説明

接着層付き回路基板、並びに多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板

【課題】 特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも導体回路(配線回路)及び電気絶縁層間の接着力を十分に強くした多層プリント配線板を形成可能な接着層付き回路基板を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決する本発明の接着層付き回路基板100は、絶縁板12の主面上上に導体回路14が形成された回路基板10と、少なくとも導体回路14の表面上に設けられた接着層20とを備える接着層付き回路基板100であって、接着層20は、(A)成分;ポリアミドイミドと、(B)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着層付き回路基板、並びに多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理することが要求されている。かかる要求に対応するため、上述のような装置に搭載される多層プリント配線板上で扱う電気信号は高周波数化が進んでいる。しかしながら、高周波になればなるほど電気信号は減衰しやすくなる性質を持つため、これらの分野で使用されるプリント配線板は一層伝送損失を低くする必要がある。
【0003】
低伝送損失の多層プリント配線板を得るために、従来、多層プリント配線板における積層板等の絶縁板や電気絶縁層の誘電体材料として、比誘電率や誘電正接の低いフッ素系樹脂を含有した熱可塑性樹脂材料が使用されている。しかしながらフッ素系樹脂は一般的に溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要がある。しかも、上記の通信機器、ネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等に使用されるプリント配線板用材料としては、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が不十分である。
【0004】
そこで、比誘電率や誘電正接が低い熱硬化性樹脂組成物である、特許文献1〜3に示されているトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含有する樹脂組成物、特許文献1、2、4及び5に示されているポリブタジエンを含有する樹脂組成物、特許文献6に示されているアリル基等のラジカル架橋性の官能基を付与された熱硬化性ポリフェニレンエーテルと上記トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含有する樹脂組成物を、上記電子機器等の誘電体材料の原料として用いる方法が提案されている。これらの特許文献によると、概して、硬化後の樹脂が極性基を多く有していないため低伝送損失化が可能となる、とされている。
【特許文献1】特公平6−69746号公報
【特許文献2】特公平7−47689号公報
【特許文献3】特開2002−265777号公報
【特許文献4】特公昭58−21925号公報
【特許文献5】特開平10−117052号公報
【特許文献6】特公平6−92533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜6に記載されたものを始めとする、ビニル基やアリル基等の重合によって硬化する低誘電率、低誘電正接樹脂を用いたプリント配線板について詳細に検討したところ、かかる多層プリント配線板では電気絶縁層の極性が低くなるため、導体回路(配線回路)及び電気絶縁層間の接着力(接合力)が弱くなり、それらの層間に剥離が生じやすいことを本発明者らは見出した。このような剥離は、多層プリント配線板を加熱した際(特に吸湿後に加熱した際)に顕著となる。
【0006】
そのため、従来の方法でこのような低誘電率、低誘電正接樹脂を多層プリント配線板に用いる場合、導体回路の表面に粗化処理を行い、導体回路及び電気絶縁層間の接着力(接合力)を補強する必要がある。このような表面粗化処理としては、酸化処理(黒化処理)や酸化還元処理、エッチング処理、金属メッキ処理等が挙げられる。
【0007】
ところで、近年、積層板等の絶縁板や電気絶縁層における電気信号の低伝送損失化を図るのみでは、電気信号の更なる高周波化への対応として不十分となっている。すなわち、電気信号の伝送損失は、絶縁板や電気絶縁層に起因する損失(誘電体損失)と、信号層やグランド層(アース層、シールド層等)、電源層等の導体回路に起因する損失(導体損失)に分類されるところ、昨今、誘電体損失の低減のみでなく、導体損失の低減についても、その必要性を無視できなくなってきている。特に、近年実用化されている大部分の多層プリント配線板において、電気絶縁層の厚みが200μm以下と比較的薄くなっているため、その電気絶縁層の材料に、ある程度低い誘電率や誘電正接を示す樹脂を採用すると、このような配線板全体の伝送損失としては、誘電体損失よりもむしろ導体損失の方が支配的になっている。
【0008】
そして、その導体損失は、主として導体回路の表面粗さの大きさに起因するものとされており、そのような観点からは、表面の十点平均粗さ(Rz)の最大値が小さい金属箔(以下、「ロープロファイル金属箔」という。)の使用が効果的であるとされている。特許文献1〜6に記載されたものを始めとする、ビニル基やアリル基等の重合によって硬化する低誘電率、低誘電正接樹脂を多層プリント配線板の誘電体材料に用いた場合、上述のように導体回路及び電気絶縁層間の接着力(接合力)が弱いため、このようなロープロファイル金属箔を用いて導体回路の表面粗さを小さくすることが難しく、十分な低伝送損失化を図るには限界があるといえる。
【0009】
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも導体回路及び電気絶縁層間の接着力を十分に強くした多層プリント配線板を形成可能な接着層付き回路基板、並びに多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、電気絶縁層の誘電体材料としてのポリブタジエン、トリアリルイソシアヌレート及びポリフェニレンエーテル等の低誘電率の熱硬化性樹脂について、表面粗さの小さい金属箔と併用しても上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の接着層付き回路基板は、絶縁板の一方又は両方の主面上に導体回路が形成された回路基板と、少なくとも導体回路の表面上に設けられた接着層とを備える接着層付き回路基板であって、接着層は、(A)成分;ポリアミドイミドと、(B)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の接着層付き回路基板は、絶縁板の一方又は両方の主面上に導体回路が形成された回路基板と、少なくとも導体回路の表面上に設けられた接着層とを備える接着層付き回路基板であって、接着層は、(A)成分;ポリアミドイミドと、(C)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物と、(D)成分;前記(C)成分と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る上記接着層を用いると、導体回路の表面粗さが小さい状態で、上述の誘電体材料を併用しても、十分に密着させることができる。よって、本発明の接着層付き回路基板を用いると、高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも導体回路及び電気絶縁層間の接着力を十分に強くした多層プリント配線板を形成できる。
【0014】
なお、本発明に係る接着層を硬化して得られる層(以下、「硬化層」という。)は、プリント配線板の電気絶縁層の一部としても機能するものであるので、本明細書において、硬化層以外の電気絶縁層を構成する部分は「絶縁樹脂層」と表記し、硬化層と区別することとする。
【0015】
本発明の接着層付き回路基板が、上述の目的を達成できる要因は、現在のところ詳細には明らかになっていないが、本発明者らは以下のように推測している。ただし、要因はこれに限定されない。
【0016】
ポリアミドイミドは一般に導体との接着力が高い化合物として知られている。したがって、接着層の材料としてポリアミドイミドを用いると、回路基板の導体回路と、接着層を硬化して得られる硬化層との間の引き剥がし強さが向上する。しかしながら、ポリアミドイミドは、上述のようなビニル硬化系やアリル硬化系等の低誘電率樹脂とは相溶性が低く反応性も極めて低い。そのため、これらの樹脂を用いた層(絶縁樹脂層)との間では、ポリアミドイミドのみを構成材料とした硬化層は、十分な引き剥がし強さを示すことができない。
【0017】
本発明の接着層付き回路基板を用いて製造された多層プリント配線板においては、(B)成分、あるいは(C)成分及び(D)成分が、低誘電率樹脂との相溶性を高める。さらには、(A)成分であるポリアミドイミドは、接着層における重合反応と同時に、隣接する絶縁樹脂層の構成材料である低誘電率樹脂ともラジカル重合により架橋反応する。これにより、接着層から得られる硬化層と絶縁樹脂層とはほぼ一体化する。その結果、この硬化層は、導体層との間で十分に高い接着力を有するのみでなく、硬化層内部及び硬化層と絶縁樹脂層との界面近傍における破壊強度を向上させることができ、絶縁樹脂層との間でも十分に高い接着力を有することとなる。また、破壊強度の向上に起因して、このような多層プリント配線板は耐熱性を高める傾向にある。
【0018】
本発明の接着層付き回路基板において、(A)成分であるポリアミドイミドが、飽和炭化水素からなる構造単位を有すると好ましい。このような接着層付き回路基板を用いて形成される多層プリント配線板は、導体回路及び電気絶縁層間の接着力を更に高めることができ、しかも吸湿時においても高い接着力を保持できるため、高い耐湿耐熱性を発現できる。
【0019】
本発明の接着層付き回路基板は、硬化性をより高める観点から、(B)成分が下記式(I)で表されるオキシラン環又は下記式(II)で表されるオキセタン環を有すると好ましく、オキシラン環を有するとより好ましい。
【化1】

