説明

探傷装置および探傷方法

【課題】 被検査物に生じた欠陥の探傷時において、定量的にデータを取得して欠陥の有無を判定する探傷装置および探傷方法を提供する。
【解決手段】 探傷装置は、検査対象に対向し、前記検査対象の2点間に磁束を通すヨーク14と、前記検査対象に対向しつつ前記2点間を往復運動して、前記検査対象の欠陥箇所から漏洩する磁束を検出する磁気検出器22と、前記磁気検出器22からの検出信号を入力して、この検出信号から前記磁気検出器22が往復運動するときの折り返し位置におけるノイズ信号および前記検査対象の表面にある微小凹凸に起因するノイズ信号を除去し、設定値よりも大きな値の前記検出信号を検出すると前記検査対象の欠陥と判断する判定手段24とを有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は探傷装置および探傷方法に係り、特に道路照明柱のような柱状体の溶接部や照明灯取付部の欠陥を探査するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路照明柱は、一般的に、柱状体を地面に立設するとともに、その先端部を道路側に向けて湾曲させ、この先端に照明灯を設けたものである。前記柱状体は、その上方が下方に比べて細くなったテーパ形状であり、直径の異なる複数のポールを溶接によって接合した構造である。このような道路照明柱は、建設以来数十年を経過したものが多くを占めているので、長期に渡り風雨や交通量の増加にともなう振動等の過酷な条件にさらされている。その結果、道路照明柱は、腐食や疲労等により傷が発生し倒壊する危険性が懸念されるので、定期的な点検が行われている。
【0003】
ところで金属帯に生じた欠陥の検出方法や装置が開示されたものとして特許文献1,2が挙げられる。特許文献1に開示された発明の1つは、一定速度で搬送されている金属帯の下方に磁化レベルの異なる2つの磁化器を配設するとともに、この磁化器に対応した金属帯の上方に磁気センサを配設して、金属帯の同位置において探傷条件の異なる漏洩磁束の測定を行い、各磁気センサからの出力信号の比を求めて欠陥の深さ方向位置を判断するとともに、各磁気センサからの出力信号の欠陥を強調処理等することにより欠陥の大きさを判断するものである。
【0004】
また特許文献2に開示された発明は、複数の欠陥検出素子を通板される金属帯の幅方向に配設して、隣接する検出素子からの出力信号を加算した後、この加算値からこれらの検出素子の両隣に位置する検出素子からの出力信号の和を減じてノイズ成分を除去し、欠陥検出器によって欠陥の有無またはその位置を検出するものである。
【特許文献1】特開2001−194344号公報
【特許文献2】特開平6−194321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した道路照明柱の点検方法は、従来、熟練者による打音検査や目視により行われていたので、作業者の熟練度に依存する等の問題点があった。また作業者は、車道に駐車された高所作業車に乗って作業を行うので、高所作業車の駐車によって渋滞を引き起こすことがあった。
【0006】
本発明は、被検査物に生じた欠陥の探傷時において、定量的にデータを取得して欠陥の有無を判定する探傷装置および探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る探傷装置および探傷方法は、探傷センサからの検出信号を判定手段にそのまま入力して欠陥の判定を行うと、欠陥箇所に対面して検出器が往復運動するときの上端部および下端部で発生するノイズ、および検査対象表面の微小な凹凸によって発生するノイズが、欠陥に起因する信号と重複するので、ノイズと欠陥との判別が困難であるためになされたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る探傷装置は、複数のポールを溶接して形成された道路照明柱を昇降・旋回するロボットに配設された探傷装置であって、前記ポールの溶接箇所の上下両端部間に当接して磁気回路を形成する周回手段と、前記道路照明柱に対面しつつ上下方向に沿って前記周回手段間を往復運動する磁気検出器と、前記磁気検出器が前記往復運動の折り返し位置にあるときに前記磁気検出器から出力される信号を除去した後、漏洩磁束を複数連続して検出したときに欠陥と判定する手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また本発明に係る探傷方法は、複数のポールを溶接接合して形成された柱状体の探傷方法であって、前記柱状体の接合箇所の上下にヨークを当接して磁気回路を形成し、前記柱状体の側面に沿って前記ヨークを旋回移動させつつ、前記柱状体に対面して前記ヨーク間で磁気検出器を往復運動させ、前記磁気検出器が前記往復運動の上端部および下端部にあるときの信号を除去した後、漏洩磁束を検出して探傷を行う、ことを特徴としている。
