説明

接眼レンズ

【課題】視度調整が可能で、球面収差とコマ収差等の諸収差が良好に補正された接眼レンズを提供する。
【解決手段】観察物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを有し、第2レンズ群G2は少なくとも1つの非球面を有し、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調整が可能であり、以下の条件式(1),(2)を満足する。0.25<d2/TL<0.50…(1)、0.3<f2/f<0.6…(2)。但し、d2:第2レンズ群G2の視度調整時の光軸上での移動距離、TL:接眼レンズの総厚(第1レンズ群G1の最も観察物体側の光学面から第3レンズ群G3の最もアイポイント側の光学面までの光軸上の距離)、f2:第2レンズ群G2の焦点距離、f:−1[m-1]時の接眼レンズの焦点距離。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正立系を介して観察する接眼レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視度調整が可能な接眼レンズが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3850421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接眼レンズに対して、視度調整範囲内でより良好な収差の確保が
望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、視度調整範囲内で諸収差が良
好に補正された接眼レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明に係る接眼レンズは、観察物体側から順に並ん
だ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折
力を有する第3レンズ群とを有し、前記第2レンズ群は少なくとも1つの非球面を有し、
前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより視度調整が可能であり、以下の条
件式を満足する。
【0007】
0.25 < d2/TL < 0.50
0.3 < f2/f < 0.6
但し、
d2:前記第2レンズ群の視度調整時の光軸上での移動距離、
TL:前記接眼レンズの総厚(前記第1レンズ群の最も観察物体側の光学面から前記第
3レンズ群の最もアイポイント側の光学面までの光軸上の距離)、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離、
f:−1[m-1]時の前記接眼レンズの焦点距離。
【0008】
本発明に係る接眼レンズは、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とは、それぞれ単レ
ンズから構成され、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0009】
20.00 < ν2−ν1
但し、
ν1:前記第1レンズ群を構成する前記単レンズのd線を基準とするアッベ数、
ν2:前記第2レンズ群を構成する前記単レンズのd線を基準とするアッベ数。
【0010】
本発明に係る接眼レンズは、前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズ
の形状因子をS3としたとき、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0011】
3.00 < S3 < 6.00
但し、
S3=(Rs+Re)/(Rs−Re)で定義され、
Rs:前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズの観察物体側の面の曲
率半径、
Re:前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズのアイポイント側の面
の曲率半径。
【0012】
本発明に係る接眼レンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0013】
0.00 < d3/TL < 0.25
但し、
d3:前記第3レンズ群の光軸上の厚み。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、視度調整範囲内で諸収差が良好に補正された接眼レンズを提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例に係る接眼レンズの構成図である。
【図2】第1実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−4.0[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+7.9[m-1]時の諸収差図を示す。
【図3】第2実施例に係る接眼レンズの構成図である。
【図4】第2実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3.4[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+3.0[m-1]時の諸収差図を示す。
【図5】第3実施例に係る接眼レンズの構成図である。
【図6】第3実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−4.3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+3.9[m-1]時の諸収差図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る接眼レン
