説明

接着剤充填用のシートおよびそれを用いた電子装置の製造方法、製造装置

【課題】実装基板と電子部品との空間部を接着剤で充填する際に、ボイドの発生と、電子部品裏面への接着剤付着と、電子部品外周位置における接着剤隆起を同時に防止した接着剤充填用のシートおよびそれを用いた電子装置の製造方法、製造装置を提供する。
【解決手段】電子装置は、実装基板2と、実装基板2に実装された電子部品3との間の空間部を充填する接着剤5を、シート11の一面側に塗布する工程と、減圧下で、シート11の一面側を実装基板2に実装された電子部品3の裏面に接触させると共に、接着剤5を電子部品3の外縁部に接触させて接着剤5を空間部に充填させる工程と、シート11を電子部品3に接触させた状態で、減圧下から大気圧下に戻した後、シート11の他面側に加熱ヘッドを押し付けて、該加熱ヘッドによりシート11を介して電子部品3を加熱し、接着剤5を硬化させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部に接着剤を充填するシートおよびそれを用いた電子装置の製造方法、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部が接着剤で充填される電子装置の例として、実装用の配線基板に、半導体チップをフリップチップ接続する半導体装置等が挙げられる。
【0003】
従来、そのような電子装置の空間部に接着剤を充填する場合には、図15に示すように、ホットプレート111上で実装基板102を加熱しながら接着剤105をニードル112から実装基板102と電子部品103との間の空間部104の近傍に供給し、いわゆる毛細管現象により空間部104を充填する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上記の方法によって空間部が接着剤で充填される電子装置において、接着剤の未充填部の発生に起因する接着力の低下等によって、装置の信頼性が低下する課題が生じていた。より具体的には、スタッドバンプや配線の間にボイド(充填時に接着剤内に巻き込まれた気泡)が存在した場合は、マイグレーションにより隣接配線との短絡が発生してしまう等の問題が生じ得るため、特に、近年の配線ピッチが微細化している状況下において、より一層の配線間ボイド対策が重要となっている。
【0005】
ここで、接着剤充填時のボイド発生を抑制することが可能な従来の電子装置の製造方法として、図16により説明される製造方法が提案されている(特許文献1参照)。その方法によれば、半導体チップ220の一方の主面222に2次元状に形成された複数の電極224を、基板230上の対応する導電性領域232、234に接合するステップと、真空雰囲気中で、半導体チップの一方の主面と基板との間に接着剤(アンダーフィル用樹脂)240を供給するステップと、接着剤240が供給された半導体チップおよび基板を大気中に露出するステップとを有する構成を備えて、接着剤内のボイドの発生を抑制し、信頼性の高いフリップチップ実装を実現した半導体装置の製造を可能とするものである。
【0006】
【特許文献1】特開2007−103772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、図17に示すように、実装基板302に、半導体チップ303をフリップチップ接続させ、さらに半導体チップ303の上にメモリーチップ等(図中306a、306b)をスタックして構成される電子装置も多く用いられている。そのような電子装置においては、実装基板302と半導体チップ303との間の空間部304を接着剤305で充填する際に接着剤305内に巻き込まれるボイド対策も当然に重要であると同時に、メモリーチップ等がスタックされる半導体チップ303の裏面303aに当該接着剤が付着することによって(図中305a、305b)、スタックが困難となる障害を防止する対策が重要となる。さらには、図18に示すように、半導体チップ303の裏面303aの外周位置において、前記接着剤305が半導体チップ303の裏面303aの高さ以上に隆起することによって(図中305c、305d)、接着剤硬化用の加熱を行なう加熱ヘッド308を半導体チップ303の裏面303aに接触させることが困難となる障害を防止する対策も重要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、実装基板と電子部品との間の空間部が接着剤で充填される電子装置を製造するに際し、接着剤の充填時に生じ得るボイドの解消と、電子部品の裏面への接着剤の付着防止と、電子部品の外周位置における接着剤の隆起防止という課題を同時に解決することが可能な接着剤充填用のシートおよびそれを用いた電子装置の製造方法、製造装置を提供することを目的とする。