接合構造およびトラス構造
【課題】製造コストを抑制しかつ良好な施工性が得られるとともに、変動応力に対する耐疲労性に優れた接合構造およびトラス構造を提供すること。
【解決手段】主管1の外周面1Aに固定されたカバープレート4を介して支管2が接合されているので、複雑な形状の鋳造筒型金物等に比較してカバープレート4の製造コストが抑制できるとともに、主管1に対して隅肉溶接でカバープレート4が固定されるので、加工コストも削減することができる。そして、カバープレート4において連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44を有して突出面部42が形成されているので、連結面部41に接続した支管2からの応力を主管1に伝達する際に、薄肉部44が適度に変形して主管1に対する応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができる。
【解決手段】主管1の外周面1Aに固定されたカバープレート4を介して支管2が接合されているので、複雑な形状の鋳造筒型金物等に比較してカバープレート4の製造コストが抑制できるとともに、主管1に対して隅肉溶接でカバープレート4が固定されるので、加工コストも削減することができる。そして、カバープレート4において連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44を有して突出面部42が形成されているので、連結面部41に接続した支管2からの応力を主管1に伝達する際に、薄肉部44が適度に変形して主管1に対する応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造およびトラス構造に係り、詳しくは、鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造、および鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる被接合材と、この被接合材を主管に接合する接合部とを備えたトラス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラス構造における主管(弦材)と支管(斜材)とを接合する構造として、主管の表面に溶接固定した金物ブロック等の接合部材に対して支管を接続する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、主管の一部を切り欠いて孔を形成し、この孔の端縁に沿って鋳造筒型金物等の接合部材を溶接固定し、この接合部材に対して支管を接続する構造も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載された接合構造では、主管の孔端縁に接合部材を突合せ溶接することで、主管と接合部材を一体化できるものの、孔開け加工が必要であるとともに、孔端縁に対する接合部材の溶接が3次元曲面における突合せ溶接となることから、溶接精度や溶接品質管理が高度になり、加工設備が大型化、煩雑化し、製造コストが増大してしまう。さらに、特許文献2に記載された接合構造では、接合部材が複雑な形状の鋳造筒型金物であることから、金物製造に要するコストも増大し、トラス構造全体の施工コストの高騰を招いてしまうという問題がある。
【0003】
このような特許文献2に記載された接合構造に対して、特許文献1に記載の接合構造では、板状の金物ブロックを主管の表面に固定するカバープレートで接合部材を構成したことで、接合部材自体の製造コストが抑制できるとともに、主管に対する孔開け加工が不要になり、また、主管に対して接合部材を隅肉溶接で固定することができることから、加工コストも削減することができるという特長を備えている。また、特許文献2の接合構造では、接合部材に対して支管を突合せ溶接で接合する必要があるのに対して、特許文献1の接合構造では、接合部材に対してボルト接合で支管を接合することができ、この点でも加工コストが削減できるとともに現場における施工性を向上させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4414号公報
【特許文献2】特許第3574948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の接合構造は、建築構造物を対象としたものであり、この構造の場合には、接合部材の4隅に鋭角状に突出した接触端縁(特許文献1における図1の符号20)が形成されており、この接合部材を全周隅肉溶接により主管に接合した場合には、接触端縁位置が鋭角となること、かつ、溶接非連続部が形成されやすくなることにより、応力集中が発生する。このため、応力集中部(溶接非連続部)から疲労亀裂が生じる可能性があることから、従来の接合構造を用いたトラスは、橋梁構造物などの車載荷重による変動応力が生じる用途が想定されておらず、橋梁構造物などに利用するためには耐疲労性の改善、向上が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、製造コストを抑制しかつ良好な施工性が得られるとともに、変動応力に対する耐疲労性に優れた接合構造およびトラス構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合構造は、鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造であって、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートを備え、このカバープレートを介して前記被接合材が前記主管に接合され、前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記被接合材と連結される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されることを特徴とする。
【0008】
以上の本発明によれば、主管の外周面に固定されたカバープレートを介して被接合材(支管等)が主管に接合される構造であるので、複雑な形状の鋳造筒型金物を用いないことによってカバープレート(接合部材)自体の製造コストが抑制できるとともに、主管に対する孔開け加工や突合せ溶接が不要にでき、加工コストも削減することができる。そして、カバープレートに連結面部と突出面部とを設け、連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部を突出面部に形成したことで、連結面部に接続した被接合材からの応力を主管に伝達する際に、最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力を、薄肉部が適度に変形することで緩和することができる。従って、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができ、橋梁構造物などの車載荷重による変動応力が作用する構造体に本発明の接合構造を利用することが可能となる。なお、本接合構造を用いる構造体としては、トラス構造が好適であるものの、トラス構造に限定されるものではなく、ラーメン構造であってもよいし、その他適宜な構造体であってもよい。
【0009】
この際、本発明の接合構造では、前記突出面部の薄肉部は、前記連結面部の板厚に対して1/2〜1/7程度の板厚を有して形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、連結面部の板厚に対して半分以下の板厚で薄肉部を形成することで、連結面部と薄肉部との適度な剛性比を確保することができ、薄肉部への応力伝達をコントロールしつつ薄肉部を変形しやすくして、カバープレート端部溶接部の応力集中を抑制することができる。また、薄肉部の板厚は、ある程度薄い方が主管への応力集中の度合いが小さくできるものの、薄すぎると製作性に問題が出てくるとともに、溶接性が低下することから、連結面部の板厚に対して1/7程度以上に設定されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の接合構造では、前記カバープレートにおける前記連結面部からの前記突出面部の突出寸法は、前記主管の直径Dに対して0.1D程度以上に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出寸法を主管直径Dの0.1D倍以上に設定することで、薄肉部の変形性能を確保することができる。なお、突出面部の突出寸法は、0.1D以上であればよいが、0.3D以上であればより好ましく、0.5D程度であればさらに好ましい。また、突出寸法の上限値としては、特に限定されないが、突出寸法が大きすぎると使用鋼材量や溶接等の加工手間、コスト面で不都合が生じることから、突出寸法は、1.0D程度以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の接合構造では、前記突出面部の突出外縁は、溶接脚長が確保される程度に、前記薄肉部の板厚よりも厚く形成されるとともに前記連結面部の両端縁から当該薄肉部を囲んで連続的に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出外縁を薄肉部よりも厚くして薄肉部を囲んで連続的に設けることで、この突出外縁を連結面部の両端縁から連続して主管に溶接することができるとともに、この溶接の際に突出外縁が薄すぎないことで溶接性を確保することができ、溶接欠陥の発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明の接合構造では、前記カバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部を備え、前記接続部は、前記連結面部に固定されかつ前記軸方向に延びるガセットプレートと、前記ガセットプレートの前記軸方向の端部と前記連結面部とを連結する前記軸方向とは交叉方向のリブとを備えていることが望ましい。
