説明

接続構造体の製造方法及び塗布装置

【課題】第1,第2の接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制できる接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】接続構造体1の製造方法は、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2上に、ディスペンサー12を移動させながら、異方性導電ペーストをディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、異方性導電ペースト層上に、電極4bを下面4aに有する第2の接続対象部材4を積層する工程と、異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層3を形成する工程とを備える。塗布方向と直交する方向における異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における異方性導電ペースト層の中央部の外側の縁部が盛り上がった形状になるように、異方性導電ペーストを塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布して、該異方性導電ペーストが硬化した硬化物層により上記第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続する接続構造体の製造方法に関する。また、本発明は、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布するために用いられる塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電ペーストは、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board)等に使用されている。
【0004】
上記接続構造体の製造方法の一例として、下記の特許文献1には、配線基板上に最低溶融粘度が1.0×10Pa・s以下である導電性接着剤を載せて、該導電性接着剤上に、厚みが200μm以下である電気部品を載せる工程と、ゴム硬度が60以下であるエラストマーを用いた圧着部を有する熱圧着ヘッドによって上記電気部品を加熱し、該電気部品を上記配線基板上に熱圧着する工程とを備える接続構造体の製造方法が開示されている。上記導電性接着剤として、複数の導電性粒子を含む異方性導電ペースト等が用いられている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、相対する電極を有する被接続部材を、両者間に配置したペースト状接続材料の硬化物により接続する接続構造体の製造方法が開示されている。特許文献2では、ペースト状接続材料を下記式(I)で示されるYの1.1〜1.5倍量であって、接続領域の間隙に充満し、かつ接続領域の周辺部の硬化可能領域に実質的に均一に分布して、上記ペースト状接続材料を硬化させている。上記ペースト状接続材料として、複数の導電性粒子を含む異方性導電ペースト等が用いられている。
【0006】
Y=(一方の被接続部材の電極の高さ+他方の被接続部材の電極の高さ)×接続領域の面積 ・・・式(I)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141269号公報
【特許文献2】特開2001−135672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載のような従来の接続構造体の製造方法では、下方の接続対象部材上に配置された異方性導電ペースト上に、上方の接続対象部材を積層して仮圧着した後に、上方と下方との接続対象部材の位置ずれが生じることがある。上方と下方との接続対象部材の位置がずれていると、上方と下方との接続対象部材の対向する電極間の位置がずれ、電極間の導通信頼性が低くなるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1,2に記載のような従来の接続構造体の製造方法では、電極間に導電性粒子を精度よく配置できないことがある。このため、得られる接続構造体において、電極間の導通信頼性が低くなるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、第1,第2の接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、導通信頼性に優れた接続構造体を得ることができる接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、上記異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、上記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部の外側の縁部が盛り上がった形状になるように、上記異方性導電ペーストを塗布する、接続構造体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の広い局面によれば、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、上記異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、上記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、上記異方性導電ペースト層の最大厚み(μm)をT1としたときに、上記第1の接続対象部材の上面と上記ディスペンサーの先端との距離(μm)をT1未満にして、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布する、接続構造体の製造方法が提供される。
【0013】
本発明に係る接続構造体の製造方法ある特定の局面では、上記異方性導電ペースト層の平均厚み(μm)をTとしたときに、上記異方性導電ペースト層の最大厚み(μm)が1Tを超え、2T以下になるように、かつ上記異方性導電ペースト層の最小厚み(μm)が0.8T以上、1T未満になるように、上記異方性導電ペーストが上記ディスペンサーから塗布される。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記異方性導電ペースト層の表面形状をかえるために、形状規制部材を用いて、上記異方性導電ペースト層の上面上に上記形状規制部材を接触させながら、上記異方性導電ペースト層の上面上を上記形状規制部材を通過させる工程がさらに備えられる。この場合に、上記異方性導電ペースト層の平均厚みT(μm)、最大厚みT1(μm)及び最小厚みT2(μm)は、上記形状規制部材が通過される前の上記異方性導電ペースト層の平均厚みである。
【0015】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記ディスペンサーと上記形状規制部材とが接続されている塗布装置を用いることが好ましい。また、上記ディスペンサーと上記形状規制部材とを連動して移動させることが好ましい。
【0016】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記異方性導電ペーストとして、熱硬化性成分を含む異方性導電ペーストを用いるか、又は熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む異方性導電ペーストを用いて、上記異方性導電ペースト層に熱を付与又は光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を形成する工程がさらに備えられ、上記Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に、上記第2の接続対象部材を積層し、上記Bステージ化された異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する。