また、それにより、電子装置の不良品率を低下させて、品質を高度に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る電子装置の製造方法は、実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部を充填する接着剤を、シートの一面側に塗布する工程と、減圧下で、前記シートの一面側を前記実装基板に実装された電子部品の裏面に接触させると共に、前記接着剤を前記電子部品の外縁部に接触させて該接着剤を前記空間部に充填させる工程と、前記シートを前記電子部品に接触させた状態で、減圧下から大気圧下に戻した後、前記シートの他面側に加熱ヘッドを押し付けて、該加熱ヘッドにより前記シートを介して前記電子部品を加熱し、前記接着剤を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記シートは、半田融点以上の耐熱性を有し、且つ硬化した前記接着剤が接着しない材料を用いて構成され、前記シートの一面側の中央位置に前記電子部品の裏面よりも若干広い平面状に形成される部品被覆面と、前記部品被覆面の外周位置における少なくとも1辺に、該部品被覆面よりも高く形成される塗布用段差部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記減圧は、160Torr以下の状態であることを特徴とする。
【0013】
また、前記接着剤を前記空間部に充填させる工程は、前記実装基板および前記電子部品の少なくとも一方を50〜150℃程度に加熱しながら実施することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電子装置の製造装置は、電子部品が実装された実装基板が収容可能であると共に減圧可能に構成される容器内に、一面側に塗布された接着剤を、前記電子部品と前記実装基板との間の空間部に充填するシートと、前記シートを前記電子部品および前記実装基板の上方位置で、前記一面側を下方に向けて該電子部品および該実装基板と離間させて保持可能であると共に、前記シートを前記電子部品および前記実装基板の所定位置に向けて降下させ、接触させるシート降下機構とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記実装基板の温調が可能な温調ステージを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るシートは、一面側に塗布された接着剤を、実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部に充填するシートであって、半田融点以上の耐熱性を有し、且つ硬化した前記接着剤が接着しない材料を用いて構成され、前記一面側の中央位置に前記電子部品の裏面よりも若干広い平面状に形成される部品被覆面と、前記部品被覆面の外周位置における少なくとも1辺に、該部品被覆面よりも高く形成される塗布用段差部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項5によれば、シートを用いることによって、電子部品の裏面への接着剤の付着を防止することが可能となると共に、電子部品の外周部において、電子部品の裏面高さ以上に、接着剤が隆起することを防止することが可能となる。さらに、減圧下での充填が可能となるため、ボイドが生じても、その縮小、消滅を図ることが可能となる。
【0018】
請求項2および請求項7によれば、シートは、部品被覆面を備えて、電子部品の裏面への接着剤の付着を防止することが可能となり、また、塗布用段差部を備えて、接着剤をシート上に保持し易くするとともに、実装基板および電子部品の所定位置に接触させて、空間部に接着剤を充填することが可能となる。
【0019】
請求項3によれば、空間部に充填する接着剤内に生じ得るボイドを、接合不良等の原因とならない大きさまで縮小、消滅させることが可能となる。
【0020】
請求項4および請求項6によれば、接着剤を適温に加熱保持することによって、当該接着剤の粘度を低下させて空間部への充填を促進させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1〜図8は、本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。なお、図2は、本発明の実施の形態に係るシートの例を示す概略図を兼ねている。図9は、本発明の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。図10は、本発明の第二の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。図11は、本発明の第三の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。図12は、本発明の第二の実施の形態に係るシートの例を示す概略図である。図13は、本発明の第三の実施の形態に係るシートの例を示す概略図である。図14は、本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の手順を示すフローチャートである。なお、図面の符号に関して、符号7は符号7a、7bの総称として用いる。