このような構成によれば、接合部にガセットプレートを用いることで、被接合材の接続にボルト等による締結構造を採用することができる。ここで、ガセットプレートを用いた場合、連結面部においては特にガセットプレートの軸方向端部にあたる部分でガセットプレートから伝達される荷重が応力集中を生じることがあるが、当該部分においてガセットプレートと連結面部とを連結するリブによりガセットプレートから連結面部への荷重が分散され、応力集中を緩和することができる。また、分散することにより、薄肉部42の端部応力集中をさらに緩和する効果が期待できる。
【0013】
一方、本発明のトラス構造は、鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる少なくとも一対の被接合材と、これら一対の被接合材を前記主管に接合する接合部とを備えたトラス構造であって、前記接合部は、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートと、このカバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部とを有し、前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記接続部が固定される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されていることを特徴とする。
【0014】
このような本発明によれば、前述の接合構造と同様に、製造コストを抑制しつつ被接合材から主管への応力伝達に際して主管への応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させて橋梁構造物などの構造体に本発明のトラス構造を利用することが可能となる。
【0015】
この際、本発明のトラス構造では、前記被接合材の端部と前記接続部とが溶接接合またはボルト接合されていることが好ましい。
このような構成によれば、カバープレートに設けた接続部に対して、溶接接合またはボルト接合によって被接合材を接続することで、カバープレート自体に直接に被接合材を溶接接合(突合せ溶接)する場合と比較して、接合に要する設備や作業手間等を削減することができ、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明の接合構造およびトラス構造によれば、複雑な形状の接合部材を用いなくてもよいことから、製造コストを抑制することができるとともに、被接合材から主管への応力伝達に際して、カバープレートに設けた薄肉部が適度に変形することで、最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させて橋梁構造物などの構造体への利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図2】前記トラス構造の一部を示す断面図および側面図である。
【図3】前記トラス構造の接合部を拡大して示す側面図および断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図11】図10とは別の実施例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図12】本発明の比較例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図13】図12とは別の比較例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図14】前記実施例および比較例の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、トラス構造は、所定の軸方向Xに延びる鋼管からなる主管1と、この主管1の軸方向Xに傾斜して設けられる被接合材としての4本の支管2と、これらの支管2を主管1に接合する接合部3と、を備えた立体トラスである。接合部3は、主管1の外周面1Aに固定された全体板状のカバープレート4と、このカバープレート4に固定されて支管2を接続する接続部としての2枚のガセットプレート5とを有して構成され、これらのガセットプレート5に支管2の端部がスプライスプレート6を介してボルト接合によって固定されている。なお、支管2の端部は、ガセットプレート5に対して溶接接合によって固定されてもよい。
【0019】
カバープレート4は、主管1の軸方向Xに沿った所定長さ寸法Lおよび主管1の周方向に沿った所定の周方向幅寸法Bを有するとともに、このカバープレートの長手方向(主管1の軸方向X)中央にてガセットプレート5が固定される連結面部41と、この連結面部41から長手方向の両側に突出する一対の突出面部42とを有して形成されている。連結面部41は、所定の板厚(例えば、22mm)を有した円弧状断面を有して形成され、主管1の軸方向Xに沿った両端縁である一対の端縁43がそれぞれ主管1の外周面1Aに隅肉溶接(溶接部W)で固定されている。また、カバープレート4は、図2(A)に示すように、主管1の軸方向Xを中心として角度θの範囲に位置する幅寸法Bを有し、角度θとしては、例えば120°(45°以上かつ180°以下が望ましい)に設定されている。
【0020】
図3にも示すように、一対の突出面部42は、それぞれ連結面部41の厚さ(例えば、T1=16mm)よりも薄い板厚(例えば、T2=3mm)を有する薄肉部44と、連結面部41の端縁43に連続して薄肉部44を囲む突出外縁45と、を有して略半円形状に形成されている。突出外縁45は、薄肉部44よりも厚いくかつ連結面部41より薄い板厚(例えば、薄肉部44がT2=3mmとし、溶接脚長7mmの場合、突出外縁45は7mm程度の板厚)を有するとともに、連結面部41の各端縁43からそれぞれ軸方向Xに延びるとともに互いに近づく方向に円弧状に曲がって連続して形成され、この突出外縁45が主管1の外周面1Aに隅肉溶接(溶接部W)で固定されている。なお、突出外縁45は、隅肉溶接に必要な板厚を確保していればよいので、必ずしも薄肉部44の板厚よりも厚い必要はなく、薄肉部44が隅肉溶接に必要な板厚を有していれば、これと同一の板厚で突出外縁45が形成されていてもよい。
【0021】
突出面部42の突出寸法L1、すなわち連結面部41およびガセットプレート5の端部から突出外縁45の最外端(軸方向Xに沿った先端)までの距離は、主管1の直径Dに対して0.1D程度以上かつ1.0D程度以下に設定されている。なお、図1〜図3に示す突出面部42では、突出寸法L1が約0.4Dに設定されている。また、突出寸法L1は、薄肉部44の応力伝達および変形性状や、突出外縁45の曲率による溶接性などを考慮した場合には、0.3D以上が好ましい。一方、カバープレート4の材料コスト(鋼材量)を考慮した場合には、1.0D以下のより短いものが好ましく、0.8D以下であればより好ましい。
【0022】
以上のような本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
すなわち、主管1の外周面1Aに固定されたカバープレート4を介して支管2が接合されているので、複雑な形状の鋳造筒型金物等に比較してカバープレート4の製造コストが抑制できるとともに、主管1に対して隅肉溶接でカバープレート4が固定されるので、加工コストも削減することができる。そして、カバープレート4において連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44を有して突出面部42が形成されているので、連結面部41に接続した支管2からの応力を主管1に伝達する際に、薄肉部44が適度に変形して最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができる。また、突出面部42の突出外縁45が角部のない曲線状に形成されていることで、主管1に対する集中応力をさらに低減させることができるとともに、連結面部41の端縁43と突出面部42の突出外縁45とが連続した隅肉溶接(溶接部W)によって主管1の外周面1Aに固定されているので、溶接の弱点となるような溶接端が形成されず、耐疲労性をより一層向上させることができる。さらに、被接合材である支管4の接続にあたって、ガセットプレート5に支管2の端部を、スプライスプレート6を介してボルトで締結する構造としたため、支管2の端部を溶接する場合よりも作業を効率よく行うことができる。
【0023】
前記図1から図3の実施形態では、2枚のガセットプレート5を用いた立体トラスを例示したが、本発明のトラス構造は、図4に示す他の実施形態のように平面トラスとしても利用可能である。
