説明

排気熱回収装置

【課題】冷却水温が低い場合は、冷却水に排気熱を効率よく回収させて昇温を促進させると共に、排気熱が高温化した場合は冷却水の昇温を抑制する。
【解決手段】冷態始動時、排気切換弁28にて排気連通管22が閉塞されているため、排気ガスは排気バイパス通路27aへ導かれ、その外周に形成されている熱交換通路27bを流れる冷却水に排気熱が回収される。又、外筒管24内に形成されている断熱空間29が、排気切換弁28に連動して動作する外気遮断弁31にて遮断されているため、排気熱を効率よく回収することができる。そして、冷却水温が上昇すると、排気切換弁28と外気遮断弁31とが開弁し、排気ガスは排気連通管22を通り排出され、又、断熱空間29には外気が導入されるため、冷却水温の上昇が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの熱を利用して始動後の冷却水温を早期に昇温させるようにした排気熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスの熱(以下、「排気熱」と称する)をエンジン冷却水にて回収し、回収した熱をエンジン及び空調システムのヒータに循環させることでエンジンの早期暖機完了、及び車室内の暖房を補う排気熱回収装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2001−30741号公報)には、排気管に分岐管をバイパス接続し、この分岐管に、エンジン冷却水が流通する熱交換器を配設し、更に、この分岐管の上流に開閉弁を設け、熱交換器の温度が所定値よりも高くなった場合、この分岐管を閉じて、熱交換器に対する排気ガスの供給を遮断し、熱交換器の異常過熱を防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−30741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、車体前部にエンジンが搭載されている車両では、このエンジンから延出する排気管が、車体フロア下面を通り後方へ導かれている。従って、排気管は外気に常時晒されているため、排気熱は排気管から外部に放熱される。特に、走行時おいては、走行風により冷却されるため、熱ロスが生じ、エンジン冷却水による排気熱の回収効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
この対策として、排気管の周囲に断熱空間を形成して熱ロスの発生を抑制することも考えられる。しかし、暖機完了後の排気熱は高温化しており、この排気熱によってエンジン冷却水が却って過熱されてしまう不都合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、エンジン冷却水温が低い場合は、このエンジン冷却水に排気熱を効率よく回収させて昇温を促進させると共に、排気熱が高温化した場合は、エンジン冷却水の昇温を抑制させることのできる排気熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明による排気熱回収装置は、排気ガスが流通する第1管路と、前記第1管路をバイパスする第2管路と、エンジン冷却水の温度が低い場合、前記第1管路を閉塞して前記排気ガスを前記第2管路へ導く第1弁体と、前記第2管路に隣接して配設されていると共にエンジン冷却水が流通する熱交換部と、前記熱交換部の外周を覆う外筒管と、前記外筒管と前記熱交換部との間に形成される断熱空間を、前記第1弁体に連動し、該第1弁体が前記第1管路を閉塞した際に遮断し、該第1弁体が前記第1管路を開放した際に開放する第2弁体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換部の外周を覆う外筒管と熱交換部との間に形成される断熱空間を、第1管路を開閉する第1弁体に連動して動作する第2弁体で開閉させるようにしたので、エンジン冷却水温が低い場合は、第2弁体を遮断することで、断熱空間に対する外気の導入が抑制され、エンジン冷却水に対して排気熱を効率よく回収させることができる。一方、エンジン冷却水温が所定温度以上に達した場合は、第2弁体を開放することで、断熱空間に外気が流入され、エンジン冷却水の昇温を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1〜図5に本発明の第1実施形態を示す。図1に排気熱回収装置を備えたエンジン冷却系の概略構成図を示す。
【0011】
同図の符号1はエンジンであり、図示しない車両の前部に配設されている。又、このエンジン1から延出する排気管2が車体後部側へ車体フロアの底面に沿って延出されている。尚、符号3はマフラである。
【0012】
