンジンの排気経路に組み込んだ排気浄化装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−221025号公報
【特許文献2】特開2002−161732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のものでは、バリアされている高電圧極とグランド極が交互に配置されているため、電極構造が複雑化し、多数の電極のギャップを一定にすることや絶縁が困難であるなどの問題がある。
【0011】
また、放電部が触媒担体よりも排気経路の上流側に組み込んであるため、放電部と還元部の距離が長くなり、寿命の短いラジカル種等が触媒表面まで届かない。
【0012】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、構造を簡略化し且つ低温領域でも効率よくNOxの還元を行なえる排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明では、エンジンの排気経路に組み込まれるグランド電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体と、該触媒担体よりも排気経路の上流側に組み込まれる高圧電極を兼ね且つ触媒担体側に向けて還元剤を噴霧し得る添加ノズルと、該添加ノズルに高電圧を印加し得る電源とを備えた構成を採る。
【0014】
すなわち、添加ノズルに高電圧を印加することにより、低温プラズマを発生させ、添加ノズルから触媒担体側に向かう還元剤を低温プラズマで活性化する。
【0015】
あるいは、エンジンの排気経路に組み込まれるグランド電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体と、該触媒担体よりも排気経路の上流側に組み込まれる高圧電極と、該高圧電極よりも排気経路の上流側に組み込まれ且つ触媒担体側に向けて還元剤を噴霧し得る添加ノズルと、高圧電極に高電圧を印加し得る電源とを備えた構成を採る。
【0016】
すなわち、高圧電極に高電圧を印加することにより、低温プラズマを発生させ、添加ノズルから触媒担体側に向かう還元剤を低温プラズマで活性化する。
【0017】
上記いずれの構造においても、電極を誘電体で覆うことができ、誘電体で覆わない場合は電極間にパルス高電圧を印加して低温プラズマを発生させ、また、誘電体で覆った場合は任意の交流高電圧で低温プラズマを発生させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排気浄化装置によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0019】
(1)請求項1に記載の排気浄化装置では、添加ノズルと触媒担体の間に低温プラズマが均等に発生し、これにより、添加ノズルから触媒担体側へ向かう還元剤の活性化が図られ、NOxの還元が効率よく行なえる。
【0020】
(2)請求項2に記載の排気浄化装置では、高圧電極と触媒担体の間に低温プラズマが均等に発生し、これにより、添加ノズルから触媒担体側へ向かう還元剤の活性化が図られ、NOxの還元が効率よく行なえる。
【0021】
(3)請求項1または請求項2に記載の排気浄化装置のいずれにおいても、プラズマ発生空間と触媒部が近いため、多くの活性種を触媒部へ供給できる。また、プラズマより帯電した還元剤が静電的に触媒担体に付着するため、効率よく還元でき、同時にHC(NH3)のリークを抑えることができる。更に、パティキュレートの静電捕集効果があり、パティキュレート減効果を発揮し、触媒表面に付着したパティキュレートを還元剤として利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1及び図2は本発明の排気浄化装置の第1の例であり、排気管1に組み込まれるグランド電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体2と、該触媒担体2よりも排気管1の上流側に組み込まれる高圧電極を兼ね且つ触媒担体2側に向けて還元剤3を噴霧し得る添加ノズル4と、該添加ノズル4に高電圧をパルス状に印加し得る電源5とを備えている。
【0024】
触媒担体2は、SiCや金属などの導電性物質を素材とし、排気6が通過できるようなハニカム構造を採っている。
【0025】
還元剤3は、NOx還元触媒に見合った物性であり、触媒Ptと吸蔵剤Baで組成した吸蔵還元触媒ではHCを主な成分とする燃料を用い、V、Ti、Wなどの酸化物、または銅やゼオライトで組成した選択還元型触媒では尿素水を用いる。
【0026】
添加ノズル4は、触媒担体2の上流側の端面に向き合うように排気管1内方に配置した中空の金属環状体7と、平行に並んで上下両端が金属環状体7に連通し且つ触媒担体2側に複数の噴射孔8を有する金属パイプ9と、平行に並んで左右両端が金属環状体7に連通し且つ触媒担体2側に複数の噴射孔10を有する金属パイプ11と、排気管1上部を貫通し且つ下端が金属環状体7に連なる金属パイプ12と、該金属パイプ12外周面と排気管1貫通部位の間に介装したインシュレータ13とを主な構成要素としている。添加ノズル4はどのような形状であってもよいが、特に噴射孔10の部分を注射針のように尖らせた形状とすることか好ましい。
【0027】
金属パイプ12の上端は、インシュレータ14及び配管15を介して還元剤送給ポンプ16に連なり、また、電源5と金属パイプ12は導線17により接続してある。
【0028】
この排気浄化装置では、電源5を作動させて添加ノズル4に対して高電圧をパルス状に印加した際には、アークを形成する前に高電圧が途切れるため、添加ノズル4と触媒担体2の間に低温プラズマ18が均等に発生することになる。
【0029】
更に、還元剤送給ポンプ16を作動させて、還元剤3を添加ノズル4から触媒担体2側へ噴霧すると、低温プラズマ18により還元剤3の活性化が図られ、低温でNOxの還元が行なわれる。
【0030】