【0017】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記異方性導電ペーストとして、熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む異方性導電ペーストを用いて、上記異方性導電ペースト層に光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を形成し、上記Bステージ化された異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する。
【0018】
また、本発明の広い局面によれば、第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを塗布するために用いられる塗布装置であって、上記第1の接続対象部材上に、上記異方性導電ペーストを塗布するためのディスペンサーと、上記第1の接続対象部材上に塗布された異方性導電ペーストの表面形状をかえるための形状規制部材とを備える、塗布装置が提供される。
【0019】
本発明に係る塗布装置では、上記ディスペンサーと上記形状規制部材とが接続されていることが好ましい。また、上記ディスペンサーと上記形状規制部材とが連動して移動するように構成されていることが好ましい。
【0020】
本発明に係る塗布装置のある特定の局面では、第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを塗布し、該異方性導電ペーストに光を照射するために用いられる塗布装置であって、光照射装置が備えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、異方性導電ペーストをディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成した後、該異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層し、次に上記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成するので、更に塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部の外側の縁部が盛り上がった形状になるように、上記異方性導電ペーストを塗布するので、第1,第2の接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る接続構造体の製造方法では、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、異方性導電ペーストをディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成した後、該異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層し、次に上記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成するので、更に上記異方性導電ペースト層の最大厚み(μm)をT1としたときに、上記第1の接続対象部材の上面と上記ディスペンサーの先端との距離(μm)をT1未満にして、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布するので、第1,第2の接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に示す平面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法において、塗布装置を用いて、Bステージ化する前の異方性導電ペースト層を形成する方法を説明するための模式図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法において、塗布装置を用いて、異方性導電ペースト層をBステージ化する方法を説明するための模式図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、塗布装置を用いて、異方性導電ペースト層をBステージ化する方法の他の例を説明するための模式図である。
【図8】図8は、異方性導電ペースト層の塗布形状の変形例を示す模式図である。
【図9】図9は、塗布装置を用いて、異方性導電ペースト層の表面形状をかえる方法の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。図2に、図1に示す接続構造体を平面図で示す。図1では、図2に示す接続構造体におけるI−I線に沿う断面図が示されている。
【0026】
図1,2に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している硬化物層3とを備える。硬化物層3は、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部である。硬化物層3は、熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。上記異方性導電ペーストは、複数の導電性粒子5を含む。
【0027】
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0028】
図1,2に示す接続構造体1は、以下のようにして得ることができる。ここでは、上記異方性導電ペーストとして、熱硬化性成分と導電性粒子5とに加えて、光硬化性成分をさらに含む異方性導電ペーストを用いた場合の接続構造体1の製造方法を具体的に説明する。
【0029】
図3(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを塗布して、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペースト層3Aを形成する。ここでは、第1の接続対象部材2の上面2aに、上記異方性導電ペーストを直線状に塗布している。異方性導電ペースト層3Aは、塗布直後の異方性導電ペースト層である。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0030】
図4(a)及び図5(a)に、異方性導電ペーストを塗布する際の状態を正面断面図及び側面図で示す。異方性導電ペースト層3Aを形成するために、図5(a)に示す塗布装置11が好適に用いられる。図4(a)では、ディスペンサー12の移動方向、並びに異方性導電ペーストの塗布方向は、奥側から手前側に向かう方向である。図5(a)では、ディスペンサー12の移動方向、並びに異方性導電ペーストの塗布方向は、右側から左側に向かう方向である。
【0031】
塗布装置11は、第1の接続対象部材2上に、熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを塗布するために用いられる。塗布装置11は、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されている光照射装置13と、該ディスペンサー12に接続されている形状規制部材14とを備える。ディスペンサー12は、異方性導電ペーストを内部に充填するためのシリンジ12aと、該シリンジ12aの外周面を把持している把持部12bとを備える。光照射装置13は、光照射装置本体13aと、光照射部13bとを備える。