又、符号11はエンジン冷却系であり、エンジン冷却水(以下、単に「冷却水」と称する)主通路12とエンジン冷却水通路としての冷却水副通路13とを備えている。冷却水主通路12は、エンジン1に形成されているウォータジャケット1aの上流端と下流端に循環接続されており、ラジエータ14が介装されていると共に、このラジエータ14の下流側にウォータポンプ15が介装されている。尚、本実施形態では、ウォータポンプ15としてエンジン駆動式を採用しているが、このウォータポンプ15はモータ駆動式であっても良い。
【0013】
更に、このウォータポンプ15とラジエータ14との間にサーモスタットバルブ16が介装されている。又、冷却水副通路13は、その下流端が、冷却水主通路12のサーモスタットバルブ16とウォータポンプ15との間に連通され、又、上流端が冷却水主通路12のラジエータ14の上流側に分岐接続されている。サーモスタットバルブ16は、冷却水温度が設定温度以下の場合、閉弁して、冷却水主通路12を循環する冷却水を遮断し、一方、冷却水温度が設定温度以上の場合は開弁して、冷却水を冷却水主通路12側へも循環させる。尚、符号14aはラジエータファンである。
【0014】
この冷却水副通路13に受熱手段としてのヒータコア17が介装されている。このヒータコア17は、冷却水副通路13を流れる冷却水の熱を熱源として、車室内へ供給する空気を暖めるもので、空調装置の空気ダクト内に配設されて、この空気ダクト内を通過して車室内に供給される内気或いは外気を暖めるものである。
【0015】
更に、冷却水副通路13のヒータコア17の下流側に排気熱回収装置21が配設されている。この排気熱回収装置21は、排気管2を流れる排気ガスの熱(排気熱)と冷却水の温度(冷却水温)との温度差を利用して熱交換するものである。例えば冷態始動後の暖機運転において、排気ガスは冷却水よりも早期に温度上昇する。そのため、この排気熱回収装置21にて排気熱を冷却水に回収させることで、冷却水の温度上昇を促進させることができる。
【0016】
図2〜5に示すように、排気熱回収装置21は、その中央に、第1管路としての排気連通管22を有し、その外周に排気熱交換器23が設けられ、更に、その外周に外筒管24が配設されている。排気連通管22は排気管2の中途に介装されて、その両端が排気管2に気密状体で接合されている。又、排気熱交換器23は、インナ部材25とアウタ部材26とを重ね合わせた二重構造を有しており、両部材25,26は鉄等の伝熱性材料で形成されている。尚、図において、排気ガスは、図の左側から右側へ流れる。従って、図の左側が上流となる。
【0017】
インナ部材25は排気連通管22の外周を囲繞する円筒状に形成されており、その両端が絞られて排気連通管22に対し、溶接等の手段により気密を保持した状態で固設されている。又、アウタ部材26はインナ部材25の外周に配設されており、その両端が絞られて、インナ部材25の両端部に対し、溶接等の手段により気密を保持した状態で固設されている。このインナ部材25の内壁と排気管2の外周とで囲まれた空間に、第2管路としての排気バイパス通路27aが円環状に形成され、又、インナ部材25の外壁とアウタ部材26の内壁とで囲まれた空間に熱交換部としての熱交換通路27bが円環状に形成されている。尚、排気熱交換器23は一体成形品であっても良い。
【0018】
又、排気バイパス通路27aの上流側と下流側に位置する排気連通管22に、上流側排気口22aと下流側排気口22bとが形成されている。この両排気口22a,22bは、排気連通管22の外周に沿って帯状に形成された複数のパンチング孔で構成されている。
【0019】
更に、排気連通管22の両排気口22a,22b間にバタフライ状に形成された第1弁体としての排気切換弁28が配設されている。この排気切換弁28は回転軸28aを中心に、この回転軸28aと一体に回転し、この排気切換弁28にて排気連通管22が閉塞されると、図2の矢印Bで示すように、排気連通管22に流入された排気ガスは、上流側排気口22aから排気バイパス通路27aへ流入し、排気切換弁28の下流側排気口22bから排気連通管22側へ流出する。一方、図3に示すように、排気切換弁28が全開状態になると、殆どの排気ガスは矢印Bで示すよう排気連通管22を流れる。
【0020】
更に、この排気連通管22、及び排気熱交換器23を覆う外筒管24は、その両側が車体の前後方向に開口され、前部開口端及び後部開口端から内方へやや入り込んだ位置が排気連通管22に対し、ステー29a,29bを介して支持されて、外筒管24の内壁と排気連通管22及び排気熱交換器23の外壁との間に断熱空間29が形成されている。
【0021】
