説明

接点付き電極および接点付き電極用容器ならびに接点装置

【課題】 接触が良好で電気的切断を容易にでき、かつ電極と接点との接合信頼性の高い、長期にわたって正常に機能する接点付き電極を提供すること。
【解決手段】 接点付き電極5は、金属体から成る電極1と、電極1の上面に接合されるとともに銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させて成る接点2を具備している。接点2は剛性が高くなり、磨耗や変形することが少なく、良好な電気的接触を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー負荷用リレーあるいは電磁開閉器等に適した主に封止された接点装置およびそれに用いられる接点付き電極および接点付き電極用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワー負荷用リレー,電磁開閉器,20A以上の電流が流れるブレーカー,マグネットスイッチ等には図3に示すような接点付き電極が用いられていた。
【0003】
この接点付き電極において、接点102は銅(Cu)や銀(Ag),Cu合金やAg合金等の板状部材の接触子から成るものであり、金属体から成る電極101の上面にAgロウ等のロウ材103を介してロウ付け接合されることによって、接点付き電極が形成されていた。そして、このような接点付き電極は、封止された接点装置に用いられていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平9−45208号公報
【特許文献2】特開2003−100190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の接点付き電極は、接点装置等に組み込んで長期間に亘って使用し、電気的接続の断続を繰り返すと、軟質金属から成る接点102が磨耗したり変形したりしやすく、接点102を接続する際に接触不良を起こすという問題点や、接点102の接続を切断する際に生じるアーク放電が接点102の上面の磨耗した箇所や変形した箇所を起点にして大きくなるとともに消弧され難くなってしまい、接点102の電気的な接続を完全に切断するのが困難になるという問題点があった。即ち、接点102における電気的接続の断続を確実なものとすることができなくなるという問題点があった。
【0005】
従って、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接触が良好で電気的切断を容易にでき、長期にわたって正常に機能する接点付き電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接点付き電極は、金属体から成る電極と、該電極の上面に接合されるとともに銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させて成る接点とを具備していることを特徴とする。
【0007】
本発明の接点付き電極用容器は、上面に凹部が形成されるとともに該凹部の底面に貫通孔が形成された絶縁体から成る基体と、該基体の上面の前記凹部の周囲に接合された金属製の枠体と、前記貫通孔に挿通固定された上記本発明の接点付き電極とを具備していることを特徴とする。
【0008】
本発明の接点装置は、外周面にコイルを巻回した筒体と、該筒体の貫通孔に上下に移動可能に挿入された可動鉄芯と、該可動鉄芯の下端から延出して下端部が前記筒体の下面から突出するとともに前記下端部に可動接点が設けられた可動接触子を有する軸部と、前記筒体を内部に収容するとともに前記軸部を下面の貫通穴に挿通させて前記可動接触子を下面より下方に露出させるように設置した箱状の容器とを有しており、前記コイルに電流を流して前記可動鉄芯を磁化させることによって前記可動鉄芯を移動させる駆動部と、前記接点が前記可動接点に対向するようにして前記枠体が前記容器の下面の外周部に接合されている上記本発明の接点付き電極用容器とを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接点付き電極は、金属体から成る電極と、この電極の上面に接合されるとともに銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させて成る接点とを具備していることにより、接点が含有しているセラミック粉末によって接点の剛性が増し、電気的接続を断続しても、接点が磨耗したり変形したりし難くなるので、接点の接続を長期間良好に保つことができるとともに、接点の接続を切断する際に生じるアーク放電が消弧されやすくなる。
【0010】
また、接点の熱膨張係数が銅または銅を主成分とする金属接点に比べて小さく、電極との熱膨張差により接点が変形するのが抑制されるので、接点の上面を所定の形状に保つことができ、接点の電気的な断続を最適なものに維持できる。
【0011】
