説明

接着性積層体の製造方法、接着性積層体、並びに機能性合わせガラス及びその製造方法

【課題】自己支持性のない機能性硬化膜を合わせガラス内部に組み込むのに有用な、接着性積層体の安定的な製造方法の提供。
【解決手段】支持体と、その上に、液晶組成物を硬化させて形成された機能層とを有する第1の積層体を準備する第1の工程、溶融樹脂組成物を支持部材の表面に流延して製膜し、第1の接着性膜を得る第2の工程、及び第1の積層体の機能層の表面に、加熱下で、第1の接着性膜を積層して、機能層と第1の接着性膜とを熱接着するとともに、第1の積層体から支持体を剥離して、機能層と第1の接着性膜とを少なくとも有する第2の積層体を得る第3の工程を少なくとも含む接着性積層体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスの作製等に有用な接着性積層体であって、特に合わせガラス中に機能層を効率的に組み込むのに有用な接着性積層体の製造方法に関する。
また、本発明は該方法によって製造された接着性積層体、並びに該接着性積層体を利用した機能性合わせガラス及びその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、そのひとつとして住宅および自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある、ガラスおよびフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるには、太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域のいずれかの太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
【0003】
断熱・遮熱性の高いエコガラスとしてよく用いられるのがLow−Eペアガラスと呼ばれる熱放射を遮断する特殊な金属膜をコーティングした複層ガラスである。特殊な金属膜は、例えば真空成膜法により複数層を積層することで作製できる。真空成膜よって作製される、これらの特殊な金属膜のコーティングは反射性能に非常に優れるものの、真空プロセスは生産性が低く、生産コストが高い。また、金属膜を使うと、電磁波を同時に遮蔽してしまうために携帯電話等の使用では、電波障害を引き起こしたり、自動車に使用した場合にはETCが使えないなどの問題がある。
金属微粒子を含有する層を有する熱線反射性透明基材が提案されている。金属微粒子を含有する膜は、可視光の透過性能に優れるものの、遮熱に大きく関与する波長700〜1200nmの範囲の光に対する反射率が低く、遮熱性能を高くできないという問題がある。
また、赤外線吸収色素を含む層を有する熱線遮断シートも開示されている。赤外線吸収色素を利用すると、日射透過率を下げることができるものの、日射の吸収による膜面温度上昇と、その熱の再放出によって遮熱性能が低下するという問題がある。
【0004】
一方、合わせガラスは、その安全性や防犯性から自動車などの窓ガラスや建築用に用いられている。近年、その合わせガラスは上記の性能だけでなく、他のさまざまな機能を付与したものが求められており、その中には例えば、紫外線防止機能、熱線遮蔽機能、防音機能などがあげられる(特許文献1〜3参照)。
【0005】
通常、合わせガラスは、合わせガラス用の中間膜を2枚のガラスに挟み、圧着工程を経て製造される。合わせガラス用の中間膜の製造方法についても、種々検討されている(例えば、特許文献4)。
ところで、合わせガラスに上記機能性を持たせるためには、機能層を合わせガラス内に組み込む必要がある。従来、自己支持性のある、例えば、熱線反射フィルム等の機能性フィルムを、合わせガラスの内部に組み込む方法については、種々提案されている。しかし、液晶性組成物の硬化膜等は、自己支持性がない膜であり、機能性に優れるものの、かかる自己支持性のない硬化膜を、従来の方法で合わせガラス内部に組み込むのは困難であり、実用化の弊害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−293356号公報
【特許文献2】特開2004−26547号公報
【特許文献3】特開平6−926号公報
【特許文献4】特開2009−45874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、自己支持性のない機能性硬化膜を、合わせガラス内部に組み込むのに有用な接着性積層体の安定的な製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は当該方法によって製造された、機能性合わせガラス内に効率的に機能層を組み込むのに有用な接着性積層体、並びに該接着性積層体を利用した機能性合わせガラス及び機能性合わせガラスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 支持体と、その上に、液晶組成物を硬化させて形成された機能層とを有する第1の積層体を準備する第1の工程、
溶融樹脂組成物を支持部材の表面に流延して製膜し、第1の接着性膜を得る第2の工程、及び
第1の積層体の機能層の表面に、加熱下で、第1の接着性膜を積層して、機能層と第1の接着性膜とを熱接着するとともに、第1の積層体から支持体を剥離して、機能層と第1の接着性膜とを少なくとも有する第2の積層体を得る第3の工程、
