描画装置、物品の製造方法、及び処理装置
【課題】 真空室内のデバイスに高速かつ大量に信号を伝送するにあたり、該デバイスへの熱の流入の少なさの点で有利な技術を提供する。
【解決手段】 複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置は、減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、第1基板と、を備える。前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含む。前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている。
【解決手段】 複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置は、減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、第1基板と、を備える。前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含む。前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、物品の製造方法、及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、真空装置内に設置された電子デバイスは温度により特性が変化するため、発熱源を冷却しやすい真空室外に配置することが行われている。図12の真空装置は、真空室内401に配置されたフォトダイオード301によりレーザービーム222を検出し、増幅器306にて受光量に比例してパルス波形を発生させている。検出周波数の増大に伴い、増幅器306の発熱が増大し、その発熱がフォトダイオード301の検出特性を低下させるため、真空フィードスルー304を介して増幅器306を真空室の外部402に配置している。増幅器306は、真空室の外部402に配置されたことにより、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、また、フォトダイオード301と離れて配置されることによりフォトダイオード301への熱の伝達を防いでいる。しかし、フォトダイオード301と増幅器306の伝送距離が延びることにより、伝送特性の低下が課題となっている。また、このような電子デバイスを大量に必要とする真空装置では、真空フィードスルー304を含む実装のサイズが制約となり、設置できる電子デバイスの数が限られるという問題が起きている。
【0003】
また、同様に、発熱による影響が懸念される電子デバイスを含み、その電子デバイスへの信号の伝送路が問題となる真空装置としてマルチ荷電粒子線描画装置がある。従来の荷電粒子線描画装置におけるブランキング偏向器のブランキング電極208とそれらを駆動するドライバ及び駆動信号を伝送する伝送路の例を図14、図15に示す。ブランキング偏向器16の制御回路5は、ドライバ501に駆動信号を出力する。この出力は信号ケーブル201を介して中継基板520のインターフェースコネクタ202に接続され、配線パターンによって電子光学鏡筒206を通過する。駆動信号の終端回路であるターミネータ504を通過した駆動信号は、真空シール510を通過しコンタクトユニット505を経由してブランキング偏向器16に接続される。ブランキング偏向器16の上には各ブランキング開口507に一対ずつ設けられたブランキング電極208が配置され、コンタクトユニット505から配線パターン506を通して駆動信号がそれらブランキング電極208に接続されている。また、冷却器209から導入管514、中継基板520、排出管513に冷却液を通して、ターミネータ504で発生する熱を除去し、電子光学鏡筒206や真空シール510より内側にある部材の熱変形や特性変化を制御する工夫がなされている。
【0004】
このようなマルチ荷電粒子線描画装置において、更なるスループット向上が望まれている。マルチ荷電粒子線描画装置のスループットの向上には、描画を繰り返す間隔である描画周期の短縮が有効であるが、そのためには、ブランキング時間を短くすることが必要であり、ブランキング偏向器16への制御信号の周波数が上がる。マルチ荷電粒子線描画装置のスループットの向上には、1つの荷電粒子線源における描画範囲である画角の拡大も有効であり、アパーチャアレイにより分割される荷電粒子線の数を増やすことが考えられる。そのためには、分割された電子線を制御する、静電レンズ、ブランキング偏向器16の増加、その増加に伴うレンズ、電極、ひいては電極までの配線の増加が必要となる。
【0005】
描画周期を短縮するには制御信号を高速に伝送する必要がある。しかし、限られた基板の範囲内で、描画周期を短縮するために伝送特性を維持あるいは向上させることと、画角を拡大するために配線数を増やすこととは、相反するものである。さらに、従来は電子光学鏡筒外から電子光学鏡筒内のほぼ中心に配置される電極まで中継基板の配線パターンを介して信号が伝送され、その配線長は、電子光学鏡筒の半径に近い値(数百mm)となる。現在、ブランキング電極の駆動信号の周波数成分への要求は、装置の高速化に伴い1GHz近傍にまで達しようとしている。このような信号帯域においては、伝送路の容量と直流抵抗の制約が大きい。例えば伝送路の幅を2μmで設計した場合、ブランキング電極の静電容量を除いた線路の容量を1.5PF、直流抵抗を300Ωとすると、その他諸条件から求められる許容線路長は僅か15mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−7538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、マルチ荷電粒子線描画装置のスループットを向上する為には、高速(高周波)で且つ大容量の信号を伝送することが必要となり、そのために、配線領域を広げて配線パターンのサイズを大きくするか、配線長を短くすることが必要となる。まず、配線領域を広げる方法として、配線を多層化することが容易に想像できる。この場合、複数の電極から、多層配線デバイス、多層配線基板、中継基板を経てケーブルにて制御信号発生部より接続される複数本の伝送路が構成される。こうした工夫は一定の効果が得られるが、多層化できる層数にも製造上の限界が有り、現在実現可能な層数(約50層)では所望の伝送特性を維持しながらの高密度配線、実装は難しい状況に有る。
【0008】
一方、基板の配線長を短くするために、配線よりも低インピーダンスのケーブルを電子光学鏡筒内に真空フィードスルーし、ブランキング電極アレイ近傍に光電変換素子やシリアル−パラレル変換器を配置することで、基板の配線長を短くする方法が考えられる。しかし、ブランキング電極アレイ近傍で光電変換素子やシリアル−パラレル変換器が発熱するため、ブランキング電極アレイ構造に描画精度上無視できない程の幾何学的歪を発生させてしまう懸念がある。また、電子光学鏡筒内でケーブルの実装ボリュームが問題になるほか、ケーブルや光電変換素子からのアウトガスへの対策が必要であり、装置サイズ及びコストの増加に繋がる。以上の方法では、配線長を短くして伝送特性は改善できるが、別の課題が発生してしまう。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みて為されたものであり、真空室内のデバイスに高速かつ大量に信号を伝送するにあたり、該デバイスへの熱の流入の少なさの点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの側面は、複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置であって、減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、第1基板と、を備え、前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含み、前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、減圧室内のデバイスに高速かつ大量に信号を伝送するにあたり、該デバイスへの熱の流入の少なさの点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マルチ荷電粒子線描画装置の構成を示した図である。
