説明

排水接続管構造

【課題】
排水管部を隠蔽するキャビネットをもつキャビネット便器に接続するのに適し、限られたトイレスペースで確実に便器と排水管とを接続できるキャビネット便器の排水接続管を実現することにある。
【解決手段】
便器100と手洗器と便器100に略接して取付けられたキャビネット110とキャビネット110内に便器100と排水管230をつなぐ第一の排水接続管120とキャビネット110内に手洗器と第一の排水接続管120をつなぐ第二の排水接続管200とを隠蔽したキャビネット便器の排水管接続構造において、第一の排水接続管120と第二の排水接続管200との排水合流部010の付近に第一の排水接続管120が蛇腹構造をもつことを特徴とするキャビネット便器の排水管接続構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管部を隠蔽するキャビネットをもつキャビネット便器に接続するのに適した接続部位周辺に蛇腹構造をもつことを特徴とするキャビネット便器の排水接続管に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの集合住宅やオフィスビルは各階にトイレがあるため、本管となる立て排水管と各トイレをつなぐ横枝排水管で構成されている場合が多く、これに対応する便器として、床よりも上に排水口がある壁排水タイプが使用されている。 マンションでは、特定の階のトイレ工事において立て排水管を分岐させることは、特定の階より上の階の排水を止めなければならないため、その構造上立て排水管の分岐はむずかしい。 またマンションの各トイレの立て排水管の立ち上がり位置は一定の場所に決まっておらず、便器の真後ろの壁や、便器の両側の壁に位置している。
【0003】
従来のキャビネット便器で使われる排水接続管は、既存の排水管の接続部に蛇腹構造を有しており、図1(a)に示すように便器の真後ろの壁に位置する排水管に接続する真後ろ抜きタイプ排水接続管と、図1(b)に示すように便器正面から見て便器の左側に位置する排水管に接続する左抜きタイプ排水接続管がある。左抜きタイプ排水接続管は、便器接続部と排水管接続部の間にエルボ部を有しており、左右対称の右抜きタイプ排水接続管もある。それぞれの排水管に対応したこれらの排水接続管を用いることで、便器と既存の排水管との接続が可能であった。
【0004】
また、マンションではその構造上、立て管からの分岐ができないため、新たに排水管を必要とする器具が設置できない。そのため、マンションでは手洗器を設置できないが、従来の排水管構造は図1(a)および図1(b)に示すように排水接続管に排水合流部010をもつため、排水接続管から排水管を分岐させ手洗器の設置が可能であった。
【0005】
しかし、壁排水管の高さには100、120、148、155mmとあり、便器排水口の高さが170mmの便器の場合、既存の仕様では図1(a)および図1(b)に示すように排水合流部010に蛇腹構造がないため排水管の可撓性が小さく100、120mmの高さにある排水管に接続できないという問題があった。
【0006】
特開2002−180522に示すように従来の排水接続管は、排水管接続部に蛇腹構造を有しているため、便器固定の前に便器の位置調整が可能であった。そのため、便器と排水管を接続した後でも便器の位置の微調整が可能となりトイレの中心に便器を設置することができる。しかし、既存の配管の立ち上げ位置は現場によってはバラツキが大きい場合があり、従来の排水接続管構造では排水合流部に蛇腹構造がなく排水管の可撓性が小さいためバラツキに対応できず、便器をトイレの中心に設置できなかった。
【特許文献1】特開2005−240946
【特許文献2】特開2005−240947
【特許文献3】特開2002−180522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便器の排水口と既存の排水管に高低差および左右のずれがある際に、容易に接続でき、便器固定前に位置調整を行っても排水管が外れることなく漏水の危険の低い排水接続管構造を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明によれば、便器と手洗器と前記便器に略接して取付けられたキャビネットと前記キャビネット内に前記便器と排水管をつなぐ第一の排水接続管と前記キャビネット内に前記手洗器と第一の排水接続管をつなぐ第二の排水接続管とを隠蔽したキャビネット便器の排水管接続構造において、前記第一の排水接続管と前記第二の排水接続管との排水合流部で前記第一の排水接続管が蛇腹構造をもつことを特徴とする。
【0009】
前記第一の排水接続管の排水合流部周辺に蛇腹構造をもつため、便器排水口と既存の排水管に高低差および左右のずれがある際にも接続でき、また、接続部に無理な力が働かず第一の排水接続管が外れることもないため、漏水の危険性を低く抑えることを可能とした。
【0010】
上記目的を達成するために請求項2に記載の発明によれば、前記第一の排水接続管は前記便器接続部と前記排水管接続部とからなり、前記第一の排水接続管の前記便器接続部と前記排水管接続部の間に少なくともエルボ部をもつことを特徴とする。
【0011】
蛇腹構造のエルボ部を持つことにより、あらかじめ排水管の方向に曲げることができ、便器排水口から直角方向にある既存の排水管にも容易に接続することを可能とした。
キャビネットの取り付けられた壁面の側面側に設けられた既存の排水管に、立ち上げ位置のばらつきがある場合でも、可撓性が十分にあるため接続を可能とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャビネット便器を設置する際に、排水接続管の接続作業が簡単で確実に取りつけることができ、便器固定前に便器の位置を移動した際も排水接続管が外れることがない。しかも便器排水口と既存の排水管に高低差および左右のずれがある際にも、排水接続管が可撓性を有するため接続が容易なキャビネット便器の排水管接続構造を安価に提供することができる。
