説明

掘進機

【課題】先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内の排土装置に取り込んで後方へ排出するための掘進機において、同一の排土装置で掘進中の土質変化に対応できるようにする。
【解決手段】排土取込口15に筒状のケーシング31を取り付けて連通し、そのケーシング31内に軸が中空のスクリュー32を配置し、そのスクリュー32を回転駆動するモーターを設け、スクリュー31の中空軸32a内に小スクリュー33を挿入し、その小スクリュー33の基端と中空軸32aの内底面との間に小スクリュー33の先端が隔壁から突出できるように進退させる進退ジャッキ34を取り付け、ケーシング31の後部にゲート付きの排土口を開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法や推進工法で用いられる掘進機に関し、詳しくは掘進中に土質が変化しても同一の装置で排土できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、一般的な土圧式掘進工法に使用する掘進機では、切羽の安定や地盤への影響回避のため、調圧を含めて掘進と並行して掘削土砂を後方に排出する装置が必要となる。現状では軸付スクリュー排土装置とリボンスクリュー排土装置の2種類が一般的で、スクリュー先端が隔壁より前方に突出している構造や突出していない構造のものを掘削しようとする地盤の土質に応じて選択している(例えば特許文献1,2参照)。また、排土装置全体がスライドする構造も有る。
【0003】
ところで、前記従来の排土装置では、スクリュー先端が隔壁より前方に突出していない構造では、掘進中に泥岩等の硬質地盤が出現すると流動性の低い掘削土砂で付着、閉塞が発生して推進不能となることがあり、スクリュー先端が隔壁より前方に突出している構造では、掘進中、礫地盤では先端が障害となり、礫との接触で破損し、軟弱地盤が出現すると掘削土砂が取り込み過多となって地盤の緩みや沈下が発生することがある。このように、スクリューの位置が固定の排土装置では、掘進中の土質の変化に対応し難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−349193号公報
【特許文献2】特開2004−190365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、同一の排土装置で掘進中の土質変化に対応できる掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内の排土装置に取り込んで後方へ排出する掘進機であって、前記排土装置が、排土取込口に筒状のケーシングを取り付けて連通し、そのケーシング内に軸が中空のスクリューを配置し、そのスクリューを回転駆動する駆動手段を設け、スクリューの中空の軸内に小スクリューを挿入し、その小スクリューの基端と中空の軸の内底面との間に小スクリューの先端が隔壁から突出できるように進退させる進退ジャッキを取り付け、ケーシングの後部にゲート付きの排土口を開口した構造であることを特徴とする、掘進機
2) スクリューの途中位置に羽根の無い軸のみの部分を形成し、その位置のケーシング内に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、前記1)記載の掘進機
3) スクリューの途中位置の羽根を縮径し、その縮径した羽根の位置のケーシング内に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、前記1)記載の掘進機
4) 小スクリューの軸内に掘削土砂の流動性を高める添加材を供給する注入路を形成し、小スクリューの先端を一部開口して排土時に注入できるようにした、前記1)〜3)いずれか記載の掘進機
5) 先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内の排土装置に取り込んで後方へ排出する掘進機であって、前記排土装置が、排土取込口に筒状のケーシングを取り付けて連通し、そのケーシング内に軸が中空のスクリューを配置し、そのスクリューの中空の軸内に回転軸を係合し、その回転軸を駆動する駆動手段を設け、スクリューの基端と回転軸の後部との間にスクリューの先端が隔壁から突出できるように進退させる進退ジャッキを取り付け、ケーシングの後部にゲート付きの排土口を開口した構造であることを特徴とする、掘進機
