説明

排水処理プラントの運転管理方法

【課題】 排水処理プラントにおける活性汚泥の性状を定量的に判定するとともに、この活性汚泥の性状によって適切な対策ができる排水処理プラントの運転管理方法を提供する。
【解決手段】 凝集反応処理手段による化学的酸素要求量成分の増減処理および/または原水流入手段による原水のバイパス処理を実施し、活性汚泥を好ましい性状に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工場や酪農・養豚・養鶏などの畜産業、養殖漁業、遊戯施設、水族館から排出される産業廃水、鉄道車両や自動車車両、船舶、航空機などの洗浄に用いられた水や搭載水(例えば、冷却水や汚水やバランス/バラスト水)などの排水、ビル、一般家庭、宿泊施設、入浴施設、病院、飲食店、各種学校等の教育施設、運動施設などから排出される生活廃水の水質浄化を目的に設置される凝集処理と活性汚泥処理とを利用した排水処理プラントの運転管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から排水等に含まれている不純物の浄化を行うべく好気性微生物を利用した活性汚泥処理装置が普及している。ここで活性汚泥処理装置は、曝気槽および沈殿槽などの固液分離手段から構成され、好気性微生物の代謝活動を利用し、主として排水等に含まれる有機物を分解処理するもので、有機物の一部はCOとHOに分解されるとともに、その一部は好気性微生物自身の代謝活動や自己増殖に使われる。
【0003】
このような活性汚泥処理は、前段で凝集処理をした後、活性汚泥処理を行うことも知られている。これは、予め被処理液中の懸濁物質等を凝集処理することによって活性汚泥処理へ持ち込まれる不純物の負荷を減らすために採用される(例えば、特許文献1、2を参照)。
ところで、排水処理プラントにおいて安定した凝集処理を行なうためには、先ず被処理成分に適した凝集剤の選定が必須である。一方、凝集処理に流入する原水の被処理成分濃度は、日々刻々と変化するので、凝集処理に過不足が生じないように薬剤添加量を決定する必要がある。ここで用いられる凝集剤は、専らジャーテストによって凝集に最適な薬剤銘柄や濃度、薬注量が選定される。ちなみに一旦決定した凝集剤や薬注条件は、被処理液の質が著しく変化しない限りほとんど変更されることがない。このため場合によっては、定期的または不定期的に被処理液の質を調査して凝集に最適な添加薬剤や薬注条件を選定し直すこともある。
【0004】
この凝集処理における薬剤添加量は、前記ジャーテストで決定した注入量(比率)を基に流入原水量に比例して制御されることが多い。このような凝集処理では、処理水の濁質濃度を計測したり、凝集状態(フロック径やフロック間清澄度)を計測して、これらの計測値を基にフィードバック制御を行って凝集剤添加量を調整することもある。
一方、活性汚泥処理は、流量(原水投入量の設定、沈殿池から曝気槽への汚泥返送流量の決定)、余剰汚泥引抜量、溶存酸素濃度等が管理される。
【0005】
まず原水投入量は、排水を受け入れる調整槽や貯槽から原水が溢れない投入量になるよう予め設定される。一方、汚泥の返送流量は、通常、返送比(汚泥返送流量/原水投入流量)がわずかに[1]を超えるように制御することを基本とし、更に沈殿池における汚泥と上澄水の固液分離界面レベルやその変動速度を加味して決定される。具体的には、沈殿池の界面レベルが上昇(下降)するようであれば汚泥返送流量を増やす(減らす)ことが行われる。また該排水処理プラントにおける過去の運転実績における経験値をベースに、活性汚泥処理装置のMLSS濃度を計測し、前日からの増減分を算出するとともに、前記経験値に照らして余剰汚泥引抜量が決定される。
【特許文献1】特開平6−134213号公報
【特許文献2】特開平6−315695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した排水処理プラントの運転管理方法は、専ら運転員の経験と勘に頼る方法であった。つまり熟練した運転員に運転管理を委ね、原水流入量調査やMLSS濃度計測、沈殿池の汚泥界面レベルの測定、沈殿沈降性(SV30)等の測定により本日の運転条件を決定したり、時には採取した汚泥を運転員自らが顕微鏡で観察し、その状況によって原水流量を調整したり、排液を投入したり止めたり、といった管理が行われていた。このため運転管理要因に対する具体的な数値指標と管理指標による判断基準がなく、したがって排水処理プラントの自動管理・制御が実現できなかった。
【0007】
ところで活性汚泥処理では一般に曝気槽で処理が行われた後、後段の沈殿池で処理水と汚泥とが分離される。この沈殿池において処理水と汚泥の分離は、重力による自然沈降に拠っているため、汚泥が十分にフロック化できていないと固液分離性能が低下するという問題がある。これは活性汚泥処理装置の他の一例である一つの処理槽において曝気工程と沈降分離工程を兼用する処理系においても同様の問題を抱える。一方、固液分離手段として、膜分離手段を備え、膜分離によって汚泥と水を分離する場合であっても、汚泥フロックの平均粒子径や粒子径分布によって膜分離性に変化が起こったり、膜を目詰まりさせたりすることが知られている。したがって、汚泥性状は、活性汚泥処理において極めて重要な管理項目である。
【0008】
汚泥フロックは、微生物群の代謝活動によって生成・排出される粘質物によって複数の微生物が集合して形成された状態のものである。しかしながら微生物の性状が悪いと、フロック形成が不完全な状態のままとなる。微生物状態の発生要因と、処理水質悪化の原因を列挙すると概して次のようになる。
〔微生物状態の発生要因〕
(1)分散:原水の有機物濃度が著しく高くなり、処理すべき有機物量(F)と微生物量(M)との比率(F/M比)のバランスが崩れて過食状態となったときに発生する。
(2)解体:原水の有機物濃度が著しく低くなり、F/M比のバランスが崩れて飢餓状態になったときに発生する。もしくは、著しい高温水や強酸、強アルカリ、生物活性を阻害する毒物等が流入したときに発生する。
〔処理水質悪化の原因〕
(1)分散:ほとんど全ての汚泥フロックが一様に小さくなり沈降速度が低下するため、汚泥が処理水と共に系外へ流出しやすい状態にある。このため、処理水質の悪化や原水投入可能水量の低下をきたす。
(2)解体:汚泥が脆弱となり、フロックの一部が脱落したり、文字どおり全体がバラバラに解体したりして、処理水に濁りが発生した状態であり、汚泥の一部が処理水と共に系外へ流出しやすくなる状態にある。このため、処理水質の悪化や原水投入可能水量の低下を招来する。
【0009】
上記分散汚泥または解体汚泥が発生したときの対処方法は、F/M比を最適化することであり、原水中の有機物濃度、もしくは原水流量を調整するかMLSS濃度を調整してF/M比を最適値にすればよい。
しかしながら原水流量は、通常変更することができない。またMLSS濃度は、余剰汚泥引抜量で調整できるが、その変化させ得る速度は非常に遅い。つまり、余剰汚泥の排出を増大させてMLSS濃度を下げようとした場合、汚泥を脱水処理する脱水機の能力の限界により制限されることがある。
【0010】
また逆に汚泥を引抜かない場合には、SRTが長くなることによって菌相が変化し、例えば糸状性バルキングを引き起こすことがある。したがって、MLSS濃度を最適値に調整する手段だけでプラントの変化に追随変化させて調整を図ることが難しいという問題がある。
本発明は、上述した課題を解決するべくなされたもので、その目的とするところは、排水処理プラントにおける活性汚泥の性状を定量的に判定するとともに、この活性汚泥の性状によって迅速かつ適切な対策ができる排水処理プラントの運転管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで上述した課題を解決するため汚泥フロックの状態を監視しながら、凝集処理と活性汚泥の運転条件をフィードバック制御するために必要とされる技術を列挙すれば、
(A)汚泥フロックの状態監視方法および数値化技術
(B)汚泥フロックの状態にあった対策、すなわち凝集処理の制御および/または活性汚泥側の制御技術
(C)採り得る最適な対策の選定技術
となる。
【0012】
