説明

搬送車用板材

【課題】多量に製造したとしても、木材資源の枯渇及びそれによる環境破壊を防止することができ、しかも長期間にわたって一定の品質を維持することができる搬送車用板材を提供する。
【解決手段】主素材板2をその厚さ方向に並べ、厚さ方向の側面どうしを接着固定する。主素材板2の上下の側面には、幅が主素材板2の厚さより広い下表面素材板3及び上表面素材板4を配置する。下表面素材板3及び上表面素材板4の厚さ方向の各側面を主素材板2の幅方向の各側面にそれぞれ接着固定する。これにより、平板状をなす搬送車用板材1を構成する。板材1を構成する主素材板2、下表面素材板3及び上表面素材板4は、竹材によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラックその他の搬送車の床や側壁を構成する床材や側壁材として用いられる搬送車用板材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トラック等の搬送車用の床材が種々の記載されている。例えば、ベニヤ板からなる板材、幅が狭く長尺の板材をその幅方向に並べて所定の幅を有する平板としたもの、トラック等の床とほぼ同一の大きさを有する一枚の板材からなるもの、幅が広い中央板材及びその両側に配置された幅の狭い側板部からなるもの等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−202812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の床材(板材)は、いずれも木材を素材としている。木材は、その成長が遅く、利用に供することができるようになるまでには数十年を要する。このため、特許文献1に記載の床材を多量に使用すると、木材資源の枯渇という問題を引き起こすのみならず、環境破壊を招くという問題がある。
また、木材には、年輪があるため、木材からなる板材を長期間使用すると、表面に凹凸が発生する。このため、床材上に載置した品物を滑らせて移動するときに、品物が床材の表面に引っ掛かったり、凹部から割れ目が発生するという問題がある。さらに、木材には、幹から生じる枝の残りである節がある。この節は、他の部分との収縮度合いが異なるため、板材から脱落してそこに孔が形成されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、竹材の外周面と内周面との間の肉部から切り出された多数の平板状をなす主素材板を備え、上記多数の主素材板が一平面上に互いに平行に並べられ、隣接する主素材板の対向する側面どうしが互いに固着されることによって全体が平板状に構成されていることを特徴としている。
この場合、上記主素材板が断面長方形状に形成され、上記主素材板がその厚さ方向の側面どうしを対向させて並べられ、上記主素材板の互いに対向する側面どうしが互いに固着されていることが望ましい。
上記主素材板が、その長手方向に一直線状に並べられた複数の単位素材板を有し、単位素材板の長手方向の一端部には、単位素材板をその厚さ方向に横断し、かつ幅方向に交互に存在する多数の凹凸を有する櫛状部が形成され、上記主素材の長手方向に隣接する二つの単位素材板が、櫛状部どうしを噛み合わせ状態で互いに固着されていることが望ましい。
断面長方形状をなし、かつ上記主素材板の厚さより広い幅を有する表面素材板をさらに備え、上記表面素材板がその長手方向を上記主素材板の長手方向と同一方向に向け、かつ幅方向を上記主素材板の厚さ方向に向けた状態で、上記主素材板の幅方向の両側に配置され、上記表面素材板の厚さ方向を向く一側面が互いに隣接する複数の主素材板の幅方向を向く側面に固着されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、板材の素材たる主素材板が竹材で構成されている。竹の生長速度は木材に比して格段に早く、数年で板材として利用可能になる。したがって、この発明に係る板材を多量に使用したとしても資源の枯渇や環境破壊という問題が発生することを確実に防止することができる。
また、竹材には年輪がなく、その内部構造がほぼ均一になっている。したがって、竹材の内側の部分からなる板材を長期間使用したとしても、板材の表面に凹凸が生じることがない。よって、板材上に載置された品物を滑らせて移動させるときに、品物が板材に引っ掛かったり、あるいは凹部から割れが発生するような事態を防止することができる。また、竹材の内部には、木材とは異なり、幹から生じる枝に起因する節が存在しない。したがって、板材の一部が抜け落ちてそこに孔が明いてしまうような事態を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、この発明に係る搬送車用板材の一実施の形態の一部を省略して示す平面図である。
【図2】図2は、同実施の形態の右側面図である。
【図3】図3は、図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図4】図4は、同実施の形態において用いられている単位素材板を竹材から切り出す方法の一例を示す図である。
【図5】図5は、同方法の他の一例を示す図である。
【図6】図6は、単位素材板どうしを固着する方法の一例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図1及び図2に示す実施の形態の製造方法を示す一部省略分解斜視図である。
【図8】図8は、この発明の他の実施の形態を示す平面図である。
