説明

搬送用ラベル、搬送用シート及び搬送用ラベルの製造方法

【課題】 搬送用シートに搬送用部品を被覆貼着して保持することができ、剥がす際にも、静電気の発生を防止でき、容易に剥がすことができる搬送用ラベル、その搬送用ラベルを貼着した搬送用シート、及び搬送用ラベルの製造方法を提供する。
【解決手段】 各基材シートに粘着剤層が積層され、該粘着剤層の表面の少なくとも中央部に帯電防止性能を有する硬化インク層が被覆されて非粘着部が形成され、粘着剤層の周辺部に貼着用粘着部が形成されていることを特徴とする搬送用ラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用シートに搬送用部品を被覆貼着して保持することができる搬送用ラベル、その搬送用ラベルを貼着した搬送用シート、及び搬送用ラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカード等の物品を搬送する際に、搬送用シートの表面に置かれたICカード等の物品を搬送用ラベルにより被覆することが検討されている。ICカードの場合、例えば、搬送用シートの表面にICカードを置き、そのICカードの表面を搬送用ラベルで覆い、該搬送用ラベルの周辺部にある粘着剤層で搬送用シートの表面に貼着し、ICカードを搬送シートに保持させた状態で、搬送することが検討されている。
【0003】
この搬送用ラベルに使用できそうなラベルとしては、末端に把持部を有する基材の表面に粘着剤層が積層され、その把持部に積層されている粘着剤層の表面にのみ印刷形成された非粘着性付与層が積層された封緘ラベルが知られている(特許文献1参照)。
しかし、この封緘ラベルは、把持部以外の粘着剤層の表面は、粘着性を維持した状態であるので、ICカードを被覆貼着した後に、搬送用ラベルを剥がそうとしても、ICカードに搬送用ラベルの粘着剤層がしっかり固着しているので、スムーズに剥がすことが難しいという問題があった。
【0004】
これを改良できる可能性のある粘着ラベルとして、基材の裏面に設けた粘着剤層の露出面に印刷用インクにより模様刷り印刷を施し、模様の状態によって粘着剤層表面の露出部分と隠蔽部分の配置構造と面積を調整して粘着剤層の粘着力を弱粘化させて、その弱粘化させた粘着剤層の表面で、被着体の表面を覆って、被着体と粘着ラベルが固着しないようにする粘着ラベルが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、この方法では、印刷インクを模様刷り印刷することで粘着剤層を弱粘化させるため、粘着ラベルをICカードの搬送用ラベルに用いると、ICカードに粘着剤残りが発生することがあった。また、ベタ印刷により、粘着剤層を完全に非粘着化した場合であっても、静電気が発生し、ICカードを取り出すことが困難であったり、ICカードに内蔵されたICチップに悪影響を与え、IC回路が正常に作動しないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2540515号公報
【特許文献2】特開平6‐332381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、搬送用シートに搬送用部品を被覆貼着して保持することができ、剥がす際にも、静電気の発生を防止でき、容易に剥がすことができる搬送用ラベル、その搬送用ラベルを貼着した搬送用シート、及び搬送用ラベルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、基材シートに粘着剤層を積層し、該粘着剤層の表面の少なくとも中央部に帯電防止性能を有する硬化インク層を被覆して非粘着部を形成し、粘着剤層の周辺部に貼着用粘着部を形成することにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、基材シートに粘着剤層が積層され、該粘着剤層の表面の少なくとも中央部に帯電防止性能を有する硬化インク層が被覆されて非粘着部が形成され、粘着剤層の周辺部に貼着用粘着部が形成されていることを特徴とする搬送用ラベルを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記搬送用ラベルにおいて、前記非粘着部が、帯電防止性能を有する硬化インク層と帯電防止性能を有しない硬化インク層の積層体からなる搬送用ラベルを提供するものである。
また、本発明は、上記記載の搬送用ラベルの周辺部にある貼着用粘着部が支持シートに貼着され、支持シートの表面に搬送用ラベルが保持されていることを特徴とする搬送用シートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、剥離シートの剥離面に帯電防止性能を有するインクを塗布してインク層を形成し、該インク層を硬化させて硬化インク層からなる非粘着部を形成する工程と、基材シートの片面に粘着剤層を形成する工程と、粘着剤層を非粘着部に貼り合わせて前記非粘着部を粘着剤層の表面に転写する工程からなることを特徴とする搬送用ラベルの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送用ラベルは、支持シートに搬送用部品を被覆貼着して保持することができ、剥がす際にも、静電気の発生を防止でき、容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の搬送用ラベル一例の概略斜視図を示したものである。