まず(A)の「汚泥フロックの状態監視方法および数値化技術」は、例えば特願2005−23091号の汚泥性状センサに示されるように分散と解体を数値化できる技術が確立されている。また、(B)の「汚泥フロックの状態にあった対策、すなわち凝集処理の制御および/または活性汚泥側の制御技術」としては、
(b1)凝集処理の薬注量制御および/または凝集処理原水の一部,もしくは全量をバイパスして曝気槽に直接流入させる方法、
(b2)余剰汚泥引抜量を制御して、MLSS濃度を調整する方法
などがある。
【0013】
上記(b2)における余剰汚泥引抜量は、詳細は後述するが活性汚泥処理装置内の汚泥増殖量を監視し、SRTを目安に決定するのがよい。また、MLSS濃度も、同様に後述するSRTを基に管理する方法で決定するのがよい。或いは、特に沈殿池の固液分離能力限界を考慮して、これも後述する1D-flux理論などを利用して求めた目標濃度を限界目安として設定し、制御を行ってもよい。
【0014】
一方、(C)の「採り得る最適な対策の選定技術」は、緊急度と即効性を考慮しつつ、プラントに最適な処理を選定する。
このような点を踏まえつつ上述した目的を達成するため本発明の排水処理プラントの運転管理方法は、凝集反応処理装置と活性汚泥処理装置を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における活性汚泥の性状を検出する汚泥性状センサと、この汚泥性状センサが検出した前記活性汚泥の性状情報から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD(化学的酸素要求量)成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または、前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせてCOD成分の増減処理をする原水バイパス制御手段とを具備し、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段によるCOD成分の増減処理および/または原水バイパス制御手段によるCOD成分の増減処理により前記活性汚泥の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴としている。
【0015】
好ましくは前記排水処理プラントの運転管理方法は、更に前記活性汚泥処理装置から余剰汚泥引抜量を制御して前記活性汚泥処理装置のMLSS(混合液懸濁物質)濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
このMLSS濃度調整手段、前記凝集反応処理装置を制御する制御手段または前記原水バイパス制御処理の少なくとも一つの手段によって前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にすることが望ましい。
【0016】
したがって、上述の排水処理プラントの運転管理方法は、活性汚泥処理装置に流入する有機物量を調整しBOD汚泥負荷を調整して前記F/M比を最適化することにより、活性汚泥を分散状態または解体状態から好ましい性状に回復させる。
また本発明の排水処理プラントの運転管理方法は、凝集反応処理装置および固液分離手段を備えた活性汚泥処理装置を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における時間当たりの前記活性汚泥の増減量と固液分離手段における汚泥濃縮率とを求めるマスバランス監視手段と、前記活性汚泥処理装置における前記活性汚泥の性状を検出する汚泥性状センサとを備え、
前記マスバランス監視手段が求めた前記活性汚泥処理装置における時間当たりの汚泥の増減量、固液分離手段における汚泥濃縮率および前記汚泥性状センサが検出した活性汚泥の性状情報に従って前記凝集反応装置における薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせる原水バイパス制御手段および/または前記活性汚泥処理装置からの余剰汚泥引抜量を制御して活性汚泥処理装置のMLSS濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段、前記原水バイパス処理制御手段、前記MLSS濃度調整手段の少なくとも一つの手段により前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴としている。
【0017】
好ましくは上記排水処理プラントの運転管理方法は、更に固液分離手段の限界能力を1D−flux理論を利用して定義することが望ましい。
したがって上述の排水処理プラントの運転管理方法は、系内汚泥の時間当たりの増減量を求めているので、余剰汚泥引抜量の目安がわかるとともに、MLSS濃度の目標値となるように余剰汚泥引抜量とMLSS濃度調整を制御できる。
【0018】
また本発明の排水処理プラントの運転管理方法は、凝集反応処理装置、活性汚泥処理装置および余剰汚泥濃縮脱水用の脱水機を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における時間当たりの汚泥の増減量と固液分離手段における汚泥濃縮率とを求めるマスバランス監視手段と、前記活性汚泥処理装置における活性汚泥の性状変化を検出する汚泥性状センサと、前記脱水機が処理する汚泥の脱水における余剰処理能力を検出する脱水機能力監視手段とを備え、
前記マスバランス監視手段が求めた前記活性汚泥処理装置内における時間当たりの活性汚泥の増減量と前記固液分離手段における汚泥濃縮率、前記汚泥性状センサが検出した前記活性汚泥の性状変化および前記脱水機能力監視手段が検出した前記脱水機の余剰処理能力から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせる原水バイパス制御手段および/または前記活性汚泥処理装置からの余剰汚泥引抜量を制御して活性汚泥処理装置のMLSS濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段、前記原水バイパス処理制御手段、前記MLSS濃度調整手段の少なくとも一つの手段により前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴としている。
【0019】
したがって上述の排水処理プラントの運転管理方法は、脱水機の余剰能力を超えない範囲で活性汚泥処理装置に流入する原水中の不純物濃度の管理ができ、凝集処理の管理目標が設定できる。
好ましくは前述の排水処理プラントの運転管理方法は、更に前記活性汚泥処理装置における散気装置の余剰能力を検出する散気余剰能力検出手段と、散気装置が消費した電力を検出して該散気装置の電力消費効率を求める消費電力検出手段とを備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段は、更に前記散気余剰能力検出手段が検出した前記散気装置の余剰能力および前記消費電力検出手段が求めた前記散気装置の電力消費効率から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をすることを特徴としている。
【0020】
したがって上述の排水処理プラントの運転管理方法は、散気装置の消費電力を監視し、電力消費効率を数値化してプラントの余裕度(余裕能力)を評価することで、曝気槽中の活性汚泥に有機物負荷を現時点より更にかけられるか否かの判断ができ、凝集処理の目標管理または原水流入制限管理ができる。
尚、ここで好ましい性状とは、汚泥が分散状態でも解体状態でもない正常な状態にあることをいう。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1〜6に記載の排水処理プラントの運転管理方法によれば、凝集反応処理装置を制御する制御手段によるCOD成分の増減処理および/または原水流入手段による原水のバイパス処理制御を実施して活性汚泥を好ましい性状に制御しているので、前記活性汚泥処理装置に流入する有機物量を調整してBOD汚泥負荷を最適化することによって、活性汚泥の分散状態または解体状態から好ましい性状に回復させることができる。
【0022】
また上述の排水処理プラントの運転管理方法は、系内汚泥の時間当たりの活性汚泥増減量を求めているので、時間当たりまたは一日当たりの余剰汚泥引抜量の目安がわかる。また、曝気槽のMLSS濃度が目標値となるように余剰汚泥引抜量で調整を制御することが可能である。
