説明

携帯無線装置およびアンテナ切り替え方法並びにプログラム

【課題】携帯無線装置に悪影響を及ぼすおそれがある距離センサを使用することなく、ユーザの手によって覆われていない利得の良好なアンテナを使用できるようにする。
【解決手段】各センサ8,10,12,14が、それぞれ異なる装置状態を検出する。テーブル7には、予め定められた検出結果の組み合わせと、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されている。ここで、検出結果の組み合わせは、ユーザが利用している機能に対応したものとなり、ユーザが利用している機能によって、ユーザの手によって覆われる部分が異なるものとなる。制御装置5は、センサ8,10,12,14の検出結果に基づいてテーブル7を検索することより使用するアンテナを決定し、この決定したアンテナを指定した制御信号を切り替えスイッチ3に対して出力する。切り替えスイッチ3は、制御信号によって指定されたアンテナを送受信回路4と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話装置などのようにアンテナと送受信回路を備えた携帯無線装置に関し、特に、携帯無線装置が備えている複数のアンテナの中から利得の高いアンテナを選択して使用することにより、安定した無線送受信を行えるようにした携帯無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯無線装置のアンテナとしては、その筐体から突出可能な露出型と、筐体に内蔵された内蔵型の2種類がある。
【0003】
露出型は、一般に、筐体から突出させた場合には内蔵型に比べて高い送受信感度を得ることができる。一方、内蔵型は、露出型に比べて送受信感度に劣る場合があるものの、筐体表面に凸部が生じないために、デザイン的にメリットがあると共に携帯性にも優れる。更に、ユーザによるアンテナの突出、収納作業が不要であるため、操作性にも優れる。
【0004】
しかし、内蔵型の場合は、筐体の外観を見ただけでは、アンテナの内蔵位置を認識することが難しいため、ユーザが無意識のうちにアンテナを手で覆ってしまう場合がある。このような場合には、アンテナ利得が低下し、安定した送受信を行うことができなくなってしまうことがある。
【0005】
そこで、このような問題点を解決するため、複数のアンテナを設けると共に、各アンテナ毎に電波障害物までの距離を検出する距離センサを設け、電波障害物までの距離が最も遠いアンテナを使用するようにした技術が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、これ以外にも、複数のアンテナを設け、使用するアンテナを切り替えることによりアンテナ利得の低下を防止するようにした技術としては、次のような技術も知られている(例えば、特許文献2、3参照)
【0007】
特許文献2に記載されている従来の技術は、第1、第2のアンテナと、第2のアンテナに近くに配置されたカメラの状態を検出する検出部とを設け、カメラが動作中の場合は第1のアンテナを使用し、動作中でない場合は第2のアンテナを使用するようにしている。
【0008】
特許文献3に記載されている従来の技術は、第1、第2のアンテナと、携帯無線装置の傾きを検出するセンサとを設け、センサによって検出された傾きに基づいて、ユーザが右耳、左耳のどちらに携帯無線装置を当てて通話を行っているのかを認識し、右耳に当てて通話を行っていると認識した場合には、第1のアンテナを使用し、左耳に当てて通話を行っていると認識した場合には、第2のアンテナを使用することにより、ユーザの頭部によるアンテナ利得の低下を防止するようにしている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−279649号公報
【特許文献2】特開2004−282480号公報
【特許文献3】特開2005−223802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されている従来の技術によれば、電波障害物までの距離が最も遠い、利得の最も高いアンテナを利用して送受信を行うことができるため、電波障害物となるユーザの手による悪影響を少なくすることができる。しかしながら、この従来の技術は、高周波を発生する距離センサが必要になるため、高周波が携帯無線装置に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
一方、特許文献2に記載されている従来の技術によれば、カメラ動作時に発生する高周波成分による悪影響を低減することが可能になるが、ユーザの手によってアンテナが覆われてしまうことによるアンテナ利得の低下を防止することはできない。
【0012】
また、特許文献3に記載されている従来の技術によれば、ユーザの頭部によるアンテナ利得の低下を防止することはできるが、ユーザの手によってアンテナが覆われてしまうことによるアンテナ利得の低下を防止することはできない。
【0013】
〔発明の目的〕
そこで、本発明の目的は、携帯無線装置に悪影響を及ぼす距離センサを使用せずに、利得の良いアンテナを利用して無線送受信を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる第1の携帯無線装置は、
複数のアンテナと、
送受信回路と、
入力される制御信号によって指定されたアンテナと前記送受信回路とを接続する切り替えスイッチと、
それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサと、
予め定められた前記複数のセンサの検出結果の組み合わせと、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルと、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記テーブルを検索することにより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナを指定した制御信号を前記切り替えスイッチに対して出力する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる第2の携帯無線装置は、第1の携帯無線装置において、
前記使用アンテナ情報は、使用するアンテナを固定的に指定するものであることを特徴とする携帯無線装置。
【0016】
本発明にかかる第3の携帯無線装置は、第1の携帯無線装置において、
前記使用アンテナ情報は、使用するアンテナを固定的に指定するものと、使用するアンテナを切り替えることを指示するものとを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明にかかる第4の携帯無線装置は、第1〜第3の何れかの携帯無線装置において、
前記制御装置は、前記複数のセンサの検出結果の組み合わせが前記テーブルに登録されていない場合は、予め定められているアンテナを使用すると決定することを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる第5の携帯無線装置は、第1〜第4の何れかの携帯無線装置において、
自装置の姿勢が水平であるか垂直であるかを検出する姿勢センサと、
スイッチが高頻度で操作されているか否かを検出するスイッチセンサと、
音声が高頻度で入力されているか否かを検出する音声センサと、
カメラが動作中であるか否かを検出するカメラセンサとの内の、少なくとも2つ以上を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる第6の携帯無線装置は第1〜第5の何れかの携帯無線装置において、
前記複数のアンテナが内蔵アンテナであることを特徴とする。
【0020】
本発明にかかるアンテナ切り替え方法は、
複数のアンテナと送受信回路とを備えた携帯無線装置におけるアンテナ切り替え方法であって、
複数のセンサが、それぞれ異なる装置状態を検出し、
制御装置が、前記複数のセンサの検出結果に基づいて、予め定められた前記複数のセンサの検出結果の組み合わせとその組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルを検索することにより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナと前記送受信回路とを接続することを特徴とする。
【0021】
本発明にかかるプログラムは、
複数のアンテナと、送受信回路と、入力される制御信号によって指定されたアンテナと前記送受信回路とを接続する切り替えスイッチと、それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサと、予め定められた前記複数のセンサの検出結果の組み合わせと、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルとを備えたコンピュータを、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記テーブルを検索することより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナを指定した制御信号を前記切り替えスイッチに対して出力する制御装置として機能させる。
【0022】
〔作用〕
各センサは、携帯無線装置の姿勢が平行であるか垂直であるか、スイッチが高頻度で操作されているか否か、カメラが動作中であるか否か、音声入力が高頻度で行われているか否かとかいった装置状態を検出する。各センサの検出結果の組み合わせは、携帯無線装置が有している複数の機能の内の、ユーザが現在利用している機能に対応したものとなる。また、ユーザが利用している機能により、ユーザの手によって覆われる部分は異なるものとなる。即ち、ユーザが利用している機能によって、良好な利得を得ることができるアンテナは異なるものとなる。
【0023】
テーブルには、各センサの検出結果の組み合わせの内の予め定められている組み合わせ毎に、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報が登録されている。即ち、テーブルには、携帯無線装置が備えている機能毎に、その機能を使用しているときに使用するアンテナを示す使用アンテナ情報が登録されている。制御回路は、このテーブルの内容と、各センサの検出結果とに基づいて、送受信回路と接続させるアンテナを決定し、この決定したアンテナを指定した制御信号を切り替えスイッチに対して出力する。従って、テーブルに、各センサの検出結果の組み合わせ毎に、その組み合わせに対応する機能を使用したときに最も良好な利得を得ることができるアンテナを示すアンテナ情報を登録しておけば、ユーザの手の影響を受けない、利得の高いアンテナを利用して安定した送受信を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、携帯無線装置に悪影響を及ぼす距離センサを使用したりしなくとも、携帯無線装置に複数備えられているアンテナの内の利得の良いアンテナを利用して無線送受信を行うことが可能になる。その理由は、それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサと、予め定められた検出結果の組み合わせとその組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルとを備え、上記複数のセンサの検出結果に基づいて上記テーブルを検索し、使用するアンテナを決定するようにしているからである。