ズは、図1に示すように、観察物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群
G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3
とを有し、第2レンズ群G2は少なくとも1つの非球面を有し、第2レンズ群G2を光軸
に沿って移動させることにより視度調整が可能であり、次の条件式(1),(2)を満足
するように構成した。
【0017】
0.25 < d2/TL < 0.50 …(1)
0.3 < f2/f < 0.6 …(2)
但し、
d2:第2レンズ群G2の視度調整時の光軸上での移動距離、
TL:接眼レンズの総厚(第1レンズ群G1の最も観察物体側の光学面から第3レンズ
群G3の最もアイポイント側の光学面までの光軸上の距離)、
f2:第2レンズ群G2の焦点距離、
f:−1[m-1]時の接眼レンズの焦点距離。
【0018】
条件式(1)は、視度調整に伴う第2レンズ群G2の光軸上での総移動距離と、接眼レ
ンズの総厚との比を規定するものである。条件式(1)を満足するように視度調整時の第
2レンズ群G2の移動量を設定すれば、第2レンズ群G2の屈折力を弱くすることが可能
になり、視度調整に伴う収差変動、特に球面収差やコマ収差の変動を小さくすることがで
きる。条件式(1)の下限値を下回ると、視度調整を行うために第2レンズ群G2の屈折
力を強くする必要があり、第2レンズ群G2の移動による球面収差やコマ収差の変動が大
きくなる。条件式(1)の上限値を上回ると、第2レンズ群G2の移動による収差変動は
抑えられるが、視度調整を行うためには第2レンズ群G2の移動量を増やす必要があり、
接眼レンズが大型化して実用性が損なわれる。
【0019】
上記効果を確実なものとするために、条件式(1)の上限値を0.45とすることが好
ましい。
【0020】
条件式(2)は、第2レンズ群G2の屈折力を規定するものである。条件式(1)を満
足しつつ、条件式(2)を満足することにより、視度調整範囲内で良好な収差(特に、球
面収差、コマ収差)を得ることができる。条件式(2)の下限値を下回ると、第2レンズ
群G2の屈折力が強くなりすぎて、視度調整に伴い第1レンズ群G1と第2レンズ群G2
との間隔が広がると、特に球面収差が過剰補正になる。条件式(2)の上限値を上回ると
、第2レンズ群G2の移動による収差変動は抑えられるが、視度調整に伴う第2レンズ群
G2の必要移動量が大きくなり、実用性が損なわれる。
【0021】
上記効果を確実なものとするために、条件式(2)の下限値を0.34とすることがよ
り好ましい。
【0022】
そして、条件式(1),(2)を満たしつつ、第2レンズ群G2に非球面を配置するこ
とにより、視度調整時の球面収差およびコマ収差の変動を小さくすることができる。特に
、非球面は、第2レンズ群G2の最も観察物体側に配置されることが望ましい。この構成
により、視度調整に伴い第1レンズ群G1と第2レンズ群G2のレンズ間隔が変化した際
の収差変動(球面収差やコマ収差等)を最も効果的に補正できる。
【0023】
本実施形態に係る接眼レンズは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とが、それぞれ
単レンズから構成され、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
【0024】
20.00 < ν2−ν1 …(3)
但し、
ν1:第1レンズ群G1を構成する前記単レンズのd線(波長587.56nm)を基準とする
アッベ数、
ν2:第2レンズ群G2を構成する前記単レンズのd線(波長587.56nm)を基準とする
アッベ数。
【0025】
条件式(3)は、視度調整範囲内で良好な収差性能を確保するためのものである。条件
式(3)の下限値を下回ると、視度調整範囲内における倍率色収差が大きくなり、色にじ
みが生じる。
【0026】
上記効果を確実なものとするために、条件式(3)の下限値を25.00とすることが
より好ましい。
【0027】
本実施形態に係る接眼レンズは、第3レンズ群G3の最もアイポイント側に位置するレ
ンズの形状因子をS3としたとき、次の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0028】
3.00<S3<6.00 …(4)
但し、
S3=(Rs+Re)/(Rs−Re)で定義され、
Rs:第3レンズ群G3の最もアイポイント側に位置するレンズの観察物体側の面の曲
率半径、
Re:第3レンズ群G3の最もアイポイント側に位置するレンズのアイポイント側の面
の曲率半径。
【0029】
条件式(4)は、第3レンズ群G3の最もアイポイント側に位置するレンズの形状を規
定するものである。条件式(4)を満足することにより、長いアイレリーフを確保しつつ
、第2レンズ群G2を用いて視度調整したときの視度調整範囲内で良好な球面収差とコマ
収差を確保することができる。条件値(4)の下限値を下回ると、長いアイレリーフの確
保が困難になり、視度調整範囲内での球面収差とコマ収差の変動が大きくなり、収差性能
が劣化する。条件値(4)の上限値を下回ると、第3レンズ群G3の最もアイポイント側
に位置するレンズの曲率半径がきつくなり、外光が反射して目に入りやすくなるため、好
ましくない。
【0030】
本実施形態に係る接眼レンズは、次の条件式(5)を満足することが望ましい。
【0031】
0.00 < d3/TL < 0.25 …(5)
但し、
d3:第3レンズ群G3の光軸上の厚み。
【0032】
条件式(5)は、第3レンズ群G3の光軸上での厚みを規定するものである。視度調整
に伴う、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2から第3レンズ群G3に入射する周辺光束