【0020】
また、本発明の接着層付き回路基板は、(B)成分におけるエチレン性不飽和結合を有する官能基として、ビニル基、アリル基、アクリル基(CH=CHCOO−)及びメタクリル基(CH=C(CH)COO−)からなる群より選ばれる1種以上の基を有すると好ましい。
【0021】
同様の観点から、(C)成分は2つ以上のオキシラン環又はオキセタン環を有すると好ましく、2つ以上のオキシラン環を有するとより好ましい。
【0022】
本発明の接着層付き回路基板は、(B)成分が、ポリブタジエン構造及びオキシラン環を有するエポキシ化合物であると、すなわち、オキシラン環を有するエポキシ化合物であって更にポリブタジエン構造を有すると、硬化性の更なる向上の観点及び絶縁樹脂層との相溶性の観点から好ましい。このような(B)成分は、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基(−NH−)及び下記式(III)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【化2】

【0023】
本発明の接着層付き回路基板において、接着層を構成する硬化性樹脂組成物中のエポキシ化合物が、その側鎖又は末端にビニル基を有すると好ましい。
【0024】
また、上記エポキシ化合物が、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるもの、あるいは下記一般式(5)で表される構造単位を有するものであると好ましい。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0025】
ここで、式(1)中、nは2〜8の整数を示し、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。また、式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、Rはアクリル基又はオキシラニル基を示す。
【0026】
式(3)中、Rは下記式(4)で表される基を示し、iは0〜100の整数を示し、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。
【化7】

【0027】
また、式(5)中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す。
【0028】
本発明の接着層付き回路基板は、(D)成分が、その側鎖又は末端にビニル基を有し、かつ、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び上記式(III)からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンであると好ましい。ここで「変性ポリブタジエン」とは、ポリブタジエンの構造の一部に他の原子又は官能基を付加したもの、あるいはポリブタジエンの構造の一部を他の原子又は官能基で置換したものをいう。
【0029】
本発明の接着層付き回路基板において、上述の本発明の効果を一層発揮する観点から、(B)成分の配合割合が、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であると好ましく、(C)成分及び(D)成分の総配合割合が、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であり、(D)成分の配合割合が、(C)成分100質量部に対して5〜1000質量部であると好ましい。
【0030】
本発明の接着層付き回路基板において、接着層が(A)成分及び前記(B)成分を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである場合、回路基板は、絶縁板と導体回路との間に、(A)成分及び前記(B)成分を含有する硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層が設けられていると好ましい。また、接着層が(A)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである場合、回路基板は、絶縁板と導体回路との間に、(A)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層が設けられていると好ましい。
【0031】
このような回路基板を本発明の接着層付き回路基板に用いると、低誘電率、低誘電正接の樹脂を絶縁板に用いても、絶縁板と導体回路との間に十分な接着力を得ることができる。このため、絶縁板及び導体回路間で接着力(接合力)が高まるとともに、絶縁板側の導体回路の表面粗さを小さくすることで絶縁板及び導体回路間での導体損失を十分に低減することが可能である。
【0032】
また、本発明の接着層付き回路基板において、硬化性樹脂組成物が、(E)成分;ラジカル重合開始剤を更に含有すると、より速やかに硬化層を形成可能となり、しかも接着層部分の保存安定性が向上する傾向となるので好ましい。
【0033】
本発明に係る接着層は、例えば、硬化性樹脂組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを導体回路の表面上に塗布した後に溶媒を揮発させることにより得られ、この接着層の膜厚が0.1〜10μmであると好ましい。
【0034】
また、本発明に係る回路基板の導体回路において、その表面の十点平均粗さ(Rz)が2μm以下であると伝送損失を更に低減することができ、しかも導体回路と硬化層との間の接着力を十分に高い状態で維持できる。ここで、十点平均粗さRzは、JIS−B0601−1994に準拠した表面粗さである。
【0035】
また、本発明に係る接着層が、絶縁板の一方又は両方の主面上、並びに導体回路の表面上に設けられていると好ましい。この場合、回路基板の導体回路を有する面全体に接着層が形成されているので、本発明の接着層付き回路基板の製造を容易にすることができる。
【0036】
また、本発明に係る回路基板は、積層体の最外層に位置する電気絶縁層である絶縁板の主面上に導体回路が形成された基板であってもよいし、コア基板であってもよい。ここで、「コア基板」とは、多層プリント配線板を製造するために最初に用意される回路基板のことをいい、一層の絶縁板の両面に導体回路が設けられたものであってもよいし、一層の絶縁板の片面に導体回路が設けられたものであってもよい。本発明に係る回路基板がコア基板であると、多層プリント配線板を形成したときに、最内層の導体回路と、その上に形成された電気絶縁層との間に十分な接着力を得ることができる。
【0037】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、上述の接着層付き回路基板の少なくとも接着層の表面上に、絶縁性を有する樹脂を含有する絶縁樹脂シート、及び金属箔をこの順で積層して多層体を得る工程と、該多層体を加熱及び加圧する工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0038】
ここで、絶縁樹脂シートとしては、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラス、紙材、アラミド、フッ素系樹脂、ポリエステル及び液晶性高分子からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する繊維基材に絶縁性を有する樹脂を含浸してなるプリプレグが好適に用いられる。なお、これらの材料のうち、液晶性高分子以外の材料は液晶性を示さないものとする。
【0039】
また、比誘電率や誘電正接を十分に低くする観点から、絶縁性を有する樹脂がエチレン性不飽和結合を有する樹脂を含有すると好ましく、このエチレン性不飽和結合を有する樹脂が、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種以上の樹脂であるとより好ましい。特に、絶縁性を有する樹脂がポリフェニレンエーテルを含有すると最も好ましい。
【0040】
また、本発明の多層プリント配線板は、このような多層プリント配線板の製造方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも導体回路及び電気絶縁層間の接着力を十分に強くした多層プリント配線板を形成可能な接着層付き回路基板、並びに多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すことととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0043】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る接着層付き回路基板100は、コア基板として用いられるものであり、回路基板10と、接着層20とから構成されている。より詳しくは、回路基板10は、絶縁板である積層板12と、積層板12の両面(両主面)上に形成された所定形状を有する導体回路14とから構成されており、両面とも、それらの導体回路14の表面14a上、及び積層板12の表面12a上に接着層20が形成されている。なお、回路基板10には、公知の方法によって、基準穴等が設けられていてもよい。
【0044】
積層板12としては、公知のプリプレグを数枚張り合わせ、加圧加熱処理を行って得られるものが使用できる。かかるプリプレグとしては、調製された樹脂ワニスをガラス繊維、有機繊維等の繊維基材(強化繊維)に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができる。特に、積層板12には、後述の多層プリント配線板を製造する際の絶縁樹脂シート(絶縁樹脂層)と同様の基材を用いることが好ましい。
【0045】
導体回路14は、積層板12上に接着した金属箔にフォトリソグラフィ法等の公知のパターン化処理を施して形成したものである。導体回路14に用いられる金属箔は特に限定されず、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔とが挙げられるが、通常は電界銅箔又は圧延銅箔を用いると好ましい。かかる金属箔は、その防錆性、耐薬品性や耐熱性を向上させる観点から、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層形成処理が全面に施されていると好ましい。また、このような金属箔は1種の金属材料からなる単層であってもよく、複数の金属材料からなる単層であってもよく、異なる材質の金属層を複数積層して形成されていてもよい。また、その厚さは特に限定されない。これらの金属箔のうち、銅箔としてはF2−WS(古河サーキットフォイル社製、Rz=3.0μm)、F0−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=1.2μm)、3EC−VLP(三井金属社製、商品名、Rz=3.0μm)等が商業的に入手可能である。
【0046】
また、導体回路14の表面14aには、表面粗化処理やシランカップリング剤による処理等が施されていてもよいが、表面粗化処理に関しては、導体回路14の表面粗さ(Rz)が好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下となるように粗化処理を施していると、高周波伝送特性を更に向上できる。なお、シランカップルリング剤としては、エポキシシラン、アミノシラン、カチオニックシラン、ビニルシラン、アクリロキシシラン、メタクロイロキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。
【0047】
接着層20は、(A)成分;ポリアミドイミドと、(B)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、必要に応じて「アミド反応性不飽和化合物」という。)とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。以下、この接着層20を構成する硬化性樹脂組成物及びその成分について説明する。
【0048】
<(A)成分>
(A)成分であるポリアミドイミドは、特に限定されるものではないが、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。ポリアミドイミドを合成するイソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物とエーテル結合を有するジアミン化合物とをジアミン化合物過剰存在下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許2897186号公報に記載の方法)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(例えば、特開平04−182466号公報に記載の方法)が挙げられる。
【0049】
また、ポリアミドイミドの主鎖にシロキサン構造を導入させてもよい。これにより、接着層20を硬化させて得られる硬化層の弾性率や可とう性等の特性が向上し、さらに乾燥効率等も改善することができる。かかる主鎖にシロキサン構造を有するポリアミドイミドは、イソシアネート法に従って合成可能である。具体的な合成方法としては、例えば、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジイソシアネート及びシロキサンジアミン化合物を重縮合させる方法(例えば、特開平05−009254号公報に記載の方法)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミン化合物とを重縮合させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)、芳香族環を3つ以上有するジアミン化合物及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物を、芳香族ジイソシアネートと反応させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)等が挙げられる。本実施形態においては、上述の公知の方法で合成されるポリアミドイミドを用いても、導体と十分に高い接着性を発現し得る。
【0050】
さらには、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを用いると、導体との接着性が更に向上し、しかも耐湿性が向上するため、吸湿後にも高い接着性を維持し、一層高い耐湿耐熱性が得られる。同様の観点から、上記構造単位が飽和脂環式炭化水素基であるとより好ましい。飽和脂環式炭化水素基を含有するポリアミドイミドは耐湿耐熱性に一層優れ、より高いTgを示す。
【0051】
飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、例えば、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物を誘導して、または縮合剤を用いて、ジアミン化合物と反応させることにより得られる。あるいは、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸に、ジイソシアネートを反応させることによっても得られる。同様に、飽和脂環式炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドは、上記の合成法において、ジアミン化合物として飽和脂環式炭化水素基を有するものを用いればよい。
【0052】
上述のジアミン化合物としては、例えば下記一般式(6a)又は(6b)で表されるものが挙げられる。
【化8】

