説明

揚重装置及び揚重方法

【課題】簡単な構造で支柱における上下方向の伸縮動作をスムーズに動作させることができ、装置にかかるコストの低減を図ることができる。
【解決手段】間隔をもって対向位置に配置され、上下方向に伸縮可能な一対の支柱10A、10Bと、各支柱10A、10Bの上端10aに当接する支点Pを有し、支柱10A、10Bの中心軸線を中心とする径方向の外側に向けて突出するとともに下側に向けて延びる支持フレーム20A、20Bと、一方の支柱10Aに設けられる支持フレーム20Aの一対の下端部、及び他方の支柱10Bに設けられる支持フレーム20Bの一対の下端部を連結する荷受けフレーム30とを備え、支持フレーム20A、20Bと荷受けフレーム30とがピン接合により連結された構成の揚重装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚重装置及び揚重方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の建物では、躯体工事において、移動式クレーンを使用することがあるが、大型の移動式クレーンは敷地内に設置することが困難であるため、一般的には小型のクレーンが選定されている。
このような小型の機種では、建屋全域にわたって資材を揚重することができず、資材を所定階に揚重した後、使用場所まで水平移動させて搬送している。また、資材が梁型枠などの場合には、それ全体を移動式クレーンで揚重して所定位置に直接取り付けることが困難なため、作業員によって資材を取り付け可能な大きさ、重量に分割している。
【0003】
一方、移動式クレーンを使用しない揚重方法として、複数の油圧シリンダーを使用した揚重装置によって資材の揚重を行うことが知られている。このような揚重装置では、複数のシリンダーのストロークが同調していないと、資材を受けているフレームが傾き、特定のシリンダーにのみフレームを介して資材の荷重がかかり、伸縮し難くなって停止してしまう。そのため、それぞれのシリンダーのストロークを常に計測し、ストローク差が生じたときにストロークを調整する同調制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−339000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来の揚重装置によるシリンダーを同調させる機構では、以下のような問題があった。
すなわち、シリンダーによっては、複数のシリンダー同士のストローク差の許容範囲が小さいものがあり、頻繁にストロークの調整を行う必要がある。この調整を繰り返さないと、一部のシリンダーが伸縮しなくなり、停止してしまうという問題があった。
また、複数のシリンダーを同調させる制御装置は高価であり、揚重装置のコストが大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で支柱における上下方向の伸縮動作をスムーズに動作させることができ、装置にかかるコストの低減を図ることができる揚重装置及び揚重方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る揚重装置では、被揚重物を下方から支持して揚重する揚重装置であって、間隔をもって対向位置に配置され、上下方向に伸縮可能な一対の支柱と、各支柱の上端に当接する支点を有し、支柱の中心軸線を中心とする径方向の外側に向けて突出するとともに下側に向けて延びる支持フレームと、一方の支柱に設けられる支持フレームの一対の下端部、及び他方の支柱に設けられる支持フレームの一対の下端部、を連結する荷受けフレームと、を備え、支持フレームと荷受けフレームとがピン接合により連結されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る揚重方法では、上述した揚重装置を用いた揚重方法であって、複数の揚重装置を一方向に間隔をもって配置させ、揚重装置のそれぞれの荷受けフレームで長尺な被揚重物の長手方向の所定位置を下方から支持して揚重することを特徴としている。
【0009】
本発明では、支柱を縮めて下ろした状態において、荷受けフレームで被揚重物を下方から支持させた後に支柱を伸張させることで、被揚重物を所定の高さの位置へ揚重することができる。
そして、荷受けフレームが一対の支柱に設けられる支持フレームに対してピン接合によって回動可能に連結されたリンク機構を構成しているので、一対の支柱同士の間に伸縮に伴うストローク差が生じた場合、すなわち支柱同士の上端の高さが異なる場合であっても、前記リンク機構により荷受けフレームが適宜な角度で傾斜し、支柱には荷重の負担が及ばない。そのため、支柱に対して横方向(支柱を傾ける方向)の荷重がかかるのを抑えることができ、支柱の伸縮動作がスムーズになる。