即ち、電気的接続の断続を確実に行なえる接点付き電極とすることができる。
【0012】
本発明の接点付き電極用容器は、上面に凹部が形成されるとともにこの凹部の底面に貫通孔が形成された絶縁体から成る基体と、この基体の上面の凹部の周囲に接合された金属製の枠体と、貫通孔に挿通固定された上記本発明の接点付き電極とを具備していることから、本発明の接点付き電極により、接点の接触が良好で、かつ接点の接続を容易に切断でき、接続信頼性に優れたものとできる。
【0013】
また、本発明の接点装置は、外周面にコイルを巻回した筒体と、筒体の貫通孔に上下に移動可能に挿入された可動鉄芯と、この可動鉄芯の下端から延出して下端部が筒体の下面から突出するとともに下端部に可動接点が設けられた可動接触子を有する軸部と、筒体を内部に収容するとともに軸部を下面の貫通穴に挿通させて可動接触子を下面より下方に露出させるように設置した箱状の容器とを有しており、コイルに電流を流して可動鉄芯を磁化させることによって可動鉄芯を移動させる駆動部と、接点が可動接点に対向するようにして枠体が容器の下面の外周部に接合されている本発明の接点付き電極用容器とを具備していることから、上記本発明の接点付き電極用容器により、接点の接触が良好で、かつ接点の接続を容易に切断でき、接合信頼性に優れたものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の接点付き電極、接点付き電極用容器および接点装置について以下に詳細に説明する。図1は本発明の接点付き電極および接点付き電極用容器を具備する接点装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は本発明の接点付き電極の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【0015】
図1,図2において、1は金属体から成る電極、2は銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させて成る接点、3は接点2を電極1の上面に接合するロウ材である。これら電極1および電極1に接合された接点2で本発明の接点付き電極5が構成される。また、図1において、5は本発明の接点付き電極、10は本発明の接点付き電極用容器、11は接点付き電極用容器10の基体、12は接点付き電極用容器10の枠体、20は本発明の接点装置の駆動部である。これら接点付き電極5および基体11ならびに枠体12で接点付き電極用容器10が構成され、接点付き電極用容器10および駆動部20が、接点2が駆動部20の可動接点22に対向するようにして枠体12が駆動部20の容器27の下面の外周部に接合されて本発明の接点装置となる。
【0016】
本発明の接点付き電極5は、金属体から成る電極1と接点2とを具備しており、接点2は電極1の上面にロウ材3等により接合されるとともに銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させたものである。
【0017】
電極1は、金属体から成る円柱状や直方体状等の柱状であり、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金やFe−Ni合金、その他、CuやAg,Fe,ステンレス鋼(SUS)等の金属のインゴットに圧延加工や切削加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。電極1の材質は、電極1が取り付けられる基体11の熱膨張率等の特性に応じて選択すればよい。電極1の上面には、Agロウ,Ag−銅(Cu)ロウ等のロウ材3のプリフォームが載置され、その上に接点2が載置され、ロウ材3を溶融させることによってロウ付けされる。
【0018】
接点2は、上面が円弧状の曲面となった円板状であり、下面は電極1の上面に接合される接合部とされ、上面は外部の接点と接続される接点部となる。接点2は、銅または銅を主成分とする合金にアルミナ(Al)質セラミックス,窒化アルミニウム(AlN)質セラミックス,炭化珪素(SiC)質セラミックス,窒化珪素(Si)質セラミックス等のセラミック粉末が含有されている。
【0019】
接点2がセラミック粉末を含有することにより、接点2の剛性が増すとともに、接点2の熱膨張係数が銅または銅を主成分とする合金より小さくなり、熱膨張係数の小さな電極1であっても熱膨張差による熱応力が小さくなり接点2が変形するのが抑制されるので、接点2の上面を所定の形状に保つことができる。その結果、接点2が磨耗したり変形したりし難くなるので、接点2の接続を長期間良好に保つことができるとともに、接点2の接続を切断する際に生じるアーク放電が接点の磨耗した箇所または変形した箇所を起点にして大きくならず消弧され易くなり、接点2の電気的な接続を完全に切断し易くすることができる。即ち、接点2の電気的接続の断続を確実に行なえるものとすることができる。
【0020】
