説明

携帯端末

【課題】外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、増幅部の異常を検出し、異常のある増幅部への電力供給を制御することができる携帯端末を提供する。
【解決手段】携帯端末は、送信される送信信号を増幅する増幅部41aと、送信信号の増幅に必要な電力を増幅部41aに供給する電力供給部50と、電力供給部50と増幅部41aとの間の電力状態を検出する電力状態検出部41bと、受信される受信信号の強度を検出する受信強度検出部41cと、信号強度と電力状態とが対応付けられた対応データを記憶するメモリ44と、受信強度検出部41cにより検出された受信信号の強度に対応する電力状態を対応データに基づいて算出する算出部45aと、増幅部41aにより送信信号が増幅されているときに、算出部45aにより算出された電力状態と電力状態検出部41bにより検出された電力状態との対比に基づいて、第1の所定の処理を行う動作制御部45bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器に送信される送信信号を増幅部により増幅する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯端末には、電力供給部と、負電源と、電力供給部から駆動電圧が印加されると共に負電源からバイアス電圧が印加される増幅部と、電力供給部と増幅部との電気的な接続を遮断可能にする遮断部と、増幅部により増幅された送信信号を外部機器へ送信する送信部と、増幅部により増幅された送信信号の電力を検出する電力検出部と、増幅部へ印加されるバイアス電圧を検出する電圧検出部と、電力検出部による電力検出と電圧検出部によるバイアス電圧検出とに基づいて遮断部における電気的な接続又は遮断の切り替えを制御する制御部とを備えるものがある。
【0003】
また、携帯電話機等の携帯端末には、無線部と、電力供給部と、電力供給部から電圧が印加される増幅部と、電力供給部と増幅部との電気的な接続を遮断可能にする遮断部と、電力供給部と増幅部とを接続し、無線部とは接続してないときの電圧値と電力供給部の電圧値とに基づいて遮断部における電気的な接続又は遮断の切り替えを制御する制御部とを備えるものがある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−33655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された携帯端末では、電力供給部と無線部とを接続しているときの電圧値等に基づいてその後の制御を行うものである。これは、電力供給部と無線部とが接続されているときには、無線部による通信状態に応じて電圧値が変化するため、増幅部の異常を検出するのが困難である。
【0006】
なお、増幅部の異常とは、例えば、増幅部の内部に配置されるトランジスタが故障したことに起因して当該トランジスタに定格以上の電流が供給され続けることにより、トランジスタが発熱すること等が考えられる。
【0007】
本発明は、外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、増幅部の異常を検出し、その結果に応じた適切な制御を行うことができる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る携帯端末は、アンテナと、前記アンテナにより送信される送信信号を増幅する増幅部と、前記送信信号の増幅に必要な電力を前記増幅部に供給する電力供給部と、前記電力供給部と前記増幅部との間の電力状態を検出する電力状態検出部と、前記アンテナにより受信される受信信号の強度を検出する受信強度検出部と、信号強度と電力状態とが対応付けられた対応データを記憶する記憶部と、前記受信強度検出部により検出された前記受信信号の強度に対応する電力状態を前記対応データに基づいて算出する算出部と、前記増幅部により前記送信信号が増幅されているときに、前記算出部により算出された電力状態と前記電力状態検出部により検出された電力状態との対比に基づいて、第1の所定の処理を行う制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記制御部は、前記増幅部により前記送信信号が増幅されているときに、前記受信強度検出部により前記受信信号の強度を検出すると共に、前記算出部により当該受信信号の強度に対応する電力状態を前記対応データに基づいて算出することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る携帯端末は、前記増幅部と前記電力供給部とを接続する第1の経路と、前記第1の経路に接続されて前記第1の経路を遮断可能に構成された遮断部と、を有し、前記制御部は、前記遮断部