【0010】
また前記往復運動の片道毎に前記漏洩磁束の検出を行って、前記漏洩磁束を連続して検出するときに前記欠陥が生じていると判定することを特徴としている。
また前記ヨークを一方向に旋回移動させた後、逆方向に旋回移動させ、各旋回移動時で検出される信号が前記柱状体の同一箇所で出力されるときに前記欠陥が生じていると判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
これにより探傷装置および探傷方法は、磁気検出器が往復運動の折り返し位置にあるときに出力される信号を除去するので、磁気検出器が溶接箇所の上方を通過するときの信号のみから、溶接箇所に欠陥が生じているか否かを判定することができる。そして探傷装置をロボットに搭載すれば、探傷領域が検査対象の上方にある場合でもロボットが検査対象を昇っていき、探傷を行うことができる。
【0012】
また折り返し位置における信号が除去されるので、磁気検出器から出力される信号は片道分の区間に分割される。そして欠陥は溶接箇所に沿って幅を有しているので、欠陥が生じていれば連続した複数の区間で漏洩磁束に起因する信号が出力される。したがって複数の区間で信号を検出すれば、欠陥が生じていると判断することができる。
【0013】
さらにヨークを溶接接合箇所に沿って両方向に移動させて探傷を行っているので、欠陥が生じていれば各方向へのヨークの移動時において同一箇所から検出信号が出力される。したがって同一箇所から検出信号が出力された場合に欠陥が生じていると判断すれば、探傷の精度を向上させることができ、欠陥の誤検知を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る探傷装置および探傷方法の好ましい実施形態について説明する。探傷装置は、検査対象である柱状体の探傷センサおよび欠陥の判定手段を備えている。前記柱状体は、例えば直径の異なるポールを溶接によって接合した構造の道路照明柱であり、前記欠陥は、道路照明柱の溶接箇所に発生した傷である。この溶接箇所に生じた傷は、通常、溶接部に沿って道路照明柱の周方向に長く伸びていき、その後道路照明柱の径方向に深くなっていく。以下の説明では、検査対象として道路照明柱を用いた形態について説明する。
【0015】
図1は探傷装置における探傷センサの概略構成の説明図である。探傷センサ10は磁気センサにより構成され、道路照明柱12を部分的に磁化させるヨーク14を備えている。このヨーク(周回手段)14は導電性を有しており、道路照明柱12の上下方向に沿って配設され、その周囲には電源16に接続されたコイル18が巻きつけられている。ヨーク14の先端部には道路照明柱12に当接するローラ20が回転可能に取付けられ、このローラ20は導電性を有するものである。また探傷センサ10は、道路照明柱12における欠陥箇所からの漏洩磁束を検出する磁気検出器22を備え、この磁気検出器22は、前記ローラ20間を往復運動可能に取付けられている。磁気検出器22は判定手段24に接続され、この判定手段24は、磁気検出器22からの出力信号をフィルタリング処理した後、道路照明柱12に生じた欠陥の有無を判定するものである。
【0016】
このような探傷装置の探傷センサ10は、道路照明柱12を昇降・旋回する探傷ロボットに配設されている。図2は探傷ロボットの概略平面図であり、図3は探傷ロボットの概略正面図である。探傷ロボット30は、道路照明柱12に対面するフレーム32および道路照明柱12を左右から挟み込み可能にフレーム32に取付けられた挟持手段34等を備えた構成である。この挟持手段34は、フレーム32の上下位置にそれぞれ取付けられている。そして各挟持手段34には、ストローク量にかかわらず一定の押圧力を作用させることが可能なアクチュエータ36が取付けられ、このアクチュエータ36の動作により挟持手段34が閉じる構成となっている。したがって挟持手段34は、道路照明柱12の径の太さにかかわらず、アクチュエータ36が作用させる一定の押圧力によって道路照明柱12を挟み込むことが可能になる。
【0017】
また挟持手段34には、道路照明柱12を昇降移動するために用いられる昇降ローラ38と、道路照明柱12を旋回移動するために用いられる旋回ローラ40とが道路照明柱12へ選択接触可能に取付けられている。昇降ローラ38は道路照明柱12に倣って配設され、昇降ローラ38と道路照明柱12との把持角(当接角度)を道路照明柱12の径の太さにかかわらず一定に保つ円筒形状とされている。これにより探傷ロボット30は、道路照明柱12の途中で径の太さがかわっても、一定速度で道路照明柱12を昇降することが可能になる。また旋回ローラ40は、この旋回ローラ40が道路照明柱12に当接したときの道路照明柱12の中心と、昇降ローラ38が道路照明柱12に当接したときの道路照明柱12の中心とが同一となるように配設されている。ここで同一とは、同一とみなせる位置を含むものとする。すなわち探傷ロボット30は、昇降ローラ38が道路照明柱12に当接している場合と、旋回ローラ40が道路照明柱12に当接している場合とで、道路照明柱12に対する位置がずれることはない。