式(6a)、(6b)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(7a)又は(7b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【化9】

式(7a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0053】
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物としては、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等を例示できる。これらのジアミン化合物は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、さらに他のジアミン化合物、すなわち飽和炭化水素基を有していないジアミン化合物を併用することもできる。
【0054】
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物は、例えば、芳香族ジアミン化合物を水素還元することによって容易に得ることが可能である。このような芳香族ジアミン化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と表記する。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等を例示できる。
【0055】
芳香族ジアミン化合物の水素還元は、芳香環の一般的な還元方法によって可能である。そのような還元方法としては、例えば、ラネーニッケル触媒や酸化白金触媒(D.Varechら、Tetrahedron Letter 26、 61(1985)、R.H.Bakerら、J.Am.Chem.Soc.、69、1250(1947))、 ロジウム−酸化アルミニウム触媒(J.C.Sircarら、J.Org.Chem.、30、3206(1965)、A.I.Meyersら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 371(1988)、A.W.Burgstahler、Organic Synthesis Collective Volume V、 591(1973)、 A.J.Briggs、 Synthesis、 1988、 66)、酸化ロジウム−酸化白金触媒(S.Nishimura、Bull.Chem.Soc.Jpn.、34、32(1961)、E.J.Coreyら、J.Am.Chem.Soc.101、1608(1979))、チャコール担持ロジウム触媒(K.Chebaaneら、Bull.Soc.Chim.Fr.、1975、244)、水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系触媒(P.G.Gassmanら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 581(1988)、P.G.Gassmanら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 601(1988))などの触媒の存在下での水素還元等が挙げられる。
【0056】
本発明において好適に用いられるポリアミドイミドは、ジアミン化合物として、上述したジアミン化合物に加えて下記一般式(8)で表されるジアミン化合物を用いることによって合成することができる。
【化10】

式(8)中、Lはメチレン基、スルホニル基、オキソ基、カルボニル基又は単結合を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換していてもよいフェニル基を示し、kは1〜50の整数を示す。
【0057】
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は置換していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等を例示できる。一般式(8)で表されるジアミン化合物において、低弾性率及び高Tgを両立する観点から、Lがオキシ基であることが特に好ましい。このようなジアミン化合物としては、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、サンテクノケミカル社製、商品名)等を例示できる。
【0058】
本発明において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述のような特定の飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られることに起因して、耐吸水性又は撥水性が従来のポリアミドイミドと比較して極めて高くなる。特に、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られる、脂環式飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを、後述の熱硬化性樹脂組成物の構成材料として用い、本実施形態の接着層付き回路基板を形成すると、かかる接着層付き内層銅箔回路基板から得られる多層プリント配線板は、例えば芳香環を有するポリアミドイミドを含有する樹脂組成物を構成材料に用いた場合に比べて、吸湿時の接着性が低下し難くなる。
【0059】
さらに好ましくは、本発明に係るポリアミドイミドが、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物に芳香族ジアミン化合物を併用して合成することができる。そのような芳香族ジアミン化合物としては、下記一般式(9a)、(9b)で表されるものを例示できる。
【化11】

【0060】
式(9a)、(9b)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(10a)又は(10b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【化12】

式(10a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0061】
より具体的には、芳香環に2つのアミノ基が直接結合している化合物、及び2つ以上の芳香環が直接又は一つの基を介して結合しているジアミンであれば特に制限はないが、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらの芳香族ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの芳香族ジアミン化合物を上述のジアミン化合物と併用して得られる接着層の熱硬化性樹脂組成物は、更にTgが向上し、耐熱性を改良することが可能となる。
【0062】
さらには、ジアミン化合物として、下記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンを併用してもよい。
【化13】

式(11)中、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、「R13〜R18」のように表記する。)は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又は置換していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。R19及びR20は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基又は置換していてもよいアリーレン基が好ましく、該アリーレン基としては置換していてもよいフェニレン基又は置換していてもよいナフタレン基が好ましい。アリーレン基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。また、a及びbはそれぞれ1〜15の整数を示す。
【0063】
かかるシロキサンジアミンとしては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したものを用いることが特に好ましい。これらのシロキサンジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。一般式(11)で表されるシロキサンジアミンは、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
【0064】
上述のシロキサンジアミンを原料として用いることにより得られるポリアミドイミドは、主鎖にシロキサン構造を有するようになるため、可とう性が向上し、また、高温条件下における膨れ等の発生を大幅に低減させることができる。
【0065】
本実施形態に係るポリアミドイミドを得るには、例えば、まず、上記ジアミン化合物のアミノ基を無水トリメリット酸のカルボキシル基又は無水カルボキシル基と反応させる。この際、上記アミノ基が無水カルボキシル基と反応すると好ましい。かかる反応は、両化合物を非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散させて、70〜100℃で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等を例示でき、これらのなかでもNMPが特に好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上述の非プロトン性極性溶媒は、該非プロトン性極性溶媒、ジアミン化合物及び無水トリメリット酸を含有する溶液の全重量に対して、固形分が10〜70質量%となる量であると好ましく、20〜60質量%となる量であるとより好ましい。この溶液中の固形分が10質量%未満となる場合、溶媒の使用量が多いため工業的に不利となる傾向にあり、70質量%を超えると、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、充分な反応を行うことが困難となる傾向にある。
【0067】
次いで、上記反応後の溶液中に水と共沸可能な芳香族炭化水素を添加し、150〜200℃で更に反応させて脱水閉環反応を生じさせることにより、イミド基含有ジカルボン酸を得ることができる。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等を例示でき、トルエンを用いることが好ましい。かかる芳香族炭化水素は、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して、10〜50質量部に相当する量を添加されることが好ましい。芳香族炭化水素の添加量が、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して10質量部未満である場合、水の除去効果が不十分となる傾向にあり、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。また、50質量部を超えると、反応温度が低下し、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。
【0068】
また、脱水閉環反応中に、水と同時に溶液中の芳香族炭化水素も留出することにより、その芳香族炭化水素量が上述の好適な範囲よりも少なくなる場合があるため、例えば、コック付きの水分定量受器中に留出した芳香族炭化水素を水と分離した後に反応溶液中に戻す等して、芳香族炭化水素量を一定割合に保つことが好ましい。なお、脱水閉環反応の終了後には、溶液の温度を150〜200℃程度に保持して水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去しておくことが好ましい。
【0069】
上述のようにして得られるイミド基含有ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(12)で表される化合物が好適である。
【化14】

式中、Lは上記一般式(6a)、(6b)、(8)、(9a)、(9b)又は(11)で表されるジアミン化合物のアミノ基を除いた残基を示す。ここで、R〜R20及びk、a、bは上記と同義である。
【0070】
本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導し、上記ジアミン化合物と共重合させて製造することができる。イミド基含有ジカルボン酸は、塩化チオニルや三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルメチルエーテルとの反応により容易に酸ハロゲン化物に誘導され、得られるイミド基含有ジカルボン酸のハロゲン化物は室温若しくは加熱条件下で容易に上記ジアミン化合物と共重合させることができる。
【0071】
また、本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を縮合剤の存在下、上記ジアミン化合物と共重合させて製造することができる。かかる反応において、縮合剤としては、アミド結合を形成する一般的な縮合剤を用いることができるが、特にジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド若しくはN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを単独で、又はN−ヒドロキシスクシンイミド若しくは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用することが好ましい。
【0072】
さらに、本実施形態のポリアミドイミドは、上述したように、上記イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導した後、ジイソシアネートを反応させて得ることができる。かかる反応を経由する場合、(ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネート)は、モル比で1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.5)の範囲であることが好ましく、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.3)の範囲であることがより好ましい。反応の際、これらの化合物のモル比を上記範囲内とすることにより、より高分子量でフィルム形成に有利なポリアミドイミドを得ることが可能となる。
【0073】
ポリアミドイミドの合成の際に用いるジイソシアネートとしては、下記一般式(13)で表される化合物を例示できる。
【化15】