一方、排水処理プラントの運転管理方法は、脱水機の余剰能力を数値化して制御しているので脱水機の余剰能力を超えない範囲で活性汚泥流入原水中の不純物濃度の管理ができ、凝集処理の管理目標を設定することが可能である。
【0023】
或いは、上述の排水処理プラントの運転管理方法は、散気装置の消費電力を監視して電力消費効率を数値化してプラントの余裕度(余裕能力)を評価しているので、活性汚泥に有機物負荷をかけられるか否かの判断ができ、凝集処理の目標管理または原水流入制限管理ができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の第一の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の排水処理プラントの運転管理方法が適用される排水処理プラントの一例を示す概略構成図である。この図において1は、排水処理対象の原水を受け入れるとともに、注入した凝集剤と撹拌されて原水に含まれる懸濁物と凝集反応を起こさせる凝集反応処理槽である。この凝集反応処理槽1で凝集剤と撹拌された原水は、凝集沈殿槽2に送られる(本発明では、凝集反応処理槽と凝集沈殿槽とを凝集反応処理装置という)。この凝集沈殿槽2の下方には、凝集反応によって生成された懸濁物が沈殿する一方、凝集沈殿槽2の上方には、上澄水が得られる。この上澄水は、後段の処理工程に送るべく一時的に保管するリザーバタンク3に送られる。
【0025】
リザーバタンク3に保持された原水は、ポンプ4によって次段の活性汚泥処理装置の曝気槽5に送られる。曝気槽5の底方には、散気管5aが設けられてブロワー5bによって空気が送り込まれる。この曝気槽5には、活性汚泥が保持され、活性汚泥の化学的活動によって原水に含まれる有機物がHOとCOとに分解される。次いで混合液は、上澄水と汚泥とに分離する次段の固液分離手段としての沈殿池6に送られる。沈殿池6の上澄水は、処理水として排水される一方、この沈殿池6の下方に貯まった汚泥は、ポンプ6aによって沈殿池6から排出され、一部は返送汚泥として再び曝気槽5に送られ、残余は余剰汚泥となって系外に取り出される。
【0026】
また、凝集反応処理槽1と曝気槽5との間には、後述するプラント制御装置10の指令によって凝集反応処理槽1に投入される原水の一部を曝気槽5にバイパスするバイパス弁9a、バイパス管9bおよび流路開閉弁9cを備えて構成される。
尚、凝集沈殿槽2からの沈殿物および沈殿池6からの余剰汚泥は、高分子脱水剤と混合され、脱水機7にてそれぞれに含まれる水分が脱水処理されて脱水ケーキとなる。
【0027】
また曝気槽5には、槽内の活性汚泥の性状を検出する汚泥性状センサ8が設けられている。この汚泥性状センサ8は、例えば特願2005−23091号に記載される汚泥性状センサであって、曝気槽5からの汚泥サンプリングポンプ8bによって汲み上げられた被計測汚泥を収容する計測槽8a中の活性汚泥スラリーの水面直下に位置付けられて、この活性汚泥スラリーの濃度と粒子径に応じた検出信号を出力するようになっている。この汚泥性状センサ8が出力する検出信号は、計測槽8a中において、活性汚泥スラリーを自然沈降させたときの濃度と粒子径の経時変化を捉える経時変化検出手段10aと、この経時変化検出手段が捉えた活性汚泥スラリーの濃度と粒子径の経時変化から該活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥の性状を判定する汚泥性状判定手段10b、この汚泥性状判定手段10bが判定した活性汚泥の性状によってプラントにおける汚泥性状を好ましい性状に制御する制御部10cとを備えるプラント制御装置10に与えられる。
【0028】
制御部10cは、図2に示すように汚泥性状センサ8が検出した活性汚泥の性状から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をする凝集反応処理装置を制御する凝集反応処理装置制御手段100、凝集反応処理槽1に流入する原水の一部または全量を曝気槽5にバイパスさせる原水バイパス制御手段101、沈殿池6から脱水機7に移送される余剰汚泥引抜量を制御して曝気槽5のMLSS濃度を調整するMLSS濃度調整手段102、排水処理プラント系内における時間当たりの活性汚泥の増減量と沈殿池6における汚泥濃縮率とを求めるマスバランス監視手段103、脱水機7が処理する汚泥の脱水における余剰処理能力を検出する脱水機能力監視手段104、曝気槽5における散気装置の余剰能力を検出する散気余剰能力検出手段105、散気装置が消費した電力を検出して該散気装置の電力消費効率を求める消費電力検出手段106、マスバランス監視手段103が検出した排水処理系内における時間当たりの汚泥の増減量と沈殿池6における汚泥濃縮率、汚泥性状センサ8が検出した活性汚泥の性状変化、前記脱水機能力監視手段104が検出した前記脱水機の余剰処理能力、散気余剰能力検出手段105が検出した前記散気装置の余剰能力および消費電力検出手段106が求めた前記散気装置の電力消費効率から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理を制御できる凝集反応処理装置の制御を補正する凝集反応処理補正制御手段107を備えている。
【0029】
また経時変化検出手段10aは、汚泥性状センサ8の検出データから計測槽8a内の活性汚泥スラリーが沈降して堆積する活性汚泥の経時変化を検出する。そして汚泥性状判定手段10bは、経時変化検出手段10aが検出した活性汚泥の経時変化から活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥の性状を判定するようになっている。具体的に汚泥性状判定は、図10に示すフローチャートに基づき行われる。
【0030】
汚泥性状判定は、まず計測槽8aに収容された活性汚泥スラリーを所定の手段により均一になるように撹拌したとき、または撹拌直後、汚泥性状センサ8として例えば前述した特願2005−23091号に記載される汚泥性状センサ(散乱光センサ)から出力される検出信号を用いて活性汚泥スラリーの初期濃度情報Sおよび初期粒子径情報Nを検出する[ステップS100]。次いで、これらの情報を受けて活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥の性状を判定する汚泥性状判定手段10bは、初期濃度情報Sが所定の濃度レベルC未満かどうかを判定する[ステップS101]。このとき汚泥性状判定手段10bは、[C>S]であると判定したとき活性汚泥スラリーの濃度が計測範囲外にあると判定する[ステップS102]。すなわち汚泥性状判定手段10bは、希釈不良であると判定する。
【0031】
一方、ステップS101で経時変化検出手段10aは、汚泥性状判定手段10bが[C≧S]であると判定したとき、所定時間経過後、汚泥性状センサ8から出力される検出信号から計測槽8a内における活性汚泥スラリーの濃度情報Sおよび粒子径情報Nを検出する[ステップS103]。次いで経時変化検出手段10aは、初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]を求める一方、汚泥性状判定手段10bは、この値が所定の濃度レベルC(ただし、C>C)より大きいかどうかを調べる[ステップS104]。
【0032】
ステップS104で汚泥性状判定手段10bは、所定の濃度レベルCより大きいと判定したとき、更に初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC(ただし、C>C)以上あるかどうかを調べる[ステップS105]。汚泥性状判定手段10bは、ステップS105で所定の濃度レベルC以上あると判定したとき、活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥が好ましい性状にあると判定する[ステップS106]。
【0033】