すなわち、図4に示すトラス構造は、主管1の軸方向Xに傾斜しかつ同一平面内に被接合材としての2本の支管2が設けられている。これらの支管2は、カバープレート4の周方向幅の中央に固定された1枚のガセットプレート5を介し、ボルト接合によって主管1に接続されている。
【0024】
このような平面トラスとした実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、図4の実施形態および後述する他の実施形態においては、前記図1から図3の実施形態と共通する構成に同じ符号を付し、各々の重複する説明は省略する。
【0025】
図5には、本発明のさらに他の実施形態が示されている。
図5において、本実施形態ではカバープレート4の周方向幅の中央に軸方向に延びる1枚のガセットプレート5が固定され、図4の実施形態と同様にガセットプレート5には支管4(図5では図示省略)が接続される。ガセットプレート5の軸方向の端部には、各端部の両側に一対で、ガセットプレート5と連結面部41とを接続するリブ51が設置されている。リブ51は、ガセットプレート5の側面に対して溶接されるとともに、薄肉部44の最寄りの辺縁に沿って連結面部41に溶接されている。
【0026】
このような本実施形態においては、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、リブ51によりガセットプレート5の端部応力の分散を図ることができる。すなわち、図示しない支管4から主管1に伝えられる荷重は、ガセットプレート5からカバープレート4へと伝達されるが、応力集中が生じ易いガセットプレート5の端部においては、その両側にリブ51が設置され、ガセットプレート5の端部の荷重を周辺の連結面部41の広い領域に分散させることができる。このため、カバープレート4における応力集中を緩和することができるとともに、薄肉部42の端部応力集中をさらに緩和する効果が期待できる。
【0027】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の薄肉部44をカバープレート4の表面側から凹状に形成したが、図6に示す他の実施形態のように裏側から凹状に形成してもよい。
図6において、カバープレート4の一対の突出面部42は、カバープレート4の裏面側から凹状に形成されて連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44と、連結面部41の端縁43に連続して薄肉部44を囲む突出外縁45と、を有して略半円形状に形成されている。なお、連結面部41の厚さT1、薄肉部44の厚さT2および突出外縁45の厚さは、それぞれ前記図1から図3の実施形態と同様に設定される。
このような裏側から凹状に形成された薄肉部44を用いた実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の両側の端縁43を直線としたが、図7に示す他の実施形態のように中間部がカバープレート4の周方向幅の中央に近づくように湾曲した円弧状に形成してもよい。
図7において、カバープレート4は前記図1から図3の実施形態あるいは図4の実施形態と同様な連結面部41、一対の突出面部42(薄肉部44および突出外縁45)、ガセットプレート5を備えている。ここで、連結面部41の両側の端縁43Aは、両端が突出外縁45に連続されるとともに、中間部分がガセットプレート5に近接するように湾曲されている。
【0029】
このように、カバープレート4において、先端の幅を広く、中央を狭くすることにより、先端部の剛性を中央部の剛性よりも大きくすることで、前記図5の実施形態においてリブ51を設置したことによる効果と同様の効果が期待できる。すなわち、ガセットプレート5の端部の剛性が、ガセットプレート5の中間部の剛性よりも大きくなることにより、ガセットプレート5からカバープレート4へと伝達される応力を側面43Aへと逃がし、カバー縁端部42に伝達される応力をさらに減少させる効果が期待できる。
【0030】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の連結面部41に接続部としてのガセットプレート5を設置したが、接続部としてはガセットプレート5に限らず、他の形状の接続部を用いてもよい。
【0031】
図8に示す他の実施形態では、被接合材である支管2としてパイプ部材が用いられ、カバープレート4の連結面部41には接続部としてリング状のカラー5Aが形成されている。
カラー5Aは、支管2と同様のパイプ部材を加工したものであり、連結面部41に接続される側は連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁とされ、全周にわたって連結面部41に溶接されている。連結面部41と反対側は、支管2の端部に対応した角度の切断面とされ、支管2を接続する際に全周にわたって支管2の端部に溶接される。
【0032】
このような本実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、カラー5Aを用いるため、前記図1から図3の実施形態における接続部であるガセットプレート5に比べてカバープレート4への設置にあたっての加工が若干複雑となるが、一方で、カラー5Aによって支管2の筒状の構造がカバープレート4に直接接合されることになり、露出型の構造体とした際の外観上も優れたものとすることができる。
【0033】
図9に示す他の実施形態では、被接合材である支管2としてパイプ部材が用いられる点は前記図8の実施形態と同様であるが、この実施形態においてはカバープレート4の連結面部41に別体の接続部を設置するのではなく、カバープレート4の連結面部41自体が接続部とされる。
本実施形態においては、支管2の端部を、予め連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁に形成しておき、支管2を接続する際に、支管2の端部を全周にわたって連結面部41に溶接する。
【0034】
このような本実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、ガセットプレート5を用いないため、カバープレート4への設置にあたって支管2の端部の加工が若干複雑となるが、支管2の端部がカバープレート4に直接接合されることになり、露出型の構造体とした際の外観上も優れたものとすることができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、本発明の接合構造およびトラス構造において、被接合材は、前記実施形態のような鋼管からなる支管2に限らず、適宜な断面を有した形鋼などであってもよいし、その他任意断面および形状を有した鋼材であってもよい。
また、本発明の接合構造は、トラス構造に利用されるものに限らず、ラーメン架構などの任意の構造体に利用可能である。具体例としては、主管として鋼管柱を用い、この鋼管柱に接合される梁やブレースを被接合材としてもよいし、逆に、鋼管梁(主管)等に対して、柱やブレース等の被接合材を接合する構造であってもよい。
【0036】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に基づく前記図1の実施形態の接合部3について、主管1の局部応力を検討した結果について説明する。
ここでは、本発明を適用した接合部を実施例1〜9とし、従来技術や本発明以外の接合部を比較例1〜12とし、各接合部のFEM解析を実施して主管1に作用する応力を算出した。なお、実施例1〜9および比較例1〜12のFEM解析モデルは、主管1の直径Dおよび板厚を共通とし、カバープレート4の形状(長さ寸法Lや幅寸法Bである角度θ、突出面部42の突出寸法L1、突出外縁45の角部R、薄肉部44の板厚T2)をパラメータとしたモデルを用いた。
なお、実トラス構造として、主管1の直径Dが600mm、カバープレート4の全長が1800mm、突出面部42の突出寸法が264mm(約0.44D)を想定し、この縮小モデルとした実施例および比較例において、主管1の主管径267mm、板厚が6mmであり、カバープレート4は、連結面部41の板厚T1が16mm、薄肉部44の板厚T2が3mmである。次の表1に解析モデルの諸元を示すとともに、図10、図11に実施例の接合部の代表的な形態を示し、図12、図13に比較例の接合部の代表的な形態を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例〕
実施例1は、図10(A)に示す形態の接合部3を備え、この接合部3におけるカバープレート4の形態は、前記実施形態で説明したものと同一であり、このカバープレート4の幅方向(主管1の周方向)略中央にガセットプレート5が1枚固定されている。
実施例2は、図10(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、薄肉部44の連結面部41側(突出面部42の突出方向基端部側)に丸みが形成され、すなわち板厚が厚い連結面部41の一部が突出外縁45に沿って突出面部42側に延長されている。
実施例3は、図10(C)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、突出面部42の突出方向基端部側において薄肉部44が連結面部41の端縁43に沿って延長されている。
【0040】