【図2】実施例1のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図3】実施例2のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図4】実施例3のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図5】実施例4のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図6】実施例4のブランキング偏向器の別構成を示した図である。
【図7】実施例5のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図8】実施例6のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図9】実施例7のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図10】実施例8のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図11】実施例8のブランキング偏向器の別構成を示した図である。
【図12】従来の真空装置の構成を示した図である。
【図13】実施例9による真空装置の構成を示した図である。
【図14】従来のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図15】従来のブランキング偏向器の断面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について添付の図面を用いて説明する。図1は、複数の荷電粒子線それぞれを基板に荷電粒子線が入射するオン状態又は基板に荷電粒子線が入射しないオフ状態に制御しながら基板上にパターンを描画する描画装置(荷電粒子線描画装置)を示す。この実施形態では、荷電粒子線描画装置の一例としてのマルチ電子線描画装置の構成を示している。電子銃9はクロスオーバ10を形成する。12、13はクロスオーバ10から発散した電子の軌道を示している。クロスオーバ10から発散した電子は、電磁レンズで構成されたコリメーターレンズ11の作用により平行ビームとなり、アパーチャアレイ14に入射する。アパーチャアレイ14は、マトリクス状に配列した複数の円形状の開口を有し、入射した電子ビームは複数の電子線に分割される。アパーチャアレイ14を通過した電子線は、円形状の開口を有した3枚の電極板(図中では、3枚を一体で図示している)から構成される静電レンズ15に入射する。
【0014】
静電レンズ15が最初にクロスオーバを形成する位置に開口をマトリクス状に配置したブランキングアパーチャ17が配置される。マトリクス状に電極を配置したブランキング偏向器(ブランキングデバイス)16は、複数の電子線それぞれを基板に電子ビームが入射するオン状態又は基板に電子ビームが入射しないオフ状態(ブランキング状態)に制御する。ブランキング状態では、ブランキング偏向器16により偏向された電子線がブランキングアパーチャ17により遮断される。ブランキング偏向器16は、描画パターンの発生回路2、ビットマップ変換回路3、ブランキング指令の生成回路4によって生成されるブランキング信号により制御される。ブランキング偏向器16によりオン状態とされブランキングアパーチャ17を通過した電子ビームは、第2の静電レンズ19により結像され、ウエハ又はマスクなどの基板(試料)20上に元のクロスオーバの像を結像する。描画中、試料20はX方向にステージ21により連続的に移動し、レーザー測長器による測長結果を基準として試料20の表面上の像が偏向器18によりY方向に偏向され、かつブランキング偏向器16でブランキングされる。また、排気系の制御部30により、後述の排気系の制御を行う。
【0015】
[実施例1]
図2は電子線描画装置における実施例1のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。ブランキング指令値は信号ケーブル201を介してブランキング偏向器16のインターフェースコネクタ202に接続される。ここで、ブランキング指令値の伝送には、伝送する信号ケーブル201に光ファイバを用いて光信号での高速シリアル通信を行う。インターフェースコネクタ202は光電変換素子であり、ここで電気信号に変換されたのち、シリアルーパラレル変換器203(シリアル−パラレル変換器)により各ブランキング電極208を駆動するための駆動信号が生成される。駆動信号は、シリコン基板204の貫通ビアに充填された電極205を介して、電子光学鏡筒206内のブランキング電極アレイ207へと接続される。ブランキング電極アレイ207上で、不図示の多層配線を経由してブランキング電極208へと接続され、駆動信号に応じてブランキング電極208に電圧を印加する。インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、それぞれ、ブランキング偏向器16の制御回路5を構成する要素または電子部品(デバイスともいう)である。
【0016】
ブランキング偏向器16が配置される減圧室(第1減圧室)401と第2の静電レンズ19が配置される減圧室(第2減圧室)403と電子光学鏡筒206外の外部室(第3室)402とを仕切る隔壁の一部にシリコン基板(第1基板)204を用いる。ここで、外部室(第3室)402の真空度(減圧度)は、第1減圧室401及び第2減圧室403の真空度よりも低く、常圧(大気圧)であってもよい。また、第1減圧室401と第2減圧室403の真空度は、同じであっても互いに異なっていてもよい。ブランキング偏向器16の制御回路5を構成する要素である、発熱量の大きなインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、前室402に配置される。シリコン基板204は、第1減圧室401と外部室402とを仕切る隔壁の少なくとも一部を構成する第1領域を含む。ここで、シリコン基板204は、第1減圧室401と第2減圧室403とを仕切る障壁の少なくとも一部を構成する第2領域を含んでいてもよい。この場合、当該第2領域は、電子ビームが通過する貫通孔を有する。シリコン基板204の第1領域は、電極205を有する。電極205は、シリコン基板204の第1領域に形成された貫通ビアに第1減圧室401から外部室402に亙って充填されている。外部室402に配置されたインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、電子光学鏡筒206内の第1減圧室401に配置されたブランキング電極208に電極205を介して電気的に接続されている。そのため、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203からブランキング電極208までの配線長を大幅に短縮することが可能となり、信号伝送路の伝送特性を大きく改善することができる。また、通常真空フィードスルーに用いられる同軸コネクタの直径とコネクタ間隔とが数mmから数十mmのオーダーであるのに対し、シリコン基板204の電極205が充填される貫通ビアの直径と貫通ビア相互の間隔とは数十μmから数百μmオーダーと小さい。そのため、大量の配線をより少ない実装面積で電子光学鏡筒206外から引き込むことが可能となる。さらに、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203を電子光学鏡筒206外に配置する。そうすることにより、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、ブランキング電極アレイ207への熱の流出を抑えることができる。
【0017】
[実施例2]
図3は実施例2のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。電子光学鏡筒206内の第1減圧室401は真空度が高いため、電子光学鏡筒206外の外部室の一部である前室402aとの圧力差が大きい場合、隔壁であるシリコン基板204に問題となる程の応力変形が生じるおそれがある。この対策として、第1減圧室401と前室402aとの間に中間室402bを設ける。中間室402bは、差動排気により第1減圧室401の圧力と前室402aの圧力との間の圧力に減圧され、圧力差を段階的とすることでシリコン基板204の応力変形を抑制する。図3に示すように、前室402aと中間室402bとを区切る隔壁に真空フィードスルー(コネクタ)302を設けてケーブル201とインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とを接続する。電子光学鏡筒206の内部の電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対して、貫通ビアに充填した電極205を有するシリコン基板(第1基板)204を隔壁として用いる。インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とブランキング電極アレイ207とは、シリコン基板204の貫通ビアに充填した電極205を介して電気的に接続される。