【0022】
電子装置の製造装置1(図9参照)は、実装基板2と、実装基板2に実装された電子部品3との間の空間部4に接着剤5を充填して、電子装置10(図8参照)を製造する装置である。そのような実装および電子装置の例として、実装基板2(実装用の配線基板)に、電子部品3(半導体チップ)をフリップチップ接続して構成される半導体装置等が挙げられる。その際の空間部4における実装基板2と電子部品3との距離は、一例として10〜20μm程度である。
【0023】
図9に示すように、電子装置の製造装置1は、減圧機構22により減圧可能に構成される容器21を備える。容器21内には、電子部品3が実装された実装基板2が収容可能であり、また、シート11と、該シート11を所定位置に保持可能であると共に、電子部品3が実装された実装基板2の所定位置に向けて降下させ、接触させるシート降下機構20と、温調ステージ23とを備える。
【0024】
まず、シート11について説明する。シート11は、その一面側11aに所定量、塗布された接着剤を、前記電子部品と前記実装基板との間の空間部に充填するためのものである。一例として、図2に示すように、一面側11aの中央位置に電子部品3の上面よりも若干広い平面状に形成される部品被覆面12と、その部品被覆面12の外周位置における少なくとも1辺に、部品被覆面12よりも高く形成(図2(b)参照)される塗布用段差部13とを備える。ここで、本実施例においては、4辺全てに塗布用段差部13を設ける構成とした。なお、シート11は、半田融点以上の耐熱性を有し、且つ硬化した接着剤5が接着しない材料、例えば、テフロン(登録商標)に代表される合成樹脂材料等を用いて構成される。
【0025】
また、図12は、シート11の第二の実施形態である。部品被覆面12’の外周位置における少なくとも1辺(本実施例においては4辺)に塗布用段差部13’を設ける構成とした。なお、塗布用段差部13’は断面が突起状の形状としている。
【0026】
さらに、図13は、シート11の第三の実施形態である。部品被覆面12’’の外周位置における少なくとも1辺(本実施例においては4辺)に塗布用段差部13’’を設ける構成とした。なお、塗布用段差部13’’は断面が突起状で且つ中央に窪みを備える形状としている。
【0027】
なお、上記図2、図12および図13はいずれも、ニードル42によって供給される接着剤5が、それぞれ塗布用段差部13、13’ および13’’に塗布された状態として図示している。
【0028】
続いて、電子装置の製造装置1のシート降下機構20について説明する。
図9に示すように、シート降下機構20は、保持機構24および解放機構26を備えて構成される。ここで、保持機構24は、シート11を、電子部品3および実装基板2の上方位置において、一面側11aを下方に向けて当該電子部品3および実装基板2と離間させて保持可能に構成される。一例として、図9に示すような矩形部材により構成する。また、解放機構26は、容器21の外部から間接的に前記保持機構24によるシート11の保持を解放可能に構成される。一例として、図9に示すように、保持機構24に連結した第一のシャフト27と、一対の磁力吸着機構28aおよび28bの一方(本実施例では容器21内の28a)に連結した第二のシャフト31とを、回転可能に設けた伝達部29の両端部にそれぞれ連結すると共に、一対の磁力吸着機構28aおよび28bが吸着しているときに、バネ部材30によって伝達部29を時計方向に回転させる付勢力が生じる構成を備えている(図9(a)参照)。
【0029】
上記構成の作用として、一対の磁力吸着機構28aおよび28bにおける吸着が解放されると、バネ部材30の付勢力により、伝達部29が時計方向に回転して、第一のシャフト27によって保持機構24が牽引され、シート11の保持を解放する方向に移動する(図9(b)参照)。
【0030】
なお、電子装置の製造装置1は、ガイド機構25を備える。ガイド機構25は、解放機構26によって、シート11の保持が解放された際に、シート11が電子部品3および実装基板2の所定位置に向けて降下・接触するようにガイドを行う作用を生じる。一例として、図9に示すように、ガイド機構25は、ピン状に形成されて、シート11に設けられるガイド孔11cおよび実装基板2に設けられるガイド孔2cを貫通させて上記ガイド機能を生じさせる。