【0018】
そしてフレーム32の上下にそれぞれ配設された一対の挟持手段34の間には、探傷位置検出センサ42と探傷センサ10とが配設されている。探傷位置検出センサ42は、探傷ロボット30の昇降時に、センサ42の背後に設けられたシリンダ44の押圧によって道路照明柱12へ当接され、道路照明柱12の溶接箇所を検出する超音波センサであり、一対の挟持手段34のいずれか一方に配設されている。また探傷センサ10は、探傷ロボット30の旋回時に、センサ10背後に設けられたシリンダ46の押圧によって道路照明柱12へ当接されるものであり、探傷位置検出センサ42が設けられていない他方の挟持手段34に配設されている。
【0019】
このような探傷ロボット30は地上ユニット(不図示)からの信号によって制御される。前記地上ユニットは、昇降・旋回ローラ等の駆動手段やセンサ類を制御するための手段、探傷ロボット30への制御指令を入力するロボット制御盤、電源設備としての発電機またはバッテリ、および判定手段24等を備えている。
【0020】
次に、探傷方法について説明する。図4は道路照明柱の探傷時の概要説明図である。まず探傷ロボット30を道路照明柱12に対面させ、アクチュエータ36を動作させて挟持手段34を閉じると昇降ローラ38が道路照明柱12に当接される。そして探傷ロボット30は、道路照明柱12を昇りつつ探傷位置検出センサ42により道路照明柱12の溶接箇所を探査する。探傷ロボット30は、溶接箇所を検知すると昇るのを停止し、旋回ローラ40を道路照明柱12に当接させ、探傷センサ10を道路照明柱12に当接させる。そして探傷ロボット30は、道路照明柱12を周方向に1回転し、この旋回時に探傷センサ10は探傷を行っている。具体的には、電源16からコイル18へ電流が供給されるとヨーク14内に磁束が発生し、この磁束は、ローラ20を介して道路照明柱12内を通り、道路照明柱12を部分的に磁化させる。また磁気検出器22は、磁化された道路照明柱12に対面して、ヨーク14と道路照明柱12とが当接する2点間を道路照明柱12の上下方向に沿って往復運動し、道路照明柱12から漏洩する磁束を検出している。すなわち磁気検出器22は、探傷ロボット30の旋回移動時にヨーク14間を往復運動している。このとき磁気検出器22で欠陥を検知したときの検出信号は判定手段24へ出力される。判定手段24は、検出信号を入力すると、まずフィルタリング処理を行う。
【0021】
図5はフィルタリング処理の説明図である。磁気検出器22は、漏洩磁束の検知を行いながら往復振動しているので、往復運動の折り返し位置においても磁束の検知を行っている。しかし磁気検出器22は、往復運動の折り返し位置付近においてノイズ信号を出力するので、探傷の正確さを期すうえで、このノイズ信号を除去する必要がある。したがってフィルタリング処理は、まず磁気検出器22の折り返し位置における信号の除去を行う。図6は磁気検出器22の折り返し位置におけるノイズ信号のフィルタリング処理の説明図である。なお図6は、図5における磁気検出器位置信号および検出信号の1スキャン分を示したものである。ここで1スキャンとは、磁気検出器22が往復運動するときの片道1回の漏洩磁束測定をいう。
【0022】
磁気検出器22は、往復運動の折り返し位置、すなわち往復運動の上端部および下端部において、信号振幅の異なる位置信号を判定手段24に出力する。この位置信号は、磁気検出器22が折り返し位置付近の予め設定された範囲内にあることを示すものであり、前記範囲は、ノイズ信号が出力される位置等を考慮して設定され、判定手段24に予め記憶されていればよい。また磁気検出器22は、往復運動しつつ道路照明柱12に生じた欠陥の検出信号を判定手段24に出力する。この検出信号には、折り返し位置におけるノイズ信号が含まれている。判定手段24は、位置信号と検出信号とを入力し、位置信号に同期する検出信号を除去する。これにより磁気検出器22が折り返し位置にあるときに磁気検出器22から出力される信号は、信号振幅の大小にかかわらずフィルタリング処理により除去され、往復運動の中央位置にあるときに磁気検出器22から出力される信号はそのまま通過される。
【0023】
