説明

接着剤塗布装置および接着剤塗布装置の制御方法

【課題】媒体の種類に応じてより適切に接着剤を塗布する。
【解決手段】糊の吐出量が異なるドットパターンとして、用紙種A〜Cの紙厚や凹凸に応じて大ドット群の大きさが異なる糊形成パターンを設定し、設定した糊形成パターンが用紙の接着面に形成されるよう糊吐出ヘッドを制御するから、用紙に塗布される糊の量を用紙種に適したものとすることができる。これにより、用紙の種類に応じてより適切に接着剤を塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッドから媒体に接着剤を吐出してドット状に塗布する接着剤塗布装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接着剤塗布装置としては、接着剤を含有する液滴をインクジェット方式で吐出することにより媒体の接着面に接着剤を塗布するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、接着した際に輪郭部から接着剤がはみ出るのを抑制するため、接着面の中央部に比して輪郭部における単位面積当たりの接着剤の塗布量を少なくするものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の装置では、媒体の種類に拘わらず輪郭部の塗布量を中央部に比して一律に少なくするため、媒体の種類によっては適切に接着できないおそれがある。特に、媒体として紙が用いられる場合には、その種類によって厚みや平坦度,接着剤の浸透の度合いなどが大きく変化することがあるから、そのようなおそれが大きなものとなる。
【0005】
本発明の接着剤塗布装置およびその制御方法は、媒体の種類に応じてより適切に接着剤を塗布することを主目的とする。
【0006】
本発明の接着剤塗布装置およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接着剤塗布装置は、
吐出ヘッドから媒体に接着剤を吐出してドット状に塗布する接着剤塗布装置であって、
前記媒体の種類に応じて前記接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定するドットパターン設定手段と、
該設定されたドットパターンが前記媒体に形成されるよう前記吐出ヘッドを制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の接着剤塗布装置では、媒体の種類に応じて接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定し、設定したドットパターンが媒体に形成されるよう吐出ヘッドを制御する。これにより、用紙に塗布される接着剤の量を媒体の種類に適したものとすることができるから、媒体の種類に応じてより適切に接着剤を塗布することことができる。
【0009】
また、本発明の接着剤塗布装置において、前記ドットパターン設定手段は、複数のドットにより形成されるドット群が島状に配置されたパターンを用いて前記媒体の種類に応じて該ドット群の大きさを変えることにより前記ドットパターンを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、個々のドットを形成する接着剤の吐出量自体を変えるものに比して、簡易な処理でドットパターンを設定することができる。この態様の本発明の接着剤塗布装置において、前記ドットパターン設定手段は、前記媒体が凹凸の大きな種類になるほど前記ドット群の大きさが大きくなる傾向に前記ドットパターンを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、媒体の凹部に接着剤が集中するのを抑制することができるから、媒体の凹凸に応じてより適切に接着剤を塗布することができる。あるいは、この態様の本発明の接着剤塗布装置において、前記ドットパターン設定手段は、前記媒体が厚みの薄い種類になるほど前記ドット群の大きさが小さくなる傾向に前記ドットパターンを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、厚みの薄い媒体が接着剤の浸透を吸収しきれずにシワ状に変形するのを抑制することができるから、媒体の厚みに応じてより適切に接着剤を塗布することができる。また、これらの態様の本発明の接着剤塗布装置において、前記ドットパターン設定手段は、前記ドットの数を複数段に変化させた複数段の大きさのドット群を用いて少なくとも1つの段のドット群を形成するドットの数を前記媒体の種類に応じて変えることにより前記ドットパターンを設定する手段であるものとすることもできる。
【0010】
