説明

携帯装置

【課題】開閉可能な筐体部を用いてアンテナ特性の劣化を抑制する。
【解決手段】アンテナを備える携帯装置(2、携帯電話機34)であって、開閉可能な第1及び第2の筐体部(6、8)と、前記第1の筐体部で構成される第1のアンテナ素子(14)と、前記第2の筐体部に設置された導体部(接地導体22)及び第2のアンテナ素子(18)と、前記第1及び第2の筐体部の開状態で、前記第1のアンテナ素子と、前記導体部及び前記第2のアンテナ素子とによりダイポールアンテナ(28)を構成し、前記第1及び第2の筐体部の閉状態で、前記第2のアンテナ素子によりモノポールアンテナ(32)を構成するアンテナ切替部(切替スイッチ部42、44、43)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子を用いるアンテナの切替制御に関し、例えば、接地導体をアンテナ素子に利用する携帯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折畳み可能な各筐体部を備えた携帯端末等の携帯装置では、各筐体部のそれぞれにアンテナ素子を配置することが知られている。
【0003】
例えば、一方の筐体部にある第1のアンテナ素子と他方の筐体部にある導体素子とでダイポールアンテナを構成し、ヒンジ部の近傍にある第2のアンテナ素子でモノポールアンテナを構成することが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、開閉可能な筐体部の一方に第1及び第2の導体板が備えられ、筐体部の開閉に応じて第1及び第2の導体板間を開放するか短絡するかを切り替えることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−229048号公報
【特許文献2】特開2006−14128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、折畳み可能な筐体部のそれぞれにアンテナ素子を配設し、筐体部の開閉に応じてアンテナ素子を異なる態様で動作させる場合、使用周波数が低い帯域の場合にはアンテナ性能を劣化させる。特に、装置に小型化が求められる場合、使用波長に対してアンテナ長(電気長)が短くなり、性能劣化を避けることができない。また、アンテナ長を長く取るために、筐体内に延長基板を設置することは、筐体内にスペースが必要となる。これは装置の小型化や薄型化を妨げる。
【0007】
そこで、本開示の携帯装置の目的は、開閉可能な筐体部を用いてアンテナ特性の劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の携帯装置は、開状態で、第1のアンテナ素子と、導体部及び第2のアンテナ素子とによりダイポールアンテナを構成し、閉状態で、第2のアンテナ素子によりモノポールアンテナを構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の携帯装置によれば、次のような効果が得られる。
【0010】
(1) 筐体の開状態で、第2の筐体部にあるアンテナ素子を付加したダイポールアンテナを構成し、筐体の閉状態で、第2の筐体部にあるアンテナ素子でモノポールアンテナを構成するので、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0011】
(2) 筐体を開いた場合には、第2の筐体部にある導体部にアンテナ素子を接続してアンテナ長を長くでき、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0012】
(3) 第2の筐体部にあるアンテナ素子でモノポールアンテナを構成するので、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0013】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る携帯装置が開状態にある場合に構成されるダイポールアンテナの一例を示す図である。
【図2】携帯装置が閉状態にある場合に構成されるモノポールアンテナの一例を示す図である。
【図3】第2の実施の形態に係る開状態の携帯電話機の構成例を示す図である。
【図4】携帯電話機のヒンジ部を通過する給電ラインの配線例を示す図である。
【図5】携帯電話機が開状態にある場合に構成されるダイポールアンテナの一例を示す図である。