により前記第1の経路を遮断することにより前記第1の所定の処理を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記電力状態検出部は、前記第1の経路の前記遮断部の両端側に接続され、前記遮断部の両端の電圧を検出することにより、前記電力供給部と前記増幅部との間の電力状態を検出可能に構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る携帯端末は、前記第1の経路の前記遮断部の両端側であって前記電力状態検出部の間に接続される第2の経路と、前記第2の経路に接続された所定の抵抗値を有する抵抗部と、を有し、前記制御部は、前記増幅部により前記送信信号が増幅されていないときに、前記遮断部により前記第1の経路を遮断すると共に、前記電力状態検出部により前記抵抗部の両端の電圧を検出し、当該検出された電圧値と所定の閾値との対比に基づいて、第2の所定の処理を行うことが好ましい。
【0013】
また、前記制御部は、前記遮断部による前記第1の経路の遮断を維持することにより前記第2の所定の処理を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る携帯端末は、報知部を有し、前記制御部は、前記報知部により所定の報知を行うことにより前記第1の所定の処理を行うことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る携帯端末は、報知部を有し、前記制御部は、前記報知部により所定の報知を行うことにより前記第2の所定の処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、増幅部の異常を検出し、その結果に応じた適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の携帯端末の一実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】携帯電話機の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】携帯電話機が上記機能を発揮する構成について説明するための図である。
【図4】受信電界強度と増幅部に供給される電流との関係を示すグラフである。
【図5】受信電界強度と第2の閾値との関係の具体的な一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の携帯端末の一実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態としては特にこれに限られない。例えば、携帯電話機は、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ、フリップタイプ)でもよい。
【0019】
携帯電話機1は、操作部側筐体部2と、表示部側筐体部3とを備える。操作部側筐体部2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声を入力するマイク12とを備える。操作部11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー13と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作キー14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作キー15とから構成されている。
【0020】
また、表示部側筐体部3は、表面部20に、各種情報を表示する表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22とを備える。
【0021】
また、操作部側筐体部2の上端部と表示部側筐体部3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0022】
また、図2は、携帯電話機1の機能を示す機能ブロック図である。携帯電話機1は、図2に示すように、操作部11と、マイク12と、メインアンテナ40(アンテナ)と、RF回路部41と、画像処理部42と、音声処理部43と、メモリ44(記憶部)と、制御部45とを操作部側筐体部2に備える。また、携帯電話機1は、図2に示すように、表示部21と、スピーカ22と、ドライバIC23とを表示部側筐体部3に備える。
【0023】
メインアンテナ40は、所定の使用周波数帯(例えば、800MHz)で基地局等の外部装置と通信を行う構成である。なお、本実施形態では、所定の使用周波数帯として、800MHzとしたが、これ以外の周波数帯であってもよい。
【0024】
