説明

接合部材

【課題】接合部材のシール性を発揮しつつ、接合された接着部材が常態、更に高温に晒された後も、各構成部材を破壊することなく容易にリサイクルすることができる接合部材を提供する。
【解決手段】基材と基材がシリコーン系接着剤で接合された接合部材において、基材とシリコーン系接着剤の間にシリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層を設けたことを特徴とするリサイクル容易な接合部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車電装部品、家電製品、電気電子製品などの回収・修理、リサイクル時の選別作業を容易に行うことのできる接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系の接着剤やシーリング材は、接着性、耐熱性、耐候性等の特性に優れるため、自動車分野、電気電子分野、建築分野等で広く使用されている。その反面、熱をかけてもシリコーン系の接着剤やシーリング材が分解し難いため、修理あるいはリサイクルし難いという問題がある。
【0003】
近年、環境にやさしく、コストも低減できる点から、様々な分野でリサイクル性が要求されている。自動車分野、家電分野、電気電子分野等においても部材をリサイクルするため、接着剤を用いて接着させた部材同士の解体が必要とされている。
【0004】
例えば、硬化性樹脂組成物を用いた接合部材の易解体方法として、特開2003−026784号公報(特許文献1)には、ポリオール系の硬化性組成物を用いて成る接合部材を、150〜200℃に加熱することにより軟化又は液状化させて、該硬化物で接合された部材同士を解体することが提案されている。また、特開2002−327163号公報(特許文献2)には、ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型接着剤を用いた接着構造物の接着部分に、ハロゲン系有機溶剤を接触させることにより、接着部分の接着力を低下させた後、接着部分から接着構造物の構成部材を剥離解体することが提案されている。更に、特開2008−120903号公報(特許文献3)には、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とするビニル系モノマー混合物から成る接着剤を用い、接合時には高い常態接着力を維持しつつ、接合部を分離・解体する際には、加熱により接着力が低下して、容易に分離・解体することができる再剥離型粘着テープが提案されている。
【0005】
しかし、一般の有機系接着剤と異なりシリコーン系接着剤は耐熱性、耐候性に優れるため、硬化した接着剤を熱、紫外線等により軟化、液状化、化学分解することは容易ではない。また、シリコーン系接着剤は主に耐熱性、耐候性が要求される部位に使用されるため、熱や紫外線を解体工程のトリガーにすることは接着信頼性の点から好ましくない。
【0006】
部材同士の解体が容易で、かつ、シール性を発揮できるシリコーン系接着剤としてマスキング型シリコーン系接着剤が提案されている。接着付与剤を含まないマスキング型シリコーン系接着剤は、剥離性付与剤を添加してガラス、金属への離型性を付与したシリコーン系接着剤がある。例えば、特開2005−282165号公報(特許文献4)には、加熱することにより剥離性が発現するシリコーン系接着剤が提案され、特開2005−105263号公報(特許文献5)には、シリコーン系接着剤を用いた接合体に超音波振動を印加することにより剥離する方法が提案されている。
【0007】
しかし、このようなシリコーン系接着剤は、200℃を超える高温耐久において剥離性付与剤自体が熱分解してその効力を失い、部材とシリコーン系接着剤が熱により接着してしまうという問題や接合部材に超音波振動を印加することは作業上非常に大きな制約があるという問題があった。
【0008】
例えば、電子レンジ皿受け台の本体への固定のため使用されているマスキング型シリコーン系接着剤はその接着固定能力が必要不可欠であるが、使用時に発生する熱により部品への接着性が強く発現することで解体が難しく、回収・修理することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−026784号公報
【特許文献2】特開2002−327163号公報
【特許文献3】特開2008−120903号公報
【特許文献4】特開2005−282165号公報
【特許文献5】特開2005−105263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、接合部材のシール性を発揮しつつ、接合された接着部材が常態、更に高温に晒された後も、各構成部材を破壊することなく容易にリサイクルすることができる接合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、電気電子製品などの回収・修理、リサイクル時の選別作業の効率化を図るために有用な基材と基材がシリコーン系接着剤で接合された接合部材において、基材とシリコーン系接着剤の間にシリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層を設けることにより、接合部材のシール性を発揮しつつ、接合された接着部材が常態、更に高温に晒された後も、各構成部材を破壊することなく容易にリサイクルすることができることを見出した。
即ち、基材同士を接合しているシリコーン接着剤層をゴム強度に関して不連続層とすると、使用時には接着しているためシール性が保たれ、常温あるいは高温劣化後、基材を解体するために応力を加えた際は、不連続層中のゴム強度の小さい層が破壊して容易な解体が可能となる。この不連続層を有するシリコーン接着剤層として、比較的低強度の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層と高強度のシリコーン系接着剤とを組み合わせることで、接合部材の接合性に不利益を与えず、リサイクル容易な接合部材が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記接合部材を提供する。
〔請求項1〕