このとき、プラズマ発生空間と触媒担体2が近いため、多くの活性種を触媒へ供給できる。また、プラズマより帯電した還元剤3が静電的に触媒担体2に付着するため、効率よく還元でき、同時にHC(NH3)のリークを抑えることができる。更に、パティキュレートの静電捕集効果があり、パティキュレート減効果を発揮し、触媒表面に付着したパティキュレートを還元剤として利用することもできる。
【0031】
図3及び図4は本発明の排気浄化装置の第2の例であり、排気管1に組み込まれるグランド電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体2と、該触媒担体2よりも排気管1の上流側に組み込まれる高圧電極19と、該高圧電極19よりも排気管1の上流側に組み込まれ且つ触媒担体2側に向けて還元剤3を噴霧し得る添加ノズル20と、前記高圧電極19に高電圧をパルス状に印加し得る電源5とを備えている。
【0032】
触媒担体2の素材や構造、NOx還元触媒及び還元剤3の組み合わせは、先述した第1の例と同様である。
【0033】
高圧電極19は、触媒担体2の上流側の端面に向き合うように排気管1内方に配置した金属環状体21と、平行に並んで上下両端が金属環状体21に係止された金属棒22と、平行に並んで左右両端が金属環状体21に係止された金属棒23と、これら金属棒22,23から触媒担体2側へ延びる突起24と、排気管1上部を貫通し且つ金属環状体21と電源5を接続する導線25と、該導線25外周面と排気管1貫通部位の間に介装したインシュレータ26とを主な構成要素としている。高圧電極19はどのような形状であってもよいが、先端を尖らせた形状とすることが好ましい。
【0034】
添加ノズル20には、排気管1上部を貫通して還元剤送給ポンプ16に連なる配管27が接続してある。
【0035】
この排気浄化装置では、電源5を作動させて高圧電極19に対して高電圧をパルス状に印加した際には、アークを形成する前に高電圧が途切れるため、高圧電極19と触媒担体2の間に低温プラズマ18が均等に発生することになる。
【0036】
更に、還元剤送給ポンプ16を作動させて、還元剤3を添加ノズル20から触媒担体2側へ噴霧すると、低温プラズマ18により還元剤3の活性化を図られ、低温でNOxの還元が行なわれる。
【0037】
このとき、プラズマ発生空間と触媒担体2が近いため、多くの活性種を触媒へ供給できる。また、プラズマより帯電した還元剤3が静電的に触媒担体2に付着するため、効率よく還元でき、同時にHC(NH3)のリークを抑えることができる。更に、パティキュレートの静電捕集効果があり、パティキュレート減効果を発揮し、触媒表面に付着したパティキュレートを還元剤として利用することもできる。
【0038】
本発明の排気浄化装置の第1の例、あるいは第2の例において、一方、もしくは双方の電極を誘電体で覆うと、任意の交流高電圧で低温プラズマを発生させることができる。触媒担体2側を誘電体で覆う場合は、メタル(又はSiC等)のハニカム担体へのアルミナコーティングなどで代用できる。
【0039】
また、本発明の排気浄化装置の第1の例、あるいは第2の例では、図示のように高電圧極、グランド極としたが、これは入れ替えてもよい。但し、触媒担体2側を高電圧極とする場合は、触媒担体2と排気管1の間に絶縁体を介在させる必要が生じる。
【0040】
なお、本発明の排気浄化装置は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の排気浄化は、様々な車種に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の排気浄化装置の第1の例を示す概念図である。
【図2】図1に関連する添加ノズルの概念図である。
【図3】本発明の排気浄化装置の第2の例を示す概念図である。
【図4】図3に関連する高圧電極の概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1 排気管(排気経路)
2 触媒担体
3 還元剤
4 添加ノズル
5 電源
19 高圧電源
20 添加ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気経路に組み込まれるグランド又は高圧電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体と、該触媒担体よりも排気経路の上流側に組み込まれる高圧又はグランド電極を兼ね且つ触媒担体側に向けて還元剤を噴霧し得る添加ノズルと、該添加ノズルと触媒担体間に高電圧を印加し得る電源とを備えてなることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
エンジンの排気経路に組み込まれるグランド又は高圧電極を兼ね且つNOx還元触媒を担持した触媒担体と、該触媒担体よりも排気経路の上流側に組み込まれる高圧又はグランド電極と、該高圧又はグランド電極よりも排気経路の上流側に組み込まれ且つ触媒担体側に向けて還元剤を噴霧し得る添加ノズルと、高圧電極に高電圧を印加し得る電源とを備えてなることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
NOx還元触媒に吸蔵還元型触媒を用いた請求項1または請求項2のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項4】
NOx還元触媒に選択還元型触媒を用いた請求項1または請求項2のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項5】
高圧電極又はグランド電極を誘電体で覆った請求項1または請求項2のいずれかに記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−107450(P2007−107450A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298882(P2005−298882)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】