の第3レンズ群G3への入射角変動は非常に大きい。そのため、条件式(5)の上限値を
上回るように第3レンズ群G3の厚みを増すと、入射角変動による倍率色収差の変動も大
きくなり、好ましくない。条件式(5)を満足することにより、倍率色収差を良好に補正
することができる。
【0033】
上記効果を確実なものとするために、条件式(5)の下限値を0.05とすることがよ
り好ましい。
【0034】
本実施形態に係る接眼レンズは、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3にも非球面を
導入することが望ましい。第1レンズ群G1に非球面を導入することにより、歪曲収差の
補正が容易になる。また、第3レンズ群G3に非球面を導入することにより、第2レンズ
群G2に導入した場合と同様の効果、すなわち視度調整範囲での球面収差、コマ収差の補
正が容易になる。
【実施例】
【0035】
以下、本実施形態に係る各実施例について、図面に基づいて説明する。以下に、表1〜
表3を示すが、これらは第1実施例〜第3実施例における各諸元の表である。
【0036】
表中の[全体諸元]において、Yは観察物体高を、TLはレンズ全長を示す。
【0037】
表中の[レンズ諸元]において、面番号は光線の進行する方向に沿った観察物体側から
の光学面の順序を、Rは各光学面の曲率半径を、Dは各光学面から次の光学面(又は像面
)までの光軸上の距離である面間隔を、ndはレンズの材質のd線(波長587.56nm)に対
する屈折率を、νdはレンズの材質のd線(波長587.56nm)を基準とするアッベ数を、(
可変)は可変の面間隔を、曲率半径Rの欄の「∞」は平面を、E.Pはアイポイントを示
す。レンズ面が非球面である場合には面番号に*印を付し、曲率半径Rの欄には近軸曲率
半径を示す。
【0038】
表中の[非球面データ]は、[レンズ諸元]に示した非球面について、その形状を次式
(a)で示す。X(y)は非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位
置までの光軸方向に沿った距離を、Rは基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)を、κは円
錐定数を、Aiは第i次の非球面係数を示す。「E-n」は、「×10-n」を示す。例えば
、1.234E-05=1.234×10-5である。
【0039】
X(y)=y2/[R×{1+(1−κ×y2/R21/2}]
+A4×y4+A6×y6+A8×y8 …(a)
【0040】
表中の[可変面間隔データ]において、fは接眼レンズの焦点距離を、Diは第i面の
可変の面間隔を示す。
【0041】
表中の[レンズ群データ]において、Gは群番号、群初面は各群の最も観察物体側の面
番号を、群焦点距離は各群の焦点距離を示す。
【0042】
表中の[条件式]において、上記の条件式(1)〜(5)に対応する値を示す。
【0043】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、そ
の他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例
縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。単位は「mm」
に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0044】
視度の単位は「m-1」である。視度X「m-1」とは、接眼レンズによる像がアイポイン
トから光軸上に1/X[m(メートル)]の位置にできる状態を示す(但し、符号は、像
が接眼レンズより観察者側にできた時を正とする)。
【0045】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での説明を省略する。
【0046】
(第1実施例)
第1実施例について、図1、図2及び表1を用いて説明する。図1は、第1実施例の接
眼レンズに係るレンズ構成図(視度−1[m-1]時)を示したものである。なお、図中で
は正立系Pについて展開した状態で示しているが、実際にはペンタプリズム等の正立系を
想定している。
【0047】
図1に示すように、第1実施例に係る接眼レンズは、観察物体側から順に並んだ、負の
屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折
力を有する第3レンズ群G3とからなり、第2レンズ群G2は非球面を有し(第5面、第
6面)、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調整を行うように構
成されている。
【0048】
第1レンズ群G1は、観察物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1を有する。第
2レンズ群G2は、両凸レンズL2を有する。第3レンズ群G3は、観察物体側に凸面を
向けた負メニスカスレンズL3を有する。
【0049】
本実施例では、図1に示すように、焦点面F上の像を、正立系Pを介して正立像とした
後に、3つのレンズ群G1〜G3で構成した第1実施例の接眼レンズにより拡大し、観察
者がアイポイントE.Pで観察するようになっている。そして、第2レンズ群G2を光軸
に沿って移動させることにより、視度調整が可能である。
【0050】
下記の表1に、第1実施例における各諸元の値を示す。表1における面番号1〜9が、
図1に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。第1実施例では、第5面、第
6面が非球面形状に形成されている。
【0051】
(表1)
[全体諸元]
Y 14.5
TL 19.5