実施例4は、図11(A)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、薄肉部44の連結面部41側に突出方向に向かって傾斜した傾斜部が形成され、この傾斜部に対応して連結面部41の一部が突出面部42側に延長されている。
実施例5は、図示を省略するが、実施例4のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の傾きを変更し、実施例2のように丸みを形成したものである。
実施例6は、図示を省略するが、実施例5のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の丸みをさらに大きくしたものである。
【0041】
実施例7は、図示を省略するが、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の板厚T2が相違しており、板厚T2が5mmとされている。
実施例8は、図11(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、突出面部42の突出外縁45の曲率が相違しており、突出外縁45のR寸法が50mmで形成されている。
実施例9は、図11(C)に示すように、実施例8のカバープレート4に対して、突出外縁45の曲率を変更したものであり、突出外縁45のR寸法が100mmで形成されている。
【0042】
〔比較例〕
比較例1〜12の接合部3Aは、図12および図13に示すように、カバープレート4Aと、このカバープレート4Aの幅方向略中央に固定されたガセットプレート5とを有して構成されている。これらのカバープレート4Aは、前記実施例1〜9のカバープレート4と形状が相違している。
比較例1は、図12(A)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4に対して、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aは先端に向かって板厚が薄くなるテーパを有して形成され、この先端が直線状に切断されて角部42Bが形成されている。
比較例2は、図12(B)に示すように、比較例1に対して、突出面部42Aにテーパが設けられず、その突出寸法が小さく形成されている。
比較例3は、図12(C)に示すように、実施例のカバープレート4と同様の薄肉部44を備えるものの、突出面部42Aの先端が直線状に切断されてR寸法が10mmの角部42Bが形成されている。
【0043】
比較例4は、図13(A)に示すように、突出面部42Aの先端形状が突出方向に凹状に形成され、幅方向の両端部にて突出方向に突き出した角部42Bが形成されている。
比較例5は、図13(B)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4と略同様の外形形状を備えるものの、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aが連結面部41Aと同一の板厚で形成されている。
比較例6は、図示を省略するが、比較例5と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが90°で形成されている。
比較例7は、図示を省略するが、比較例6と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが45°で形成されている。
比較例8は、図示を省略するが、比較例6よりもさらに幅寸法が小さく形成され(角度θ≒0°)、ガセットプレート5と略同一幅で形成されている。
【0044】
比較例9は、図示を省略するが、比較例5と略同様の外形形状を備え、カバープレート4における外周である端縁43Aおよび突出外縁45Aよりも内側の部分が主管1に溶接固定されている。
比較例10は、図示を省略するが、比較例1と略同様の外形形状を備え、連結面部41Aの端縁43Aに沿った方向(主管1の軸方向X)の端縁のみが主管1に溶接固定され、突出面部42Aの先端部分が溶接固定されていない点が相違する。
比較例11は、図13(C)に示すように、比較例6と略同様の外形形状を備え、突出面部42Aの突出寸法が拡大されている点が相違する。
比較例12は、図示を省略するが、比較例11と略同様に突出面部42Aの突出寸法が拡大され、比較例11では突出面部42Aにテーパが形成されるのに対し、比較例12ではテーパが形成されず突出面部42Aの板厚が連結面部41Aと同一のままフラットに形成されている点が相違する。
【0045】
図14に比較例1および実施例1のFEM解析結果のグラフを示し、表2に実施例1〜9および比較例1〜12の最大応力値を示す。
図14(A),(B)は、それぞれ比較例1および実施例1における主管1の応力を示すグラフであり、横軸は、接合部3,3Aの軸方向Xに沿った距離を示している。
比較例1では、図14(A)に示すように、突出面部42Aの先端位置である800mmを超えた位置から急激に応力が増大し、主応力の最大値として510MPa程度まで上昇していることが解る。
一方、実施例1では、図14(A)に示すように、突出面部42の先端よりも中央側で応力が増大し始め、突出面部42の先端位置において主応力の最大値が370MPa程度に抑制されている。このような応力は、突出面部42の薄肉部44が変形することにより、カバープレート4と主管1との間で徐々に応力が伝達され、突出面部42の先端位置における急激な上昇が抑制されることが解る。
【0046】
また、表2に示すように、実施例1〜9では、主応力の最大値が360〜400MPa程度であるのに対し、比較例1〜12では、主応力の最大値が400MPa以上であり、このような各比較例に対して本実施例では最大応力値が抑制されていることが解る。特に、比較例5と各実施例とを比較した場合、互いにカバープレート4,4Aの外形形状が略同一であるのに対して、比較例5のカバープレート4Aには薄肉部が形成されていないため、薄肉部44によって各実施例における応力抑制効果が得られていることが解る。さらに、比較例3と各実施例とを比較した場合、互いにカバープレート4,4Aが薄肉部44を備えていることから、主応力の最大値が400MPa以下となっているものの、比較例3のカバープレート4Aには、突出面部42A先端にR寸法が10mmの角部42Bが形成されていることから、突出外縁45のR寸法が50mmの実施例8の方が、応力値がより抑制され、さらにR寸法が大きな他の実施例で応力値が一層抑制されている。従って、突出面部42の突出外縁45にできるだけ緩やかなRを形成することによって、より高い応力抑制効果が得られることが解る。
【0047】
【表2】
【符号の説明】
【0048】
1…主管、1A…外周面、2…支管(被接合材)、3…接合部、4…カバープレート、5…ガセットプレート(接続部)、5A…カラー(接続部)、41…連結面部、42…突出面部、43,43A…端縁、44…薄肉部、45…突出外縁、51…リブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造およびトラス構造に係り、詳しくは、鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造、および鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる被接合材と、この被接合材を主管に接合する接合部とを備えたトラス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラス構造における主管(弦材)と支管(斜材)とを接合する構造として、主管の表面に溶接固定した金物ブロック等の接合部材に対して支管を接続する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、主管の一部を切り欠いて孔を形成し、この孔の端縁に沿って鋳造筒型金物等の接合部材を溶接固定し、この接合部材に対して支管を接続する構造も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載された接合構造では、主管の孔端縁に接合部材を突合せ溶接することで、主管と接合部材を一体化できるものの、孔開け加工が必要であるとともに、孔端縁に対する接合部材の溶接が3次元曲面における突合せ溶接となることから、溶接精度や溶接品質管理が高度になり、加工設備が大型化、煩雑化し、製造コストが増大してしまう。さらに、特許文献2に記載された接合構造では、接合部材が複雑な形状の鋳造筒型金物であることから、金物製造に要するコストも増大し、トラス構造全体の施工コストの高騰を招いてしまうという問題がある。
【0003】
このような特許文献2に記載された接合構造に対して、特許文献1に記載の接合構造では、板状の金物ブロックを主管の表面に固定するカバープレートで接合部材を構成したことで、接合部材自体の製造コストが抑制できるとともに、主管に対する孔開け加工が不要になり、また、主管に対して接合部材を隅肉溶接で固定することができることから、加工コストも削減することができるという特長を備えている。また、特許文献2の接合構造では、接合部材に対して支管を突合せ溶接で接合する必要があるのに対して、特許文献1の接合構造では、接合部材に対してボルト接合で支管を接合することができ、この点でも加工コストが削減できるとともに現場における施工性を向上させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4414号公報