基材と基材がシリコーン系接着剤で接合された接合部材において、基材とシリコーン系接着剤の間にシリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層を設けたことを特徴とするリサイクル容易な接合部材。
〔請求項2〕
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層の厚さが10〜500μmである請求項1記載の接合部材。
〔請求項3〕
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のJIS K 6249による引張り強さが0.01〜0.5MPaである請求項1又は2記載の接合部材。
〔請求項4〕
シリコーン系接着剤と室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のJIS K 6249による引張り強さの差が少なくとも0.5MPaである請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合部材。
〔請求項5〕
基材がガラス及び/又は金属である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合部材。
〔請求項6〕
接合部材が自動車用部品又は電気電子用部品である請求項1〜5のいずれか1項に記載の接合部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着性及び/又はシール性を発揮しつつも、各構成部材を破壊することなく容易にリサイクルすることができる接合部材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリサイクル容易な接合部材は、基材と基材がシリコーン系接着剤で接合された接合部材において、基材とシリコーン系接着剤の間にシリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
〔基材〕
本発明に使用される基材としては、金属、ガラス、プラスチック、セラミック等が挙げられ、中でも金属、ガラスが好ましく、自動車用部品、電気電子用部品に特に好適に用いることができる。接合される基材は同種又は異種の基材であってもよい。
【0016】
〔シリコーン系接着剤〕
本発明に使用されるシリコーン系接着剤は、シリコーン接着剤、変性シリコーン接着剤から選ばれるものであり、シーリング材も含むものである。これらの中で、シリコーン接着剤が好ましい。硬化タイプは、縮合硬化型、付加反応硬化型、ラジカル反応硬化型、紫外線硬化型等特に制限されないが、縮合硬化型、付加反応硬化型が好ましく、特に縮合硬化型が好ましい。これらは通常市販されているものを使用することができる。
【0017】
〔室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物〕
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、その硬化物の強度が使用するシリコーン系接着剤より低いものであれば特に制限されないが、下記成分を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が好ましい。
【0018】
(A)下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に2個以上有し、かつケイ素原子に結合した残余の有機基がメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解物:0.1〜30質量部、
(C)硬化触媒:0.01〜5質量部。
【0019】
以下に各成分を詳述する。
[(A)成分]
(A)成分は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
【0020】
式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、特にメチル基が好ましい。一般式(1)中の複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0021】
また、nは10以上の整数であり、特にジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.1〜500,000mm2/sの範囲、好ましくは10〜10,000mm2/sの範囲となる整数である。なお、本発明において、粘度はB型回転粘度計により測定した値である。
【0022】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に2個以上有し、かつケイ素原子に結合した残余の有機基がメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解物である。
【0023】
この場合、シラン化合物は、下記一般式(2)
24-aSiXa (2)
(式中、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基から選択される基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3である。)
で表すことができ、1種又は2種以上の混合物であっても良い。
【0024】
(B)成分のシラン化合物及びその部分加水分解物が有する加水分解性基(式中のX)としては、例えば、ケトオキシム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられ、アルコキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。
【0025】
(B)成分の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のイソプロペノキシ基含有シラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0026】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜15質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では、十分な架橋性が得られず、組成物として得難い。また30質量部を超えると、得られる硬化物は機械特性が低下し易い。