【図6】携帯電話機が閉状態にある場合に構成されるモノポールアンテナの一例を示す図である。
【図7】携帯電話機が開状態にある場合のアンテナ切替回路の一例を示す図である。
【図8】携帯電話機が閉状態にある場合のアンテナ切替回路の一例を示す図である。
【図9】切替スイッチ部の制御ロジックテーブルの一例を示す図である。
【図10】アンテナ切替回路及び整合回路の一例を示す回路図である。
【図11】ヒンジ部を通過するフレキシブル基板の接続構造の一例を示す図である。
【図12】ヒンジ部を通過するフレキシブル基板の接続構造の一例を示す図である。
【図13】携帯電話機が開状態にある場合のダイポールアンテナの放射特性を示す図である。
【図14】携帯電話機が閉状態にある場合のモノポールアンテナの放射特性を示す図である。
【図15】第3の実施の形態に係る携帯電話機が開状態にある場合のアンテナの構成例を示す図である。
【図16】携帯電話機が開状態にある場合に構成されるダイポールアンテナの一例を示す図である。
【図17】携帯電話機が閉状態にある場合に構成されるモノポールアンテナの一例を示す図である。
【図18】携帯電話機が開状態にある場合のアンテナ切替回路の一例を示す図である。
【図19】携帯電話機が閉状態にある場合のアンテナ切替回路の一例を示す図である。
【図20】第4の実施の形態に係るTV放送受信回路の構成例を示す図である。
【図21】携帯電話機が開状態にある場合に構成されるダイポールアンテナの構成例を示す図である。
【図22】携帯電話機が閉状態にある場合に構成されるモノポールアンテナの構成例を示す図である。
【図23】開状態にある携帯電話機で構成されるアンテナの比較例を示す図である。
【図24】閉状態にある携帯電話機で構成されるアンテナの比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施の形態〕
【0016】
第1の実施の形態は、筐体を開いた場合にダイポールアンテナ、筐体を閉じた場合にモノポールアンテナを生成する構成である。
【0017】
この第1の実施の形態について、図1及び図2を参照する。図1は携帯装置が開状態で構成するダイポールアンテナの一例を示し、図2は携帯装置が閉状態で構成するモノポールアンテナの一例を示している。
【0018】
この携帯装置2は、本開示の携帯装置の一例であって、折畳み可能な筐体4を備えている。この筐体4は、図1のA及び図2のAに示すように、第1の筐体部6と、第2の筐体部8とをヒンジ部10により開閉可能に構成している。
【0019】
筐体部6は第1の回路基板12を備え、第1のアンテナ素子14を構成している。筐体部8には第2の回路基板16が設置され、この回路基板16の外部には第2のアンテナ素子18が設置されている。回路基板12には接地導体20、回路基板16には接地導体22が設置されている。接地導体20、22は導体部の一例である。
【0020】
筐体部8には給電部として給電点24が設置されている。この給電点24は、給電ライン26によって回路基板12の接地導体20に接続されているとともに、回路基板16側の接地導体22に接続されている。
【0021】
そこで、筐体4が開状態では、図1のBに示すように、ダイポールアンテナ28の一方のアンテナ素子部28Aを第1のアンテナ素子14で構成し、他方のアンテナ素子部28Bを接地導体22及びアンテナ素子18で構成する。この場合、接地導体22に接続されたアンテナ素子18は接地導体22の延長素子を構成する。
【0022】
また、筐体4が閉状態では、図2のAに示すように、給電点24に給電ライン30を介してアンテナ素子18が接続され、このアンテナ素子18によってモノポールアンテナ32を構成する。この場合、回路基板16の接地導体22は、給電ライン26の切替えで回路基板12の接地導体20に接続されている。
【0023】
斯かる構成によれば、筐体4が開状態で、ダイポールアンテナ28を構成し、一方のアンテナ素子部28Bが接地導体22にアンテナ素子18を接続して構成されている。このため、接地導体22のアンテナ長がアンテナ素子18で延長されている。この結果、ダイポールアンテナ28のアンテナ特性が高められ、筐体4の小型化、薄型化及び使用周波数帯域の低周波化により、アンテナ長によるアンテナ特性の劣化を防止できる。
【0024】
また、筐体4が閉状態で、アンテナ素子18がモノポールアンテナ32を構成する。この場合、アンテナ素子18は、対向する接地導体20、22に流れる放射電流の相殺による影響を受けることがなく、モノポールアンテナ特性が得られる。