一方、ステップS104で汚泥性状判定手段10bは、初期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC以下であると判定したとき、更にステップS100で検出した初期粒子径情報Nと、ステップS103で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]を求め、求めた値が0以上であるかどうかを調べる[ステップS8]。次いで汚泥性状判定手段10bは、ステップS107で[N−N]が0以上であると判定したとき、更に初期粒子径情報Nが所定の粒子径C以下であるかを判定し[ステップS108]、[N≦C]と判定したとき活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥の性状が分散汚泥であると判定する[ステップS109]。
【0034】
他方、汚泥性状判定手段10bはステップS107で、ステップS4で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]が0未満であるとき散乱光センサに汚れ、藻、汚泥の固まり、その他固形物等の異物が付着したと判定する[ステップS110]。
また、ステップS108で汚泥性状判定手段10bは、初期粒子径情報Nが所定の粒子径C未満であると判定したとき、活性汚泥スラリーに糸状性バルキングまたは粘質性バルキングの発生、その他の異常が発生したものと判定する[ステップS111]。
【0035】
一方、汚泥性状判定手段10bは、ステップS105で、期濃度情報Sから所定時間経過後の濃度情報Sとの差[S−S]が所定の濃度レベルC以下であると判定したとき、更にステップS1で検出した初期粒子径情報Nと、ステップS103で検出した粒子径情報Nとの差[N−N]を求め、求めた値が0以上であるかどうかを調べる[ステップS112]。汚泥性状判定手段10bは、このステップS112で[N−N]が0以上であると判定したとき、活性汚泥スラリーに含まれる活性汚泥の性状が解体汚泥であると判定する[ステップS113]一方、[N−N]が0未満であると判定したとき汚泥性状センサ8に気泡等の異物が付着して計測不能状態にあると判定する[ステップS114]。
【0036】
ところで分散状態にある汚泥は、全体の粒子径が小さいため終末沈降速度が小さく、したがって自然沈降させても汚泥堆積層を形成せず、堆積層と水層との境界が現れない状態にある。一方、解体状態にある汚泥は、活性汚泥スラリーに含まれるフロック形成力を有する大きな粒子径の汚泥群が存在する。このため、この解体汚泥を含む活性汚泥スラリーを例えば容器内で均一に撹拌したのち静置すると時間の経過とともに容器の底部に汚泥が沈降して堆積し、汚泥堆積層を形成する一方、フロックが解体して発生した小さな粒子は沈降することができず、このため上澄水となるべき水層には濁りが発生した状態になる。他方、好ましい性状の活性汚泥は、所定の容器に入れた活性汚泥スラリーを均一に撹拌した後、所定時間放置すると容器内の活性汚泥スラリーが堆積層と上澄水とに分離する。
【0037】
さて、このようなプラント制御装置10を用いた本発明の第一の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、プラント制御装置10によって活性汚泥プロセスにおける活性汚泥の性状(分散汚泥、解体汚泥または正常汚泥)を数値化して評価するものである。
具体的に分散汚泥の場合は、凝集反応処理槽1の凝集反応を最適化させ、曝気槽5中の活性汚泥への有機物持込みを最低限に抑える必要がある。このため、凝集反応処理槽1への凝集剤の薬注量を増大させるか薬剤銘柄を再選定し、効果的なものに変更すればよい。
【0038】
まず薬注量を増大させるには、薬注ポンプP1の吐出量を上げるか薬剤濃度を高くすればよい。また、原水中の基質(有機物の成分)の変化があった場合は、ジャーテストを行なって効果的な薬剤を選定して変更すればよい。そして、プラント制御装置10が出力する活性汚泥が好ましい性状(正常汚泥)になるまで調整を続け、凝集反応処理槽1の凝集反応が最適になる凝集剤の薬注量並びに薬剤銘柄を選定し、これを新しい運転条件として設定する。
【0039】
一方、解体汚泥の場合、原水の一部もしくは全量を凝集反応処理槽1を介さずに一時的に曝気槽5に直接流入させる。
或いは、凝集剤として、特に有機物吸着物質(COD低減剤)を単独または併用している場合には、この添加量を一時停止するか、添加量を減らし、凝集処理水の有機物濃度を上昇させて、曝気槽5に流入させる。そしてプラント制御装置10が出力する活性汚泥が好ましい性状になるまで調整を続ける。このようにして活性汚泥が好ましい性状になったときの凝集剤の添加量および曝気槽5への原水バイパス量を新しい運転条件として設定する。
【0040】
尚、上述の操作を実施した場合、汚泥のSRTの1/2の時間を経過しても効果が現れないときは、バイパス弁9aを開き、バイパス管9bを介して原水の曝気槽5へのバイパス量を増大させる処理および/または薬注ポンプP1の駆動を制御して凝集剤添加量を減らす処理を検討し、プラント制御装置10が出力する活性汚泥が好ましい性状になるまで調整を繰り返す。
【0041】
かくして本発明の第一の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述した操作によって、汚泥が分散状態にあるときは凝集反応処理槽1の凝集反応が最適になる凝集剤の薬注量並びに薬剤銘柄を選定する一方、解体状態にあるときは、凝集剤の添加量および曝気槽5への原水バイパス量を制御して曝気槽5に流入する有機物量を調整し、BOD汚泥負荷を最適化しているので活性汚泥の分散状態または解体状態から好ましい性状への回復を図ることができる。
【0042】
次に本発明の第二の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について説明する。この実施形態が上述した第一の実施形態と異なる所は、第一の実施形態に加えて余剰汚泥引抜量の制御を加味した点にある。
まず分散汚泥の場合は、上述したように凝集反応処理における薬注量を増大させるか、余剰汚泥引抜量を低減させればよい。つまり、凝集反応処理において薬注量を増大させて凝集反応を最適化させ、曝気槽5への有機物持込みを最低限に抑えることと、余剰汚泥引抜量を低減させ、曝気槽5のMLSS濃度を増大させてBOD汚泥負荷を下げて活性汚泥の好ましい性状を維持するよう制御すれば適切な排水処理プラントの運転管理ができる。
【0043】
しかしながら上述の凝集反応処理における薬注量の増大は、即効性がある一方、余剰汚泥引抜量の低減によるMLSS濃度の調整は、最適条件となるまで時間がかかる。したがって、まず凝集反応処理における薬注量の増大を行って汚泥の改善を図り、次いで余剰汚泥引抜量を低減するように調整する。そうして最終的に、プラント制御装置10が出力する活性汚泥が好ましい性状になるまで余剰汚泥引抜量を低減の調整・制御を繰り返せばよい。
【0044】
次に解体汚泥の場合、凝集剤の添加量を減らすか、一時的に薬液を停止させて凝集処理水の有機物濃度を上昇させて曝気槽5に流入させるかして、原水の一部または全量を直接曝気槽5に流入させれば適切な排水処理プラントの運転管理を行うことができる。
この方法について具体的な例を挙げれば、設計段階における凝集反応処理槽1の原水BODが10000mg/L、凝集反応処理槽1の処理水BODが1000mg/Lであった場合、次に示すように制御が行われる。
【0045】
まず凝集反応処理槽1に流入する原水水量の制御として例えば原水全量の1/10を曝気槽に直接流入させる一方、残りの原水(9/10)を凝集反応処理槽1に通し、この処理水を曝気槽5に流入させる(24時間連続)。すると本来の負荷は、
1000[kg/m]×y[m/日]
であるが、本実施形態の場合のかけられる負荷は、
10000[kg/m]×1/10y[m/日]
+1000[kg/m]×9/10y[m/日]
=1900[kg/m]×y[m/日]
となる。即ち、対策前の1.9倍の負荷をかけることができる。
【0046】
次に原水の1倍量を1時間、曝気槽5に直接流入させる。そして残りの23時間を凝集反応処理槽1の処理水を曝気槽5に流入させる。すると本来の負荷は、
1000[kg/m]×y[m/日]
であるが、本実施形態の場合のかけられる負荷は、
10000[kg/m]×1/24y[m/日]
+1000[kg/m]×23/24y[m/日]
=1750[kg/m]×y[m/日]
となる。即ち、対策前の1.75倍の負荷をかけることができる。
【0047】