【0027】
[(C)成分]
(C)成分の硬化触媒は、本発明の組成物において(A)成分と(B)成分の縮合反応触媒として作用するものである。これらは同一であっても異種のものであっても良く、また、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
【0028】
(C)成分の具体例としては、スズジオクトエート、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジベンジルマレート、ジオクチルスズジラウレート、スズキレート等のスズ触媒、グアニジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)等の強塩基化合物及びそれらの基を有するアルコキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物等が例示される。
【0029】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、特に好ましくは0.02〜2質量部の範囲で使用される。0.01質量部未満では、硬化性が不十分となることがあり、また5質量部を超えると、保存安定性が低下する場合がある。
【0030】
また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、下記一般式(3)で示される(D)オルガノポリシロキサンを配合することが好ましい。(D)成分を配合することにより組成物の粘度調整や硬化物の強度の調整等を容易にすることができる。
【化3】

式(3)中、R3は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、上記式(1)のR1で例示した基と同様の基を例示することができ、メチル基が特に好ましい。mは2以上の整数であり、好ましくは2〜1,000の整数、特に好ましくは2〜500の整数である。
【0031】
(D)成分のオルガノポリシロキサンは、(A)成分100質量部に対して1〜200質量部、特に5〜100質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0032】
また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、薄膜を形成し易くしたり、薄膜の厚さをコントロールし易くするために(E)有機溶剤で希釈することが好ましい。
(E)成分の有機溶剤は、シリコーン組成物を溶解又は均一に分散させ得るものなら特に制限されないが、低極性な有機溶剤が好ましい。具体的には、炭素数5〜8のアルカンとして、n−ペンタン及びその異性体、n−ヘキサン及びその異性体、n−ペンタン及びその異性体、n−オクタン及びその異性体;炭素数5〜8のシクロアルカンとして、シクロペンタン及びその異性体、シクロヘキサン及びその異性体、シクロヘプタン及びその異性体、シクロオクタン及びその異性体;炭素数3〜6のケトン化合物として、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン;芳香環を有する炭素数6〜8の有機化合物として、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びその異性体等が挙げられる。
好ましくは、炭素数5〜8のアルカンであり、特にn−ヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。
【0033】
(E)成分は、組成物が比較的低粘度の場合は配合する必要はないが、配合する場合は、上記組成物(即ち(A)〜(D)成分の合計、但し、後述する任意成分を配合する場合は(A)〜(D)成分及び任意成分の合計)100質量部に対して0〜2,000質量部、より好ましくは50〜1,500質量部、特に好ましくは100〜1,000質量部である。(E)成分の使用量が多すぎると、作業効率が却って悪くなることがある。
【0034】
また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分以外に、任意成分として、通常、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用される公知の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0035】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、公知の方法により、上記各成分を均一に混合することにより調製できる。
【0036】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物のJIS K 6249による引張り強さが0.01〜0.5MPa、特に0.05〜0.3MPaであることが好ましい。引張り強さが小さすぎると接合体の接着強度が低下することがあり、大きすぎるとリサイクルや解体効率が悪くなることがある。
【0037】
本発明においては、シリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を用いるものであり、シリコーン系接着剤と室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のJIS K 6249による引張り強さの差が少なくとも0.5MPa、特に0.5〜3.5MPaであることが好ましい。この差がこの範囲にあるとリサイクル、解体がよりし易くなる。
【0038】
本発明の接合部材は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層の厚さが、10〜500μm、特に20〜300μmであることが好ましい。厚さが薄すぎるとリサイクル、解体効率が低下する場合があり、厚すぎると接合体としての機能が低下することがある。
また、本発明の接合部材のシリコーン系接着剤層の厚さは、通常接合部材に使用されている厚さでよいが、0.1〜5mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。
【0039】