【図2】図2は、本発明の搬送用ラベルの製造方法の手順の一例の断面図を示したものである。
【図3】図3は、本発明の搬送用ラベルを被覆貼着して、搬送用部品を支持シートに保持させた搬送用シートの一例の平面図を示したものである。
【図4】図4は、図3に示した搬送用シートの一例(非粘着部が帯電防止性能を有する硬化インク層のみからなるもの)の一部分の断面図を示したものである。
【図5】図5は、図3に示した搬送用シートの一例(非粘着部が帯電防止性能を有する硬化インク層と帯電防止性能を有する硬化インク層の積層体からなるもの)の一部分の断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の搬送用ラベルLを図1に基づいて説明する。
本発明の搬送用ラベルLにおいて、基材シート1としては、特に制限なく、種々の基材シートが使用でき、例えば紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。紙としては、例えばグラシン紙、ポリエチレンラミネート紙などが挙げられ、プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのシートなどが挙げられる。
【0015】
これらのうち、強度、耐久性等の点からポリエステル樹脂のシートが好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が好ましく挙げられ、ポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
基材シート1は、必要に応じて帯電防止基材シートを使用することができる。帯電防止基材シートとしては、帯電防止剤が練り込まれた基材シート、帯電防止剤が添加されていない、いわゆる無添加タイプの帯電防止基材シートなどが挙げられる。
【0016】
基材シート1は、透明であってもよいし、半透明又は不透明であってもよい。
基材シート1の厚みは、通常5〜200μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、20〜100μmが特に好ましい。
基材シート1の平面形状は、種々の形状にすることができ、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形などが挙げられる。なお、多角形の場合、各頂点は角張っていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。また、多角形における各辺は直線であってもよいし、曲線であってもよい。
基材シート1の大きさは、被覆する搬送用部品9の大きさに応じて、適宜選定すればよく、例えば最大長さが3〜30cmが好ましい。
【0017】
図1に示すように、本発明の搬送用ラベルLにおいて、基材シート1の表面には、粘着剤層2が積層されている。
粘着剤層2に使用される粘着剤としては、種々の粘着剤を使用することができる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。
【0018】
粘着剤層2を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種単独重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの2種以上の共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上と共重合可能な他の単量体の1種以上の共重合体などの1種以上を主成分とするアクリル系粘着剤などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルイタコン酸、モノアルキルフマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸含有単量体などが挙げられる。
【0019】
上記粘着剤には、必要に応じて帯電防止剤、粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を配合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。充填剤としては、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、ホスファイト系、チオエステル系等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等が挙げられ、架橋剤としては、エポキシ系、イソシアナート系、金属キレート系等が挙げられる。
【0020】
粘着剤層2は、透明であってもよいし、半透明又は不透明であってもよい。
粘着剤層2の厚さは、適宜選定すればよいが、通常1〜100μmが好ましく、5〜50μmが特に好ましい。