【図9】図9は、同実施の形態において用いられている組立方法の一例の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明に係る搬送車用板材の第1実施の形態を示す。この実施の形態の搬送車用板材1は、断面長方形をなしており、長さL、幅W及び厚さTを有している。長さL、幅W及び厚さTは、使用目的に応じて適宜の寸法に定められる。例えば、板材1がトラック(搬送車)の床材として用いられる場合には、トラックの床の寸法に応じて定められる。この実施の形態では、長さL、幅W及び厚さTが、それぞれ9600mm、4000mm及び25mmに設定されている。
【0009】
板材1は、いずれも竹材からなる主素材板2、下表面素材板(表面素材板)3及び上表面素材板(表面素材板)4によって構成されている。板材1は、主素材板2だけで構成してもよく、主素材板2と下表面素材板3及び上表面素材板4の一方とだけで構成してもよい。
【0010】
主素材板2は、図4及び図5に示すように、略円筒状をなす竹材Bの外周面Baと内周面Bbとの間の内部(肉部)から切り出すことによって製造されており、断面長方形をなしている。主素材板2は、図4に示すように、その幅方向を竹材Bの直径方向に合わせて切り出すことも可能であり、図5に示すように、主素材板2の幅方向を竹材Bの接線方向に合わせて切り出すことも可能である。竹材Bとしては、各種のものを採用可能であるが、例えば孟宗竹を利用することができる。
【0011】
主素材板2の寸法は、竹材Bの大きさによって制限される。特に、主素材板2の幅w及び厚さtは、竹材Bの外径及び内径によって制限される。そのために、主素材板2の幅wは、例えば10〜20mm程度に設定され、厚さtは3〜7mm程度に設定されている。一方、主素材板2の長さは、板材1の長さLと同一長さに設定されている。ただし、1本の竹材Bから9600mmの長さを有する主素材板2を切り出すことはほとんど無理であり、せいぜい4000〜5000mmの長さのものしか切り出すことができない。そこで、主素材板2は、複数の単位素材板をその長手方向に繋ぐことによって構成されている。この実施の形態では、2本の単位素材板を繋ぐことによって主素材板2が構成されている。
【0012】
すなわち、図6に示すように、二つの単位素材板2A,2Bは、主素材板2と同一の断面形状を有している。しかも、単位素材板2A,2Bは、端面どうしが互いに対向するようにして同一姿勢で長手方向に並べられている。そして、対向する両端部どうしが互いに接着固定されることにより、主素材板2が構成されている。単位素材板2A,2Bの端部どうしを互いに固着するに際しては、互いに対向する端部に櫛状部2C,2Dをそれぞれ形成することが望ましい。櫛状部2Cは、厚さ方向の一側面から他側面まで延びる断面三角形状ないしは台形状の多数の凸部2a及び凹部2bを有している。凸部2a及び凹部2bは、単位素材板2Aの幅方向に交互に配置されている。櫛状部2Dも同様に構成されている。そして、櫛状部2C,2Dは、一方の凸部2aと他方の凹部2bとが互いに噛み合わされた状態で接着固定されている。これにより、単位素材板2A,2Bが連結され、主素材板2が構成されている。
【0013】
上記のように構成された主素材板2は、図3及び図7に示すように、長手方向の端面どうしが同一平面上に位置するとともに、幅方向の側面どうしが同一平面上に位置するようにして厚さ方向に並べられる。したがって、例えば主素材板2の厚さを5mm、板材1の幅Wを4000mmとした場合には、接着剤の厚さを無視するものとすると、800枚の主素材板2が用いられる。互いに隣接する主素材板2,2は、厚さ方向の側面どうしが互いに接着されることによって互いに固着されている。
【0014】
下表面素材板3は、板材1の一方の表面を構成するものであり、主素材板2と同様に竹材Bから切り出すことによって構成されている。下表面素材板3は、主素材板2と異なる寸法に形成してもよいが、この実施の形態では、主素材板2と同一寸法のものが用いられている。図3及び図7に示すように、下表面素材板3は、その長手方向を主素材板2の長手方向と同一方向に向けるとともに、その幅方向を主素材板2の厚さ方向に向けて配置されている。したがって、下表面素材板3は、その厚さ方向の一側面が複数の主素材板2の幅方向の一側面に接触し、その状態で各主素材板2の幅方向の側面に接着固定されている。これにより、主素材板2,2どうしの接着強度の向上が図られている。互いに隣接する下表面素材板3,3の幅方向の側面どうしも互いに接着されている。したがって、例えば下表面素材板3の幅を20mm、板材1の幅を4000mmとした場合には、接着剤の厚さを無視するものとすると、200枚の下表面素材板3が用いられる。
【0015】
上表面素材板4は、板材1の他方の表面を構成するものであり、下表面素材板3と同一の寸法を有している。そして、下表面素材板3は、その厚さ方向の一側面が主素材板2の幅方向の他側面に接着固定されている。勿論、上表面素材板4は、下表面素材板3と異なる寸法のものを採用してもよい。
【0016】
なお、下表面素材板4及び上表面素材板5は、その幅方向の側面が主素材板2の厚さ方向のほぼ中央に位置するように配置されている。しかも、下表面素材板4及び上表面素材板5は、下表面素材板3の幅方向の側面が上表面素材板4の幅方向の中央に位置し、上表面素材板4の幅方向の側面が下表面素材板3の幅方向の中央に位置するように配置されている。したがって、実際には、下表面素材板3及び上表面素材板4のいずれか一方の1本は、その幅が他の下表面素材板3又は上表面素材板4の幅の半分であるものが用いられている。
【0017】
上記のように構成された板材1は、トラックの床面上に載置固定される。この場合、板材1は、床面上に直接載置固定してもよいが、床面上に前後左右に延びる複数の根太(図示せず)を固定し、この根太の上に載置固定することが望ましい。また、同様にしてトラックの荷台の側面に固定することも可能である。
【0018】