又、排気熱交換器23の外周の上流側と下流側とに、熱交換通路27bに連通する流入ポート23aと流出ポート23bとが突設されており、この両ポート23a,23bが外筒管24を貫通して、この外筒管24の外周に突出されている。更に、この各ポート23a,23bが、冷却水副通路13の中途に接続されて、熱交換通路27bが冷却水副通路13の一部を構成している。従って、図1、及び図2、図3の矢印Bで示すように、ヒータコア17から流出した冷却水は、流入ポート23aから熱交換通路27b内に流入し、流出ポート23bから下流側の冷却水副通路13に吐出される。
【0022】
この流出ポート23bに接続されている冷却水副通路13に、サーモアクチュエータ30が固設されている。このサーモアクチュエータ30に、冷却水副通路13に連通する冷却水導入通路30aが形成されており、この冷却水導入通路30aを通過する冷却水によって、このサーモアクチュエータ30に内蔵するサーモワックス(例えばパラフィンワックス)30bが熱膨張或いは熱収縮する。そして、このサーモワックス30bの熱膨張或いは熱収縮を利用して、サーモアクチュエータ30に設けられているロッド30c(図5参照)が進退動作する。
【0023】
又、外筒管24の上流端に形成した開口部24aが拡径されており、この開口部24aに位置する排気連通管22の外周に、第2弁体としての外気遮断弁31のハブ31aが進退自在に支持されている。更に、外筒管24の拡径された開口部24aの基部側内周にストッパ32が固設されている。このストッパ32は、外気遮断弁31の下流方向への移動を規制すると共に、このストッパ32に外気遮断弁31の外縁を当接させることで、断熱空間29への外気の流入が遮断される。又、この外気遮断弁31とステー29aとの間にリターンスプリング33が介装されており、図3に示すように、外気遮断弁31はリターンスプリング33にて開放方向へ常時付勢されている。
【0024】
又、図5に示すように、排気切換弁28の回転軸28aに固設されている動作レバー34がリンク機構35aを介してサーモアクチュエータ30のロッド30cに連設されている。更に、外気遮断弁31のハブ31aがリンク機構35bを介してサーモアクチュエータ30に設けられてるロッド30cに連設されている。従って、この動作レバー34と外気遮断弁31とは互いに連動して開閉動作される。
【0025】
上述したように、サーモアクチュエータ30のロッド30cは内蔵するサーモワックス30bの熱膨張或いは熱収縮によって進退動作するもので、冷却水温が低く、サーモワックス30bが熱収縮すると、ロッド30cが後退する。すると、このロッド30cに連設するリンク機構35a,35bを介して動作レバー34、外気遮断弁31が各々引かれ、排気切換弁28、外気遮断弁31が互いに閉弁動作される。一方、冷却水温が高くなり、サーモワックス30bが熱膨張すると、リンク機構35aを介して動作レバー34が押され、又、外気遮断弁31に対する引き力が解除されて、排気切換弁28、外気遮断弁31が互いに開弁動作される。
【0026】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。長時間放置した後の始動時等、エンジン1が冷えた状態では、当然冷却水も冷えているため、排気熱回収装置21の下流側に設けられているサーモアクチュエータ30のサーモワックス30bは熱収縮し、このサーモワックス30bの動作に連動するロッド30cが後退している。
【0027】
従って、このロッド30cにリンク機構35aを介して連設されている動作レバー34が、排気切換弁28を図5の時計回り方向へ回転させているため、この排気切換弁28によって排気連通管22が閉塞されている。更に、このロッド30cにリンク機構35bを介して連設されている外気遮断弁31がリターンスプリング33の付勢力に抗して引かれているため、その外周縁がストッパ32に当接されて、断熱空間29が遮断されている(図2参照)。
【0028】
そして、運転者がスタータスイッチ(図示せず)をONして、エンジン1を起動させると、ウォータポンプ15が駆動し冷却水が循環する。その際、冷却水が冷えているため、サーモスタットバルブ16は閉弁しており、従って、冷却水の大部分は冷却水副通路13側を循環する。冷却水副通路13の中途には排気熱回収装置21の熱交換通路27bが介装されており、冷却水副通路13を循環する冷却水は、図2に矢印Aで示すように熱交換通路27bを通過して循環される。
【0029】
エンジン1から排出される排気ガスは、排気管2を通り、マフラ3を経て放出される。排気管2の中途には、排気熱回収装置21に設けられている排気連通管22が一体化された状態で介装されており、この排気連通管22が、上述したように排気切換弁28によって閉塞されているため、エンジン1から排出された排気ガスは、図2に矢印Bで示すように、排気切換弁28の手前に開口されている上流側排気口22aから排気連通管22の外周に形成されている排気バイパス通路27aに流入し、この排気バイパス通路27aを通り、排気切換弁28の下流側に開口されている下流側排気口22bを経て排気連通管22に戻される。