粘着剤層2の平面形状は、種々の形状にすることができ、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形などが挙げられる。なお、多角形における各頂点は角張っていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。また、多角形における各辺は直線であってもよいし、曲線であってもよい。
粘着剤層2は、基材シート1と同じ大きさにして、基材シート1の全表面に積層してもよいし、基材シート1よりも小さい大きさにして、基材シート1の周辺端部から適当な距離を設けて内側に積層してもよいが、基材シート1の全表面に積層することが好ましい。
【0021】
粘着剤層2を基材シート1に積層する方法としては、基材シート1に粘着剤を塗布、乾燥する方法や、剥離シートに粘着剤を塗布、乾燥し、得られた粘着剤層2付き剥離シートの粘着剤層面を基材シート1の片面に貼り合わせ、その後剥離シートを剥がす方法が挙げられる。前者の方法においても、形成された粘着剤層2の表面には、剥離シートを被覆することが好ましい。これにより、粘着剤層2の表面を平滑にすることができる。
塗布方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0022】
粘着剤層2を基材シート1に積層する方法において使用する剥離シートは、少なくとも片面が剥離性を有する支持基材からなり、剥離シートは、剥離剤を塗工したものであってもよいし、剥離剤を塗工しないものでもよい。
剥離シートの支持基材としては、例えば紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。紙としては、例えばグラシン紙、ポリエチレンラミネート紙などが挙げられ、プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのシートなどが挙げられる。
【0023】
また、剥離剤を塗工しない剥離シートの適当な具体例としては、ポリプロピレン樹脂シート、ポリエチレン樹脂シートなどのポリオレフィン樹脂シート、これらのポリオレフィン樹脂シートを紙や他のシートにラミネートしたシートが挙げられる。剥離シートの支持基材の厚みは、特に制限されないが、通常は50〜300μm程度であればよい。
剥離シートの剥離処理に使用される剥離処理剤としては、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられるが、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂が好ましい。
剥離シートの剥離面の平滑性は、中心線平均粗さ(Ra)が2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。剥離シートの剥離面の平滑性がこの範囲にあると、非粘着部の表面の平滑性を向上させることができる。
【0024】
本発明の搬送用ラベルLにおいて、帯電防止性能を有する硬化インク層3は、粘着剤層2の表面の少なくとも中央部を被覆していることが必要であり、その一部が粘着剤層2の末端に延設されていてもよい。
本発明の搬送用ラベルLにおいて、粘着剤層2の表面の少なくとも中央部に帯電防止性能を有する硬化インク層3が被覆されて非粘着部4が形成されているので、粘着剤層2の周辺部は、粘着剤層2の表面が露出した状態であり、搬送用シート8などの被着体への貼着用粘着部5を形成している。
【0025】
帯電防止性能を有する硬化インク層3は、粘着剤層2の表面の中央部のみを被覆している場合、粘着剤層2の周辺部の全周囲は、連続した粘着剤層2の表面が露出した状態であり、支持シート8などの被着体への連続した貼着用粘着部5を形成する。この場合、搬送用ラベルLが支持シート8に貼着されると、硬化インク層で被覆されている内部空間は、外部と遮断され、密閉された状態になる。
【0026】
なお、貼着用粘着部5は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。貼着用粘着部5が断続的である場合、複数の貼着用粘着部5が分断部6により分断される。その分断部6は、分断部6の位置に粘着剤層2を形成しない方法、分断部6の位置にある粘着剤層2の表面にインクを印刷又は塗布する方法、分断部6の位置にある粘着剤層2の表面に非粘着フィルムを貼着する方法など種々の方法により形成することができるが、粘着剤層2の表面の中央部に形成されている硬化インク層からなる非粘着部4を分断部6の位置にある粘着剤層2の表面の末端まで延設させることにより、一体形成する方法が好ましい。
【0027】
粘着剤層2の表面の中央部の非粘着部4と分断部6の一体形成は、インクを該非粘着部4の形成位置に塗布すると同時に分断部6の形成位置に塗布することにより行うことができるので、作業効率がよい。分断部6を形成する硬化インク層は、帯電防止性能を有する硬化インク層であってもよいし、帯電防止性能を有しない硬化インク層であってもよい。
【0028】
分断部6はその表面が非粘着性であるので、搬送用ラベルLが支持シート8に貼着されても、分断部6は支持シート8に粘着していない。従って、ラベルを剥がす際のきっかけとなり、静電気の発生を防ぐことができるので、分断部6はあった方が好ましい。
特に、分断部6が帯電防止性能を有する硬化インク層で形成されていると、静電気をより効率よく逃がすことができるので、好ましい。