【0031】
また、シート降下機構20の第二の実施形態を図10に示す。保持機構24’に関して、電子部品3側(図中左側)の端面24’aを傾斜面に形成することによって、電子部品3を該傾斜面に沿わせながら降下させることが可能となる。その結果、保持機構24’の水平方向移動速度・位置を制御することによって、電子部品3の降下速度・位置を制御することが可能となる。また、解放機構26’は、容器21の外部から直接的に保持機構24’によるシート11の保持を解放可能に構成される。一例として、図10に示すように、保持機構24’に連結したシャフト37を設け、これを容器21の壁面に設けた滑りガイド36によって摺動可能に支持する。容器21内を減圧状態にして使用するため、例えば、シャフト37には金属材料を、滑りガイド36には合成樹脂材料を用いて形成し、滑りガイド36内におけるシャフト37の摺動性を確保すると共に、摺動部での気密の保持が可能な構成とする(図10(a)参照)。
【0032】
上記構成の作用として、シャフト37を図中右方向へ移動させることによって保持機構24’が牽引され、シート11の保持を解放する方向に移動する(図10(b)参照)。なお、前記第一の実施形態と同様のガイド機構25を設けてもよい。
【0033】
またシート降下機構20の第三の実施形態を図11に示す。本実施例における保持機構24’’は、ゴム等の弾性部材で形成される支持部38によって、支持シャフト39を支持する構成を備える。このとき、支持シャフト39は支持部38を支点として先端が弧を描くように動作する。その結果、支持シャフト39は、電子部品3を支持しながら降下させることが可能となる。また、第一および第二の実施形態に係る解放機構26および26’を設けない構成が可能となる。なお、前記第一の実施形態と同様のガイド機構25を設けてもよい。
【0034】
続いて、電子装置の製造装置1の温調ステージ23について説明する(図9等参照)。
一例として、温調ステージ23は、上面に実装基板2を載置可能であると共に、所定の温度で加熱可能に構成される。一例として、電熱線ヒータ内蔵による加熱方式が考えられる。加熱温度は、接着剤5の材質により相違するが、接着剤5の粘度を低下させて空間部4への充填を促進させる温度(例えば、50〜150℃程度)に設定する。
【0035】
次に、本発明に係る電子装置の製造方法について説明する。図14は、そのフローチャートである。
電子装置10は、一例として、実装基板2(実装用実装基板)に、電子部品3(半導体チップ)をフリップチップ接続して、その空間部4に接着剤5を充填して形成される装置である(図8参照)。この製造方法は、例えば、図9等に示すような電子装置の製造装置1を用いて、電子部品3が実装された実装基板2の空間部4に接着剤5を充填することによって電子装置10の製造を行うものである。
【0036】
先ず、前工程において、実装基板2に電子部品3を実装する。一例として、実装基板2(実装用の配線基板)に、電子部品3(半導体チップ)をフリップチップ接続する(図1参照)。本実施例においては、電子部品3に複数のスタッドバンプ6が設けられ、それぞれ、対応する実装基板2上の接続パッド2aと接続される。なお、接続ピッチ50μm以下の微細形状にも対応し得る。
【0037】
次いで、図2に示すように、ニードル42から電子部品3が実装された実装基板2の空間部4を充填するための接着剤5を供給して、シート11の一面側11aの塗布用段差部13に、所定量、塗布する工程(ステップS1)を実施する。なお、空間部4への接着剤5の充填は、電子部品3の外縁部の1辺もしくは直交する2辺から行うことが好適であるが、本実施例では、直交する2辺から充填を行う場合の接着剤5の塗布態様について図示している(図2(a)参照)。
【0038】
次いで、図3に示すように、容器21内に、電子部品3が実装された実装基板2およびシート11を収容する。このとき、シート11を、電子部品3および実装基板2の上方位置で、接着剤5が塗布された一面側11aを下方に向けて電子部品3および実装基板2と離間させて一時的に保持する工程(ステップS2)を実施する。
【0039】
その状態で、減圧機構22により、容器21内を減圧する工程(ステップS3)を実施する。なお、後述の作用効果を奏するように、当該減圧環境として、容器21内圧力が160Torr(約21.3kPa)程度以下になるように減圧することが好適である。
【0040】
また、併せて、温調ステージ23を加熱することによって、電子部品3が実装された実装基板2を所定温度に加熱・保持を行なう。前述のように、接着剤5の材質等によって相違するが、一例として、実装基板2が50〜150℃程度となるように設定する。
