説明

揮発性物質を気化するための容器、および同容器を製作する方法

本発明は、揮発性物質を気化するための熱成形容器に関する。同容器は、その機能または外観を損なう変形を起こさずに高温に耐えることが可能な手段を備える。同容器は、容器が得られるプラスチック材料シートの変形温度を超える変形温度を有する補強フィルムを備える。本発明は、前記容器を製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱成形で得られた物を補強して高温に耐えることが可能になる構造に関する。特に、本発明は、揮発性物質を気化するための熱成形された容器であって、その機能または外観を損なう変形を起こさずに高温に耐えことが可能になる手段を備えている熱成形された容器に関する。
【0002】
本発明は、このタイプの容器を、製造コストをそれほど増加させずに、クルマの中のような高温に達し得る空間で使用し得ることを可能にするものである。
【0003】
本発明は、同容器を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
揮発性物質を拡散するための装置が、熱成形で得られた容器から成ることが知られている。このタイプの容器は、一方の側に、熱成形フィルム、他方の側に、揮発性物質が放出される、好ましくは、平坦な「拡散」フィルムを接合することによって得られる。両フィルム間の空間が、気化される物質の実際の容器を形成する。容器の中には液体、固形物(例えば、ゲル)の揮発性物質、または多孔質固体に含浸された揮発性物質が封入される。
【0005】
拡散フィルムは、液体または固形物状の揮発性物質を保持し、一方では、蒸気の形で通過させる機能を有する。それは、蒸気を通過させるけれども液には不透性である半透性膜から成ることができるし、または固体を保持し、一方では、蒸気を通過させる多孔フィルムから成ることもできる。
【0006】
拡散フィルムは、通常、製品を最初に使用する前に取り外される不透性フィルムで保護されている。この不透性フィルムの目的は、貯蔵期間には揮発性物質の放散を防止することである。
【0007】
このタイプの装置構造の例は、特許文献1または特許文献2に見出すことができる。
【0008】
最も簡単な実施の形態では、このタイプの製品は、ある種のスペース(クローゼット棒、車のバックミラー、皿洗い機の金属構造など)に吊り下げるフックを備えている。
【0009】
このタイプのフックを直接熱成形フィルムに取り付ける可能性も、より簡単な製造工程で、より低いコストという利点があるので、知られている。
【0010】
熱成形材料で製造されるこのタイプのフックの知られている改良の一つは、熱成形プロセスに当たって機械的補強エンボス加工を行うことによって、凹凸模様を形成し、フィルムの低剛性を補い得るようにすることである。このテクニックの例の一つは、特許文献3に記載されている。
【0011】
しかし、このタイプの装置には、例えば、70℃を超える高温に曝されると生ずる欠点がある。このような高温は、例えば、太陽の直射日光下の自動車内部または皿洗い機内で生ずる。この欠点が生じるのは、主として、熱成形プロセスに通常使用される材料が、低温加工プラスチック材料であり、120℃以下、時には100℃以下の温度で成形されるからである。熱成形されるフィルムは、一般に、多層構造であり、フィルムに外観と機械的剛性を付与するコア材と、拡散フィルムに溶融接合可能とするシール材と、他の接着剤層またはバリヤ層とから本質的に構成される。
【0012】
熱成形プロセスを行うと、その上、同じ熱成形フィルムに、通常、顕著な残留応力が生じ、ある温度に曝されると、フィルムは初期の平坦な形を回復する傾向となり、熱成形された形状に歪みが生じる。この変形は、熱成形された空洞のレベルで観測し得るが、フックの機械的補強リブのレベルではより深刻であって、製品の落下も起こり得る。
【0013】
この問題に対する明らかな解決法の一つは、より高い耐熱性の材料の使用で得ることができるが、この方法は、工程の温度上昇(これは、さらに容器中に揮発性物質が存在すると不適合となる恐れがある)や原料コスト増加を伴い、不利である。
【0014】
他の一つの解決法は、例えば、これを鋳造したり、射出成形したり、厚紙から製造したりすることで作製される更に頑丈なフックを使用することで得られる。しかし、この方法は、フック製造の追加工程とアセンブリ工程とを伴うので、相当程度の追加コストを伴う。特許文献4は、この解決法の一例である。
【0015】
作りつけのフックを使用し、厚紙、射出成形プラスチック、またはプラスチック注入のケースで製造され、膜を取り付けた製品を内部に備えるフックまたは吊り下げシステムが、知られており、これらも、70℃に耐えるとされているが、単一工程では行われなく、2つの部分だけでは製造されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開特許第9823304号明細書
【特許文献2】米国特許第6,902,817号明細書
【特許文献3】米国特許第3,613,994号明細書