このように、簡単なリンク機構を用いた構造によって、一対の支柱同士のストローク差に対応することができるので、支柱の伸縮の同調を制御するための高価な制御装置を用いる必要がなく、揚重装置にかかるコストを低減することができる。
【0010】
また、本揚重装置は、複数台を使用することで、例えば梁型枠などの長尺の被揚重物を分割せずに揚重することができる。この場合、荷受けフレームを備えた支持フレームが支柱の上端に当接する支点を有し、釣り合いが取れた状態で設けられており、この釣り合いが片寄った場合であっても、支柱に対して当接する支点を中心にして支持フレームを傾斜させることができる。そのため、長尺の被揚重物を複数の揚重装置で支持する場合に、それら揚重装置の支柱同士の間でストローク差が生じても、被揚重物を支持する荷受けフレームとともに支持フレームが傾斜することになる。そのため、各支柱に荷重の負担が及ばず、支柱に対して横方向(支柱を傾ける方向)の荷重がかかるのを抑えることができ、支柱のスムーズな伸縮動作が可能となる。
【0011】
このように被揚重物の重量にかかわらず、支柱への荷重負担を小さくすることができることから、重量が大きく且つ大型の被揚重物に対応することが可能となるうえ、揚重装置の小型化を図ることができ、狭小な場所での使用も可能となる。そのため、例えば中規模な建物の構築において、従来は在来型の型枠で使用していたところ、例えば大型でユニット化したコストの低いシステム型の型枠を適用することができ、多種多様な工法を採用するこが可能となる。しかも、揚重装置の小型化により、装置を人力によって移動させることが可能となるので、装置の移動にクレーン等の揚重機が不要となる。
【0012】
また、本発明に係る揚重装置では、一対の支柱の下端には、床面に沿って移動可能な移動手段が設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明では、支柱を伸張させて被揚重物を所定の高さに揚重させた状態のまま、揚重装置を床面に沿って水平移動させることができる。
【0014】
また、本発明に係る揚重装置では、支柱の上端と、支持フレームとのそれぞれを上下方向に緩やかに嵌入するピン部材が設けられていることがより好ましい。
【0015】
この場合、支柱に対して支持フレームが傾いたときでも、支柱の上端と支持フレームとがピン部材によって支持されているので、支持フレームが支柱の上端から脱落するのを防止することができる。そして、ピン部材は支柱と支持フレームに対して緩やかに嵌入した状態であるので、ピン部材の動く範囲で支持フレームの傾斜が可能となる。
【0016】
また、本発明に係る揚重装置では、支柱は、水圧シリンダーによって上下方向に伸縮することが好ましい。
【0017】
本発明では、水圧シリンダーを使用することで、油圧シリンダーに比べて操作が簡単であり、重量も軽くなることから、取り扱いが容易となり、作業効率の向上を図ることができる。また、油圧シリンダーのように油漏れ等で使用場所を汚すといった不具合をなくすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の揚重装置及び揚重方法によれば、支持フレームの支点を支柱の上端に対して当接させただけの状態とし、さらに支持フレームと荷受けフレームとをピン接合とした簡単な構造で、支柱における上下方向の伸縮をスムーズに動作させることができる。そして、支柱の同調制御が不要になるため、装置にかかるコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態による揚重装置の全体概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−A線矢視図であって、揚重装置の側面図である。
【図3】図1に示すB−B線矢視図であって、揚重装置の側面図である。
【図4】図2に示すC−C線矢視図である。
【図5】支柱の上端の支持構造を示す斜視図である。
【図6】図5に示す支持構造の一部破断側面図であって、(a)は支持フレームの中立状態を示す図、(b)は支持フレームの傾斜状態を示す図である。
【図7】支持フレームの揺動状態を示す側面図であって、図2に対応する図である。
【図8】支持フレームの揺動状態を示す側面図であって、図3に対応する図である。
【図9】(a)〜(c)は、揚重装置による揚重手順を示す図である。
【図10】(a)、(b)は、図9(c)に続く揚重装置による揚重手順を示す図である。
【図11】支柱間にストローク差が生じた場合の側面図であって、図8に対応する図である。
【図12】2台の揚重装置同士の支柱間にストローク差が生じた場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による揚重装置及び揚重方法について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態による揚重装置1(1A、1B)は、被揚重物を下方から支持して揚重するための装置であり、例えばRC造(鉄筋コンクリート造)建物の構築において長尺の梁型枠2(被揚重物)を所定の位置に建て込む際に用いるものである。
