接触式変位測長器
【課題】接触式変位測長器による被測定物の計測において、正確で再現性のある計測結果を得ること。
【解決手段】第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体2と、第1の移動体2を駆動する駆動部3と、第1の移動体2の移動に連動して第1の直線方向に平行な第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体4と、第2の移動体4の先端に交換可能に取り付けられた測定子8と、測定子8が被測定物に当接した状態のときに被測定物に及ぼす測定力を第2の移動体4の後端において検出する測定力検出部9と、第2の移動体4の移動量を測定子8と測定力検出部9の間において検出する位置検出部10と、測定力検出部9の出力に応じて測定力を一定に保つように第1の移動体2の移動量を制御する制御装置300と、を備える。
【解決手段】第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体2と、第1の移動体2を駆動する駆動部3と、第1の移動体2の移動に連動して第1の直線方向に平行な第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体4と、第2の移動体4の先端に交換可能に取り付けられた測定子8と、測定子8が被測定物に当接した状態のときに被測定物に及ぼす測定力を第2の移動体4の後端において検出する測定力検出部9と、第2の移動体4の移動量を測定子8と測定力検出部9の間において検出する位置検出部10と、測定力検出部9の出力に応じて測定力を一定に保つように第1の移動体2の移動量を制御する制御装置300と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接触式変位測長器に関し、特にスピンドルの先端に取り付けられた測定子を被測定物に対して低い測定力で当接させ、かつその測定力をスピンドルの動作範囲内において一定に保った状態で被測定物の計測を行う接触式変位測長器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触式変位測長器として、スピンドルの先端に被測定物との接触を検出するための測定力検出部を有し、スピンドルの中央部にスピンドルの変位を検出するための位置検出部を有し、さらにスピンドルの後端にスピンドルを軸線方向に可動させるためのリニアアクチュエータを有する構成のものが公知である(例えば、非特許文献1参照。)。このような構成の接触式変位測長器では、測定力検出部を介して位置検出部によって、被測定物の計測が行われる。
【0003】
図13は、上記非特許文献1に開示された接触式変位測長器の構成を示す概略図である。図13に示すように、フレーム100の中央部に、鉛直方向に移動するスピンドル101が設けられている。スピンドル101の先端部には、微小変位を発生させる圧電素子102を介して静電容量型変位検出器103とスタイラス104が取り付けられている。スタイラス104は、支持点を振動の節とし、両端を振動の腹とする一次モードで共振する振動子からなる。共振状態にある振動子のホーン先端が被測定物150に接触して拘束を受けると、スタイラス104の共振状態が変化する。
【0004】
この共振状態の変化を検出用電極が検出することによって、被測定物150にスタイラス104の先端が接触したことが検知される。また、スピンドル101の後端部には、粗大変位を発生させる可動コイル型アクチュエータ105が配置されている。この可動コイル型アクチュエータ105と圧電素子102による精粗駆動方式により、被測定物形状にスタイラス104の先端を追従させる際の微小な変位は圧電素子102によって行われ、大きな変位は可動コイル型アクチュエータ105によって行われる。
【0005】
被測定物形状のZ軸方向(スタイラス104の先端が接触している面に対して垂直な方向)の測定量としては、静電容量型変位検出器103によって検出される値が用いられる。また、被測定面の表面形状を計測する表面形状計測装置として、微小移動可能な移動体の下面に平行ばねを有し、その平行ばねの一端部に、被測定面に接触する触針を有し、移動体の変位量を検出するための移動体変位検出手段と、平行ばねの変位量を検出する弾性体変位検出手段を有する構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−147886号公報
【非特許文献1】西村 国俊、外7名、“非破壊表面形状ナノ測定機の開発”、[online]、新エネルギー・産業技術総合開発機構、[平成16年1月30日検索]、インターネット<URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/ann-mtg/fy11/seika/98y28001/98y28001s.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1に開示された接触式変位測長器では、スタイラスの先端が被測定物に接触して振動子の振動モードが変化すると、測定力検出部に歪みが生じ、測定力検出部自体の寸法が変化してしまう。そのため、被測定物を計測する際に誤差が生じて、正しい計測結果や再現性のある計測結果が得られないという問題点がある。また、被測定物に当接する部分がスタイラスで構成されているため、一般的な接触式変位測長器において用いられている、被測定物の形状に合った測定子を、スピンドルの先端に取り付けて測定を行うことができないという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献1に開示された表面形状計測装置では、触針が被測定面の表面形状に追随して上下動すると、それに伴って平行ばねが撓むため、平行ばねの先端に取り付けられている触針の横方向の位置が、平行ばねの基端側にずれてしまう。そのため、計測結果に誤差が生じるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、正確で再現性のある計測結果を得ることができる接触式変位測長器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる接触式変位測長器は、第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体と、前記第1の移動体を駆動する駆動部と、前記第1の移動体の移動に連動して前記第1の直線方向とは異なる第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体と、前記第2の移動体の先端に取り付けられた測定子と、前記測定子が被測定物に当接した状態のときに該被測定物に及ぼす測定力を前記第2の移動体の後端において検出する測定力検出部と、前記第2の移動体の移動量を前記測定子と前記測定力検出部の間において検出する位置検出部と、前記測定力検出部の出力に応じて前記測定力を一定に保つように前記第1の移動体の移動量を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2の直線方向は、前記第1の直線方向に平行であることを特徴とする。また、前記第2の移動体を前記第2の直線方向に移動可能に支持する支持部は、前記第1の移動体と一体化されており、前記第2の移動体は前記支持部に、同第2の移動体に前記第2の直線方向の一方の向きの力を付与する第1のコイルばねと、同第2の移動体に前記一方の向きと逆向きの力を付与する第2のコイルばねを介して支持されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された差動トランス本体と、前記第2の移動体の後端に設けられたコアよりなる差動トランスを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体とともに前記コアが移動し、そのコアの移動量を前記差動トランス本体で検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0013】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定されているとともに前記第2の移動体の後端に固定された薄板と、該薄板に貼り付けられた歪みゲージを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記薄板が歪み、その薄板の歪み量を前記歪みゲージで検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0014】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された第1の導電体と、該第1の導電体から離れ、かつ前記第2の移動体の後端に固定された第2の導電体を備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記第1の導電体と前記第2の導電体の間の距離が変化し、その導電体間の距離の変化に伴って変化する静電容量の変化量を検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0015】
また、前記制御装置は、前記第2の移動体の姿勢に応じて変化する測定力を補正する補正手段を備えていることを特徴とする。また、前記測定子は、前記第2の移動体に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、測定子と測定力検出部の間に位置検出部が設けられていることにより、測定力検出部の歪みの影響が位置検出部に及ぶのを防ぐことができるので、測定力検出部の歪みによる誤差を含まない計測結果を得ることができる。また、第1の移動体の移動範囲において測定力が一定で低い値となり、被測定物に加わる荷重が小さくなるので、測定子の接触による被測定物の変形を抑えることができる。従って、より正確で再現性のある計測結果を得ることができる。また、支持部が第1の移動体から独立していることにより、第1の移動体の移動に伴って生じる摩擦変動等による負荷変動の影響が測定力検出部に及ぶのを防ぐことができるので、安定した測定力を保つことができる。