RF回路部41は、メインアンテナ40によって受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部45に供給する。そして、RF回路部41は、制御部45から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ40を介して外部装置に送信する。また、その一方で、RF回路部41は、メインアンテナ40によって受信している信号の強度を制御部45に通知する。
【0025】
画像処理部42は、制御部45の制御にしたがって、所定の画像処理を行い、処理後の画像データをドライバIC23に出力する。ドライバIC23は、画像処理部42から供給された画像データをフレームメモリに蓄え、所定のタイミングで表示部21に出力する。
【0026】
音声処理部43は、制御部45の制御にしたがって、RF回路部41から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をスピーカ22に出力する。スピーカ22は、音声処理部43から供給された信号を外部に出力する。
【0027】
また、音声処理部43は、制御部45の制御にしたがって、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号をRF回路部41に出力する。RF回路部41は、音声処理部43から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ40に出力する。
【0028】
メモリ44は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部45による演算処理に利用される。また、メモリ44には、複数のアプリケーションや当該アプリケーションが必要とする各種のテーブル等が記憶されている。また、メモリ44は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0029】
制御部45は、携帯電話機1の全体を制御しており、中央処理装置(CPU)等を用いて構成される。ここで、操作部11によるキー操作に応じた制御部45の制御動作について説明する。制御部45は、原則的に現在アクティブに起動されているアプリケーションに応じて、操作部11を構成する各キー(機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15)に割り当てる記号や機能を変化させる。
【0030】
このように構成される携帯電話機1は、外部機器に対して信号を送信している場合においても、増幅部の異常を検出して増幅部への電力供給を遮断する等の所定の処理を行う機能を有する。
以下に、携帯電話機1に係る上記機能を発揮するための構成と動作について詳述する。先ず、本実施形態に係る携帯電話機1の上記機能を発揮するための構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、携帯電話機1が上記機能を発揮する構成について説明するための図である。
【0031】
携帯電話機1は、メインアンテナ40と、増幅部41aと、電力供給部50と、電力状態検出部41bと、受信強度検出部41cと、メモリ44と、算出部45a(制御部)と、動作制御部45b(制御部)とを有する。
本実施形態の場合、携帯電話機1は、増幅部41aと、電力状態検出部41bと、受信強度検出部41cとをRF回路部41に備える。
【0032】
増幅部41aは、メインアンテナ40により送信される送信信号を増幅する。増幅部41aは、例えば、パワーアンプPAから構成される。
電力供給部50は、送信信号の増幅に必要な電力を増幅部41aに供給する。電力供給部50は、例えば、携帯電話機1に備えられる二次電池である。
【0033】
電力状態検出部41bは、電力供給部50と増幅部41aとの間の電力状態を検出する。例えば、電力状態検出部41bは、電力供給部50と増幅部41aとの間に電気的に接続される負荷(より具体的には、後述する遮断部41dや抵抗部41e)の両端の電圧V1とV2を検出し、負荷における一方の端部の電圧V1と他方の端部の電圧V2との差(V1−V2)を算出する。
【0034】
受信強度検出部41cは、メインアンテナ40により受信される受信信号の強度を検出する。具体的には、受信強度検出部41cは、受信信号の強度として受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を検出する。
【0035】
メモリ44は、信号強度と電力状態とが対応付けられた対応データを記憶する。例えば、対応データは、メインアンテナ40により受信される受信信号の受信電界強度と、受信電界強度に応じた送信信号の送信電力を得るために、電力供給部50から増幅部41aへ電力供給されるときの電力状態検出部41bにおいて検出される電力状態の最大値(第2の閾値)とを対応付けたデータである。