【0013】
キャビネットの取り付けられた壁面の側面側に設けられた排水管への接続を可能とする左抜きタイプの第一の排水接続管の場合、既存の排水管の立ち上げ位置にばらつきがある場合でも、キャビネット内で接続することができる。
【0014】
便器排水口が170mmの便器の場合、第一の排水接続管が十分な可撓性を有しているため、壁排水管が100、120mmの高さにあっても接続できる。この時、第一の排水接続管は十分な可撓性のため扁平しにくく排水性能を十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる排水接続管構造について図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態にかかる排水接続管構造は、マンションなどの集合住宅やオフィスビルなどのトイレにおいて床より上に排水口がある床上排水タイプにキャビネット便器を設置する際に、便器の排水口と既存の排水管に高低差がある際、もしくは便器の排水口と既存の排水管にずれがある際にでも容易に接続できる。
【0016】
本発明の一実施の形態を図2〜7に基づいて以下に説明する。図2に本発明の真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管120と便器100の接続垂直断面図を示す。真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管120をキャビネット110の取付けられた壁面に設けられた既存の排水管230と便器排水口220に接続する。この時、真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管120は取り付け具である固定バンド140により便器排水口220および既存の排水管230に強固に接続されている。 この真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管120は、排水合流部010の周辺に蛇腹構造を有するため、可撓性が向上し、便器排水口220と既存の排水管230に高低差および左右のずれがあっても容易に接続でき、さらに手洗器を設置できる。また、便器の設置や排水管の切断による施工時の誤差についても誤差吸収範囲が大きくなり施工性は向上する。
【0017】
図2の例では、既存の排水管230と便器排水口220との接続を固定バンド140で接続しているが、接着剤を使用した接続およびパッキンを使用した接続でもよく、特に限定しない。また、蛇腹の数は図2の例では、9個で形成されているが、便器排水口および既存の排水管の距離に応じて必要な可撓性を確保できる限り、特に限定しない。排水合流部010の位置については、真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管120の上方部に設けられているが、第二の排水接続管200が逆勾配にならなければ、その位置も特に限定しない。
【0018】
図3に本発明の左抜きタイプの第一の排水接続管の斜視図を示す。キャビネット便器は、便器100と前記便器に接して取付けられたキャビネット110と前記キャビネット110内に前記便器100と排水管をつなぐ左抜きタイプの第一の排水接続管120を隠蔽している。そして、便器100はキャビネット110の前に背面を接して取付けられ、キャビネット110の内部にはロータンク130と第二の排水接続管200と左抜きタイプの第一の排水接続管120が隠蔽されている。
【0019】
キャビネット110の取付けられた壁面の側面側には手洗器150が取付けられており、手洗器150の排水は第二の排水接続管200を通じ、排水合流部010を介し、左抜きタイプの第一の排水接続管120に合流している。
【0020】
また、キャビネット便器の施工手順として、便器を床に固定する前に第一の排水接続管と排水管を接続した状態で、キャビネット扉の取付け作業等のために便器を左右にずらす場合があるが、従来仕様より左抜きタイプの第一の排水接続管120の可撓性が向上しているため、便器をより大きくずらしても、前記左抜きタイプの第一の排水接続管120が排水管から外れることない。
【0021】
図4(a)に左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続水平断面図を示す。図4(a)の左抜きタイプの第一の排水接続管は、エルボ部122と蛇腹構造を有した排水管接続部123および便器接続部121の3つの部材で形成されている。この時、エルボ部122と便器接続部121は一体でもよい。本構造とすることで、排水管接続部123を真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管と共通仕様とすることができる。排水管接続部123は接着剤を併用し既存の排水管に固定バンド140を用いて接続される。本構造のように前記左抜きタイプの第一の排水接続管は排水合流部010周辺に蛇腹構造を有するため、便器排水口と既存の排水管に高低差や左右のずれがあっても接続でき、手洗器を設置することができる。また、左右対称の右抜きタイプの第一の排水接続管についても同様である。
【0022】
また、図4(b)の例では、左抜きタイプの第一の排水接続管120が一体成型されており蛇腹構造を有している。本構造であれば、便器排水口から既存の排水管まで継ぎ目が少なく、漏水の恐れがない。また、図4(a)に比べ、蛇腹の数が多くなる為、可撓性が更に向上し、施工性がより向上する。