【0017】
また、第2の移動体が支持部の両端に第1のコイルばねと第2のコイルばねで支持されていることにより、第2の移動体と測定子を合わせた重さとの均衡をとることができるので、被測定物に適当な測定力を与えることができる。また、第1のコイルばねと第2のコイルばねのばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択することによって、第2の移動体の移動量と差動トランスの出力値の関係においてリニアリティの高い範囲を利用して被測定物の計測を行うことができる。
【0018】
また、第2の移動体の姿勢、すなわち第2の移動体の傾き具合に応じて第2の移動体と測定子を合わせた重さの鉛直成分が変化し、それが原因で測定力が変化してしまうが、その測定力の変化分を補正することができる。従って、例えば被測定物に測定子を下から当てたり、横から当てるなど、あらゆる姿勢で被測定物の計測を行うことができる。また、一般的な接触式変位測長器において用いられている、被測定物の形状に合った測定子を用いて被測定物の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる接触式変位測長器によれば、被測定物が変形しない程度の一定で低い測定力でもって被測定物の計測を行い、正確で再現性のある計測結果を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる接触式変位測長器の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明にかかる接触式変位測長器の構成を示す概略図である。図1に示すように、実施の形態の接触式変位測長器は、図示しない被測定物に当接させられる検出器200と、検出器200の制御を行う制御装置300からなる。検出器200と制御装置300がケーブル400を介して接続されている。また、制御装置300には、検出器200により得られた計測結果を表示し、また記録するためのコンピュータ500がケーブル600を介して接続されている。
【0022】
まず、検出器200の構成について説明する。制御装置300については後述する。図2は、検出器200の一例の要部を示す斜視図である。図2に示すように、フレーム1内に、第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体2と、この第1の移動体2を駆動する駆動部3と、第2の移動体4が納められている。第2の移動体4は、第1の移動体2に固定された支持部5と、その支持部5の両端に設けられた圧縮コイルばね6,7により、第2の直線方向に往復移動が可能な状態で支持されている。
【0023】
第2の移動体4は、支持部5および圧縮コイルばね6,7を介して、第1の移動体2の移動に連動して移動する。第1の直線方向と第2の直線方向は、一致していないが、平行である。第2の移動体4の先端には、測定子8が着脱可能に取り付けられている。測定子8は、図示しない被測定物の形状等に応じて最適なものに交換される。
【0024】
また、フレーム1内には、測定子8が被測定物に当接した状態のときに被測定物に及ぼす測定力を検出する測定力検出部9と、第2の移動体4の移動量を検出する位置検出部10が納められている。測定力検出部9は、第2の移動体4の後端において測定力を検出する。位置検出部10は、測定子8と測定力検出部9の間、すなわち測定力検出部9よりも測定子8に近い側において第2の移動体4の移動量を検出する。第2の移動体4の先端は、フレーム1に設けられたステム11内を通ってフレーム1の外に突き出ている。
【0025】
フレーム1の開口部は、図示しない蓋体により塞がれる。この接触式変位測長器では、後述する制御装置300(図1参照)が、測定力検出部9により検出された測定力を一定に保つように、駆動部3による第1の移動体2の移動を制御し、それによって、一定の測定力で被測定物の計測を行う。検出器200は、フレーム1内の図示省略した回路基板(図2参照)に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に接続される(図1参照)。そのケーブルは、フレーム1に設けられたケーブル取り出し口12を介して、フレーム1の外に引き出される。
【0026】
図3は、図2に示す検出器200の分解斜視図である。図3に示すように、駆動部3は、リニアアクチュエータの一種である、例えばヨ字状のヨーク13と磁石14とコイル15よりなるボイスコイル型リニアモータ(VCM)により構成されている。コイル15は、図示しないケーブルを介して制御装置300に接続される(図1参照)。コイル15には、例えば棒状の第1の移動体2の一端が固定されている。第1の移動体2の他端は、前記支持部5とともにリニアガイド16に固定されている。
【0027】
リニアガイド16は、リニアガイド取り付け板17に設けられた直線状の案内レール18に案内されて、前記第1の直線方向に往復移動する。つまり、第1の移動体2は、駆動部3の駆動力に応じて、リニアガイド16および案内レール18に案内されて第1の直線方向に往復移動する。その第1の移動体2の移動に伴って、第2の移動体4が測定範囲内で第2の直線方向に移動する。
【0028】
リニアガイド取り付け板17は、フレーム1に固定されている。支持部5は、リニアガイド取り付け板17に一端が取り付けられた引っ張りばね19によって駆動部3側に吊り上げられている。これは、駆動部3が非通電状態のときに第2の移動体4が自重により自由に動いてしまうのを抑えるためである。
【0029】
第2の移動体4は、棒状のスピンドル20と、その後端に設けられた磁性体よりなるコア21により構成されている。スピンドル20は、前記圧縮コイルばね6,7と支持部5に通され、スケール22を保持するスケールホルダー23に固定されている。支持部5は、スケールホルダー23に、圧縮コイルばね6,7の弾性復帰力によってスケールホルダー23に対して移動可能なように取り付けられている。スピンドル20が測定力に応じて移動するように、支持部5は、ボールスライドによって構成されている。
【0030】
また、リニアガイド取り付け板17には、LED等の発光素子24と、フォトダイオード上に固定スケールパターンが焼き付けられた受光IC25が、スケール22を挟んで対向するように取り付けられている。位置検出部10は、これら発光素子24、受光IC25およびスケール22により構成される光学式のエンコーダである。スケール22には、第2の直線方向に対して垂直な方向に伸びる明部と暗部が第2の直線方向に交互に並ぶ縞が形成されている。
【0031】
そして、スピンドル20の移動に伴ってスケール22が発光素子24と受光IC25の間で移動すると、発光素子24から発せられた光が受光IC25に明滅する状態で届く。受光IC25は、光の明滅を受光し、明(「1」)と暗(「0」)の2値よりなるデジタル信号に変換し出力する。このデジタル信号のパルス数をカウントし、そのカウント数と、予め設定されている1カウントあたりの移動量のかけ算を行うことによって、スピンドル20の移動量が検出される。位置検出部10の分解能、すなわち1カウントあたりのスピンドル20の移動量は、特に限定しないが、例えば0.1μmである。
【0032】
受光IC25は、フレキシブル・プリント基板(FPC)26を介して回路基板27に接続されている。回路基板27には、フレキシブル・プリント基板26が接続されるコネクタ28が設けられている。受光IC25の受光信号は、フレキシブル・プリント基板26を介して回路基板27に送られ、さらに回路基板27に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に送られる(図1参照)。
【0033】
測定力検出部9は、2つのコイルを有する差動トランス本体29およびスピンドル20の後端のコア21よりなる差動トランスと、前記圧縮コイルばね6,7により構成されている。差動トランス本体29は、ブラケットを介して第1の移動体2に固定されており、第1の移動体2とともに移動する。コア21は、スピンドル20の移動によって差動トランス本体29の2つのコイルの近傍を移動する。差動トランス本体29に対するコア21の移動可能な範囲は、特に限定しないが、例えば約1mmである。それに対して、差動トランス本体29の移動可能な範囲、すなわち第1の移動体2の移動可能な範囲は、コア21の移動可能な範囲よりも広い。
【0034】
差動トランス本体29の2つのコイルに交流電圧が印加された励磁状態でコア21が移動すると、2つのコイルのリアクタンスが変化して、コア21の移動量に応じた出力電圧が得られる。この出力電圧に基づいて測定力が検出される。測定力検出部9の出力信号は、図示しないケーブルを介して回路基板27に送られ、さらに回路基板27に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に送られる(図1参照)。
【0035】
スピンドル20の位置は、スピンドル20、測定子8、コア21、スケール22およびスケールホルダー23を合わせた重さと、支持部5を挟む2つの圧縮コイルばね6,7の弾性復帰力の均衡によって決まる。これは、例えば検出器の姿勢が、被測定物に測定子8を上から当てる姿勢(以下、正姿勢とする)である場合だけでなく、下から当てる姿勢(以下、逆姿勢とする)や、横から当てる姿勢(以下、横姿勢とする)や、斜め下または斜め上から当てる姿勢(以下、斜め姿勢とする)の場合も同様である。
【0036】
正姿勢で計測を行う場合には、測定子8側に位置する第1の圧縮コイルばね6がスピンドル20等の負荷を支える。一方、逆姿勢で計測を行う場合には、コア21側に位置する第2の圧縮コイルばね7がスピンドル20等の負荷を支える。横姿勢や斜め姿勢で計測を行う場合には、2つの圧縮コイルばね6,7が均衡状態にある。