【0036】
算出部45aは、受信強度検出部41cにより検出された受信信号の強度に対応する電力状態を対応データに基づいて算出する。例えば、算出部45aは、メモリ44に記憶された対応データを参照して、受信強度検出部41cにより検出された受信電界強度に応じた、上記負荷における一方の端部の電圧と他方の端部の電圧との差についての最大値を求める。
【0037】
動作制御部45b(制御部)は、増幅部41aにより送信信号が増幅されているときに、算出部45aにより算出された電力状態と電力状態検出部41bにより検出された電力状態との対比に基づいて、第1の所定の処理を行う。第1の所定の処理としては、例えば、電力供給部50と増幅部41aとの間の電気的な接続を遮断すること、又は携帯電話機1のユーザに対して所定の報知を行うこと等である。
【0038】
したがって、携帯電話機1は、電力供給部50と増幅部41aとの間の電力状態と、受信強度検出部41cにより検出された受信信号の強度に基づいて算出された電力状態とを対比するので、外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、増幅部41aの異常を適切に検出することができる。さらに、携帯電話機1は、増幅部41aに異常を検出した場合に、第1の所定の処理を行うことができる。
【0039】
また、動作制御部45bは、増幅部41aにより送信信号が増幅されているときに、受信強度検出部41cにより受信信号の強度を検出すると共に、算出部45aにより当該受信信号の強度に対応する電力状態を対応データに基づいて算出する。
【0040】
したがって、携帯電話機1は、増幅部41aの異常を検出する必要性が高く、従来その検出が困難であった状況である増幅部41aにより送信信号が増幅されているときに、電力供給部50と増幅部41aとの間の電力状態と、受信強度検出部41cにより検出された受信信号の強度に基づいて算出された電力状態とを対比するので、効率的な処理が可能となる。なお、もちろん、動作制御部45bは、増幅部41aにより送信信号が増幅されていないときに第1の所定の処理を行ってもよい。
【0041】
また、携帯電話機1は、第1の経路41fと、遮断部41dとをさらに有する。
第1の経路41fは、増幅部41aと電力供給部50とを接続する。
遮断部41dは、第1の経路41fに接続されて第1の経路41fを遮断可能に構成される。遮断部41dは、例えば、バイポーラトランジスタ(図3参照)又はユニポーラトランジスタ等から構成される。
【0042】
本実施形態では、図3に示すように、遮断部41dは、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2から構成される。
第1トランジスタTr1は、図3に示すように、PNP型トランジスタから構成される。第1トランジスタTr1は、エミッタが第1の経路41fを介して電力供給部50に接続され、コレクタが第1の経路41fを介して増幅部41aに接続される。さらに、第1トランジスタTr1は、ベースが第2トランジスタTr2のコレクタに接続される。なお、第1トランジスタTr1は、PNP型トランジスタではなく、NPN型トランジスタであってもよい。
第2トランジスタTr2は、図3に示すように、NPN型トランジスタから構成される。第2トランジスタTr2は、エミッタがグランド(GND)に接続され、ベースが動作制御部45bに接続される。なお、第2トランジスタTr2は、NPN型トランジスタではなく、PNP型トランジスタであってもよい。
なお、遮断部41dは、図3に示すように、2つのトランジスタから構成されるばかりでなく、1つ又は3つ以上のトランジスタから構成されていてもよい。
また、第1トランジスタのエミッタ側と第1トランジスタのベース側(第2トランジスタのコレクタ側)とは、第2抵抗R2を介して接続される。
【0043】
動作制御部45bは、遮断部41dにより第1の経路41fを遮断することにより第1の所定の処理を行う。すなわち、動作制御部45bは、増幅部41aにより送信信号が増幅されているときに、算出部45aにより算出された電力状態と電力状態検出部41bにより検出された電力状態との対比に基づいて、遮断部41dにより第1の経路41fを遮断させる。
【0044】
したがって、携帯電話機1は、遮断部41dにより電力供給部50と増幅部41aとの間の電気的な接続を遮断するので、外部機器に対して信号を送信しているときであって、増幅部41aの異常を検出した場合において、増幅部41aの異常に伴う発熱等を抑制することができる。
【0045】
また、電力状態検出部41bは、第1の経路41fの遮断部41dの両端側に接続され、遮断部41dの両端の電圧を検出することにより、電力供給部50と増幅部41aとの間の電力状態を検出可能に構成される。すなわち、電力状態検出部41bは、第1トランジスタTr1のエミッタ側とコレクタ側とに接続され、第1トランジスタTr1のエミッタ電圧とコレクタ電圧とを検出する。