【0018】
このように電子光学鏡筒206の内部で電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作る。第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を圧力センサ309により測定し、シリコン基板204の応力変形が問題とならない圧力差まで排気系310により中間室402bの圧力を調節する。圧力調整は、シリコン基板204の面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。以上の説明のように、電子線212が通過する第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作り、差動排気により中間室402bの圧力を調節することで、シリコン基板204の応力変形を抑える。
【0019】
[実施例3]
図4は実施例3のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。実施例3は実施例2と同様に圧力差によるシリコン基板の応力変形に対応した実施例である。図4に示すように、第1減圧室401と前室402aとの間に中間室402bを設ける。電子光学鏡筒206の内部で電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として用いる。中間室402bに配置されたインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とブランキング電極アレイ207とは、シリコン基板204の貫通ビアに充填された電極205を介して接続される。シリコン基板204には電極に加えてオリフィス(貫通孔)413が形成されており、第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を圧力センサ309により測定し、シリコン基板204の応力変形が問題とならない圧力差まで排気系310により圧力差を調節する。圧力調整は、シリコン基板204の面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整され、中間室402bの気圧は第1減圧室401より高く維持される。以上の説明のように、電子線212が通過する第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作り、差動排気により第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を調節することで、シリコン基板204の応力変形を抑える。実施例2と異なり、中間室402bと第1減圧室401を排気する排気系310を共通とすることでコストを抑える効果がある。
【0020】
[実施例4]。
【0021】
図5は実施例4のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送する伝送路を示す。図5に示すように、実施例1の構成に加えて、従来例のように、中継基板520を介して電子光学鏡筒206に入る伝送路(第2の伝送路)を設ける。ブランキング電極208の駆動信号のように、高速性を要する信号はシリコン基板204の電極205を介した伝送路(第1の伝送路)より伝送する。第2の伝送路の時間当たり伝送量(伝送路容量)は、第1の伝送路の時間当たり伝送量よりも小さい。電源供給や、初期化の設定の信号や、非同期信号のように高速性を要しない信号は中継基板520の伝送路より伝送する。このように信号の速度に応じて異なる伝送路を設けることで、より多くの伝送路を構成することが可能となる。また、実施例では中継基板520を構成しているが、図6のように、シリコン基板204自体で電子光学鏡筒206に入る他の伝送路に接続しても同様の効果が得られる。
【0022】
[実施例5]
図7は実施例5のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。本実施例では、ブランキング偏向器16が配置された第1減圧室401とインターフェースコネクタ202が配置された前室402aとの間に複数の中間室402bを設けている。複数の中間室402bのうち、第1減圧室401側に位置する中間室は、中間室と第1減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された第2中間室を構成している。第1減圧室401とそれに接続された中間室402bとは電極205を有する第1シリコン基板204で仕切られている。前室402aとそれに接続された中間室402bとは、電極205を有する第2シリコン基板204b(第2基板)で仕切られている。2つの中間室402bは、電極205を有する第3シリコン基板204a(第3基板)で仕切られている。2つの中間室402bには、電子部品752が配置されている。各電子部品752は、例えばシリアルーパラレル変換器や、駆動信号を生成する素子、駆動信号の補正情報の記憶されたメモリなどである。
【0023】
ブランキング指令値は信号ケーブル201を介してインターフェースコネクタ202に接続される。ブランキング指令値は、インターフェースコネクタ202から、各シリコン基板204〜204bの電極205と2つの中間室402bに配置された電子部品752とを介して第1減圧室401に配置されたブランキング電極アレイ207へ接続される。各電子部品752は、電極205で相互接続されるため、高速に信号を処理することが可能となる。このため、通常、電子光学鏡筒206外に実装された不図示のドライバ基板で行っていた処理を、電子光学鏡筒206の内部の中間室402bで行うことが可能となり、電子光学鏡筒206外の実装を減らすことができる。また、インターフェースコネクタ202を第1減圧室401から最も遠い電子光学鏡筒206外の前室402aに配置する。それにより、インターフェースコネクタ202は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、ブランキング電極アレイ207への熱の流出を抑えることができる。
【0024】
[実施例6]
図8は実施例6のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。電子光学鏡筒206の内部は高真空であるため、電子光学鏡筒206の内外の圧力差が大きい場合、シリコン基板204、204bに問題となる程の応力変形が生じる可能性がある。この対策として、第1減圧室401、複数の中間室402b、前室402aの間の圧力差を調整して、シリコン基板204、204bの応力変形を抑制する。電子光学鏡筒206にケーブル201又はコネクタ302を設けて電子光学鏡筒内に真空フィードスルーし、これらケーブル201又はフレキシブル基板の真空フィードスルー(コネクタ)302等をインターフェースコネクタ202と接続する。実施例5と同様にシリコン基板204、204bの電極205を介して電子部品752の接合を繰り返し、ブランキング指令値は、最終的に第1減圧室401に配置されたブランキング電極アレイ207へと接続される。
【0025】
シリコン基板204、204bで区切られた第1減圧室、各中間室402bに対し、圧力センサ309と排気系310を構成し、第1減圧室401、各中間室402b間の圧力差を複数の圧力センサ309により測定する。排気系の制御部30は、複数の圧力センサ309の検出結果に基づいて、シリコン基板204、204bの応力変形が許容範囲内となるように各排気系を制御する。第1減圧室401、各中間室402bの圧力調整は、シリコン基板204、204bの面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。以上のように、シリコン基板204、204bで区切られたた第1減圧室401、各中間室402bの圧力を調節することで、各シリコン基板204、204bの応力変形を抑える。実施例6では最も高真空度の第1減圧室401から前室402aへと順に圧力を上げた例である。(前室402aの圧力>中間室402bの圧力>第1減圧室401の圧力)
【0026】
[実施例7]