【0037】
ここで、支持部5を挟む2つの圧縮コイルばね6,7のばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択することによって、スピンドル20の移動量と差動トランスの出力値の関係が高いリニアリティを有する範囲を利用して被測定物の計測を行うことができる。例えば図4は、圧縮コイルばね6,7のばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択した場合のスピンドル20の移動量に対して差動トランスの出力電圧値(増幅値)とその変化量の一例をプロットした特性図である。
【0038】
図4に示すような特性の場合、例えば検出器200が、横姿勢であるときにスピンドル20が差動トランスの本来のゼロ点から1.5mmずれたところに位置するように、圧縮コイルばね6,7を選択すればよい。この場合、特に限定しないが、例えば検出器の姿勢に応じてスピンドル20の位置が±0.2mm程度変位するような設計であれば、差動トランスの出力電圧値(増幅値)は、±500mV程度変化することになるが、図4に示す例では、この変化の範囲は、十分にリニアリティの高い範囲に含まれている。
【0039】
次に、制御装置300について説明する。図5は、検出器200および制御装置300の構成を示すブロック図である。図5において、各ブロックをつなぐ線のうち、二重線は機械的な結合を表し、矢印線は電気的な結合を表し矢印が指し示す向きに信号が流れる。検出器200において、駆動部3、測定力検出部9、位置検出部10、スピンドル20および測定子8の機械的な結合の構成は、上述した通りである。
【0040】
検出器200の回路基板27には、検波器31、アンプ32および波形発生器33が設けられている。一方、制御装置300には、パワーアンプ34、デジタル・アナログ変換器(D/A)35、アナログ・デジタル変換器(A/D)36、CPU37、カウンタ38およびホスト・インターフェース39が設けられている。
【0041】
波形発生器33は、交流信号を生成して測定力検出部9に供給する。測定力検出部9のコイルは、この交流信号により励磁される。検波器31は、測定子8が被測定物に触れてスピンドル20が押されることによって測定力検出部9から出力された測定力検出信号を検波する。アンプ32は、検波器31の出力信号を増幅する。このアンプ32により増幅された信号が、図4に示す差動トランスの特性図における差動トランスの出力電圧値(増幅値)である。
【0042】
アンプ32により増幅された信号は、制御装置300のアナログ・デジタル変換器36に送られる。アナログ・デジタル変換器36は、アンプ32から受け取ったアナログ信号をデジタル信号に変換して、CPU37に供給する。CPU37は、アナログ・デジタル変換器36から受け取った信号に基づいて、測定力が一定の低い値となるようにスピンドル20の位置を制御するための制御信号を生成する。その制御信号は、デジタル・アナログ変換器35に供給される。
【0043】
デジタル・アナログ変換器35は、CPU37から供給された制御信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。その際、オペレータは、デジタル・アナログ変換器35におけるデジタル・アナログ変換量(間引き量)を任意に設定することができ、それによってスピンドル20の移動速度を調節することができる。パワーアンプ34は、デジタル・アナログ変換器35により変換されたアナログ信号を、検出器200の駆動部3を駆動するレベルまで増幅して検出器200の駆動部3に供給する。駆動部3は、パワーアンプ34から供給された駆動信号に基づいて、スピンドル20等の部材を駆動する。
【0044】
一方、スピンドル20の変位に伴って位置検出部10から出力された位置検出信号は、制御装置300のカウンタ38に送られる。カウンタ38は、位置検出部10から受け取ったデジタル信号のパルス数をカウントする。ただし、被測定物の計測開始時に、カウンタ38の値が初期値に戻される。
【0045】
カウンタ38は、カウント値をCPU37に供給する。CPU37は、検波器31、アンプ32およびアナログ・デジタル変換器36を介して測定力検出部9から供給された測定力検出信号と、カウンタ38を介して位置検出部10から供給された位置検出信号を、RS232CやRS485等のシリアル通信用のホスト・インターフェース39を介して、ホスト・コンピュータ500に送る。コンピュータ500は、送られてきた測定データをディスプレイの画面501(図1参照)に表示したり、ハードディスク等の記録装置に記録する。また、コンピュータ500から検出器200の動作の開始や停止を行うことができるようになっている。
【0046】
次に、図6〜図8に示すフローチャートを参照しながら検出器200および制御装置300の動作を説明する。オペレータが制御装置300の電源を投入すると、CPU37は、CPU37の内蔵メモリから被測定物の計測処理プログラムを読み出し、被測定物の計測処理を開始する。計測処理が開始されると、まず、CPU37は、測定力検出部9から出力されたアナログの測定力検出信号を検波器31、アンプ32およびアナログ・デジタル変換器36を介してデジタル信号に変換して取り込む(図6、ステップS1)。
【0047】
続いて、測定力を判定する。すなわち、CPU37は、ステップS1で取り込んだ測定力検出信号よりなる測定力検出値と、CPU37の内蔵メモリに予め設定された値(以下、設定値とする)を比較し、測定子8に過大な負荷がかかっているか否かを判定する(図6、ステップS2)。その結果、ステップS1で取り込んだ測定力検出値が設定値よりも高い場合(ステップS2:「H」)には、CPU37は、何らかの異状事態が発生して測定子8に過大な負荷がかかっていると判断して、コンピュータ500にエラー信号を送る。そして、コンピュータ500は、ディスプレイの画面501(図1参照)にエラーメッセージを表示する(図6、ステップS8)。
【0048】
一方、ステップS2での判定の結果、測定子8に過大な負荷がかかっていない場合、すなわちステップS1で取り込んだ測定力検出値が設定値よりも低い場合(ステップS2:「L」)には、CPU37は、検出器200がスタンバイ状態(測定開始可能な状態)にあることをオペレータに知らせる(図6、ステップS3)。知らせる手段としては、例えばCPU37の入出力ポートに接続された発光ダイオード(図1または図5では省略されている)を点灯させてもよいし、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)にスタンバイ状態であることを知らせるメッセージやシンボルなどを表示させてもよい。あるいは、音などでオペレータに知らせてもよい。
【0049】
続いて、オペレータは、スタンバイ状態にあることを確認し、コンピュータ500を操作して測定開始を指示するか、制御装置300の開始スイッチ(図1または図5では省略されている)を操作する(図6、ステップS4)。それによって、CPU37は、図8に示す測定力設定処理のサブルーチンを実行する(図6、ステップS5)。測定力設定処理のサブルーチンでは、CPU37は、再び測定力検出部9から測定力検出値を取り込み、その値を基準値(ゼロ点)とする(図8、ステップS19)。このとき、CPU37は、カウンタ38の値を初期値に戻す。
【0050】
そして、CPU37は、ステップS19で設定した測定力の基準値に対してある値を加算して測定力比較値とする(図8、ステップS20)。オペレータは、基準値に加算する値を任意に決めることができる。このように、測定力の基準値を設定し、その基準値を用いて測定力比較値を設定するのは、検出器200の姿勢(正姿勢、逆止性、横姿勢または斜め姿勢)に応じてスピンドル20の初期位置が異なり、それによって測定力が異なるので、計測時の検出器200の姿勢においてスピンドル20が初期位置にあるときの測定力を基準にするためである。このように、制御装置300は、被測定物を計測する際の検出器200の姿勢に応じて変化する測定力を補正する手段を有している。
【0051】
測定力比較値を設定したら、CPU37は、測定力検出部9から測定力検出値を取り込む(図6、ステップS6)。そして、CPU37は、ステップS6で取り込んだ測定力検出値と、CPU37の内蔵メモリの設定値を再び比較し、測定子8に過大な負荷がかかっているか否かを判定する(図6、ステップS7)。その結果、測定子8に過大な負荷がかかっている場合(ステップS7:「H」)には、ステップS8へ進み、CPU37は、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)にエラーメッセージを表示させる。
【0052】
ステップS7での判定の結果、測定子8に過大な負荷がかかっていない場合(ステップS7:「L」)には、CPU37は、スピンドル20を被測定物側へ移動させる、すなわち行き動作を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、デジタル・アナログ変換器35でアナログ信号に変換され、パワーアンプ34で検出器200の駆動部3を駆動するレベルまで増幅され、駆動部3に供給される。それによって、駆動部3が駆動され、スピンドル20が被測定物側へ移動する(図7、ステップS12)。
【0053】
続いて、CPU37は、測定力検出部9から測定力検出値を取り込む(図7、ステップS13)。そして、CPU37は、その取り込んだ測定力検出値がCPU37の内蔵メモリの設定値に対して許容される範囲内に入っているか否かを判定する(図7、ステップS14)。判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲に入っていない場合(「MID」ではない場合)には、その測定力検出値が設定値の許容範囲の最大値よりも大きいのか、あるいは最小値よりも小さいのかを判定する(図7、ステップS17)。
【0054】
