説明

換気をモニタリングするための方法およびシステム

特に胸部圧迫の間、患者の換気をモニタリングするための方法およびシステムであって、患者の胸部に接続された少なくとも2つの電極を使用して患者の胸部のインピーダンスを実質的に連続して測定するステップと、例えば胸部圧迫など、前記インピーダンス測定に影響を及ぼす選択されたパラメータを測定するステップと、換気によるインピーダンス変動量の検出および特徴化のために前記インピーダンス測定を分析するステップと、を有し前記インピーダンス測定は、少なくとも2つの前記電極に交流電流または電圧を印加するとともに、少なくとも2つの前記電極間のインピーダンスを測定することによって実行され、前記分析するステップは、前記選択されたパラメータの影響を除去することを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓停止状態の患者についての換気および圧迫をモニタリングするためのシステムおよび方法に関するものであり、特にCPR測定およびフィードバックシステムの一部としてのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心肺蘇生法の品質は、胸部圧迫および換気で定義され、心肺停止の成り行きにとって本質的なものである。Gallagher, Van HoeyweghenおよびWik(Gallagher et al;JAMA 1995 Dec 27;274(24):1922-5 . Van Hoeyweghen et al;Resuscitation 1993 Aug;26(1):47-52;Wik L, et al Resuscitation" 1994;28:195-203)は、救急隊員が到着する前に傍観者によって実行された、良質のCPRは、3−4倍の救命作用があることをそれぞれ示している。しかし残念ながら、CPRは、JAMAで発表された最近の研究によると健康管理専門家の場合でさえ、ほとんどの場合最適品質以下で提供される(Wik et al.Quality of Cardiopulmonary Resuscitation During Out-of-Hospital Cardiac Arrest. Jarna, January 19, 2005-Vol 293, No 3)。その最も一般的な不良は、以下の通りである。胸部圧迫が提供されない、換気が提供されない、胸部圧迫深さが浅すぎる、胸部圧縮率が高すぎるまたは低すぎる、換気速度が速すぎるまたは遅すぎる、または、上昇時間が速すぎる。
【0003】
米心臓病協会によって発行された蘇生のための国際的なガイドライン(Circulation 2000;102 (suppl I))は、効果を上げるためにはどのようにCPRが提供されるべきであるか、および、CPRと細動除去が組み合わされて使用されるべきであることを詳細に示す。胸部圧迫ガイドラインは、全ての成人および年長児の患者に対して同一である。深さは38−51mmにすべきであり、レートは約100/mmにすべきであり、デューティサイクルは約50%にすべきであり、救助作業者は圧迫の間圧力を完全に開放すべきである。換気のためのガイドラインは、もう少し複雑である。提供される空気の量は、第1に酸素補給が有効であるか否かに依存している。滴定は、胸部上昇の検出、または体重のミリリットル/キロの定量(ml/kg)、またはミリリットルの定量に基づくことができる。例えば、40%を超える酸素によって換気される患者は6−7ml/kg受けるべきであるが、酸素なしで換気された患者は10ml/kg受けるべきである。しかし、あなたの患者が転送換気装置(transport ventilator)に接続される場合、その量は10−15ml/kgである。換気速度を注目すると、これはその患者が挿管されたか否かに依存する。挿管の前、速度は圧迫対換気の比率で決定される。圧迫対換気は、現在、15の圧迫に対して2つの換気に設定される。この比率では、患者が1分あたり6−8の換気を受けると予想される。挿管の後、この時点では換気速度は1分あたり12−15にすべきである。さらに、前記ガイドラインは、上昇時間のための要件を示す。また上昇時間はボリュームに依存している。さらに最近、研究者は換気が循環にとって有害な影響を持つことを見出した。CPR中の過換気状態、または、単位時間に対して各換気が大きすぎるために胸腔内圧が上げられたときでは、静脈還流が危うくなり、したがって心拍出量が低減されることが見出された。
【0004】