を少なくとも含む接着性積層体の製造方法。
[2] 第3の工程において、第1の接着性膜の機能層との接着面の温度が50〜130℃で、熱接着することを特徴とする[1]の方法。
[3] 第3の工程において、第1の接着性膜と機能層とを、加圧条件2kg/cm2未満で熱接着することを特徴とする[1]又は[2]の方法。
[4] 第2の工程において用いる溶融樹脂組成物が、ポリビニルブチラールを主成分として含む溶融樹脂組成物であり、温度150〜250℃で流延ダイから押し出すことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] 第1の積層体を支持しつつ搬送する第1の支持部材と、第1の接着性膜を支持しつつ搬送する第2の支持部材との間で、機能層の表面と第1の接着性膜の表面とを連続的に熱接着させることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] 第1の接着性膜を支持する第2の支持部材が、溶融樹脂組成物を流延した支持部材であり、第2の工程及び第3の工程を連続的に実施することを特徴とする[5]の方法。
[7] 第2の工程において、溶融樹脂組成物を流涎する支持部材が、ロール、ベルト、又は剥離フィルムのいずれかであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 第2の工程において、溶融樹脂組成物を流涎する支持部材の表面がエンボス加工され、該エンボス加工が、第1の接着性膜の表面に転写されることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの方法。
[9] 支持体を剥離した機能層の面に、第2の接着性膜を貼合する第4の工程をさらに含むことを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの方法。
[10] 第2の工程に用いる溶融樹脂組成物が、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物の溶融物であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの方法。
[11] 機能層が、コレステリック液晶相を固定した層を2層以上含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかの方法によって製造された接着性積層体であって、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物からなる接着性膜、及びコレステリック液晶相を固定した層を2層以上含む機能層を少なくとも有することを特徴とする接着性積層体。
[13] [1]〜[12]のいずれかの方法によって製造された接着性積層体であって、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物からなる2つの接着性膜、及び2つの接着性膜の間に、コレステリック液晶相を固定した層を2層以上含む機能層を少なくとも有することを特徴とする接着性積層体。
[14] [13]の接着性積層体を、一対の透明基板間に含む機能性合わせガラス。
[15] 一対の透明基板の間に、[13]に記載の接着性積層体を配置して、前記一対の透明基板を該積層体を介して接着することを含む機能性合わせガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自己支持性のない機能性硬化膜を、合わせガラス内部に組み込むのに有用な接着性積層体の安定的な製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、当該方法によって製造された、機能性合わせガラス内に効率的に機能層を組み込むのに有用な接着性積層体、並びに該接着性積層体を利用した機能性合わせガラス及び機能性合わせガラスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法の一例を説明するために用いた模式図である。
【図2】本発明の接着性積層体の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の機能性合わせガラスの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
1.接着性積層体の製造方法
本発明は、
支持体と、その上に、液晶組成物を硬化させて形成された機能層とを有する第1の積層体を準備する第1の工程、
溶融樹脂組成物を支持部材の表面に流延して製膜し、第1の接着性膜を得る第2の工程、及び
第1の積層体の機能層の表面に、加熱下で、第1の接着性膜を積層して、機能層と第1の接着性膜とを熱接着するとともに、第1の積層体から支持体を剥離して、機能層と第1の接着性膜とを少なくとも有する第2の積層体を得る第3の工程、
を少なくとも含む接着性積層体の製造方法に関する。
【0013】
本発明の方法の一つの特徴は、流延によって製膜された第1の接着性膜を、第1の積層体の機能層に直接熱接着させている点である。例えば、流延ロール等の支持部材上で製膜された第1の接着性膜をそのまま搬送しつつ、他の搬送ロール等の支持部材によって支持・搬送される第1の積層体と連続的に熱接着することができ、本発明の方法は連続的な生産に適する。さらに、流延による製膜では、流延ダイから押し出す際の溶融樹脂温度、流延ロール等の支持部材の形状、大きさもしくは温度、及び流延速度等の制御が容易であり、これらのうちいずれか1以上を制御することで、接着性膜の熱接着時の接着面温度も容易に制御することができる。その結果、高い安定性で製造することができる。