【0025】
このように開状態ではダイポールアンテナ28、閉状態ではモノポールアンテナ32を構成し、何れのアンテナによってもディジタル放送の受信等、放送を効率よく受信できる。
【0026】
〔第2の実施の形態〕
【0027】
第2の実施の形態は、筐体の開閉を検出し、その検出に応じてダイポールアンテナかモノポールアンテナかを自動切替えする構成である。
【0028】
この第2の実施の形態について、図3及び図4を参照する。図3は第2の実施の形態に係る開状態にある携帯装置の一例を示し、図4は携帯装置のヒンジ部を通過する給電ラインの配線例を示している。図3及び図4において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0029】
この携帯電話機34は本開示の携帯装置の一例であって、図3に示すように、筐体4が筐体部6及び筐体部8に分割されてヒンジ部10により連結され、開閉及び折畳み可能に構成されていることは既述の通りである。ヒンジ部10は、筐体部6、8をヒンジ軸によって回動可能に連結するヒンジ機構を備える。
【0030】
筐体部6は例えば、表示部側筐体であって、回路基板12が搭載されている。回路基板12には接地導体(GND)20と、第1の整合回路36と、コネクタ部38とが実装されている。接地導体20は既述のアンテナ素子14を構成している。この接地導体20には整合回路36を介してコネクタ部38が接続されている。
【0031】
筐体部8は例えば、操作側筐体であって、回路基板16と、アンテナ素子18とが搭載され、筐体部6と筐体部8との間には、フレキシブル基板(ケーブル)39とともに、給電ライン26Aが設置されている。回路基板16には接地導体(GND)22と、給電ライン26B、26C、26D、26Eと、コネクタ部40と、切替スイッチ部42、44と、整合回路46、48と、無線部50と、開閉センサ52と、CPU(Central Processing Unit )54とが備えられている。整合回路46は第3の整合回路、整合回路48は第2の整合回路を構成している。
【0032】
接地導体20を備える回路基板12は第1のアンテナ素子14を構成し、アンテナ素子18はモノポールアンテナ32を構成する。即ち、携帯電話機34は、2つのアンテナ素子としてダイポールアンテナ28(図5)と、モノポールアンテナ32(図6)とを備えている。
【0033】
接地導体22は導体部の一例である。アンテナ素子18は、回路基板16の外部に設置され、ダイポールアンテナ28(図1のB、図5のB)を構成する際、接地導体22の延長素子を構成する。
【0034】
フレキシブル基板39は接続モジュールの一例であって、図4に示すように、ヒンジ部10を周回して配線され、コネクタ部38、40間に接続され、このフレキシブル基板39に沿って給電ライン26Aが設置されている。
【0035】
無線部50には、接地導体20が整合回路36、給電ライン26A、切替スイッチ部42及び給電ライン26Bを介して接続されている。切替スイッチ部42は、無線部50に対する給電ライン26A又は給電ライン26Cの接続を切り替える手段である。整合回路36は、無線部50に接地導体20を給電ライン26A、切替スイッチ部42及び給電ライン26Bを介して整合させる手段の一例である。
【0036】
無線部50には、整合回路46、給電ライン26D、切替スイッチ部44、給電ライン26Eを介してアンテナ素子18が接続されている。整合回路46は、アンテナ素子18及び接地導体22を無線部50に整合させる手段の一例である。切替スイッチ部44は、アンテナ素子18を給電ライン26C又は給電ライン26Dに切り替える手段の一例である。
【0037】
また、無線部50には、給電ライン26B、切替スイッチ部42、給電ライン26C、整合回路48、切替スイッチ部44及び給電ライン26Eを介してアンテナ素子18が接続されている。整合回路48は、無線部50に給電ライン26B、切替スイッチ部42、44、給電ライン26C、26Eを介してアンテナ素子18を整合させる手段の一例である。
【0038】
そして、開閉センサ52は、筐体4の開閉を検出する手段の一例であり、その検出信号がCPU54に伝えられる。CPU54は、アンテナ切替制御手段の一例であって、切替スイッチ部42、44の切替え制御を行う。このため、CPU54には切替スイッチ部42、44が制御ライン56で接続されている。
【0039】