分断部6の幅は、1〜30mmが好ましく、2〜20mmがより好ましい。分断部6の長さは、貼着用粘着部を分断できる長さであればよく、貼着用粘着部の幅と同様な大きさであればよい。
分断部6は、1つでもよいし、2つ以上の複数であってもよい。
【0029】
帯電防止性能を有する硬化インク層3aで構成される非粘着部4の大きさは、搬送用部品9の表面を覆うために十分な大きさであればよく、搬送用部品9の表面の大きさに応じて適宜選定すればよい。該非粘着部4の大きさは、粘着剤層2の表面積に対して、通常50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
貼着用粘着部5は、粘着剤層2の周辺部の全周囲に形成される必要はなく、全周囲の60%以上形成されることが好ましく、70%以上形成されることがより好ましく、80%以上形成されることがさらに好ましい。
貼着用粘着部5の幅は、適宜選定すればよいが、通常1〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、3〜8mmがさらに好ましい。
【0030】
硬化インク層は、帯電防止性能を有するインクを塗布し、インク層を形成し、該インク層を乾燥し、必要に応じて硬化反応させることにより形成することができる。なお、硬化反応をしないインクを用いると、インク層を乾燥するだけで、硬化インク層を形成することができる。
なお、インクの塗布は、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷等の印刷により行うことが好ましい。
帯電防止性能を有するインクは、例えば、帯電防止剤を混合したインクなどが挙げられる。
【0031】
帯電防止剤としては、種々の帯電防止剤を使用でき、例えば、帯電防止剤としては、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、導電性ポリマー、カーボン粉、グラファイト粉などの有機帯電防止剤、金属フィラー系帯電防止剤(例えば、銀粉、金粉、アルミニウム粉、銀メッキ微粒子など)などの無機帯電防止剤、イオン性液体、イオン性固体などが挙げられる。
帯電防止剤が粒子である場合、その平均粒径は、硬化インク層の厚みを超えないものが好ましく、通常0.01〜5.0μmのものが使用できる。
帯電防止剤の含有割合は、硬化インク層中、通常0.1〜40質量%が好ましい。
【0032】
インクの樹脂成分は、種々の樹脂成分にすることができるが、好ましくは光硬化型樹脂成分である。
光硬化型樹脂成分は、光を照射されることにより、硬化されるものであり、紫外線で硬化する物質が代表的なものである。紫外線で硬化する物質の具体例としては、不飽和アクリル系化合物、不飽和ポリエステル系化合物等が挙げられる。また、これらにバインダーを配合したものも使用できる。
【0033】
不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1個有するアクリレートモノマー又は数個有する多官能アクリレートモノマーあるいはそれらのオリゴマー等が挙げられ、多官能アクリレートモノマー又はそれらのオリゴマーが好ましい。多官能アクリレートモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等が好ましい。多官能アクリレートモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0034】
不飽和ポリエステル系化合物としては、不飽和基を1以上有するポリエステルであり、その好適な具体例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート又はそのオリゴマーなどが挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、多価アルコールと多価カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、イタコン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
【0035】
光硬化された光硬化型樹脂成分の弾性、柔軟性などの物性を調整するためのバインダーとしては、ポリビニルシンナメート系、ゴム系、ノボラック−アジド系、セルロース系高分子、変性ポリビニルアルコール又はポリアミド等の高分子等が挙げられる。
光硬化型樹脂成分及びバインダーは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0036】
光硬化型インクには、触媒、光増感剤等を含有させることができる。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレートなどのスズ化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンなどのアミン類等が挙げられる。触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、光増感剤としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。光増感剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0037】