6) ケーシング内の前部位置に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設け、そのバルブの膨張時にスクリューをバルブの後方まで後退させるように進退ジャッキを制御するようにした、前記5)記載の掘進機
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記1)記載の構成によれば、軟弱地盤の場合は小スクリューを後退させることで、切羽圧力を保持して土砂の取り込み過多を防止する。硬質地盤の場合は小スクリューを隔壁より突出させることで、流動性の低い掘削土砂を迅速に取り込み、付着や閉塞が防止され、掘削土砂を効率的に排土する。特に、本発明の前記2,3)記載の構成によれば、地盤が極めて軟弱な場合は、バルブを膨張させてケーシングの内径を縮径又は通路を遮断することで、地下水の噴発や軟弱地盤の流出が確実に防止される(排土開口部の縮小)。さらに、本発明の前記4)記載の構成によれば、掘削土砂の流動性が極めて低い場合、小スクリューの先端から添加材を注入すると、掘削土砂の流動性が高まり、より迅速に排土できる。したがって、掘進中に土質が硬質地盤や軟弱地盤のいずれに変化しても、同一の装置で排土できるようになる。
【0008】
また、本発明の前記5)記載の構成によれば、軟弱地盤の場合はスクリューを後退させることで、切羽圧力を保持して土砂の取り込み過多を防止する。硬質地盤の場合はスクリューを隔壁より突出させることで、流動性の低い掘削土砂を迅速に取り込み、付着や閉塞が防止され、掘削土砂を効率的に排土する。特に、本発明の前記6)記載の構成によれば、地盤が極めて軟弱な場合は、スクリューをバルブより後方まで後退させ、バルブを膨張させてケーシングの内径を縮径又は通路を遮断することで、地下水の噴発や軟弱地盤の流出が確実に防止され、切羽圧力の保持が可能となる。したがって、前記1)〜4)記載の構成と同様に、掘進中に土質が硬質地盤や軟弱地盤のいずれに変化しても、同一の装置で排土できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の掘進機の断面図である。
【図2】実施例1の排土装置の説明図である。
【図3】実施例1の他の例の排土装置の説明図である。
【図4】実施例1の他の例の排土装置の説明図である。
【図5】実施例2の排土装置の説明図である。
【図6】実施例2の他の例の排土装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を各実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
(実施例1)図1は実施例1の掘進機の断面図、図2は実施例1の排土装置の説明図である。図中、10は外殻、11は前胴、12は後胴、13は方向修正用ジャッキ、14は隔壁、14aはチャンバー、15は排土取込口、20は駆動部、21はカッター、22はモーター、30は排土装置、31はケーシング、32はスクリュー、32aは中空軸、32bは羽根、32cは排土口、33は小スクリュー、33aはパッキン、33bは注入路、34は進退ジャッキ、35はモーター、35aは回転軸、36は排土口、36aはゲート、36bは開閉ジャッキ、40は貯泥槽、41は排土管、50は推進管、Aは掘進機である。
【0012】
図1に示すように、掘進機Aの外殻10は、前胴11と後胴12を方向修正用ジャッキ13で中折れ可能に連結し、前胴11に隔壁14を設けてチャンバー14aを形成し、隔壁14に掘削土砂を取り込む排土取込口15を開口している。駆動部20は、カッター21とこれを駆動するモーター22を備え、隔壁14の背面に取り付けてカッター21をチャンバー14aの前方に配置している。排土装置30は、外殻10内に取り付けて排土取込口15と連通している。
【0013】
排土装置30は、図2に示すように、排土取込口15に筒状のケーシング31を取り付けて連通し、そのケーシング31内に前端が開放され且つ後端が閉塞された中空軸32aを配置し、その中空軸32aの全周面に羽根32bを螺旋状に形成してスクリュー32を構成している。ケーシング31の後端にはモーター35を取り付け、そのモーター35の回転軸35aをスクリュー32の中空軸32aの後端と軸着している。
【0014】
中空軸32a内には羽根を螺旋状に形成した小スクリュー33を挿入し、その小スクリュー33の軸端と中空軸32aの内底面との間に進退ジャッキ34を介装し、小スクリュー33の軸の後部にパッキン33aを設けて中空軸32a内で摺動可能に水密し、中空軸32aの後部に排土口32cを開口している。小スクリュー33の軸内には図示しないスイベルを介して泥水等の添加材を供給する注入路33bを形成し、小スクリュー33の先端を一部開口して注入できるようにしている。ケーシング31の後部下面には排土口36を開口し、その排土口36にゲート36aを開閉ジャッキ36bで開閉自在に取り付けている。
