説明

掘進機

【課題】 地盤の外周部と中央部を均一に掘削して抵抗及び負荷を低減して掘進速度を向上させる。
【解決手段】 前面に有する掘削部を回転させて地盤を掘削し、掘削土砂を前面の排土口から取り込んで排土管で後方へ排出する掘進機において、前記掘削部を、掘削機1の前面の中心を回転中心として掘削部の中央部の掘削を担う中央掘削部3と、同中央掘削部3の外側を回転して掘削部の外周部の掘削を担う環状の外周掘削部4とで構成し、中央掘削部3及び外周掘削部4の回転速度を異らせて駆動できる駆動手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に断面円形のトンネルや管路を構築する推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の掘進機の掘削部は同心円では回転するものの、回転半径の違いで中央部と外周部に周速度の違いが発生し、最外周の掘削ビットの回転周速度と中央の掘削ビットの回転周速度が無限大に変化するために、中央部に位置する地盤の掘削は圧入状態となり、掘削抵抗が増大していた。また、掘削・混合・撹拌が外周部と中央部で大きく変化して排土性状に違いを生じさせ、掘削土砂の排土に閉塞等の問題があった。その結果、掘削効率や進捗の低下が甚だしかった。
【特許文献1】特開2004−360179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、切羽中央部の掘削抵抗を低減することで掘削速度の上昇を可能とする掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 前面に有する掘削部を回転させて地盤を掘削し、掘削土砂を前面の排土口から取り込んで排土管で後方へ排出する掘進機において、前記掘削部を、掘削機の前面の中心を回転中心として掘削部の中央部の掘削を担う中央掘削部と、同中央掘削部の外側を回転して掘削部の外周部の掘削を担う環状の外周掘削部とで構成し、中央掘削部及び外周掘削部の回転速度を異らせて駆動できる駆動手段を設けたことを特徴とする、掘進機
2) 中央掘削部の回転速度を外周掘削部より高速にした、前記1)記載の掘進機
3) 駆動手段が、一つのモータで中央掘削部及び外周掘削部を駆動できるように構成したものである、前記1)又は2)記載の掘進機
4) 駆動手段が、中央掘削部と外周掘削部をそれぞれ正逆回転させるものである、前記1)〜3)いずれか記載の掘進機
5) 中央掘削部を外周掘削部より前方へ突出させて設け、中央掘削部で地盤を先行掘削した後外周掘削部で後行掘削できるようにした、前記1)〜4)いずれか記載の掘進機
6) 外周掘削部を中央掘削部より前方へ突出させて設け、外周掘削部で地盤を先行掘削した後中央掘削部で後行掘削できるようにした、前記1)〜4)いずれか記載の掘進機
7) 外周掘削部のカッター後方に掘削土砂を排土口へ送り込むガイドを設けた、前記1)〜6)いずれか記載の掘進機
にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、外周掘削部と中央掘削部の回転速度を異ならせて駆動させることで、外周部と中央部の掘削速度を同一に調整することが可能となり、中央部の掘削抵抗を低減させて掘削速度が上昇し、全体の掘削工程が短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では、中央掘削部の回転速度は外周掘削部のおよそ1.5倍が一般的である。中央掘削部と外周掘削部の回転方向は同方向又は正逆方向が可能で、土質に応じて選ばれる。中央掘削部は外周掘削部より前方へ突出させると、小径に先行掘削して地盤の初期応力を解放した後本掘削を低負荷で行え、岩盤などの硬質地盤の掘削に適している。以下、本発明の各実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0007】
図1,2に示す実施例1は、中央掘削部を外周掘削部より前方へ突出させ、中央掘削部で地盤を高速回転で先行掘削し、その後外周掘削部で低速回転により掘削するようにした掘進機の例である。図1は実施例1の掘進機の説明図、図2は実施例1の掘進機の正面図である。
【0008】
図中、1は掘進機、2はスキンプレート、2aは隔壁、3は中央掘削部、3aはアーム、3bはカッター、3cは泥水吐出口、3dはギヤ、4は外周掘削部、4aはリング、4bはカッター、4cはガイド、4dはギヤ、5はモータ、5aは駆動ギヤ、6は排土口、7は排土管である。
【0009】
実施例1の掘進機1は、図1,2に示すように円筒形のスキンプレート2の前部に隔壁2aを設け、十字状のアーム3aに複数のカッター3bと泥水吐出口3cを設けた中央掘削部3をスキンプレート2の中心を回転中心として隔壁2aの前方に回転自在に設け、中央掘削部3の掘削径より拡径のリング4aに複数のカッター4bを設けた外周掘削部4を中央掘削部3の外側且つ後方位置に回転自在に設けている。