また、製膜と同時に接着する方法(例えば、溶融樹脂組成物を機能層表面上で流延したり、溶融樹脂組成物をロールと機能層とのニップ部に押し出す方法等)では、高温の溶融樹脂組成物により、機能層が化学的又は物理的ダメージを受け、その機能が失われるという問題がある。ダメージを避けるために溶融樹脂組成物の温度を低下させると、接着性膜の膜厚のムラが顕著になり、種々の用途における有用性を損なうことになる。本発明の方法では、接着性膜を一旦製膜してから機能層と熱接着しているので、上記問題は生じず、安定的に種々の用途において有用な接着性積層体を提供することができる。
【0014】
以下、各工程について図1を参照して説明する。
(1)第1の工程
まず、第1の工程では、支持体12と、その上に、液晶組成物を硬化させて形成された機能層14とを有する第1の積層体10を準備する。第1の積層体10が有する機能層14は、合わせガラス中に組み込まれ、合わせガラスに、紫外線防止機能、熱線遮蔽機能、防音機能等の機能性を付与する層である。支持体12は、最終的には除去されるので、その材料等については特に制限はない。PETフィルム等の汎用性の高いポリマーフィルムが用いられるであろう。また、機能層14と支持体12との間には、易接着層、配向層等が配置されていてもよい。
なお、図1では、機能層14を単層として表現しているが、機能層14は複数の層からなっていてもよく、特に、後述する熱遮蔽機能性を付与するためには、コレステリック液晶相を固定した層を2層以上有するのが好ましい。
【0015】
機能層14は、例えば、以下の方法で形成することができる。
まず、液晶化合物及び所望により配向制御剤等の添加剤を含む液晶組成物を塗布液として調製し、該塗布液を支持体12の表面に塗布し、所望により加熱下で塗膜中から溶媒を除去して、塗膜を乾燥する。乾燥により、液晶分子を配向させて、所定の配向状態とし、硬化反応により当該配向状態を固定し、機能層14を形成する。但し、この方法に制限されるものではなく、その他、転写法等を利用して形成することもできる。また、市販品の機能性フィルムをそのままもしくは加工して第1の積層体として利用することもできる。機能層14の厚みについては特に制限はないが、一般的には、2〜50μm程度である。機能層14の厚みが薄すぎると脆くなり、搬送しつつ連続的に本発明を実施する場合に、欠陥などが生じる場合がある。この観点では、機能層14の全体的な厚みは5μm以上であるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ましい。
機能層14の形成に用いられる材料の例については、本発明の積層中間膜シートの欄で詳細に説明する。
【0016】
(2)第2の工程
第2の工程では、溶融樹脂組成物を流延法により製膜して、第1の接着性膜20を得る。図1に示す通り、溶融樹脂組成物20’を流延ダイ22から、流延ロール24の表面に流延し、製膜することができる。溶融樹脂組成物は、接着性膜となる樹脂を主成分として含有する。例えば、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物である。
【0017】
流延ダイ22から押し出される際の溶融樹脂組成物20’の温度は、得られる第1の接着性膜20の膜厚のばらつきに影響する。安定的に第1の積層体10と熱接着するためには、第1の接着性膜の膜厚は均一であるのが好ましい。押し出し時の溶融樹脂組成物の好ましい温度範囲は、該組成物中に主成分として含有される樹脂の融点等に依存するであろう。溶融樹脂組成物20’が、ポリビニルブチラールを主成分として含む実施態様では、流延ダイ22からの押出時の樹脂組成物20’の温度は、150〜250℃であるのが好ましい。
【0018】
溶融樹脂組成物20’を流延する支持部材は、流延ロールの形状に限定されるものではない。その他、少なくとも表面が金属からなるベルト形状、及び剥離フィルム等の表面に流延することもできる。支持部材が搬送機能を備えていると、第2の工程の製膜と、第3の工程のラミネーションを連続的に行うことができるので好ましい。特に流延ロールの形態が好ましい。また、これらの支持部材の表面には、エンボス加工が施され、該エンボス加工が、製膜される第1の接着性膜20の表面に転写されていてもよい。例えば、本発明の方法によって製造される接着性積層体を、合わせガラスの貼り合せに使用する場合は、貼り合せ時に脱気することが必要である。エンボス加工された接着性膜の凹凸表面を、ガラス面側にして貼合することで、容易に脱気することができる。
【0019】
(3)第3の工程
第3の工程では、第1の積層体10の機能層14の表面に、加熱下で、第1の接着性膜20を積層して、機能層14と第1の接着性膜20とを熱接着するとともに、第1の積層体10から支持体12を剥離して、機能層14と第1の接着性膜20とを少なくとも有する第2の積層体30を得る。即ち、この工程では、機能層14は、第1の接着性膜20上に転写される。この工程は、図1に示す通り、支持部材によってそれぞれ搬送しつつ連続的に行うのが好ましい。具体的には、第1の積層体10を第1の搬送ロール16で、及び第1の接着性膜20を第2の搬送ロール24で、それぞれ連続的に搬送しつつ、そのニップ部で、第1の積層体10の機能層14の表面と、第1の接着性膜20の表面とを熱接着させるのが好ましい。特に、図1に示す通り、第2の搬送ロール24が、溶融樹脂組成物20’を流延する支持部材も兼ねていると、第2の工程と第3の工程を連続的に行うことができるので好ましい。