【0015】
排土口36の下方位置には、落下した掘削土砂を受ける貯泥槽40を設け、その貯泥槽40内の掘削土砂を後方へ排出する排土管41を配管している。
【0016】
実施例1では、外殻10の後端に推進管50を接続し、モーター22,35を駆動して推進管50を後方から押し出すと、カッター21が地盤を掘削しながら地中を掘進する。チャンバー14a内の掘削土砂は排土取込口15から排土装置30のケーシング31内に取り込まれてスクリュー32で後方へ搬送され、排土口36から貯泥槽40に落下し、排土管41で後方へ排出される。推進管50が地中に推進すると、その推進管50の後端に別の推進管50を継ぎ足して押し出し、これらの工程を繰り返して地中に管路が構築される。
【0017】
ここで、地盤が軟弱地盤の場合、スクリュー先端が隔壁より前方に突出している構造では、流速が速くなって切羽圧力が低下し、掘削土砂の取り込み量が増加して地盤沈下を招くことがある。これに対し、実施例1では進退ジャッキ34を縮退させて小スクリュー33を後退させた状態で掘進することで、切羽圧力を保持して掘削土砂の取り込み量の増加を抑え、地盤沈下が防止される。
【0018】
一方、地盤が硬質地盤の場合、スクリュー先端が隔壁より前方に突出していない構造では、掘削土砂が取り込まれ難くなって推進不能となることがある。これに対し、実施例1では進退ジャッキ34を伸張させて小スクリュー33を隔壁14より突出させた状態で掘進することで、流動性の低い掘削土砂が迅速に取り込まれて効率的に排土される。このとき、小スクリュー33の先端から添加材を注入すると、掘削土砂の流動性が高まり、より迅速に排土できる。中空軸32a内に取り込まれた掘削土砂は排土口32cからケーシング31内に落下する。このように、実施例1によれば、掘進中に土質が硬質地盤や軟弱地盤のいずれに変化しても、同一の排土装置30で排土できる。
【0019】
図3,4に示すのは実施例1の排土装置の他の例である。図3,4は実施例1の他の例の排土装置の説明図である。図中、37はバルブである。図3に示すのは、スクリュー32の途中位置に羽根32bを撤去した中空軸32aのみの部分を形成し、その位置のケーシング31内に空気の注入出で膨縮できるゴム製のバルブ37を取り付けている。図4に示すのは、スクリュー32の途中位置の羽根32bを縮径し、その縮径した羽根32bの位置のケーシング31内に空気の注入出で膨縮できるゴム製のバルブ37を取り付けている。
【0020】
これらの例では、通常の硬質地盤や軟弱地盤ではバルブ37を収縮させ、小スクリュー33を後退又は隔壁14より突出させることで土質に応じて切り替えながら掘進し、地盤が極めて軟弱で小スクリュー33の後退だけでは対応できない場合は、バルブ37を膨張させてケーシング31の内径を縮径又は通路を遮断することで、地下水の噴発や軟弱地盤の流出を確実に防止できるようにしている。その他、符号、構成、作用効果は実施例1と同じである。
【0021】
(実施例2)図5は実施例2の排土装置の説明図である。図中、35bはキー、35cは支持部、38は進退ジャッキである。実施例2の排土装置30は、図5に示すように、回転軸35aの外面にキー35bを形成し、その回転軸35aにキー溝を備えた中空軸32aを挿入してキー35bと係合し、回転軸35aの基部に固着した支持部35cと中空軸32aの後部との間に進退ジャッキ38を取り付けている。進退ジャッキ38を伸縮させると、スクリュー32が回転軸35aに沿って進退し、モーター35の駆動力はキー35bを介してスクリュー32に伝達される。
【0022】
実施例2では、地盤が軟弱地盤の場合は、進退ジャッキ38を縮退させてスクリュー32を後退させた状態で掘進することで、切羽圧力を保持して掘削土砂の取り込み量の増加を抑え、地盤沈下が防止される。地盤が硬質地盤の場合は、進退ジャッキ38を伸張させてスクリュー32を隔壁14から突出させた状態で掘進することで、流動性の低い掘削土砂が迅速に取り込まれて効率的に排土される。その他、符号、構成、作用効果は実施例1と同じである。
【0023】
図6に示すのは実施例2の排土装置の他の例である。図6は実施例2の他の例の排土装置の説明図である。図6に示すように、ケーシング31内の前部位置に空気の注入出で膨縮できるゴム製のバルブ37を取り付けている。進退ジャッキ38はストロークが実施例2より長いものを使用し、進退ジャッキ38を最大に縮退させた状態ではスクリュー32の先端がバルブ37より後方に後退でき、進退ジャッキ38を最大に伸張させた状態ではスクリュー32の先端が隔壁14より突出できるようにしている。