【0046】
したがって、携帯電話機1は、遮断部41dの両端の電圧を検出することに基づく電力状態と、受信強度検出部41cにより検出された受信信号の強度に基づいて算出された電力状態とを対比するので、外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、増幅部41aの異常を検出して第1の所定の処理を行うことができる。
【0047】
また、携帯電話機1は、第2の経路41gと、抵抗部41eとをさらに有する。
第2の経路41gは、第1の経路41fの遮断部41dの両端側であって電力状態検出部41bの間に接続される。抵抗部41eは、第2の経路41gに接続された所定の抵抗値を有する。本実施形態では、図3に示すように、抵抗部41eは、第1抵抗R1から構成される。第1抵抗R1は、第2の経路41gにより、第1トランジスタTr1に並列接続される。さらに、第1抵抗R1は、所定の抵抗値として、電力供給部50と増幅部41aとを電気的に接続するときの遮断部41dの抵抗値、すなわち、第1トランジスタTr1がオン状態にされているときの抵抗値よりも大きな抵抗値が設定されている。電力状態検出部41bは、第1抵抗R1における、一方の端部の電圧V1と他方の端部の電圧V2とを検出する。
【0048】
動作制御部45bは、増幅部41aにより送信信号が増幅されていないときに、遮断部41dにより第1の経路41fを遮断すると共に、電力状態検出部41bにより抵抗部41eの両端の電圧を検出し、当該検出された電圧値と所定の閾値との対比に基づいて、第2の所定の処理を行う。
【0049】
すなわち、動作制御部45bは、外部機器に送信信号を送信しない場合、第2トランジスタTr2のベースにLow信号(低信号)を供給して、第2トランジスタTr2をオフ状態にさせる。動作制御部45bは、第2トランジスタTr2がオフ状態になった場合、第2トランジスタTr2のコレクタとエミッタとの間に電流が流れないように第2トランジスタTr2を制御する。よって、第1トランジスタTr1のベースには、High信号(高信号)が供給されない。このため、第1トランジスタTr1は、オフ状態となり、エミッタとコレクタとの間には電流が流れない。
【0050】
このように第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2をオフ状態にさせた場合、電力状態検出部41bは、第1抵抗R1の一方の端部の電圧と、第1抵抗R1の他方の端部の電圧とを検出する。動作制御部45bは、電力状態検出部41bにより検出された電圧値と、所定の閾値との対比に基づいて、第2の所定の処理を行う。第2の所定の処理の一例としては、遮断部41dによる第1の経路41fの遮断を維持する処理である。
【0051】
したがって、携帯電話機1は、第1抵抗R1の両端の電圧と所定の閾値とを対比することにより、外部機器に対して送信信号を送信している場合及び送信していない場合の両方の場合において、増幅部41aの異常を検出して第2の所定の処理を行うことができ、回路構成の簡素化を図ることができる。
【0052】
また、携帯電話機1は、報知部51を有する。この場合、動作制御部45bは、報知部51により所定の報知を行うことにより第1の所定の処理を行ってもよい。また、動作制御部45bは、報知部51により所定の報知を行うことにより第2の所定の処理を行ってもよい。
【0053】
報知部51は、例えば、表示部21又はスピーカ22であればよい。報知部51として表示部21が用いられる場合、動作制御部45bは、第1の所定の処理又は第2の所定の処理として、増幅部41aが異常である旨を表示部21に表示させるよう制御する。また、報知部51としてスピーカ22が用いられる場合、動作制御部45bは、第1の所定の処理又は第2の所定の処理として、増幅部41aが異常である旨の音声又は増幅部41aが異常である旨の警告音をスピーカ22から出力させるよう制御する。
【0054】
したがって、携帯電話機1は、増幅部41aの異常を検出した場合、報知部51により所定の報知をさせるので、ユーザに対して増幅部41aが異常であることを知らせることができる。さらに、携帯電話機1は、外部機器に対して送信信号を送信している場合においても、報知部51により報知させることによって増幅部41aが異常であることをユーザに知らせるので、ユーザの操作により外部機器に対して送信信号の送信を停止させて、増幅部41aの動作を停止(増幅部41aへの電力供給を遮断)させることができる。
【0055】
次に、携帯電話機1の動作について説明する。
まず、増幅部41aが送信信号を増幅している場合の携帯電話機1の動作について説明する。