なお探傷ロボット30は、探傷センサ10が道路照明柱12の溶接部に対向して停止しているので、磁気検出器22の往復運動の中央部に溶接部が対向することになる。そして道路照明柱12の欠陥は溶接部に沿って長くなっていくものであり、溶接部から離れた所に生じることはないので、フィルタリング処理により道路照明柱12の欠陥に起因する検出信号を除去することはない。
【0024】
次に、フィルタリング処理は、道路照明柱12の表面にある微小凹凸に起因するノイズ信号の除去を行う。道路照明柱12の表面は完全な鏡面でなく微小な凹凸が形成されているので、この凹凸によって道路照明柱12を通る磁束が乱される。磁気検出器22は、この乱された磁束を検知して道路照明柱12に生じた欠陥に起因しないノイズ信号を出力するので、探傷の正確さを期すうえで、このノイズ信号を除去する必要がある。したがってフィルタリング処理は、微小凹凸に起因する信号の除去を行う。具体的には、まず磁気検出器22の折り返し位置におけるノイズ信号を除去した後の検出信号の波形面積を求め、この波形面積値と予め設定されている面積基準値とを比較し、面積基準値以下の波形を除去する。次に欠陥幅の連続性を判定する。すなわち道路照明柱12に欠陥が生じていると、この欠陥は道路照明柱12の周方向に幅を有しているので、探傷センサ10が旋回移動しつつ往復運動を行うと、検出信号は連続した複数のスキャンにおいて出力される。したがって各スキャンにおいて、連続性の無い検出信号や、予め設定された連続基準値以下の波形をフィルタリング処理によって除去する。これは例えば、検出信号が連続して出力されるのが3スキャン以下であればノイズ信号であると判断し、連続して出力されるのが4スキャン以上であれば道路照明柱12の欠陥に起因する信号であると判断する。これにより複数のスキャンにおいて連続性のある検出信号のみがフィルタリング処理によって残る。
【0025】
なお微小凹凸によって乱される磁束は小さいので、探傷センサ10から出力される信号振幅は小さく、また微小凹凸は幅方向に広がることはないので、このフィルタリング処理によって微小凹凸に起因するノイズ信号が除去され、道路照明柱12の欠陥に起因する検出信号が除去されることはない。
【0026】
判定手段24は、このようなフィルタリング処理を終えると、信号振幅の最大値と欠陥基準値とを比較して、欠陥基準値よりも大きな信号振幅があれば欠陥が生じていると判断する。そして探傷ロボット30を上述した道路照明柱12の周方向に回転させた方向と逆方向に1回転させ、この逆回転時に上述した方法と同様の探傷を行う。これにより道路照明柱12に欠陥が生じていれば、旋回移動時の行き・帰りの同じ回転角度(位置)において検出信号が出力され、探傷の信頼性を向上させることが可能になる。
【0027】
次に、上述した欠陥判断の流れを説明する。図7は欠陥判断の手順を示すフローである。まず判定手段24は、フィルタリング処理の各パラメータを読み取る(S100)。前記パラメータは、往復運動の折り返し位置におけるノイズ信号を除去するための位置信号のリミット範囲や基準面積値、連続基準値、欠陥基準値であり、予め設定されて判定手段24に記憶されている。次に、判定手段24は、前記パラメータの読み込みが正常か否かを判断し(S102)、正常であれば位置信号のレベルチェックを行う(S104)。またパラメータの読み込みが正常でなければ、エラー処理を行う(S106)。
【0028】
S104の位置信号のレベルチェックは、磁気検出器22の折り返し位置信号の振幅レベルをチェックして、位置信号の信振レベルが設定値範囲内か否かをチェックするものである。判定手段24は、このチェックが正常か否かを判断し(S108)、正常であれば位置信号の処理解析を行う(S110)。またレベルチェックが正常でなければ、エラー処理を行う(S112)。
【0029】
S110の位置信号の処理解析は、位置信号の変化パターンが決まっているので、矛盾した信号変化の有無をチェックするとともに、磁気検出器22から出力された検出信号を1スキャン分のデータに分割して、磁気検出器22の有効期間と無効期間とに切り分けるものである。判定手段24は、この解析処理が正常に行われたか否かを判断し(S114)、正常であれば欠陥解析処理を行う(S116)。また位置信号の解析処理が正常でなければ、エラー処理を行う(S118)。
【0030】
S116の欠陥解析処理は、欠陥の有無や欠陥の幅を調査して、道路照明柱12に生じた欠陥か否かを判断するとともに、検出信号の波形面積値を計算して面積基準値と比較した後、欠陥幅の連続性を確認して欠陥判定区間の連続性を連続基準値と比較するものである。
【0031】
この後、判定手段24は無効欠陥除去処理を行う(S120)。この無効欠陥除去処理は、S116までの解析にて無効と判断された検出信号の除去処理を行うものである。そして判定手段24は、S120の除去処理の結果を出力する(S122)。これは各区間データの波形面積値や各区間における有効データ数を出力するものである。そして最後に判定手段24は、欠陥有無の確認を行う(S124)。この欠陥有無の確認は、フィルタリング処理を通過した検知信号に対し、検知信号の信号振幅と欠陥基準値とが比較され、欠陥の有無が判断される。