良質のCPRを確保するための従来の方法は、訓練することである。しかしながら、研究では、その訓練が技術維持をもたらさないことを立証している。換言すれば、学生は訓練直後のテストにパスすることができるが、技術は時間とともに悪化するとともに、その技術が必要とされるときもまた最適以下の状態となる。これは除細動器の開発につながった。除細動器は、CPRがどのように実行されたかを測定するとともに、ユーザへの数種類のフィードバックを提供する。Groenkeは、US 6351671に力センサによるAEDと、胸部圧縮率および胸部圧迫力のフィードバックを与える設定とを記載しているが、換気に関するものではない。EP1215993においてMyklebustは、CPRセンサによるAEDを開示している。この開示では、CPRの動作特性がAEDによって測定され、そして、AEDが前記ガイドに基づいた望ましい特性であるCPR特性と比較して、そして、AEDはユーザに対する口頭フィードバックを修正して出す。本発明において、トランス胸部インピーダンスは、胸部圧迫と換気のそれぞれでは異なる。特に、どのように胸部圧迫が胸部圧迫動作の形態に近い形態を持つインピーダンス変化をもたらすか、および、どのように換気が換気量波形に近い形態を持つインピーダンス変化をもたらすかが示されている。本発明おける1つの障害はシステムが圧迫と換気との間を差別化することが困難であるということであり、特に、圧迫デューティサイクルが大きく、且つ、換気上昇時間が短いときに、その障害となる。また、前記システムは圧迫が進行しているときに換気を検出して特徴付けることができない可能性があった。EP1073310において、Mykiebustは、圧迫および換気によって生じたECGにおける偽信号(artifact)を減少させる方法を示している。この方法は、圧迫および換気を測定するセンサの使用条件に基づくものであり、その使用条件として、これらのセンサから出た信号はデジタル適応フィルタの基準信号として使用される。このフィルタは、偽信号を推定し、そしてオリジナル信号から推定された偽信号を差し引くことができる。これは、フィルタを通ったインピーダンス信号が換気活動のみを示すように、インピーダンス信号から圧迫偽信号を取り除くことと、同じ原理が適用される。
【0005】
EP1057451において、Myklebustは胸部圧迫を測定するためのセンサを開示している。このセンサには、加速度計および力作動スイッチが搭載されている。また、そのシステムの一部は、加速度と力作動スイッチからの信号との関数として胸部圧迫動作を推定する手段からなる。このセンサの一つの障害は、各胸部圧迫が完全に開放されたことを確実に検出する手段を具備することができないことである。この技術のさらなる障害の1つは、システムの精度が横たわっている患者の表面(surface)に依存するということである。例えば、患者がマットレス上に横たわっているとき、その胸部上のセンサは、マットレス上の患者の変動と胸部圧迫との両方を測定する。さらなる障害に1つは、ガイドラインによって示された深さにまで圧迫するために、実際上堅すぎる状態に胸部を押さえられた患者に関することである。この事象では、たとえ実際に行うことができなくても、胸部圧迫センサに接続されたフィードバックシステムがさらに深める要求をし続ける。
【0006】
また、優先権が主張されているノルウェー国特許出願第2004 3033号公報では、胸部圧迫センサおよび適応フィルタを具備するシステムは、挿管前の換気に起因するインピーダンス信号の大きさと挿管後の換気に起因するインピーダンス信号の大きさとを比較することによって配置された挿管が正しいか否かを判断するので、胸部圧迫によってインピーダンス伝送路に生じた偽信号を低減することに使用できる、ことについてMykiebustがさらに開示している。EP1215993と同様に、このシステムは、患者の胸部に取り付けられた電極であって体外除細動器に接続された電極と、前記除細動器にさらに接続された胸部圧迫センサと、前記除細動器内のデジタル適応フィルタと、ユーザにフィードバックを提供する手段との除細動器のセットで構成される。この技術のさらなる応用が望まれていることは、胸部圧迫が進行している間の換気実行効率を特徴付けることである。そのような特徴付けは、換気値の推定と、上昇時間の推定と、1分あたりの換気数の推定と、胸部内圧力が高められている時間の推定とで行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ここで、全ての胸部圧迫が完全に開放されたか否かを検出するために、胸部圧迫中の換気性能を特徴付けるためのノルウェー国特許出願第2004 3033号公報を拡張しており、患者が適合表面上に横たわっている状態を扱うとともに、患者の胸部の硬さが前記ガイドラインの準拠に適合しないものを扱う。
【0008】
本発明の目的は、換気を確実に検出することができる方法およびシステムを提供することであり、また、除細動器などの既存の救命装置に組み込まれることが可能な方法およびシステムを提供することである。
【0009】
インピーダンス測定は生体組織についての情報を提供可能であることが知られている。これは、体の上または中に電極を配置するとともに、前記電極を介して可変電圧または電流を印加することで、通常実行される。2つ以上の電極を使用する前記インピーダンス測定はそういうものとして当業者に知られているとともに、そのようなインピーダンス測定システムの事例はUS4540002、US5807270、およびWO2004/049942に記載されている。後者の刊行物に記載されているように、多数の電極を使用することによって選択した深さで前記インピーダンスを測定できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