【0032】
ディスペンサー11は、第1の接続対象部材2上に、上記異方性導電ペーストを塗布するためのディスペンサーである。光照射装置13は、第1の接続対象部材2上に、上記異方性導電ペーストを塗布して、該異方性導電ペーストに光を照射するための光照射装置である。形状規制部材14は、第1の接続対象部材2上に塗布された異方性導電ペーストの表面形状をかえるための形状規制部材である。
【0033】
図4(a)及び図5(a)に示すように、異方性導電ペーストを塗布する際には、塗布装置11を矢印Aの方向に移動させながら、第1の接続対象部材2の上面2aに、ディスペンサー12のシリンジ12aから異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3Aを形成する。
【0034】
異方性導電ペースト層3Aを形成する際には、異方性導電ペースト層3Aの最大厚み(μm)をT1としたときに、第1の接続対象部材2の上面2aとディスペンサー12の先端12cとの距離(μm)をT1未満にして、上記異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布することが好ましい。すなわち、第1の接続対象部材2の上面2aとディスペンサー12の先端12cとの距離(μm)を、異方性導電ペースト層3Aの最大厚みT1(μm)未満にすることが好ましい。異方性導電ペーストは、ディスペンサー12の先端12cから吐出される。上記距離(μm)を最大厚みT1(μm)未満にすることによって、例えば、上記異方性導電ペーストを押し込むようにして塗布できる。このようにして、第1の接続対象部材2の上面2aに上記異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布することによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれを抑制できる。
【0035】
第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制する観点からは、第1の接続対象部材2の上面2aとディスペンサー12の先端12cとの距離(μm)は、より好ましくは0.99T1以下、更に好ましくは0.95T1以下、好ましくは0.6T1以上、より好ましくは0.7T1以上、更に好ましくは0.8T1以上である。
【0036】
また、異方性導電ペースト層3Aを形成する際には、図4(a)に示すように、塗布方向(図2に示すS方向)と直交する方向における異方性導電ペースト層3Aの中央部3xに対して、塗布方向と直交する方向における異方性導電ペースト層3Aの中央部3xの外側の縁部3yが盛り上がった形状Fになるように、上記異方性導電ペーストを塗布することが好ましい。第1の接続対象部材2上に塗布された塗布直後の異方性導電ペースト層3Aは、塗布方向(図2に示すS方向)と直交する方向における異方性導電ペースト層3Aの中央部3xに対して、塗布方向と直交する方向における異方性導電ペースト層3Aの中央部3xの外側の縁部3yが盛り上がった形状Fを有することが好ましい。異方性導電ペースト層3Aがこのような形状Fを有するように、第1の接続対象部材2の上面2aに上記異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布することによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれを抑制できる。
【0037】
異方性導電ペースト層3Aの最大厚み(μm)をT1としたときに、第1の接続対象部材2の上面2aとディスペンサー12の先端12cとの距離(μm)をT1未満にして、上記異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布することにより、異方性導電ペースト層3Aが上記形状Fを有するようにすることが容易である。なお、異方性導電ペースト層3Aの中央部3xの上面3aは塗布方向と直交する方向に、縁部3yの上面3aに対して凹状である。異方性導電ペースト層3Aの縁部3yの上面3aは塗布方向と直交する方向に、中央部3xの上面3aに対して凸状である。
【0038】
異方性導電ペースト層3Aの平均厚み(μm)をTとしたときに、異方性導電ペースト層3Aの最大厚みT1(μm)が1Tを超え、2T以下になるように、かつ異方性導電ペースト層3Aの最小厚みT2(μm)が0.8T以上、1T未満になるように、上記異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布することが好ましい。このような好ましい最大厚みT1及び最小厚みT2を満足することによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制できる。
【0039】
異方性導電ペースト層3Aの上面3aの最大厚みT1(μm)と最小厚みT2(μm)との厚み差は、好ましくは40μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは18μm以下である。このような好ましい厚み差に制御することによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制できる。
【0040】
図8に、図4(a)に示す異方性導電ペースト層3Aの塗布形状の変形例を模式図に示す。
【0041】
図8に示す塗布直後(Bステージ化前)の異方性導電ペースト層51Aを形成する際には、例えば、図4(a)の異方性導電ペースト層3Aを形成する場合と比較して、上記異方性導電ペーストをより一層押し込むようにして塗布する。この結果、中央部51xに対して、縁部51yがより一層盛り上がる。なお、異方性導電ペースト層51Aの中央部51xの上面51aは塗布方向と直交する方向に平坦であり、直線状である。縁部51yの上面51aは塗布方向と直交する方向に凸状である。
【0042】
次に、異方性導電ペースト層3Aの表面形状をかえるために、形状規制部材14を用いて、塗布後の異方性導電ペースト層3Aの上面3a上に形状規制部材14を接触させながら、異方性導電ペースト層3Aの上面3a上を形状規制部材14を通過させる。これによって、図3(b)、図4(b)及び図5(b)に示すように、異方性導電ペースト層3Aの表面形状をかえて、異方性導電ペースト層3Bを形成する。ここでは、形状規制部材14の先端14aは、平坦であり、直線状である。異方性導電ペースト層3Aの上面3aに、形状規制部材14の先端14aを接触させている。従って、形状規制部材14により、異方性導電ペースト層3Bの上面3aの凸部又は凹部が小さくなり、異方性導電ペースト層3Bの上面3aが平坦化されている。言い換えれば、異方性導電ペースト層3Bの上面3aの凸部又は凹部を小さくし、異方性導電ペースト層3Bの上面3aを平坦化するために、形状規制部材14が用いられている。このように、形状規制部材14により異方性導電ペースト層3Aの表面形状をかえることによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制できる。特に、形状規制部材14により異方性導電ペースト層3Aの上面3aの凸部又は凹部を小さくしたり、異方性導電ペースト層3Aの上面3aを平坦化したりすることによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制できる。
【0043】