次に、筐体4の開閉とアンテナ切替えについて、図5及び図6を参照する。図5は開状態の携帯電話機に構成されるダイポールアンテナの一例を示し、図6は閉状態の携帯電話機に構成されるモノポールアンテナの一例を示している。図5及び図6において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0040】
携帯電話機34が開状態ではダイポールアンテナ28(図5のB)が構成される。図5のAに示すように、無線部50に筐体部6側にある回路基板12の接地導体20が整合回路36、給電ライン26A、26Bを介して接続されるとともに、アンテナ素子18、整合回路46及び回路基板16の接地導体22が接続される。即ち、ダイポールアンテナ28の一方のアンテナ素子部28Aには接地導体20が用いられ、他方のアンテナ素子部28Bには接地導体22及びアンテナ素子18が用いられ、図5のBに示すダイポールアンテナ28が構成される。
【0041】
このダイポールアンテナ28では、接地導体20に流れる放射電流をI1 、接地導体22に流れる放射電流をI2 とすると、これら放射電流I1 、I2 は同相方向となる。
【0042】
また、携帯電話機34が閉状態ではモノポールアンテナ32(図6のB)が構成される。図6のAに示すように、無線部50に給電ライン26C、26Eを介してアンテナ素子18が接続され、モノポールアンテナ32が構成される。
【0043】
このモノポールアンテナ32が構成された場合、接地導体20に流れる放射電流I1 、接地導体22に流れる放射電流I2 は、接地導体20、22が対向しているため、逆相方向となり、相殺する関係になる。この結果、アンテナ素子18がモノポールアンテナ32として機能する。
【0044】
次に、アンテナ切替回路について、図7、図8及び図9を参照する。図7は筐体が開状態である場合のアンテナ切替回路を示し、図8は筐体が閉状態である場合のアンテナ切替回路を示し、図9は切替スイッチ部の制御ロジックを示している。
【0045】
アンテナ切替回路58において、開閉センサ52が筐体4の開状態を検出すると、CPU54からダイポールアンテナ28を構成するための例えば、制御出力Hが発せられる。制御出力Hで、図7に示すように、切替スイッチ部42がOUTA1側に切り替えられるとともに、切替スイッチ部44がOUTB1側に切り替えられる。
【0046】
このとき、無線部50には、第1のアンテナ素子14が切替スイッチ部42及び整合回路36を介して接続されるとともに、第2のアンテナ素子18、切替スイッチ部44、整合回路46及び接地導体22が接続されている。従って、既述のダイポールアンテナ28が構成され、無線部50に接続される。
【0047】
また、開閉センサ52が筐体4の閉状態を検出すると、CPU54からモノポールアンテナ32を構成するための例えば、制御出力Lが発せられる。この制御出力Lで、図8に示すように、切替スイッチ部42がOUTA2側に切り替えられるとともに、切替スイッチ部44がOUTB2側に切り替えられる。
【0048】
このとき、無線部50には第2のアンテナ素子18が切替スイッチ部44、整合回路48及び切替スイッチ部42を介して接続される。従って、既述のモノポールアンテナ32が構成され、無線部50に接続される。
【0049】
このようなアンテナ切替えには、図9に示すように、切替スイッチ部42、44の制御ロジックが用いられる。
【0050】
この制御ロジックでは、筐体4が開状態の場合、開閉センサ52の出力がH(高)、制御ライン56には既述の制御出力Hが発せられ、切替スイッチ部42の接続状態はINA−OUTA1、切替スイッチ部44の接続状態はINB−OUTB1となる。また、筐体4が閉状態の場合、開閉センサ52の出力がL(低)、制御ライン56には既述の制御出力Lが発せられ、切替スイッチ部42の接続状態はINA−OUTA2、切替スイッチ部44の接続状態はINB−OUTB2となる。
【0051】
次に、アンテナ切替回路について、図10を参照する。図10はアンテナ切替回路の一例を示している。図10において、図7、図8と同一部分には同一符号を付してある。
【0052】
無線部50には、結合キャパシタC1 を介して切替スイッチ部42が接続される。この切替スイッチ部42と第1のアンテナ素子14との間に接続された整合回路36には、キャパシタC2 が用いられる。また、整合回路48には、切替スイッチ部42と切替スイッチ部44との間に直列に接続されたインダクタL1 と、並列に接続されたインダクタL2 及びキャパシタC3 とが用いられる。また、整合回路46は、切替スイッチ部44と接地導体22との間に接続されたインダクタL3 で構成される。