提案システムは、蘇生中の換気特性を測定するために、患者の胸部に取り付けられた複数の電極と胸部圧迫センサとを使用して、患者の換気をモニタリングするための代替方法およびシステムを提供する。そのような電極および測定システムは、EP1215993に記載のように、除細動器に関連づけて使用するパラメータを測定するとともに、その装置のユーザにフィードバックしてCPRの実行を援助すること、および、EP1057498に記載のように、患者の皮膚に取り付けられた電極を使用して血液循環を測定することが、他の出願によって知られている。
【0011】
上記目的は、添付の特許請求の範囲に記載されているような方法およびシステムによって達成される。
【0012】
他の救命具に組み合わされたとき、胸部圧迫のような活動が前記インピーダンスに影響する可能性があるという問題があるので、測定の読み取りをより困難にする。本発明の好適実施形態によれば、このような偽信号を除去するためにEP1073310に記載された種類の適応フィルタリングの使用を有する。また、前記適応フィルタリングは当業者にそういうものとして知られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、実施形態として本発明を図示する添付図面を参照して以下で説明される。
【0014】
図1に示した本発明に係るシステムは、患者の胸部24に装着される少なくとも2つの電極21と、前記電極に接続されたインピーダンス測定システムと、前記インピーダンス測定システムに接続されたマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータに接続されたディスプレイ装置とを有する。前記インピーダンス測定システムとマイクロコンピュータとディスプレイ装置とは、全て装置22の中に配置されている。
【0015】
図示された処理装置22は、例えば、チューブの位置を引っ込めるまたは調整するために、EP1215993に記載されているものと同一手法でユーザに指示するもの、または警報信号音を単に引き起こすもののような、ユーザにフィードバックを提供するための視覚手段または聴覚手段を具備していることとしてもよい。
【0016】
本発明の好適実施形態によれば、本発明に係るシステムは体外除細動器に組み込まれている。そのような実施形態の利点は、コストとスペースと時間の節約である。通常、除細動器は、患者の胸部に装着された複数の電極と、前記電極に接続されたインピーダンス測定システムと、前記インピーダンス測定システムに接続されたマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータに接続されたディスプレイ装置とを具備している。したがって、前記技術を一体化することは、設計の問題である。
【0017】
図2は、除細動器D1が胸部圧迫センサ(CCS)と除細動器電極E1,E2とに接続されている状態のシステムの概要を示す。前記除細動器は、インピーダンス測定システム(IMS)と、適応フィルタ手段(AFM)とCPRパラメータ抽出器(CPE)とを有する信号処理装置(SPU)と、ユーザと通信するためのユーザインターフェース(UI)とを有する。
【0018】
胸部圧迫センサCCSは、1つの加速度計と1つの力変換器とが一緒に配置されているとともにローカル・マイクロコンピュータに接続されているハウジングで構成されている。前記マイクロコンピュータには、力および加速度信号を読み取る信号入力と、前記加速度計および力変換器を制御する信号出力とが設定されている。テストソフトウェアは、前記マイクロコンピュータが前記システムの完全性をテストできるように設定されている。さらに、前記マイクロコンピュータには、前記SPUおよび除細動器にデータを出力するために通信手段が設定されている。図示したものでは、その位置を示すために前記センサの上に配置されている。前記センサの底面には、患者の皮膚に該センサを付着させる手段が配置されている。
【0019】
インピーダンス測定システムIMSは、一般的な除細動器の電極に接続されている。望ましくは、前記電極の間のインピーダンスの大きさに比例する電圧を生成するために、前記IMSは、前記電極間に適用されるほぼ一定の交流電流を使用する。前記電圧は、インピーダンス信号を出力するために、測定されるとともにフィルタリングされることとなる。この測定システムは、10ミリオームの分解能があるとともに、直流から約50Hzまでの周波数レスポンスをもっていることが望ましい。そのようなIMSがどのように設定できるかについての詳細は、EP1215993、EP1057498に見出すことができる。その出力インピーダンス信号は、前記SPUに接続される。
【0020】