本発明の接合部材の製造方法は、特に制限されないが、例えば接合させる基材に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の薄膜を形成し、シリコーン系接着剤でその両面を張り合わせればよい。
【0040】
本発明の接合部材は、接合部材の使用時にはシリコーン系接着剤の特性を有し、リサイクル時には室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物層(プライマー層)が容易に破断するため、容易にリサイクル、解体することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
[実施例1]
両末端が水酸基で封鎖された粘度1,000mm2/sのジメチルポリシロキサン50質量部と、両末端が水酸基で封鎖された粘度5,000mm2/sのジメチルポリシロキサン50質量部を室温にて10分撹拌後、ビニルトリイソプロペノキシシラン4質量部、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.35質量部を均一になるまで室温にて10分撹拌し、n−ヘキサンを428g添加し、更に10分撹拌し、硬化物の引張り強さが0.2MPaである組成物1を得た。
組成物1を2枚のガラスの表面に刷毛で薄く塗布し(塗布厚:15μm)、30分放置した。30分後、その1枚のガラス表面に、接着構造体の形成に必要な、硬化物の引張り強さが2.8MPaである室温硬化性(RTV)シリコーン接着剤(信越化学工業(株)製)を塗布し、2枚のガラス間隔が3mmになるように、もう1枚の組成物を塗布したガラスで挟みこみ、23℃/50%RHにて7日養生し、接合された接着構造体1を作製した。
【0043】
[実施例2]
両末端が水酸基で封鎖された粘度1,000mm2/sのジメチルポリシロキサン100質量部、両末端がトリメチルシリル基で封鎖された粘度300mm2/sのジメチルポリシロキサン20質量部、ビニルトリイソプロペノキシシラン10質量部、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を均一になるまで室温にて20分撹拌し、n−ヘキサンを131g添加し、更に10分撹拌し、硬化物の引張り強さが0.1MPaである組成物2を得た。
実施例1と同様に、組成物2を2枚のガラスの表面に刷毛で薄く塗布し(塗布厚:20μm)、30分放置した。30分後、その1枚のガラス表面に、接着構造体の形成に必要な、硬化物の引張り強さが2.8MPaである室温硬化性シリコーン接着剤(信越化学工業(株)製)を塗布し、2枚のガラス間隔が3mmになるように、もう1枚の組成物を塗布したガラスで挟みこみ、23℃/50%RHにて7日養生し、接合された接着構造体2を作製した。
【0044】
[実施例3]
両末端が水酸基で封鎖された粘度1,000mm2/sのジメチルポリシロキサン80質量部と、両末端が水酸基で封鎖された粘度30mm2/sのジメチルポリシロキサン20質量部を室温にて10分撹拌後、ビニルトリイソプロペノキシシラン15質量部、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を減圧条件下で30分撹拌した。30分後、末端がトリメチルシリル基で封鎖された粘度0.7mm2/sのジメチルポリシロキサン80質量部を加え、更に20分撹拌し、硬化物の引張り強さが0.1MPaである組成物3を得た。
実施例1と同様に、組成物3を2枚のガラスの表面に刷毛で薄く塗布し(塗布厚:30μm)、30分放置した。30分後、その1枚のガラス表面に、接着構造体の形成に必要な、硬化物の引張り強さが2.8MPaである室温硬化性シリコーン接着剤(信越化学工業(株)製)を塗布し、2枚のガラス間隔が3mmになるように、もう1枚の組成物を塗布したガラスで挟みこみ、23℃/50%RHにて7日養生し、接合された接着構造体3を作製した。
【0045】
[比較例1]
実施例1、2及び3のように、組成物を塗布することなく、1枚のガラス表面に直接実施例1、2及び3で使用した硬化物の引張り強さが2.8MPaである室温硬化性シリコーン接着剤(信越化学工業(株)製)を塗布し、2枚のガラス間隔が3mmになるように、もう1枚のガラスで挟みこみ、23℃/50%RHにて7日養生し、接合された接着構造体4を作製した。
【0046】
これらの接合された接着構造体1〜4を250℃の高温条件下、経時における剥離解体性を確認した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と基材がシリコーン系接着剤で接合された接合部材において、基材とシリコーン系接着剤の間にシリコーン系接着剤よりも強度の低い室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層を設けたことを特徴とするリサイクル容易な接合部材。
【請求項2】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる薄膜層の厚さが10〜500μmである請求項1記載の接合部材。
【請求項3】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のJIS K 6249による引張り強さが0.01〜0.5MPaである請求項1又は2記載の接合部材。
【請求項4】
シリコーン系接着剤と室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のJIS K 6249による引張り強さの差が少なくとも0.5MPaである請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合部材。
【請求項5】
基材がガラス及び/又は金属である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合部材。
【請求項6】
接合部材が自動車用部品又は電気電子用部品である請求項1〜5のいずれか1項に記載の接合部材。

【公開番号】特開2010−284869(P2010−284869A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140034(P2009−140034)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】