図9は実施例7のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。実施例7は実施例6と同様に圧力差によるシリコン基板204、204bの応力変形に対応した実施例である。図9に示すように、各シリコン基板204、204bには電極205に加えてオリフィス(貫通孔)413を設けている。また、実施例7では、第1減圧室401、各中間室402bの圧力差を1つの圧力センサ309により測定し、各シリコン基板204,204bの応力変形が問題とならないように排気系310により圧力差を調節する。圧力調整は、シリコン基板204、204bの面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。実施例7では、排気系310を共通とすることでコストを抑える効果がある。
【0027】
[実施例8]
図10は実施例8のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。図10に示すように、実施例5の構成に加えて、中継基板520を介して電子光学鏡筒206内の第1減圧室401に入る第2の伝送路を別途設ける。ブランキング電極208の駆動信号のように、高速性を要する信号はシリコン基板204の電極205を介した第1の伝送路より伝送する。電源供給や、初期化の設定の信号や、非同期信号のように高速性を要しない信号は中継基板520を介した第2の伝送路より伝送する。このように信号の速度に応じて時間当たり伝送量が異なる複数の伝送路を設けることで、より多くの伝送路を構成することが可能となる。また、実施例8では中継基板520を構成しているが、図11のように、シリコン基板204自体で第2の伝送路に接続しても同様の効果が得られる。
【0028】
[実施例9]
図13は、荷電粒子線描画装置以外の処理装置(減圧下または真空下で、試料(対象物)に対する加工、計測または検査の処理等、所定の処理を行う処理装置)の実施例を示している。真空空間(減圧室)401内にレーザー光222を検出するフォトダイオード(第1のデバイス)301が配置され、シリコン基板204(単に基板ともいう)の電極205を介して真空空間の外部402に配置された増幅器(第2のデバイス)306へと接続される。増幅器306でパルス波が生成され、A/D変換されたのち、不図示の制御系へと送信される。
【0029】
従来は信号の周波数が上がるに従って、増幅器306の発熱量が増大し、その影響により、フォトダイオード301はレーザー光量の検出を精度よく行うことができなかった。また、発熱源である増幅器306を、真空フィードスルーを介して真空空間の外部402に配置して冷却することが行われていたが、フォトダイオード301と増幅器306との伝送距離が延びたことにより、伝送特性の低下や実装サイズの大きさが問題となっていた。
【0030】
しかし、以上の説明のように、真空空間の隔壁としてシリコン基板204を用いることで、配線を伸ばすことなく増幅器306を真空空間の外部402に配置することが可能となっている。真空空間の外部402に配置された増幅器306は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、フォトダイオード301への熱の流出を抑えることができる。本実施例ではフォトダイオードを例に示したが、真空空間に設置された電子部品(デバイス)であって、該電子部品との間で信号を送信または受信し且つ熱源となり得る電子部品と接続される全ての電子部品に応用可能である。
【0031】
以上説明したように、本実施例は、貫通ビアに充填された電極205を介して両面側の配線層が相互接続された構造を有するシリコン基板204を処理装置の隔壁として備え、電子部品301をシリコン基板204の上に実装又は形成する。本実施例は、それによって、電子部品301への熱の流入を防止し、減圧室内へ多くの伝送路を敷設し、かつ、伝送路の周波数特性を向上することができる。
なお、(真空)隔壁を構成する基板は、以上の説明ではシリコン基板を例示したが、それには限定されず、隔壁として機能させられ且つ貫通電極を備えられるものであれば、他の材質の基板であってもよい。
【0032】
[デバイス製造方法]
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、感光剤が塗布された基板の該感光剤に上記の描画装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板に描画を行う工程)と、当該工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、物品の製造方法、及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、真空装置内に設置された電子デバイスは温度により特性が変化するため、発熱源を冷却しやすい真空室外に配置することが行われている。図12の真空装置は、真空室内401に配置されたフォトダイオード301によりレーザービーム222を検出し、増幅器306にて受光量に比例してパルス波形を発生させている。検出周波数の増大に伴い、増幅器306の発熱が増大し、その発熱がフォトダイオード301の検出特性を低下させるため、真空フィードスルー304を介して増幅器306を真空室の外部402に配置している。増幅器306は、真空室の外部402に配置されたことにより、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、また、フォトダイオード301と離れて配置されることによりフォトダイオード301への熱の伝達を防いでいる。しかし、フォトダイオード301と増幅器306の伝送距離が延びることにより、伝送特性の低下が課題となっている。また、このような電子デバイスを大量に必要とする真空装置では、真空フィードスルー304を含む実装のサイズが制約となり、設置できる電子デバイスの数が限られるという問題が起きている。
【0003】
また、同様に、発熱による影響が懸念される電子デバイスを含み、その電子デバイスへの信号の伝送路が問題となる真空装置としてマルチ荷電粒子線描画装置がある。従来の荷電粒子線描画装置におけるブランキング偏向器のブランキング電極208とそれらを駆動するドライバ及び駆動信号を伝送する伝送路の例を図14、図15に示す。ブランキング偏向器16の制御回路5は、ドライバ501に駆動信号を出力する。この出力は信号ケーブル201を介して中継基板520のインターフェースコネクタ202に接続され、配線パターンによって電子光学鏡筒206を通過する。駆動信号の終端回路であるターミネータ504を通過した駆動信号は、真空シール510を通過しコンタクトユニット505を経由してブランキング偏向器16に接続される。ブランキング偏向器16の上には各ブランキング開口507に一対ずつ設けられたブランキング電極208が配置され、コンタクトユニット505から配線パターン506を通して駆動信号がそれらブランキング電極208に接続されている。また、冷却器209から導入管514、中継基板520、排出管513に冷却液を通して、ターミネータ504で発生する熱を除去し、電子光学鏡筒206や真空シール510より内側にある部材の熱変形や特性変化を制御する工夫がなされている。
【0004】
このようなマルチ荷電粒子線描画装置において、更なるスループット向上が望まれている。マルチ荷電粒子線描画装置のスループットの向上には、描画を繰り返す間隔である描画周期の短縮が有効であるが、そのためには、ブランキング時間を短くすることが必要であり、ブランキング偏向器16への制御信号の周波数が上がる。マルチ荷電粒子線描画装置のスループットの向上には、1つの荷電粒子線源における描画範囲である画角の拡大も有効であり、アパーチャアレイにより分割される荷電粒子線の数を増やすことが考えられる。そのためには、分割された電子線を制御する、静電レンズ、ブランキング偏向器16の増加、その増加に伴うレンズ、電極、ひいては電極までの配線の増加が必要となる。
【0005】