【0053】
次に、ヒンジ部10に設置されたフレキシブル基板39の接続構造について、図11及び図12を参照する。図11及び図12はフレキシブル基板の接続構造の一例を示している。
【0054】
筐体部6側の回路基板12には、図11のAに示すように、コネクタ部38が設置され、このコネクタ部38にはフレキシブル基板39が接続されている。給電ライン26は、回路基板12の接地導体20に接続され、フレキシブル基板39に重ねられている。
【0055】
フレキシブル基板39に接続されたコネクタ部38は、例えば、FPCコネクタで構成され、図11のBに示すように、回路基板12に固定され、回路基板12にある回路配線に接続されている。給電ライン26は、フレキシブル基板39と別ルートで筐体部8側に導かれ、切替スイッチ部42に接続される。
【0056】
ヒンジ部10を通過したフレキシブル基板39は、図12のA及びBに示すように、筐体部8側の回路基板16に導かれ、回路基板16にある回路配線に接続される。給電ライン26は、フレキシブル基板39に沿ってヒンジ部10を通過させて回路基板16側に導かれている。
【0057】
フレキシブル基板39は、コネクタ部40に例えば、スタッキングコネクタを用いて回路基板16に接続されている。給電ライン26はこのスタッキングコネクタに備えられた接続端子部60により無線部50側の切替スイッチ部42に接続される。
【0058】
このダイポールアンテナ28及びモノポールアンテナ32の各特性について、図13及び図14を参照する。図13はダイポールアンテナの特性を示し、図14はモノポールアンテナの特性を示している。
【0059】
図13は、ダイポールアンテナ28のアンテナ放射特性を示し、太線aはアンテナ素子18を接続した場合の特性、細線bはアンテナ素子18がない場合の特性である。
【0060】
これら特性a、bの比較から明らかなように、アンテナ素子18を接続したダイポールアンテナ28では、アンテナ素子18が接地導体22の延長素子として機能し、低周波帯のアンテナ放射効率が改善されている。
【0061】
また、図14は、モノポールアンテナ32のアンテナ放射特性を示し、太線cはアンテナ素子18の特性、細線dは筐体4を閉じた場合のアンテナ素子14の特性である。
【0062】
筐体4を閉じた場合、第1のアンテナ素子14ではアンテナ放射効率が低く、実用性に乏しいのに対し、筐体4を閉じても、第2のアンテナ素子18のアンテナ放射効率は高く、アンテナ放射効率が約20〔dB〕程度改善されている。
【0063】
上記実施の形態の特徴事項や利点を以下に列挙する。
【0064】
(1) 既述の通り、上記実施の形態では、筐体の小型化、薄型化及び使用周波数帯の低周波化による筐体長のアンテナ特性への影響を抑制できる。
【0065】
(2) 既述の通り、上記実施の形態では、筐体4を開いた場合には、筐体部6が第一のアンテナ素子14として、筐体部8にある接地導体22(導体部)及びアンテナ素子18でダイポールアンテナ28を機能させる。また、筐体4を閉じた場合には、筐体部8側にある第2のアンテナ素子18をモノポールアンテナ32として機能させる。
【0066】
(3) 第2のアンテナ素子18は、筐体4を開いた場合に、接地導体22に接続され、GND延長素子として動作する。この結果、筐体部8ないし筐体4が短縮化されても、無線部50(即ち、給電点24)に対して筐体長を長くみせることができ、筐体長の影響によるアンテナ特性の劣化を軽減できる。
【0067】
(4) 第1のアンテナ素子14、第2のアンテナ素子18、整合回路36、46、48、接地導体22及び無線部50は、切替スイッチ部42、44を介して接続され、筐体4の開閉状態は開閉センサ52を介して判断する。CPU54から制御信号で自動的且つ所望のアンテナとしてダイポールアンテナ28又はモノポールアンテナ32を選択し、所望のアンテナ特性が得られる。
【0068】
(5) 筐体4を開いた場合、無線部50が第1のアンテナ素子14に給電する。整合回路36は、第1のアンテナ素子14の共振点が使用周波数帯と一致するよう調整すればよい。第2のアンテナ素子18は、整合回路46を介して接地され、GND延長素子として動作する。整合回路46は、第2のアンテナ素子18が使用周波数帯でGND延長素子として最も効果があるような定数を以て調整する。
【0069】