形状規制部材14により表面形状がかえられた異方性導電ペースト層3Bの上面3aの最大厚みと最小厚みとの厚み差は、好ましくは3μm未満、より好ましくは2.5μm以下、更に好ましくは2.0μm以下である。このような好ましい厚み差に制御することによって、第1,第2の接続対象部材2,4の第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれをより一層抑制できる。
【0044】
塗布装置11では、把持部12bと形状規制部材14とが接続されている。従って、ディスペンサー12と形状規制部材14とを連動して移動させることができ、更にディスペンサー12と形状規制部材14とを同じ速度で移動させることができる。さらに、ディスペンサー12と形状規制部材14との距離を小さくすることができ、すなわち、ディスペンサー12の吐出部と、形状規制部材14との距離を小さくすることができる。この結果、ディスペンサー12により塗布された異方性導電ペースト層3Aの表面形状を速やかに形状規制部材14によりかえることができる。なお、シリンジ12aと形状規制部材14とが直接接続されていてもよい。
【0045】
また、異方性導電ペースト層3Aの上面3aの表面形状と異方性導電ペースト層3Aの外周側面の表面形状とをかえるために、図9に示すように、先端41aの縁部に突出した凸部41bを有する形状規制部材41を用いてもよい。凸部41bは、形状規制部材41の移動方向と直交する方向の両側の縁部に設けられている。形状規制部材41は、凸部41bを除く先端41a部分は、平坦であり、直線状である。形状規制部材41の使用により、凸部41bを除く先端41a部分により、異方性導電ペースト層3Aの上面3aの表面形状をかえて、更に凸部41bの内周側面により、異方性導電ペースト層3Aの外周側面の形状をかえて、表面形状がかえられた異方性導電ペースト3Bを形成できる。
【0046】
なお、接続構造体を得るために、形状規制部材を用いて、異方性導電ペースト層の表面形状をかえる工程は必ずしも行われなくてもよい。なお、上記表面形状をかえる工程が行われる場合には、上記異方性導電ペースト層の平均厚みT(μm)は、上記形状規制部材が通過される前の上記異方性導電ペースト層の平均厚みである。
【0047】
次に、表面形状がかえられた異方性導電ペースト層3Bに光を照射することにより、異方性導電ペースト層3Bの硬化を進行させる。異方性導電ペースト層3Bの硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3BをBステージ化する。図3(c)及び図6(a)に示すように、異方性導電ペースト層3BのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Cを形成する。なお、形状規制部材14により異方性導電ペースト層3Aの表面形状をかえない場合には、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することにより、異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Cを形成する。
【0048】
図6(a)に示すように、光を照射する際には、ディスペンサー12に接続された光照射装置13の光照射部13bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3Bに光を照射する。ここでは、異方性導電ペーストを塗布しながら、ディスペンサー12に接続された光照射装置13の光照射部13bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3Bに光を照射している。このように、異方性導電ペーストを塗布しながら、光を照射することが好ましい。
【0049】
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電ペーストを配置しながら、異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3Bに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電ペーストの塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電ペースト層3A,3Bに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電ペースト層の流動をより一層抑制できる。このため、第1,第2の接続対象部材の接続信頼性、及び電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。光の照射までの時間を高精度に制御する観点からは、ディスペンサー12と光照射装置13とを移動させることが好ましく、ディスペンサー12と光照射装置13とを連動して移動させることが好ましく、ディスペンサー12と光照射装置13とを同じ速度で移動させることが好ましい。このように、ディスペンサー12と光照射装置13とを移動させながら、異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3A,3Bに光を照射することが好ましい。第1の接続対象部材2の上面2aに上記異方性導電ペーストを塗布してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。ただし、塗布装置11を移動させずに、台31を矢印Aの逆方向に移動させてもよい。
【0050】
塗布装置11では、把持部12bと光照射装置本体13aとが接続されていることによって、ディスペンサー12と光照射装置13とが接続されている。従って、ディスペンサー12と光照射装置13とを連動して移動させることができ、更にディスペンサー12と光照射装置13とを同じ速度で移動させることができる。さらに、ディスペンサー12と光照射装置13との距離を小さくすることができ、すなわち、ディスペンサー12の吐出部と、光照射部13bとの距離を小さくすることができる。この結果、ディスペンサー12により塗布された異方性導電ペースト層3Aに速やかに光を照射することができる。なお、シリンジ12aと光照射装置本体13aとが直接接続されていてもよい。
【0051】
異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3Bに光を照射するために、図7(a)に示すように、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いてもよい。光照射装置21は、光照射装置13と同様に、光照射装置本体21aと、光照射部21bとを備える。光照射装置21は、光照射装置13よりも、広い領域に光を照射することができるように構成されている。
【0052】
ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いる場合には、例えば、図7(a)に示すように、第1の接続対象部材2の上方に光照射装置21を配置する。次に、第1の接続対象部材2と光照射装置21との間においてディスペンサー12を矢印Aの方向に移動させながら、第1の接続対象部材2の上面2aに、シリンジ12aから異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3Aを形成する。また、必要に応じて、異方性導電ペースト層3Aの表面形状をかえて、表面形状がかえられた異方性導電ペースト層3Bを形成する。次に、図7(b)に示すように、異方性導電ペーストの塗布が終了した後、第1の接続対象部材2の上方に配置された光照射装置21の光照射部21bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3Bに光を照射する。光の照射は、例えば異方性導電ペーストの塗布と同時又は塗布の直後に行われる。
【0053】