【特許文献4】スペイン特許第2163668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、耐高温性であって、非常に低い製造コストで得られる熱成形容器のための最新技術に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下記の独立クレームに含まれる本発明の主内容に記載の手段よって前述の技術的課題を解決するものである。
【0019】
従って、本発明の第一の態様は、揮発性物質を気化するための容器に関連する。同容器は、内外面が規定されている熱成形シートで形成され、気化される揮発性物質を収めるのに好適な空洞または溜め部と通常の使用に当たって装置を好適に位置させるのに形状的に適応された支持部分とが、前記シートに形成されている。前記支持部分は、従来的に機械的剛性を付与する凹部を備える。
【0020】
本容器は、前記支持部分の少なくとも一部分が、熱変形に抵抗性があって高温に曝されても支持部分領域の剛性を維持するエレメントと一体的に接合されて提供されることを特徴とする。具体的には、前記エレメントが、支持部分に対応する一面の少なくとも一部に固定されたフィルムから成り、同補強フィルムが、前記シートの変形温度を超える変形温度を有するようにする。すなわち、同補強フィルムは、前述の熱形成シートが熱で変形する温度に曝されたとき、熱変形に耐え得るである。
【0021】
熱成形シートの変形温度を超える変形温度という表現によって理解されることは、前記補強フィルムが、熱成形シートの材料の変形温度を超える変形温度を本質的に有する材料で得られるということ、または前記補強フィルムが、その本質的変形温度以下の温度での変形を伴う残留応力を有しないということ、またはそれらの両方である。
【0022】
前述の支持部分は、好ましくは、フックの形状を有し、装置の一端に配置され、例えば、クローゼット棒または自動車のバックミラーに吊り下げ得るようされる。
【0023】
本発明の他の実施の形態では、前記支持部分は、通常の使用に当たって容器を好適に配置可能な他の形状を採用し得る。
【0024】
補強フィルムは、熱成形すべき材料に対して200μm〜1,000μmのマイクロ単位から成る厚さで適用し得る。補強フィルムは、耐高温性であり、しかもこれらの温度で応力緩和が生じない。補強フィルムは、どのような熱成形プロセスにも掛けられていないから、そもそも残留応力が存在しないからである。
【0025】
容器の全体構造は、従って、高温に曝されたときにフックに生じる残留応力緩和で惹起される捻れ作用を減少または皆無とさえするフック形状に支持される。
【0026】
本発明の別の一つの実施の形態は、前述の容器の機能を有する揮発性物質気化容器の製造法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
記載の説明を補足し、好ましい実施の形態に基づいて本発明の機能をより理解する目的で、本明細書の不可欠の部分として一組の図面を添付するが、これらは、説明のためであり、限定のためではない性格を有する。
【図1】本発明の容器物の実施の形態の正面斜視図である。
【図2】図1の容器の側面図で、半透性フィルムと補強フィルムとは、容易によく見えるように分離して示している図である。
【図3】図1の容器の後面斜視図で、補強フィルムを分離して示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、可能な実施の形態の一つである本発明の容器物がどのように熱成形プラスチックシート(1)で形成されているかを知ることができる。2つの部分が規定され、このケースでは、2つの部分は折り目(2)で上下に分けられ、容器の一部分を他の部分に関して折り曲げ得るようにしている。第一部分(4)は、従って、どのようなタイプの揮発性物質をも含む目的の実際の容器を規定する空洞または溜め部(5)を備える。
【0029】
さらに、第二部分(3)は、容器の支持部分を形成する。これは、必要な場合、通常の使用に当たって容器をある位置に配置させるために形成される部分である。このケースでは、この支持部分は、図で分かるようにフックの形状を有し、前記部分に剛性を付与する凹部(6)を備えている。
【0030】
空洞(5)と凹部(6)は、フィルム(1)の熱成形に当たってシートの同じ側部に向かって変形して得られたもので、シート外面と称し得る。シート(1)の他の表面は、平坦であり、半透性膜(7)で覆われる。半透性膜(7)は、このケースでは、図2で特に分かるように、全体を覆うようになっている。しかし、他の実施の形態では、この膜は、実際の容器に対応する部分(4)のみを覆うようにし得る。
【0031】
この既知の構造に基づけば、本発明の容器物は、支持領域(3)の一表面、このケースでは内面に貼着された補強フィルム(8)を備えることを特徴とする。この補強フィルムは、好ましくはアルミのような金属製である。変形温度、すなわち、それが変形する温度が、前記シートの変形温度を超えるからである。
【0032】
補強フィルム(8)は、支持領域(3)の後面全体に配置され、膜(7)を覆う引き剥がし可能フィルム(9)は、容器の他の部分に配置される。
【0033】
本発明は、揮発性物質を気化するための容器を製造する方法にも関する。同方法では、プラスチック材料シート(1)を熱成形し、前記シートに揮発性物質を収めるに好適な空洞(5)と凹部を有する容器支持部分とを得る。凹部は、前記部分に剛性を付与するものである。