【0025】
即ち、ユーザが利用する機能により、ユーザの手によって覆われる部分は異なるものとなり、その結果、ユーザが利用する機能により、良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナは異なるものとなる。ユーザが利用している機能は、装置状態を検出する複数のセンサの検出結果の組み合わせに対応するものとなり、上記複数のセンサは、装置状態を検出するものであるので、携帯無線装置に悪影響を及ぼさない。従って、上記した構成を備えることにより、携帯無線装置に悪影響を及ぼす距離センサを使用せずに、利得の良いアンテナを利用して無線送受信を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
〔第1の実施の形態の構成の説明〕
図1および図2を参照すると、本発明の第1の実施の形態としての携帯無線装置が示されている。図1は携帯無線装置の内部構成例を示すブロック図、図2は携帯無線装置の外観図である。
【0028】
図2を参照すると、携帯無線装置の筐体100には、複数のスイッチ9と、マイクロフォン11と、カメラ13とが設けられている。
【0029】
スイッチ9には、電源スイッチ、通話スイッチなど以外にも、ブラウザ使用時の操作されるスイッチが含まれる。
【0030】
図1を参照すると、筐体100の内部には、第1、第2のアンテナ1、2と、切り替えスイッチ3と、送受信回路4と、制御装置5と、テーブル7が格納された記憶装置6と、加速度センサ8と、スイッチセンサ10と、マイクロフォン11と、音声センサ12と、カメラ13と、カメラセンサ14とが設けられている。
【0031】
第1、第2のアンテナ1、2は、空間に電磁波を放射するほか、空間の電磁波を受信し、受信信号を切り替えスイッチ3を介して送受信回路4へ渡す。なお、本実施の形態では、第1、第2のアンテナ1、2は、それぞれ筐体100の上部、下部に内蔵されている。
【0032】
切り替えスイッチ3は、制御装置5から入力される制御信号に従って、第1、第2のアンテナ1、2の内の一方と送受信回路4とを接続する。本実施の形態では、制御装置5からの制御信号が“1”の場合は、第1のアンテナ1と送受信回路4とを接続し、“0”の場合は、第2のアンテナ2と送受信回路4とを接続する。
【0033】
送受信回路4は、送信情報を変調して切り替えスイッチ3に入力し、また、切り替えスイッチ3を介して入力される受信信号を復調する。
【0034】
加速度センサ8は、加速度を検出し、検出結果を制御装置に対して出力する。
【0035】
スイッチセンサ10は、複数設けられているスイッチ9の内の何れかが操作(オン)されると、制御装置5に対してスイッチ操作検出信号を出力する。
【0036】
音声センサ12は、マイクロフォン11の出力信号に基づいて音声入力があったことを検出すると、制御装置5に対して音声検出信号を出力する。
【0037】
カメラセンサ14は、カメラ13が動作状態のとき、制御装置5に対してカメラ動作信号を出力する。
【0038】
制御装置5は、次のような機能を有する。
【0039】
・加速度センサ8の検出結果に基づいて、自携帯無線装置の姿勢が垂直であるのか、水平であるのかを判定する機能。
・スイッチセンサ10からのスイッチ操作検出信号に基づいて、スイッチ9が高頻度で操作されているか否かを判定する機能。
・音声センサ12からの音声検出信号に基づいて、マイクロフォン11から音声が高頻度で入力されているか否かを判定する機能。
・カメラセンサ14からのカメラ動作信号に基づいて、カメラ13が動作中であるか否かを判定する機能。
・上記各判定結果と、テーブル7の内容とに基づいて、第1、第2のアンテナ1、2の内のどちらを使用するのかを決定する機能。
・第1のアンテナ1を使用すると決定した場合には、切り替えスイッチ3に対する制御信号を“1”とし、第2のアンテナ2を使用すると決定した場合には、制御信号を“0”とする機能。
【0040】
テーブル7には、各センサ8、10、12、14の検出結果に対応する制御装置5の判定結果の組み合わせの内の、予め定められている第1の組み合わせ毎に、使用するアンテナを示すアンテナ情報が登録されると共に、上記第1の組み合わせとは異なる予め定められている第2の組み合わせ毎に、アンテナを切り替えて使用することを示す使用アンテナ情報が登録されている。
【0041】
なお、上記した各機能を有する制御装置5は、CPU(コンピュータ)によって実現可能であり、コンピュータによって実現するためには、例えば、次のようにする。コンピュータに上記各機能を持たせるためのプログラムを記録したディスク、半導体メモリ、その他の記録媒体を用意し、コンピュータに上記プログラムを読み取らせる。コンピュータは、読み取ったプログラムに従って自身の動作を制御することにより、自コンピュータ上に上記した各機能を実現する。