【0020】
機能層14は、液晶組成物の硬化膜であるので、加熱下でも変形し難いという特性がある。一方、第1の接着性膜20は、加熱下で変形し易いという特性がある。これらを搬送しつつ熱接着すると、第1の接着性膜20の変形に、機能層14が追従できずに破断するという問題がある。破断等のトラブルを生じさせないためには、熱接着時の第1の接着性膜20の表面温度、及び/又は熱接着時にかける圧力を制御することが好ましい。具体的には、安定した熱接着を実施するためには、第1の接着性膜20の機能層14との接着面の温度を50〜130℃(より好ましくは70〜110℃、さらに好ましくは70〜100℃)に制御するのが好ましく、及び/又は2kg/cm2未満(より好ましくは0.5〜1.8kg/cm2、さらに好ましくは0.5〜1.5kg/cm2)の加圧下で、熱接着するのが好ましい。第1の接着性膜20の熱接着時の温度、及び/又は熱接着時の圧が上記範囲を超えると、搬送しつつ熱接着した際に、第1の接着性膜20の変形に機能層14が追従できず破断する場合があり;一方、上記範囲未満であると、接着性が不十分になる場合がある。第1の接着性膜20の熱接着時の表面温度は、流延〜熱接着までの時間、搬送ロール24の温度によって上記好ましい範囲に調整することができ、熱接着時の圧は、搬送ロール16、24のニップ部にかかる圧を制御することで上記好ましい範囲に調整することができる。
【0021】
搬送ロール16、24による搬送速度については特に制限はないが、第1の積層体10及び第1の接着性膜20のそれぞれに負荷される搬送テンションが高いと、第1の接着性膜20が変形し、その変形が大きすぎると機能層14が追従できずに破断する場合がある。この観点では、搬送時に第1の積層体10及び第1の接着性膜20のそれぞれに負荷される搬送テンションは20〜200N/m程度であるのが好ましい。
【0022】
第3の工程では、機能層14と第1の接着性膜20とが熱接着されるとともに、支持体12は機能層14から剥離される。破損等なく、安定的に支持体12を剥離するためには、機能層14から支持体12を剥離する際の支持体の温度が40℃以上であることが好ましく、40〜60℃であるのがより好ましい。
【0023】
さらに、第2の積層体30に、第2の接着性膜を貼合する工程を実施してもよい。第2の接着性膜も、第2の接着性膜と同様、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物からなる膜等を利用することができる。合わせガラス用中間膜として市販されているシートを利用することもできる。
第2の接着性膜は、例えば、第2の積層体30の支持体が剥離された面に、貼合することができる。貼合の方法については特に制限はなく、熱接着等、種々の方法が利用できる。ラミネートロールを利用してもよい。また、予め、第2の積層体30及び/又は第2の接着性膜を加熱しておき、その後、圧着して貼合してもよい。さらに、第2の接着性膜と第2の積層体30との貼合を、搬送ロールを利用して、第3の工程から連続して行うこともできる。
【0024】
なお、上記では、第2及び第3の工程を連続的に行う例を示したが、それぞれの工程を別々に不連続に行ってもよい。また、第2の工程は、支持部材を静置した状態で行ってもよい。
【0025】
図2に、本発明の方法により製造される積層中間膜シート50の一例の断面模式図を示す。
図2の接着性積層体50は、第1の接着性膜20、第2の接着性膜40、及びその間に機能層14を有する。第1及び第2の接着性膜20、40は、ポリビニルブチラールを含む組成物からなるシートであって、ガラス基板やプラスチック基板等の透明基板に熱接着可能である。一対の透明基板の間に接着性積層体50を配置して、熱接着することで、機能層14を内部に有する機能性合わせガラスを容易に製造することができる。また、エンボス加工された支持体表面に流延することで製膜された場合には、第1の接着性膜20のガラス板等との接着面はエンボス加工されていて(図2中、エンボス加工については不図示)、ガラス板等の透明基板と加熱接着する際に、エンボス加工面の凹凸によって脱気が容易となり、安定的に熱接着を実行できる。
【0026】
図3に、接着性積層体50を利用した機能性合わせガラス60の一例の断面模式図を示す。
図3に示す機能性合わせガラスは、一対の透明基板52、52’を、接着性積層体50を介して加熱接着して製造される合わせガラスである。合わせガラス60は、その内部に有する機能層14によって、例えば、紫外線防止機能、熱線遮蔽機能、及び防音機能等が付与されている。透明基板52、52’は、ガラス板のみならず、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等のプラスチック基板であってもよい。また双方が同一の材料からなる基板である必要もなく、一方がガラス基板で、他方がプラスチック基板であってもよい。また、透明基板52、52’は、少なくとも完全に光を遮断しない限りは、着色していてもよい。ガラス板等の厚みについては特に制限はなく、用途に応じて好ましい範囲が変動する。例えば、輸送車両のフロントガラス(ウインドウシールド)の用途では、一般的には、2.0〜2.3mmの厚みのガラス板を用いるのが好ましい。また、家屋やビル等の建物用遮熱性窓材のガラス板等の光透過性支持体の厚みは、一般的には、40〜300μm程度である。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0027】