【0030】
エンジン1を始動した後の排気ガスの温度は、冷却水の温度よりも早く上昇するため、差温が発生し、排気バイパス通路27aを流れる排気ガスの熱により、この排気バイパス通路27aに対してインナ部材25を介して隔絶されている熱交換通路27bを流れる冷却水が加温される。その結果、冷却水が早期に昇温され、暖機時間が短縮されると共に、ヒータコア17の発熱が促進されて車室内の暖房に供することができる。
【0031】
更に、排気熱交換器23と、その外周に配設されている外筒管24との間に形成されている断熱空間29の上流が外気遮断弁31にて閉塞されているため、例えば、暖機運転中に車両が走行しても、この断熱空間29を外気が流通しないので断熱状態が保持され、排気熱を冷却水に効率よく回収させることができ、冷却水の昇温を一層促進させることができる。
【0032】
その後、冷却水温が更に上昇してサーモアクチュエータ30のサーモワックス30bが熱膨張すると、このサーモワックス30bに連動するロッド30cが次第に突出し、このロッド30cに各リンク機構35a,35bを介して連設する排気切換弁28、外気遮断弁31が次第に開弁される。そして、冷却水温が所定温度(例えば75〜85[℃])に達すると、図3に示すように、排気切換弁28及び外気遮断弁31が全開となる。
【0033】
その結果、図3に矢印Bで示すように、大部分の排気ガスは、排気連通管22を通り外部へ排出される。又、外気遮断弁31が開弁しているので、矢印Cで示すように、外気が外筒管24に形成した開口部24aと外気遮断弁31との間を抜けて、断熱空間29に導入される。そのため、排気熱が高温化しても、その熱が断熱空間29にこもることが無く、冷却水の高温化を抑制することができる。従って、走行中においては、断熱空間29を流れる外気によって冷却水、及び排気ガスをより効率的に冷却することができる。
【0034】
このように、本実施形態では、冷態始動及び始動後の暖機運転において、サーモアクチュエータ30のサーモワックス30bが熱収縮している状態では、排気熱回収装置21の排気切換弁28が排気連通管22を遮断して、排気ガスを排気バイパス通路27a側へ導くと共に、外気遮断弁31を閉弁させて断熱空間29を遮断するようにしたので、排気バイパス通路27aを流れる排気ガスにより冷却水を効率よく昇温させることができる。
【0035】
又、冷却水が所定温度まで昇温した後は、排気切換弁28が排気連通管22を連通させ、且つ外気遮断弁31が開弁して、断熱空間29に外気が導入されるため、冷却水の昇温を抑制することができる。
【0036】
更に、本実施形態では、排気切換弁28、外気遮断弁31の動作を、熱交換通路27bの下流側に配設したサーモアクチュエータ30の動作により機械的に制御しているため、これらをユニット化することで、既存の車両に対しても比較的簡単に取付けることができ、高い汎用性を得ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
図6、図7に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、排気熱回収装置21に設けられている外気遮断弁31を、外筒管24の上流側に配設したが、本実施形態では外気遮断弁31を断熱空間29の下流側に配設したものである。
【0038】
すなわち、本実施形態による外筒管24は、第1実施形態の外筒管24を、排気連通管22に対し、上流側と下流側とを逆にして配設したものであり、作用効果は、上述した第1実施形態と同一である。
【0039】
[第3実施形態]
図8、図9に本発明の第3実施形態を示す。上述した第1、第2実施形態では、排気熱回収装置21の排気切換弁28と外気遮断弁31との開閉動作をサーモアクチュエータ30を用いて機械的に開閉動作させているが、本実施形態では、この両弁28,31を電子的に制御するようにしたものである。尚、排気熱回収装置21の構成は、第1、第2実施形態のサーモアクチュエータ30に代えて水温センサ42を配設し、又、各リンク機構35a,35bを省略し、更に、各弁28,31に排気用電動アクチュエータ43と外気用電動アクチュエータ44とを連設して、各弁28,31を電動アクチュエータ43,44により動作させるようにしたものである。
【0040】
電子制御装置(ECU)41は、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを主体に構成されており、ROMには、制御プログラムや固定データ等が記憶されている。ECU41では、水温センサ42で検出した、熱交換通路27bに連通する流出ポート23b側から吐出する冷却水温に基づき、両電動アクチュエータ43,44に動作信号を出力する。
【0041】