帯電防止性能を有する硬化インク層3aの形成は、粘着剤層2の表面に帯電防止性能を有するインクを塗布して、インク層を形成し、該インク層を乾燥し、必要に応じて硬化反応をさせて、行うことができるが、剥離シート7の剥離表面に、帯電防止性能を有するインクを塗布して、インク層を形成し、該インク層を乾燥し、必要に応じて硬化反応をさせて帯電防止性能を有する硬化インク層3a付き剥離シート7を製造し、その帯電防止性能を有する硬化インク層3aを基材シート1の表面に積層された粘着剤層2の表面に押し当て、転写することにより、粘着剤層2の表面に帯電防止性能を有する硬化インク層3aの形成することが好ましい。
【0038】
剥離シート7としては、前述した粘着剤層2を基材シート1に積層する方法において使用する剥離シートと同様のものが使用できる。
インクの剥離シート7の剥離表面への塗布は、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷等の印刷により行うことが好ましい。
照射される光は、紫外線、電子線等の電磁波が挙げられ、通常は紫外線が用いられる。紫外線は、通常は紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。この紫外線ランプとしては、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有するものが用いられる。
光硬化型インクの硬化は、通常紫外線を100〜600mJ/m程度の光量で照射して行う。
帯電防止性能を有する硬化インク層3aは、透明であってもよいし、半透明又は不透明であってもよい。
【0039】
帯電防止性能を有する硬化インク層3aは、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
帯電防止性能を有する硬化インク層3aの厚みは、通常1〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
帯電防止性能を有する硬化インク層3aは、粘着剤層2の表面に直接被覆させてもよいが、帯電防止性能を有しない硬化インク層3bを介して被覆させることが好ましい。これにより、粘着剤中の低分子量成分が粘着剤層2から帯電防止性能を有する硬化インク層3の表面に染み出すことを防止できる。
【0040】
帯電防止性能を有しないインクとしては、上記した帯電防止性能を有しない硬化インクから帯電防止剤を除いたものが好ましく使用できる。
帯電防止性能を有しない硬化インク層3bの厚みは、通常1〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
なお、帯電防止性能を有しない硬化インク層3bと帯電防止性能を有する硬化インク層3aを積層する場合、両者の硬化インク層の合計厚みは、通常1〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0041】
本発明の搬送用ラベルLにおいては、帯電防止性能を有する硬化インク層3aの表面に平滑性を持たせることにより、さらに帯電防止性能を向上させることができる。
帯電防止性能を有する硬化インク層3aの表面の平滑性は、中心線平均粗さ(Ra)が2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
搬送用ラベルLの好ましい製造方法を、図2に基づいて説明する。
図2(A)に示すように、帯電防止性能を有する硬化インク層3aを、帯電防止性能を有しない硬化インク層3bを介して粘着剤層2の表面に被覆させる場合、剥離シート7の剥離面に帯電防止性能を有するインクを印刷して、帯電防止性能を有する硬化インク層3aを形成した後、帯電防止性能を有する硬化インク層3aの表面に帯電防止性能を有しないインクを印刷して、帯電防止性能を有しない硬化インク層3bを形成した硬化インク層付き剥離シート7と、基材シート1の片面に粘着剤層2を形成した粘着剤層2付き基材シート1を別々に用意する。これにより、帯電防止性能を有する硬化インク層3aの表面を平滑にすることができる。
【0043】
次に、図2(B)に示すように、基材シート1に形成された粘着剤層2と、剥離シート7に形成された硬化インク層を貼り合わせて、前記硬化インク層を粘着剤層2の表面に転写し、本発明の搬送用ラベルLを製造することができる。
さらに、その次に、図2(C)に示すように、剥離シート7を剥がして、本発明の搬送用ラベルLを使用することができる。
【0044】
本発明の搬送用ラベルLを用いて、搬送用部品9を、支持シート8に保持させることができる。
図3には、本発明の搬送用ラベルLを被覆貼着して、搬送用ラベルLを支持シート8に保持させた搬送用シート10の一例の平面図が示されている。
支持シート8の表面には、搬送用部品9が置かれており、その搬送用部品9の表面が、本発明の搬送用ラベルLの非粘着部4で覆われ、該搬送用ラベルLの周辺部にある貼着用粘着部5で支持シート8に貼着されている。
【0045】