【0022】
図2乃至図4に示すように、具体的に揚重装置1は、間隔をもって対向位置に配置され、上下方向に伸縮可能な一対の支柱10(10A、10B)と、各支柱10の上端10aに当接する支点P(図1及び図6参照)を有し、支柱10A、10Bの中心軸線(図5及び図6に示す支柱軸O)を中心とする径方向の外側に向けて突出するとともに、下側に向けて延びる支持フレーム20と、一方の支柱10Aに設けられる支持フレーム20Aの一対の下端部20a、及び他方の支柱10Bに設けられる支持フレーム20Bの一対の下端部20aを連結する荷受けフレーム30と、を備えて概略構成されている。
【0023】
図1に示すように、支柱10A、10Bは、複数段からなる水圧シリンダーからなり、上下方向に伸縮可能となっている。支柱10A、10Bの近傍には、水タンク3とポンプ4とが備えられており、水圧シリンダー内に水を圧送することによってシリンダーが伸張する。
各支柱10A、10Bは、それぞれの下端10b、10b同士が連結フレーム11によって連結され、さらに各支柱10A、10Bの下端10bから水平方向の外側に向けて複数の張出し部12が突出している。そして、連結フレーム11及び張出し部12には、床面Gに沿って移動可能な車輪13(移動手段)が設けられている。
【0024】
図5及び図6に示すように、支柱10の上端10aには、平板状の支持台14がその板面を支柱軸Oに対して直交する方向(略水平方向)に向けた状態で固定されている。支持台14は、平面視で正方形状をなし、下面中央部が支柱10の上端10aに固定され、その上面14aが支持フレーム20が当接される支点Pの範囲となっている。そして、支持台14の四隅には、厚さ方向に貫通する貫通孔14bが形成されている。
【0025】
図2乃至図4に示すように、支持フレーム20は、角形鋼管を開口を下方に向けたコ字型に形成させたものであり、支持台14によって下方から支持される水平材21と、その水平材21の材軸方向の両端から下方に向けて延びる縦材22、22とからなる。縦材22、22は、支柱10から間隔をあけて配置されている。
【0026】
水平材21には、図5及び図6に示すように、材軸方向Yの中央部に下方に向けて突出する突起部23が設けられている。支持フレーム20は、突起部23が支柱10の上端10aに設けられる支持台14上に当接することで、支持フレーム20が支持台14上に載置され、支持フレーム20が支柱10の上端10aで、釣り合いが取れた状態で配置されるとともに、図7に示すように所謂「やじろべえ」のように突起部23を支点Pにして揺動する構成となっている。
ここで、図2に示す状態、すなわち支持フレーム20の水平材21が水平となる状態を中立位置といい、図5及び図6に示すように揺動して傾いた状態を傾斜位置という。
【0027】
また、水平材21には、その水平材21の2箇所から材軸方向Yに直交する水平方向の外側に向けて突出する張出し材24が設けられている。なお、図5では、見易くするために一部の張出し材24が省略されている。張出し材24は、それぞれの張出し先端部が支持台14の1つの貫通孔14bの上方に重なるように配置され、その張出し先端部には上下方向に貫通する貫通孔24aが設けられている。この支持フレーム20側の貫通孔24aと支柱10側の貫通孔14bとは、支持フレーム20の中立位置において、上下方向に同軸上に設けられ、それら支持台14の四隅に位置する貫通孔14b、24aの上から脱落防止ピン6(ピン部材)が緩やかに嵌入されている。脱落防止ピン6は、支柱10に対して支持フレーム20が傾いたときでも支持フレーム20の支持台14上からの脱落を防ぐためのものである。
【0028】
図3に示すように、対向位置に配置される一対の支柱10A、10Bにそれぞれに設けられる支持フレーム20A、20Bは、上述したように対向する下端20a、20a同士が荷受けフレーム30によって連結されている。荷受けフレーム30と支持フレーム20の縦材22とは、ピン接合により連結されている。この連結部を、以下「連結部R」という。
これにより、一対の荷受けフレーム30、30によってピン接合された支持フレーム20A、20Bは、図8に示すように突起部23を支点Pにして一対の支柱10A、10Bが対向する方向に揺動する構成となっている。
【0029】
次に、上述した構成からなる揚重装置1を用いた揚重方法について、図面に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、先行して組み立てた梁型枠2の両端のそれぞれに位置決めした状態で揚重装置1A、1Bを設置する。このとき、梁型枠2は事前に組み立てておき、低床の台車7に載せた状態とし、床面Gと梁型枠2との間に空間を設けるようにする。そして、揚重装置1A、1Bの荷受けフレーム30は、梁型枠2の下側に位置するように配置する。