このECU41で実行される各電動アクチュエータ43,44の制御は、具体的には、図9に示すフローチャートに従って実行される。
【0042】
このフローチャートは、予め設定した演算周期毎に実行され、先ず、ステップS1で水温センサ42で検出した冷却水温と予め設定した暖機完了温度とを比較し、暖機完了か否かを調べる。そして、冷却水温が暖機完了温度以下の暖機中と判定したときは、ステップS2へ進み、排気切換弁28を閉弁させる閉信号を出力した後、ステップS3へ進み、外気遮断弁31を閉弁させる閉信号を出力した後、ルーチンを抜ける。
【0043】
尚、本実施形態で採用する排気切換弁28は、図示しないリターンスプリングにより開弁方向へ常時付勢されており、一方、外気遮断弁31はリターンスプリング33の付勢力で開弁方向へ常時付勢されている。従って、この排気切換弁28は、排気用電動アクチュエータ43がOFFで全開となり、ONで全閉となる。又、外気遮断弁31は外気用電動アクチュエータ44がOFFで全開となり、ONで全閉となる。
【0044】
ECU41から出力される閉信号(ON信号)は、排気用電動アクチュエータ43と外気用電動アクチュエータ44とに通電され、この各電動アクチュエータ43,44が動作して、排気切換弁28と外気遮断弁31とが閉弁動作される(図2、図6の状態)。
【0045】
一方、ステップS1で、冷却水温が暖機完了温度を超過した暖機完了と判定したときは、ステップS4へ進み、排気切換弁28を開弁させる開信号を出力した後、ステップS5へ進み、外気遮断弁31を開弁させる開信号を出力して、ルーチンを抜ける。
【0046】
ECU41から排気用電動アクチュエータ43と外気用電動アクチュエータ44とに開信号(OFF信号)が出力されると、この両電動アクチュエータ43,44に対する通電が遮断され、排気切換弁28がリターンスプリング(図示せず)の付勢力で全開状態となり、更に外気遮断弁31がリターンスプリング33の付勢力で開放状態となる(図3、図7の状態)。尚、各弁28,31の全閉状態、或いは全開状態における排気ガス、及び断熱空間29の外気の流れ、及び冷却水の温度変化は、上述した第1、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0047】
本実施形態によれば、排気切換弁28と外気遮断弁31との開閉を、水温センサ42で検出した冷却水温に応じて開閉動作させるようにしたので、この両弁28,31の開閉を冷却水温に応じて正確に制御することができる。更に、両弁28,31の開閉時期を車種毎に微調整することができる。
【0048】
尚、本実施形態では、排気切換弁28と外気遮断弁31とを異なる電動アクチュエータ43,44で開閉動作させているが、1つのアクチュエータで両弁28,31を開閉動作させるようにしても良い。
【0049】
[第4実施形態]
図10、図11に本発明の第4実施形態を示す。上述した第1〜第3実施形態では、排気管2に一体化されている排気連通管22の外周に排気熱交換器23を円環状に形成したが、本実施形態では、排気管2の中途に一体化されている排気連通管51を、第1管路としての排気本通路51aと、第2管路としての排気副通路51bとに分岐し、この排気副通路51bに、熱交換部としての熱交換器52を内装したものである。更に、この排気連通管22の外周に、第1、第2実施形態と同様、外筒管24が配設され、この外筒管24と排気連通管22との間に断熱空間29が形成されて、この断熱空間29が外気遮断弁31によって開閉自在にされている。尚、この外気遮断弁31の構成は上述した第1実施形態と同一である。
【0050】
又、熱交換器52の流入ポート52aと流出ポート52bとが、冷却水副通路13の中途に接続され、冷却水は熱交換器52を通り、冷却水副通路13を循環する。更に、この排気連通管22の排気本通路51aと排気副通路51bとの上流側の分岐部に、第1弁体としての排気切換弁53が配設されている。この排気切換弁53の基部に設けた回転軸53aに固設されているレバー(図示せず)及び外気遮断弁31が、第1実施形態と同様、リンク機構35a,35b(図5参照)を介してサーモアクチュエータ30のロッド30cに連設されている。
【0051】
エンジン1(図1参照)が冷えた状態では、サーモアクチュエータ30のサーモワックス30bが熱収縮しているため、このサーモワックス30bに連動するロッド30cがリンク機構35a,35bを介して、排気切換弁53の回転軸53aに固設されているレバー及び外気遮断弁31を引いている。その結果、図10に示すように、排気切換弁53が、排気本通路51aの流入口を閉塞していると共に排気副通路51bの流入口を開口している。
【0052】
そして、運転者がスタータスイッチ(図示せず)をONして、エンジン1を起動させると、ウォータポンプ15の駆動により冷却水の大部分が冷却水副通路13(図1参照)を循環する。