【0074】
式(13)中、Lは1つ以上の芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基であり、下記式(14a)で表される基、下記式(14b)で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【化16】

【0075】
一般式(13)で表されるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートを用いることができるが、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、両者を併用することが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等を例示でき、MDIを用いることが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを用いることにより、得られるポリアミドイミドの可とう性を向上させ、結晶性を低減させることができるので、ポリアミドイミドのフィルム形成性を向上させることができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を例示できる。
【0076】
芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネート100モル部に対して5〜10モル部程度添加することが好ましい、これにより、得られるポリアミドイミドの耐熱性を更に向上させることができる。
【0077】
イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、イミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを添加することにより、反応温度130〜200℃で行うことができる。塩基性触媒を用いる場合は、この反応を70〜180℃で行うことが好ましく、120〜150℃で行うことがより好ましい。塩基性触媒の存在下でかかる反応を行う場合は、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べて、より低い温度でこの反応を進行させることが可能となるため、高温条件下におけるジイソシアネート同士の反応等の副反応の進行を抑制でき、更に高分子量のポリアミドイミド化合物を得ることが可能となる。
【0078】
かかる塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示できる。なかでもトリエチルアミンは、上述の反応を促進できる好適な塩基性触媒であり、かつ反応後の系内からの除去が容易であることから特に好ましい。
【0079】
上記反応により得られるポリアミドイミドは、下記一般式(15)で表される構造単位を有している。なお式中、L、Lは、上述のL、Lと同義である。
【化17】

【0080】
上述のようにして得られたポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であると好ましく、30000〜200000であるとより好ましく、40000〜150000であると特に好ましい。なお、ここでいうMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0081】
<(B)成分>
(B)成分であるアミド反応性不飽和化合物は、熱等を加えることにより(A)成分であるポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有するものであり、エチレン性不飽和結合を有していれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物、エチレン性不飽和結合を有するオキセタン化合物等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を用いると好ましい。
【0082】
かかるエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等のエチレン性不飽和基を1つ以上有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。具体的には、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等のビニル基を有する脂環式エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルグリシジルメタクリレート(M−GMA)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等のアクリル基又はメタクリル基を有するエポキシ化合物等を例示できる。これらのなかでも、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物が好適に用いられる。
【0083】
上述のポリブタジエン変性エポキシ化合物としては、1,2−ポリブタジエン構造及び/又は1,4−ポリブタジエン構造を有する化合物のエチレン性不飽和基の一部をエポキシ化して得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第1の変性エポキシ化合物」という。)、あるいは、オキシラン環と反応する、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基又は上記式(III)で表される基などの基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ化合物とを反応させて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第2の変性エポキシ化合物」という。)等が挙げられる。そのような化合物のうち、分子中の末端又は側鎖にビニル基を一つ以上有するポリブタジエン変性エポキシ化合物を用いると、特に好ましい。
【0084】
第1の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物、又は上記一般式(5)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。式(1)で表されるエポキシ化合物としては、BF−1000(日本曹達社製、商品名)等、式(2)で表されるエポキシ化合物としては、PB3600(ダイセル化学工業社製、商品名)等、式(5)で表される構造単位を有するエポキシ化合物としては、A1005、A1010、A1020(以上、ダイセル化学工業社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
【0085】
第2の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(3)で示されるような、カルボキシル基を有するポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシ化合物が例示できる。このような第2の変性エポキシ化合物としては、EPB−13(日本曹達社製、商品名)を、商業的に入手できる。
【0086】
第2の変性エポキシ化合物は、多官能エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂の他に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等を用いて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物であってもよい。
【0087】
また、本実施形態に係るアミド反応性不飽和化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
接着層20の構成材料である熱硬化性樹脂組成物において、(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対して、5〜200質量部の範囲とすると好ましく、7〜80質量部とするとより好ましく、10〜50質量部とすると更に好ましい。(B)成分であるアミド反応性不飽和化合物の配合割合が5質量部未満であると、かかる配合割合の(B)成分を採用して得られる接着層付き回路基板100において、接着層20の熱硬化性、及び接着層20と絶縁樹脂層との反応性が低下するため、得られる多層プリント配線板において、硬化層内や、絶縁樹脂層と硬化層との界面近傍での耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。また、200質量部を超えると、接着層20と導体回路14との接着性が低下する傾向にあり、得られる多層プリント配線板においても、硬化層の靭性が低下する傾向にある。
【0089】
本実施形態の接着層付き回路基板100において、接着層20の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分のポリアミドイミドのアミド基と(B)成分のアミド反応性不飽和化合物との反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していると好ましい。具体的には、硬化促進剤として、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の配合割合は、(B)成分であるアミド反応性不飽和化合物の配合割合に応じて決定することができ、(B)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で硬化促進剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層20の熱硬化性樹脂組成物が反応性、硬化性に一層優れるようになるため、得られる硬化層が、より優れた耐薬品性、耐熱性及び/又は耐湿耐熱性を備えるようになる。
【0091】
また、接着層20の構成材料である熱硬化性樹脂組成物には、接着層20中の(B)成分同士の架橋反応の促進、及び多層プリント配線版を製造する際に接着層20上に形成される絶縁樹脂層中の不飽和結合を有する化合物と、接着層20中の(B)成分との架橋反応の促進のために、(E)成分;ラジカル重合開始剤を更に含有していると好ましい。
【0092】
具体的には、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのラジカル重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
熱硬化性樹脂組成物におけるラジカル重合開始剤の配合割合は、(B)成分の配合割合に応じて決定することができ、(B)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内でラジカル重合開始剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層20の熱硬化性樹脂組成物が反応性、硬化性に一層優れるようになるため、得られる硬化層の破壊強度や金属箔引き剥がし強さが高くなり、耐薬品性、耐熱性及び耐湿耐熱性に優れるようになる。
【0094】
また、接着層20の構成成分である熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて難燃剤、充填剤等の各種添加剤を、多層プリント配線板とした際の耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。
【0095】
上記難燃剤としては特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合含有の臭素化反応型難燃剤が挙げられる。
【0096】
リン系難燃剤しては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム及び赤リン等のリン系難燃剤を例示できる。また、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。
【0097】
上述の難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物における難燃剤の配合割合は特に限定されるものではないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5〜150質量部とすると好ましく、5〜80質量部とするとより好ましく、5〜60質量部とすると更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満であると耐燃性が不十分となる傾向にあり、100質量部を超えると硬化させた接着層の耐熱性が低下する傾向にある。
【0099】
上述の充填剤としては特に限定されるものではないが、通常無機充填剤が好適に用いられ、無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの充填剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填剤の形状、粒径についても特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
【0100】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物における充填剤の配合割合は特に限定するものではないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、1〜800質量部がより好ましい。
【0101】
接着層20の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0102】
また、接着層20の膜厚(厚さ)は0.1〜10.0μmであると好ましく、0.5〜5.0μmであるとより好ましい。この膜厚が0.1μm未満では、接着層20が硬化した硬化層を備える多層プリント配線板において、金属箔引き剥がし強さを向上させ難くなる傾向にあり、10.0μmを超えると、特に多層プリント配線板の絶縁樹脂層に後述するような低誘電率樹脂を用いる場合、高周波伝送特性が低下する傾向にある。
【0103】
接着層付き回路基板100の製造方法としては、絶縁板12の表面12a及び導体回路14の表面14aに、上述した本発明の好適な実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物、又はこの樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させた樹脂ワニスを塗布した後、乾燥させて半硬化(Bステージ化)させ、接着層20を回路基板10上に形成して製造する方法が挙げられる。
【0104】
樹脂ワニスの塗布は、公知の方法により実施可能であり、例えばキスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて行うことができる。また、塗布された樹脂ワニスの乾燥には、加熱乾燥炉中等で通常70〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥する方法が挙げられる。この際の乾燥温度は、熱硬化性樹脂組成物を溶解等するために溶媒を使用した場合は、溶媒の揮発可能な温度以上であると好ましい。
【0105】
上述の熱硬化性樹脂組成物をワニス化する際に用いられる溶媒は特に限定するものではないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素及びケトン類を用いる場合のそれらの配合割合は、芳香族炭化水素100質量部に対してケトン類を30〜300質量部であると好ましく、30〜250質量部であるとより好ましく、30〜220質量部であると更に好ましい。また、ワニス化する際は、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、接着層付き回路基板100を製造する場合、溶媒量を調節することにより、接着層20が所望の膜厚、特に上述した好ましい膜厚を有するように固形分濃度やワニス粘度を調整することができる。
【0107】
以上説明した接着層付き回路基板100を用いると、これから得られる多層プリント積層板は、絶縁樹脂層の構成材料にポリブタジエン、トリアリルシアヌレートの重合体であるポリトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの重合体であるポリトリアリルイソシアヌレート、ポリフェニレンエーテル等の低誘電率樹脂を採用した際に、高い金属箔引き剥がし強さを発現できるだけでなく、吸湿時にも高い接着力を維持できる。その結果、このような多層プリント配線板は、十分に高い耐熱性と耐湿耐熱性を備えることとなる。
【0108】
さらに、これらの優れた特性は、導体回路14の表面粗化量が比較的小さい場合であっても十分に発現されるため、優れた高周波特性と高い接着性、耐熱性との両立が可能となる。これらのことから、接着層付き回路基板100は、高周波信号を扱う各種電気・電子機器に備えられる多層プリント配線板等の部材・部品用途として有効である。
【0109】
なお、第1実施形態に係る回路基板10には、積層板12と導体回路14との間に、上述の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層(図示せず)が設けられているとより一層好ましい。これにより、上述の効果に加えて、更に積層板12と導体回路14との間で、優れた高周波特性と高い接着性、耐熱性との両立を可能にできる。
【0110】
このような層が設けられた回路基板10の製造方法としては、まず金属箔(図示せず)に上述の硬化性樹脂組成物を塗布し、この金属箔の塗布面側に積層板12を張り合わせて積層体(図示せず)を形成する。次に、この積層体を所定の条件で加熱及び/又は加圧することにより金属張積層板(図示せず)を形成し、最後に、この金属張積層板の金属箔側に公知のパターン化処理を施して導体回路14を形成して完成させる。この場合の加熱は、好ましくは150〜250℃の温度で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力で実施することができる。特に、硬化性樹脂組成物を塗布する側の金属箔の表面粗さが4μm以下、好ましくは2μm以下であると、より高周波伝送特性を向上させることができる。
【0111】
(第2実施形態)
本実施形態に係る接着層付き回路基板は、第1実施形態に係る接着層付き回路基板と、接着層が(A)成分;ポリアミドイミドと、(C)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物(以下、必要に応じて「アミド反応性化合物」という。)と、(D)成分;(C)成分と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、必要に応じて「反応性不飽和化合物」という。)とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである点で異なるが、その他の点については第1実施形態に係る接着層付き回路基板と同様である。以下、接着層を構成する硬化性樹脂組成物及びその成分について説明する。
【0112】
本実施形態に係る(A)成分としては、第1実施形態に係る(A)成分と同様のものを用いることができる。
【0113】
<(C)成分>
(C)成分であるアミド反応性化合物は、熱等を加えることにより(A)成分であるポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を2つ以上有していれば特に限定されない。具体的には、例えば、2つ以上のオキシラン環又はオキセタン環を有する化合物、すなわち多官能のエポキシ化合物(オキシラン化合物)又はオキセタン化合物等が挙げられ、多官能のエポキシ化合物がより好ましい。多官能のエポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等が例示される。(C)成分であるアミド反応性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
<(D)成分>
(D)成分である反応性不飽和化合物は、分子中に1つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、しかも、熱等を加えることにより(C)成分のアミド反応性化合物と反応する官能基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチレン性不飽和結合を有し、かつフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基又は上記式(III)で表される基を有する変性ポリブタジエンが挙げられる。特に、エチレン性不飽和基が末端及び/又は側鎖に存在するビニル基である変性ポリブタジエンが好適に用いられる。
【0115】
このような変性ポリブタジエンの具体例としては、下記一般式(16)、(17)、(19)又は(21)で表される化合物を例示できる。
【化18】