その判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲の最大値よりも大きい場合(ステップS17:「H」の場合)には、CPU37は、スピンドル20を測定力検出部9側へ移動させる、すなわち戻り動作を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、デジタル・アナログ変換器35およびパワーアンプ34を経て検出器200の駆動部3に供給される。それによって、駆動部3が駆動され、スピンドル20が測定力検出部9側へ移動する(図7、ステップS18)。その後、ステップS13へ進み、測定力検出値の取り込みを行い、ステップS14の判定を行う。
【0055】
一方、ステップS17での判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲の最小値よりも小さい場合(ステップS17:「L」)には、ステップS12へ進み、スピンドル20の行き動作を行った後にステップS13へ進み、測定力検出値の取り込みを行い、ステップS14の判定を行う。ステップS14での判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲に入っている場合(「MID」の場合)には、CPU37は、測定力が適当な大きさであると判断し、そのときの測定力検出値と位置検出値を制御装置300の表示部301,302(図1参照)に表示するとともに、コンピュータ500に送る。コンピュータ500は、送られてきた測定力検出値と位置検出値をディスプレイの画面501(図1参照)に表示し、またハードディスク等の記録装置に記録する(図7、ステップS15)。
【0056】
その後、CPU37は、割り込みを許可し(図7、ステップS16)、ステップS13に戻る。以後、割り込みが発生するまで、ステップS12〜S18を繰り返し、被測定物の計測を継続する。計測を継続している最中に、オペレータがコンピュータ500を操作して測定完了を指示するか、制御装置300の終了スイッチ(図1または図5では省略されている)を操作すると、割り込みが発生する(図6、ステップS9)。
【0057】
そして、例えばステップS3で発光ダイオードを点灯させていれば、その発光ダイオードが消灯する(図6、ステップS10)。あるいは、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)に測定完了であることを知らせるメッセージやシンボルなどを表示させたり、音などを発してもよい。その後、スピンドル20を元に戻し(図6、ステップS11)、計測を終了する。
【0058】
以上説明したように、実施の形態によれば、測定子8と測定力検出部9の間に位置検出部10が設けられていることにより、測定力検出部9の歪みの影響が位置検出部10に及ぶのを防ぐことができるので、測定力検出部9の歪みによる誤差を含まない計測結果を得ることができる。また、スピンドル20の移動範囲において測定力が一定で低い値となり、被測定物に加わる荷重が小さくなるので、測定子8の接触による被測定物の変形を抑えることができる。従って、より正確で再現性のある計測結果を得ることができる。
【0059】
また、支持部5が第1の移動体2から独立していることにより、第1の移動体2の移動に伴ってリニアガイド16等で生じる摩擦変動等による負荷変動の影響が測定力検出部9に及ぶのを防ぐことができるので、安定した測定力を保つことができる。また、第2の移動体4を支持する支持部5が2つの圧縮コイルばね6,7で支持されていることにより、第2の移動体4と測定子8を合わせた重さとの均衡をとることができるので、被測定物に適当な測定力を与えることができる。
【0060】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、図9に示すように、図示しない第1の移動体2にブラケットを介して支持部材51が固定され、その支持部材51に薄板52が接着剤53により固定され、その薄板52の両面に歪みゲージ54が貼り付けられ、薄板52にスピンドル20の後端がねじ部材55により固定された構成の測定力検出部59を用いてもよい。この測定力検出部59によれば、測定子8が被測定物に接触してスピンドル20が押し上げられると、薄板20が二点鎖線56で示すように湾曲し、歪みゲージ54に曲げ方向の応力が生じることによって、測定力を検出することができる。
【0061】
あるいは、図10に示すように、図示しない第1の移動体2にブラケットを介して支持部材61が固定され、その支持部材61に一対の導電体62,63が隙間をあけて接着剤64により固定されており、スピンドル20が一方の導電体62を変位させ得る構成の測定力検出部69を用いてもよい。この測定力検出部69によれば、測定子8が被測定物に接触してスピンドル20が押し上げられると、一対の導電体62,63の間の隙間が変化して静電容量が変化することによって、測定力を検出することができる。
【0062】
また、図11に示すように、ヨークの形状が日字状をしたボイスコイル型リニアモータにより構成された駆動部73を用いてもよい。あるいは、図12に示すように、ステッピングモータ81でボールネジ84を回転させることにより、そのボールネジ84に螺合している第1の移動体82が移動する構成の駆動部83を用いてもよい。また、実施の形態中に記載した移動量や電圧値などの数値は一例であり、本発明はそれらの値に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる接触式変位測長器は、種々の製造物の部品等の寸法を計測する装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる接触式変位測長器の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す検出器の一例の要部を示す斜視図である。
【図3】図2に示す検出器を分解して示す斜視図である。
【図4】検出器の測定力検出部の出力特性を示す特性図である。
【図5】検出器および制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】検出器および制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】図6の続きを示すフローチャートである。
【図8】測定力設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図9】測定力検出部の別の例を示す正面図である。
【図10】測定力検出部のさらに別の例を示す正面図である。
【図11】検出器の別の例の要部を示す斜視図である。
【図12】検出器のさらに別の例の要部を示す斜視図である。
【図13】従来の接触式変位測長器の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
2,82 第1の移動体
3,73,83 駆動部
4 第2の移動体
5 支持部
6 第1のコイルばね
7 第2のコイルばね
8 測定子
9,59,69 測定力検出部
10 位置検出部
21 コア
29 差動トランス本体
52 薄板
54 歪みゲージ
62,63 導電体
200 検出器
300 制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、接触式変位測長器に関し、特にスピンドルの先端に取り付けられた測定子を被測定物に対して低い測定力で当接させ、かつその測定力をスピンドルの動作範囲内において一定に保った状態で被測定物の計測を行う接触式変位測長器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触式変位測長器として、スピンドルの先端に被測定物との接触を検出するための測定力検出部を有し、スピンドルの中央部にスピンドルの変位を検出するための位置検出部を有し、さらにスピンドルの後端にスピンドルを軸線方向に可動させるためのリニアアクチュエータを有する構成のものが公知である(例えば、非特許文献1参照。)。このような構成の接触式変位測長器では、測定力検出部を介して位置検出部によって、被測定物の計測が行われる。
【0003】
図13は、上記非特許文献1に開示された接触式変位測長器の構成を示す概略図である。図13に示すように、フレーム100の中央部に、鉛直方向に移動するスピンドル101が設けられている。スピンドル101の先端部には、微小変位を発生させる圧電素子102を介して静電容量型変位検出器103とスタイラス104が取り付けられている。スタイラス104は、支持点を振動の節とし、両端を振動の腹とする一次モードで共振する振動子からなる。共振状態にある振動子のホーン先端が被測定物150に接触して拘束を受けると、スタイラス104の共振状態が変化する。
【0004】
この共振状態の変化を検出用電極が検出することによって、被測定物150にスタイラス104の先端が接触したことが検知される。また、スピンドル101の後端部には、粗大変位を発生させる可動コイル型アクチュエータ105が配置されている。この可動コイル型アクチュエータ105と圧電素子102による精粗駆動方式により、被測定物形状にスタイラス104の先端を追従させる際の微小な変位は圧電素子102によって行われ、大きな変位は可動コイル型アクチュエータ105によって行われる。
【0005】
被測定物形状のZ軸方向(スタイラス104の先端が接触している面に対して垂直な方向)の測定量としては、静電容量型変位検出器103によって検出される値が用いられる。また、被測定面の表面形状を計測する表面形状計測装置として、微小移動可能な移動体の下面に平行ばねを有し、その平行ばねの一端部に、被測定面に接触する触針を有し、移動体の変位量を検出するための移動体変位検出手段と、平行ばねの変位量を検出する弾性体変位検出手段を有する構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−147886号公報