そして、本発明の接着剤塗布装置において、前記ドットパターン設定手段は、前記媒体の種類と前記ドットパターンとの予め定められた対応関係を用いて該媒体の種類に応じたドットパターンを導出することにより前記ドットパターンを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、ドットパターンを迅速に設定することができる。
【0011】
本発明の接着剤塗布装置の制御方法は、
吐出ヘッドから媒体に接着剤を吐出してドット状に塗布する接着剤塗布装置の制御方法であって、
(a)前記媒体の種類に応じて前記接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定するステップと、
(b)該設定されたドットパターンが前記媒体に形成されるよう前記吐出ヘッドを制御するステップと
を含むことを要旨とする。
【0012】
この本発明の接着剤塗布装置の制御方法では、媒体の種類に応じて接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定し、設定したドットパターンが媒体に形成されるよう吐出ヘッドを制御する。これにより、用紙に塗布される接着剤の量を媒体の種類に適したものとすることができるから、媒体の種類に応じてより適切に接着剤を塗布することができる。なお、この接着剤塗布装置の制御方法において、上述した接着剤塗布装置の種々の態様を採用してもよいし、上述した接着剤塗布装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製本システム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】印刷装置30と糊塗布装置50との構成の概略の一例を示す構成図。
【図3】製本システム10における各工程の一例を示す説明図。
【図4】糊塗布処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】用紙種と糊形成パターンとの対応関係の一例を示す説明図。
【図6】糊形成パターンの作成の傾向を示す説明図。
【図7】変形例の糊形成パターンの一例を示す説明図。
【図8】変形例の糊形成パターンの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である糊塗布装置50を含む製本システム10の構成の概略の一例を示す構成図であり、図2は、製本システム10における印刷装置30と糊塗布装置50との構成の概略を示す構成図であり、図3は、製本システム10における各工程の一例を示す説明図である。本実施形態の製本システム10は、図1,2に示すように、給紙された用紙Sの表(画像形成面)に写真などの画像を印刷する印刷工程(各工程については図3参照)を行なう印刷装置30と、印刷後の用紙Sを反転しその裏(接着面)に糊を塗布して接着面同士を貼り合わせる糊塗布工程を行なう糊塗布装置50と、接着面同士が貼り合わされた用紙Sを表紙と組み合わせてフォトブックPBに製本する製本工程を行なう製本装置70と、システム全体を制御するコンピューター80とを備える。なお、本実施形態では、奇数枚目の用紙Sの接着面と偶数枚目の用紙Sの接着面とを貼り合わせるものとした。また、図2中、印刷装置30の各構成は一点鎖線で囲み、糊塗布装置50の各構成は点線で囲んだ。
【0015】
印刷装置30は、図1に示すように、図示しないCPUやROM,RAMなどを有し装置全体を制御する印刷制御部32と、3種類の用紙Sのセットが可能な3つの給紙トレイ33a〜33cや各給紙トレイに設けられた給紙ローラー34a〜34c(図2参照)などを有し用紙Sを給紙する給紙機構34と、給紙機構34により給紙された用紙Sにインクジェット方式でインクを吐出する印刷機構40とを備える。なお、3種類の用紙Sは、光沢のある写真用紙や絹目調の写真用紙,マット紙などの用紙種A,B,Cとする。これらの用紙種A,B,Cは、用紙サイズや紙厚,波状の凹凸が異なり、本実施形態では、紙厚は用紙種Aが薄く用紙種B,Cが厚いものとし、凹凸は用紙種A,Bが小さく用紙種Cが大きいものとした。
【0016】
印刷制御部32は、コンピューター80と通信可能に接続され、コンピューター80からの印刷指示を受信したり、コンピューター80に印刷状況を送信したりする。この印刷制御部32は、受信した印刷指示に含まれる用紙Sの種類の指定に基づいて給紙トレイ33a〜33cのうち指定された種類の用紙Sがセットされているトレイから用紙Sを給紙するよう給紙機構34を制御したり、印刷指示に含まれる印刷データに基づいて用紙Sに印刷処理を実行するよう印刷機構40を制御したりする。
【0017】