【0041】
次いで、図4に示すように、シート降下機構20(図9等参照)等を用いることによって、シート11の一面側11aに塗布された接着剤5が、実装基板2および電子部品3の所定位置に接触するように、シート11を降下させる工程(ステップS4)を実施する。このとき、電子部品3の外縁部3bに接着剤5を接触させて、実装基板2と電子部品3との間隔は非常に狭いことに起因して生じるいわゆる毛細管現象によって、接着剤5を空間部4に自然充填させる。したがって、空間部4の高さ寸法、接着剤5の量等の条件に応じて適当に接触位置の設定を行う。
【0042】
また、併せて、シート11の一面側11aの部品被覆面12を実装基板2に実装された電子部品3の裏面3aに接触させる。ここで、裏面3aとは、スタッドバンプ6が設けられている面と反対側の面である。
【0043】
ここで、前記接着剤5が空間部4に充填される工程において、例えば、図5に示すように未充填部であるボイドが生じ得る(図中7a、7b)。
【0044】
しかしながら、続いて、接着剤5が空間部4に充填された電子装置10を、減圧下から大気圧下に戻す工程(ステップS5)を実施することによって、図6に示すように、空間部4に生じたボイド7を縮小、消滅させる作用効果が生じる。具体的には、例えば、160Torrの減圧下で生じたボイド7の体積は、大気圧下すなわち760Torr(約101.3kPa)に戻すことによって、160/760すなわち約20%程度まで縮小される。このようにして、ボイド7を接合不良等の原因とならない程度の大きさまで縮小、消滅させることが可能となる。なお、大気圧戻しは、容器21内への大気導入により行われるが、さらに、電子装置10を容器21から取り出して次工程へ進めてもよい。
【0045】
次いで、図7に示すように、シート11の他面側11bに加熱ヘッド41を押し付けて、加熱ヘッド41によりシート11を介して電子部品3を加熱することによって、接着剤5を硬化させる工程(ステップS6)を実施する。
【0046】
最後に、図8に示すように、電子部品3の裏面3aから、シート11を剥離させる工程(ステップS7)を実施する。
【0047】
以上、本発明に係る電子装置の製造方法によれば、シート11の一面側11aの中央位置に電子部品3の裏面3aよりも若干広い平面状に形成される部品被覆面12が設けられて、実装基板2に実装された電子部品3の裏面3aに当該部品被覆面12を接触させて、当該裏面3aを被覆させた状態で、空間部4への接着剤5の充填が行われるため、従来の課題であった、電子部品3の裏面3aへ接着剤5が付着してしまうことを防止することが可能となる。その結果、電子部品3の裏面3a上にさらに別の部品(例えばメモリー等)をスタックする際に、不要な接着剤が存在することに起因してスタックが困難になってしまうという障害を防止することが可能となる。
【0048】
また、上記のように空間部4への接着剤5の充填時にシート11を用いることによって、電子部品3の外周部において、電子部品3の裏面3aの高さ以上に、接着剤5が隆起してしまうことを防止することが可能となる。その結果、加熱ヘッド41が接着剤の隆起部分に接触することに起因して本来接触すべき電子部品3の裏面3a位置まで降下させることができず、電子部品3の加熱が不可能になってしまうという従来の課題を解消することが可能となる。
【0049】
さらに、減圧環境下で、実装基板2と、実装基板2に実装された電子部品3との間の空間部4に接着剤5を充填することが可能となるため、仮にボイド7が生じた場合であっても、その縮小、消滅を図ることが可能となる。その結果、特に配線ピッチが微細化している電子装置であっても、配線間のボイドを著しく低減させることが可能となる。
【0050】
以上の説明の通り、本願発明に係る接着剤充填用のシートおよびそれを用いた電子装置の製造方法、製造装置によれば、実装基板と電子部品との間の空間部が接着剤で充填される電子装置を製造するに際し、接着剤の充填時に生じ得るボイドの解消と、電子部品の裏面への接着剤の付着防止と、電子部品の外周位置における接着剤の隆起防止という複数の課題を同時に解決することが可能となる。また、それにより、電子装置の不良品率を低下させて、品質を高度に保つことが可能となる。
【0051】
なお、フリップチップ接続による電子装置を例にとり説明をしたが、本発明の技術的思想を、ワイヤボンディング接続による電子装置等に適用することももちろん可能である。
【0052】
さらに、上記の電子装置の製造方法は、狭間隔の空間部への接着剤の充填方法にも応用することが可能であり、ボイドの巻き込みが防止された優れた接着剤充填方法を提供することが可能となる。
【0053】
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。
