説明

排水用可撓管および接続部品接続構造

【課題】排水の流れを阻害しない排水用可撓管、および簡易構造の接続部品接続構造を提供する。
【解決手段】排水用可撓管1において、内管3が外管2内に挿入された状態では該内管3と該外管2とを非接着状態とし、かつ該内管3の内凸条3Aを該外管2の外凸条2Aの内側に入り込ませ、さらに該内凸条3Aと該外凸条2Aとの間に変形許容間隙Sを設定した。また、該排水用可撓管1の両端部に、該外管2の管端と該内管3の管端とを重ね合わせた重合部7をそれぞれ設け、接続部品11の可撓管側端部に設定した挟着部14で該重合部7を挟着することにより該排水用可撓管1に接続部品11を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内又は屋外で用いる排水用可撓管、および該排水用可撓管に接続部品を接続した接続部品接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外で用いる排水用可撓管は既に提供されており、例えば特許文献1には、コルゲート形状の外管と該外管内に挿入される内管とを有する二層コルゲート管が開示されている。該コルゲート管は可撓性を有するため、例えば建物の床下において曲線配管が可能である。
【0003】
また、特許文献2には、ガス管路に適用される二層構造の管路更生管が開示されている。該管路更生管は、凸条が設けられた外管と突条が設けられた内管との内外二重壁とした管体であり、該内管と該外管とを非接着状態としつつ該外管の凸条の内面に該内管の突条先端を接当させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−233373号公報
【特許文献2】特開2002−254536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成にあっては、内管が外管の内側に融着(接着)されているため、排水用可撓管を湾曲させた際に該内管が該外管に対して相対移動しながら湾曲できず、これにより該内管は歪んで座屈してしまうことがあった。このように外管内で内管が座屈してしまうと、該内管の内面に凹凸が形成され、該内管内を流れる排水中の異物が該凹凸部分に付着したり又は堆積したりするため、該排水の円滑な流動が阻害されてしまう。
【0006】
ここで、特許文献2で開示されているような該内管と該外管とを非接着状態とした構成を配水用可撓管に適用し、上記のような内管の座屈を防止することが考えられる。しかし、特許文献2に開示されている管路においては、内管の突条先端が外管の内周面に接触(接当)しているため、施工時に内管が湾曲した際に該突条の移動又は変形が制限されて該内管が好適に撓まず、さらに該内管の管壁が該突条部分で座屈を起こして、排水の流動を阻害するおそれがある。
また、特許文献2に開示されている実施例においては、外管が帯素材を螺旋状に巻回して形成されているため、該外管の管端に該帯素材を重ね合わせている部位が露出し、該部位において水密性が確保しにくいという問題がある。
また、特許文献2に開示されている他の実施例は、内管の内面に凹凸が形成されているため、該凹凸によって排水の流れが阻害されてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決することができる排水用可撓管、および該排水用可撓管に接続部品を接続する接続部品接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく、可撓性の外管と、該外管内に挿入されている可撓性の内管とからなる排水用可撓管であって、該外管をコルゲート形状に成形することにより、該外管の管壁に外向きに突出した外凸条を周方向に沿って設け、該内管を略円筒状とすることにより内周面を非凹凸形状とし、かつ外周面に外向きに突出した内凸条を周方向に沿って形成し、該内管が該外管内に挿入された状態では、該内管と該外管とを非接着状態とし、かつ該内凸条を該外凸条の内側に入り込ませ、さらに該内凸条の先端と該外凸条との間に隙間を設けて該内凸条の先端と該外凸条との間に変形許容間隙を設定し、該内管が湾曲した場合に該変形許容間隙が該内凸条の変形を許容することを特徴とする排水用可撓管である。
【0009】
上記発明は、内管と外管とを非接着とし、湾曲時に該内管が該外管に対して移動自在としている。さらに、該外管の外凸条の内側に該内管の内凸条を入り込ませて該内凸条の移動範囲を該外凸条の内側のみに規制し、該内管が該外管に対して過剰に移動することを防止している。また、該内凸条の先端と該外凸条との間に隙間を形成し、該内管が湾曲した際の管壁の変形に伴う内凸条の変形を許容している。
したがって、施工時において上記の排水用可撓管を湾曲させた場合、該内管は該外管内で座屈することなく該外管に沿って好適に湾曲するため、該内管の内面に凹凸は形成されず、排水の流動が阻害されない。
【0010】
さらに、該内凸条の側面と該外凸条との間に隙間を設けて該内凸条の側面と該外凸条との間に変形許容間隙を設定してもよい。
【0011】
このような構成とすると、さらに好適に内凸条の変形を変形許容間隙によって許容できる。
【0012】
また、該内凸条の先端部には、凹溝が該内管の周方向に沿って形成されていることが望ましい。
【0013】