印刷機構40は、図2に示すように、メカフレーム40aの図中右側に配置されたキャリッジモーター43aと、メカフレーム40aの図中左側に配置された従動ローラー43bと、キャリッジモーター43aと従動ローラー43bとに左右方向(主走査方向)にループ状に架け渡されたキャリッジベルト43と、キャリッジモーター43aの駆動に伴ってキャリッジベルト43により駆動されガイド42に沿って左右に往復するキャリッジ41と、キャリッジ41にシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のインクを図示しないチューブを介して供給するインクカートリッジ44と、各インクカートリッジ44から供給された各インクに圧力をかけて図示しない複数のノズルから用紙Sに向けてインクを吐出する印刷ヘッド45と、主走査方向に直交する副走査方向に用紙Sを搬送する搬送ローラー46と、搬送ローラー46を駆動させる駆動モーター46aと、図示しないモーターにより駆動され印刷された用紙Sを糊塗布装置50側に排紙する排紙ローラー47とを備える。なお、印刷ヘッド45は、吐出されるインクにより形成されるドット密度が例えば720dpiや1440dpiなどとなるよう図示しない複数のノズルが形成され、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧して各ノズルから吐出する方式を採用するものとしたが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。。
【0018】
糊塗布装置50は、図1に示すように、図示しないCPUやROM,RAMなどを有し装置全体を制御する糊塗布制御部52と、複数の反転用ローラー54a〜54e(図2参照)や図示しないガイドローラーなどを有し印刷装置30で印刷された用紙Sの表裏を反転する反転機構54と、反転機構54により反転された用紙Sにインクジェット方式と同様な方式で液状の糊を吐出して塗布する糊塗布機構60と、糊塗布機構60により糊が塗布された用紙Sの接着面同士を貼り合わせる貼合機構56とを備える。
【0019】
糊塗布制御部52は、コンピューター80と通信可能に接続され、コンピューター80からの糊塗布指示を受信したり、コンピューター80に糊塗布状況を送信したりする。なお、糊塗布指示にも印刷指示と同様に用紙Sの種類の指定が含まれるものとする。この吐出制御部52は、糊塗布指示を受信すると、印刷された用紙Sの表裏を反転して用紙Sを1枚ずつ糊塗布機構60に供給するよう反転機構54を制御したり、反転された用紙Sの接着面に糊を塗布するよう糊塗布機構60を制御したり、糊が塗布された用紙Sの接着面同士を貼り合わせるよう貼合機構56を制御したりする。
【0020】
糊塗布機構60は、印刷機構40のインクカートリッジ44と印刷ヘッド45とに代えて液状糊カートリッジ64と糊吐出ヘッド65とを備える以外は、印刷機構40と同様に構成されている。このため、糊塗布機構60の各構成要素には、印刷機構40の各構成要素の符号に値20を加えた符号を付して、その説明は省略する。なお、糊吐出ヘッド65は、吐出される糊により形成されるドット密度が例えば20dpiや60dpi,90dpiなどとなるよう図示しない複数のノズルが形成され、印刷ヘッド45と同様に圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させて糊を加圧して各ノズルから吐出する方式を採用するものとしたが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけ糊を加熱して発生した気泡により糊を加圧する方式を採用してもよい。
【0021】
貼合機構56は、糊塗布機構60により糊が塗布されて排紙ローラー67により排紙された用紙Sを搬送したり図示しない押圧機構により押圧された状態で用紙Sの接着面同士を貼り合わせたりする一対の貼合ローラー56a,56bと、所定の待機位置まで用紙Sを搬送する搬送ローラー56cと、貼合ローラー56a,56bの間で上下に昇降して用紙Sを案内するガイド56dとを備える。この貼合機構60では、まず、奇数枚目の用紙Sの糊の塗布が完了すると、ガイド56dを下降させた状態で(図中点線で図示)、貼合ローラー56a,56bと搬送ローラー56cとをそれぞれ図中左方向に正転させることにより、用紙Sをガイド56dの上面を通して所定の待機位置まで搬送させ、待機位置で奇数枚目の用紙Sを待機させる。そして、次の偶数枚目の用紙Sの糊の塗布が完了すると、ガイド56dを上昇させた状態で(図中実線で図示)、搬送ローラー56cを図中右方向に逆転させて待機位置から奇数枚目の用紙Sを搬送し貼合ローラー56bの図示しないくわえ爪により奇数枚目の用紙Sの端部(図中右側の端部)をつかませると共に貼合ローラー56aの図示しないくわえ爪により偶数枚目の用紙Sの端部(図中左側の端部)をつかませる。そして、図示しない押圧機構により一対の貼合ローラー56a,56bを互いに押し付けた状態で貼合ローラー56aを正転させると共に貼合ローラー56bを逆転させることにより、奇数枚目の用紙Sと偶数枚目の用紙Sとを図中下方に引き込みながら各用紙Sの接着面同士を貼り合わせていく。そして、用紙Sをある程度引き込んだときに貼合ローラー56a,56bのくわえ爪による用紙Sのくわえを解除し、解除した以降も貼合ローラー56a,56bの回転に伴って用紙Sを下方に引き込みながら貼り合わせる。なお、接着面同士が貼り合わされた用紙Sは製本装置70側へ送られる。