【0042】
〔第1の実施の形態の動作の説明〕
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0043】
電源が投入されると、制御装置5は、切り替えスイッチ3に対して出力する制御信号を予め定められている状態にする(ステップS31)。本実施の形態では、制御信号の状態を“1”とする。これにより、切り替えスイッチ3は、第1のアンテナ1と送受信回路4とを接続する。
【0044】
その後、制御装置5は、加速度センサ8の検出結果に基づいて、携帯無線装置の姿勢が水平であるか、垂直であるかを判定する(ステップS32)。即ち、加速度センサ8から出力されるZ軸方向の加速度に基づいて、水平面に対するZ軸の傾きを求め、この傾きと閾値とを比較することにより、姿勢が水平であるか、垂直であるかを判定する。
【0045】
次に、制御装置5は、スイッチセンサ10からのスイッチ操作信号に基づいて、スイッチ9が高頻度で操作されているか否かを判定する(ステップS33)。即ち、所定時間内に所定回数以上、スイッチ操作信号が入力されたか否かに基づいて、スイッチが高頻度で操作されているか否かを判定する。
【0046】
その後、制御装置5は、音声センサ12からの音声検出信号に基づいて、音声が高頻度で入力されている否かを判定する(ステップS34)。即ち、所定時間内において音声検出信号が入力されている回数が閾値以上であるか否かに基づいて、音声が高頻度で入力されているか否かを判定する。
【0047】
次に、カメラセンサ14からのカメラ動作信号に基づいて、カメラ13が動作中であるか否かを判定する(ステップS35)。
【0048】
ここで、ステップS32〜S35の処理を行うのは、携帯無線装置が備えている各機能の内の、どの機能が現在使用されているかを知るためである。例えば、図4(A)に示すように、ブラウザを使用している場合は、ステップS32〜S35の判定結果は、それぞれ「水平」「高頻度」「低頻度」「非動作」となり、同図(B)に示すように、カメラを使用している場合は、ステップS32〜S35の判定結果は、それぞれ「水平」「低頻度」「低頻度」「動作」となり、同図(C)に示すように、音声通話を行っている場合は、ステップS32〜S35の判定結果は、それぞれ「垂直」「低頻度」「高頻度」「非動作」となり、同図(D)に示すように、テレビ(TV)電話を利用している場合は、ステップS32〜S35の判定結果は、それぞれ「垂直」「低頻度」「高頻度」「非動作」となる。また、待ち受け状態の場合は、ステップS33〜S35の判定結果は、それぞれ「低頻度」「低頻度」「非動作」となる。なお、この場合、ステップS32の判定結果は、待ち受け状態中の装置の姿勢に対応したものとなる。例えば、待ち受け状態中の装置の姿勢が図4(E)に示すものであれば、ステップS32の判定結果は「水平」となる。このように、携帯無線装置のどの機能を利用しているかによって、ステップS32〜S35の判定結果の組み合わせは異なるものになる。
【0049】
また、図4を参照して分かるように、使用する機能によって、ユーザの手によって覆われる部分も異なるものとなる。通常、ブラウザを使用している場合には、図4(A)に示すように、第1、第2のアンテナ1、2の内蔵部分が両方ともユーザの手によって覆われ、カメラを使用している場合には、同図(B)に示すように、第2のアンテナ2の内蔵部分がユーザに手によって覆われ、音声通話を行っている場合には、同図(C)に示すように第1のアンテナ1の内蔵部分がユーザの手によって覆われ、テレビ電話を使用している場合には、同図(D)に示すように第2のアンテナ2の内蔵部分がユーザの手によって覆われ、待ち受け状態の場合は、同図(E)に示すように、第1、第2のアンテナ1、2の内蔵部分はユーザに手に覆われていない。
【0050】
従って、カメラ使用時およびテレビ電話使用時には第1のアンテナ1が最も利得の高いアンテナとなり、音声通話時には、第2のアンテナ2が最も利得の高いアンテナとなる。また、ブラウザ使用時および待ち受け状態においては、第1、第2のアンテナ1、2の利得は同程度となる。
【0051】
そこで、テーブル7には、図5に示すように、音声通話時、カメラ使用時、テレビ電話使用時にステップS32〜S35において得られると予測される判定結果の組み合わせに対応付けて、最もアンテナ利得が高くなるアンテナを示す使用アンテナ情報を登録しておく。更に、ブラウザ使用時および待ち受け状態のときにステップS32〜S35で得られると予測される判定結果の組み合わせに対応付けてアンテナを切り替えることを示す使用アンテナ情報を登録しておく。なお、ブラウザ使用時、待ち受け状態に対応する使用アンテナ情報には、前回使用したアンテナを示す情報(前回使用アンテナ情報)も含まれ、初期状態においては、例えば、第1のアンテナ1を示すものになっている。
【0052】
再び図3に戻り、制御装置5は、ステップS35の処理が終了すると、ステップS32〜S35の判定結果と、テーブル7の内容とに基づいて、送受信回路4と接続させるアンテナを決定する(ステップS36)。
【0053】
このステップS36で行う処理を詳しく説明すると、例えば、次のようになる。
【0054】