なお、図9(a)〜(c)及び図10(b)に示す二点鎖線は、梁型枠2の両端を取り付けるための壁面を示している。
【0030】
次に、図9(b)に示すように、一対の揚重装置1A、1Bの支柱10A、10Bを作動させ、梁型枠2を台車7から荷受けフレーム30へ移し替え、梁型枠2の荷重を一対の揚重装置1A、1Bで負担させる。この状態で、空荷となった台車7を梁型枠2の下方より移動させる。
その後、図9(c)に示すように、支柱10A、10Bを伸張させて梁型枠2を取り付け位置の高さまで上昇させる。上昇させるときには、梁型枠2が傾かないように各支柱10A、10Bを同調させながら上昇させるようにする。
【0031】
続いて、図10(a)に示すように、梁型枠2を所定の取り付け高さまで上昇させた後、梁型枠2の取り付け位置まで水平移動させる。梁型枠2の水平移動は、揚重装置1を作業員が手動で押して移動させる。そして、図10(b)に示すように、梁型枠2を取り付け位置まで移動したら、梁型枠2を所定の箇所(ここでは二点鎖線の壁面)に固定するとともに、揚重装置1A、1Bを下降させて、この梁型枠2の揚重作業が完了となる。
このように、床上で地組みした梁型枠2を揚重する作業となるので、従来のように作業台上で梁型枠2を組み立てる作業を行う必要がなくなり、作業効率が向上するとともに、作業台の上で作業していた梁型枠の組み立て作業が不要となる利点がある。
【0032】
次に、上述した揚重装置1の作用について、図面に基づいて説明する。
本揚重装置1では、支柱10を縮めて下ろした状態において、荷受けフレーム30で梁型枠2を下方から支持させた後に支柱10を伸張させることで、梁型枠2を所定の高さの位置へ揚重することができる。
【0033】
そして、図8及び図11に示すように、荷受けフレーム30が一対の支柱10A、10Bに設けられる支持フレーム20A、20Bに対してピン接合によって回動可能に連結されたリンク機構を構成しているので、一対の支柱10A、10B同士の間に伸縮に伴うストローク差Δtが生じた場合、すなわち支柱10A、10B同士の上端の高さが異なる場合であっても、前記リンク機構により荷受けフレーム30が適宜な角度で傾斜し、支柱10には荷重の負担が及ばない。そのため、支柱10に対して横方向(支柱10を傾ける方向)の荷重がかかるのを抑えることができ、支柱10の伸縮動作がスムーズになる。
このように、簡単なリンク機構を用いた構造によって、一対の支柱10A、10B同士のストローク差Δtに対応することができるので、支柱10の伸縮の同調を制御するための高価な制御装置を用いる必要がなく、揚重装置にかかるコストを低減することができる。
【0034】
また、本揚重装置1(1A、1B)は、図1及び図12に示すように、複数台(図では2台)を使用することで、梁型枠2を分割せずに揚重することができる。この場合、荷受けフレーム30を備えた支持フレーム20が支柱10の上端10a(支持台14)に当接する支点Pを有し、釣り合いが取れた状態で設けられており、この釣り合い片寄った場合であっても、支柱10に対して当接する支点Pを中心にして支持フレーム20を傾斜させることができる。そのため、梁型枠2を2台の揚重装置1A、1Bで支持する場合に、それら揚重装置1A、1Bの支柱10同士の間でストローク差Δtが生じても、梁型枠2を支持する荷受けフレーム30とともに支持フレーム20が傾斜することになる。そのため、各支柱10に荷重の負担が及ばず、支柱10に対して横方向(支柱10を傾ける方向)の荷重がかかるのを抑えることができ、支柱10のスムーズな伸縮動作が可能となる。
【0035】
このように梁型枠2の重量にかかわらず、支柱10への荷重負担を小さくすることができることから、重量が大きく且つ大型の被揚重物に対応することが可能となるうえ、揚重装置の小型化を図ることができ、狭小な場所での使用も可能となる。
そのため、例えば中規模な建物の構築において、従来は在来型の型枠で使用していたところ、例えば大型でユニット化したコストの低いシステム型の型枠を適用することができ、多種多様な工法を採用するこが可能となる。しかも、揚重装置1の小型化により、装置を人力によって移動させることが可能となるので、装置の移動にクレーン等の揚重機が不要となる。
【0036】
また、図10(a)に示すように、一対の支柱10A、10Bの下端には、床面Gに沿って移動可能な車輪13が設けられているので、支柱10A、10Bを伸張させて梁型枠2を所定の高さに揚重させた状態のまま、揚重装置1を床面Gに沿って水平移動させることができる。
【0037】
また、図5及び図6に示すように、柱10に対して支持フレーム20が傾いたときでも、支持台14と支持フレーム20の張出し材24とが脱落防止ピン6によって支持されているので、支持フレーム20が支柱10の上端10aから脱落するのを防止することができる。そして、脱落防止ピン6は支柱10と支持フレーム20に対して緩やかに嵌入した状態であるので、脱落防止ピン6の動く範囲で支持フレーム20の傾斜が可能となる。