次に凝集反応処理槽1の制御について説明する。この制御は、凝集剤の添加量を減らすか、間欠的に薬液供給を停止することで凝集処理水の有機物濃度を上昇させて曝気槽5に流入させるものである。更にプラント制御装置10は、余剰汚泥引抜量を増大させて曝気槽5のMLSS濃度を低減し、BOD汚泥負荷を上げることにより最適値に制御する。
或いはプラント制御装置10は、上述した薬注ポンプP1の駆動を制御して凝集反応処理槽1に投入する薬注量の増加或いはバイパス管9bを介して原水の曝気槽5へのバイパス量を増大させる処理および余剰汚泥引抜量の増大のうち、少なくとも一つの制御を行い活性汚泥が好ましい性状になるまで調整を繰り返す。
【0048】
次いでプラント制御装置10は、凝集反応処理槽1の薬注量を適正化して処理を正常に戻し、プラント制御装置10が出力する活性汚泥の性状を監視しながら余剰汚泥引抜量の増大の制御を続けて、MLSS濃度を適正化させる。
具体的に上述した第二の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、図3および図4に示すフローチャートの手順に従って実施される。これは上述した汚泥性状センサ8の計測結果を用いた排水処理プラントの運転管理方法の一例である。
【0049】
この排水処理プラントの運転管理方法は、該運転管理方法が適用される排水プラントのプラント制御装置10が備える汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う[ステップS1]。この活性汚泥の性状判定は、前述したように活性汚泥の性状が正常汚泥か、分散汚泥であるか或いは、解体汚泥であるかを判定するものである。プラント制御装置10は、ステップS1で活性汚泥の性状が分散汚泥または解体汚泥の何れでもない場合、正常汚泥として以後の処理を行わない。
【0050】
次にステップS1で活性汚泥の性状が分散汚泥であると判定されたとき、プラント制御装置10は、汚泥センサが出力した活性汚泥の性状を所定のレベル付け(例えば5段階評価)をして検出データの数値化を行う[ステップS2]。この所定のレベル付けは、汚泥の分散が進行し、緊急な対応が必要な活性汚泥の性状を示すレベルを例えば[5]、軽微な分散汚泥の状態を例えば[1]とする。次いでプラント制御装置10は、数値化した活性汚泥の性状を示すレベルから処理の緊急度の有無を判定する[ステップS3]。ステップS3で制御装置は、ステップS2でレベル付けがなされた検出データが[5]であり、緊急に対応する必要があると判断したとき、凝集反応処理槽1に投入する凝集剤の薬注量を増大させる[ステップS4]とともに、活性汚泥の余剰引抜量を低減させる[ステップS5]。
【0051】
そしてプラント制御装置10は、汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う[ステップS6]。ステップS6でプラント制御装置10は、活性汚泥の性状が悪いと判定したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば3以上)、再びステップS5に戻り余剰汚泥引抜量を低減させる。またステップS6でプラント制御装置10は、活性の性状が異常に悪いと判定したとき(活性の性状を示すレベルが例えば4以上)、凝集反応処理槽1に流入する原水水量を一時的に低下させる[ステップS7]。次いでステップS7の効果を見るために活性汚泥の性状判定を行う[ステップS8]。効果があるときは、再びステップS5に戻り活性汚泥の余剰引抜量を低減させる。一方、効果が見られないときは、再度原水水量をさらに低下させる。尚、ステップS6でプラント制御装置10は、活性汚泥が好ましい性状になったと判定したとき、現在の凝集剤の薬注量および余剰汚泥引抜量を新しい運転管理値として登録する[ステップS9]。
【0052】
一方、プラント制御装置10は、ステップS3で、緊急に対応する必要がないと判断したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば4以下)、余剰汚泥引抜量を低減する[ステップS10]。そしてプラント制御装置10は、汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う[ステップS11]。ステップS11でプラント制御装置10は、ステップS10の余剰汚泥引抜量低減の効果があると判定したとき、再びステップS10に戻り余剰汚泥引抜量の低減を進める。一方、プラント制御装置10は、ステップS11で活性汚泥の性状判定を行った結果、効果がないと判定したとき、凝集反応処理槽1に投入する凝集剤の薬注量を増大させる[ステップS12]。尚、プラント制御装置10は、ステップS11で活性汚泥の性状判定を行った結果、活性汚泥の性状が良くなったと判定したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば2以下)、現在の凝集剤の薬注量および余剰汚泥引抜量を新しい運転管理値として登録する[ステップS9]。
【0053】
一方、プラント制御装置10は、ステップS1で活性汚泥の性状判定を行った結果、解体汚泥であると判定したとき、汚泥センサが出力した活性汚泥の性状を所定のレベル付け(例えば5段階評価)して検出データの数値化を行う[ステップS20]。この所定のレベル付けは、汚泥の解体が進行し、緊急な対応が必要な活性汚泥の性状を示すレベルを例えば[5]、軽微な解体汚泥の状態を例えば[1]とする。次いでプラント制御装置10は、活性汚泥の性状を数値化してレベル付けした値から処理の緊急度の有無を判定する[ステップS21]。ステップS21でプラント制御装置10は、ステップS20でレベル付けがなされた検出データが[5]であり、緊急に対応する必要があると判断したとき、凝集反応処理槽1に流入する原水の一部を曝気槽5に流入させる[ステップS22]とともに、凝集反応処理槽1に投入する凝集剤の添加量を減らすか、間欠的に薬液供給を停止することで薬注量を低減させ[ステップS23]、活性汚泥の余剰汚泥引抜量を増加させる[ステップS24]。
【0054】
そしてプラント制御装置10は、汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う[ステップS25]。ステップS25で制御装置は、活性汚泥の性状が悪いと判定したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば3以上)、再びステップS24に戻り余剰汚泥引抜量を増加させる。またステップS25でプラント制御装置10は、活性汚泥の性状が異常に悪いと判定したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば4以上)、ステップS22またはステップS23に戻り、凝集反応処理槽1に流入する原水の一部をさらに多く曝気槽5に流入させる[ステップS22]とともに、凝集反応処理槽1に投入する凝集剤の薬注量をさらに低減させ[ステップS23]、余剰汚泥引抜量をさらに増加させ[ステップS24]、その後、再びステップS25で活性汚泥の性状判定を繰り返す。尚、ステップS25でプラント制御装置10は、活性汚泥の性状が良くなったと判定したとき(活性汚泥の性状を示すレベルが例えば2以下)、現在の凝集剤の薬注量、余剰汚泥引抜量および曝気槽5への原水バイパス量を新しい運転管理値として登録する[ステップS26]。
【0055】
一方、プラント制御装置10は、ステップS21で、緊急に対応する必要がないと判断したとき、余剰汚泥引抜量を増加する[ステップS27]。そしてプラント制御装置10は、汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う[ステップS28]。ステップS28でプラント制御装置10は、ステップS27の余剰汚泥引抜量増加の効果があると判定したとき、再びステップS27に戻り余剰汚泥引抜量の増加を一層進める。一方、制御装置は、ステップS28で活性汚泥の性状判定を行った結果、効果がないと判定したとき、凝集反応処理槽1に流入する原水の一部をバイパスして曝気槽5に流入させる[ステップS29]とともに、凝集反応処理槽1に投入する凝集剤の薬注量を低減させる[ステップS30]。そして再びステップS28に戻り制御装置は、汚泥性状センサ8の検出結果から活性汚泥の性状判定を行う。
【0056】