描画周期を短縮するには制御信号を高速に伝送する必要がある。しかし、限られた基板の範囲内で、描画周期を短縮するために伝送特性を維持あるいは向上させることと、画角を拡大するために配線数を増やすこととは、相反するものである。さらに、従来は電子光学鏡筒外から電子光学鏡筒内のほぼ中心に配置される電極まで中継基板の配線パターンを介して信号が伝送され、その配線長は、電子光学鏡筒の半径に近い値(数百mm)となる。現在、ブランキング電極の駆動信号の周波数成分への要求は、装置の高速化に伴い1GHz近傍にまで達しようとしている。このような信号帯域においては、伝送路の容量と直流抵抗の制約が大きい。例えば伝送路の幅を2μmで設計した場合、ブランキング電極の静電容量を除いた線路の容量を1.5PF、直流抵抗を300Ωとすると、その他諸条件から求められる許容線路長は僅か15mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−7538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、マルチ荷電粒子線描画装置のスループットを向上する為には、高速(高周波)で且つ大容量の信号を伝送することが必要となり、そのために、配線領域を広げて配線パターンのサイズを大きくするか、配線長を短くすることが必要となる。まず、配線領域を広げる方法として、配線を多層化することが容易に想像できる。この場合、複数の電極から、多層配線デバイス、多層配線基板、中継基板を経てケーブルにて制御信号発生部より接続される複数本の伝送路が構成される。こうした工夫は一定の効果が得られるが、多層化できる層数にも製造上の限界が有り、現在実現可能な層数(約50層)では所望の伝送特性を維持しながらの高密度配線、実装は難しい状況に有る。
【0008】
一方、基板の配線長を短くするために、配線よりも低インピーダンスのケーブルを電子光学鏡筒内に真空フィードスルーし、ブランキング電極アレイ近傍に光電変換素子やシリアル−パラレル変換器を配置することで、基板の配線長を短くする方法が考えられる。しかし、ブランキング電極アレイ近傍で光電変換素子やシリアル−パラレル変換器が発熱するため、ブランキング電極アレイ構造に描画精度上無視できない程の幾何学的歪を発生させてしまう懸念がある。また、電子光学鏡筒内でケーブルの実装ボリュームが問題になるほか、ケーブルや光電変換素子からのアウトガスへの対策が必要であり、装置サイズ及びコストの増加に繋がる。以上の方法では、配線長を短くして伝送特性は改善できるが、別の課題が発生してしまう。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みて為されたものであり、真空室内のデバイスに高速かつ大量に信号を伝送するにあたり、該デバイスへの熱の流入の少なさの点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの側面は、複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置であって、減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、第1基板と、を備え、前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含み、前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、減圧室内のデバイスに高速かつ大量に信号を伝送するにあたり、該デバイスへの熱の流入の少なさの点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マルチ荷電粒子線描画装置の構成を示した図である。
【図2】実施例1のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図3】実施例2のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図4】実施例3のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図5】実施例4のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図6】実施例4のブランキング偏向器の別構成を示した図である。
【図7】実施例5のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図8】実施例6のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図9】実施例7のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図10】実施例8のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図11】実施例8のブランキング偏向器の別構成を示した図である。
【図12】従来の真空装置の構成を示した図である。
【図13】実施例9による真空装置の構成を示した図である。
【図14】従来のブランキング偏向器の構成を示した図である。
【図15】従来のブランキング偏向器の断面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について添付の図面を用いて説明する。図1は、複数の荷電粒子線それぞれを基板に荷電粒子線が入射するオン状態又は基板に荷電粒子線が入射しないオフ状態に制御しながら基板上にパターンを描画する描画装置(荷電粒子線描画装置)を示す。この実施形態では、荷電粒子線描画装置の一例としてのマルチ電子線描画装置の構成を示している。電子銃9はクロスオーバ10を形成する。12、13はクロスオーバ10から発散した電子の軌道を示している。クロスオーバ10から発散した電子は、電磁レンズで構成されたコリメーターレンズ11の作用により平行ビームとなり、アパーチャアレイ14に入射する。アパーチャアレイ14は、マトリクス状に配列した複数の円形状の開口を有し、入射した電子ビームは複数の電子線に分割される。アパーチャアレイ14を通過した電子線は、円形状の開口を有した3枚の電極板(図中では、3枚を一体で図示している)から構成される静電レンズ15に入射する。
【0014】
静電レンズ15が最初にクロスオーバを形成する位置に開口をマトリクス状に配置したブランキングアパーチャ17が配置される。マトリクス状に電極を配置したブランキング偏向器(ブランキングデバイス)16は、複数の電子線それぞれを基板に電子ビームが入射するオン状態又は基板に電子ビームが入射しないオフ状態(ブランキング状態)に制御する。ブランキング状態では、ブランキング偏向器16により偏向された電子線がブランキングアパーチャ17により遮断される。ブランキング偏向器16は、描画パターンの発生回路2、ビットマップ変換回路3、ブランキング指令の生成回路4によって生成されるブランキング信号により制御される。ブランキング偏向器16によりオン状態とされブランキングアパーチャ17を通過した電子ビームは、第2の静電レンズ19により結像され、ウエハ又はマスクなどの基板(試料)20上に元のクロスオーバの像を結像する。描画中、試料20はX方向にステージ21により連続的に移動し、レーザー測長器による測長結果を基準として試料20の表面上の像が偏向器18によりY方向に偏向され、かつブランキング偏向器16でブランキングされる。また、排気系の制御部30により、後述の排気系の制御を行う。
【0015】
[実施例1]
図2は電子線描画装置における実施例1のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。ブランキング指令値は信号ケーブル201を介してブランキング偏向器16のインターフェースコネクタ202に接続される。ここで、ブランキング指令値の伝送には、伝送する信号ケーブル201に光ファイバを用いて光信号での高速シリアル通信を行う。インターフェースコネクタ202は光電変換素子であり、ここで電気信号に変換されたのち、シリアルーパラレル変換器203(シリアル−パラレル変換器)により各ブランキング電極208を駆動するための駆動信号が生成される。駆動信号は、シリコン基板204の貫通ビアに充填された電極205を介して、電子光学鏡筒206内のブランキング電極アレイ207へと接続される。ブランキング電極アレイ207上で、不図示の多層配線を経由してブランキング電極208へと接続され、駆動信号に応じてブランキング電極208に電圧を印加する。インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、それぞれ、ブランキング偏向器16の制御回路5を構成する要素または電子部品(デバイスともいう)である。
【0016】