図4及び図5には、それぞれ図3に示した搬送用シート10の一例の一部分の断面図が示されている。図4は、非粘着部が帯電防止性能を有する硬化インク層3aのみから構成されている例であり、図5は、非粘着部が帯電防止性能を有する硬化インク層3aと帯電防止性能を有しない硬化インク層3bの積層体から構成されている例である。
図4及び図5に示すように、搬送用部品9の表面は、本発明の搬送用ラベルLの非粘着部4と接触しており、しっかりと搬送用部品9を支持シート10に保持できるので、好ましい。
これにより、支持シート8の表面に搬送用部品9が保持されている搬送用シート10を得ることができる。
【0046】
支持シート8としては、紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの支持シート8の材質としては、例えば、前述した剥離シート7の支持基材と同様なものが挙げられる。
支持シート8の厚みは、適宜選定すればよいが、通常300〜3000μmが好ましい。
【0047】
本発明の搬送用シート10によって搬送される搬送用部品9としては、ICカード、薄型電池、集積回路、ICチップ、コンデンサ等の各種半導体部品などが挙げられる。
搬送用部品9の厚みは、支持シート8に保持することができる範囲であればよく、通常10mm以下が好ましく、5mm以下のものへの適用がより好ましい。
一つの支持シート8の表面に保持される搬送用部品9は、1個でもよいし、2個以上の複数であってもよい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例示によってなんら制約されるものではない。
【0049】
本発明の実施例及び比較例で得られた搬送用ラベルの評価は、次の方法により行った。
(1)帯電防止性能を有する硬化インク層の表面粗さの測定
接触式表面粗さ計(ミツトヨ社製、商品名「SU3000S4」)を用いて、搬送用ラベルの帯電防止性能を有する硬化インク層の表面の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0050】
(2)剥離帯電圧の測定
搬送用ラベルの剥離帯電圧(KV)は、高速剥離試験機(テスター産業社製、商品名「TE−701」)を用いて、180°の剥離角度、20m/分の速度で剥離シート付き搬送用ラベルの剥離シート側を剥離し、剥離した直後、測定距離50mmの位置に固定した電位測定機(シシド静電気(株)製、商品名「STATIRON−DZ3」)を使用し、帯電防止性能を有する硬化インク層の表面の帯電量の最大値を測定することにより求めた。
【0051】
(実施例1)
(1)基材シート1として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名「PET50 60−T」、厚み50μm)を用意し、該基材シート1の片面の全面に、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「PAT1」)を塗布し、乾燥して粘着剤層2(厚み25μm)を形成した後、該粘着剤層2の表面に、剥離シート(リンテック(株)製、商品名「7LK」、ポリエチレンテレフタレート樹脂によりラミネート加工した上質紙を支持基材とし、シリコーン樹脂による剥離処理を施した剥離シート)の剥離処理面を貼着して粘着テープを得た。
【0052】
(2)これとは別に、剥離シート(リンテック(株)製、商品名「7LK」)の剥離処理面に、UV硬化型帯電防止性印刷インク(株式会社ティーアンドケイ東華社製、商品名「UV161静電防止OPニスS」、帯電防止剤含有)を、非粘着部4及び非粘着部4から延設されている一つの分断部6の平面形状(図1に示す形状)に相当する形状に、凸版印刷法により印刷し、硬化させて帯電防止性能を有する硬化インク層3a(寸法:縦64mm×横100mm、分断部6の形状:幅15mm、厚み4.2μm)を形成し、さらにこの硬化インク層の表面にUV硬化型印刷インク(東洋インキ製造(株)製、商品名「カルトンOPニス」)を上記と同様な形状に印刷し、硬化させて帯電防止性能を有しない硬化インク層3b(寸法:縦64mm×横100mm、分断部6の形状:幅15mm、厚み4.2μm)を形成した。
【0053】
次いで、上記(1)で得られた粘着テープの剥離シートを剥がし、粘着剤層2の表面を露出させ、該粘着剤層2の表面の中央部及び分断部6の位置に相当する位置に、上記(2)で得られた硬化インク層付き剥離シートの帯電防止性能を有する硬化インク層3aと帯電防止性能を有しない硬化インク層3bの積層体からなる硬化インク層を貼り合わせて、該硬化インク層を粘着剤層2に転写させ、中抜き加工を行うことにより、該粘着剤層2の表面の中央部に非粘着部4及び分断部6が形成され、該粘着剤層2の周辺部に貼着用粘着部5(幅5mm)が形成された搬送用ラベルL(平面形状:長方形、外周寸法:縦74mm×横110mm)を製造した。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「PAT1」)の代わりに、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「A118」)を用い、基材シート1をポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名「PET50T38(QT38)」、厚み50μm)にし、硬化インク層の厚みを二層の硬化インク層合計で10.6μm(帯電防止性能を有する硬化インク層の厚み5.3μm)にした以外は、実施例1と同様にして搬送用ラベルLを製造した。