尚、ステップS28でプラント制御装置10は、活性汚泥の性状が良くなったと判定したとき、現在の凝集剤の薬注量、余剰汚泥引抜量および曝気槽5への原水バイパス量を新しい運転管理値として登録する[ステップS26]。
一方、ステップS21でプラント制御装置10は、突如、解体汚泥の発生が検出されたと判定したとき、原水に毒物・アルカリまたは酸・高温水等の混入があり原水に何らかの異常があるとし、曝気槽5に流入する原水を停止する[ステップS31]。
【0057】
かくして本発明の第二の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述したプラント制御装置10の操作によって、曝気槽5に流入する有機物量を調整し、BOD汚泥負荷を最適化することによって、活性汚泥の分散状態または解体状態からの好ましい性状への回復を図ることができる。
次に本発明の第三の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について説明する。この第三の実施形態が上述した実施形態と異なる所は、マスバランス監視によって系内汚泥の時間当りの増減量と固液分離手段としての沈殿池6での汚泥濃縮率を数値化した点にある。
【0058】
このマスバランス監視は、系内汚泥の時間当りの増減量と沈殿池6での濃縮率を後述する計算によって数値化するものである。このマスバランス監視は、図5に示すように所定時間当たりに曝気槽で増減した汚泥量をA、所定時間当たりに沈殿池6で増減した汚泥量をB、所定時間当たり系外に排出された汚泥量をCとすれば、系内汚泥の所定時間当たりの増減量は、[A+B+C]で求めることができるというものである。ここに、上述したA,B,Cは、それぞれ次式に示されるように定義できる。
【0059】
A=(XF現在−XFk時間前)×V
B=Σ{X×(Q+Q)−X×Q}/k
ただし、Σはk時間前〜現在までの総和
C=Σ(X×Q)/k
ただし、Σはk時間前〜現在までの総和
また、X : 曝気槽のMLSS濃度
F現在 : 現在の曝気槽のMLSS濃度
Fk時間前 : k時間前の曝気槽のMLSS濃度
: 返送汚泥のMLSS濃度
: 曝気槽流入原水流量
: 曝気槽流入返送汚泥流量
: 余剰汚泥排出流量
: 沈殿池から引き抜かれる汚泥流量(Q=Q+Q
また、上述した値から沈殿池6での汚泥濃縮率を[(Q×X)/(Q×X)]として定義する。そうしてプラント制御装置10は、前述した第二の実施形態と同様の制御を行い曝気槽5に流入する有機物量を調整し、BOD汚泥負荷を最適化すれば、活性汚泥の分散状態から好ましい性状へと回復を図ることができる。
【0060】
ただし前述した第二の実施形態と異なり系内汚泥の所定時間当りの増減量を前記計算によって求めているため、第三の実施形態は余剰汚泥の引抜量の目安を得ることも可能である。また求めた汚泥濃縮率から、沈殿池6での汚泥界面が上昇しないように、曝気槽流入原水流量を決定することができる。
尚、系内汚泥の所定時間当たりの増減量の余剰汚泥引抜量と等置して後述する式に適用すれば汚泥の系内滞留時間(現在のSRT)を求めることができる。ちなみに現在のSRTは、[(系内の汚泥保持量)/(系内から排出された24時間当りの汚泥量)]である。
【0061】
ここで系内の汚泥保持量は、曝気槽5内の汚泥存在量、沈殿池6内の堆積汚泥量、汚泥中間貯留槽(図示せず)内の保有汚泥量および各槽間を連結する配管内に存在する汚泥量の総和である。或いは、系内の汚泥保持量を曝気槽5の汚泥存在量として近似してもよい。この場合、曝気槽5の汚泥存在量は、曝気槽5内のMLSS濃度と曝気槽5の容積の積として求めることができる。
【0062】
このように管理すればSRTを基準として、余剰汚泥引抜量の管理ができ、SRTの基準値(通常は、5〜30日であるが好ましくは、7〜14日)を設定し、現在のSRTと、SRTの基準値とが等しくなるように余剰汚泥引抜量を決定することができる。つまり余剰汚泥引抜量は、系内の汚泥保持量をSRTの基準値で除した値として求まることになる。
【0063】
またこのSRTを指標として、曝気槽5のMLSS濃度の目標値を決定することもできる。具体的に曝気槽5のMLSS濃度の目標値は、[SRTの基準値×系内で24時間当りに増減した汚泥量/曝気槽容積]として求めることができる。
上述したようにして求められる曝気槽5のMLSS濃度の最適値を用いた排水処理プラントの運転管理手順について図6および図3を用いて説明する。図6は、前述した図3に示す排水処理プラントの運転管理方法と同様の処理手順に加えて曝気槽5の余剰能力を判定して制御を行うフローチャートを示したものであり、図3と同一の処理には同符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
まず、プラント制御装置10は、上述したようにして曝気槽5のMLSS濃度の最適値を算出する[ステップS40]。次いでプラント制御装置10は、沈殿池6の固液分離の余剰能力を判定する[ステップS41]。ステップS41でプラント制御装置10は、沈殿池6に固液分離の余剰能力があると判定したとき、ステップS24またはステップS27の処理に係る余剰汚泥引抜量の増加指令を出力する。一方、プラント制御装置10は、ステップS41で沈殿池6に余剰能力がないと判定したとき、曝気槽5に流入する原水流量を一時低下させる。そうしてプラント制御装置10は、活性汚泥を速やかに好ましい性状になるようにする。
【0065】
かくして本発明の第三の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述したようにして算出した曝気槽5のMLSS濃度の目標値となるように余剰汚泥引抜量、曝気槽5のMLSS濃度調整を制御しているので活性汚泥を好ましい性状に維持する運転管理ができる。
次に本発明の第四の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について説明する。この第四の実施形態が上述した実施形態と異なる所は、1D−flux理論を適用した点にある。
【0066】
1D−flux理論を適用するに先立ち、装置設計の限界値をQImax1、沈殿池流入汚泥濃度および汚泥沈降指標によって定まる限界値をQImax2とする。そしてQImax1を沈殿池水面積負荷の設計値と沈殿池の水面積の積として定義する。ただし、水面積負荷の設計値は、通常5〜10[m/h]とする。一方、QImax2は、1D−flux理論による汚泥沈降速度と沈殿池の水面積との積として定義し、沈殿池流入汚泥濃度は、曝気槽5のMLSS濃度と、汚泥を静的に重力沈降させたときの指標であるSV30、希釈SV30(DSV30)、撹拌したSV30(SSV30)等の汚泥沈降指標から定める。
【0067】
すると1D−flux理論(Daiggerの近似式)による汚泥沈降速度は、[V−nX]として定義することができる。
ただし、
:汚泥の終末沈降速度[m/h]
n=0.103+0.002555×DSVI
DSVI=DSV30/DSV30測定時の初期汚泥濃度
X=固液分離に関わる部位の汚泥濃度
=沈殿池フィードウェル周辺の汚泥濃度もしくは汚泥堆積層上部の汚泥濃度
≒曝気槽のMLSS濃度
ここに上記式中の[n]は、DSVIを用いた近似式を示したが、この他、SVI,SSVIを用いた近似式を適用してもよい。
【0068】
これらの式によれば、沈殿池6における固液分離性能を評価することができる。
上述したようにして求められる曝気槽5のMLSS濃度の最適値を用いた排水処理プラントの運転管理手順は、前述した第二の実施形態の制御フローを示す図3と同様な排水処理プラントの手順を行い、活性汚泥が速やかに好ましい性状になるよう制御する。
かくして本発明の第四の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述した計算を行うことによって曝気槽5のMLSS濃度の管理指標を得ることができ、求めた値を制御目標値として設定しているので活性汚泥の好ましい性状を維持した排水処理プラントの運転管理を行うことができる。
【0069】
次に本発明の第五の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について説明する。この第五の実施形態が上述した実施形態と異なる所は、脱水機7の余剰能力評価を加味した点にある。