【0056】
動作制御部45bは、第2トランジスタTr2のベースにHigh信号を供給して、第2トランジスタTr2をオン状態にする。これにより、第2トランジスタTr2では、ベースにHigh信号が供給されることにより、コレクタとエミッタとの間に電流が流れる。
【0057】
第1トランジスタTr1は、第2トランジスタTr2がオン状態になっているために、ベースにHigh信号が供給される。これにより、第1トランジスタTr1は、エミッタとコレクタとの間に電流が流れ、オン状態となる。
【0058】
電力状態検出部41bは、第1トランジスタTr1のエミッタ電圧V1とコレクタ電圧V2とを検出する。さらに、電力状態検出部41bは、第1トランジスタTr1のエミッタ電圧V1とコレクタ電圧V2との電圧差(V1−V2)を算出する。
【0059】
受信強度検出部41cは、メインアンテナ40により受信される受信信号の受信電界強度を検出する。
【0060】
メモリ44は、信号強度と電力状態とが対応付けられた対応データを記憶する。
以下に、対応データの作製方法について説明する。
まず、携帯電話機1では、メインアンテナ40により受信される受信信号の受信電界強度が大きい場合、送信信号の送信電力は小さくなるように設定される。この場合、電力供給部50から増幅部41aに供給される電力(電流I1)は、小さい。一方、携帯電話機1では、メインアンテナ40により受信される受信信号の受信電界強度が小さい場合、送信信号の送信電力は大きくなるように設定される。この場合、電力供給部50から増幅部41aに供給される電力(電流I1)は、大きい。
【0061】
図4は、受信電界強度RSSIと増幅部41aに供給される電流I1との関係を示すグラフである。図4に一例を示すように、受信電界強度が大きい(約−87[dBm]〜約−60[dBm]程度)場合、電力供給部50から増幅部41aに対して電流I1がLow(低)モード(図4において四角形で示すもの)で供給され、電流I1は、約20[mA]〜約60[mA]となる。
一方、受信電界強度が小さい(約−110[dBm]〜約−87[dBm]程度)場合、電力供給部50から増幅部41aに対して電流I1は、High(高)モード(図4において菱形で示すもの)で供給される。この場合、電流I1は、約120[mA]〜約450[mA]となる。
また、図4において、増幅部41aが正常に動作する場合の受信電界強度に対する電流I1の最大値(第1の閾値)は、三角形で示される。
【0062】
ところで、増幅部41aが正常に動作する場合における、第1トランジスタTr1のエミッタ電圧V1とコレクタ電圧V2との最大電圧差(第2の閾値)は、増幅部41aに供給される最大電流値(第1の閾値)と、第1トランジスタTr1がオン状態のときの最大抵抗値Rmaxとの積((1)式を参照)により得られる。
(第2の閾値)=(第1の閾値)×Rmax …(1)
ここに、最大抵抗値Rmaxは、一定値(一例として、0.1[Ω])である。また、第1の閾値は、図4から得られる。
したがって、受信電界強度に対応する第2の閾値は、(1)式に基づいて得られる。受信電界強度RSSIと第2の閾値との関係の具体的な一例は、図5に示すようなものとなる。
以上のようにして、対応データは作製される。
【0063】
算出部45aは、受信強度検出部41cから受信電界強度を取得すると共に、メモリ44から対応データを取得する。算出部45aは、受信強度検出部41cから取得した受信電界強度に対応する、第1トランジスタTr1のエミッタ電圧V1とコレクタ電圧V2との最大電圧差(第2の閾値)を、対応データを参照することにより求める。
【0064】
動作制御部45bは、算出部45aから第2の閾値を取得すると共に、電力状態検出部41bから電圧差(V1−V2)を取得する。電圧差(V1−V2)は、電力供給部50から増幅部41aへ供給される電流I1と、第1トランジスタTr1がオン状態のときの最大抵抗値Rmaxとの積((2)式を参照)により表すことができる。
(V1−V2)=I1×Rmax …(2)
ここに、電流I1は、増幅部41aのリーク電流と、増幅部41aの動作電流との和により表すことができる。
【0065】
このため、動作制御部45bは、算出部45aから取得した第2の閾値と、電力状態検出部41bから取得した電圧差(V1−V2)とを対比することにより、増幅部41aのリーク電流が大きいこと(増幅部41aの異常)を判断する。
【0066】
すなわち、動作制御部45bは、電圧差(V1−V2)>第2の閾値、と判断する場合、増幅部41aのリーク電流が増幅部41aの正常時におけるリーク電流よりも大きくなっているので、増幅部41aが異常であると判断する。この場合、動作制御部45bは、第1の所定の処理として、第2トランジスタTr2のベースにLow信号を供給して第2トランジスタTr2をオフ状態にさせると共に、第1トランジスタTr1をオフ状態にさせる。これにより、動作制御部45bは、電力供給部50から増幅部41aへの電力供給を遮断させる。また、動作制御部45bは、第1の所定の処理として、遮断部41dを遮断状態にさせる共に、又は、遮断部41dを遮断状態にさせる替わりに、報知部51によって所定の報知を行わせてもよい。