【0055】
(実施例3)
実施例1において、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「PAT1」)の代わりに、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「PLシン」)を用い、剥離シート(リンテック(株)製、商品名「7LK」)に代わりに、剥離シート(リンテック(株)製、商品名「8LK」)を用い、硬化インク層の厚みは、二層の硬化インク層合計で11.2μm(帯電防止性能を有する硬化インク層の厚み5.6μm)にした以外は、実施例1と同様にして搬送用ラベルLを製造した。
【0056】
(比較例1)
(1)基材シート1として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名「PET50 60−T」、厚み50μm)を用意し、該基材シート1の片面の全面に、アクリル系粘着剤(リンテック(株)製、商品名「PAT1」)を塗布し、乾燥して粘着剤層2(厚み25μm)を形成した後、該粘着剤層2の表面に、剥離シート(リンテック(株)製、商品名「8LK」、ポリエチレンテレフタレート樹脂によりラミネート加工した上質紙を支持基材とし、シリコーン樹脂による剥離処理を施した剥離シート)の剥離処理面を貼着して粘着テープを得た。
【0057】
(2)次いで、上記(1)で得られた粘着テープの剥離シートを剥がし、粘着剤層2の表面を露出させ、該粘着剤層2の表面の中央部に、UV硬化型印刷インク(株式会社ティーアンドケイ東華社製、商品名「UV161OPニス」)を、非粘着部4及び非粘着部4から延設されている一つの分断部6の平面形状(図1に示す形状)に相当する形状に、凸版印刷法により直塗印刷し、硬化させて帯電防止性を有しない硬化インク層を形成した。
次いで、硬化インク層付き剥離シートの硬化インク層の表面に剥離シートを貼り合わせることにより、該粘着剤層2の表面の中央部に非粘着部4が形成され、該粘着剤層2の周辺部に貼着用粘着部5(幅5mm)が形成された搬送用ラベルL(平面形状:長方形、外周寸法:縦74mm×横110mm)を製造した。
【0058】
【表1】

【0059】
搬送用ラベルの実用適性の判断基準
搬送用ラベルの実用適性の判断基準を下記に示す。
◎:極めて良好である。
○:良好である。
×:劣る。
【0060】
実施例で得られた搬送用ラベルLを用いて、図3に示すような、支持シート8(材質:紙、厚み133μm)の表面に置かれたICカード9の表面を覆い、搬送用ラベルLの周辺にある貼着用粘着部4で支持シート8に貼着し、ICカード9を支持シート8に保持させた。
その後、ICカード付き支持シート8から、搬送用ラベルLを剥がし、ICカード9を取り出した。実施例で得られた搬送用ラベルLは、ICカード9に粘着剤残りすることなく、静電気の発生を防止し、容易に剥がすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の搬送用ラベルは、搬送用部品を被覆貼着した後、剥がす際に静電気を発生する恐れのある種々の搬送用部品の被覆貼着に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 基材シート
2 粘着剤層
3a 帯電防止性能を有する硬化インク層
3b 帯電防止性能を有しない硬化インク層
4 非粘着部
5 貼着用粘着部
6 分断部
7 剥離シート
8 支持シート
9 搬送用部品
10 搬送用シート
L 搬送用ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートに粘着剤層が積層され、該粘着剤層の表面の少なくとも中央部に帯電防止性能を有する硬化インク層が被覆されて非粘着部が形成され、粘着剤層の周辺部に貼着用粘着部が形成されていることを特徴とする搬送用ラベル。
【請求項2】
前記非粘着部が、帯電防止性能を有する硬化インク層と帯電防止性能を有しない硬化インク層の積層体からなる請求項1に記載の搬送用ラベル。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送用ラベルの周辺部にある貼着用粘着部が支持シートに貼着され、支持シートの表面に搬送用ラベルが保持されていることを特徴とする搬送用シート。
【請求項4】
剥離シートの剥離面に帯電防止性能を有するインクを塗布してインク層を形成し、該インク層を硬化させて硬化インク層からなる非粘着部を形成する工程と、基材シートの片面に粘着剤層を形成する工程と、粘着剤層を非粘着部に貼り合わせて前記非粘着部を粘着剤層の表面に転写する工程からなることを特徴とする搬送用ラベルの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−215237(P2010−215237A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60613(P2009−60613)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】