脱水機7の余剰能力評価は、まず脱水機7の現在の能力を、脱水機にかけられた汚泥量を脱水機の稼働時間で除した値として求め、次いで脱水機7にかけられた汚泥量を、活性汚泥から排出された24時間当りの汚泥量と、凝集反応処理槽1から排出された24時間当りの汚泥量と、その他の24時間当りに流入した汚泥量との総和として求める。そして脱水機7の余剰能力を脱水機の限界能力と脱水すべき汚泥量との差分として定義する。すると脱水機7の限界能力は、[脱水機の現在能力×(24/現在の脱水機の稼働時間)]として求めることができる。
【0070】
ここに、脱水機7の余剰能力度を脱水機の余剰能力を脱水機の限界能力で除した値として定め、脱水機7の余剰能力率を脱水機の余剰能力度×100[%]とすれば、脱水機7の余剰能力評価ができる。そしてプラント制御装置10は、上述した式を用いて求めることができる脱水機の余剰能力度が[1]または脱水機の余剰能力率が[100%]をそれぞれ超えないように管理すればよい。そして脱水機余剰能力度が[1]または脱水機の余剰能力率が[100%]を超える場合、曝気槽5での汚泥増殖を抑えればよい。
【0071】
上述したようにして求められる脱水機7の余剰能力評価値を用いた排水処理プラントの運転管理手順について図7および図8を用いて説明する。この図は、前述した第二の実施形態の処理手順を示す図3および図4と同様の処理に加えて脱水機7の余剰能力を判定して制御を行うフローチャートを示したものであり、図3および図4と同一の処理にはそれぞれ同符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
まず、プラント制御装置10は、上述したようにして脱水機7の余剰能力を算出する[ステップS50]。次いでプラント制御装置10は、脱水機7の処理に余剰能力があるか否かを判定する[ステップS51]。ステップS51で脱水機7の処理に余剰能力がないと判定したプラント制御装置10は、ステップS4またはステップS12の処理に係る凝集剤の薬注量に対して更に増加指令を出力する。或いは、ステップS51で脱水機7の処理に余剰能力があると判定したプラント制御装置10は、続いてMLSS濃度の最適値を算出する[ステップS40]。次いで沈殿池6の固液分離の余剰能力を判定するステップS41を経て、沈殿池6に固液分離の余剰能力があると判断した場合には、ステップS24またはステップS27に係る余剰汚泥の引抜量を増加させる指令を出力する。そうしてプラント制御装置10は、活性汚泥が速やかに好ましい性状になるよう制御する。
【0073】
かくして本発明の第五の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述した計算を行っているので凝集処理の管理目標を排水処理プラントに適するよう設定することができる。更には、活性汚泥を安定化させるために、上述した計算を行えば、原水に応じた曝気槽5のMLSS濃度が設定できるとともに、設定した結果をプラント制御装置10の検出結果を確認しながら、系内にフィードバックして原水流量の増・減、停止を判断することが可能となる。
【0074】
次に本発明の第六の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法について説明する。この第六の実施形態が上述した実施形態と異なる所は、曝気槽5が備える散気装置の余剰能力評価を加味した点にある。
さて排水処理プラントに適用される散気装置は、ブロワー5bによるものと、表面撹拌(図1には図示せず)によるものとに分けて考えることができる。
【0075】
まず散気装置がブロワー5bによるものである場合、ブロワー5bの余剰能力は、ブロワー5bの最大能力と現在のブロワー能力との差分として求めることができる。
ここに、ブロワー能力は、[BWe−kt]で示される。この式において、B:電力消費量に対する送風量基準値[m/W]、W:電力消費量[W]、k:ブロワー装置固有の温度依存送風効率、t:送風する空気の温度とする。このブロワー5bの余剰能力を用いれば、ブロワー5bの余剰能力度をブロワー5bの余剰能力をブロワー5bの最大能力で除した値として、またブロワー5bの余剰能力率をブロワー5bの余剰能力度を100倍した値[%]として定めることができる。
【0076】
ちなみにブロワー5bの運転による酸素溶解理論値は、前述した現在のブロワー能力を用いれば、[現在のブロワー能力×e−βqt]として求めることができる。この式においてβ:塩類など該水質に依存した酸素溶解効率、q:該水温に依存した酸素溶解効率、t:水温である。すると活性汚泥が利用した酸素量(見積り値)は、散気装置の運転による酸素溶解理論値から[DO:計器によって計測した溶存酸素濃度の現在値]を差し引いた値として求めることができ、上述したようにしてブロワー5bにおける諸量を定めることができる。
【0077】
次に散気装置が表面撹拌によるものである場合、表面撹拌装置の余剰能力は、撹拌機の最大能力と現在の撹拌機能力との差分として求めることができる。
尚、撹拌機能力は、[CWe−αpt]として定義する。この式において、C:電力消費量に対する撹拌機の散水量基準値[m/W]、W:電力消費量[W]、α:撹拌機固有のスラリー粘度(もしくは濃度)依存散水効率、p:撹拌機固有の温度依存散水効率、t:散水する水の温度である。
【0078】
このようにして求めることができる表面撹拌装置の余剰能力を用いれば、表面撹拌装置の余剰能力度は、撹拌機の余剰能力を撹拌機の最大能力で除した値として、表面撹拌装置の余剰能力率は、撹拌機の余剰能力度を100倍した値[%]としてそれぞれ定義することができる。
ちなみに表面撹拌装置の運転による酸素溶解理論値は、上述した現在の撹拌機能力を用いれば、[現在の撹拌機能力×e−βqt]として求めることができる。ここに、β:塩類など該水質に依存した酸素溶解効率、q:該水温に依存した酸素溶解効率、t:水温である。よって、活性汚泥が利用した酸素量(見積り値)は、散気装置の運転による酸素溶解理論値から[DO:計器によって計測した溶存酸素濃度の現在値]を差し引いた値として求めることができる。
【0079】
このように定義すれば表面撹拌装置における諸量を定めることができる。したがって、散気装置の余剰能力度が1を超えないように排水処理プラントの運転管理を行えばよい。
更に散気装置の消費電力監視装置による電力消費効率は、活性汚泥が利用した酸素量を散気装置の運転による酸素溶解理論値で除した値として数値化することもできる。
上述したようにして求められる散気装置の余剰能力評価を適用した排水処理プラントの運転管理手順について図9、図3および図4を用いて説明する。これらの図は、前述した第二の実施形態の処理手順を示す図3および図4と同様の処理に加えて散気装置の余剰能力を判定して制御を行うフローチャートを示したものであり、図3および図4と同一の処理は、その説明を省略する。
【0080】
まず、プラント制御装置10は、上述したようにして散気装置の余剰能力を算出する[ステップS60]。次いでプラント制御装置10は、散気装置の余剰能力を判定する[ステップS61]。プラント制御装置10は、ステップS61で散気装置の余剰能力がないと判定したとき、ステップS4またはステップS12の処理に係る凝集剤の薬注量を増大させる指令を出力する。一方、プラント制御装置10は、ステップS61で散気装置に余剰能力があると判定したとき、ステップS60に戻り、引き続き散気装置の余剰能力評価を行う。そうしてプラント制御装置10は、活性汚泥が速やかに好ましい性状になるよう制御する。
【0081】
かくして本発明の第六の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法は、上述した演算を行うことによって散気装置の消費電力効率を数値化し、排水処理プラントの余裕度(余剰能力)を評価することできる。したがって、活性汚泥に対して更に有機物負荷をかけて良いか否かの判断をすることができ、凝集処理の目標管理または原水流入管理を行うことができる。
【0082】
尚、本発明の排水処理プラントの運転管理方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば凝集反応処理装置は、凝集反応と固液分離処理が一体化した装置を用いてもよいし、活性汚泥処理装置も曝気槽と沈殿槽が一体化した装置を用いてもよい。また凝集処理装置と活性汚泥処理装置において、固液分離手段として沈殿池に限らず、膜分離装置を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の排水処理プラントの運転管理方法が適用される排水処理プラントの一例を示す概略構成図。