【特許文献2】特許第3574948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の接合構造は、建築構造物を対象としたものであり、この構造の場合には、接合部材の4隅に鋭角状に突出した接触端縁(特許文献1における図1の符号20)が形成されており、この接合部材を全周隅肉溶接により主管に接合した場合には、接触端縁位置が鋭角となること、かつ、溶接非連続部が形成されやすくなることにより、応力集中が発生する。このため、応力集中部(溶接非連続部)から疲労亀裂が生じる可能性があることから、従来の接合構造を用いたトラスは、橋梁構造物などの車載荷重による変動応力が生じる用途が想定されておらず、橋梁構造物などに利用するためには耐疲労性の改善、向上が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、製造コストを抑制しかつ良好な施工性が得られるとともに、変動応力に対する耐疲労性に優れた接合構造およびトラス構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合構造は、鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造であって、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートを備え、このカバープレートを介して前記被接合材が前記主管に接合され、前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記被接合材と連結される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されることを特徴とする。
【0008】
以上の本発明によれば、主管の外周面に固定されたカバープレートを介して被接合材(支管等)が主管に接合される構造であるので、複雑な形状の鋳造筒型金物を用いないことによってカバープレート(接合部材)自体の製造コストが抑制できるとともに、主管に対する孔開け加工や突合せ溶接が不要にでき、加工コストも削減することができる。そして、カバープレートに連結面部と突出面部とを設け、連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部を突出面部に形成したことで、連結面部に接続した被接合材からの応力を主管に伝達する際に、最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力を、薄肉部が適度に変形することで緩和することができる。従って、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができ、橋梁構造物などの車載荷重による変動応力が作用する構造体に本発明の接合構造を利用することが可能となる。なお、本接合構造を用いる構造体としては、トラス構造が好適であるものの、トラス構造に限定されるものではなく、ラーメン構造であってもよいし、その他適宜な構造体であってもよい。
【0009】
この際、本発明の接合構造では、前記突出面部の薄肉部は、前記連結面部の板厚に対して1/2〜1/7程度の板厚を有して形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、連結面部の板厚に対して半分以下の板厚で薄肉部を形成することで、連結面部と薄肉部との適度な剛性比を確保することができ、薄肉部への応力伝達をコントロールしつつ薄肉部を変形しやすくして、カバープレート端部溶接部の応力集中を抑制することができる。また、薄肉部の板厚は、ある程度薄い方が主管への応力集中の度合いが小さくできるものの、薄すぎると製作性に問題が出てくるとともに、溶接性が低下することから、連結面部の板厚に対して1/7程度以上に設定されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の接合構造では、前記カバープレートにおける前記連結面部からの前記突出面部の突出寸法は、前記主管の直径Dに対して0.1D程度以上に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出寸法を主管直径Dの0.1D倍以上に設定することで、薄肉部の変形性能を確保することができる。なお、突出面部の突出寸法は、0.1D以上であればよいが、0.3D以上であればより好ましく、0.5D程度であればさらに好ましい。また、突出寸法の上限値としては、特に限定されないが、突出寸法が大きすぎると使用鋼材量や溶接等の加工手間、コスト面で不都合が生じることから、突出寸法は、1.0D程度以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の接合構造では、前記突出面部の突出外縁は、溶接脚長が確保される程度に、前記薄肉部の板厚よりも厚く形成されるとともに前記連結面部の両端縁から当該薄肉部を囲んで連続的に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、突出面部の突出外縁を薄肉部よりも厚くして薄肉部を囲んで連続的に設けることで、この突出外縁を連結面部の両端縁から連続して主管に溶接することができるとともに、この溶接の際に突出外縁が薄すぎないことで溶接性を確保することができ、溶接欠陥の発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明の接合構造では、前記カバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部を備え、前記接続部は、前記連結面部に固定されかつ前記軸方向に延びるガセットプレートと、前記ガセットプレートの前記軸方向の端部と前記連結面部とを連結する前記軸方向とは交叉方向のリブとを備えていることが望ましい。
このような構成によれば、接合部にガセットプレートを用いることで、被接合材の接続にボルト等による締結構造を採用することができる。ここで、ガセットプレートを用いた場合、連結面部においては特にガセットプレートの軸方向端部にあたる部分でガセットプレートから伝達される荷重が応力集中を生じることがあるが、当該部分においてガセットプレートと連結面部とを連結するリブによりガセットプレートから連結面部への荷重が分散され、応力集中を緩和することができる。また、分散することにより、薄肉部42の端部応力集中をさらに緩和する効果が期待できる。
【0013】
一方、本発明のトラス構造は、鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる少なくとも一対の被接合材と、これら一対の被接合材を前記主管に接合する接合部とを備えたトラス構造であって、前記接合部は、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートと、このカバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部とを有し、前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記接続部が固定される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されていることを特徴とする。
【0014】
このような本発明によれば、前述の接合構造と同様に、製造コストを抑制しつつ被接合材から主管への応力伝達に際して主管への応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させて橋梁構造物などの構造体に本発明のトラス構造を利用することが可能となる。
【0015】
この際、本発明のトラス構造では、前記被接合材の端部と前記接続部とが溶接接合またはボルト接合されていることが好ましい。
このような構成によれば、カバープレートに設けた接続部に対して、溶接接合またはボルト接合によって被接合材を接続することで、カバープレート自体に直接に被接合材を溶接接合(突合せ溶接)する場合と比較して、接合に要する設備や作業手間等を削減することができ、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明の接合構造およびトラス構造によれば、複雑な形状の接合部材を用いなくてもよいことから、製造コストを抑制することができるとともに、被接合材から主管への応力伝達に際して、カバープレートに設けた薄肉部が適度に変形することで、最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させて橋梁構造物などの構造体への利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図2】前記トラス構造の一部を示す断面図および側面図である。