【非特許文献1】西村 国俊、外7名、“非破壊表面形状ナノ測定機の開発”、[online]、新エネルギー・産業技術総合開発機構、[平成16年1月30日検索]、インターネット<URL:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/ann-mtg/fy11/seika/98y28001/98y28001s.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1に開示された接触式変位測長器では、スタイラスの先端が被測定物に接触して振動子の振動モードが変化すると、測定力検出部に歪みが生じ、測定力検出部自体の寸法が変化してしまう。そのため、被測定物を計測する際に誤差が生じて、正しい計測結果や再現性のある計測結果が得られないという問題点がある。また、被測定物に当接する部分がスタイラスで構成されているため、一般的な接触式変位測長器において用いられている、被測定物の形状に合った測定子を、スピンドルの先端に取り付けて測定を行うことができないという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献1に開示された表面形状計測装置では、触針が被測定面の表面形状に追随して上下動すると、それに伴って平行ばねが撓むため、平行ばねの先端に取り付けられている触針の横方向の位置が、平行ばねの基端側にずれてしまう。そのため、計測結果に誤差が生じるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、正確で再現性のある計測結果を得ることができる接触式変位測長器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる接触式変位測長器は、第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体と、前記第1の移動体を駆動する駆動部と、前記第1の移動体の移動に連動して前記第1の直線方向とは異なる第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体と、前記第2の移動体の先端に取り付けられた測定子と、前記測定子が被測定物に当接した状態のときに該被測定物に及ぼす測定力を前記第2の移動体の後端において検出する測定力検出部と、前記第2の移動体の移動量を前記測定子と前記測定力検出部の間において検出する位置検出部と、前記測定力検出部の出力に応じて前記測定力を一定に保つように前記第1の移動体の移動量を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2の直線方向は、前記第1の直線方向に平行であることを特徴とする。また、前記第2の移動体を前記第2の直線方向に移動可能に支持する支持部は、前記第1の移動体と一体化されており、前記第2の移動体は前記支持部に、同第2の移動体に前記第2の直線方向の一方の向きの力を付与する第1のコイルばねと、同第2の移動体に前記一方の向きと逆向きの力を付与する第2のコイルばねを介して支持されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された差動トランス本体と、前記第2の移動体の後端に設けられたコアよりなる差動トランスを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体とともに前記コアが移動し、そのコアの移動量を前記差動トランス本体で検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0013】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定されているとともに前記第2の移動体の後端に固定された薄板と、該薄板に貼り付けられた歪みゲージを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記薄板が歪み、その薄板の歪み量を前記歪みゲージで検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0014】
また、前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された第1の導電体と、該第1の導電体から離れ、かつ前記第2の移動体の後端に固定された第2の導電体を備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記第1の導電体と前記第2の導電体の間の距離が変化し、その導電体間の距離の変化に伴って変化する静電容量の変化量を検出することによって、測定力を検出することを特徴とする。
【0015】
また、前記制御装置は、前記第2の移動体の姿勢に応じて変化する測定力を補正する補正手段を備えていることを特徴とする。また、前記測定子は、前記第2の移動体に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、測定子と測定力検出部の間に位置検出部が設けられていることにより、測定力検出部の歪みの影響が位置検出部に及ぶのを防ぐことができるので、測定力検出部の歪みによる誤差を含まない計測結果を得ることができる。また、第1の移動体の移動範囲において測定力が一定で低い値となり、被測定物に加わる荷重が小さくなるので、測定子の接触による被測定物の変形を抑えることができる。従って、より正確で再現性のある計測結果を得ることができる。また、支持部が第1の移動体から独立していることにより、第1の移動体の移動に伴って生じる摩擦変動等による負荷変動の影響が測定力検出部に及ぶのを防ぐことができるので、安定した測定力を保つことができる。
【0017】
また、第2の移動体が支持部の両端に第1のコイルばねと第2のコイルばねで支持されていることにより、第2の移動体と測定子を合わせた重さとの均衡をとることができるので、被測定物に適当な測定力を与えることができる。また、第1のコイルばねと第2のコイルばねのばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択することによって、第2の移動体の移動量と差動トランスの出力値の関係においてリニアリティの高い範囲を利用して被測定物の計測を行うことができる。
【0018】
また、第2の移動体の姿勢、すなわち第2の移動体の傾き具合に応じて第2の移動体と測定子を合わせた重さの鉛直成分が変化し、それが原因で測定力が変化してしまうが、その測定力の変化分を補正することができる。従って、例えば被測定物に測定子を下から当てたり、横から当てるなど、あらゆる姿勢で被測定物の計測を行うことができる。また、一般的な接触式変位測長器において用いられている、被測定物の形状に合った測定子を用いて被測定物の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる接触式変位測長器によれば、被測定物が変形しない程度の一定で低い測定力でもって被測定物の計測を行い、正確で再現性のある計測結果を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる接触式変位測長器の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明にかかる接触式変位測長器の構成を示す概略図である。図1に示すように、実施の形態の接触式変位測長器は、図示しない被測定物に当接させられる検出器200と、検出器200の制御を行う制御装置300からなる。検出器200と制御装置300がケーブル400を介して接続されている。また、制御装置300には、検出器200により得られた計測結果を表示し、また記録するためのコンピュータ500がケーブル600を介して接続されている。
【0022】
まず、検出器200の構成について説明する。制御装置300については後述する。図2は、検出器200の一例の要部を示す斜視図である。図2に示すように、フレーム1内に、第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体2と、この第1の移動体2を駆動する駆動部3と、第2の移動体4が納められている。第2の移動体4は、第1の移動体2に固定された支持部5と、その支持部5の両端に設けられた圧縮コイルばね6,7により、第2の直線方向に往復移動が可能な状態で支持されている。
【0023】
第2の移動体4は、支持部5および圧縮コイルばね6,7を介して、第1の移動体2の移動に連動して移動する。第1の直線方向と第2の直線方向は、一致していないが、平行である。第2の移動体4の先端には、測定子8が着脱可能に取り付けられている。測定子8は、図示しない被測定物の形状等に応じて最適なものに交換される。
【0024】
また、フレーム1内には、測定子8が被測定物に当接した状態のときに被測定物に及ぼす測定力を検出する測定力検出部9と、第2の移動体4の移動量を検出する位置検出部10が納められている。測定力検出部9は、第2の移動体4の後端において測定力を検出する。位置検出部10は、測定子8と測定力検出部9の間、すなわち測定力検出部9よりも測定子8に近い側において第2の移動体4の移動量を検出する。第2の移動体4の先端は、フレーム1に設けられたステム11内を通ってフレーム1の外に突き出ている。
【0025】
フレーム1の開口部は、図示しない蓋体により塞がれる。この接触式変位測長器では、後述する制御装置300(図1参照)が、測定力検出部9により検出された測定力を一定に保つように、駆動部3による第1の移動体2の移動を制御し、それによって、一定の測定力で被測定物の計測を行う。検出器200は、フレーム1内の図示省略した回路基板(図2参照)に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に接続される(図1参照)。そのケーブルは、フレーム1に設けられたケーブル取り出し口12を介して、フレーム1の外に引き出される。
【0026】