このような接点2は、例えば、Al質セラミックスを含有して成る場合は、酸化アルミニウム(Al),酸化珪素(SiO),酸化マグネシウム(MgO),酸化カルシウム(CaO)等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤,分散剤等を混合添加して顆粒状の混合物と成し、約1600℃で焼成して得られたセラミックス粉末の表面に金属層を被着させた後に、これを加圧成形して接点2の所定形状にしたセラミックス多孔体を得、しかる後に、このセラミックス多孔体に銅または銅を主成分とする合金を含浸させることによって得ることができる。接点2がその他のセラミック粉末を含有して成る場合も同様にして得ることができる。
【0021】
このような銅または銅合金にセラミック粉末を含有する接点2は、剛性として縦弾性係数が銅の約100GPaに対して約140GPaとなるが、電気抵抗値は銅の1.55Ω・mに対して約1.24Ω・m〜1.48Ω・mであり、電気材料として充分使用可能なものである。また、熱膨張係数は18×10-6〜20×10-6である。
【0022】
なお、接点2の作製に用いられる銅または銅を主成分とする合金は、銅が90%以上含まれる銅材、または、銅を主成分とする合金としては青銅,黄銅,リン青銅等が挙げられる。接点2に用いるものとしては、無酸素銅が電極1とのロウ付け時にロウ材3を酸化させない点で好ましい。
【0023】
本発明において、好ましくは、図2に示すように、電極1は、上面の中央部に凹部1aが設けられた金属体から成る円柱状や直方体状等の柱状であっても良く、この場合、凹部1aの内面には、Agロウ,Ag−Cuロウ等のロウ材3のプリフォームが挿入され、その上に接点2に設けられた脚部2aが挿入され、ロウ材3を溶融させることによってロウ付けされる。ロウ付けの際に脚部2aの下面で溶融したロウ材3は、毛細管現象によって脚部2aの側面を上昇し、電極1と接点2との接合面積を拡大させる。
【0024】
接点2は、凹部1aの深さよりも長く、凹部1aの内寸法よりも小さい太さの脚部2aおよび凹部1aの開口よりも大きい頭部2bを有するリベット状であり、脚部2aは電極1の凹部1aに接合される接合部とされ、頭部2bは外部の接点と接続される接点部となる。なお、通常は頭部2bの上面は円弧状の曲面とされるが、平面でもよい。接点2は、接点2のリベット状の所定形状に加圧成形したセラミックス多孔体に銅または銅を主成分とする合金を含浸させて製作される。
【0025】
ここで、脚部2aは、凹部1aの深さより長く、凹部1aの内寸法よりも小さい太さにされている。この構成により、脚部2aが凹部1aに挿入されて凹部1aの内壁との間でロウ付けされるとともに、電極1の上面から脚部2aの側面および頭部2bの下面にかけてこれらの面にロウ材3が沿うようにしてロウ付けされたときに、電極1の上面と接点2の頭部2bの下面との間に空間4を形成することができ、電極1と接点2とをロウ付けする際に、溶融したロウ材3が接点2の側面にあふれ出すのを防止できる。その結果、接点2の上面にロウ材3の溜りが形成されるのを防止でき、接点2を接続させる際の接触が良好で、接点2の接続を切断させる際にアーク放電を小さいものとし、接点2の接続を容易に切断できるようにできる。
【0026】
また、電極1の上面とロウ材3との間の空気、および接点2の下面とロウ材3の間の空気は、電極1と接点2とをロウ付けするときにロウ材3を溶融させた際に、空気が凹部1aと脚部2aとの間から上方に抜け出易くなり、ロウ材3内部にボイドが発生するのを防止することができる。その結果、電極1と接点2との接合を強固なものとして電極1と接点2との接合信頼性を向上させることができる。
【0027】
さらに好ましくは、脚部2aの長さは凹部1aの深さより0.5mm〜5mm長くするのがよく、この構成により、電極1の上面と接点2の頭部2bの下面との間に高さ0.5mm〜5mmの空間4を設けることができ、空間4において、溶融したロウ材3の毛細管現象が生じ難くなるので、ロウ付けの際に脚部2aの下面で溶融したロウ材3が接点2の頭部2bの上面にはい上がるのを有効に防止するとともに、ロウ材3内部の空気が凹部1aと脚部2aとの間から上方に抜け出易くなり、ロウ材3内部にボイドが発生するのを有効に防止することができる。脚部2aの長さが凹部1aの深さに比べて0.5mm未満のときは、電極1の上面と接点2の頭部2bの下面との間において、溶融したロウ材3が毛細管現象によって接点2の側面にあふれ出し、そのロウ材3が接点2の上面にはい上がって、その結果、接点2の上面にロウ材3の溜りが形成され易くなる。一方、脚部2aの長さが凹部1aの深さに比べて5mmを超えて長くなると、凹部1aより上側に突出した脚部2aが長くなりすぎて、頭部2bに外部の接点を接続させる際に外力が加わると脚部2aに変形が生じやすくなる。
【0028】