患者が標準のバッグで換気されるとき、代表的なインピーダンス変化量は0.5−1.0オームであるが、いくつかのタイプの体はこれから外れる。大きい体は0.50オームと同程度の低さとなる場合があり、小さい体は1,5オームより大きくなる場合がある。また、肺と胸に関連する機械的な条件は偏差を与える可能性があり、これには肺水腫、肺癌、外傷、溺死、外的要素などが含まれる。インピーダンス変動量の実施例を示す図が図3,4,5に示されており、これは以下でより詳細に説明される。
【0021】
前記システムの代表的な設計特性:
電極は、望ましくは両方の肺の上の胸部上に配置される。前記インピーダンス測定システムは、10ミリオームの分解能がある。前記測定システムのダイナミックレンジは、代表的な除細動器電極が使用されているとき、0オームから250オームである。前記インピーダンス測定システムは0.1〜3mAのほぼ一定の交流電流を通常使用するとともに、その交流周波数は通常30kHzから200kHzの範囲にある。
【0022】
前記コンピュータは、例えば挿管が成功しているか否かを確認するために、前記測定での各部の前記インピーダンス変化を記憶するように設定されていることとしてもよい。また、前記コンピュータは、可聴式入力要求、テキスト、絵文字、ビデオまたは可聴式ガイドと可視式ガイドとのいくつかの組み合わせを使用して、換気およびCPRについてのステップを通してユーザを完全にガイドするように設定されていることとしてもよい。
【0023】
他の実施形態の一つとしては、単に挿管サポートと換気サポートとを容易にするように設定されたスタンドアロン装置が挙げられる。そのようなスタンドアロン装置は、どのようにCPRが実行されるか記載されているとともにどのように患者がCPRに応答するかが記載されているEP1057451の胸部圧迫センサまたは他のセンサなどを使用して、EP1157717に記載されているように、CPRフィードバックを容易にするように、さらに拡張することができる。CPRへの患者の応答は、EP1215993のECG解析と呼気終末CO2測定値とを使用して決定することができる。
【0024】
また、チューブ位置決めの確認は、胸部圧迫の間にでき、前記システムは、下記およびEP1073310に詳細に記載されている原理のデジタル適応フィルタに拡張され、そのEP1073310が一例としてここに組み込まれている。しかしながら、本発明によれば、基準入力として胸部圧迫センサからの信号を使用して、インピーダンス信号上の圧迫ノイズがフィルタにかけられる。このフィルタは、胸部上に配置されたセンサへの圧力または加速を使用して、前記胸部で測定された変動のような、胸部圧迫の間に行われる測定のための異なるタイプを考慮に入れることができる。
【0025】
図9は、この目的のための1つのデジタル適応フィルタ装置の構成を示す。不連続な力信号のサンプルであるF信号は、第1フィルタブロックF1に入力される。第1フィルタブロックF1のフィルタ係数はそれぞれ標本値を受け入れるように調整されることができる。不連続な加速度信号のサンプルあるA信号は、第2フィルタブロックF2に入力される。第2フィルタブロックF2のフィルタ係数はそれぞれ標本値を受け入れるように調整されることができる。前記2つのフィルタの出力は、加算され、その後、不連続なインピーダンス信号のサンプルであるI信号に対して引き算される。その結果が不連続なフィルタリングされたインピーダンス信号であるIF信号となる。
【0026】
これらのパラメータを測定することにより、胸部圧迫の影響は、例えば胸部圧迫をしないで取得した信号のような基準信号と測定信号との間の最大相関関係(correlation)を計算することで、挿管の制御を得るためのインピーダンス信号から除去することができる。
【0027】
図3は、インピーダンス波形をデジタル適応フィルタにかけたものの径跡(トップ)と、対応インピーダンスの生の信号(中央)と、胸部圧迫深さ波形(ボトム)とを示す。換気は、前記トップの径跡で明白である。胸部圧迫は、インピーダンスの生の信号の中に偽信号(artifact)を引き起こすが、この偽信号は、事実上、デジタル適応フィルタによって取り除かれる。
【0028】
図4は、前記患者に換気をするために実行した挿管の前後でのインピーダンス変化(トップ)と胸部圧迫の深さ(ボトム)との経跡(traces)を示している。連続した15圧迫の間に2つの換気があることは、図の当初で明白である。ここで、換気は、フェースマスクおよびバックを使用して供給される。挿管は7時22分に実行されたが、その時以降、インピーダンス信号が消滅している。これは、前記チューブが置き間違えられていたことと、前記チューブを調整または取り外すべきであることを示す。
【0029】
図5は、良好な挿管の一例を示している。トップと中央の径跡は、挿管が実行されたときに、長い間隔をもって続けて生じる2つの換気を示す。そして、換気と胸部圧迫が再開する。我々は、挿管が以前よりも良好になった後のインピーダンス信号の大きさを見ることができる。
【0030】