図3は、図2に示す検出器200の分解斜視図である。図3に示すように、駆動部3は、リニアアクチュエータの一種である、例えばヨ字状のヨーク13と磁石14とコイル15よりなるボイスコイル型リニアモータ(VCM)により構成されている。コイル15は、図示しないケーブルを介して制御装置300に接続される(図1参照)。コイル15には、例えば棒状の第1の移動体2の一端が固定されている。第1の移動体2の他端は、前記支持部5とともにリニアガイド16に固定されている。
【0027】
リニアガイド16は、リニアガイド取り付け板17に設けられた直線状の案内レール18に案内されて、前記第1の直線方向に往復移動する。つまり、第1の移動体2は、駆動部3の駆動力に応じて、リニアガイド16および案内レール18に案内されて第1の直線方向に往復移動する。その第1の移動体2の移動に伴って、第2の移動体4が測定範囲内で第2の直線方向に移動する。
【0028】
リニアガイド取り付け板17は、フレーム1に固定されている。支持部5は、リニアガイド取り付け板17に一端が取り付けられた引っ張りばね19によって駆動部3側に吊り上げられている。これは、駆動部3が非通電状態のときに第2の移動体4が自重により自由に動いてしまうのを抑えるためである。
【0029】
第2の移動体4は、棒状のスピンドル20と、その後端に設けられた磁性体よりなるコア21により構成されている。スピンドル20は、前記圧縮コイルばね6,7と支持部5に通され、スケール22を保持するスケールホルダー23に固定されている。支持部5は、スケールホルダー23に、圧縮コイルばね6,7の弾性復帰力によってスケールホルダー23に対して移動可能なように取り付けられている。スピンドル20が測定力に応じて移動するように、支持部5は、ボールスライドによって構成されている。
【0030】
また、リニアガイド取り付け板17には、LED等の発光素子24と、フォトダイオード上に固定スケールパターンが焼き付けられた受光IC25が、スケール22を挟んで対向するように取り付けられている。位置検出部10は、これら発光素子24、受光IC25およびスケール22により構成される光学式のエンコーダである。スケール22には、第2の直線方向に対して垂直な方向に伸びる明部と暗部が第2の直線方向に交互に並ぶ縞が形成されている。
【0031】
そして、スピンドル20の移動に伴ってスケール22が発光素子24と受光IC25の間で移動すると、発光素子24から発せられた光が受光IC25に明滅する状態で届く。受光IC25は、光の明滅を受光し、明(「1」)と暗(「0」)の2値よりなるデジタル信号に変換し出力する。このデジタル信号のパルス数をカウントし、そのカウント数と、予め設定されている1カウントあたりの移動量のかけ算を行うことによって、スピンドル20の移動量が検出される。位置検出部10の分解能、すなわち1カウントあたりのスピンドル20の移動量は、特に限定しないが、例えば0.1μmである。
【0032】
受光IC25は、フレキシブル・プリント基板(FPC)26を介して回路基板27に接続されている。回路基板27には、フレキシブル・プリント基板26が接続されるコネクタ28が設けられている。受光IC25の受光信号は、フレキシブル・プリント基板26を介して回路基板27に送られ、さらに回路基板27に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に送られる(図1参照)。
【0033】
測定力検出部9は、2つのコイルを有する差動トランス本体29およびスピンドル20の後端のコア21よりなる差動トランスと、前記圧縮コイルばね6,7により構成されている。差動トランス本体29は、ブラケットを介して第1の移動体2に固定されており、第1の移動体2とともに移動する。コア21は、スピンドル20の移動によって差動トランス本体29の2つのコイルの近傍を移動する。差動トランス本体29に対するコア21の移動可能な範囲は、特に限定しないが、例えば約1mmである。それに対して、差動トランス本体29の移動可能な範囲、すなわち第1の移動体2の移動可能な範囲は、コア21の移動可能な範囲よりも広い。
【0034】
差動トランス本体29の2つのコイルに交流電圧が印加された励磁状態でコア21が移動すると、2つのコイルのリアクタンスが変化して、コア21の移動量に応じた出力電圧が得られる。この出力電圧に基づいて測定力が検出される。測定力検出部9の出力信号は、図示しないケーブルを介して回路基板27に送られ、さらに回路基板27に接続された図示しないケーブルを介して制御装置300に送られる(図1参照)。
【0035】
スピンドル20の位置は、スピンドル20、測定子8、コア21、スケール22およびスケールホルダー23を合わせた重さと、支持部5を挟む2つの圧縮コイルばね6,7の弾性復帰力の均衡によって決まる。これは、例えば検出器の姿勢が、被測定物に測定子8を上から当てる姿勢(以下、正姿勢とする)である場合だけでなく、下から当てる姿勢(以下、逆姿勢とする)や、横から当てる姿勢(以下、横姿勢とする)や、斜め下または斜め上から当てる姿勢(以下、斜め姿勢とする)の場合も同様である。
【0036】
正姿勢で計測を行う場合には、測定子8側に位置する第1の圧縮コイルばね6がスピンドル20等の負荷を支える。一方、逆姿勢で計測を行う場合には、コア21側に位置する第2の圧縮コイルばね7がスピンドル20等の負荷を支える。横姿勢や斜め姿勢で計測を行う場合には、2つの圧縮コイルばね6,7が均衡状態にある。
【0037】
ここで、支持部5を挟む2つの圧縮コイルばね6,7のばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択することによって、スピンドル20の移動量と差動トランスの出力値の関係が高いリニアリティを有する範囲を利用して被測定物の計測を行うことができる。例えば図4は、圧縮コイルばね6,7のばね定数や初期の弾性変形量を適当に選択した場合のスピンドル20の移動量に対して差動トランスの出力電圧値(増幅値)とその変化量の一例をプロットした特性図である。
【0038】
図4に示すような特性の場合、例えば検出器200が、横姿勢であるときにスピンドル20が差動トランスの本来のゼロ点から1.5mmずれたところに位置するように、圧縮コイルばね6,7を選択すればよい。この場合、特に限定しないが、例えば検出器の姿勢に応じてスピンドル20の位置が±0.2mm程度変位するような設計であれば、差動トランスの出力電圧値(増幅値)は、±500mV程度変化することになるが、図4に示す例では、この変化の範囲は、十分にリニアリティの高い範囲に含まれている。
【0039】
次に、制御装置300について説明する。図5は、検出器200および制御装置300の構成を示すブロック図である。図5において、各ブロックをつなぐ線のうち、二重線は機械的な結合を表し、矢印線は電気的な結合を表し矢印が指し示す向きに信号が流れる。検出器200において、駆動部3、測定力検出部9、位置検出部10、スピンドル20および測定子8の機械的な結合の構成は、上述した通りである。
【0040】
検出器200の回路基板27には、検波器31、アンプ32および波形発生器33が設けられている。一方、制御装置300には、パワーアンプ34、デジタル・アナログ変換器(D/A)35、アナログ・デジタル変換器(A/D)36、CPU37、カウンタ38およびホスト・インターフェース39が設けられている。
【0041】
波形発生器33は、交流信号を生成して測定力検出部9に供給する。測定力検出部9のコイルは、この交流信号により励磁される。検波器31は、測定子8が被測定物に触れてスピンドル20が押されることによって測定力検出部9から出力された測定力検出信号を検波する。アンプ32は、検波器31の出力信号を増幅する。このアンプ32により増幅された信号が、図4に示す差動トランスの特性図における差動トランスの出力電圧値(増幅値)である。
【0042】
アンプ32により増幅された信号は、制御装置300のアナログ・デジタル変換器36に送られる。アナログ・デジタル変換器36は、アンプ32から受け取ったアナログ信号をデジタル信号に変換して、CPU37に供給する。CPU37は、アナログ・デジタル変換器36から受け取った信号に基づいて、測定力が一定の低い値となるようにスピンドル20の位置を制御するための制御信号を生成する。その制御信号は、デジタル・アナログ変換器35に供給される。
【0043】
デジタル・アナログ変換器35は、CPU37から供給された制御信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。その際、オペレータは、デジタル・アナログ変換器35におけるデジタル・アナログ変換量(間引き量)を任意に設定することができ、それによってスピンドル20の移動速度を調節することができる。パワーアンプ34は、デジタル・アナログ変換器35により変換されたアナログ信号を、検出器200の駆動部3を駆動するレベルまで増幅して検出器200の駆動部3に供給する。駆動部3は、パワーアンプ34から供給された駆動信号に基づいて、スピンドル20等の部材を駆動する。
【0044】
一方、スピンドル20の変位に伴って位置検出部10から出力された位置検出信号は、制御装置300のカウンタ38に送られる。カウンタ38は、位置検出部10から受け取ったデジタル信号のパルス数をカウントする。ただし、被測定物の計測開始時に、カウンタ38の値が初期値に戻される。
【0045】
カウンタ38は、カウント値をCPU37に供給する。CPU37は、検波器31、アンプ32およびアナログ・デジタル変換器36を介して測定力検出部9から供給された測定力検出信号と、カウンタ38を介して位置検出部10から供給された位置検出信号を、RS232CやRS485等のシリアル通信用のホスト・インターフェース39を介して、ホスト・コンピュータ500に送る。コンピュータ500は、送られてきた測定データをディスプレイの画面501(図1参照)に表示したり、ハードディスク等の記録装置に記録する。また、コンピュータ500から検出器200の動作の開始や停止を行うことができるようになっている。
【0046】