【0010】
スキンプレート2内にはモータ5を設け、中央掘削部3のアーム3aの軸部に形成したギヤ3d及び外周掘削部4のリング4aの内面に形成したギヤ4dをモータ5の駆動ギヤ5aと歯合させている。また、中央掘削部3が外周掘削部4より高速に回転するようにギヤ比が設定されている。隔壁2aには掘削土砂を取り込む排土口6を設け、取り込んだ掘削土砂を後方へ排出する排土管7を設けている。
【0011】
実施例1では、モータ5を作動させると駆動力が駆動ギヤ5a,ギヤ3d,4dを通じて伝わり、中央掘削部3と外周掘削部4が正逆回転する。前記のギヤ比により中央掘削部3は外周掘削部4より高速に回転する。外部から供給した泥水を泥水吐出口3cから吐出して地盤を掘削する。先に突出した中央掘削部3で先行掘削し、その後外周掘削部4で後行掘削する。掘削土砂は外周掘削部4のガイド4cで効率的に排土口6へ取り込まれ、排土管7で後方へ排出される。
【0012】
このように、従来では外周部に対して中央部は掘削抵抗が増加して高負荷となっていたが、実施例1では中央掘削部3を外周掘削部4より前方へ突出させ且つ高速に回転させるから、掘削,混合,撹拌が外周部と中央部とでほぼ同一となり、掘削速度が同一に調整されて掘進速度が上昇し、全体の掘削工程が短縮化できた。
【実施例2】
【0013】
図3に示す実施例2は、外周掘削部を中央掘削部より前方へ突出させ、外周掘削部で地盤を先行して低速回転で掘削し、その後中央掘削部で高速回転により掘削するようにした掘進機の例である。図3は実施例2の掘進機の説明図である。
【0014】
実施例2の掘進機1は、図3に示すように外周掘削部4を中央掘削部3より前方へ突出させている。モータ5を作動させると中央掘削部3と外周掘削部4が正逆回転する。中央掘削部3は実施例1と同じように外周掘削部4より高速に回転し、突出した外周掘削部4で地盤を先行掘削し、その後中央掘削部3で高速回転により後行掘削する。その他、符号、構成は実施例1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の掘進機は、硬質地盤や大口径と称する掘進機構造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の掘進機の説明図である。
【図2】実施例1の掘進機の正面図である。
【図3】実施例2の掘進機の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 掘進機
2 スキンプレート
2a 隔壁
3 中央掘削部
3a アーム
3b カッター
3c 泥水吐出口
3d ギヤ
4 外周掘削部
4a リング
4b カッター
4c ガイド
4d ギヤ
5 モータ
5a 駆動ギヤ
6 排土口
7 排土管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に有する掘削部を回転させて地盤を掘削し、掘削土砂を前面の排土口から取り込んで排土管で後方へ排出する掘進機において、前記掘削部を、掘削機の前面の中心を回転中心として掘削部の中央部の掘削を担う中央掘削部と、同中央掘削部の外側を回転して掘削部の外周部の掘削を担う環状の外周掘削部とで構成し、中央掘削部及び外周掘削部の回転速度を異らせて駆動できる駆動手段を設けたことを特徴とする、掘進機。
【請求項2】
中央掘削部の回転速度を外周掘削部より高速にした、請求項1記載の掘進機。
【請求項3】
駆動手段が、一つのモータで中央掘削部及び外周掘削部を駆動できるように構成したものである、請求項1又は2記載の掘進機。
【請求項4】
駆動手段が、中央掘削部と外周掘削部をそれぞれ正逆回転させるものである、請求項1〜3いずれか記載の掘進機。
【請求項5】
中央掘削部を外周掘削部より前方へ突出させて設け、中央掘削部で地盤を先行掘削した後外周掘削部で後行掘削できるようにした、請求項1〜4いずれか記載の掘進機。
【請求項6】
外周掘削部を中央掘削部より前方へ突出させて設け、外周掘削部で地盤を先行掘削した後中央掘削部で後行掘削できるようにした、請求項1〜4いずれか記載の掘進機。
【請求項7】
外周掘削部のカッター後方に掘削土砂を排土口へ送り込むガイドを設けた、請求項1〜6いずれか記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−348640(P2006−348640A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177499(P2005−177499)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(599111965)株式会社アルファシビルエンジニアリング (32)
【出願人】(505229391)ボーディング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】