【0024】
この例は、通常の硬質地盤や軟弱地盤ではスクリュー32を排土取込口15の直後に後退又は隔壁14より突出させることで土質に応じて切り替えながら掘進し、地盤が極めて軟弱な場合は、スクリュー32をバルブ37より後方まで後退させ、バルブ37を膨張させてケーシング31の内径を縮径又は通路を遮断することで、地下水の噴発や軟弱地盤の流出を防止できるようにしている。その他、符号、構成、作用効果は実施例2と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の技術は、硬質土地盤・軟弱地盤・高水圧地盤など、掘進中で土質の大きな変化が想定される地盤のトンネル工事に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
10 外殻
11 前胴
12 後胴
13 方向修正用ジャッキ
14 隔壁
14a チャンバー
15 排土取込口
20 駆動部
21 カッター
22 モーター
30 排土装置
31 ケーシング
32 スクリュー
32a 中空軸
32b 羽根
32c 排土口
33 小スクリュー
33a パッキン
33b 注入路
34 進退ジャッキ
35 モーター
35a 回転軸
35b キー
35c 支持部
36 排土口
36a ゲート
36b 開閉ジャッキ
37 バルブ
38 進退ジャッキ
40 貯泥槽
41 排土管
50 推進管
A 掘進機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内の排土装置に取り込んで後方へ排出する掘進機であって、前記排土装置が、排土取込口に筒状のケーシングを取り付けて連通し、そのケーシング内に軸が中空のスクリューを配置し、そのスクリューを回転駆動する駆動手段を設け、スクリューの中空の軸内に小スクリューを挿入し、その小スクリューの基端と中空の軸の内底面との間に小スクリューの先端が隔壁から突出できるように進退させる進退ジャッキを取り付け、ケーシングの後部にゲート付きの排土口を開口した構造であることを特徴とする、掘進機。
【請求項2】
スクリューの途中位置に羽根の無い軸のみの部分を形成し、その位置のケーシング内に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、請求項1記載の掘進機。
【請求項3】
スクリューの途中位置の羽根を縮径し、その縮径した羽根の位置のケーシング内に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、請求項1記載の掘進機。
【請求項4】
小スクリューの軸内に掘削土砂の流動性を高める添加材を供給する注入路を形成し、小スクリューの先端を一部開口して排土時に注入できるようにした、請求項1〜3いずれか記載の掘進機。
【請求項5】
先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内の排土装置に取り込んで後方へ排出する掘進機であって、前記排土装置が、排土取込口に筒状のケーシングを取り付けて連通し、そのケーシング内に軸が中空のスクリューを配置し、そのスクリューの中空の軸内に回転軸を係合し、その回転軸を駆動する駆動手段を設け、スクリューの基端と回転軸の後部との間にスクリューの先端が隔壁から突出できるように進退させる進退ジャッキを取り付け、ケーシングの後部にゲート付きの排土口を開口した構造であることを特徴とする、掘進機。
【請求項6】
ケーシング内の前部位置に通路の開口寸法の変化に対応して断面積を変える膨縮自在のバルブを設け、そのバルブの膨張時にスクリューをバルブの後方まで後退させるように進退ジャッキを制御するようにした、請求項5記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219947(P2011−219947A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88284(P2010−88284)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(599111965)株式会社アルファシビルエンジニアリング (32)
【出願人】(505229391)ボーディング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】