【0067】
これに対し、動作制御部45bは、(V1−V2)≦第2の閾値、と判断する場合、増幅部41aのリーク電流が正常の範囲内であるので、増幅部41aが正常であると判断する。この場合、動作制御部45bは、第2トランジスタTr2のベースにHigh信号を供給し続けて、第1トランジスタTr1のオン状態を維持する。これにより、動作制御部45bは、電力供給部50から増幅部41aへの電力供給を継続させる。
【0068】
したがって、携帯電話機1は、動作制御部45bによる第2の閾値と電圧差(V1−V2)との対比に基づいて、遮断部41dによって電力供給部50から増幅部41aへの電流供給を遮断させ、又は報知部51によって増幅部41aに発熱のおそれがあることを報知させることができる。
【0069】
次に、増幅部41aが送信信号を増幅していない場合の携帯電話機1の動作について説明する。
【0070】
動作制御部45bは、第2トランジスタTr2のベースに対してLow信号を供給する。第2トランジスタTr2では、ベースにLow信号が供給されることにより、コレクタとエミッタとの間に電流が流れない。すなわち、第2トランジスタTr2はオフ状態になる。
【0071】
第1トランジスタTr1は、第2トランジスタTr2がオフ状態になっているために、ベースにHigh信号が供給されない。したがって、第1トランジスタTr1は、エミッタとコレクタとの間に電流が流れず、オフ状態となる。
【0072】
電力状態検出部41bは、第1抵抗R1の両端の電圧V1とV2を検出する。さらに、電力状態検出部41bは、電圧V1と電圧V2との電圧差(V1−V2)を算出する。なお、電圧差(V1−V2)は、増幅部41aのリーク電流(第1抵抗R1に流れる電流)と第1抵抗R1の最大抵抗値R1maxとの積((3)式を参照)により表すことができる。
(V1−V2)=(増幅部41aのリーク電流)×R1max …(3)
この場合、増幅部41aが正常であれば、増幅部41aのリーク電流は数[μA]程度になる。
【0073】
動作制御部45bは、電力状態検出部41bから電圧差(V1−V2)を取得すると共に、算出部45aを介してメモリ44から第3の閾値を取得する。第3の閾値は、メモリ44に予め記憶される。第3の閾値は、増幅部41aが正常な場合における、第1抵抗R1における一方の端部の電圧V1と他方の端部の電圧V2との最大電圧差((V1−V2)の最大値)である。
なお、第3の閾値は、増幅部41aが正常な場合のリーク電流の最大値と、第1抵抗R1の最大抵抗値R1maxとの積((4)式を参照)により表すことができる。
(第3の閾値)=(増幅部41aが正常な場合のリーク電流の最大値)×R1max …(4)
【0074】
このため、動作制御部45bは、電力状態検出部41bから取得した電圧差(V1−V2)と、第3の閾値とを対比することにより、増幅部41aにリーク電流が大きいこと(増幅部41aの異常)を判断する。
【0075】
すなわち、動作制御部45bは、電圧差(V1−V2)>第3の閾値、と判断する場合、増幅部41aのリーク電流が正常時よりも大きくなっているので、増幅部41aが異常であると判断する。この場合、動作制御部45bは、第2の所定の処理として、電話発信を行う等のために増幅部41aに電流を供給するよう要求があったときでも、第2トランジスタTr2のベースにLow信号を供給し続けて第2トランジスタTr2のオフ状態を維持させると共に、第1トランジスタTr1のオフ状態を維持させる。これにより、動作制御部45bは、電力供給部50から増幅部41aへの電力供給の遮断状態を継続させる。また、動作制御部45bは、第2の所定の処理として、遮断部41dの遮断状態を継続させると共に、又は、遮断部41dの遮断状態を継続させる替わりに、報知部51によって所定の報知を行わせてもよい。
【0076】
これに対し、動作制御部45bは、(V1−V2)≦第3の閾値、と判断する場合、増幅部41aのリーク電流が正常値であるので、増幅部41aが正常であると判断する。この場合、動作制御部45bは、電話発信を行う等のために増幅部41aに電流を供給するよう要求があったときに、第2トランジスタTr2のベースにHigh信号を供給する。第2トランジスタTr2は、コレクタとエミッタとの間に電流が流れ、オン状態となる。また、第1トランジスタTr1は、ベースにHigh信号が供給されるので、オン状態となる。これにより、第1トランジスタTr1のエミッタとコレクタとの間には、電流(増幅部41aに供給される電流I1)が流れる。