【図2】図1に示すプラント制御装置における制御部の構成を示すブロック図。
【図3】図1に示す排水処理プラントに適用される本発明の第二の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図4】図3に続く本発明の第二の実施形態および図9に続く本発明の第六の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図5】マスバランス監視手法の一例を示すべく描いた排水処理プラントの要部構成を示す図。
【図6】図1に示す排水処理プラントに適用される本発明の第三の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図7】図1に示す排水処理プラントに適用される本発明の第五の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図8】図7に続く本発明の第五の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図9】図1に示す排水処理プラントに適用される本発明の第六の実施形態に係る排水処理プラントの運転管理方法の制御手順を示すフローチャート。
【図10】散乱光センサが出力する検出信号の信号レベルおよび振幅から活性汚泥の性状を判定するアルゴリズムを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0084】
1 凝集反応処理槽
2 凝集沈殿槽
3 リザーバタンク
4 ポンプ
5 曝気槽
5a 散気管
5b ブロワー
6 沈殿池
7 脱水機
8 汚泥性状センサ
9a バイパス弁
10 プラント制御装置
10b 汚泥性状判定手段
10a 経時変化検出手段
10c 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集反応処理装置と活性汚泥処理装置を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における活性汚泥の性状を検出する汚泥性状センサと、
この汚泥性状センサが検出した前記活性汚泥の性状情報から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD(化学的酸素要求量)成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または、前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせてCOD成分の増減処理をする原水バイパス制御手段と
を具備し、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段によるCOD成分の増減処理および/または原水バイパス制御手段によるCOD成分の増減処理により前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴とする排水処理プラントの運転管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理プラントの運転管理方法であって、
更に前記活性汚泥処理装置から余剰汚泥引抜量を制御して前記活性汚泥処理装置のMLSS(混合液懸濁物質)濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
このMLSS濃度調整手段、前記凝集反応処理装置を制御する制御手段または前記原水バイパス制御処理の少なくとも一つの手段によって前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にするものである排水処理プラントの運転管理方法。
【請求項3】
凝集反応処理装置および固液分離手段を備えた活性汚泥処理装置を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における時間当たりの前記活性汚泥の増減量と固液分離手段における汚泥濃縮率とを求めるマスバランス監視手段と、
前記活性汚泥処理装置における前記活性汚泥の性状を検出する汚泥性状センサと
を備え、
前記マスバランス監視手段が求めた前記活性汚泥処理装置における時間当たりの汚泥の増減量、固液分離手段における汚泥濃縮率および前記汚泥性状センサが検出した活性汚泥の性状情報に従って前記凝集反応処理装置における薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせる原水バイパス制御手段および/または前記活性汚泥処理装置からの余剰汚泥引抜量を制御して活性汚泥処理装置のMLSS濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段、前記原水バイパス処理制御手段、前記MLSS濃度調整手段の少なくとも一つの手段により前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴とする排水処理プラントの運転管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の排水処理プラントの運転管理方法であって、
更に固液分離手段の限界能力を1D−flux理論を利用して定義するものである排水処理プラントの運転管理方法。
【請求項5】
凝集反応処理装置、活性汚泥処理装置および余剰汚泥濃縮脱水用の脱水機を有する排水処理プラントの運転管理方法であって、
前記活性汚泥処理装置における時間当たりの汚泥の増減量と固液分離手段における汚泥濃縮率とを求めるマスバランス監視手段と、
前記活性汚泥処理装置における活性汚泥の性状変化を検出する汚泥性状センサと、
前記脱水機が処理する汚泥の脱水における余剰処理能力を検出する脱水機能力監視手段と
を備え、
前記マスバランス監視手段が求めた前記活性汚泥処理装置内における時間当たりの活性汚泥の増減量と前記固液分離手段における汚泥濃縮率、前記汚泥性状センサが検出した前記活性汚泥の性状変化および前記脱水機能力監視手段が検出した前記脱水機の余剰処理能力から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をする前記凝集反応処理装置を制御する制御手段および/または前記凝集反応処理装置に流入する原水の一部または全量を前記活性汚泥処理装置にバイパスさせる原水バイパス制御手段および/または前記活性汚泥処理装置からの余剰汚泥引抜量を制御して活性汚泥処理装置のMLSS濃度を調整するMLSS濃度調整手段を備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段、前記原水バイパス処理制御手段、前記MLSS濃度調整手段の少なくとも一つの手段により前記活性汚泥処理装置の負荷を調整して該活性汚泥を好ましい性状にすることを特徴とする排水処理プラントの運転管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排水処理プラントの運転管理方法であって、
更に前記活性汚泥処理装置における散気装置の余剰能力を検出する散気余剰能力検出手段と、
散気装置が消費した電力を検出して該散気装置の電力消費効率を求める消費電力検出手段と
を備え、
前記凝集反応処理装置を制御する制御手段は、更に前記散気余剰能力検出手段が検出した前記散気装置の余剰能力および前記消費電力検出手段が求めた前記散気装置の電力消費効率から薬注量の増減若しくは薬液の濃度変更または薬液の銘柄変更によってCOD成分の増減処理をするものである排水処理プラントの運転管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−69182(P2007−69182A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262195(P2005−262195)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】