光照射装置21は、塗布の際に、第1の接続対象部材2の上方に配置されていることが好ましい。この場合には、塗布の後に、光を速やかに照射できる。塗布の後に、異方性導電ペースト層3A,3Bの全領域に一括して光を照射することが好ましい。この場合には、異方性導電ペースト層3A,3Bをより一層均一にBステージ化することができる。
【0054】
図5(a)又は図7(a)に示す塗布装置11及び光照射装置21の使用により、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電ペーストの塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3Bに光を容易に照射できる。
【0055】
光の照射により異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化させて、硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、好ましくは0.1〜100mW/cm程度である。また、異方性導電ペースト層3A,3Bの硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、好ましくは50mJ/cm以上、より好ましくは100mJ/cm以上、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは2000mJ/cm以下である。
【0056】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、及びLEDランプ等が挙げられる。
【0057】
なお、光の照射により異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化せずに、熱の付与により異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化してもよい。異方性導電ペースト層3A,3Bに熱を付与することにより硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化する場合には、異方性導電ペースト層3A,3Bを適度にBステージ化させるための加熱温度は好ましくは80℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。光の照射ではなく熱の付与により異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化した場合でも、上述したようにディスペンサー12から特定の塗布形態で上記異方性導電ペーストを塗布しれていれば、第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれを抑制できる。
【0058】
次に、図3(d)に示すように、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Cの上面3aに、第2の接続対象部材4を降下させて、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。なお、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3BをBステージ化させるために光を照射してもよく、熱を付与してもよい。但し、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電ペースト層3A又は異方性導電ペースト層3BをBステージ化させるために熱を付与又は光を照射することが好ましい。
【0059】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Cを加熱して本硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電ペースト層3Cを加熱してもよい。但し、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電ペースト層3Cを加熱して本硬化させることが好ましい。
【0060】
熱の付与により異方性導電ペースト層3Cを硬化させるために、異方性導電ペースト層3Cを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0061】
なお、異方性導電ペースト層3A,3Bに熱を付与又は光を照射せずに、異方性導電ペースト層3A,3BをBステージ化しない場合には、異方性導電ペースト層3A,3Bの上面3aに第2の接続対象部材4を積層し、異方性導電ペースト層3A,3Bを加熱して、本硬化させればよい。
【0062】
異方性導電ペースト層3Cを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第2の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0063】
異方性導電ペースト層3Cを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。
【0064】
また、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化した後に、本硬化させることで、第1の接続対象部材上に配置された異方性ペースト層に含まれている導電性粒子が、硬化段階で大きく流動し難くなる。従って、導電性粒子が所定の領域に配置されやすくなる。具体的には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置することができ、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。このため、接続構造体における電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0065】
また、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化する場合には、Bステージ化される前の異方性導電ペースト層の表面形状の影響により、第1,第2の電極の位置ずれが生じやすい傾向がある。例えば、Bステージ化された異方性導電ペースト層では、Bステージ化により粘度がある程度上昇しているため、例えば、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に大きな凸部又は凹部があると、得られる接続構造体において、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれが生じやすい傾向がある。
【0066】
これに対して、上述したようにディスペンサー12から特定の塗布形態で上記異方性導電ペーストを塗布することによって、Bステージ化をしたとしても、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれを効果的に抑制できる。さらに、上記形状規制部材によって異方性導電ペースト層の表面形状をかえることによって、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれをより一層効果的に抑制できる。
【0067】
一方で、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化しなかった場合には、Bステージ化前の異方性導電ペースト層の粘度が低すぎて、得られる接続構造体において、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれが生じやすい傾向がある。
【0068】