式(16)中、R21は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、c及びdはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、c及びdのうちいずれかは1以上の整数を示し、eは1〜1000の整数を示す。
【化19】

式(17)中、R22は、ヒドロキシエチル基、カルボキシル基又は下記一般式(18)で表される基を示し、fは0〜100の整数を示し、f及びgの合計は10〜10000の整数を示す。
【化20】

式(18)中、R23は水素原子又はメチル基を示す。
【化21】

式(19)中、R24は下記一般式(20a)又は(20b)で表される基を示し、v、w及びxはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、v及びwのうちいずれかは1以上の整数を示し、hは1〜10000の整数を示す。
【化22】

式(20a)、(20b)中、R25、R26は、単結合、炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基、置換していてもよいフェニレン基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示す。
【化23】

式(21)中、yは1〜8の整数を示し、y及びzの合計は10〜10000の整数を示す。
【0116】
一般式(16)で表される変性ポリブタジエンとしては、PP700−300、PP1000−180、PP1000−240(以上、新日本石油化学社製、商品名)等、一般式(17)で表される変性ポリブタジエンとしては、G−1000、G−2000、G−3000、C−1000、TEA−1000、TEA−2000(以上、日本曹達社製、商品名)等、一般式(19)で表される変性ポリブタジエンとしては、ATBN1300(宇部興産社製、商品名)等、一般式(21)で表される変性ポリブタジエンとしては、BN−1015(日本曹達社製、商品名)等が商業的に入手可能である。また、(D)成分の反応性不飽和化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
本実施形態に係る接着層の構成成分である熱硬化性樹脂組成物における(C)成分及び(D)成分の総配合割合は、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であると好ましく、7〜80質量部であるとより好ましく、10〜50質量部であると更に好ましい。(C)成分及び(D)成分の総配合割合が、5質量部未満であると、かかる配合割合の(C)成分及び(D)成分を採用して得られる接着層付き回路基板において、接着層の熱硬化性、及び接着層と絶縁樹脂層との反応性が低下するため、得られる多層プリント配線板において、硬化層内や、絶縁樹脂層と硬化層との界面近傍での耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。また、200質量部を超えると、接着層と導体回路との接着性が低下する傾向にあり、得られる多層プリント配線板においても、硬化層の靭性が低下する傾向にある。
【0118】
また、(D)成分の配合割合は、(C)成分100質量部に対して、5〜1000重量部の範囲とすることが好ましく、20〜500質量部とすることがより好ましく、50〜150質量部とすることが更に好ましい。(D)成分の配合割合が5質量部未満であると、かかる配合割合の(D)成分を採用して得られる接着層付き回路基板において、接着層の熱硬化性、及び接着層と絶縁樹脂層との反応性が低下するため、得られる多層プリント配線板において、硬化層内や、絶縁樹脂層と硬化層との界面近傍での耐熱性及び破壊強度が低下する傾向にある。また、1000質量部を超えると、接着層の熱硬化性が低下し、得られる多層プリント配線板の硬化層の耐熱性及び耐薬品性が低下する傾向にある。
【0119】
本実施形態の接着層付き回路基板において、接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分のポリアミドイミドのアミド基と(C)成分のアミド反応性化合物との反応及び(C)成分のアミド反応性基と(D)成分との硬化反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していると好ましい。硬化促進剤の具体例としては、第1の実施形態で例示列挙したものが挙げられ、それらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
また、本実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物には、(D)成分の不飽和結合基の架橋反応を促進させるために、(E)成分;ラジカル重合開始剤を更に含有していると好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、第1の実施形態で例示列挙したものが挙げられ、それらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
熱硬化性樹脂組成物において、硬化促進剤の配合割合は(C)成分の配合割合に応じて、ラジカル重合開始剤の配合割合は(D)成分の配合割合に応じて、それぞれ決定することができ、それぞれ第1実施形態における(B)成分に対しての配合割合と同様の数値範囲であると、同様の観点から好ましい。
【0122】
また、本実施形態に係る接着層の構成成分である熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて難燃剤、充填剤等の各種添加剤を、プリント配線板とした際の耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。それらの添加剤の具体例、形状及び粒径は第1実施形態において説明したものと同様である。また、好ましい配合割合は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量に対して、第1実施形態において説明した(A)成分及び(B)成分の合計量に対する配合割合と同様の数値範囲である。
【0123】
本発明の好適な実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(C)成分、(D)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0124】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る多層プリント配線板200は、回路基板50の両面に硬化層60、絶縁樹脂層70、金属箔80がこの順で積層されている。より詳しくは、回路基板50は、絶縁板である積層板52と、積層板52の両面に形成された導体回路54とから構成されており、両面とも、導体回路54の表面54a上、及び積層板52の表面52a上に硬化層60及び絶縁樹脂層70がこの順で積層されている。
【0125】
回路基板50としては、第1実施形態の回路基板10と同様のものを扱うことができる。また、硬化層60は、第1実施形態の接着層20を加熱等により硬化させたものである。
【0126】
絶縁樹脂層70としては、公知のプリプレグの硬化物が使用できる。本発明では、プリプレグとして、ポリブタジエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリフェニレンエーテル等を有する低誘電率樹脂を、ガラス繊維、有機繊維、紙材等の材料を含有する繊維基材(強化繊維の織物又は不織布)に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができる。また、ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラスが例示でき、有機繊維としては、アラミド、フッ素系樹脂、ポリエステル、液晶性高分子等が例示できる。かかる液晶性高分子としては、例えば、サーモトロピック型(熱溶融型)の液晶ポリマーが挙げられる。さらに、このサーモトロピック型の液晶ポリマーとしては、例えば芳香族ポリエステルが挙げられ、より具体的には、例えば、パラヒドロキシ安息香酸(HBA)とビフェノールとテレフタル酸(TPA)との共重合体、HBAと2−オキシ−6−ナフトエ酸(BON6)との共重合体、ポリエチレンテレフタレートをHBAで改質して得られるもの、などが挙げられる。市販されているものとしては、例えば「ザイダー」(新日本石油化学社製、商品名)、「スミカスーパーLCP」(住友化学社製、商品名)、「ベクトラ」(ポリプラスチックス社製、商品名)、「ロッドラン」(ユニチカ社製、商品名)、「ウエノ−LCP」(上野製薬社製、商品名)、「ノバキュレート」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名)等が挙げられる。絶縁樹脂層70には、上記の低誘電率樹脂及び繊維基材を組み合わせて得られるものを好適に用いることができるが、積層板52と同様の基材を用いることが特に好ましい。
【0127】
金属箔80としては、第1実施形態の導体回路14に用いられる金属箔と同様のものを扱うことができる。特に、導体回路54と同様の基材を用いることが好ましい。
【0128】
このような多層プリント配線板200の好適な製造方法としては、まず、第1実施形態の接着層付き回路基板100を用意し、その導体回路14を有する面にプリプレグ等の絶縁樹脂シート及び金属箔をこの順で張り合わせて多層体(図示せず)を作製する。このとき、絶縁樹脂シートに接着層が接するように被着して行う。次に、この多層体を所定の条件で加熱及び/又は加圧して、多層プリント配線板200が完成される。この場合の加熱は、好ましくは150〜250℃の温度で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力で実施することができる。加熱及び加圧は真空プレス等を用いて同時に行うことが好ましく、この場合、これらの処理を30分〜10時間実施することで、接着層及び絶縁樹脂シートが十分に硬化する。
【0129】
以上説明した多層プリント配線板200は、絶縁樹脂層の構成材料にポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、ポリフェニレンエーテル等の低誘電率樹脂を採用しても、導体回路54及び電気絶縁層(硬化層60及び絶縁樹脂層70)間で十分に密着されるため、吸湿時にも高い接着力を維持できる。その結果、このような多層プリント配線板は、十分に高い耐熱性と耐湿耐熱性を備えることとなる。
【0130】
さらに、これらの優れた特性は、導体回路54の表面粗化量が比較的小さい場合であっても十分に発現されるため、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減することが可能であり、高周波信号を扱う各種電気・電子機器の部材・部品用途として好適に使用することができる。
【0131】
得られた多層プリント配線板200において、必要に応じて金属箔80にパターン化処理を行って導体回路を形成してもよい。また、その導体回路の表面(導体回路を形成しない場合は金属箔80表面)に、必要に応じて接着層を形成し、更に上述の方法により絶縁樹脂シート及び金属箔を積層し、加熱加圧成形することができる。このような操作を繰り返して、絶縁樹脂層と金属箔(導体回路)とを交互に積層することにより、更に多層化された構造を有する多層プリント配線板を製造することができる。
【0132】
なお、絶縁樹脂シートを硬化した後であれば、回路基板、絶縁樹脂層及び金属箔を有する積層基板にビアホール(スルーホール)等の形成を行ってもよい。ビアホール形成のためには積層基板の穴あけが必要となるが、積層基板における金属箔が薄い場合には、ドリル又はレーザーによって直接穴あけが可能であり、金属箔が厚い場合には、コンフォーマルマスク法又はラージウインド法により窓穴を形成した後に、ドリル又はレーザーにより穴あけを行うことにより形成が可能である。穴あけ終了後、金属箔表面やスルーホール等に樹脂残渣が残存している場合には除去を行い、無電解銅めっき、金属蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等によりビアホールを形成することができる。
【0133】
また、多層プリント配線板200や、更に多層化された構造を有する多層プリント配線板の最外層に、ドライフィルムを用いたテンティング法等によって保護層を形成してもよい。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0135】
例えば、第1実施形態において、接着層20は導体回路14の表面14a上に形成されていればよく、積層板12の表面12a上に形成されていなくてもよい。すなわち、第3実施形態において、硬化層60は導体回路54の表面54a上に形成されていればよく、積層板52の表面52a上に形成されていなくてもよい。積層板52及び絶縁樹脂層70間は、熱圧着等によって十分に接着させることが可能である。
【0136】
また、第1実施形態において、積層板12の片側のみに導体回路14及び接着層20が積層されたものであってもよい。すなわち、第3実施形態において、積層板52の片側のみに導体回路54、硬化層60、絶縁樹脂層70及び金属箔80が積層されたものであってもよい。この場合、積層板12、52の導体回路が形成されていない側の面は、何も形成されていなくてもよいし、金属箔等が形成されていてもよい。以下、積層板の片側のみに導体回路及び接着層が積層されたものを「接着層付き片面回路基板」、積層板の両面に導体回路及び接着層が積層されたものを「接着層付き両面回路基板」と呼ぶことにする。
【0137】
なお、第1実施形態の積層板12や第3実施形態の積層板52の代わりに、単層の絶縁板を用いてもよいし、金属板を電気絶縁層で挟んだ金属芯基板のようなものを用いてもよい。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に挙げる表面粗さは、すべてJIS−B0601−1994の十点平均粗さRzに準拠したものである。
【0139】
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)45mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)145gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0140】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0141】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ50000であった。