[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
1 ∞ 5.0 1.00000
2 ∞ 71.5 1.51680 64.20
3 ∞ 1.0 1.00000
4 163.85834 1.5 1.58518 30.24
*5 18.32862 D5(可変) 1.00000
*6 13.33611 6.5 1.53460 56.27
7 -42.01906 D7(可変) 1.00000
8 26.10282 3.0 1.49108 57.57
9 14.55433 D9(可変) E.P

[非球面データ]
第5面
κ=0.2198,A4=-3.72746E-06,A6=1.36623E-08,A8=-2.26420E-10
第6面
κ=-0.1796,A4=-4.51921E-06,A6=-1.60155E-08,A8=-9.92454E-11

[可変面間隔データ]
f 61.64 56.06 45.52
視度 -4.03 -1.00 7.98
D5 1.00 2.50 7.50
D7 7.50 6.00 1.00
D9 20.00 20.00 20.00

[レンズ群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 4 -35.40
G2 6 19.74
G3 8 -73.25

[条件式]
条件式(1) d2/TL = 0.33
条件式(2) f2/f = 0.35
条件式(3) ν2−ν1 = 26.03
条件式(4) S3 = 3.52
条件式(5) d3/TL = 0.15
【0052】
表1に示す諸元の表から、第1実施例に係る接眼レンズは、条件式(1)〜(5)を満
たすことが分かる。
【0053】
図2は、第1実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び
歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−4.0
[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+7.9[m-1]時の諸収差図を示す。
【0054】
各収差図において、Y1は正立系Pへの光線の入射高さを、Y0は焦点面F上での物体
高を示す。非点収差図では、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示
す。コマ収差図では、「min」は角度単位の「分」を示す。球面収差図と非点収差図で
は、それぞれ横軸の単位は[m-1]であり、図中では「D」で表す。また、CはC線(波
長656.28nm)、Dはd線(波長587.56nm)、FはF線(波長486.13nm)、GはG線(波長
435.84nm)における収差曲線を示す。後述する各実施例の収差図においても、本実施例と
同様の記号を用いる。
【0055】
図2(a)〜(c)に示す各収差図から明らかなように、第1実施例に係る接眼レンズ
は、視度調整範囲内で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能が確保されていることが
分かる。
【0056】
(第2実施例)
第2実施例について、図3、図4及び表2を用いて説明する。図3は、第2実施例の接
眼レンズに係るレンズ構成図(視度−1[m-1]時)を示したものである。なお、図中で
は正立系Pについて展開した状態で示しているが、実際にはペンタプリズム等の正立系を
想定している。
【0057】
図3に示すように、第2実施例に係る接眼レンズは、観察物体側から順に並んだ、負の
屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折
力を有する第3レンズ群G3とからなり、第2レンズ群G2は非球面を有し(第5面、第
6面)、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調整を行うように構
成されている。
【0058】
第1レンズ群G1は、両凹レンズL1を有する。第2レンズ群G2は、両凸レンズL2
を有する。第3レンズ群G3は、観察物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3を有
する。
【0059】
本実施例では、図3に示すように、焦点面F上の像を、正立系Pを介して正立像とした
後に、3つのレンズ群G1〜G3で構成した第2実施例の接眼レンズにより拡大し、観察
者がアイポイントE.Pで観察するようになっている。そして、第2レンズ群G2を光軸
に沿って移動させることにより、視度調整が可能である。
【0060】
下記の表2に、第2実施例における各諸元の値を示す。表2における面番号1〜9が、
図3に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。第2実施例では、第5面、第
6面が非球面形状に形成されている。
【0061】
(表2)
[全体諸元]
Y 14.5
TL 19.5

[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
1 ∞ 5.0 1.00000
2 ∞ 71.5 1.51680 64.20
3 ∞ 1.0 1.00000
4 -174.05687 1.5 1.58518 30.24
*5 38.04339 D5(可変) 1.00000
*6 18.82955 6.5 1.53460 56.27
7 -50.40237 D7(可変) 1.00000
8 22.42965 4.0 1.49108 57.57
9 15.87495 D9(可変) E.P

[非球面データ]
第5面
κ=1.4580,A4=3.29859E-06,A6=-4.06074E-08,A8=1.34991E-10
第6面
κ=-0.0600,A4=-1.78130E-06,A6=-2.44444E-08,A8=1.61192E-11

[可変面間隔データ]
f 61.68 58.12 52.66
視度 -3.40 -1.00 3.00
D5 1.0 2.9 6.5
D7 6.5 4.6 1.0
D9 20.0 20.0 20.0

[レンズ群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 4 -53.21
G2 6 26.50
G3 8 -138.44