【図3】前記トラス構造の接合部を拡大して示す側面図および断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るトラス構造の一部を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図11】図10とは別の実施例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図12】本発明の比較例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図13】図12とは別の比較例に係る接合構造を示す斜視図である。
【図14】前記実施例および比較例の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、トラス構造は、所定の軸方向Xに延びる鋼管からなる主管1と、この主管1の軸方向Xに傾斜して設けられる被接合材としての4本の支管2と、これらの支管2を主管1に接合する接合部3と、を備えた立体トラスである。接合部3は、主管1の外周面1Aに固定された全体板状のカバープレート4と、このカバープレート4に固定されて支管2を接続する接続部としての2枚のガセットプレート5とを有して構成され、これらのガセットプレート5に支管2の端部がスプライスプレート6を介してボルト接合によって固定されている。なお、支管2の端部は、ガセットプレート5に対して溶接接合によって固定されてもよい。
【0019】
カバープレート4は、主管1の軸方向Xに沿った所定長さ寸法Lおよび主管1の周方向に沿った所定の周方向幅寸法Bを有するとともに、このカバープレートの長手方向(主管1の軸方向X)中央にてガセットプレート5が固定される連結面部41と、この連結面部41から長手方向の両側に突出する一対の突出面部42とを有して形成されている。連結面部41は、所定の板厚(例えば、22mm)を有した円弧状断面を有して形成され、主管1の軸方向Xに沿った両端縁である一対の端縁43がそれぞれ主管1の外周面1Aに隅肉溶接(溶接部W)で固定されている。また、カバープレート4は、図2(A)に示すように、主管1の軸方向Xを中心として角度θの範囲に位置する幅寸法Bを有し、角度θとしては、例えば120°(45°以上かつ180°以下が望ましい)に設定されている。
【0020】
図3にも示すように、一対の突出面部42は、それぞれ連結面部41の厚さ(例えば、T1=16mm)よりも薄い板厚(例えば、T2=3mm)を有する薄肉部44と、連結面部41の端縁43に連続して薄肉部44を囲む突出外縁45と、を有して略半円形状に形成されている。突出外縁45は、薄肉部44よりも厚いくかつ連結面部41より薄い板厚(例えば、薄肉部44がT2=3mmとし、溶接脚長7mmの場合、突出外縁45は7mm程度の板厚)を有するとともに、連結面部41の各端縁43からそれぞれ軸方向Xに延びるとともに互いに近づく方向に円弧状に曲がって連続して形成され、この突出外縁45が主管1の外周面1Aに隅肉溶接(溶接部W)で固定されている。なお、突出外縁45は、隅肉溶接に必要な板厚を確保していればよいので、必ずしも薄肉部44の板厚よりも厚い必要はなく、薄肉部44が隅肉溶接に必要な板厚を有していれば、これと同一の板厚で突出外縁45が形成されていてもよい。
【0021】
突出面部42の突出寸法L1、すなわち連結面部41およびガセットプレート5の端部から突出外縁45の最外端(軸方向Xに沿った先端)までの距離は、主管1の直径Dに対して0.1D程度以上かつ1.0D程度以下に設定されている。なお、図1〜図3に示す突出面部42では、突出寸法L1が約0.4Dに設定されている。また、突出寸法L1は、薄肉部44の応力伝達および変形性状や、突出外縁45の曲率による溶接性などを考慮した場合には、0.3D以上が好ましい。一方、カバープレート4の材料コスト(鋼材量)を考慮した場合には、1.0D以下のより短いものが好ましく、0.8D以下であればより好ましい。
【0022】
以上のような本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
すなわち、主管1の外周面1Aに固定されたカバープレート4を介して支管2が接合されているので、複雑な形状の鋳造筒型金物等に比較してカバープレート4の製造コストが抑制できるとともに、主管1に対して隅肉溶接でカバープレート4が固定されるので、加工コストも削減することができる。そして、カバープレート4において連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44を有して突出面部42が形成されているので、連結面部41に接続した支管2からの応力を主管1に伝達する際に、薄肉部44が適度に変形して最も高い応力集中が発生するカバープレート端部溶接部の応力集中を緩和することができ、変動応力に対する耐疲労性を向上させることができる。また、突出面部42の突出外縁45が角部のない曲線状に形成されていることで、主管1に対する集中応力をさらに低減させることができるとともに、連結面部41の端縁43と突出面部42の突出外縁45とが連続した隅肉溶接(溶接部W)によって主管1の外周面1Aに固定されているので、溶接の弱点となるような溶接端が形成されず、耐疲労性をより一層向上させることができる。さらに、被接合材である支管4の接続にあたって、ガセットプレート5に支管2の端部を、スプライスプレート6を介してボルトで締結する構造としたため、支管2の端部を溶接する場合よりも作業を効率よく行うことができる。
【0023】
前記図1から図3の実施形態では、2枚のガセットプレート5を用いた立体トラスを例示したが、本発明のトラス構造は、図4に示す他の実施形態のように平面トラスとしても利用可能である。
すなわち、図4に示すトラス構造は、主管1の軸方向Xに傾斜しかつ同一平面内に被接合材としての2本の支管2が設けられている。これらの支管2は、カバープレート4の周方向幅の中央に固定された1枚のガセットプレート5を介し、ボルト接合によって主管1に接続されている。
【0024】
このような平面トラスとした実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、図4の実施形態および後述する他の実施形態においては、前記図1から図3の実施形態と共通する構成に同じ符号を付し、各々の重複する説明は省略する。
【0025】
図5には、本発明のさらに他の実施形態が示されている。
図5において、本実施形態ではカバープレート4の周方向幅の中央に軸方向に延びる1枚のガセットプレート5が固定され、図4の実施形態と同様にガセットプレート5には支管4(図5では図示省略)が接続される。ガセットプレート5の軸方向の端部には、各端部の両側に一対で、ガセットプレート5と連結面部41とを接続するリブ51が設置されている。リブ51は、ガセットプレート5の側面に対して溶接されるとともに、薄肉部44の最寄りの辺縁に沿って連結面部41に溶接されている。
【0026】
このような本実施形態においては、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、リブ51によりガセットプレート5の端部応力の分散を図ることができる。すなわち、図示しない支管4から主管1に伝えられる荷重は、ガセットプレート5からカバープレート4へと伝達されるが、応力集中が生じ易いガセットプレート5の端部においては、その両側にリブ51が設置され、ガセットプレート5の端部の荷重を周辺の連結面部41の広い領域に分散させることができる。このため、カバープレート4における応力集中を緩和することができるとともに、薄肉部42の端部応力集中をさらに緩和する効果が期待できる。
【0027】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の薄肉部44をカバープレート4の表面側から凹状に形成したが、図6に示す他の実施形態のように裏側から凹状に形成してもよい。
図6において、カバープレート4の一対の突出面部42は、カバープレート4の裏面側から凹状に形成されて連結面部41よりも薄い板厚とされた薄肉部44と、連結面部41の端縁43に連続して薄肉部44を囲む突出外縁45と、を有して略半円形状に形成されている。なお、連結面部41の厚さT1、薄肉部44の厚さT2および突出外縁45の厚さは、それぞれ前記図1から図3の実施形態と同様に設定される。
このような裏側から凹状に形成された薄肉部44を用いた実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の両側の端縁43を直線としたが、図7に示す他の実施形態のように中間部がカバープレート4の周方向幅の中央に近づくように湾曲した円弧状に形成してもよい。
図7において、カバープレート4は前記図1から図3の実施形態あるいは図4の実施形態と同様な連結面部41、一対の突出面部42(薄肉部44および突出外縁45)、ガセットプレート5を備えている。ここで、連結面部41の両側の端縁43Aは、両端が突出外縁45に連続されるとともに、中間部分がガセットプレート5に近接するように湾曲されている。
【0029】
このように、カバープレート4において、先端の幅を広く、中央を狭くすることにより、先端部の剛性を中央部の剛性よりも大きくすることで、前記図5の実施形態においてリブ51を設置したことによる効果と同様の効果が期待できる。すなわち、ガセットプレート5の端部の剛性が、ガセットプレート5の中間部の剛性よりも大きくなることにより、ガセットプレート5からカバープレート4へと伝達される応力を側面43Aへと逃がし、カバー縁端部42に伝達される応力をさらに減少させる効果が期待できる。