上記で説明された本発明は、認識の自動化と記憶されたインピーダンスデータの比較とを主に目的としているが、前記比較は、実施中に、図3−5に示すような、曲線を点検することによる手作業で実行してもよい。そして、差し込まれたチューブのあるなしについての両方のデータ抜粋をユーザが見ることを可能にするために、前記記憶されたデータは、十分に長い期間保持される。
【0031】
また、本発明は、2つの電極のみを使用することで説明されたが、例えば、選択された深さでのより正確なインピーダンス測定のために、例えば、皮膚との接触部(interface)による外乱を低減するために、2つよりも多い電極を本発明にしたがって使用してもよい。
【0032】
再び図2を参照すると、前記適応フィルタ方法は信号処理装置(SPU)で実行される。信号入力は、前記インピーダンス信号と、前記CCSからの前記力および加速度信号とである。図7によるインピーダンス信号は、トランス胸部インピーダンス(TTI)を示す1つの信号成分と、換気によって盛り上がった胸部の変動量(VS)を示すさらなる1つの信号成分と、そしてまた、胸部圧迫に起因する胸部変動の変動量(CS)を示す1つの信号成分と、血流の変動量(BF)を示す潜在的な1つの成分とを有する。
【0033】
信号処理の第1ステップは、インピーダンス信号と前記力信号と前記加速度信号から、ベースライン・オフセット(前記TTI成分のような)および高周波成分(BF成分のような)を除去することである。第2ステップは、デジタル適応フィルタを使用してフィルタにかけられたインピーダンス信号から胸部圧迫成分CS(偽信号)を除去することである。このデジタル適応フィルタは、前記力信号および前記加速度信号を使用して前記胸部圧迫成分を推定するとともに、前記換気信号を出力するために前記フィルタにかけられたインピーダンス信号からこの推定値を差し引く。(EP1073310におけるECGからCPR偽信号が取り除かれる方法と均等物。)
【0034】
出力換気信号に基づいて、潜在的換気が検出され、その後、換気または非換気に分類される。図8によると、潜在的換気事象は、明確なスタートポイントTiおよびトップポイントT2を持つ前記フィルタにかけられたインピーダンス信号における正のインピーダンス変化を調べることで検出される。前記スタートおよびトップポイントに加えて、さらに2つのポイントが選択される。その2つのポイントは、その立ち上がりエッジにおける前記スタートおよびトップポイントの間の中間に位置しているP1と、その立ち下がりエッジの中間のP2とである。T1からT2までの時間間隔はdtと呼ばれるとともに、T2とT1間の振幅の差分はdZと呼ばれる。P1からT2までの時間間隔はP1T2と呼ばれるとともに、T2からP2までの時間間隔はT2P2と呼ばれる。換気が確認されているとともに、専門家によって手作業で注が付けられた実際の患者データは、前記T1,T2,P1およびP2ポイントに基づいて、患者の換気特性を確認することに使用される。自動的に検出される前記潜在的換気は、前記確認された換気特性に基づいて換気または非換気に分類される。例えば、前記システムは、dtおよびdzの実効値と、P1T2と、T2P2と、比率dz/dtとを、実際の患者データからインピーダンス的(imperically)に特定した許容範囲と比較する。選択された基準の全てが満たされた場合、当該インピーダンス変化は換気として分類され、dtは上昇時間を示すとともに、dzは振幅を示す。いくつかの換気が検出されたとき、前記システムは、連続したT2時間ポイント間の時間間隔を平均することによって換気速度(rate)を計算する。これは、インピーダンス変化が空気提供量に大きく関連するために行うことができる。
【0035】
胸部内圧力が高められた時は、インピーダンス波形の振幅がピーク振幅から90%下のところであって上昇しているところで定義された時間T1’から、前記インピーダンス波形がピーク振幅から90%下のところであって下降しているところで定義された時間T3’までが該当する推定される。換気値は、インピーダンス変化dzとml/kg単位において換気された値との間の関係に基づいて推定される。実験は、前記関係が心臓停止の患者では約0.17ohm/ml/kgであること示す。しかしながら、前記関係が患者の個体および電極パッドが置かれる位置の両方によって影響されるので、前記関係は正確ではない。その理由のために、前記関係は、比較的小さな換気値と比較的大きな換気値との間を区別することに使用できるだけである。
【0036】
胸部内圧力は、各胸部圧迫とともに増加する。この理由のために、換気とそれと同時に行われる胸部圧迫とをしている間の気道内圧は、進行中の胸部圧迫がない状態で読み取られた気道内圧より高いとみなすことができる。圧力が増加され、さらに温度がほぼ一定になったとき、値は減少する。換言すれば、胸部圧迫の間、1つの提供された換気値は、圧力差のために、止息された(expired)換気値よりも小さくなる。室内実験では、有効な加重が患者の胸部に掛けられたとき、加重なしのときに対して、固定された値の換気の状態で20%低いインピーダンス応答があった。したがって、精度を改良するためには、胸部圧迫が進行中であるときに、前記推定された換気値が補正係数によって修正されるものとする。前記補正係数は、簡素化のために固定されたものとしてもよく、または、加えられた胸部圧迫力の関数として作成されるものとしてもよい。