【図11】本発明の第三の実施の形態に係る電子装置の製造装置の例を示す概略図である。
【図12】本発明の第二の実施の形態に係るシートの例を示す概略図である。
【図13】本発明の第三の実施の形態に係るシートの例を示す概略図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る電子装置の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図15】従来の実施の形態に係る電子装置の製造方法の例を説明するための概略図である。
【図16】従来の実施の形態に係る電子装置の製造方法の他の例を説明するための概略図である。
【図17】従来の実施の形態に係る電子装置の製造方法における課題を説明するための概略図である。
【図18】従来の実施の形態に係る電子装置の製造方法における課題を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電子装置の製造装置
2 実装基板
3 電子部品
4 空間部
5 接着剤
6 スタッドバンプ
7、7a、7b ボイド
10 電子装置
11 シート
12、12’、12’’ 部品被覆面
13、13’、13’’ 塗布用段差部
20 シート昇降機構
21 容器
22 減圧機構
23 温調ステージ
24、24’、24’’ 保持機構
25 ガイド機構
26、26’、26’’ 解放機構
41 加熱ヘッド
42 ニードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部を充填する接着剤を、 シートの一面側に塗布する工程と、
減圧下で、前記シートの一面側を前記実装基板に実装された電子部品の裏面に接触させると共に、前記接着剤を前記電子部品の外縁部に接触させて該接着剤を前記空間部に充填させる工程と、
前記シートを前記電子部品に接触させた状態で、減圧下から大気圧下に戻した後、前記シートの他面側に加熱ヘッドを押し付けて、該加熱ヘッドにより前記シートを介して前記電子部品を加熱し、前記接着剤を硬化させる工程とを備えること
を特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記シートは、半田融点以上の耐熱性を有し、且つ硬化した前記接着剤が接着しない材料を用いて構成され、
前記シートの一面側の中央位置に前記電子部品の裏面よりも若干広い平面状に形成される部品被覆面と、
前記部品被覆面の外周位置における少なくとも1辺に、該部品被覆面よりも高く形成される塗布用段差部とを備えること
を特徴とする請求項1記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記減圧は、160Torr以下の状態であること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤を前記空間部に充填させる工程は、
前記実装基板および前記電子部品の少なくとも一方を50〜150℃程度に加熱しながら実施すること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
電子部品が実装された実装基板が収容可能であると共に減圧可能に構成される容器内に、
一面側に塗布された接着剤を、前記電子部品と前記実装基板との間の空間部に充填するシートと、
前記シートを前記電子部品および前記実装基板の上方位置で、前記一面側を下方に向けて該電子部品および該実装基板と離間させて保持可能であると共に、前記シートを前記電子部品および前記実装基板の所定位置に向けて降下させ、接触させるシート降下機構とを備えること
を特徴とする電子装置の製造装置。
【請求項6】
前記実装基板の温調が可能な温調ステージを備えること
を特徴とする請求項5記載の電子装置の製造装置。
【請求項7】
一面側に塗布された接着剤を、実装基板と、該実装基板に実装された電子部品との間の空間部に充填するシートであって、
半田融点以上の耐熱性を有し、且つ硬化した前記接着剤が接着しない材料を用いて構成され、
前記一面側の中央位置に前記電子部品の裏面よりも若干広い平面状に形成される部品被覆面と、
前記部品被覆面の外周位置における少なくとも1辺に、該部品被覆面よりも高く形成される塗布用段差部とを備えること
を特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−49148(P2009−49148A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213218(P2007−213218)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】