【0030】
前記図1から図3の実施形態では、カバープレート4の連結面部41に接続部としてのガセットプレート5を設置したが、接続部としてはガセットプレート5に限らず、他の形状の接続部を用いてもよい。
【0031】
図8に示す他の実施形態では、被接合材である支管2としてパイプ部材が用いられ、カバープレート4の連結面部41には接続部としてリング状のカラー5Aが形成されている。
カラー5Aは、支管2と同様のパイプ部材を加工したものであり、連結面部41に接続される側は連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁とされ、全周にわたって連結面部41に溶接されている。連結面部41と反対側は、支管2の端部に対応した角度の切断面とされ、支管2を接続する際に全周にわたって支管2の端部に溶接される。
【0032】
このような本実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、カラー5Aを用いるため、前記図1から図3の実施形態における接続部であるガセットプレート5に比べてカバープレート4への設置にあたっての加工が若干複雑となるが、一方で、カラー5Aによって支管2の筒状の構造がカバープレート4に直接接合されることになり、露出型の構造体とした際の外観上も優れたものとすることができる。
【0033】
図9に示す他の実施形態では、被接合材である支管2としてパイプ部材が用いられる点は前記図8の実施形態と同様であるが、この実施形態においてはカバープレート4の連結面部41に別体の接続部を設置するのではなく、カバープレート4の連結面部41自体が接続部とされる。
本実施形態においては、支管2の端部を、予め連結面部41の表面に応じた形状の曲線状の端縁に形成しておき、支管2を接続する際に、支管2の端部を全周にわたって連結面部41に溶接する。
【0034】
このような本実施形態においても、前述した図1から図3の実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、ガセットプレート5を用いないため、カバープレート4への設置にあたって支管2の端部の加工が若干複雑となるが、支管2の端部がカバープレート4に直接接合されることになり、露出型の構造体とした際の外観上も優れたものとすることができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、本発明の接合構造およびトラス構造において、被接合材は、前記実施形態のような鋼管からなる支管2に限らず、適宜な断面を有した形鋼などであってもよいし、その他任意断面および形状を有した鋼材であってもよい。
また、本発明の接合構造は、トラス構造に利用されるものに限らず、ラーメン架構などの任意の構造体に利用可能である。具体例としては、主管として鋼管柱を用い、この鋼管柱に接合される梁やブレースを被接合材としてもよいし、逆に、鋼管梁(主管)等に対して、柱やブレース等の被接合材を接合する構造であってもよい。
【0036】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に基づく前記図1の実施形態の接合部3について、主管1の局部応力を検討した結果について説明する。
ここでは、本発明を適用した接合部を実施例1〜9とし、従来技術や本発明以外の接合部を比較例1〜12とし、各接合部のFEM解析を実施して主管1に作用する応力を算出した。なお、実施例1〜9および比較例1〜12のFEM解析モデルは、主管1の直径Dおよび板厚を共通とし、カバープレート4の形状(長さ寸法Lや幅寸法Bである角度θ、突出面部42の突出寸法L1、突出外縁45の角部R、薄肉部44の板厚T2)をパラメータとしたモデルを用いた。
なお、実トラス構造として、主管1の直径Dが600mm、カバープレート4の全長が1800mm、突出面部42の突出寸法が264mm(約0.44D)を想定し、この縮小モデルとした実施例および比較例において、主管1の主管径267mm、板厚が6mmであり、カバープレート4は、連結面部41の板厚T1が16mm、薄肉部44の板厚T2が3mmである。次の表1に解析モデルの諸元を示すとともに、図10、図11に実施例の接合部の代表的な形態を示し、図12、図13に比較例の接合部の代表的な形態を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例〕
実施例1は、図10(A)に示す形態の接合部3を備え、この接合部3におけるカバープレート4の形態は、前記実施形態で説明したものと同一であり、このカバープレート4の幅方向(主管1の周方向)略中央にガセットプレート5が1枚固定されている。
実施例2は、図10(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、薄肉部44の連結面部41側(突出面部42の突出方向基端部側)に丸みが形成され、すなわち板厚が厚い連結面部41の一部が突出外縁45に沿って突出面部42側に延長されている。
実施例3は、図10(C)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、突出面部42の突出方向基端部側において薄肉部44が連結面部41の端縁43に沿って延長されている。
【0040】
実施例4は、図11(A)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の形態が相違しており、薄肉部44の連結面部41側に突出方向に向かって傾斜した傾斜部が形成され、この傾斜部に対応して連結面部41の一部が突出面部42側に延長されている。
実施例5は、図示を省略するが、実施例4のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の傾きを変更し、実施例2のように丸みを形成したものである。
実施例6は、図示を省略するが、実施例5のカバープレート4に対して、薄肉部44の傾斜部の丸みをさらに大きくしたものである。
【0041】
実施例7は、図示を省略するが、実施例1のカバープレート4に対して、薄肉部44の板厚T2が相違しており、板厚T2が5mmとされている。
実施例8は、図11(B)に示すように、実施例1のカバープレート4に対して、突出面部42の突出外縁45の曲率が相違しており、突出外縁45のR寸法が50mmで形成されている。
実施例9は、図11(C)に示すように、実施例8のカバープレート4に対して、突出外縁45の曲率を変更したものであり、突出外縁45のR寸法が100mmで形成されている。
【0042】
〔比較例〕
比較例1〜12の接合部3Aは、図12および図13に示すように、カバープレート4Aと、このカバープレート4Aの幅方向略中央に固定されたガセットプレート5とを有して構成されている。これらのカバープレート4Aは、前記実施例1〜9のカバープレート4と形状が相違している。
比較例1は、図12(A)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4に対して、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aは先端に向かって板厚が薄くなるテーパを有して形成され、この先端が直線状に切断されて角部42Bが形成されている。
比較例2は、図12(B)に示すように、比較例1に対して、突出面部42Aにテーパが設けられず、その突出寸法が小さく形成されている。
比較例3は、図12(C)に示すように、実施例のカバープレート4と同様の薄肉部44を備えるものの、突出面部42Aの先端が直線状に切断されてR寸法が10mmの角部42Bが形成されている。
【0043】
比較例4は、図13(A)に示すように、突出面部42Aの先端形状が突出方向に凹状に形成され、幅方向の両端部にて突出方向に突き出した角部42Bが形成されている。
比較例5は、図13(B)に示すように、実施例1〜9のカバープレート4と略同様の外形形状を備えるものの、薄肉部を備えておらず、突出面部42Aが連結面部41Aと同一の板厚で形成されている。
比較例6は、図示を省略するが、比較例5と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが90°で形成されている。
比較例7は、図示を省略するが、比較例6と略同様の外形形状を備え、カバープレート4の周方向幅寸法である角度θが45°で形成されている。
比較例8は、図示を省略するが、比較例6よりもさらに幅寸法が小さく形成され(角度θ≒0°)、ガセットプレート5と略同一幅で形成されている。
【0044】
比較例9は、図示を省略するが、比較例5と略同様の外形形状を備え、カバープレート4における外周である端縁43Aおよび突出外縁45Aよりも内側の部分が主管1に溶接固定されている。
比較例10は、図示を省略するが、比較例1と略同様の外形形状を備え、連結面部41Aの端縁43Aに沿った方向(主管1の軸方向X)の端縁のみが主管1に溶接固定され、突出面部42Aの先端部分が溶接固定されていない点が相違する。
比較例11は、図13(C)に示すように、比較例6と略同様の外形形状を備え、突出面部42Aの突出寸法が拡大されている点が相違する。
比較例12は、図示を省略するが、比較例11と略同様に突出面部42Aの突出寸法が拡大され、比較例11では突出面部42Aにテーパが形成されるのに対し、比較例12ではテーパが形成されず突出面部42Aの板厚が連結面部41Aと同一のままフラットに形成されている点が相違する。