図3に示す機能性合わせガラスは、その機能に応じて、輸送車両のフロントガラスや、家屋やビル等の窓ガラス等として利用することができる。
【0028】
以下に、本発明に利用可能な機能層として、コレステリック液晶相を利用した、熱線遮蔽機能層の態様を詳細に説明する。
本発明の一態様は、機能層として、700nm以上の波長域の光を反射する特性を示す光反射層を少なくとも1層有する態様である。700nm以上の波長域の光は、温度上昇の主な原因となる光なので、本態様の機能層は、前記波長域の光を反射することで、熱線を遮蔽する機能を有する。該光反射層は、コレステリック液晶相を固定して形成された層である。前記光反射層の形成には、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の一例は、棒状液晶化合物、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を少なくとも含有する。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0029】
(1) 棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0030】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0031】
(2) 光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不斉炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0032】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0033】
(3) 重合開始剤
前記光反射層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。前記重合性液晶組成物の一例は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤を含有する、紫外線硬化性液晶組成物である。前記光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0034】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(4) 配向制御剤
本発明では、前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤を添加するのが好ましい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0036】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
【0037】
【化1】

【0038】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0039】
【化2】

【0040】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0041】
【化3】

【0042】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0043】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0044】
前記液晶組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、液晶化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0045】
前記光反射層は、塗布方法によって作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1a) 支持体の表面に、硬化性の液晶組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(1b) 前記硬化性の液晶組成物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1a)及び(1b)の工程を、支持体の一方の表面上で2回以上繰り返すことで、前記光反射層を2層以上有する遮熱部材を作製することができる。
【0046】
前記(1a)工程では、まず、支持体又は下層の光反射層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0047】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にする。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、光透過性支持体の変形、変質等からも不利になる。
【0048】