また好ましくは、電極1の凹部1aの側面と接点2の脚部2aの側面との間には0.05mm〜0.25mmのわずかな隙間が設けられるのがよく、ロウ材3を毛細管現象で凹部1aの側面と脚部2aの側面との間を完全に埋め込んで、電極1と接点2とを極めて強固にロウ付け接合することができる。隙間が0.05mm未満であると、凹部1aの側面と脚部2aの側面との間が狭くなりすぎて、ロウ材3を毛細管現象で良好に流すことが困難となる。隙間が0.25mmを超えると、凹部1aの側面と脚部2aの側面との間が広くなりすぎて、ロウ材3を毛細管現象で流すことが困難となる。
【0029】
ロウ材3はAgロウ,Ag−Cuロウ等をプリフォームしたものを使用するのが好ましい。ロウ材3をプリフォームしたものは、幅が凹部1aの内寸法よりも0.02mm程度小さく、厚さが0.08mm〜0.2mm程度の板状とするのが好ましい。このプリフォームされたロウ材3を、凹部1aに挿入し、次に接点2の脚部2aを挿入し、ロウ材3の溶融温度まで加熱するとロウ材3が溶融して毛細管現象で凹部1aと脚部2aとの隙間を埋めて流れ、電極1の上面まで達して、電極1の上面から脚部2aの側面および頭部2bの下面にかけてこれらの面にロウ材3が沿うようにして流れる。そして接点2は毛細管現象により流れ出たロウ材3の量に応じてロウ材3の中に沈みこみ、電極1と接点2とが所望の状態にロウ付けされる。
【0030】
次に、本発明の接点付き電極用容器10について詳細に説明する。本発明の接点付き電極用容器10は、上面に凹部が形成されるとともにこの凹部の底面に貫通孔11aが形成された絶縁体から成る基体11と、この基体11の上面の凹部の周囲に接合された金属製の枠体12と、貫通孔11aに挿通固定された上記本発明の構成の接点付き電極5とを具備するものである。
【0031】
基体11は、アルミナ(Al)質焼結体等の耐熱性を有する絶縁体やエポキシ樹脂,ポリフェニレンサルファイト(PPS)や液晶ポリマー(LCP)等のエンジニアリングプラスチックスから成る絶縁性の凹状の容器であり、図1に示すように底面に2箇所の貫通孔11aが形成されている。
【0032】
基体11の上面の凹部の周囲には、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作された枠体12がAgロウ,Ag−Cuロウ等のロウ材を介して接合されている。そして、貫通孔11aには接点2が基体11の内側になるようにして接点付き電極5が挿通され、Agロウ,Ag−Cuロウ等のロウ材によってロウ付けされている。接点付き電極5において好ましくは、図1に示すように、電極1の下端部には鍔部1bが形成されており、鍔部1bの上面が貫通孔11bの周囲の基体11下面に接合されているのがよく、この構成により、電極1の先端に接合された接点2の上下方向の位置を正確に位置合わせすることができる。なお、鍔部1bとともに、または鍔部1bに代わって貫通孔11aの内壁と電極1の側面とがロウ付けされてもよいことは言うまでもない。
【0033】
電極1および枠体12は、上記したように基体11とロウ付け接合するため、基体11と熱膨張係数が近似した材料であるのがよい。これによって、ロウ付けするときの収縮量の違いによる熱応力が基体11に大きく作用するのを防止し、基体11にクラック等の破損が生じたり、枠体12と基体11の接合が外れたりするのを有効に防止することができる。例えば、基体11がAl質焼結体から成る場合、電極1および枠体12はAl質焼結体とロウ付けするときの熱膨張係数が近似したFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金から成るのがよい。
【0034】
なお、接点付き電極用容器10は枠体12の上側で気密に封止されることによって、内部が気密に封止された容器となる。接点付き電極用容器10内部には、例えば水素やヘリウム,アルゴン,窒素,6弗化イオウ(SF)等を主体としたガスが2気圧程度で封入され気密に封止される。
【0035】
次に、本発明の接点装置について詳細に説明する。本発明の接点装置は、外周面にコイル26を巻回した筒体23と、この筒体23の貫通孔23aに上下に移動可能に挿入された可動鉄芯21bと、この可動鉄芯21bの下端から延出して下端部が筒体23の下面から突出するとともに下端部に可動接点22が設けられた可動接触子21aを有する軸部21と、筒体23を内部に収容するとともに軸部21を下面の貫通穴27aに挿通させて可動接触子21aを下面より下方に露出させるように設置した箱状の容器27とを有しており、コイル26に電流を流して可動鉄芯21bを磁化させることによって可動鉄芯21bを移動させる駆動部20と、接点2が可動接点22に対向するようにして枠体12が容器27の下面の外周部に接合されている上記本発明の構成の接点付き電極用容器10とを具備している。
【0036】
なお、前記したように、接点付き電極用容器10内部には、例えば水素やヘリウム,アルゴン,窒素,6弗化イオウ(SF)等を主体としたガスが2気圧程度でもって封入され気密に封止される。
【0037】