ブランキング偏向器16が配置される減圧室(第1減圧室)401と第2の静電レンズ19が配置される減圧室(第2減圧室)403と電子光学鏡筒206外の外部室(第3室)402とを仕切る隔壁の一部にシリコン基板(第1基板)204を用いる。ここで、外部室(第3室)402の真空度(減圧度)は、第1減圧室401及び第2減圧室403の真空度よりも低く、常圧(大気圧)であってもよい。また、第1減圧室401と第2減圧室403の真空度は、同じであっても互いに異なっていてもよい。ブランキング偏向器16の制御回路5を構成する要素である、発熱量の大きなインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、前室402に配置される。シリコン基板204は、第1減圧室401と外部室402とを仕切る隔壁の少なくとも一部を構成する第1領域を含む。ここで、シリコン基板204は、第1減圧室401と第2減圧室403とを仕切る障壁の少なくとも一部を構成する第2領域を含んでいてもよい。この場合、当該第2領域は、電子ビームが通過する貫通孔を有する。シリコン基板204の第1領域は、電極205を有する。電極205は、シリコン基板204の第1領域に形成された貫通ビアに第1減圧室401から外部室402に亙って充填されている。外部室402に配置されたインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は、電子光学鏡筒206内の第1減圧室401に配置されたブランキング電極208に電極205を介して電気的に接続されている。そのため、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203からブランキング電極208までの配線長を大幅に短縮することが可能となり、信号伝送路の伝送特性を大きく改善することができる。また、通常真空フィードスルーに用いられる同軸コネクタの直径とコネクタ間隔とが数mmから数十mmのオーダーであるのに対し、シリコン基板204の電極205が充填される貫通ビアの直径と貫通ビア相互の間隔とは数十μmから数百μmオーダーと小さい。そのため、大量の配線をより少ない実装面積で電子光学鏡筒206外から引き込むことが可能となる。さらに、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203を電子光学鏡筒206外に配置する。そうすることにより、インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、ブランキング電極アレイ207への熱の流出を抑えることができる。
【0017】
[実施例2]
図3は実施例2のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。電子光学鏡筒206内の第1減圧室401は真空度が高いため、電子光学鏡筒206外の外部室の一部である前室402aとの圧力差が大きい場合、隔壁であるシリコン基板204に問題となる程の応力変形が生じるおそれがある。この対策として、第1減圧室401と前室402aとの間に中間室402bを設ける。中間室402bは、差動排気により第1減圧室401の圧力と前室402aの圧力との間の圧力に減圧され、圧力差を段階的とすることでシリコン基板204の応力変形を抑制する。図3に示すように、前室402aと中間室402bとを区切る隔壁に真空フィードスルー(コネクタ)302を設けてケーブル201とインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とを接続する。電子光学鏡筒206の内部の電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対して、貫通ビアに充填した電極205を有するシリコン基板(第1基板)204を隔壁として用いる。インターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とブランキング電極アレイ207とは、シリコン基板204の貫通ビアに充填した電極205を介して電気的に接続される。
【0018】
このように電子光学鏡筒206の内部で電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作る。第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を圧力センサ309により測定し、シリコン基板204の応力変形が問題とならない圧力差まで排気系310により中間室402bの圧力を調節する。圧力調整は、シリコン基板204の面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。以上の説明のように、電子線212が通過する第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作り、差動排気により中間室402bの圧力を調節することで、シリコン基板204の応力変形を抑える。
【0019】
[実施例3]
図4は実施例3のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。実施例3は実施例2と同様に圧力差によるシリコン基板の応力変形に対応した実施例である。図4に示すように、第1減圧室401と前室402aとの間に中間室402bを設ける。電子光学鏡筒206の内部で電子線212が通過する高真空度の第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として用いる。中間室402bに配置されたインターフェースコネクタ202、シリアルーパラレル変換器203とブランキング電極アレイ207とは、シリコン基板204の貫通ビアに充填された電極205を介して接続される。シリコン基板204には電極に加えてオリフィス(貫通孔)413が形成されており、第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を圧力センサ309により測定し、シリコン基板204の応力変形が問題とならない圧力差まで排気系310により圧力差を調節する。圧力調整は、シリコン基板204の面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整され、中間室402bの気圧は第1減圧室401より高く維持される。以上の説明のように、電子線212が通過する第1減圧室401に対し、シリコン基板204を隔壁として中間室402bを作り、差動排気により第1減圧室401と中間室402bとの圧力差を調節することで、シリコン基板204の応力変形を抑える。実施例2と異なり、中間室402bと第1減圧室401を排気する排気系310を共通とすることでコストを抑える効果がある。
【0020】
[実施例4]。
【0021】
図5は実施例4のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送する伝送路を示す。図5に示すように、実施例1の構成に加えて、従来例のように、中継基板520を介して電子光学鏡筒206に入る伝送路(第2の伝送路)を設ける。ブランキング電極208の駆動信号のように、高速性を要する信号はシリコン基板204の電極205を介した伝送路(第1の伝送路)より伝送する。第2の伝送路の時間当たり伝送量(伝送路容量)は、第1の伝送路の時間当たり伝送量よりも小さい。電源供給や、初期化の設定の信号や、非同期信号のように高速性を要しない信号は中継基板520の伝送路より伝送する。このように信号の速度に応じて異なる伝送路を設けることで、より多くの伝送路を構成することが可能となる。また、実施例では中継基板520を構成しているが、図6のように、シリコン基板204自体で電子光学鏡筒206に入る他の伝送路に接続しても同様の効果が得られる。
【0022】
[実施例5]
図7は実施例5のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。本実施例では、ブランキング偏向器16が配置された第1減圧室401とインターフェースコネクタ202が配置された前室402aとの間に複数の中間室402bを設けている。複数の中間室402bのうち、第1減圧室401側に位置する中間室は、中間室と第1減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された第2中間室を構成している。第1減圧室401とそれに接続された中間室402bとは電極205を有する第1シリコン基板204で仕切られている。前室402aとそれに接続された中間室402bとは、電極205を有する第2シリコン基板204b(第2基板)で仕切られている。2つの中間室402bは、電極205を有する第3シリコン基板204a(第3基板)で仕切られている。2つの中間室402bには、電子部品752が配置されている。各電子部品752は、例えばシリアルーパラレル変換器や、駆動信号を生成する素子、駆動信号の補正情報の記憶されたメモリなどである。
【0023】