次に、(1b)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0049】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0050】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0051】
上記では、機能層として、コレステリック液晶相を利用した熱線遮蔽機能層の態様について詳細を説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。液晶相のコレステリックピッチを変化させることで、異なる波長域の光に対して反射性を示す層を形成することもできるし、また、コレステリック液晶相以外の液晶相の配向を利用することで、光反射特性以外の特性を有する機能層を形成することもできる。さらに、それの機能層を組み込むことで、種々の機能性合わせガラスを提供することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
1.基板の準備
支持体としてとして、富士フイルム(株)製PETフィルムを準備した。
【0054】
2.反射層の形成
下記表に示す組成の塗布液(A)及び(B)をそれぞれ調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
3.第1の積層体シートの作製
(1) 調製した塗布液(A)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の乾膜の厚みが6μmになるように富士フイルム(株)製PETフィルム(基板1)上に、室温にて塗布した。
(2) 室温にて30秒間乾燥させてコレステリック液晶相とした後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でフュージョン製Dバルブ(ランプ90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜(光反射層)を作製した。
(3) 室温まで冷却した後、塗布液(A)を塗布液(B)に代えて、上記工程(1)及び(2)を繰り返した。
この様にして、PETフィルム上に、コレステリック液晶相を固定した光反射層を2層有する第1の積層体シートを作製した。この第1の積層体シートは、1000nmに光反射の極大ピークを示す熱線遮熱機能性部材であって。
この作製した第1の積層体シートを、以下の実施例及び比較例でそれぞれ使用した。
【0060】
4. 実施例1〜5
PVBの溶融物を流涎ダイから、下記表に示す温度で、下記表に示す支持部材上にそれぞれ流延することで製膜し、第1の接着性膜を得た。下記表中、支持部材として用いた剥離フィルムはポリエチレンフィルムである。なお、いずれの支持部材についても、支持部材上で製膜しつつ、該膜を搬送した。
別途、上記で作製した第1の積層体シートを、搬送ロールで搬送しつつ、搬送された(流延ロール又は金属ベルト上で製膜された例)又は静置した(剥離フィルム上で製膜された例)第1の接着膜と、下記表に示す条件で、機能層を第1の接着無に熱接着するとともに、PETフィルムを剥離した。
【0061】
上記方法でそれぞれ接着性積層体得、その接着性、機能層の割れ、機能層の反射特性、及び第1の接着性膜の厚みムラを、それぞれ以下の基準で評価した。結果を下記表に示す。
・接着性
○:機能層とPVBが剥れない
×:機能層とPVBが剥れる
・機能層の割れ
○:機能層がPVBシート上でシワの発生無く、割れが生じない
△:機能層がPVBシート上でシワが発生する
×:機能層がPVBシート上で割れる
・機能層の反射特性
○:機能層の反射特性が積層体作成前と後で変化が無い
×:機能層の反射特性が積層体作成前より後が反射率が低下する
・第1の接着性膜の厚みムラ
○:接着性膜の厚みムラが視認できない
△:接着性膜の厚みムラが視認できないが、合わせガラス化時に接着ムラが生じる
×:接着性膜の厚みムラが視認でき、合わせガラス化時に接着ムラが生じる
【0062】
5. 比較例1〜4
比較例1及び2では、上記で作製した第1の積層体シートの機能層表面に、直接、PVBの溶融物を流涎ダイから、下記表に示す温度で流延して、PVB膜を製膜すると同時に機能層と接着した。
比較例3及び4では、上記で作製した第1の積層体シートの搬送ロールと流延ロールとのニップ部であって、機能層と流延ロールとの間にPVBの溶融物を下記表に示す温度で流涎ダイから押出し、PVB膜を製膜すると同時に機能層と接着した。
比較例についても上記と同様に評価した。結果を下記表に示す。
【0063】
【表3】

*1 熱接着時の圧力
*2 流延ダイから押し出される際のPVB溶融物の温度
*3 PVB膜を機能層と熱接着する際の熱接着面の温度(非接触式の温度計で測定した温度)
【0064】
上記結果から、実施例1〜5では、機能層の光反射性能を失うことなく、またPVB膜の膜厚を均一に維持しつつ、機能層とPVB膜との積層体を製造することができた。実施例4及び5では、熱接着時の圧力及びPVB膜の接着面温度が、好ましい範囲からはずれていたため、PVB膜の変形に機能層が追従できず、若干の皺の発生があった。
一方、比較例1〜4では、PVB溶融物を製膜する前に、機能層と接触させているため、溶融物の温度が高い例(比較例2及び4)では、機能層にダメージがあり光反射性能が失われ、一方、PVB溶融物の温度を、機能層にダメージがない程度まで低下させた例(比較例1及び3)では、PVB膜の厚みムラが顕著となり、合わせガラス用中間膜シート等として用いるには満足いくレベルではなかった。