ステップS32〜ステップS35の判定結果の組み合わせがテーブル7に登録されていない場合は、予め定められているアンテナ(例えば、第1のアンテナ1)を使用すると決定する。また、ステップS32〜S35の判定結果の組み合わせがテーブル7に登録されており、且つその組み合わせと対になっている使用アンテナ情報が使用するアンテナを示している場合には、そのアンテナを使用すると決定する。また、ステップS32〜S35の判定結果の組み合わせがテーブル7に登録され、且つその組み合わせと対になっている使用アンテナ情報が使用するアンテナを切り替えることを示すものである場合は、それに含まれている前回使用アンテナ情報によって示されるアンテナとは別のアンテナを使用すると決定し、前回使用アンテナ情報を今回使用すると決定したアンテナを示すものに書き換える。
【0055】
今、例えば、ステップS32〜S35の判定結果が「垂直」「低頻度」「高頻度」「動作中」であり(テレビ電話使用時)、テーブル7の内容が図5に示すものであれば、ステップS36において、制御装置5は使用するアンテナを第1のアンテナ1と決定する。また、例えば、ステップS32〜S35の判定結果が「水平」「高頻度」「低頻度」「非動作」であり(ブラウザ使用時)、テーブル7の内容が図5に示すものであれば、ステップS36において、制御装置5は、使用するアンテナを第2のアンテナ2と決定し、前回使用アンテナ情報をアンテナ2を示すものに書き換える。以上がステップS36で行う処理の詳細である。
【0056】
次いで、制御装置5は、ステップS36で決定したアンテナを送受信回路4と接続させるための制御信号を切り替えスイッチ3に対して出力し(ステップS37)、その後、再び、ステップS32の処理を行う。例えば、ステップS36において、第1のアンテナ1を使用すると決定した場合には、制御信号を“1”とし、第2のアンテナ2を使用すると決定した場合は、制御信号を“0”とする。
【0057】
〔第1の実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、携帯無線装置に悪影響を及ぼす距離センサを使用せずに、利得の良いアンテナを利用して無線送受信を行うことが可能になる。その理由は、それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサ8、10、12、14と、予め定められた検出結果の組み合わせとその組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブル7とを備え、上記複数のセンサの検出結果に基づいて上記テーブルを検索し、使用するアンテナを決定するようにしているからである。
【0058】
即ち、ユーザが利用する機能により、ユーザの手によって覆われる部分は異なるものとなり、その結果、ユーザが利用する機能により、良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナは異なるものとなる。ユーザが利用している機能は、装置状態を検出する複数のセンサ8、10、12、14の検出結果の組み合わせに対応するものとな、上記複数のセンサは、装置状態を検出するものであるので、携帯無線装置に悪影響を及ぼさない。従って、上記した構成を備えることにより、携帯無線装置に悪影響を及ぼす距離センサを使用せずに、利得の良いアンテナを利用して無線送受信を行うことが可能になる。
【0059】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0060】
本実施の形態は、テーブル7の代わりに図6に示すテーブル7aを使用し、制御装置5が図3のステップS36において、前述した処理の代わりに、後述する処理を行うことにより実現される。
【0061】
図6に示すようにテーブル7aには、音声通話時、カメラ使用時、テレビ電話使用時に、ステップS32〜S35において得られると予測される判定結果の組み合わせに対応付けて、その時に最もアンテナ利得が高くなるアンテナを示す使用アンテナ情報が登録されているだけであり、第1の実施の形態のように、ブラウザ使用時および待ち受け状態のときにステップS32〜S35において得られると予測される判定結果の組み合わせは登録されていない。なお、図6において、スイッチ操作に関する項目は、その内容が全て「低頻度」となっているので、省略してもよい。
【0062】
また、本実施の形態では制御装置5は、ステップS36の代わりに次の処理を行う。ステップS32〜ステップS35の判定結果の組み合わせがテーブル7aに登録されていない場合は、予め定められているアンテナ(例えば、第1のアンテナ1)を使用すると決定する。また、ステップS32〜S35の判定結果の組み合わせがテーブルに登録されている場合には、その組み合わせに対応付けて登録されている使用アンテナ情報によって示されるアンテナを使用すると決定する。
【0063】
〔第2の実施の形態の効果〕
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
〔その他の実施の形態〕