【0022】
製本装置70は、図1に示すように、図示しないCPUやROM,RAMなどを有し装置全体を制御する製本制御部72と、図示しない表紙用トレイを有し糊塗布装置50から排紙された用紙Sを表紙用トレイから供給した表紙と合わせてフォトブックPBを製本する製本機構74と、図示しない排出ローラーなどを有し製本機構74により製本されたフォトブックPBを排出トレイ76aに排出する排出機構76とを備える。
【0023】
製本制御部72は、コンピューター80と通信可能に接続され、コンピューター80からの製本指示を受信したり、コンピューター80に製本状況を送信したりする。この製本制御部72は、製本指示を受信すると、受信した製本指示に基づいて糊塗布装置50から送られる用紙SをフォトブックPBに製本して排出するよう製本機構74と排出機構76とを制御する。製本工程では、図3に示すように、糊塗布装置50から排紙された用紙Sと表紙とを合わせて、例えば用紙Sの端部(図中左端部)を糸や針金,糊などで表紙内面の中央部に綴じることなどにより製本する。なお、製本機構74や排出機構76は、本発明の中核をなさないから、各機構の詳細な説明は省略する。
【0024】
コンピューター80は、各種処理を行なうCPU82や各種アプリケーションやデータなどが記憶されたハードディスクドライブ(HDD)83,データを一時的に記憶するRAM84などが組み込まれたコンピューター本体81と、各種情報を表示するディスプレイ86と、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウスなどの入力装置88とを備える汎用のコンピューターとして構成されている。このコンピューター80は、ディスプレイ86に表示される図示しない製本設定画面上で、印刷対象の画像の選択や用紙Sの種類の設定をユーザーの入力装置88の操作を介して受け付ける。また、受け付けた内容に基づいて印刷装置30に対する印刷指示や糊塗布装置50に対する糊塗布指示,製本装置70に対する製本指示をそれぞれ生成する。そして、印刷装置30に印刷指示を出力したり印刷装置30からの印刷状況を入力したり、入力した印刷状況に基づいて糊塗布装置50に糊塗布指示を出力したり糊塗布装置50からの糊塗布状況を入力したり、入力した糊塗布状況に基づいて製本装置70に製本指示を出力したり製本装置70からの製本状況を入力したりする。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態の製本システム10の動作について、特に、糊塗布装置50において用紙Sに糊を塗布する際の動作について説明する。図4は、糊塗布制御部52により実行される糊塗布処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、コンピューター80からの糊塗布指示を受信したときに実行される。このルーチンが実行されると、糊塗布制御部52は、まず、受信した糊塗布指示に含まれる用紙種を入力し(ステップS100)、入力した用紙種が用紙種A,B,Cのいずれであるかを判定する(ステップS110)。そして、用紙種が用紙種Aの場合には用紙種Aに対応した糊形成パターンを設定し(ステップS120)、用紙種Bの場合には用紙種Bに対応した糊形成パターンを設定し(ステップS130)、用紙種Cの場合には用紙種Cに対応した糊形成パターンを設定する(ステップS140)。なお、上述したように、用紙種A,B,Cは、本実施形態では、紙厚は用紙種Aが薄く用紙種B,Cが厚いものとし、凹凸は用紙種A,Bが小さく用紙種Cが大きいものとしている。
【0026】