【0065】
実施例1で得られた接着性積層体の機能層の裏面(支持体を剥離した面)に、市販の中間膜シートを貼合して、積層中間膜シートを作製し、これを用いて2枚のガラス板を接着して、機能層を内部に有する合わせガラスを作製した。この合わせガラスは機能層による光反射性能を示した。
【符号の説明】
【0066】
10 第1の積層体
12 支持体
14 機能層
16 搬送ロール
20 第1の接着性膜
20’ 溶融樹脂組成物
22 流延ダイ
24 流延ロール及び搬送ロール
30 第2の積層体
40 第2の接着性膜
50 積層中間膜シート
52、52’ 透明基板
60 機能性合わせガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、その上に、液晶組成物を硬化させて形成された機能層とを有する第1の積層体を準備する第1の工程、
溶融樹脂組成物を支持部材の表面に流延して製膜し、第1の接着性膜を得る第2の工程、及び
第1の積層体の機能層の表面に、加熱下で、第1の接着性膜を積層して、機能層と第1の接着性膜とを熱接着するとともに、第1の積層体から支持体を剥離して、機能層と第1の接着性膜とを少なくとも有する第2の積層体を得る第3の工程、
を少なくとも含む接着性積層体の製造方法。
【請求項2】
第3の工程において、第1の接着性膜の機能層との接着面の温度が50〜130℃で、熱接着することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の工程において、第1の接着性膜と機能層とを、加圧条件2kg/cm2未満で熱接着することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第2の工程において用いる溶融樹脂組成物が、ポリビニルブチラールを主成分として含む溶融樹脂組成物であり、温度150〜250℃で流延ダイから押し出すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1の積層体を支持しつつ搬送する第1の支持部材と、第1の接着性膜を支持しつつ搬送する第2の支持部材との間で、機能層の表面と第1の接着性膜の表面とを連続的に熱接着させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の接着性膜を支持する第2の支持部材が、溶融樹脂組成物を流延した支持部材であり、第2の工程及び第3の工程を連続的に実施することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第2の工程において、溶融樹脂組成物を流涎する支持部材が、ロール、ベルト、又は剥離フィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第2の工程において、溶融樹脂組成物を流涎する支持部材の表面がエンボス加工され、該エンボス加工が、第1の接着性膜の表面に転写されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
支持体を剥離した機能層の面に、第2の接着性膜を貼合する第4の工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第2の工程に用いる溶融樹脂組成物が、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物の溶融物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
機能層が、コレステリック液晶相を固定した層を2層以上含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって製造された接着性積層体であって、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物からなる接着性膜、及びコレステリック液晶相を固定した層を2層以上含む機能層を少なくとも有することを特徴とする接着性積層体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法によって製造された接着性積層体であって、ポリビニルブチラールを含む組成物又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物からなる2つの接着性膜、及び2つの接着性膜の間に、コレステリック液晶相を固定した層を2層以上含む機能層を少なくとも有することを特徴とする接着性積層体。
【請求項14】
請求項13に記載の接着性積層体を、一対の透明基板間に含む機能性合わせガラス。
【請求項15】
一対の透明基板の間に、請求項13に記載の接着性積層体を配置して、前記一対の透明基板を該積層体を介して接着することを含む機能性合わせガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−115954(P2011−115954A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272818(P2009−272818)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】