【0053】
一方、エンジン1の排気ガスは排気連通管22の排気本通路51aが閉塞されているため、矢印Bで示すように、排気副通路51bを経てマフラ3(図1参照)の方向へ流出される。冷却水副通路13を循環する冷却水は、熱交換器52に対し、矢印Aで示すように、熱交換器52の流入ポート52aから入り、流出ポート52bから吐出される。排気ガスの温度上昇は冷却水よりも早いため、熱交換器52を通過する冷却水は排気熱を回収して昇温されて、暖機時間の短縮が図れる。
【0054】
尚、この場合、外気遮断弁31が断熱空間29を閉塞しているため、排気副通路51bを流れる排気ガスの熱の大気への不必要な放熱が抑制され、冷却水を効率よく昇温させることができる。
【0055】
その後、冷却水温が更に上昇して、サーモアクチュエータ30のサーモワックス30bが熱膨張し、ロッド30cが突出すると、リンク機構35aを介して排気切換弁53が、図の一点鎖線で示すように、排気副通路51bを閉塞すると共に、排気本通路51aを開放する。その結果、排気ガスは排気本通路51aを通過して外部へ排出される。同時に、リンク機構35bを介して外気遮断弁31が開弁し、外気が断熱空間29に導入される。従って、断熱空間29に熱がこもることが無く、冷却水が不必要に加熱されることがない。
【0056】
このように、本実施形態では、排気副通路51bに熱交換器52を内装して、排気ガスを直接通過させるようにしたので、冷却水に排気熱をより効率よく回収させることができる。尚、この熱交換器52として既存のものを採用すれば、コスト低減を実現することができる。
【0057】
又、本実施形態では、1つのリンク機構で排気切換弁53と外気遮断弁31とを開閉動作させるようにしても良い。更に、排気切換弁53を、排気連通管22の下流側の排気本通路51aと排気副通路51bとの合流部分に配設するようにしても良い。同様に、外気遮断弁31を外筒管24の下流側に配設するようにしても良い。
【0058】
[第5実施形態]
図12〜図14に本発明の第5実施形態を示す。本実施形態は上述した第2実施形態の変形例である。尚、第2実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
第2実施形態では、排気熱交換器23の外周から外部に突出されている流入ポート23aと流出ポート23bとに対して冷却水副通路13の中途を接続しただけの構造であるが、本実施形態では、この流入ポート23aと流出ポート23bとに接続するエンジン冷却水通路としての冷却水副通路13の一部、具体的には、排気熱交換器23の流入ポート23aに接続されている冷却水副通路13の直上流と流出ポート23bに接続されている冷却水副通路13の直下流とを、外筒管24と排気連通管22との間に形成されている断熱空間29に挿通して排気管2の上流方向へ導くようにしたものである。
【0060】
すなわち、排気熱交換器23の外筒管24の車体前部方向の開口端29c(図12参照)側がエンジン1側へ排気管2に沿って延出されている。又、両ポート23a,23bに接続されている冷却水副通路13は、両ポート23a,23bに接続されている直近の部分が断熱空間29に挿通されている。そして、この断熱空間29に挿通された冷却水副通路13が、排気管2に沿ってエンジン1側へ延出され、開口端29cから外部に露呈されている。
【0061】
外筒管24は、断熱空間29に2本の冷却水副通路13が収容可能な断面形状に形成されており、図14に示すように、本実施形態では、断面舟形形状に形成され、その船尾側に2本の冷却水副通路13が、排気管2に沿って収容されている。
【0062】
尚、排気切換弁28と外気遮断弁31との開閉動作は、第2実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0063】
本実施形態では、排気熱交換器23に形成されている断熱空間29に冷却水副通路13を挿通したので、暖機運転時における冷却水副通路13を流れる冷却水の放熱が抑制されると共に、排気管を流れる排気ガスからの熱を冷却水にて受熱されるので、冷却水温をより早期に昇温させることができる。又、冷却水温が所定温度(例えば75〜85[℃])に達すると、外気遮断弁31が全開となり、断熱空間29に外気が導入されるため、冷却水が必要以上に昇温されてしまうことはない。
【0064】
その結果、本実施形態によれば、上述した第2実施形態に比し、暖機運転時においては冷却水をより効率よく昇温させることができる。尚、排気熱交換部23は、第4実施形態に示すような排気管2の中途に一体化されている排気連通管51を排気本通路51aと、第2管路としての排気副通路51bとに分岐し、この排気副通路51bに熱交換器52を内装したものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態による排気熱回収装置を備えたエンジン冷却系の概略構成図