次に、図6〜図8に示すフローチャートを参照しながら検出器200および制御装置300の動作を説明する。オペレータが制御装置300の電源を投入すると、CPU37は、CPU37の内蔵メモリから被測定物の計測処理プログラムを読み出し、被測定物の計測処理を開始する。計測処理が開始されると、まず、CPU37は、測定力検出部9から出力されたアナログの測定力検出信号を検波器31、アンプ32およびアナログ・デジタル変換器36を介してデジタル信号に変換して取り込む(図6、ステップS1)。
【0047】
続いて、測定力を判定する。すなわち、CPU37は、ステップS1で取り込んだ測定力検出信号よりなる測定力検出値と、CPU37の内蔵メモリに予め設定された値(以下、設定値とする)を比較し、測定子8に過大な負荷がかかっているか否かを判定する(図6、ステップS2)。その結果、ステップS1で取り込んだ測定力検出値が設定値よりも高い場合(ステップS2:「H」)には、CPU37は、何らかの異状事態が発生して測定子8に過大な負荷がかかっていると判断して、コンピュータ500にエラー信号を送る。そして、コンピュータ500は、ディスプレイの画面501(図1参照)にエラーメッセージを表示する(図6、ステップS8)。
【0048】
一方、ステップS2での判定の結果、測定子8に過大な負荷がかかっていない場合、すなわちステップS1で取り込んだ測定力検出値が設定値よりも低い場合(ステップS2:「L」)には、CPU37は、検出器200がスタンバイ状態(測定開始可能な状態)にあることをオペレータに知らせる(図6、ステップS3)。知らせる手段としては、例えばCPU37の入出力ポートに接続された発光ダイオード(図1または図5では省略されている)を点灯させてもよいし、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)にスタンバイ状態であることを知らせるメッセージやシンボルなどを表示させてもよい。あるいは、音などでオペレータに知らせてもよい。
【0049】
続いて、オペレータは、スタンバイ状態にあることを確認し、コンピュータ500を操作して測定開始を指示するか、制御装置300の開始スイッチ(図1または図5では省略されている)を操作する(図6、ステップS4)。それによって、CPU37は、図8に示す測定力設定処理のサブルーチンを実行する(図6、ステップS5)。測定力設定処理のサブルーチンでは、CPU37は、再び測定力検出部9から測定力検出値を取り込み、その値を基準値(ゼロ点)とする(図8、ステップS19)。このとき、CPU37は、カウンタ38の値を初期値に戻す。
【0050】
そして、CPU37は、ステップS19で設定した測定力の基準値に対してある値を加算して測定力比較値とする(図8、ステップS20)。オペレータは、基準値に加算する値を任意に決めることができる。このように、測定力の基準値を設定し、その基準値を用いて測定力比較値を設定するのは、検出器200の姿勢(正姿勢、逆止性、横姿勢または斜め姿勢)に応じてスピンドル20の初期位置が異なり、それによって測定力が異なるので、計測時の検出器200の姿勢においてスピンドル20が初期位置にあるときの測定力を基準にするためである。このように、制御装置300は、被測定物を計測する際の検出器200の姿勢に応じて変化する測定力を補正する手段を有している。
【0051】
測定力比較値を設定したら、CPU37は、測定力検出部9から測定力検出値を取り込む(図6、ステップS6)。そして、CPU37は、ステップS6で取り込んだ測定力検出値と、CPU37の内蔵メモリの設定値を再び比較し、測定子8に過大な負荷がかかっているか否かを判定する(図6、ステップS7)。その結果、測定子8に過大な負荷がかかっている場合(ステップS7:「H」)には、ステップS8へ進み、CPU37は、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)にエラーメッセージを表示させる。
【0052】
ステップS7での判定の結果、測定子8に過大な負荷がかかっていない場合(ステップS7:「L」)には、CPU37は、スピンドル20を被測定物側へ移動させる、すなわち行き動作を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、デジタル・アナログ変換器35でアナログ信号に変換され、パワーアンプ34で検出器200の駆動部3を駆動するレベルまで増幅され、駆動部3に供給される。それによって、駆動部3が駆動され、スピンドル20が被測定物側へ移動する(図7、ステップS12)。
【0053】
続いて、CPU37は、測定力検出部9から測定力検出値を取り込む(図7、ステップS13)。そして、CPU37は、その取り込んだ測定力検出値がCPU37の内蔵メモリの設定値に対して許容される範囲内に入っているか否かを判定する(図7、ステップS14)。判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲に入っていない場合(「MID」ではない場合)には、その測定力検出値が設定値の許容範囲の最大値よりも大きいのか、あるいは最小値よりも小さいのかを判定する(図7、ステップS17)。
【0054】
その判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲の最大値よりも大きい場合(ステップS17:「H」の場合)には、CPU37は、スピンドル20を測定力検出部9側へ移動させる、すなわち戻り動作を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、デジタル・アナログ変換器35およびパワーアンプ34を経て検出器200の駆動部3に供給される。それによって、駆動部3が駆動され、スピンドル20が測定力検出部9側へ移動する(図7、ステップS18)。その後、ステップS13へ進み、測定力検出値の取り込みを行い、ステップS14の判定を行う。
【0055】
一方、ステップS17での判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲の最小値よりも小さい場合(ステップS17:「L」)には、ステップS12へ進み、スピンドル20の行き動作を行った後にステップS13へ進み、測定力検出値の取り込みを行い、ステップS14の判定を行う。ステップS14での判定の結果、測定力検出値が設定値の許容範囲に入っている場合(「MID」の場合)には、CPU37は、測定力が適当な大きさであると判断し、そのときの測定力検出値と位置検出値を制御装置300の表示部301,302(図1参照)に表示するとともに、コンピュータ500に送る。コンピュータ500は、送られてきた測定力検出値と位置検出値をディスプレイの画面501(図1参照)に表示し、またハードディスク等の記録装置に記録する(図7、ステップS15)。
【0056】
その後、CPU37は、割り込みを許可し(図7、ステップS16)、ステップS13に戻る。以後、割り込みが発生するまで、ステップS12〜S18を繰り返し、被測定物の計測を継続する。計測を継続している最中に、オペレータがコンピュータ500を操作して測定完了を指示するか、制御装置300の終了スイッチ(図1または図5では省略されている)を操作すると、割り込みが発生する(図6、ステップS9)。
【0057】
そして、例えばステップS3で発光ダイオードを点灯させていれば、その発光ダイオードが消灯する(図6、ステップS10)。あるいは、コンピュータ500のディスプレイの画面501(図1参照)に測定完了であることを知らせるメッセージやシンボルなどを表示させたり、音などを発してもよい。その後、スピンドル20を元に戻し(図6、ステップS11)、計測を終了する。
【0058】
以上説明したように、実施の形態によれば、測定子8と測定力検出部9の間に位置検出部10が設けられていることにより、測定力検出部9の歪みの影響が位置検出部10に及ぶのを防ぐことができるので、測定力検出部9の歪みによる誤差を含まない計測結果を得ることができる。また、スピンドル20の移動範囲において測定力が一定で低い値となり、被測定物に加わる荷重が小さくなるので、測定子8の接触による被測定物の変形を抑えることができる。従って、より正確で再現性のある計測結果を得ることができる。
【0059】
また、支持部5が第1の移動体2から独立していることにより、第1の移動体2の移動に伴ってリニアガイド16等で生じる摩擦変動等による負荷変動の影響が測定力検出部9に及ぶのを防ぐことができるので、安定した測定力を保つことができる。また、第2の移動体4を支持する支持部5が2つの圧縮コイルばね6,7で支持されていることにより、第2の移動体4と測定子8を合わせた重さとの均衡をとることができるので、被測定物に適当な測定力を与えることができる。
【0060】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、図9に示すように、図示しない第1の移動体2にブラケットを介して支持部材51が固定され、その支持部材51に薄板52が接着剤53により固定され、その薄板52の両面に歪みゲージ54が貼り付けられ、薄板52にスピンドル20の後端がねじ部材55により固定された構成の測定力検出部59を用いてもよい。この測定力検出部59によれば、測定子8が被測定物に接触してスピンドル20が押し上げられると、薄板20が二点鎖線56で示すように湾曲し、歪みゲージ54に曲げ方向の応力が生じることによって、測定力を検出することができる。
【0061】
あるいは、図10に示すように、図示しない第1の移動体2にブラケットを介して支持部材61が固定され、その支持部材61に一対の導電体62,63が隙間をあけて接着剤64により固定されており、スピンドル20が一方の導電体62を変位させ得る構成の測定力検出部69を用いてもよい。この測定力検出部69によれば、測定子8が被測定物に接触してスピンドル20が押し上げられると、一対の導電体62,63の間の隙間が変化して静電容量が変化することによって、測定力を検出することができる。
【0062】