【0037】
また、図6を参照すると、SPUは、加速度および力信号Foから胸部圧迫の特性を取り出すように設定されている。前記力信号は、基準値V1と比較される(圧迫の区切りの場合、前圧迫の最小力値以上であって2kgまでに、またはゼロ以上であって2kgまでに、設定された時間に)。これは、時間内において、前記圧迫が始まったポイントTsと、前記圧迫が終了したポイントTeとを判断する目的のためである。そして、前記2つの時間ポイントTsおよびTeは、胸部圧迫動作を推定するために、それらがそれぞれ加速度信号の二重積分についての出発ポイントおよび終了ポイントとして使用される前に、値Ts’およびTe’に経験的に調整される。前記力信号Foは、2つの連続した圧迫の間の期間であるTe’と以下に示す圧迫Ts’との間の区間において、基準値V2(3kgに設定された時間に)に比較される。測定された力信号が基準値V2を超えた場合、不完全な圧力放出事象が示される。計算された圧迫の深さがガイドライン勧告よりも浅く、かつ、同じ時間での前記力信号の対応(corresponding)波高値が基準値V3(50kgに設定された時間に)を超えている場合、不十分な深さでの調整策の口頭(verbal)フェードバックは差し控えられる。計算された圧迫の深さがガイドライン勧告よりも深く、かつ、同じ時間での前記力信号の対応波高値が基準値V4より低い場合、過度の深さでの調整策の口頭フェードバックは差し控えられる。
【0038】
あるいはまた、フィードバックを差し控えるための前記力の判断基準は、例えば、胸部を圧迫する救助作業者によって使用された電力または労力に基づく、代替判断基準によって置換または補完できる。電力は、胸部のスピードに加えられた力を乗算することで、容易に計算することができる。前記加えられた労力は、前記加えられた電力の積分によって判断することができる。圧迫している間の平均電力とピーク電力の両方が、フィードバックを差し控えるための判断基準として使用できる。例えば、低すぎる圧迫深さでのフィードバックは、1つ以上の圧迫の間の前記平均電力が所定閾値(例えば2−10Wの範囲)を超えている場合、差し控えられることとしてもよい。そのような判断基準は、圧迫の間に加えられた労力または電力の正味に基づくもの、または総計に基づくもののいずれかとすることができる。正味の平均労力(圧迫の間に胸部に提供された労力−開放している間に胸部から受けた労力)は、圧迫の間に胸部に加えられたエネルギーに直接関連する。このエネルギーの有効部分は、圧迫の間、心血管を通して血液を動かすための粘着性作業で消費される。
【0039】
圧迫についての電力および推定された深さの適用条件について、不完全な開放を特徴づけるための1つの代替方法は、不完全な開放によって引き起こされた深さのオフセットを推定することである。
【0040】
これは、最小圧迫深さのポイント付近の胸部の硬度を計算すること、さらに、深さを求めるために力対硬度の比率を計算することによって達成することができる。例えば、胸部の硬度は、測定された力−深さ曲線から推定することができる。硬度を推定するために、前記力の粘着性要素は、全体の力から第1に削除しなければならない。これは、例えば、深さについて依存者(dependent)に生じる粘性減衰パラメータを仮定すること、および胸部の速度に比例して減衰力の増加をもたらすと仮定することによって行われる(F_v=μv,ここで、Fは粘性力であり、μは減衰パラメータであり、vは胸部のスピードである)。異なる深さについてのμの値は、力−深さ曲線におけるヒステリシスループの幅を観測することで推定できる。同様に、速度ではなく進行方向のみに依存している摩擦力が差し引かれることとしてもよい。また、慣性力の増加をもたらす胸部の移動質量は、例えば、粘性力が低いところであって圧迫の最小または最大ポイント付近について、加速度と力を関連させることによって推定できる。
【0041】
患者の中には、まだベッドにいて治療されている人もいる。マットレスの適合性は、胸部とマットレスの両方に変動を引き起こす。力と深さの適用条件については、CPRがベッド対不適合表面で行われる状況において、力と深さの間の関係を特徴付けることが可能である。適合表面についての力/深さ関係の特性が検出されたとき、これは、続いて誤解をまねくフィードバックを回避するために、深さ情報を廃棄することに使用される。そして、警報信号を出すことに使用される。
【0042】