板材1は、これを構成する主素材板2、下表面素材板3及び上表面素材板4がいずれも竹材によって構成されている。竹は、その成長が早く、数年で板材として利用可能になる。したがって、多数の板材1を使用したとしても、竹材資源が枯渇したり、あるいは環境を破壊するような事態を確実に防止することができる。
【0019】
また、竹は、年輪がなく、内部構造が全体的にほぼ均一になっている。したがって、板材1を長期間しようしたとしても、その表面に年輪に起因するような凹凸が発生することがない。よって、板材1に載置された物品を滑らせて移動させたとしても、物品が凹凸に引っ掛かったり、凹部から割れ目が発生するような事態を確実に防止することができる。また、竹材には、木材の枝に起因するような節が無いので、板材1に節の脱落による孔が明くようなことを防止することができる。
【0020】
図8及び図9は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態の搬送車用板材1′は、二つセグメント1A及び二つのセグメント1Bによって構成されており、全体として平面視長方形の平板状をなしている。各セグメント1A,1Bは、板材1と同様に主素材板2、下表面素材板3及び上表面素材板4によって構成されている。セグメント1A,1Aは、板材1′の一方の対角線上に配置されており、セグメント1B,1Bは板材1′の他方の対角線上に配置されている。
【0021】
セグメント1Aのセグメント1Bと対向する側面には、図9に示すように、当該側面の長手方向の一端から他端まで延びる断面台形状の突条1aが形成されている。一方。セグメント1Bのセグメント1Aと対向する側面には、当該側面の一端から他端まで延びる断面台形状の凹部1bが形成されている。この凹部1bに突条1aを嵌合させた状態でセグメント1A,1Bの側面どうしが互いに押し付けられている。セグメント1A,1Bの側面どうし(突条1a及び凹部1bの互いに接触する側面を含む。)は、板材1′全体が一体化される場合には接着固定されるが、各セグメント1A,1Bがトラックの床面等にビス等の固定手段によって固定される場合のように一体化する必要がない場合には接着しなくてもよい。
【0022】
セグメント1A,1Bは、突条1a及び凹部1bのいずれが形成されるかという点を除けば、同一形状、同一寸法を有している。しかし、必ずしもそのように構成する必要はなく、例えば特許文献1に記載のもののように、厚さが同一で幅及び長さが互いに異なる複数のセグメントを組み合わせてもよい。
【0023】
なお、この発明は上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、主素材板2の断面形状を長方形状にしているが断面台形状にしてもよい。その場合には、隣接する主素材板2,2の幅方向の向きを逆向きにする。つまり、幅方向の向きが逆向きである主素材板2を交互に配置する。そして、互いに隣接する主素材板2の厚さ方向の側面どうしを互いに接着固定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明に係る搬送車用板材は、トラック等の搬送車の床に敷設される床板や、側面に設けられる側板として利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
B 竹材
Ba 外周面
Bb 内周面
1 板材
1′ 板材
2 主素材板
2A 単位素材板
2B 単位素材板
2C 櫛状部
2D 櫛状部
2a 凸部
2b 凹部
3 下表面素材板(表面素材板)
4 上表面素材板(表面素材板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹材の外周面と内周面との間の肉部から切り出された多数の平板状をなす主素材板を備え、上記多数の主素材板が一平面上に互いに平行に並べられ、隣接する主素材板の対向する側面どうしが互いに固着されることによって全体が平板状に構成されていることを特徴とする搬送車用板材。
【請求項2】
上記主素材板が断面長方形状に形成され、上記主素材板がその厚さ方向の側面どうしを対向させて上記平面上に並べられ、上記主素材板の互いに対向する側面どうしが互いに固着されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送車用板材。
【請求項3】
上記主素材板が、その長手方向に一直線状に並べられた複数の単位素材板を有し、単位素材板の長手方向の一端部には、単位素材板をその厚さ方向に横断し、かつ幅方向に交互に存在する多数の凹凸を有する櫛状部が形成され、上記主素材の長手方向に隣接する二つの単位素材板が、櫛状部どうしを噛み合わせ状態で互いに固着されていることを特徴とする請求項2に記載の搬送車用板材。
【請求項4】
断面長方形状をなし、かつ上記主素材板の厚さより広い幅を有する表面素材板をさらに備え、上記表面素材板がその長手方向を上記主素材板の長手方向と同一方向に向け、かつ幅方向を上記主素材板の厚さ方向に向けた状態で、上記主素材板の幅方向の両側に配置され、上記表面素材板の厚さ方向を向く一側面が互いに隣接する複数の主素材板の幅方向を向く側面に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送車用板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260300(P2010−260300A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114470(P2009−114470)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(591220780)有限会社泰成電機工業 (19)
【Fターム(参考)】