ブランキング指令値は信号ケーブル201を介してインターフェースコネクタ202に接続される。ブランキング指令値は、インターフェースコネクタ202から、各シリコン基板204〜204bの電極205と2つの中間室402bに配置された電子部品752とを介して第1減圧室401に配置されたブランキング電極アレイ207へ接続される。各電子部品752は、電極205で相互接続されるため、高速に信号を処理することが可能となる。このため、通常、電子光学鏡筒206外に実装された不図示のドライバ基板で行っていた処理を、電子光学鏡筒206の内部の中間室402bで行うことが可能となり、電子光学鏡筒206外の実装を減らすことができる。また、インターフェースコネクタ202を第1減圧室401から最も遠い電子光学鏡筒206外の前室402aに配置する。それにより、インターフェースコネクタ202は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、ブランキング電極アレイ207への熱の流出を抑えることができる。
【0024】
[実施例6]
図8は実施例6のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。電子光学鏡筒206の内部は高真空であるため、電子光学鏡筒206の内外の圧力差が大きい場合、シリコン基板204、204bに問題となる程の応力変形が生じる可能性がある。この対策として、第1減圧室401、複数の中間室402b、前室402aの間の圧力差を調整して、シリコン基板204、204bの応力変形を抑制する。電子光学鏡筒206にケーブル201又はコネクタ302を設けて電子光学鏡筒内に真空フィードスルーし、これらケーブル201又はフレキシブル基板の真空フィードスルー(コネクタ)302等をインターフェースコネクタ202と接続する。実施例5と同様にシリコン基板204、204bの電極205を介して電子部品752の接合を繰り返し、ブランキング指令値は、最終的に第1減圧室401に配置されたブランキング電極アレイ207へと接続される。
【0025】
シリコン基板204、204bで区切られた第1減圧室、各中間室402bに対し、圧力センサ309と排気系310を構成し、第1減圧室401、各中間室402b間の圧力差を複数の圧力センサ309により測定する。排気系の制御部30は、複数の圧力センサ309の検出結果に基づいて、シリコン基板204、204bの応力変形が許容範囲内となるように各排気系を制御する。第1減圧室401、各中間室402bの圧力調整は、シリコン基板204、204bの面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。以上のように、シリコン基板204、204bで区切られたた第1減圧室401、各中間室402bの圧力を調節することで、各シリコン基板204、204bの応力変形を抑える。実施例6では最も高真空度の第1減圧室401から前室402aへと順に圧力を上げた例である。(前室402aの圧力>中間室402bの圧力>第1減圧室401の圧力)
【0026】
[実施例7]
図9は実施例7のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。実施例7は実施例6と同様に圧力差によるシリコン基板204、204bの応力変形に対応した実施例である。図9に示すように、各シリコン基板204、204bには電極205に加えてオリフィス(貫通孔)413を設けている。また、実施例7では、第1減圧室401、各中間室402bの圧力差を1つの圧力センサ309により測定し、各シリコン基板204,204bの応力変形が問題とならないように排気系310により圧力差を調節する。圧力調整は、シリコン基板204、204bの面積と厚みに応じて、応力変形が問題とならない圧力差で接触熱抵抗が最も低くなるように調整される。実施例7では、排気系310を共通とすることでコストを抑える効果がある。
【0027】
[実施例8]
図10は実施例8のブランキング偏向器16の構成と、ブランキング電極208を駆動する信号の伝送路を示す。図10に示すように、実施例5の構成に加えて、中継基板520を介して電子光学鏡筒206内の第1減圧室401に入る第2の伝送路を別途設ける。ブランキング電極208の駆動信号のように、高速性を要する信号はシリコン基板204の電極205を介した第1の伝送路より伝送する。電源供給や、初期化の設定の信号や、非同期信号のように高速性を要しない信号は中継基板520を介した第2の伝送路より伝送する。このように信号の速度に応じて時間当たり伝送量が異なる複数の伝送路を設けることで、より多くの伝送路を構成することが可能となる。また、実施例8では中継基板520を構成しているが、図11のように、シリコン基板204自体で第2の伝送路に接続しても同様の効果が得られる。
【0028】
[実施例9]
図13は、荷電粒子線描画装置以外の処理装置(減圧下または真空下で、試料(対象物)に対する加工、計測または検査の処理等、所定の処理を行う処理装置)の実施例を示している。真空空間(減圧室)401内にレーザー光222を検出するフォトダイオード(第1のデバイス)301が配置され、シリコン基板204(単に基板ともいう)の電極205を介して真空空間の外部402に配置された増幅器(第2のデバイス)306へと接続される。増幅器306でパルス波が生成され、A/D変換されたのち、不図示の制御系へと送信される。
【0029】
従来は信号の周波数が上がるに従って、増幅器306の発熱量が増大し、その影響により、フォトダイオード301はレーザー光量の検出を精度よく行うことができなかった。また、発熱源である増幅器306を、真空フィードスルーを介して真空空間の外部402に配置して冷却することが行われていたが、フォトダイオード301と増幅器306との伝送距離が延びたことにより、伝送特性の低下や実装サイズの大きさが問題となっていた。
【0030】
しかし、以上の説明のように、真空空間の隔壁としてシリコン基板204を用いることで、配線を伸ばすことなく増幅器306を真空空間の外部402に配置することが可能となっている。真空空間の外部402に配置された増幅器306は接触熱抵抗が下がるため、冷却器209により十分に冷却することが可能となり、フォトダイオード301への熱の流出を抑えることができる。本実施例ではフォトダイオードを例に示したが、真空空間に設置された電子部品(デバイス)であって、該電子部品との間で信号を送信または受信し且つ熱源となり得る電子部品と接続される全ての電子部品に応用可能である。
【0031】
以上説明したように、本実施例は、貫通ビアに充填された電極205を介して両面側の配線層が相互接続された構造を有するシリコン基板204を処理装置の隔壁として備え、電子部品301をシリコン基板204の上に実装又は形成する。本実施例は、それによって、電子部品301への熱の流入を防止し、減圧室内へ多くの伝送路を敷設し、かつ、伝送路の周波数特性を向上することができる。
なお、(真空)隔壁を構成する基板は、以上の説明ではシリコン基板を例示したが、それには限定されず、隔壁として機能させられ且つ貫通電極を備えられるものであれば、他の材質の基板であってもよい。
【0032】
[デバイス製造方法]
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、感光剤が塗布された基板の該感光剤に上記の描画装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板に描画を行う工程)と、当該工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置であって、
減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、
前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、
第1基板と、
を備え、
前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含み、
前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記外部室は、前記デバイスが配置された前室と、該前室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された中間室と、を含み、
前記中間室は、前記減圧室の気圧と前記前室の気圧との間の気圧に減圧され、
前記中間室と前記前室とを仕切る隔壁は、真空フィードスルーを含み、
前記前室に配置された前記デバイスは、前記真空フィードスルー、前記中間室に配置された前記デバイス、および、前記電極を介して前記ブランキング偏向器に電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記外部室は、前記デバイスが配置された前室と、該前室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された中間室と、を含み、