ここで、本実施形態では、糊塗布制御部52のROMに予め記憶された対応関係テーブルから、判定した用紙種に対応する糊形成パターンを導出して設定するものとした。図5は、用紙種と糊形成パターン(ドットパターン)との対応関係テーブルの一例を示す説明図であり、図6は、糊形成パターンの作成の傾向を示す説明図である。なお、図5中の黒丸が糊の吐出により形成される1つのドットを示す。図5に示すように、各糊形成パターンは、4つのドットが集まって形成される小ドット群と、小ドット群よりも多くの数のドットが集まって形成される大ドット群とが島状に配置されるパターン即ち大小2段階の大きさのドット群が島状に配置されるパターンとして設定されている。また、各糊形成パターンは、その糊の吐出量を異なるものとするために大ドット群を形成するドットの数を変えており、具体的には用紙種Aでは12個,用紙種Bでは16個,用紙種Cでは21個として大ドット群を形成している。このため、個々のドットの大きさ自体を変えるもの即ち個々のドットを形成する糊の吐出量自体を変えるものに比して、より簡易なパターンとして設定することができる。また、図6に示すように、大ドット群の大きさは、用紙Sの紙厚が薄くなるほど小さくなる傾向に且つ用紙Sの凹凸が大きくなるほど大きくなる傾向に設定するものとした。この理由について説明する。まず紙厚が薄い場合には、ドット群を大きくすると、部分的に集中して吐出される糊を吸収しきれずに用紙Sが部分的にシワ状に変形する場合がある。このため、紙厚が薄くなるほどドット群の大きさを小さくすることにより、糊の塗布量を少なくして糊が部分的に集中して塗布されるのを防止しているのである。また、凹凸が大きい場合には、ドット群を小さくすると、凹部だけに糊が吐出されて適切な接着力を得られない場合がある。このため、凹凸が大きくなるほどドット群の大きさを大きくすることにより、凹部だけではなく凸部にまたがって糊が塗布されるようにしているのである。本実施形態では、このような図6に示す傾向と用紙種A,B,Cの紙厚や凹凸とに基づいて、図5に示すような大ドット群の大きさが異なる糊形成パターンを予め定めて糊塗布制御部52のROMに記憶しておくものとした。このため、凹凸が同じ用紙種A,Bにおいては、紙厚の薄い用紙種Aの方が用紙種Bよりも大ドット群の大きさが小さくなるような糊形成パターンが設定され、紙厚が同じ用紙種B,Cにおいては、凹凸の大きい用紙種Cの方が用紙種Bよりも大ドット群の大きさが大きくなるような糊形成パターンが設定されることになる。なお、予め記憶された対応関係テーブルから糊形成パターンが導出されるから、迅速に糊形成パターンを設定することができる。
【0027】
こうして用紙種に応じた糊形成パターンを設定すると、設定した糊形成パターンから糊吐出ヘッド65の各ノズルの吐出のオンオフデータとしての糊吐出データを生成する(ステップS150)。次に、生成した糊吐出データに基づいて用紙Sに糊塗布処理を実行する(ステップS160)。この糊塗布処理は、主走査方向にキャリッジ61が往復動するようキャリッジモーター63aを制御すると共に糊塗布データに基づいて用紙Sに糊が吐出されるよう糊吐出ヘッド65の圧電素子を駆動し、パス毎に用紙Sが副走査方向に所定量ずつ搬送されるよう駆動モーター66aを制御する処理を繰り返すことにより行なわれる。こうして糊塗布処理を実行すると、全ての用紙Sに対する処理が完了したか否かを判定し(ステップS170)、処理が完了していなければステップS160に戻り処理を繰り返し、完了していれば本ルーチンを終了する。
【0028】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の図4の糊塗布処理ルーチンのステップS110〜S140の処理を実行する糊塗布装置50の糊塗布制御部52が本発明の「ドットパターン設定手段」に相当し、図4の糊塗布処理ルーチンのステップS150,160の処理を実行する糊塗布制御部52が「制御手段」に相当する。なお、本実施形態では、糊塗布制御部52の動作を説明することにより本発明の糊塗布装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0029】
以上詳述した本実施形態の糊塗布装置50によれば、用紙種に応じて糊の吐出量が異なるドットパターンとしての糊形成パターンを設定し、設定した糊形成パターンが用紙Sの接着面に形成されるよう糊塗布機構60の糊吐出ヘッド65を制御するから、用紙Sに塗布される糊の量を用紙種に適したものとすることができ、用紙種に応じてより適切に糊を塗布することができる。
【0030】
また、大ドット群を形成するドットの数を変更することにより糊の吐出量を変えるものとしたから、個々のドットを形成する糊の吐出量自体を変えるものに比して、糊形成パターンをより簡易に設定することができる。さらに、用紙Sの紙厚が薄くなるほど小さくなる傾向に且つ用紙Sの凹凸が大きくなるほど大きくなる傾向に糊形成パターンの大ドット群を設定するものとしたから、紙厚や凹凸に応じてより適切に糊を吐出することができる。さらに、予め定められた対応関係テーブルから糊形成パターンを導出して設定するから、迅速に糊形成パターンを設定することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