患者の下のマットレスの存在は、力および深さデータから計算されたいくつかの指標を組み合わせることによって評価することができる。例えば、そのような指標の具体例は、前記移動質量(全身がマットレス上で移動する場合により高くなる)と、前記減衰パラメータ(マットレスのために深さがより一定となる傾向がある)と、前記圧迫深さ(より高くなる傾向がある)と、前記硬度(より低くなる傾向がある)とすることができる。これらの指標は、マットレスの存在を示すために、例えば、実測データに向けられた、例えば、多変数または神経回路網モデルを使用して、単独でまたは組み合わせてのいずれかで使用されることができる。
【0043】
ベッドでCPRに対処する1つの他の解決手段は、分離した参照加速度計SRAを有するシステムに設定することである。この参照加速度計は、患者の背中の下に置かれたパッドに配設されている。この設定において、前記SPUは、前記CCSによって確認された加速から前記背中についての加速を減算することができ、参照加速度計についての均等物は、胸部圧迫が移動車両などで実行されるときの動作を補うためにEP1057451で使用されているものとすることができる。
【0044】
力信号、加速度信号、深さ信号、インピーダンス信号、事象などのような測定された信号の全ては、後の参照用または解析用に、もちろん記録することが可能であり、場合によりそのモデルおよび前記SPUで実行された計算を調整することも可能である。また、前記信号は、例えばモニタリングおよび更なるフィードバックのために、直接に外部装置へ、移動電話に関連するケーブル無線伝送で、通信されることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明が使用されている患者を示す。
【図2】本発明の好適実施形態に係るシステムを示す。
【図3】本発明の好適実施形態に係る信号フィルタリングを示し、ここで、上側の経跡は換気活動を示すフィルタリングされたインピーダンス信号であり、中央の経跡はフィルタリングされていないインピーダンス信号であり、下側の経跡は圧迫深さ信号である。
【図4】上側の経跡は換気無活動を示すフィルタリングされたインピーダンス信号であるとともに、その換気の表示は図の右側ではもはや存在せず、食道挿管を示唆している。下側の経跡は圧迫深さ信号である。
【図5】本発明の好適実施形態に係る信号フィルタリングを示し、ここで、上側の経跡は成功している挿管の後の換気活動を示すフィルタリングされたインピーダンス信号であり、中央の経跡はフィルタリングされていないインピーダンス信号であり、下側の経跡は圧迫深さ信号である。
【図6】測定された力信号および関連する期間を示す。
【図7】インピーダンス信号の個別的な構成要素を示す。
【図8】換気事象としてインピーダンス変化を特徴付けることに使用される成分を示す。
【図9】本発明の好適実施形態に係るデジタル適応フィルタ装置の構成を示す。
【符号の説明】
【0046】
21 電極
22 処理装置
23 フェースマスク
24 胸部
AFM 適応フィルタ手段
CCS 胸部圧迫センサ
CPE CPRパラメータ抽出器
D1 除細動器
E1,E2 電極
IMS インピーダンス測定システム
SPU 信号処理装置
SRA 参照加速度計
UI ユーザインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に胸部圧迫の間、患者の換気をモニタリングするための方法であって、
患者の胸部に接続された少なくとも2つの電極を使用して患者の胸部のインピーダンスを実質的に連続して測定するステップと、
例えば胸部圧迫など、前記インピーダンス測定に影響を及ぼす選択されたパラメータを測定するステップと、
換気によるインピーダンス変動量の検出および特徴化のために前記インピーダンス測定を分析するステップと、を有し、
前記インピーダンス測定は、少なくとも2つの前記電極に交流電流または電圧を印加するとともに、少なくとも2つの前記電極間のインピーダンスを測定することによって実行され、
前記分析するステップは、前記選択されたパラメータの影響を除去することを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記選択されたパラメータは、前記患者の胸部に加えられた動作であって計算可能なものを有するとともに、
前記分析するステップは、前記測定された動作に基づくインピーダンスへの影響を除去するために、前記測定され選択されたパラメータに基づく適応フィルタの生成を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適応フィルタの算出は、前記胸部に加えられた力を測定することをさらに有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記適応フィルタの算出は、所定ポイントで前記胸部に加えられた加速度を測定することをさらに有する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の胸部および背中の動作は、前記患者の一般的な動作と例えばCPR処理のために前記胸部に加えられた動作との間を区別することによる動作の差分として測定される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