(6) 筐体4を閉じた場合は、無線部50が第2のアンテナ素子18に給電する。この場合、整合回路48は、第2のアンテナ素子18の共振点が使用周波数帯と一致するよう調整する。
【0070】
(7) 筐体4を開いた場合には、開閉センサ52の検出出力が開状態であることをCPU54が判断し、切替スイッチ部42、44を制御する。無線部50には第1のアンテナ素子14が整合回路36を介して接続され、接地導体22と第2のアンテナ素子18が、整合回路46を介して接続される。
【0071】
(8) 筐体4を閉じた場合には、開閉センサ52の検出出力が閉状態であることをCPU54が判断し、切替スイッチ部42、44を制御する。このとき、無線部50は第2のアンテナ素子18に接続される。
【0072】
(9) この実施の形態では、整合回路46をパラレルLで構成し、整合回路48をシリーズLとLCパラレル共振回路で構成している。Lはインダクタンスであり、Cはキャパシタンスである。
【0073】
(10) 給電ライン26はヒンジ部10を通過するフレキシブル基板39の信号ラインと一体化構成としている。フレキシブル基板39の半島部を半田付けで各回路基板12、16に接続している。即ち、堅牢な接続構造がアンテナ特性に寄与している。
【0074】
(11) 携帯電話機34を開いた場合、筐体の小型化・薄型化及び使用周波数帯の低周波化によって、筐体長によるアンテナ特性への影響が抑制できる。
【0075】
(12) 携帯電話機34を閉じた場合、第2のアンテナ素子18に切り替えられ、図14に示す通り、アンテナ放射効率が20〔dB〕程度も改善された。
【0076】
(13) 以上説明したように、筐体の開状態で、第2の筐体部にあるアンテナ素子を付加したダイポールアンテナを構成し、筐体の閉状態で、第2の筐体部にあるアンテナ素子でモノポールアンテナを構成するので、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0077】
(14) 以上説明したように、筐体を開いた場合には、第2の筐体部にある導体部に第2のアンテナ素子を接続してアンテナ長を長くでき、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0078】
(15) 以上説明したように、第2の筐体部にあるアンテナ素子でモノポールアンテナを構成するので、アンテナ特性の劣化を防止できる。
【0079】
〔第3の実施の形態〕
【0080】
第3の実施の形態は、給電ラインの簡略化とともに、切替スイッチ部を単一化した構成である。
【0081】
この第3の実施の形態について、図15、図16、図17、図18及び図19を参照する。図15は第3の実施の形態に係る携帯電話機が開状態にある場合のアンテナの構成例、図16はダイポールアンテナの構成例、図17はモノポールアンテナの構成例、図18は携帯電話機が開状態にある場合のアンテナ切替回路の一例、図19は携帯電話機が閉状態にある場合のアンテナ切替回路の一例を示している。図15〜図19において、図3、図7、図8と同一部分には同一符号を付してある。
【0082】
この実施の形態の携帯電話機34では、図15に示すように、給電ライン26Aの一部にフレキシブル基板39内の配線を用いている。また、既述の切替スイッチ部42、44を切替スイッチ部43で単一化している。この実施の形態では、整合回路36、46、48は省略して示してある。その他の構成は第2の実施の形態と同一であるので、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
このような構成によっても、筐体4を開いた場合には、図16及び図18に示すように、ダイポールアンテナ28が構成され、筐体4を閉じた場合には、図17及び図19に示すように、モノポールアンテナ32が構成される。
【0084】
開閉センサ52が筐体4の開状態を検出すると、無線部50には第1のアンテナ素子14が切替スイッチ部43の接点431及び整合回路36を介して接続されるとともに、第2のアンテナ素子18が切替スイッチ部43の接点432、整合回路46及び接地導体22を介して接続される。従って、既述のダイポールアンテナ28が構成され、無線部50に接続される。
【0085】
また、開閉センサ52が筐体4の閉状態を検出すると、無線部50には第2のアンテナ素子18が切替スイッチ部43の接点432、整合回路48、切替スイッチ部43の接点431を介して接続される。従って、既述のモノポールアンテナ32が構成され、無線部50に接続される。