上記構成において、内管の湾曲時において該内凸条に対して管軸方向に沿う圧縮応力が作用した場合、該凹溝の両側部分は該凹溝に向けて互いに近づくように撓むこととなる。すなわち、該凹溝を設けることによって該内凸条の変形部位の逃げ場が形成されることとなり、該内凸条全体の歪みが低減され、該内凸条の変形が内管の座屈を招くことを防止できる。
【0014】
また、本発明は、上記の排水用可撓管の両端部に、それぞれ接続部品を接続した接続部品接続構造であって、該排水用可撓管の両端部に、該外管の管端と該内管の管端とを重ね合わせた重合部をそれぞれ設け、該接続部品の可撓管側端部には挟着部を設け、該接続部品の該挟着部で該排水用可撓管の該重合部を挟着することにより該排水用可撓管の両端部に、それぞれ接続部品を接続することを特徴とする接続部品接続構造である。
【0015】
上記構成においては、簡易構造で該排水用可撓管の両端部に接続部品をそれぞれ接続することが可能となる。
【0016】
また、上記の接続部品接続構造は、該排水用可撓管の該内管を弾性材料で構成し、該内管を、該内管の両端方向に引っ張られた状態で保持したものが望ましい。
【0017】
上記発明において、施工時に内管が湾曲して該内管の所定部位に管軸方向に沿う圧縮応力が作用した場合、あらかじめ該内管が両端方向に引っ張られた状態で保持されていると該所定部位の圧縮応力が低減または相殺され、該内管の歪みが緩和されるため、該内管の座屈が生じにくい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水用可撓管は、湾曲させても内管が座屈しないため排水の流動が阻害されない。また、本発明の接続部品接続構造は、簡易な構造で該排水用可撓管に接続部品を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】排水用可撓管の使用態様を示す説明図
【図2】排水用可撓管の縦断面図
【図3】湾曲させた排水用可撓管の縦断面図
【図4】a)は図3におけるα部の拡大図、b)はβ部の拡大図
【図5】他の形状の内凸条を示す拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1に示すように、本発明の排水用可撓管1は、例えば建物の基礎(図示省略)内に貫通状に埋設された屈曲鞘管20内に挿着されて使用される。このような使用状態において、該排水用可撓管1の上流端部及び下流端部には、図2に示すような接続部品11,11(受口部品あるいは差口部品)が接続され、さらに公知のナット部材21によって該排水用可撓管1及び該屈曲鞘管20が建物の外側へ突出しないように設定されている。
【0021】
図2に示すように、該排水用可撓管1は、例えば硬質塩化ビニル材のような可撓性の外管2と、SBR等のゴム材(弾性材料)からなる可撓性の内管3とで構成されている。
【0022】
該外管2は、可撓性を付与すべくコルゲート形状の成形体とされ、該外管2の管壁には、外向きに突出しかつ周方向に沿う外凸条2Aが管軸方向に沿って断続的に複数設けられている。該外管2を構成する成形体は、例えばブロー成形、射出成形、あるいは公知のコルゲーターを用いたコルゲート押出成形によって製造される。
【0023】
一方、該外管2内に挿入される内管3は、外管2とは別に成形加工された略円筒状の成形体とされ、内周面が非凹凸形状であり、かつ外周面には、外向きに突出しかつ周方向に沿う内凸条3Aが管軸方向に沿って断続的に複数設けられている。
さらに、該内凸条3Aの先端部には、凹溝4が該内管3の周方向に沿って形成されている。本実施例における該凹溝4の溝深さは、図2等に示すように、内管3の外周面を基準とした該内凸条3Aの高さと略同じ寸法に設定されている。
【0024】
そして、該内管3を該外管2内に挿入した状態においては、該内管3と該外管2とが非接着状態とされて、該排水用可撓管1の湾曲時に該内管3が該外管2に対して移動自在とされている。さらに、図2等に示すように、該内管3に複数設けられた内凸条3Aは、該外管2に複数設けられた該外凸条2Aの内側に入り込んでおり、該内凸条3Aの移動範囲が該外凸条2Aの内側のみに規制されている。
【0025】
さらに図4に示すように、該内凸条3Aの周囲と該外凸条2Aとの間には隙間が設けられており、該隙間が本発明の変形許容間隙Sとされている。具体的に本実施例における変形許容間隙Sは、内凸条3Aの先端と外凸条2Aとの間に設定される第一間隙S1と、内凸条3Aの側面と外凸条2Aとの間に設定される第二間隙S2とで構成されている。
【0026】
次に、図2に従って、上記排水用可撓管1の両端部に接続部品11,11をそれぞれ接続した接続部品接続構造10を説明する。
【0027】
上記接続部品11は、外筒12と、該外筒12に内嵌固定される内筒13とで構成されている。該外筒12および該内筒13は、硬質塩化ビニル材からなる。
また、該接続部品11における排水用可撓管側の端部には、外筒12の内周面と内筒13の外周面とを溝壁とする溝部が形成されており、該溝部によって本発明の挟着部14が構成されている。
また、該外管2の管端には鍵状に加工された外係合部5が設けられ、該内管3の管端には該外係合部5に係合可能に凹凸加工された内係合部6が設けられている。さらに該内筒13の外周面には、該内係合部6に係合可能に凹凸加工された受口係合部15が設けられている。
【0028】
そして、排水用可撓管1の端部においては、外係合部5と内係合部6とを係合させて該外管2の管端と該内管3の管端とを重ね合わせた重合部7が設定されている。
【0029】