【0142】
(合成例2)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)140mmol、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)35mmol、無水トリメリット酸(TMA)368mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)413gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0143】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0144】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)210mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例2のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ64000であった。
【0145】
(合成例3)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)30mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)10mmol、芳香族ジアミン化合物として(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)60mmol、無水トリメリット酸(TMA)210mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)407gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0146】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0147】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)210mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例3のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ62000であった。
【0148】
(合成例4)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)30mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)120mmol、無水トリメリット酸(TMA)315mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)442gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0149】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0150】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例4のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ74000であった。
【0151】
(合成例5)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)11mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)99mmol、無水トリメリット酸(TMA)231mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)309gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0152】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0153】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)132mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例5のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ56000であった。
【0154】
(合成例6)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、シロキサンジアミン化合物Eとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−AS、信越化学工業社製、アミン当量:850、商品名)24mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)96mmol、無水トリメリット酸(TMA)252mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)289gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0155】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0156】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)144mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例6のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ52000であった。
【0157】
合成例1〜6で用いたポリアミドイミドの各原料の使用量を表1にまとめて示す。
【表1】

【0158】
[樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の調製]
(調製例1)
(A)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(B)成分である変性エポキシ化合物(PB3600、ダイセル化学工業社製、商品名、以下「変性エポキシ化合物A」という。)7.5gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.08g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.15gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド265gを配合して、調製例1の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0159】
(調製例2)
(A)成分である合成例2で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(B)成分である変性エポキシ化合物(EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、商品名、以下「変性エポキシ化合物B」という。)6.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.06g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.12gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド255gを配合して、調製例2の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0160】
(調製例3)
(A)成分である合成例3で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(B)成分である変性エポキシ化合物(A1020、ダイセル化学工業社製、商品名、以下「変性エポキシ化合物C」という。)10.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.1g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.2gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド290gを配合して、調製例3の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0161】
(調製例4)
(A)成分である合成例4で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N673、大日本インキ化学工業社製、商品名)5.0g、及び(D)成分である変性ポリブタジエン(BN−1015、日本曹達社製、商品名、以下「変性ポリブタジエンA」という。)4.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.05g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.08gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド280gを配合して、調製例4の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0162】
(調製例5)
(A)成分である合成例5で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N770、大日本インキ化学工業社製、商品名)5.0g、及び(D)成分である変性ポリブタジエン(C−1000、日本曹達社製、商品名、以下「変性ポリブタジエンB」という。)4.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.05g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.08gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド280gを配合して、調製例5の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0163】
(調製例6)
(A)成分である合成例6で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル日本社製、商品名)6.0g、及び(D)成分である変性ポリブタジエン(ATBN1300X42、宇部興産社製、商品名、以下「変性ポリブタジエンC」という。)4.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.06g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.08gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド290gを配合して、調製例6の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0164】
(調製例7)
(A)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(B)成分であるグリシジルメタクリレート(GMA、東京化成工業社製、商品名)5.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.05g、(E)成分であるラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.10gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド245gを配合して、調製例7の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0165】
(比較調製例1)
(A)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N673、大日本インキ化学工業社製、商品名)7.5gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.08gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド265gを配合して、比較調製例1の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0166】
(比較調製例2)
(A)成分である合成例5で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N770、大日本インキ化学工業社製、商品名)5.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.05gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド265gを配合して、比較調製例2の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0167】
(比較調製例3)
(A)成分である合成例6で得られたポリアミドイミドのNMP溶液100gに、(C)成分であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル日本社製、商品名)6.0gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.06gを添加した後、N,N−ジメチルアセトアミド250gを配合して、比較調製例3の樹脂ワニス(接着層用)(固形分濃度約10質量%)を調製した。
【0168】
調製例1〜5、比較調製例1〜3で用いた樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の各原料の使用量を表2にまとめて示す。
【表2】