前記中間室は、前記減圧室の気圧と前記前室の気圧との間の気圧に減圧され、
前記中間室と前記前室とを仕切る隔壁は、貫通孔に充填された電極を有する第2基板を含み、
前記前室に配置された前記デバイスは、前記第2基板の前記電極、前記中間室に配置された前記デバイス、および、前記第1基板の前記電極を介して前記ブランキング偏向器に電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記外部室は、前記中間室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された第2中間室を含み、
前記第2中間室は、前記減圧室の気圧と前記中間室の気圧との間の気圧に減圧されている、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記減圧室の気圧および前記外部室の気圧をそれぞれ検出する複数の圧力センサと、
前記減圧室および前記中間室をそれぞれ排気する複数の排気系と、
前記複数の圧力センサの検出結果に基づいて、前記第1基板の変形が許容範囲内となるように前記複数の排気系を制御する制御部と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項6】
前記減圧室を排気する排気系をさらに備え、
前記第1基板の前記隔壁となる領域には、前記電極で充填されない貫通孔が形成され、
前記電極で充填されない前記第1基板の前記貫通孔を介して前記排気系が前記外部室を排気することにより、前記外部室の気圧は、前記減圧室の気圧より高く維持される、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の描画装置。
【請求項7】
前記第1基板の前記電極を介して前記外部室から前記ブランキング偏向器に信号を伝送する第1の伝送路とは別に、前記第1基板の前記電極を介さずに前記外部室から前記ブランキング偏向器に信号を伝送する第2の伝送路を有し、
前記第2の伝送路の伝送路容量は、前記第1の伝送路の伝送路容量より小さい、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項8】
前記外部室に配置された前記デバイスは、光電変換素子、シリアル−パラレル変換器及びメモリの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の描画装置を用いて基板に描画を行う工程と、
前記工程で描画を行わた基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項10】
減圧室を形成する隔壁と、該減圧室の内部に配置された第1のデバイスと、前記減圧室の外部に配置された第2のデバイスと、を備え、前記減圧室内で前記デバイスを用いた処理を行う処理装置であって、
前記隔壁を構成し、かつ、前記隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含む基板を備え、
前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとは、前記電極を介して電気的に接続されている、
ことを特徴とする処理装置。
【請求項11】
前記第1のデバイスは、フォトダイオードを含み、
前記第2のデバイスは、増幅器を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の処理装置。
【請求項1】
複数の荷電粒子線で基板に描画を行う描画装置であって、
減圧室に配置され、前記複数の荷電粒子線をそれぞれブランキングするブランキング偏向器と、
前記減圧室より気圧の高い外部室に配置され、前記ブランキング偏向器を制御するためのデバイスと、
第1基板と、
を備え、
前記第1基板は、前記減圧室と前記外部室とを仕切る隔壁を構成し、かつ、該隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含み、
前記デバイスは、前記電極を介して前記ブランキング偏向器と電気的に接続されている、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記外部室は、前記デバイスが配置された前室と、該前室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された中間室と、を含み、
前記中間室は、前記減圧室の気圧と前記前室の気圧との間の気圧に減圧され、
前記中間室と前記前室とを仕切る隔壁は、真空フィードスルーを含み、
前記前室に配置された前記デバイスは、前記真空フィードスルー、前記中間室に配置された前記デバイス、および、前記電極を介して前記ブランキング偏向器に電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記外部室は、前記デバイスが配置された前室と、該前室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された中間室と、を含み、
前記中間室は、前記減圧室の気圧と前記前室の気圧との間の気圧に減圧され、
前記中間室と前記前室とを仕切る隔壁は、貫通孔に充填された電極を有する第2基板を含み、
前記前室に配置された前記デバイスは、前記第2基板の前記電極、前記中間室に配置された前記デバイス、および、前記第1基板の前記電極を介して前記ブランキング偏向器に電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記外部室は、前記中間室と前記減圧室との間に配置され且つデバイスが配置された第2中間室を含み、
前記第2中間室は、前記減圧室の気圧と前記中間室の気圧との間の気圧に減圧されている、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記減圧室の気圧および前記外部室の気圧をそれぞれ検出する複数の圧力センサと、
前記減圧室および前記中間室をそれぞれ排気する複数の排気系と、
前記複数の圧力センサの検出結果に基づいて、前記第1基板の変形が許容範囲内となるように前記複数の排気系を制御する制御部と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項6】
前記減圧室を排気する排気系をさらに備え、
前記第1基板の前記隔壁となる領域には、前記電極で充填されない貫通孔が形成され、
前記電極で充填されない前記第1基板の前記貫通孔を介して前記排気系が前記外部室を排気することにより、前記外部室の気圧は、前記減圧室の気圧より高く維持される、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の描画装置。
【請求項7】
前記第1基板の前記電極を介して前記外部室から前記ブランキング偏向器に信号を伝送する第1の伝送路とは別に、前記第1基板の前記電極を介さずに前記外部室から前記ブランキング偏向器に信号を伝送する第2の伝送路を有し、
前記第2の伝送路の伝送路容量は、前記第1の伝送路の伝送路容量より小さい、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項8】
前記外部室に配置された前記デバイスは、光電変換素子、シリアル−パラレル変換器及びメモリの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の描画装置を用いて基板に描画を行う工程と、
前記工程で描画を行わた基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項10】
減圧室を形成する隔壁と、該減圧室の内部に配置された第1のデバイスと、前記減圧室の外部に配置された第2のデバイスと、を備え、前記減圧室内で前記デバイスを用いた処理を行う処理装置であって、
前記隔壁を構成し、かつ、前記隔壁となる領域に形成された貫通孔に充填された電極を含む基板を備え、
前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとは、前記電極を介して電気的に接続されている、
ことを特徴とする処理装置。
【請求項11】
前記第1のデバイスは、フォトダイオードを含み、
前記第2のデバイスは、増幅器を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−8878(P2013−8878A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141220(P2011−141220)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]