上記構成において、排水用可撓管1に接続部品11を接続するには、該重合部7を溝形状の該挟着部14内に圧入して内係合部6と受口係合部15とを係合させ、該挟着部14で該重合部7を挟着すると共に、該外管2に挿入された状態で該内管3が両端方向に引っ張られた状態で保持されるように設定する。
このような接続構造10においては、挟着部14に重合部7が挟着し、かつ外係合部5、内係合部6、及び受口係合部15が互いに係合しているため、該排水用可撓管1から該接続部品11が脱落してしまうことがない。
【0030】
これまでに述べた構成において、排水用可撓管1が湾曲していない状態では、内管3の内凸条3Aの周囲と外管2の外凸条2Aとは非接触状態にある。
そして、図3に示すように該排水用可撓管1が湾曲すると、内管3と外管2とが非接着であるため該内管3が該外管2内で適宜移動しながら湾曲する。このため該内管3は、歪んで座屈してしまう、ということがない。
さらに該排水用可撓管1における圧縮される部位(図4a参照)および引っ張られる部位(図4b参照)において、該内管3の管壁の変形と共に内凸条3Aが外凸条2A内でかかる湾曲に応じて変形する。特に、図4aに示すように、該内凸条3Aが管軸方向に沿って圧縮される部位では、該内凸条3Aの凹溝4の両側の山部23,23が該凹溝4に向けて互いに近づくように撓む。このため、該内管3は、内凸条3Aが形成された部位で歪んで座屈してしまう、ということがない。
さらに、該内管3は、外管2内においてあらかじめ両端方向に引っ張られた状態で保持されているため、湾曲時に該内管3の所定部位に管軸方向に沿う圧縮応力が作用しても、該圧縮応力が低減または相殺されて該内管3の歪みが緩和される。
かくして、施工時に該排水用可撓管1が湾曲しても、該内管3の内面には凹凸が形成されないし、さらに該内管3の内周面は全体に非凹凸形状であるため、該内管3内を流れる排水の流動が阻害されない。
【0031】
なお、本発明は、上記実施例に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、図5に示すように、内管3の内凸条3Aには凹溝4が形成されていなくてもよく、適宜所要の寸法形状に設定できる。
また、本発明の排水用可撓管1は、該内凸条3Aの先端と該外凸条2Aとの間に少なくとも隙間が設けられて変形許容間隙Sが形成されていればよく、内凸条3Aの変形が適正に許容されている限り、例えば該内凸条3Aの側面と外凸条2Aの内面とが全体的にまたは部分的に接触するものであってもよい。
また、外管2はポリエチレン(PE)など他の樹脂材料で構成してもよい。
また、内管3は弾性材料であればよく、エラストマーや他のゴム材料で構成してもよい。
また、該接続部品11の挟着部14において、接着剤を介して該重合部7を接着するようにしてもよい。
また、該接続部品11の外筒12及び内筒13は、上記のように別体で構成してもよいし、インサート成形等によって一体で構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 排水用可撓管
2 外管
2A 外凸条
3 内管
3A,3B 内凸条
4 凹溝
7 重合部
10 接続部品接続構造
11 接続部品
14 挟着部
S 変形許容間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の外管と、該外管内に挿入されている可撓性の内管とからなる排水用可撓管であって、
該外管をコルゲート形状に成形することにより、該外管の管壁に外向きに突出した外凸条を周方向に沿って設け、
該内管を略円筒状とすることにより内周面を非凹凸形状とし、かつ外周面に外向きに突出した内凸条を周方向に沿って形成し、
該内管が該外管内に挿入された状態では、該内管と該外管とを非接着状態とし、かつ該内凸条を該外凸条の内側に入り込ませ、さらに該内凸条の先端と該外凸条との間に隙間を設けて該内凸条の先端と該外凸条との間に変形許容間隙を設定し、該内管が湾曲した場合に該変形許容間隙が該内凸条の変形を許容することを特徴とする排水用可撓管。
【請求項2】
該内凸条の側面と該外凸条との間に隙間を設けて該内凸条の側面と該外凸条との間に変形許容間隙を設定した請求項1記載の排水用可撓管。
【請求項3】
該内凸条の先端部には、凹溝が該内管の周方向に沿って形成されている請求項1又は請求項2記載の排水用可撓管。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排水用可撓管の両端部に、それぞれ接続部品を接続した接続部品接続構造であって、
該排水用可撓管の両端部に、該外管の管端と該内管の管端とを重ね合わせた重合部をそれぞれ設け、
該接続部品の可撓管側端部には挟着部を設け、
該接続部品の該挟着部で該排水用可撓管の該重合部を挟着することにより該排水用可撓管の両端部に、それぞれ接続部品を接続することを特徴とする接続部品接続構造。
【請求項5】
該排水用可撓管の該内管を弾性材料で構成し、
該内管を、該内管の両端方向に引っ張られた状態で保持した請求項4記載の接続部品接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158026(P2011−158026A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19917(P2010−19917)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】