上述した第1、第2の実施の形態では、アンテナの数を2としたが、複数であれば、これに限られるものではない。また、第1、第2の実施の形態では、制御装置5が、各センサ8、10、12、14の検出結果に基づいて「携帯無線装置の姿勢が垂直であるか水平であるか」「スイッチが高頻度で操作されたか否か」「音声が高頻度で入力されたか否か」「カメラ13が動作中であるか否か」を判定するようにしたが、各センサ8、10、12、14に上記した判定機能を持たせるようにしてもよい。この場合には、制御装置5においてステップS32〜S35の判定処理を行うことは不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、携帯電話装置などの携帯無線装置において、安定した送受信を行うために有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明にかかる携帯無線装置の第1の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図2】携帯無線装置の外観図である。
【図3】制御装置5の処理例を示すフローチャートである。
【図4】携帯無線装置が備えている各機能を利用した場合にユーザの手によって覆われる部分を示す図である。
【図5】テーブル7の内容例を示す図である。
【図6】本発明にかかる携帯無線装置の第2の実施の形態で使用するテーブル7aの内容例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1、2…アンテナ
3…切り替えスイッチ
4…送受信回路
5…制御装置
6…記憶装置
7…テーブル
8…加速度センサ
9…スイッチ
10…スイッチセンサ
11…マイクロフォン
12…音声センサ
13…カメラ
14…カメラセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
送受信回路と、
入力される制御信号によって指定されたアンテナと前記送受信回路とを接続する切り替えスイッチと、
それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサと、
予め定められた検出結果の組み合わせと、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルと、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記テーブルを検索することにより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナを指定した制御信号を前記切り替えスイッチに対して出力する制御装置とを備えたことを特徴とする携帯無線装置。
【請求項2】
請求項1記載の携帯無線装置において、
前記使用アンテナ情報は、使用するアンテナを固定的に指定するものであることを特徴とする携帯無線装置。
【請求項3】
請求項1記載の携帯無線装置において、
前記使用アンテナ情報は、使用するアンテナを固定的に指定するものと、使用するアンテナを切り替えることを指示するものとを含むことを特徴とする携帯無線装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の携帯無線装置において、
前記制御装置は、前記複数のセンサの検出結果の組み合わせが前記テーブルに登録されていない場合は、予め定められているアンテナを使用すると決定することを特徴とする携帯無線装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の携帯無線装置において、
自装置の姿勢が水平であるか垂直であるかを検出する姿勢センサと、
スイッチが高頻度で操作されているか否かを検出するスイッチセンサと、
音声が高頻度で入力されているか否かを検出する音声センサと、
カメラが動作中であるか否かを検出するカメラセンサとの内の、少なくとも2つ以上を備えたことを特徴とする携帯無線装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の携帯無線装置において、
前記複数のアンテナが内蔵アンテナであることを特徴とする携帯無線装置。
【請求項7】
複数のアンテナと送受信回路とを備えた携帯無線装置におけるアンテナ切り替え方法であって、
複数のセンサが、それぞれ異なる装置状態を検出し、
制御装置が、前記複数のセンサの検出結果に基づいて、予め定められた検出結果の組み合わせとその組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルを検索することにより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナと前記送受信回路とを接続することを特徴とするアンテナ切り替え方法。
【請求項8】
複数のアンテナと、送受信回路と、入力される制御信号によって指定されたアンテナと前記送受信回路とを接続する切り替えスイッチと、それぞれが異なる装置状態を検出する複数のセンサと、予め定められた前記複数のセンサの検出結果の組み合わせと、その組み合わせにおいて使用するアンテナを示す使用アンテナ情報との対が登録されたテーブルとを備えたコンピュータを、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて前記テーブルを検索することより使用するアンテナを決定し、該決定したアンテナを指定した制御信号を前記切り替えスイッチに対して出力する制御装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193288(P2008−193288A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23917(P2007−23917)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】