【0086】
〔第4の実施の形態〕
【0087】
第4の実施の形態は、テレビジョン(TV)放送受信回路の構成である。
【0088】
この第4の実施の形態について、図20、図21及び図22を参照する。図20は第4の実施の形態に係るTV放送受信回路の構成例、図21は携帯電話機が開状態にある場合のダイポールアンテナの構成例、図22は携帯電話機が閉状態にある場合のモノポールアンテナの構成例を示している。図21〜図22において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0089】
このTV放送受信回路62は、既述のアンテナ切替回路58にTV放送受信モジュール64を接続した構成である。TV放送受信モジュール64は、高周波増幅回路、同調回路及び復調回路等を備え、TV放送の映像や音声を再生可能な構成である。
【0090】
斯かる構成において、携帯電話機34の筐体4を開状態とすれば、切替スイッチ部42、44が図示の状態となる。この場合、TV放送受信モジュール64には、アンテナ素子14、接地導体22及びアンテナ素子18からなるダイポールアンテナ28が接続され、このダイポールアンテナ28でTV放送が受信される。
【0091】
また、筐体4を閉状態とすれば、切替スイッチ部42、44は破線で示す状態となる。この場合、TV放送受信モジュール64には、アンテナ素子18が整合回路48及び切替スイッチ部42、44を介して接続される。即ち、TV放送受信モジュール64には、モノポールアンテナ32が接続され、このモノポールアンテナ32でTV放送が受信される。
【0092】
このTV放送受信モジュール64には、何れのアンテナ28、32でもTV放送を受信できるが、筐体4が開状態にある場合には、ダイポールアンテナ28の一部にアンテナ素子18が加わり、このアンテナ素子18が接地導体22の延長素子として機能する。このため、アンテナの放射特性を改善でき、TV放送受信感度を高めることができる。この場合、携帯電話機34の筐体4を開いた場合には、図21に示すように、ダイポールアンテナ28を構成する筐体部6には放射電流I1 、筐体部8には放射電流I2 が流れ、筐体部8側にはアンテナ素子18が延長素子として加わる。従って、各放射電流I1 、I2 が同相方向となることに加え、アンテナ素子18による延長素子機能とにより、アンテナ放射特性が高められている。
【0093】
また、筐体4を閉じた場合には、図22に示すように、筐体部6、8に流れる放射電流I1 、I2 は互いに反対方向となって相殺されるが、アンテナ素子18がモノポールアンテナ32としてTV放送受信モジュール64に接続され、給電される。この結果、筐体4を閉じても、モノポールアンテナ32によってダイポールアンテナ28に劣らないTV放送を受信できる。
【0094】
この実施の形態及び前記実施の形態において、アンテナ素子18のエレメント長の調整や、整合回路36、46、48のマッチング調整を行うことにより、最大放射効率を得ることができる。
【0095】
このような構成によれば、アンテナ素子18を付加したことにより、筐体4の開閉に拘わらず、TV放送受信等の放送受信に必要なアンテナ放射効率を得ることができ、放送受信特性を改善できる。
【0096】
〔他の実施の形態〕
【0097】
(1) 上記実施の形態では、携帯装置2や携帯電話機34について例示したが、これに限定されない。例えば、放送受信ができる携帯情報端末機(PDA:Personal Digital Assistant)や、パーソナルコンピュータやTV受像機にも利用できる。
【0098】
(2) アンテナ特性を説明する上で放射効率によって説明したが、同様に本開示のダイポールアンテナやモノポールアンテナは、アンテナ素子18を備えたことにより、アンテナゲインが高められている。
【0099】
〔比較例〕
【0100】
比較例は、開閉可能な携帯装置で構成されるアンテナ特性を示したものである。
【0101】
この比較例について、図23及び図24を参照する。図23は開状態にある携帯電話機で構成されるダイポールアンテナ、図24は閉状態にある携帯電話機で構成されるアンテナを示している。
【0102】
この比較例に係る携帯電話機200では、開閉可能な筐体204として筐体部206、208を備えている。
【0103】