胸部に加えられた力を測定するステップをさらに有するとともに、
前記分析するステップは、圧力が胸部から完全に開放されたか否かを検出するために、前記加えられた力のピーク最小値を検出することをさらに有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
患者の換気をモニタリングするための換気モニタリングシステムであって、
患者の胸部のインピーダンスを測定するためにインピーダンス測定手段に接続され患者の胸部に配置されて使用される少なくとも2つの電極と、
それ自体は知られた手段であって、前記測定されたインピーダンスに影響する少なくとも1つの選択されたパラメータを測定する測定手段と、
前記インピーダンスの変動に基づいて患者の換気を示す信号を出力する処理装置と、を有し、
前記インピーダンス測定手段は、前記電極に交流電流または電圧を印加するとともにそれら電極間のインピーダンスを測定するものとして動作し、
前記処理装置は、さらに、前記換気信号から前記測定され選択された特性の影響を除去するように設定されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記測定されたインピーダンスについての適応フィルタを算出して使用するために、前記処理装置に接続されるとともに、前記患者の胸部の変動を測定するために患者の胸部上に配置される変動センサをさらに有するとともに、
前記フィルタは、前記インピーダンス信号から前記変動の影響を除去するように設定されている請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
例えばCPRの間に、前記胸部に加えられた力を測定する力センサをさらに有し、
前記力センサは、前記処理装置に接続されるものであり、
前記適応フィルタは、さらに、前記力センサから出力された信号を入力する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
例えばCPRの間に、前記胸部上の所定ポイントに取り付けられ加速度を測定する加速度センサをさらに有し、
前記加速度センサは、前記処理装置に接続されるものであり、
前記適応フィルタは、さらに、前記加速度センサから出力された信号を入力する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理装置に接続されているとともに、前記患者の変動を測定するために前記患者の背中に配置されている第2変動センサをさらに有し、
前記処理装置は、前記背中に対する前記胸部の変動を示す差分信号を出力することで、前記インピーダンス信号に影響する前記変動の一部を出力する請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理装置に接続された力センサをさらに有し、
前記処理装置は、圧力が前記胸部から完全に開放されたか否かを見るために、前記力信号の最小波高値をモニタリングするように設定されている請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
CPR活動を制御するためのシステムであって、
患者の胸部に加えられた力および変動を測定するセンサを有し、
前記加えられた変動から圧迫深さを計算するための処理装置を有し、
前記処理装置は、
それぞれ選択値である前記測定された力と計算された圧迫深さとを比較するための手段と、前記測定値に基づいたフィードバックを提供するまたは差し控えるための手段とを具備しており、例えば、前記計算された圧迫深さが前記選択値よりも小さい間に、測定された力が対応する選択値を超えている場合、不十分な圧迫深さに関連したフィードバックを差し控えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
CPR活動を制御するためのシステムであって、
患者の胸部に加えられた力および変動を測定するセンサを有し、
前記加えられた変動から圧迫深さを計算するための処理装置を有し、
前記患者の背中の変動に追従するように配置された第2ムーブメントをさらに有し、
前記処理装置は、前記2つのセンサ間の変動の差分を計算するように設定されていることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−506451(P2008−506451A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521426(P2007−521426)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000260
【国際公開番号】WO2006/006871
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506260076)レーダル・メディカル・エーエス (3)
【Fターム(参考)】