上述した実施形態では、糊形成パターンを予め定められた対応関係テーブルから導出して設定するものとしたが、これに限られず、糊塗布工程を行なう度に糊形成パターンを作成して設定するものとしてもよい。その場合、用紙種に応じて定まる用紙Sの厚みや凹凸などと図6に示す糊形成パターンの作成の傾向とに基づいて、接着面に吐出すべきドット数や吐出量などを算出し、算出したドット数や吐出量に応じて糊形成パターンを選択して設定するものなどとすればよい。
【0033】
上述した実施形態では、用紙種に応じて大ドット群の大きさが異なる糊形成パターンを設定するものとしたが、これに限られず、用紙種に応じて小ドット群の大きさが異なる糊形成パターンを設定するものとしてもよいし、大ドット群と小ドット群との両者の大きさが異なる糊形成パターンを設定するものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、用紙種に応じて定まる紙厚と凹凸とから糊形成パターンを設定するものとしたが、これに限られず、用紙種に基づいて糊形成パターンを設定するものであれば如何なるものとしてもよい。また、糊形成パターンの作成の傾向を紙厚と凹凸とに基づいて定めるものに限られず、紙厚のみに基づいて定めるものとしてもよいし、凹凸のみに基づいて定めるものとしてもよい。あるいは、用紙Sへの糊の浸透度や表面粗さなどを加味して糊形成パターンの作成の傾向を定めたり、糊形成パターンを設定したりするものなどとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、3種類の用紙種があるものとして説明したが、2種類以上の用紙種を用いるものであればよく、4種類以上の用紙種を用いるものなどとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、図5に示す3つの糊形成パターンを設定するものとしたが、これに限られるものではない。図7,8に変形例の糊形成パターンの一例を示す。図示するように、ドット数が12ドットの大ドット群とドット数が5ドットの小ドット群とが千鳥状に配置された糊形成パターンを設定するものとしてもよい(図7(a))。また、大ドット群と小ドット群との2段階の大きさのドット群を用いるものに限られず、3以上の複数段階の大きさのドット群を用いるものとしてもよいし(図示略)、1段階の大きさのドット群を有するものとしてもよい(図7(b)〜(f))。さらに、各ドット群の配置の方向が一定のものではなく、方向が90度ずつ異なる二方向のものとしてもよいし(図7(g))、各ドット群の方向がランダムに配置されるものとしてもよい(図示略)。そして、ドット群を有するものに限られず、ドットの吐出間隔を所定のドット数ずつ空けたものとしてもよい(図7(h))。あるいは、これらのようなあるパターンの繰り返しにより糊形成パターンを設定するものに限られず、パターンの繰り返しによらないランダムな糊形成パターンを設定するものとしてもよい(図8(a),(b))。その場合、例えば、紙種に応じて定められた閾値を用いた誤差拡散法などにより糊形成パターンを設定するものなどとすればよい。
【0037】
上述した実施形態では、糊の吐出量をドット形成の有無による糊形成パターンで変化させるものとしたが、これに限られず、インクジェット方式のプリンターにおけるインクの吐出量の調整と同様にドット自体の大きさを変えて吐出量を調整することで糊の塗布量を変化させるものなどとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、奇数枚目の用紙Sの接着面と偶数枚目の用紙Sの接着面とを貼り合わせるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、奇数枚目の用紙Sを半分に山折りして山折り後の接着面同士を貼り合わせると共に偶数枚目の用紙Sを半分に山折りして山折り後の接着面同士を貼り合わせるものとしてもよい。あるいは、奇数枚目の用紙Sを半分に谷折りすると共に偶数枚目の用紙Sを半分に谷折りし、谷折り後に奇数枚目の用紙Sの接着面(半面)と偶数枚目の用紙Sの接着面(半面)とを順次貼り合わるものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、糊塗布装置50が糊塗布機構60以外に反転機構54や貼合機構56を備えるものとしたが、これに限られず、糊塗布機構60を備えるものであればよく、糊塗布機構60のみを備えるものとしてもよいし、反転機構54または貼合機構56のいずれかの機構と糊塗布機構60とを備えるものとしてもよい。