なおS106,S112,S118のエラー処理は、エラー発生ステップでの識別番号を付して、エラー番号をファイルに出力するものである。
【0032】
このような探傷装置および探傷方法では、磁気検出器22から出力される検出信号をフィルタリング処理した後、欠陥基準値よりも大きな検出信号に基づいて道路照明柱12に発生した欠陥を判断しているので、欠陥を定量的に判断することができ、欠陥の調査時間を短縮することができる。またフィルタリング処理により、磁気検出器22が往復運動するときの折り返し位置(上端部および下端部)において発生するノイズ信号を、磁気検出器22より出力される検出信号から除去することができる。さらにフィルタリング処理により、道路照明柱12表面の微小凹凸に起因するノイズ信号を検出信号から除去できるので、道路照明柱12の材質や表面塗装、表面粗さの違いによる検知性能のばらつきを低減することができる。したがって道路照明柱12に生じた欠陥の検知性能を向上することができ、欠陥の誤検知を防止することができる。
【0033】
また探傷ロボット30が旋回移動するときの速さおよび磁気検出器22が往復運動するときの速さに基づいて、フィルタリング処理された後の検知信号から欠陥の幅を求めることができる。また検知信号の振幅の大きさから欠陥の深さを推定できるので、道路照明柱12の欠陥が大きくなって倒壊等の危険が生じるまでの余寿命を求めることができる。
【0034】
なお上述した探傷装置および探傷方法は、道路照明柱12の欠陥検出に用いられるばかりでなく、信号柱に生じた欠陥の検出や鋼構造物に生じた欠陥の検出に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】探傷装置における探傷センサの概略構成の説明図である。
【図2】探傷ロボットの概略平面図である。
【図3】探傷ロボットの概略正面図である。
【図4】道路照明柱の探傷時の概要説明図である。
【図5】フィルタリング処理の説明図である。
【図6】磁気検出器の折り返し位置におけるノイズ信号のフィルタリング処理の説明図である。
【図7】欠陥判断の手順を示すフローである。
【符号の説明】
【0036】
10………探傷センサ、12………道路照明柱、14………ヨーク、22………磁気検出器、24………判定手段、30………探傷ロボット、38………昇降ローラ、40………旋回ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポールを溶接して形成された柱状体を昇降・旋回するロボットに配設された探傷装置であって、
前記ポールの溶接箇所の上下両端部間に当接して磁気回路を形成する周回手段と、
前記道路照明柱に対面しつつ上下方向に沿って前記周回手段間を往復運動する磁気検出器と、
前記磁気検出器が前記往復運動の折り返し位置にあるときに前記磁気検出器から出力される信号を除去した後、漏洩磁束を複数連続して検出したときに欠陥と判定する手段と、
を備えたことを特徴とする探傷装置。
【請求項2】
複数のポールを溶接接合して形成された柱状体の探傷方法であって、
前記柱状体の接合箇所の上下にヨークを当接して磁気回路を形成し、
前記柱状体の側面に沿って前記ヨークを旋回移動させつつ、前記柱状体に対面して前記ヨーク間で磁気検出器を往復運動させ、
前記磁気検出器が前記往復運動の折り返し位置にあるときの信号を除去した後、漏洩磁束を検出して探傷を行う、
ことを特徴とする探傷方法。
【請求項3】
前記往復運動の片道毎に前記漏洩磁束の検出を行って、前記漏洩磁束を連続して検出するときに前記欠陥が生じていると判定することを特徴とする請求項2に記載の探傷方法。
【請求項4】
前記ヨークを一方向に旋回移動させた後、逆方向に旋回移動させ、各旋回移動時で検出される信号が前記柱状体の同一箇所で出力されるときに前記欠陥が生じていると判定することを特徴とする請求項2に記載の探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−313082(P2006−313082A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135020(P2005−135020)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(301031783)国土交通省中国地方整備局長 (5)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】