筐体204を開いた場合、図23のA、Bに示すように、筐体部206、208がそれぞれアンテナ素子として機能し、給電点224にはダイポールアンテナ228が構成される。このダイポールアンテナ228は、筐体部206側の回路基板212、筐体部208側の回路基板216がそれぞれアンテナ素子として機能する。即ち、回路基板212には放射電流I1 が流れ、回路基板216には同相の放射電流I2 が流れ、それぞれがアンテナ素子として機能している。このようなダイポールアンテナ228では、携帯電話機200の小型化や使用周波数帯が低くなった場合には使用波長に対して筐体長が短くなり、アンテナ性能の劣化が避けられない。
【0104】
ところが、図24のAに示すように、筐体204を閉じると、回路基板212に流れる放射電流I1 と、回路基板216に流れる放射電流I2 とは図24のBに示すように、逆相関係となり、アンテナとして機能しないか、又はアンテナ特性の劣化が著しくなる。
【0105】
このような携帯電話機200において、筐体204の小型化で筐体長が短くなると、十分なアンテナ長が得られない。そこで、アンテナ長を確保するため、筐体部206や筐体部208に延長基板を設け、この延長基板を接続手段を介して回路基板に接続すると、延長基板のための必要なスペースが必要となる。斯かる構成では、携帯電話機200の小型化、薄型化が損なわれる。
【0106】
このような課題は上記実施の形態によって解決され、筐体の小型化や偏平化を損なうことなく、優れたアンテナ特性をダイポールアンテナやモノポールアンテナで実現できる。そして、筐体の開閉によってダイポールアンテナ又はモノポールアンテナに切り替えることができる。ダイポールアンテナでは、接地導体22にアンテナ素子18を付加することにより導体長を補完し、筐体長の短縮化によるアンテナ特性の劣化を防止できる。
【0107】
以上説明したように、携帯装置の実施の形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0108】
2 携帯装置
4 筐体
6 第1の筐体部
8 第2の筐体部
12 第1の回路基板
14 第1のアンテナ素子
16 第2の回路基板
18 第2のアンテナ素子
20、22 接地導体
24 給電点
28 ダイポールアンテナ
32 モノポールアンテナ
34 携帯電話機
36 第1の整合回路
42、43、44 切替スイッチ部
46 第3の整合回路
48 第2の整合回路
50 無線部
52 開閉センサ
54 CPU
58 アンテナ切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを備える携帯装置であって、
開閉可能な第1及び第2の筐体部と、
前記第1の筐体部で構成される第1のアンテナ素子と、
前記第2の筐体部に設置された導体部及び第2のアンテナ素子と、
前記第1及び第2の筐体部の開状態で、前記第1のアンテナ素子と、前記導体部及び前記第2のアンテナ素子とによりダイポールアンテナを構成し、前記第1及び第2の筐体部の閉状態で、前記第2のアンテナ素子によりモノポールアンテナを構成するアンテナ切替部と、
を備えることを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子は、前記第1の筐体部に設置された回路基板に設置された導体部で構成することを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
更に、前記第1の筐体部及び前記第2の筐体部の開閉を検出する開閉検出部と、
前記開閉検出部の検出出力により、前記アンテナ切替部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項4】
更に、前記第1のアンテナ素子と給電部との間に設置した第1の整合回路と、
前記給電部と前記第2のアンテナ素子との間に設置した第2の整合回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項5】
更に、前記第1の筐体部及び前記第2の筐体部を開いた場合に第3の整合回路を介して前記第2のアンテナ素子を前記第2の筐体部の前記導体部に接続することを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−15815(P2012−15815A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150530(P2010−150530)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】