これに対して、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化することにより、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれを効果的に抑制できる。
【0069】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、本発明に係る接続構造体の製造方法は、COG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材として、半導体チップとガラス基板とを用いることが好ましい。
【0070】
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電ペーストの導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体の製造方法により、電極間の位置ずれを抑制でき、かつ導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0071】
上記異方性導電ペーストは、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む。該熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含有することが好ましい。また、上記異方性導電ペーストは、熱硬化性成分に加えて、光硬化性成分をさらに含むことが好ましい。該光硬化性成分は、光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。上記異方性導電ペーストは、硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。上記光硬化性化合物は(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
【0072】
以下、上記異方性導電ペーストに含まれる各成分、及び含まれることが好ましい各成分の詳細を説明する。
【0073】
[熱硬化性化合物]
上記熱硬化性化合物は熱硬化性を有する。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記異方性導電ペーストの硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。異方性導電ペーストの硬化性を高める観点からは、上記熱硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記熱硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であってもよい。
【0076】
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0077】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0078】
[光硬化性化合物]
光の照射によって硬化するように、上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物を含むことが好ましい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化(Bステージ化)させ、異方性導電ペーストの流動性を低下させることができる。
【0079】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物及び環状エーテル基を有する光硬化性化合物等が挙げられる。
【0080】
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物の使用により、接続構造体の導通信頼性をより一層高めることができる。得られる接続構造体の導通信頼性を効果的に高める観点からは、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
【0081】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
【0082】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0083】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0084】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0085】
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0086】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0087】
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0088】
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0089】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
光硬化性化合物を用いる場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜70:30で含むことがより好ましく、10:90〜50:50で含むことが更に好ましい。上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜50:50で含むことが特に好ましい。
【0092】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
異方性導電ペーストを低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電ペーストの保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0094】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0095】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0096】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0097】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストを充分に熱硬化させることができる。
【0098】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0100】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0101】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストを適度に光硬化させることができる。異方性導電ペーストに光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電ペーストの流動を抑制できる。
【0102】
(導電性粒子)
上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0103】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0104】
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0105】