【0023】
図5に左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続の一例を示す。図示のように、既存の排水管230の立ち上げ位置、(A寸法)は現場によって、50〜150mmのバラツキがある。キャビネット便器において、便器の位置はキャビネット110との取合い上、便器100の位置は固定である為、従来仕様では現場のバラツキに追従できなかった。しかし、本発明の図4(a)および図4(b)のような左抜きタイプの第一の排水接続管120であれば、可撓性が大きく向上するため、便器位置は固定のまま、既存の排水管230と接続することできる。
【0024】
図6に左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続の一例を示す。図のように、トイレ内のキャビネット110が取り付けられた壁面の中心から大きく外れた位置に排水管230が立ち上がっていることがあるが、本発明の左抜きタイプの第一の排水接続管120であれば、可撓性が向上した為、接続することができ、改修の対応範囲が広がる。
【0025】
図7に左抜きタイプの第一の排水接続管120と第二の排水接続管200の手洗排水合流部を示す。従来の手洗排水接続管の合流部は角度がない、もしくは90°の角度をもった形状であったため、第一の排水接続管120が一定の角度をもって取り付けられ排水合流部が斜めに傾いた状態の際に手洗器の排水接続管が逆勾配になっていた。しかし、図に示す第二の排水接続管の排水合流部210は90°以上のある一定の角度を有し成形されているため、低い排水管と接続する際に第一の排水接続管が一定の角度をもって取り付けられ排水合流部が斜めに傾いた状態においても第二の排水接続管が逆勾配になる恐れがない。
【0026】
前記左抜きタイプの第一の排水接続管と左右対称の右抜きタイプの第一の排水接続管は、前記左抜きタイプの第一の排水接続管の実施例と全く同様の効果を持つ。
【0027】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態及びその具体例に限定されるものではない。すなわち、本発明の排水管接続構造を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
例えば、第一の排水接続管120、第ニの排水接続管200、排水管接続部020の形状や構造などについて、当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)既存の真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管の水平断面図である。(b)既存の左右抜きタイプの第一の排水接続管の水平断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す真後ろ抜きタイプの第一の排水接続管と便器の垂直断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す便器と左抜きタイプの第一の排水接続管の斜視図である。
【図4】(a)本発明の一実施例を示す左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続水平断面図である。(b)本発明の一実施例を示す一体成形左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続水平断面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す便器と左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続の一例である。
【図6】本発明の一実施例を示す便器と左抜きタイプの第一の排水接続管と排水管の接続の一例である。
【図7】本発明の一実施例を示す左抜きタイプの第一の排水接続管と第二の排水接続管の手洗排水合流部の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0029】
010 排水合流部
020 排水管接続部
100 便器
110 キャビネット
120 第一の排水接続管
121 便器接続部
122 エルボ部
123 排水管接続部
130 ロータンク
140 固定バンド
150 手洗器
200 第二の排水接続管
210 手洗排水合流部
220 便器排水口
230 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と手洗器と前記便器に略接して取付けられたキャビネットと前記キャビネット内に前記便器と排水管をつなぐ第一の排水接続管と前記キャビネット内に前記手洗器と第一の排水接続管をつなぐ第二の排水接続管とを隠蔽したキャビネット便器の排水管接続構造において、前記第一の排水接続管と前記第二の排水接続管との排水合流部で前記第一の排水接続管が蛇腹構造をもつことを特徴とするキャビネット便器の排水管接続構造。
【請求項2】
前記第一の排水接続管は前記便器接続部と排水管接続部とからなり、前記第一の排水接続管の前記便器接続部と前記排水管接続部の間に少なくともエルボ部をもつことを特徴とする請求項1または2に記載のキャビネット便器の排水接続管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−88770(P2008−88770A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273712(P2006−273712)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】