【図2】同、排気熱回収装置の断面側面図
【図3】同、図2の状態別の断面側面図
【図4】同、図3のIV-IV断面図
【図5】同、排気熱回収装置の駆動系の概略構成図
【図6】第2実施形態による排気熱回収装置の断面側面図
【図7】同、図6の状態別の断面側面図
【図8】第3実施形態による排気熱回収装置の制御系の構成図
【図9】同、排気切換弁と外気遮断弁との切換制御を示すフローチャート
【図10】第4実施形態による排気熱回収装置の断面側面図
【図11】図10のXI-XI断面図
【図12】第5実施形態による排気熱回収装置を備えた車両の概略構成図
【図13】同、図6相当の断面図
【図14】図13のXIV-XIV断面図
【符号の説明】
【0066】
1…エンジン、
2…排気管、
11…エンジン冷却系、
13…冷却水副通路、
17…ヒータコア、
21…排気熱回収装置、
22,51…排気連通管、
22a…上流側排気口、
22b…下流側排気口、
23…排気熱交換部、
23a…流入ポート、
23b…流出ポート、
24…外筒管、
24a…開口部、
25…インナ部材、
26…アウタ部材、
27a…排気バイパス通路、
27b…熱交換通路、
28,53…排気切換弁、
29…断熱空間、
30…サーモアクチュエータ、
30b…サーモワックス、
30c…ロッド、
31…外気遮断弁、
35a,35b…リンク機構、
42…水温センサ、
43…排気用アクチュエータ、
44…外気用アクチュエータ、
51a…排気本通路、
51b…排気副通路、
52…熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する第1管路と、
前記第1管路をバイパスする第2管路と、
エンジン冷却水の温度が低い場合、前記第1管路を閉塞して前記排気ガスを前記第2管路へ導く第1弁体と、
前記第2管路に隣接して配設されていると共にエンジン冷却水が流通する熱交換部と、
前記熱交換部の外周を覆う外筒管と、
前記外筒管と前記熱交換部との間に形成される断熱空間を、前記第1弁体に連動し、該第1弁体が前記第1管路を閉塞した際に遮断し、該第1弁体が前記第1管路を開放した際に開放する第2弁体と
を備えることを特徴とする排気熱回収装置。
【請求項2】
前記第2管路が前記第1管路の外周に形成され、
前記第2管路の外周に前記熱交換部が配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の排気熱回収装置。
【請求項3】
前記第2管路が前記第1管路に隣接して設けられ、
前記第2管路内に前記熱交換部が配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の排気熱回収装置。
【請求項4】
前記外筒管の両端が車体の前後方向に開口されており、
前記第2弁体が前記外筒管の前部開口端と後部開口端との一方に配設されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の排気熱回収装置。
【請求項5】
前記第1弁体と前記第2弁体とが、前記エンジン冷却水の温度で熱膨張或いは熱収縮するサーモワックスを有するサーモアクチュエータにて駆動される
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の排気熱回収装置。
【請求項6】
前記第1弁体と前記第2弁体とを開閉動作させる電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータを動作させる制御手段と、
前記エンジン冷却水の温度を検知する水温センサと
を備え、
前記制御手段は前記水温センサで検出した前記エンジン冷却水温が設定温度以下の低温と判定した場合、前記電動アクチュエータに前記第1弁体と第2弁体とを閉弁させる信号を出力する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の排気熱回収装置。
【請求項7】
前記熱交換部に接続されて前記エンジン冷却水を流通させるエンジン冷却水通路の少なくとも一部が前記断熱空間に挿通されている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の排気熱回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−163899(P2010−163899A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5056(P2009−5056)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】