導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0106】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電ペースト100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0107】
(他の成分)
上記異方性導電ペーストは、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電ペーストの硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記異方性導電ペーストは、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0110】
上記異方性導電ペーストは、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電ペーストの粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0111】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0112】
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0113】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含むエピスルフィド化合物含有混合物を用意した。
【0114】
【化1】

【0115】
上記エピスルフィド化合物含有混合物15重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)3重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.2重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0116】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0117】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0118】
(2)接続構造体の作製
L/Sが15μm/15μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが15μm/15μm、電極面積1500μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0119】
また、図4(a),(b)及び図5(a)に示す塗布装置を用意した。該塗布装置は、ディスペンサーと、該ディスペンサーに接続された形状規制部材と、該ディスペンサーに接続された光照射装置である紫外線照射ランプとを備える。
【0120】
塗布装置を移動させながら、上記透明ガラス基板(第1の接続対象部材)の上面と上記ディスペンサーの先端との距離を下記の表1に示すように設定して、上記透明ガラス基板上に得られた異方性導電ペーストを塗布し、平均厚みT(μm)、最大厚みT1(μm)及び最小厚みT2(μm)を下記の表1に示すように設定して、異方性導電ペースト層を形成した。
【0121】
なお、実施例1及び後述する実施例2〜10では、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部の外側の縁部が盛り上がった形状になるように、上記異方性導電ペーストが塗布されていた。
【0122】
その後、塗布装置を移動させながら、上記形状規制部材を用いて、上記異方性導電ペースト層の上面上に上記形状規制部材を接触させながら、上記異方性導電ペースト層の上面上を上記形状規制部材を通過させ、異方性導電ペースト層の上面を平坦化して、下記の表1に示す最大厚みと最小厚みとの差を有するように表面形状がかえられた異方性導電ペースト層を形成した。
【0123】
次に、表面形状がかえられた異方性導電ペースト層に、紫外線照射ランプを用いて紫外線を照射エネルギーが100mJ/cmとなるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0124】
(実施例2〜8)
接続構造体を作製する際に、上記透明ガラス基板の上面と上記ディスペンサーの先端との距離を下記の表1に示すように設定し、さらに異方性導電ペーストの吐出速度及び吐出量を調整して平均厚みT(μm)、最大厚みT1(μm)及び最小厚みT2(μm)を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0125】
(実施例9)
上記異方性導電ペースト層に対する上記形状規制部材の先端の接触圧をかえて、表面形状がかえられた異方性導電ペースト層の最大厚みと最小厚みとの差を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0126】
(実施例10)
上記形状規制部材を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0127】
(比較例1)
接続構造体を作製する際に、上記透明ガラス基板の上面と上記ディスペンサーの先端との距離を下記の表1に示すように設定し、さらに異方性導電ペーストの吐出速度及び吐出量を調製して平均厚みT(μm)、最大厚みT1(μm)及び最小厚みT2(μm)を下記の表1に示すように設定し、かつ上記異方性導電ペースト層に対する上記形状規制部材の先端の接触圧をかえて、表面形状がかえられた異方性導電ペースト層の最大厚みと最小厚みとの差を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0128】
なお、比較例1では、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における上記異方性導電ペースト層の上記中央部の外側の縁部が凹んだ形状になるように、上記異方性導電ペーストが塗布されていた。
【0129】
(比較例2)
上記形状規制部材を用いなかったこと以外は比較例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0130】
(評価)
(1)ボイドの有無
実施例及び比較例における接続構造体をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドの有無を下記の判定基準で判定した。ボイドがあると、接続構造体における導通信頼性が低くなる。
【0131】
[ボイドの有無の判定基準]
○○:100個の接続構造体中全てで、ボイド無し
○:100個の接続構造体中、最大長さが10μm以下であるボイドがある接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
△:100個の接続構造体中、最大長さが10μmを超え、30μm以下であるボイドがある接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
×:100個の接続構造体中、最大長さが30μmを超える接続構造体が存在する
【0132】
(2)第1,第2の接続対象部材の位置ずれの有無
実施例及び比較例における接続構造体をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、透明ガラス基板の電極と半導体チップの電極との間に位置ずれが生じているか否かを評価した。位置ずれを下記の基準で判定した。
【0133】
[位置ずれの判定基準]
○○:100個の接続構造体中全てで、電極間の位置ずれがないか、又は電極間のずれ幅が2μm以下
○:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅が2μmを超え、5μm以下である接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
△:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅が5μmを超え、10μm以下である接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
×:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅10μmを超える接続構造体が存在する
【0134】
(3)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。100箇所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が3Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が3Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0135】
結果を下記の表1に示す。
【0136】
【表1】

【符号の説明】
【0137】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…第1の電極
3…硬化物層
3a…上面
3x…中央部
3y…縁部
3A…異方性導電ペースト層
3B…表面形状がかえられた異方性導電ペースト層
3C…Bステージ化された異方性導電ペースト層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…第2の電極
5…導電性粒子
11…塗布装置
12…ディスペンサー
12a…シリンジ
12b…把持部
12c…先端
13…光照射装置
13a…光照射装置本体
13b…光照射部
14…形状規制部材
14a…先端
21…光照射装置
21a…光照射装置本体
21b…光照射部
31…台
41…形状規制部材
41a…先端
41b…凸部
51A…異方性導電ペースト層
51a…上面
51x…中央部
51y…縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを前記ディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、
前記異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
塗布方向と直交する方向における前記異方性導電ペースト層の中央部に対して、塗布方向と直交する方向における前記異方性導電ペースト層の前記中央部の外側の縁部が盛り上がった形状になるように、前記異方性導電ペーストを塗布する、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、ディスペンサーを移動させながら、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを前記ディスペンサーから塗布して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、
前記異方性導電ペースト層上に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
前記異方性導電ペースト層の最大厚み(μm)をT1としたときに、前記第1の接続対象部材の上面と前記ディスペンサーの先端との距離(μm)をT1未満にして、前記異方性導電ペーストを前記ディスペンサーから塗布する、接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記異方性導電ペースト層の平均厚み(μm)をTとしたときに、前記異方性導電ペースト層の最大厚み(μm)が1Tを超え、2T以下になるように、かつ前記異方性導電ペースト層の最小厚み(μm)が0.8T以上、1T未満になるように、前記異方性導電ペーストを前記ディスペンサーから塗布する、請求項1又は2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記異方性導電ペースト層の表面形状をかえるために、形状規制部材を用いて、前記異方性導電ペースト層の上面上に前記形状規制部材を接触させながら、前記異方性導電ペースト層の上面上を前記形状規制部材を通過させる工程をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ディスペンサーと前記形状規制部材とが接続されている塗布装置を用いる、請求項4に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ディスペンサーと前記形状規制部材とを連動して移動させる、請求項4又は5に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
前記異方性導電ペーストとして、熱硬化性成分を含む異方性導電ペーストを用いるか、又は熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む異方性導電ペーストを用いて、
前記異方性導電ペースト層に熱を付与又は光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を形成する工程をさらに備え、
前記Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に、前記第2の接続対象部材を積層し、
前記Bステージ化された異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項8】
前記異方性導電ペーストとして、熱硬化性成分と光硬化性成分とを含む異方性導電ペーストを用いて、
前記異方性導電ペースト層に光を照射することにより硬化を進行させて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を形成し、
前記Bステージ化された異方性導電ペースト層を加熱して本硬化させて、硬化物層を形成する、請求項7に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項9】
第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを塗布するために用いられる塗布装置であって、
前記第1の接続対象部材上に、前記異方性導電ペーストを塗布するためのディスペンサーと、
前記第1の接続対象部材上に塗布された異方性導電ペーストの表面形状をかえるための形状規制部材とを備える、塗布装置。
【請求項10】
前記ディスペンサーと前記形状規制部材とが接続されている、請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記ディスペンサーと前記形状規制部材とが連動して移動するように構成されている、請求項9又は10に記載の塗布装置。
【請求項12】
第1の接続対象部材上に、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを塗布し、該異方性導電ペーストに光を照射するために用いられる塗布装置であって、
光照射装置をさらに備える、請求項9〜11のいずれか1項に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178401(P2012−178401A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39619(P2011−39619)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】