【0169】
[プリプレグ及び両面銅張積層板の作製]
(作製例1)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)80gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を得た。
【0170】
得られた樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例1のプリプレグを得た。
【0171】
その後、上述の作製例1のプリプレグ4枚を重ねて配置し、更にその両側に、厚さ35μmの電解銅箔(F2−WS−35、ロープロファイル銅箔、古河電気工業社製、M面表面粗さ(Rz):2μm、S面表面粗さ(Rz):1.1μm)(以下、単に「ロープロファイル銅箔」という。)を、プリプレグ側をM面にして配置して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、作製例1の両面銅張積層板を得た。なお、以下の作製例も含め、両面銅張積層板の厚さは0.58mmであった。
【0172】
(作製例2)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内に1,2−ポリブタジエン(B−1000、日本曹達社製、商品名)80g、架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)10gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を得た。
【0173】
得られた樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例2のプリプレグを得た。
【0174】
その後、上述の作製例2のプリプレグ4枚を重ねて配置し、更にその両側に、ロープロファイル銅箔を、プリプレグ側をM面にして配置して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、作製例2の両面銅張積層板を得た。
【0175】
(作製例3)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた10Lのセパラブルフラスコ内に、テトラヒドロフラン(THF)5000mL、ポリフェニレンエーテル樹脂(ノリルPPO646−111、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)100gを入れ、フラスコ内の温度を60℃に加熱しながら攪拌溶解した。これを室温に戻した後、窒素気流下でn−ブチルリチウム(1.55mol/L、ヘキサン溶液)540mLを添加し、1時間撹拌した。更に、臭化アリル100gを添加して30分間撹拌した後、適量のメタノールを配合し、沈殿したポリマーを単離してアリル化ポリフェニレンエーテルを得た。
【0176】
次に、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gと上述のアリル化ポリフェニレンエーテル100gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)100gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.5gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を得た。
【0177】
得られた樹脂ワニス(絶縁樹脂層用)を、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例3のプリプレグを得た。
【0178】
その後、上述の作製例3のプリプレグ4枚を重ねて配置し、更にその両側に、ロープロファイル銅箔を、プリプレグ側をM面にして配置して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、作製例3の両面銅張積層板を得た。
【0179】
[接着層付き両面回路基板、及び接着層付き片面回路基板の製造]
(製造例1)
作製例1で得られた両面銅張積層板の両面に、エッチング法を用いて、配線幅1cm、パターン幅(エッチング幅)1cmで直線配線がストライプ状に並んだ導体回路を形成して製造例1の両面回路基板(コア基板)を得た。形成された導体回路の表面粗さは0.9μmであった。
【0180】
次に、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)をバット(建浴)に溜め、この中に上述の製造例1の両面回路基板を1分間浸漬させ、取り出した後に150℃で5分間乾燥させて、製造例1の接着層付き両面回路基板を得た。以下の製造例、比較製造例も含め、乾燥後の接着層の厚さは全て2μmであった。
【0181】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板の片面に、エッチング法を用いて、配線幅0.5cm、パターン幅(エッチング幅)1cmで直線配線がストライプ状に並んだ導体回路を形成して製造例1の片面回路基板(コア基板)を得た。形成された導体回路の表面粗さは0.9μmであった。
【0182】
次に、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)をバット(建浴)に溜め、この中に上述の製造例1の片面回路基板での導体回路側の面を1分間浸漬させ、取り出した後に150℃で5分間乾燥させて、製造例1の接着層付き片面回路基板を得た。以下の製造例、比較製造例も含め、乾燥後の接着層の厚さは全て2μmであった。
【0183】
(製造例2)
製造例1と同様にして、製造例2の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0184】
次に、この製造例2の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例2で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例2の接着層付き両面回路基板を得た。
【0185】
また、製造例1と同様にして、製造例2の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0186】
次に、この製造例2の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例2で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例2の接着層付き片面回路基板を得た。
【0187】
(製造例3)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例2で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例3の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0188】
次に、この製造例3の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例3で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用い、製造例3の接着層付き両面回路基板を得た。
【0189】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例2で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例3の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0190】
次に、この製造例3の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例3で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用い、製造例3の接着層付き片面回路基板を得た。
【0191】
(製造例4)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例2で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例4の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0192】
次に、この製造例4の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例4で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例4の接着層付き両面回路基板を得た。
【0193】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例2で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例4の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0194】
次に、この製造例4の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例4で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例4の接着層付き片面回路基板を得た。
【0195】
(製造例5)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例5の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0196】
次に、特開2000−282265号公報に記載されているように、硫酸160g/L、過酸化水素100g/L、トリルトリアゾール2g/L、亜リン酸10g/L、イオン交換水(残部)の混合溶液を作製し、上述の製造例5の両面回路基板の表面に、この混合溶液を30℃で1分間スプレーし、導体回路の表面粗さが3.0μmとなるような粗化処理を行った。
【0197】
その後、粗化処理後の製造例5の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例5で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例5の接着層付き両面回路基板を得た。
【0198】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例5の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0199】
次に、製造例5の片面回路基板の導体回路を有する面に上述と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0200】
その後、粗化処理後の製造例5の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例5で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例5の接着層付き片面回路基板を得た。
【0201】
(製造例6)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例6の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0202】
次に、製造例6の両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0203】
その後、粗化処理後の製造例6の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例6で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例6の接着層付き両面回路基板を得た。
【0204】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例6の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0205】
次に、製造例6の片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0206】
その後、粗化処理後の製造例6の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例6で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例6の接着層付き片面回路基板を得た。
【0207】
(製造例7)
製造例1と同様にして、製造例7の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0208】
次に、製造例7の両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0209】
その後、粗化処理後の製造例7の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例7で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例7の接着層付き両面回路基板を得た。
【0210】
また、製造例1と同様にして、製造例7の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0211】
次に、製造例7の片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0212】
その後、粗化処理後の製造例7の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、調製例7で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例7の接着層付き片面回路基板を得た。
【0213】
(比較製造例1)
製造例1と同様にして、比較製造例1の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0214】
次に、比較製造例1の両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0215】
その後、粗化処理後の比較製造例1の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例1の接着層付き両面回路基板を得た。
【0216】
また、製造例1と同様にして、比較製造例1の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0217】
次に、比較製造例1の片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0218】
その後、粗化処理後の比較製造例1の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例1の接着層付き片面回路基板を得た。
【0219】
(比較製造例2)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の両面回路基板(コア基板)を得た。
【0220】
次に、比較製造例2の両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0221】
その後、粗化処理後の比較製造例2の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例2で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例2の接着層付き両面回路基板を得た。
【0222】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の片面回路基板(コア基板)を得た。
【0223】
次に、比較製造例2の片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0224】
その後、粗化処理後の比較製造例2の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例2で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例2の接着層付き片面回路基板を得た。
【0225】
(比較製造例3)
作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の両面回路基板を得た。
【0226】
次に、比較製造例3の両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0227】
その後、粗化処理後の比較製造例2の両面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例3で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の接着層付き両面回路基板を得た。
【0228】
また、作製例1で得られた両面銅張積層板に代えて、作製例3で得られた両面銅張積層板を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の片面回路基板を得た。
【0229】
次に、比較製造例3の片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0230】
その後、粗化処理後の比較製造例2の片面回路基板に対し、調製例1で得られた樹脂ワニス(接着層用)に代えて、比較調製例3で得られた樹脂ワニス(接着層用)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例3の接着層付き片面回路基板を得た。
【0231】
[多層プリント配線板(3層板、4層板)の製造]
(実施例1)
製造例1の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例1の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0232】
(実施例2)
製造例2の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例2の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0233】
(実施例3)
製造例3の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例3の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0234】
(実施例4)
製造例4の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例4の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0235】
(実施例5)
製造例5の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例5の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0236】
(実施例6)
製造例6の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例6の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0237】
(実施例7)
製造例7の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例7の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0238】
(実施例8)
製造例1の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例8の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0239】
(実施例9)
製造例2の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例9の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0240】
(実施例10)
製造例3の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例10の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0241】
(実施例11)
製造例4の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例11の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0242】
(実施例12)
製造例5の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例12の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0243】
(実施例13)
製造例6の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例13の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0244】
(実施例14)
製造例7の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、実施例14の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0245】
(比較例1)
比較製造例1の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例1の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0246】
(比較例2)
比較製造例2の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例2の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0247】
(比較例3)
比較製造例3の接着層付き両面回路基板の両面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例3の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0248】
(比較例4)
製造例1で得られた両面回路基板に、接着層を形成させることなく、その両面に上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例4の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0249】
(比較例5)
製造例1で得られた両面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0250】
その後、この粗化処理後の両面回路基板に対し、接着層を形成させることなく、その両面に上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例5の多層プリント配線板(4層板)を得た。
【0251】
(比較例6)
比較製造例1の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例6の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0252】
(比較例7)
比較製造例2の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例7の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0253】
(比較例8)
比較製造例3の接着層付き片面回路基板の導体回路側の面に、上述の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例8の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0254】
(比較例9)
製造例1で得られた片面回路基板に、接着層を形成させることなく、その導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例9の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0255】
(比較例10)
製造例1で得られた片面回路基板に製造例5と同様の粗化処理を行い、導体回路の表面粗さを3.0μmにした。
【0256】
その後、この粗化処理後の片面回路基板に対し、接着層を形成させることなく、その導体回路側の面に、上述の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ、及びロープロファイル銅箔をこの順で配置(ロープロファイル銅箔のM面をプリプレグ側とする。)して、これらを20℃で70分、2.9MPaのプレス条件で加熱加圧成形することにより、比較例10の多層プリント配線板(3層板)を得た。
【0257】
実施例1〜7、比較例1〜5で用いた樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)、及び製造時の導体回路の表面粗さを表3にまとめて示す。また、実施例8〜14、比較例6〜10で用いた樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)、及び製造時の導体回路の表面粗さを表4にまとめて示す。
【0258】
[多層プリント配線板における銅箔引き剥がし強さの測定]
実施例1〜7、比較例1〜5の多層プリント配線板(4層板)において、コア基板の絶縁層(積層板)で積層方向に2つに割いて剥がし、剥がした後に露出した絶縁層のいずれかの面をサンドペーパーで擦り、配線の幅方向に1cm長さの導体回路を露出させて評価用サンプルを作製した。その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に5時間保持した後の銅箔引き剥がし強さ(単位:kN/m)を、規格JIS−C−6481−1996の「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠して測定した。結果を表3に示す。なお、この銅箔引き剥がし強さについて、0.01kN/mに満たなかったものについては、引き剥がし以前にすでに剥がれが確認された。
【0259】
[多層プリント配線板のはんだ耐熱性の評価]
実施例1〜7、比較例1〜5の多層プリント配線板(4層板)において、50mm角に切断した上述の多層プリント配線板の両側の銅箔を全面エッチングし、評価用サンプルを作製した。その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1〜3時間)保持した後のものを、260℃の溶融はんだに20秒間浸漬し、得られた評価用サンプルの外観を目視で調べた。結果を表3に示す。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の多層プリント配線板のうち、絶縁樹脂層と導体回路又はエッチング面(積層板)との間の膨れや、絶縁樹脂層でのミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を意味する。
【表3】