【0045】
図14に比較例1および実施例1のFEM解析結果のグラフを示し、表2に実施例1〜9および比較例1〜12の最大応力値を示す。
図14(A),(B)は、それぞれ比較例1および実施例1における主管1の応力を示すグラフであり、横軸は、接合部3,3Aの軸方向Xに沿った距離を示している。
比較例1では、図14(A)に示すように、突出面部42Aの先端位置である800mmを超えた位置から急激に応力が増大し、主応力の最大値として510MPa程度まで上昇していることが解る。
一方、実施例1では、図14(A)に示すように、突出面部42の先端よりも中央側で応力が増大し始め、突出面部42の先端位置において主応力の最大値が370MPa程度に抑制されている。このような応力は、突出面部42の薄肉部44が変形することにより、カバープレート4と主管1との間で徐々に応力が伝達され、突出面部42の先端位置における急激な上昇が抑制されることが解る。
【0046】
また、表2に示すように、実施例1〜9では、主応力の最大値が360〜400MPa程度であるのに対し、比較例1〜12では、主応力の最大値が400MPa以上であり、このような各比較例に対して本実施例では最大応力値が抑制されていることが解る。特に、比較例5と各実施例とを比較した場合、互いにカバープレート4,4Aの外形形状が略同一であるのに対して、比較例5のカバープレート4Aには薄肉部が形成されていないため、薄肉部44によって各実施例における応力抑制効果が得られていることが解る。さらに、比較例3と各実施例とを比較した場合、互いにカバープレート4,4Aが薄肉部44を備えていることから、主応力の最大値が400MPa以下となっているものの、比較例3のカバープレート4Aには、突出面部42A先端にR寸法が10mmの角部42Bが形成されていることから、突出外縁45のR寸法が50mmの実施例8の方が、応力値がより抑制され、さらにR寸法が大きな他の実施例で応力値が一層抑制されている。従って、突出面部42の突出外縁45にできるだけ緩やかなRを形成することによって、より高い応力抑制効果が得られることが解る。
【0047】
【表2】
【符号の説明】
【0048】
1…主管、1A…外周面、2…支管(被接合材)、3…接合部、4…カバープレート、5…ガセットプレート(接続部)、5A…カラー(接続部)、41…連結面部、42…突出面部、43,43A…端縁、44…薄肉部、45…突出外縁、51…リブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造であって、
前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートを備え、このカバープレートを介して前記被接合材が前記主管に接合され、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記被接合材と連結される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造において、
前記突出面部の薄肉部は、前記連結面部の板厚に対して1/2〜1/7程度の板厚を有して形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接合構造において、
前記カバープレートにおける前記連結面部からの前記突出面部の突出寸法は、前記主管の直径Dに対して0.1D程度以上に設定されていることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合構造において、
前記突出面部の突出外縁は、溶接脚長が確保される程度に、前記薄肉部の板厚よりも厚く形成されるとともに前記連結面部の両端縁から当該薄肉部を囲んで連続的に設けられていることを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合構造において、
前記カバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部を備え、前記接続部は、前記連結面部に固定されかつ前記軸方向に延びるガセットプレートと、前記ガセットプレートの前記軸方向の端部と前記連結面部とを連結する前記軸方向とは交叉方向のリブとを備えていることを特徴とする接合構造。
【請求項6】
鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる少なくとも一対の被接合材と、これら一対の被接合材を前記主管に接合する接合部とを備えたトラス構造であって、
前記接合部は、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートと、このカバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部とを有し、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記接続部が固定される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されていることを特徴とするトラス構造。
【請求項7】
請求項6に記載のトラス構造において、
前記被接合材の端部と前記接続部とが溶接接合またはボルト接合されていることを特徴とするトラス構造。
【請求項1】
鋼管からなる主管に被接合材を接合する接合構造であって、
前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートを備え、このカバープレートを介して前記被接合材が前記主管に接合され、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記被接合材と連結される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造において、
前記突出面部の薄肉部は、前記連結面部の板厚に対して1/2〜1/7程度の板厚を有して形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接合構造において、
前記カバープレートにおける前記連結面部からの前記突出面部の突出寸法は、前記主管の直径Dに対して0.1D程度以上に設定されていることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合構造において、
前記突出面部の突出外縁は、溶接脚長が確保される程度に、前記薄肉部の板厚よりも厚く形成されるとともに前記連結面部の両端縁から当該薄肉部を囲んで連続的に設けられていることを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合構造において、
前記カバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部を備え、前記接続部は、前記連結面部に固定されかつ前記軸方向に延びるガセットプレートと、前記ガセットプレートの前記軸方向の端部と前記連結面部とを連結する前記軸方向とは交叉方向のリブとを備えていることを特徴とする接合構造。
【請求項6】
鋼管からなる主管と、この主管の軸方向に傾斜して設けられる少なくとも一対の被接合材と、これら一対の被接合材を前記主管に接合する接合部とを備えたトラス構造であって、
前記接合部は、前記主管の外周面に固定された全体板状のカバープレートと、このカバープレートに固定されて前記被接合材を接続する接続部とを有し、
前記カバープレートは、前記主管の軸方向に沿った所定長さ寸法および当該主管の周方向に沿った所定の周方向幅寸法を有するとともに、当該カバープレートにおける前記軸方向の中央にて前記接続部が固定される連結面部と、この連結面部から前記軸方向の両側に突出する一対の突出面部とを有して形成され、
前記連結面部は、前記軸方向に沿った両端縁を有し、これらの両端縁が前記主管の外周面に溶接固定され、
前記突出面部は、前記連結面部よりも薄い板厚とされた薄肉部と、前記連結面部の両端縁に各々連続して互いに近づく方向に曲がって連続する突出外縁とを有し、この突出外縁が前記主管の外周面に溶接固定されていることを特徴とするトラス構造。
【請求項7】
請求項6に記載のトラス構造において、
前記被接合材の端部と前記接続部とが溶接接合またはボルト接合されていることを特徴とするトラス構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−40551(P2013−40551A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110075(P2012−110075)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(306022513)新日鉄住金エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(306022513)新日鉄住金エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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