また、糊塗布装置50が製本システム10に組み込まれて製本される用紙Sに糊を塗布するものとしたが、これに限られず、糊塗布装置50単独で媒体に糊を塗布するものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、液状の糊を用いるものとしたが、これに限られず、吐出ヘッドから吐出可能な接着剤を用いるものであればよく、ジェル状の接着剤を用いるものなどとしてもよい。また、媒体として用紙Sを用いるものとしたが、これに限られず、金属やプラスチック,ゴム,セラミックなど接着可能な媒体であれば如何なる材質の媒体に接着剤を塗布するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 製本システム、30 印刷装置、32 印刷制御部、33a,33b,33c 給紙トレイ、34 給紙機構、34a,34b,34c 給紙ローラー、40 印刷機構、40a メカフレーム、41 キャリッジ、42 ガイド、43 キャリッジベルト、43a キャリッジモーター、43b 従動ローラー、44 インクカートリッジ、45 印刷ヘッド、46 搬送ローラー、46a 駆動モーター、47 排紙ローラー、50 糊塗布装置、52 糊塗布制御部、54 反転機構、54a,54b,54c,54d,54e 反転用ローラー、56 貼合機構、56a,56b 貼合ローラー、56c 搬送ローラー、56d ガイド、60 糊塗布機構、61 キャリッジ、62 ガイド、63 キャリッジベルト、63a キャリッジモーター、63b 従動ローラー、64 液状糊カートリッジ、65 糊吐出ヘッド、66 搬送ローラー、66a 駆動モーター、67 排紙ローラー、70 製本装置、72 製本制御部、74 製本機構、76 排出機構、76a 排出トレイ、80 コンピューター、81 本体、82 CPU、83 HDD、84 RAM、86 ディスプレイ、88 入力装置、PB フォトブック、S 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドから媒体に接着剤を吐出してドット状に塗布する接着剤塗布装置であって、
前記媒体の種類に応じて前記接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定するドットパターン設定手段と、
該設定されたドットパターンが前記媒体に形成されるよう前記吐出ヘッドを制御する制御手段と
を備える接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記ドットパターン設定手段は、複数のドットにより形成されるドット群が島状に配置されたパターンを用いて前記媒体の種類に応じて該ドット群の大きさを変えることにより前記ドットパターンを設定する手段である請求項1記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記ドットパターン設定手段は、前記媒体が凹凸の大きな種類になるほど前記ドット群の大きさが大きくなる傾向に前記ドットパターンを設定する手段である請求項2記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
前記ドットパターン設定手段は、前記媒体が厚みの薄い種類になるほど前記ドット群の大きさが小さくなる傾向に前記ドットパターンを設定する手段である請求項2または3記載の接着剤塗布装置。
【請求項5】
前記ドットパターン設定手段は、前記ドットの数を複数段に変化させた複数段の大きさのドット群を用いて少なくとも1つの段のドット群を形成するドットの数を前記媒体の種類に応じて変えることにより前記ドットパターンを設定する手段である請求項2ないし4いずれか1項に記載の接着剤塗布装置。
【請求項6】
前記ドットパターン設定手段は、前記媒体の種類と前記ドットパターンとの予め定められた対応関係を用いて該媒体の種類に応じたドットパターンを導出することにより前記ドットパターンを設定する手段である請求項1ないし5いずれか1項に記載の接着剤塗布装置。
【請求項7】
吐出ヘッドから媒体に接着剤を吐出してドット状に塗布する接着剤塗布装置の制御方法であって、
(a)前記媒体の種類に応じて前記接着剤の吐出量が異なるドットパターンを設定するステップと、
(b)該設定されたドットパターンが前記媒体に形成されるよう前記吐出ヘッドを制御するステップと
を含む接着剤塗布装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−161752(P2012−161752A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24684(P2011−24684)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】