【0034】
熱成形される材料は、ポリエステル/ポリエチレン、すなわち、PET/PEの500μm厚さのフィルムで、ここではPEは溶融接合層である。
【0035】
熱成形シートに最も近い面の半透性膜と補強フィルムとから成る多層フィルムが、前記シートに貼着される。補強フィルムは、シートの変形温度を超える変形温度を有する。
【0036】
多層フィルムは、好ましくは、容器の空洞の周りと支持部分の凹部の周りの双方に熱溶接手段で熱成形シートに接合される。
【0037】
好ましい実施の形態では、補強フィルムはアルミ製である。
【0038】
前記多層フィルムは、図2で分かるように、支持部分(3)の上に配置されたフィルムの部分と空洞の上の部分に配置されたフィルムの部分とを分けるように、両フィルム部分の間でカット処理される。
【0039】
空洞に配置されたフィルムは、貯蔵と輸送に際して製品の気化を防止する引き剥がし可能フィルムとして有用である。従って、アルミのシールを外すと、製品は容器のこの部分からのみ放出される。
【0040】
従って、補強フィルムの性質は、揮発性物質の容器をカバーする引き剥がし可能フィルムの性質と同じである。
【0041】
フィルムは、全く同じものとし得るので、同じフィルム巻きからの材料とし得る。フィルムは、容器の両部分に同時に貼着し、後でフィルムをカット処理して分離する。
【0042】
最後に、空洞と支持部分の周りに予め規定された周囲の輪郭に基づいて前記シートと補強フィルムにカット処理を施して、図1に見られるような最終製品を得る。
【0043】
本発明の実用上の形態の相異なる可能性は、添付の従属クレームに記載される。
【0044】
以上、この説明と一組の図面に鑑みれば、当業者は、記載された本発明の実施の形態を本発明の目的内で多くのやり方で組み合わせ得ることが理解できるであろう。本発明は、幾つかの好ましい実施の形態に基づいて記載されたが、当業者には多くの部分的修正が、クレームされた本発明の目的を超えることなく、前記の好ましい実施の形態に導入可能であることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外面が規定されている熱成形シートで形成された揮発性物質を気化するための容器であって、揮発性物質を収める空洞と通常の使用に当たって装置を好適に位置させるように形状的に適応された支持部分とが前記シートに形成され、前記支持部分が機械的剛性を前記支持部分に付与する凹部を備える容器において、前記容器支持部分が、前記シートの変形温度より高い変形温度を有する補強フィルムであって、支持部分の一面に少なくとも部分的に接合された補強フィルムを備えることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に基づく容器において、補強フィルムが非熱成形体であることを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1または2に基づく容器において、補強フィルムが、前記シートの変形温度を超える変形温度を有する材料で製作されることを特徴とする容器。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに基づく容器において、前記支持部分がフック形状を有し、装置の一端に配置されることを特徴とする容器。
【請求項5】
前の請求項のいずれかに基づく容器において、補強フィルムが金属層で製作されることを特徴とする容器。
【請求項6】
揮発性物質を気化するための容器を製造する方法において、諸操作ステップ、すなわち、
プラスチック材料シートの熱成形によって、揮発性物質を収めるための少なくとも一つの空洞と通常の使用に当たって容器を好適に位置させるように形状的に適応された支持部分とを前記シートに作製するとともに、前記支持部分に剛性を付与する凹部を前記支持部分に設けるステップと、
半透性膜と前記シートの変形温度より高い変形温度を有する補強フィルムとから成る多層フィルムを熱成形シートに最も近くの面に配置するステップと、
容器の空洞の周りと支持部分の凹部の周りの双方に熱溶接手段で多層フィルムを熱成形シートに接合し、前記多層フィルムが前記空洞を閉じるステップと、
前記多層フィルムにカット処理を施して、支持部分に配置されたフィルムの部分と空洞に配置されたフィルムの部分とを分離するステップと、
予め規定された輪郭に基づいて前記シートと補強フィルムとをカット処理するステップを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538920(P2010−538920A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524361(P2010−524361)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061673
【国際公開番号】WO2009/033509
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(501132125)ゾベレ エスパーニャ ソシエダッド アノニマ (11)
【Fターム(参考)】