【0260】
[多層プリント配線板の伝送損失の評価]
実施例8〜14、比較例6〜10の多層プリント配線板(3層板)において、その伝送損失(単位:dB/m)を測定した。上記多層プリント配線板(3層板)は、2枚の平面外導体(ロープロファイル銅箔)間に平面内導体(導体回路)が配置される線路構造(トリプレート線路構造)を有するため、そのまま評価用サンプルとして用いて、トリプレート線路共振器法によりこれらの伝送損失を測定した。トリプレート線路共振器法には、ベクトル型ネットワークアナライザーを用いた。なお、測定条件はライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:約1.04mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。結果を表4に示す。
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】本発明の第1実施形態に係る接着層付き回路基板の部分断面図である。
【図2】本発明の第3実施形態に係る多層プリント配線板の部分断面図である。
【符号の説明】
【0262】
10、50…回路基板、12、52…積層板(絶縁板)、14、54…導体回路、14a、54a…導体回路の表面、12a、52a…積層板(絶縁板)の表面、20…接着層、60…硬化層、70…絶縁樹脂層、80…金属箔、100…接着層付き回路基板、200…多層プリント配線板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板の一方又は両方の主面上に導体回路が形成された回路基板と、少なくとも前記導体回路の表面上に設けられた接着層と、を備える接着層付き回路基板であって、
前記接着層は、
(A)成分;ポリアミドイミドと、
(B)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、
を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである、接着層付き回路基板。
【請求項2】
前記(A)成分が飽和炭化水素からなる構造単位を有する、請求項1記載の接着層付き回路基板。
【請求項3】
前記(B)成分がオキシラン環又はオキセタン環を有する、請求項1又は2に記載の接着層付き回路基板。
【請求項4】
前記(B)成分における前記エチレン性不飽和結合を有する官能基として、ビニル基、アリル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項5】
前記(B)成分がポリブタジエン構造及びオキシラン環を有するエポキシ化合物である、請求項1又は2に記載の接着層付き回路基板。
【請求項6】
前記エポキシ化合物が、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び下記式(III)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する化合物と、を反応させてなる化合物である、請求項5記載の接着層付き回路基板。
【化1】

【請求項7】
前記エポキシ化合物が、その側鎖又は末端にビニル基を有する、請求項5又は6に記載の接着層付き回路基板。
【請求項8】
前記エポキシ化合物が、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるもの、あるいは下記一般式(5)で表される構造単位を有するものである、請求項5記載の接着層付き回路基板。
【化2】

(式中、nは2〜8の整数を示し、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、Rはアクリル基又はオキシラニル基を示す。)
【化4】

(式中、Rは下記式(4)で表される基を示し、iは0〜100の整数を示し、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。)
【化5】

【化6】

(式中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す。)
【請求項9】
前記(B)成分の配合割合が、前記(A)成分100質量部に対して5〜200質量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項10】
前記回路基板は、前記絶縁板と前記導体回路との間に、前記(A)成分及び前記(B)成分を含有する硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層が設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項11】
絶縁板の一方又は両方の主面上に導体回路が形成された回路基板と、少なくとも前記導体回路の表面上に設けられた接着層と、を備える接着層付き回路基板であって、
前記接着層は、
(A)成分;ポリアミドイミドと、
(C)成分;該ポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物と、
(D)成分;前記(C)成分と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、
を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである、接着層付き回路基板。
【請求項12】
前記(A)成分が飽和炭化水素からなる構造単位を有する、請求項11記載の接着層付き回路基板。
【請求項13】
前記(C)成分が2つ以上のオキシラン環又はオキセタン環を有する、請求項11又は12に記載の接着層付き回路基板。
【請求項14】
前記(D)成分が、その側鎖又は末端にビニル基を有し、かつ、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び下記式(III)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【化7】

【請求項15】
前記(C)成分及び前記(D)成分の総配合割合が、前記(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であり、前記(D)成分の配合割合が、前記(C)成分100質量部に対して5〜1000質量部である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項16】
前記回路基板は、前記絶縁板と前記導体回路との間に、前記(A)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分を含有する硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層が設けられている、請求項11〜15のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項17】
前記硬化性樹脂組成物が、(E)成分;ラジカル重合開始剤を更に含有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項18】
前記接着層が、前記硬化性樹脂組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを前記導体回路の前記表面上に塗布した後に前記溶媒を揮発させることにより得られるものである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項19】
前記接着層の膜厚が0.1〜10μmである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項20】
前記導体回路の前記表面の十点平均粗さ(Rz)が2μm以下である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項21】
前記接着層が、前記絶縁板の前記主面上、並びに前記導体回路の表面上に設けられている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項22】
前記回路基板がコア基板である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の接着層付き回路基板の少なくとも前記接着層の表面上に、絶縁性を有する樹脂を含有する絶縁樹脂シート、及び金属箔をこの順で積層して多層体を得る工程と、該多層体を加熱及び加圧する工程と、を有する、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項24】
前記絶縁樹脂シートは、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラス、紙材、アラミド、フッ素系樹脂、ポリエステル及び液晶性高分子からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する繊維基材に前記絶縁性を有する樹脂を含浸してなるプリプレグである、請求項23記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項25】
前記絶縁性を有する樹脂がエチレン性不飽和結合を有する樹脂を含有する、請求項23又は24に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項26】
前記エチレン性不飽和結合を有する樹脂が、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種以上の樹脂である、請求項25記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項27】
前記絶縁性を有する樹脂がポリフェニレンエーテルを含有する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項28】
請求項23〜27のいずれか一項に記載の多層プリント配線板の製造方法により得られる多層プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−120947(P2006−120947A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308582(P2004−308582)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】