また、図11に示すように、ヨークの形状が日字状をしたボイスコイル型リニアモータにより構成された駆動部73を用いてもよい。あるいは、図12に示すように、ステッピングモータ81でボールネジ84を回転させることにより、そのボールネジ84に螺合している第1の移動体82が移動する構成の駆動部83を用いてもよい。また、実施の形態中に記載した移動量や電圧値などの数値は一例であり、本発明はそれらの値に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる接触式変位測長器は、種々の製造物の部品等の寸法を計測する装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる接触式変位測長器の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す検出器の一例の要部を示す斜視図である。
【図3】図2に示す検出器を分解して示す斜視図である。
【図4】検出器の測定力検出部の出力特性を示す特性図である。
【図5】検出器および制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】検出器および制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】図6の続きを示すフローチャートである。
【図8】測定力設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図9】測定力検出部の別の例を示す正面図である。
【図10】測定力検出部のさらに別の例を示す正面図である。
【図11】検出器の別の例の要部を示す斜視図である。
【図12】検出器のさらに別の例の要部を示す斜視図である。
【図13】従来の接触式変位測長器の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
2,82 第1の移動体
3,73,83 駆動部
4 第2の移動体
5 支持部
6 第1のコイルばね
7 第2のコイルばね
8 測定子
9,59,69 測定力検出部
10 位置検出部
21 コア
29 差動トランス本体
52 薄板
54 歪みゲージ
62,63 導電体
200 検出器
300 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体と、
前記第1の移動体を駆動する駆動部と、
前記第1の移動体の移動に連動して前記第1の直線方向とは異なる第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体と、
前記第2の移動体の先端に取り付けられた測定子と、
前記測定子が被測定物に当接した状態のときに該被測定物に及ぼす測定力を前記第2の移動体の後端において検出する測定力検出部と、
前記第2の移動体の移動量を前記測定子と前記測定力検出部の間において検出する位置検出部と、
前記測定力検出部の出力に応じて前記測定力を一定に保つように前記第1の移動体の移動量を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする接触式変位測長器。
【請求項2】
前記第2の直線方向は、前記第1の直線方向に平行であることを特徴とする請求項1に記載の接触式変位測長器。
【請求項3】
前記第2の移動体を前記第2の直線方向に移動可能に支持する支持部は、前記第1の移動体と一体化されており、前記第2の移動体は前記支持部に、同第2の移動体に前記第2の直線方向の一方の向きの力を付与する第1のコイルばねと、同第2の移動体に前記一方の向きと逆向きの力を付与する第2のコイルばねを介して支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接触式変位測長器。
【請求項4】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された差動トランス本体と、前記第2の移動体の後端に設けられたコアよりなる差動トランスを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体とともに前記コアが移動し、そのコアの移動量を前記差動トランス本体で検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項5】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定されているとともに前記第2の移動体の後端に固定された薄板と、該薄板に貼り付けられた歪みゲージを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記薄板が歪み、その薄板の歪み量を前記歪みゲージで検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項6】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された第1の導電体と、該第1の導電体から離れ、かつ前記第2の移動体の後端に固定された第2の導電体を備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記第1の導電体と前記第2の導電体の間の距離が変化し、その導電体間の距離の変化に伴って変化する静電容量の変化量を検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2の移動体の姿勢に応じて変化する測定力を補正する補正手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の接触式変位測長器。
【請求項8】
前記測定子は、前記第2の移動体に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の接触式変位測長器。
【請求項1】
第1の直線方向に往復移動が可能な第1の移動体と、
前記第1の移動体を駆動する駆動部と、
前記第1の移動体の移動に連動して前記第1の直線方向とは異なる第2の直線方向に往復移動が可能な第2の移動体と、
前記第2の移動体の先端に取り付けられた測定子と、
前記測定子が被測定物に当接した状態のときに該被測定物に及ぼす測定力を前記第2の移動体の後端において検出する測定力検出部と、
前記第2の移動体の移動量を前記測定子と前記測定力検出部の間において検出する位置検出部と、
前記測定力検出部の出力に応じて前記測定力を一定に保つように前記第1の移動体の移動量を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする接触式変位測長器。
【請求項2】
前記第2の直線方向は、前記第1の直線方向に平行であることを特徴とする請求項1に記載の接触式変位測長器。
【請求項3】
前記第2の移動体を前記第2の直線方向に移動可能に支持する支持部は、前記第1の移動体と一体化されており、前記第2の移動体は前記支持部に、同第2の移動体に前記第2の直線方向の一方の向きの力を付与する第1のコイルばねと、同第2の移動体に前記一方の向きと逆向きの力を付与する第2のコイルばねを介して支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接触式変位測長器。
【請求項4】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された差動トランス本体と、前記第2の移動体の後端に設けられたコアよりなる差動トランスを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体とともに前記コアが移動し、そのコアの移動量を前記差動トランス本体で検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項5】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定されているとともに前記第2の移動体の後端に固定された薄板と、該薄板に貼り付けられた歪みゲージを備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記薄板が歪み、その薄板の歪み量を前記歪みゲージで検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項6】
前記測定力検出部は、前記第1の移動体に固定された第1の導電体と、該第1の導電体から離れ、かつ前記第2の移動体の後端に固定された第2の導電体を備えており、前記第1のコイルばねと前記第2のコイルばねの変形によって前記第2の移動体が移動し、その第2の移動体の移動によって前記第1の導電体と前記第2の導電体の間の距離が変化し、その導電体間の距離の変化に伴って変化する静電容量の変化量を検出することによって、測定力を検出することを特徴とする請求項3に記載の接触式変位測長器。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2の移動体の姿勢に応じて変化する測定力を補正する補正手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の接触式変位測長器。
【請求項8】
前記測定子は、前記第2の移動体に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の接触式変位測長器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−266903(P2006−266903A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86062(P2005−86062)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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