この構成において、接点装置が作動していない場合、コイル26に電圧が印加されず、軸部21が上方側に押し上げられており、可動接触子21aが上方側に引き上げられ、可動接点22が接点2から離れており、可動接点22と接点2とが電気的に接続されない状態とされている。接点装置が作動すると、コイル26に電流が流れてコイル26が励磁され、可動鉄芯21bが磁化されて磁気的にバランスが取れる位置に移動するようにコイル26の中へ引き込まれ、軸部21が下方に移動する。そして、可動接点22が接点2に接触し、可動接点22と接点2とが接続された状態とされる。
【0038】
ここで、好ましくは、軸部21の上端部には復帰用のバネ24を介して可動鉄芯21bが固定されており、軸部21の下端部には圧接用のバネ25によって下方に付勢されて可動接触子21aが配置されているのがよい。接点装置は、この構成からなることによって、コイル26に電流が流れていない場合には、復帰用のバネ24の弾性力で可動鉄芯21bが上方側に押し上げられ、軸部21が上方側に押し上げられる。一方、圧接用のバネ25の弾性力で可動接触子21aが下方に付勢されているが、復帰用のバネ24の弾性力が圧接用のバネ25の弾性力よりも大きい。このため、軸部21が上方側に押し上げられることにより、可動接触子21aが上方側に引き上げられ、可動接点22が接点2から離れている。
【0039】
そして、コイル26に電流を流してコイル26を励磁すると、可動鉄芯21bが磁化されて下方に引き込まれるように移動し、軸部21が復帰用のバネ24の弾性力に抗して下方に移動する。そして、可動接点22が接点2に接触する。
【0040】
そして、コイル26の電流を遮断して励磁を解くと、圧接用のバネ25の弾性力よりも大きい復帰用のバネ24の弾性力により、可動鉄芯21bが上方側に押し上げられ、軸部21が上方側に移動する。そして、可動接点22が接点2から離れる。
【0041】
このようにして、可動接点22と接点2とが接続される状態と、接続されない状態とにすることができる。
【0042】
可動接点22は、Ag,Ag合金,Cu,Cu合金や接点2と同様の銅または銅を主成分とする合金にAl質セラミックス,AlN質セラミックス,SiC質セラミックス,Si質セラミックス等のセラミック粉末が含有されている材料等の電気抵抗の低い良導体である金属のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作され、予め可動接触子21aにAgロウ,Ag−Cuロウ等のロウ材によって接合固定されている。
【0043】
好ましくは、可動接点22は接点2と同様の銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末が含有されている材料から成り、金属体の可動接触子21aに接合された本発明の接点付き電極であるのがよく、可動接点22がセラミック粉末を含有することにより剛性が増すとともに、可動接点22の熱膨張係数が可動接触子21aの熱膨張係数より大きくなりすぎるのを抑制でき可動接点22の熱膨張係数が銅または銅を主成分とする合金より小さく、可動接触子21aとの熱膨張差による熱応力が加わっても可動接点22が変形するのが抑制されるので、可動接点22の上面を所定の形状に保つことができる。その結果、可動接点22が磨耗したり変形したりし難くなるので、可動接点22の接触を長期間良好に保つことができるとともに、可動接点22の接続を切断する際に生じるアーク放電が接点の磨耗した箇所または変形した箇所を起点にして大きくならず消弧され易くなり、可動接点22の電気的な接続を完全に切断しやすくすることができ、可動接点22の寿命も長くなる。そして、可動接点22の電気的接続の切断をより確実なものとすることができる。
【0044】
また好ましくは、可動接触子21aには電極1と同様に凹部を設け、可動接点22を接点2と同様に、可動接触子21aの凹部の深さより長く、可動接触子21aの凹部の内寸法よりも小さい太さの脚部および可動接触子21aの凹部の開口よりも大きい頭部を有するリベット状として、可動接点22の脚部が可動接触子21aの凹部に挿入されて可動接触子21aにロウ付けされる構成とするのがよい。
【0045】
可動接触子21aと可動接点22とをロウ付け接合する際に、溶融したロウ材が可動接点22の側面にあふれ出すのを防止できる。その結果、可動接点22の上面にロウ材の溜りが形成されるのを防止できる。また、可動接触子21aとロウ材との間の空気、および可動接点22とロウ材との間の空気は、可動接触子21aと可動接点22とをロウ付けするときにロウ材を溶融させた際に、空気が凹部と脚部との間から抜け出易くなり、ロウ材内部にボイドが発生するのを防止することができる。その結果、可動接触子21aと可動接点22との接合を強固なものとして可動接触子21aと可動接点22との接合信頼性を向上させることができる。
【0046】