【0077】
したがって、携帯電話機1は、動作制御部45bによる第3の閾値と電圧差(V1−V2)との対比に基づいて、遮断部41dによって電力供給部50から増幅部41aへの電流供給の遮断を継続させ、又は報知部51によって増幅部41aが発熱のおそれがあることを報知させることができる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、本発明の携帯端末が携帯電話機1である場合について説明した。しかしながら、本発明の携帯端末は、携帯電話機1に限定されることはなく、例えば、PHS(Personal Handyphone System)等の、外部機器に送信される送信信号を増幅部41aにより増幅する携帯端末であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 携帯電話機(携帯端末)
40 メインアンテナ(アンテナ)
41a 増幅部
41b 電力状態検出部
41c 受信強度検出部
41d 遮断部
41e 抵抗部
41f 第1の経路
41g 第2の経路
44 メモリ(記憶部)
45a 算出部
45b 動作制御部(制御部)
50 電力供給部
51 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナにより送信される送信信号を増幅する増幅部と、
前記送信信号の増幅に必要な電力を前記増幅部に供給する電力供給部と、
前記電力供給部と前記増幅部との間の電力状態を検出する電力状態検出部と、
前記アンテナにより受信される受信信号の強度を検出する受信強度検出部と、
信号強度と電力状態とが対応付けられた対応データを記憶する記憶部と、
前記受信強度検出部により検出された前記受信信号の強度に対応する電力状態を前記対応データに基づいて算出する算出部と、
前記増幅部により前記送信信号が増幅されているときに、前記算出部により算出された電力状態と前記電力状態検出部により検出された電力状態との対比に基づいて、第1の所定の処理を行う制御部と、を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記増幅部により前記送信信号が増幅されているときに、前記受信強度検出部により前記受信信号の強度を検出すると共に、前記算出部により当該受信信号の強度に対応する電力状態を前記対応データに基づいて算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記増幅部と前記電力供給部とを接続する第1の経路と、
前記第1の経路に接続されて前記第1の経路を遮断可能に構成された遮断部と、を有し、
前記制御部は、前記遮断部により前記第1の経路を遮断することにより前記第1の所定の処理を行う、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記電力状態検出部は、前記第1の経路の前記遮断部の両端側に接続され、前記遮断部の両端の電圧を検出することにより、前記電力供給部と前記増幅部との間の電力状態を検出可能に構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記第1の経路の前記遮断部の両端側であって前記電力状態検出部の間に接続される第2の経路と、
前記第2の経路に接続された所定の抵抗値を有する抵抗部と、を有し、
前記制御部は、前記増幅部により前記送信信号が増幅されていないときに、前記遮断部により前記第1の経路を遮断すると共に、前記電力状態検出部により前記抵抗部の両端の電圧を検出し、当該検出された電圧値と所定の閾値との対比に基づいて、第2の所定の処理を行う、ことを特徴とする請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記制御部は、前記遮断部による前記第1の経路の遮断を維持することにより前記第2の所定の処理を行う、ことを特徴とする請求項5に記載の携帯端末。
【請求項7】
報知部を有し、
前記制御部は、前記報知部により所定の報知を行うことにより前記第1の所定の処理を行う、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項8】
報知部を有し、
前記制御部は、前記報知部により所定の報知を行うことにより前記第2の所定の処理を行う、ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−97308(P2011−97308A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248335(P2009−248335)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】