[条件式]
条件式(1) d2/TL = 0.28
条件式(2) f2/f = 0.45
条件式(3) ν2−ν1 = 26.03
条件式(4) S3 = 5.84
条件式(5) d3/TL = 0.20
【0062】
表2に示す諸元の表から、第2実施例に係る接眼レンズは、条件式(1)〜(5)を満
たすことが分かる。
【0063】
図4は、第2実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び
歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3.4
[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+3.0[m-1]時の諸収差図を示す。
【0064】
図4(a)〜(c)に示す各収差図から明らかなように、第2実施例に係る接眼レンズ
は、視度調整範囲内で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能が確保されていることが
分かる。
【0065】
(第3実施例)
第3実施例について、図5、図6及び表3を用いて説明する。図5は、第3実施例の接
眼レンズに係るレンズ構成図(視度−1[m-1]時)を示したものである。なお、図中で
は正立系Pについて展開した状態で示しているが、実際にはペンタプリズム等の正立系を
想定している。
【0066】
図5に示すように、第3実施例に係る接眼レンズは、観察物体側から順に並んだ、負の
屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折
力を有する第3レンズ群G3とからなり、第2レンズ群G2は非球面を有し(第5面、第
6面)、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調整を行うように構
成されている。
【0067】
第1レンズ群G1は、両凹レンズL1を有する。第2レンズ群G2は、両凸レンズL2
を有する。第3レンズ群G3は、観察物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3を有
する。
【0068】
本実施例では、図5に示すように、焦点面F上の像を、正立系Pを介して正立像とした
後に、3つのレンズ群G1〜G3で構成した第3実施例の接眼レンズにより拡大し、観察
者がアイポイントE.Pで観察するようになっている。そして、第2レンズ群G2を光軸
に沿って移動させることにより、視度調整が可能である。
【0069】
下記の表3に、第3実施例における各諸元の値を示す。表3における面番号1〜9が、
図5に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。第3実施例では、第5面、第
6面が非球面形状に形成されている。
【0070】
(表3)
[全体諸元]
Y 14.5
TL 19.5

[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
1 ∞ 5.0 1.00000
2 ∞ 71.5 1.51680 64.20
3 ∞ 1.0 1.00000
4 -120.00000 1.5 1.84666 23.78
*5 78.52696 D5(可変) 1.00000
*6 19.00000 6.5 1.53460 56.27
7 -44.02515 D7(可変) 1.00000
8 30.00000 2.0 1.49108 57.57
9 18.18745 D9(可変) E.P

[非球面データ]
第5面
κ=1.0000,A4=7.57095E-06,A6=-6.55407E-08,A8=2.11444E-10
第6面
κ=1.4573,A4=-3.24370E-05,A6=-7.60700E-08,A8=-2.81338E-10

[可変面間隔データ]
f 64.39 60.00 54.28
視度 -4.32 -1.03 3.98
D5 0.5 3.5 9.0
D7 9.0 6.0 0.5
D9 20.0 20.0 20.0

[レンズ群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 4 -55.86
G2 6 25.75
G3 8 -99.61

[条件式]
条件式(1) d2/TL = 0.43
条件式(2) f2/f = 0.43
条件式(3) ν2−ν1 = 32.49
条件式(4) S3 = 4.07
条件式(5) d3/TL = 0.10
【0071】
表3に示す諸元の表から、第3実施例に係る接眼レンズは、条件式(1)〜(5)を満
たすことが分かる。
【0072】
図6は、第3実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び
歪曲収差)であり、(a)は視度−1.0[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−4.3
[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+3.9[m-1]時の諸収差図を示す。
【0073】
図6(a)〜(c)に示す各収差図から明らかなように、第3実施例に係る接眼レンズ
は、視度調整範囲内で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能が確保されていることが
分かる。
【0074】
以上のような本発明によれば、球面収差やコマ収差など、視度調整範囲内で諸収差が良
好に補正された接眼レンズを提供することができる。
【0075】
本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明が
これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する
第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
前記第2レンズ群は少なくとも1つの非球面を有し、
前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより視度調整が可能であり、
以下の条件式を満足することを特徴とする接眼レンズ。
0.25 < d2/TL < 0.50
0.3 < f2/f < 0.6
但し、
d2:前記第2レンズ群の視度調整時の光軸上での移動距離、
TL:前記接眼レンズの総厚(前記第1レンズ群の最も観察物体側のレンズ面から前記
第3レンズ群の最もアイポイント側のレンズ面までの光軸上の距離)、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離、
f:−1[m-1]時の前記接眼レンズの焦点距離。
【請求項2】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とは、それぞれ単レンズから構成され、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の接眼レンズ。
20.00 < ν2−ν1
但し、
ν1:前記第1レンズ群を構成する前記単レンズのd線を基準とするアッベ数、
ν2:前記第2レンズ群を構成する前記単レンズのd線を基準とするアッベ数。
【請求項3】
前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズの形状因子をS3としたとき
、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の接眼レンズ。
3 < S3 < 6
但し、
S3=(Rs+Re)/(Rs−Re)で定義され、
Rs:前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズの観察物体側の面の曲
率半径、
Re:前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズのアイポイント側の面
の曲率半径。
【請求項4】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の接眼レ
ンズ。
0.00 < d3/TL < 0.25
但し、
d3:前記第3レンズ群の光軸上の厚み。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105102(P2013−105102A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250017(P2011−250017)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】