【0038】
また、支柱10が水圧シリンダーによって上下方向に伸縮する構成となっているので、油圧シリンダーに比べて操作が簡単であり、重量も軽くなることから、取り扱いが容易となり、作業効率の向上を図ることができる。また、油圧シリンダーのように油漏れ等で使用場所を汚すといった不具合をなくすことができる。
【0039】
上述のように本実施の形態による揚重装置及び揚重方法では、支持フレーム20の支点Pを支柱10の上端10a(支持台14)に対して当接させただけの状態とし、さらに支持フレーム20と荷受けフレーム30とをピン接合とした簡単な構造で、支柱10における上下方向の伸縮をスムーズに動作させることができる。そして、支柱10の同調制御が不要になるため、装置にかかるコストの低減を図ることができる。
【0040】
以上、本発明による揚重装置及び揚重方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では梁型枠2を被揚重物としているが、これに制限されることはなく、他の資材を揚重対象とすることも可能である。
また、本実施の形態では梁型枠2に対して2台の揚重装置1A、1Bを用いて揚重する例としているが、台数は適宜設定することができ、3台以上を用いてもよく、また資材によっては1台の揚重装置10のみであってもかまわない。
【0041】
さらに、本実施の形態では移動手段として支柱10の下端に車輪5を備えた構成としているが、車輪に限定されることはなく、例えばころ材や滑り材などを用いることができる。そして、このような移動手段は、省略することも可能である。
【0042】
さらにまた、本実施の形態では支柱10に水圧シリンダーを用いた構成としているが、水圧であることに制限されることはなく、油圧式シリンダーであってもよいし、他の伸縮構造の支柱であってもよい。
また、支持フレーム20、荷受けフレーム30、支持台14などの構成については、本実施の形態に限定されず、適宜変更可能である。そして、本実施の形態では脱落防止ピン6による脱落防止構造についても、これを省略してもよいし、他の構成を採用することも可能である。
【0043】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B 揚重装置
2 梁型枠(被揚重物)
5 車輪(移動手段)
6 脱落防止ピン(ピン部材)
10、10A、10B 支柱
14 支持台
20、20A、20B 支持フレーム
23 突起部
30 荷受けフレーム
O 支柱軸
G 床面
P 支点
R 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被揚重物を下方から支持して揚重する揚重装置であって、
間隔をもって対向位置に配置され、上下方向に伸縮可能な一対の支柱と、
前記各支柱の上端に当接する支点を有し、前記支柱の中心軸線を中心とする径方向の外側に向けて突出するとともに下側に向けて延びる支持フレームと、
一方の前記支柱に設けられる支持フレームの一対の下端部、及び他方の前記支柱に設けられる支持フレームの一対の下端部、を連結する荷受けフレームと、
を備え、
前記支持フレームと前記荷受けフレームとがピン接合により連結されていることを特徴とする揚重装置。
【請求項2】
一対の前記支柱の下端には、床面に沿って移動可能な移動手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
前記支柱の上端と、前記支持フレームとのそれぞれを上下方向に緩やかに嵌入するピン部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の揚重装置。
【請求項4】
前記支柱は、水圧シリンダーによって上下方向に伸縮することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の揚重装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の揚重装置を用いた揚重方法であって、
複数の前記揚重装置を一方向に間隔をもって配置させ、前記揚重装置のそれぞれの前記荷受けフレームで長尺な被揚重物の長手方向の所定位置を下方から支持して揚重することを特徴とする揚重方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−250805(P2012−250805A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124354(P2011−124354)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】