接点2と可動接点22とを接触させる際に、接点2に外力が加わるが、電極1と接点2との接合が強固なものとされているので電極1と接点2との接合信頼性を向上させ、接点2が電極1から取れてしまうのを防止できる。また、可動接触子21aに電極1と同様に凹部を設け、可動接点22を接点2と同様に、可動接触子21aの凹部の深さより長く、可動接触子21aの凹部の内寸法よりも小さい太さの脚部および可動接触子21aの凹部の開口よりも大きい頭部を有するリベット状として、可動接点22の脚部が可動接触子21aの凹部に挿入されて可動接触子21aにロウ付けされる構成とした場合、可動接点22に外力が加わっても、可動接触子21aと可動接点22との接合が強固なものとされているので可動接触子21aと可動接点22との接合信頼性を向上させ、可動接点22が可動接触子21aから取れてしまうのを防止できる。その結果、接点装置を長期にわたって正常に機能し得るものとすることができる。
【0047】
また、接点装置が作動されなくなると、軸部21が上方側に移動する。そして、可動接点22が接点2から離れるが、その際に接点2と可動接点22との間にアーク放電が発生する。このアーク放電を接点装置の外側の磁気手段(図示せず)により引き伸ばし消弧させることによって、接点2と可動接点22との電気的接続が切断されることとなる。好ましくは、接点2および可動接点22の表面は凸の曲面状であるのがよく、この構成によって、接点2,可動接点22間で発生するアーク放電を抑制できる。
【0048】
なお、接点2が磨耗したり変形したりし難くでき、接点2を接続させる際に接触を良好とするとともに、接点2の接続を切断させる際に生じるアーク放電が接点2の上面に接点の磨耗した箇所または変形した箇所を起点にして大きくなるのを防止してアーク放電を消弧し易くし、接点2の電気的な接続を完全に切断させ易くすることができることから、接点2と可動接点22とを接続させる際の両者の接触が良好で、かつ接点の接続を切断させる際に接点2と可動接点22との間で生じるアーク放電を小さいものとし、接点2の電気的接続の断続を確実なものとできる。
【0049】
尚、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、電極1の上面に接点2がロウ付けにより接合されている例を示したが、接点2が溶接により接合されたり、電極1の凹部1aに焼嵌されて接合されたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の接点付き電極,接点付き電極用容器,接点装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の接点付き電極の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】従来の接点付き電極の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:電極
2:接点
3:ロウ材
5:接点付き電極
10:接点付き電極用容器
11:基体
11a:貫通孔
12:枠体
21:軸部
21a:可動接触子
21b:可動鉄芯
22:可動接点
23:筒体
23a:貫通孔
26:コイル
27:容器
27a:貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体から成る電極と、該電極の上面に接合されるとともに銅または銅を主成分とする合金にセラミック粉末を含有させて成る接点とを具備していることを特徴とする接点付き電極。
【請求項2】
上面に凹部が形成されるとともに該凹部の底面に貫通孔が形成された絶縁体から成る基体と、該基体の上面の前記凹部の周囲に接合された金属製の枠体と、前記貫通孔に挿通固定された請求項1記載の接点付き電極とを具備していることを特徴とする接点付き電極用容器。
【請求項3】
外周面にコイルを巻回した筒体と、該筒体の貫通孔に上下に移動可能に挿入された可動鉄芯と、該可動鉄芯の下端から延出して下端部が前記筒体の下面から突出するとともに前記下端部に可動接点が設けられた可動接触子を有する軸部と、前記筒体を内部に収容するとともに前記軸部を下面の貫通穴に挿通させて前記可動接触子を下面より下方に露出させるように設置した箱状の容器とを有しており、前記コイルに電流を流して前記可動鉄芯を磁化させることによって前記可動鉄芯を移動させる駆動部と、前記接点が前記可動接点に対向するようにして前記枠体が前記容器の下面の外周部に接合されている請求項2記載の接点付き電極用容器とを具備していることを特徴とする接点装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12729(P2006−12729A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191745(P2004−191745)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】