説明

携帯電子機器

【課題】携帯電子機器を不用意に落下させても表示ディスプレイにクラックが発生しないように、表示ディスプレイ周辺の強度を保ちながら、外部からの衝撃が直接表示ディスプレイに伝わらないようにする。
【解決手段】LCD14(表示ディスプレイ)が嵌め込まれる枠状のディスプレイホルダ15と、フレーム底面22及び該フレーム底面22を囲むフレーム枠23とを備えた箱形状のマグネシウムフレーム17(金属フレーム)と、LCD14及びマグネシウムフレーム17を覆うキャビネット6a(ディスプレイ側筐体)とを設ける。LCD14をディスプレイホルダ15に嵌め込んだ状態で、該ディスプレイホルダ15と共にマグネシウムフレーム17のフレーム底面22に当接させながら該マグネシウムフレーム17に保持させて、キャビネット6aの内部に固定する。マグネシウムフレーム17のフレーム底面22を中央部が最も低くなるように湾曲した形状を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器のディスプレイの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機は、電話通信、メール通信、カメラ撮影、TV視聴、音楽聴取等の便利さが浸透し、外出するときには携帯するのが一般的となってきている。
【0003】
外出して携帯電話機を取り出す際に、不用意に地面に落下させることがある。落下させれば、樹脂成形品である携帯電話機の筐体に傷やひびが入ったり、筐体に設けられたディスプレイの表面に傷やクラックが発生したり、電気的に故障したりする場合がある。
【0004】
ユーザは、このように携帯電話機を落下させて電気的に故障すると、新しく買換えなくてはならないし、傷が発生すると、見映えが悪くなって不快な気持ちになる。
【0005】
これらを対策するものとして、例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂からなり液晶を固定保持する液晶ホルダと、弾性材料からなり液晶ホルダの周囲を覆う弾性部材とを具備し、液晶ホルダは基板を位置決めする位置決めボスで構成され、弾性部材はホルダを基板に係止するための係止爪と、液晶を保持固定する液晶保持固定爪と、液晶をガタ止めする液晶ガタ止めリブとで構成された多色成形型液晶ホルダが開示されている。
【0006】
例えば、特許文献2では、ホルダは回路基板を両端から挟み込む固定突起を有すると共に、筐体はその内側に前記固定突起の外側に当接する内壁リブを有する電子機器が開示されている。この電子機器では、筐体外側からの衝撃力をLCD本体に伝わる前にホルダの固定突起から回路基板側に逃がすことができ、ホルダ上部のLCD本体への影響を最小限に抑えることができる。
【特許文献1】特開2001−264732号公報
【特許文献2】特開2002−287116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明では、少ない部品点数で、運搬時における変形や破損防止、携帯端末機筐体とセット状態における落下衝撃等によるホルダ及び爪の変形や破損の防止、液晶破損防止を行うとしているものの、液晶とホルダとが密着した構造になっている。
【0008】
特許文献2の発明では、ホルダとLCD本体の側部との間に隙間を設け、筐体外側からの衝撃力がホルダを介して直接伝わるのを防止して、LCD本体への影響を抑えることができるとしているものの、上記特許文献1と同様に液晶とホルダとが密着した構造になっている。
【0009】
ところで、近年、携帯電話機の軽量化や薄型化のために、ホルダやフレームは金属フレームで構成されている。例えば、マグネシウムダイキャストであるAZ91D(主として、Al 9%,Zn 1%,残りMgの合金)が金属フレームとして良く用いられている。このような剛性の高い金属フレームに表示ディスプレイを嵌め込むことで、落下時等に筐体、ディスプレイ用基板や表示ディスプレイの損傷を防ぐことが行われている。
【0010】
一方で、従来のように表示ディスプレイを密着させて保持させると、落下などが起きた場合、その衝撃を負担する金属フレームから表示ディスプレイに衝撃が伝わりすぎて表示ディスプレイが破壊するおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、携帯電子機器を不用意に落下させても表示ディスプレイにクラックが発生しないように、表示ディスプレイ周辺の強度を保ちながら、外部からの衝撃が直接表示ディスプレイに伝わらないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、表示ディスプレイが当接する金属フレームの底面の形状を湾曲した形状とした。
【0013】
具体的には、第1の発明では、表示ディスプレイを備えた携帯電子機器において、
板状の上記表示ディスプレイが嵌め込まれる枠状のディスプレイホルダと、
フレーム底面及び該フレーム底面を囲むフレーム枠を備えた箱形状の金属フレームと、
上記表示ディスプレイ及び金属フレームを覆うディスプレイ側筐体とを備え、
上記表示ディスプレイは、上記ディスプレイホルダに嵌め込まれた状態で、該ディスプレイホルダと共に金属フレームの底面に当接しながら該金属フレームに保持された上で、上記ディスプレイ側筐体内部に固定されるように構成され、
上記金属フレームのフレーム底面は、中央部が最も低くなるように湾曲した形状を有する。
【0014】
上記の構成によると、ディスプレイ側筐体には、剛性の高い金属フレームが設けられているため、落下等の衝撃が加わった際には、筐体や液晶側基板等が保護される。一方、金属フレームのフレーム底面は、中央部が最も低くなるように湾曲した形状を有するので、ガラス等の透明な部材で覆われた衝撃に弱い表示ディスプレイの中央部と金属フレームとが直接接触せず、携帯電子機器が落下した際の衝撃は、金属フレームから表示ディスプレイに伝わりにくい。したがって、携帯電子機器を不用意に落下させても、表示ディスプレイにクラックが発生するのが防止される。
【0015】
第2の発明では、上記ディスプレイホルダは、裏面側へ突出する複数の係合用爪を備え、
上記金属フレームは、上記係合用爪が挿入される係合用孔を備えている。
【0016】
上記の構成によると、ディスプレイホルダの係合用爪を金属フレームの係合用孔に挿入することで、ディスプレイホルダが金属フレームに堅固に組み付けられ、落下の衝撃でディスプレイホルダが金属フレームから外れることはない。
【0017】
第3の発明では、上記表示ディスプレイが電気的に接続されるディスプレイ用基板は、上記金属フレームの表示ディスプレイと反対側面に、上記ディスプレイホルダの係止用爪によって取り付けられている。
【0018】
上記の構成によると、ディスプレイ用基板は、ディスプレイホルダの係止用爪によって、該ディスプレイホルダと共に金属フレームに容易に取り付けられる。ディスプレイ用基板は、剛性の高い金属フレームで守られているので、落下の衝撃で電気的に故障するのが防止される。
【0019】
第4の発明では、上記ディスプレイホルダは、樹脂成形品とする。
【0020】
上記の構成によると、樹脂成形品は、金属フレームに比べて剛性が低くて撓みやすく、落下等の衝撃を受けた場合でも、金属フレームからの衝撃を吸収しやすいので、表示ディスプレイの損傷が防止される。
【0021】
第5の発明では、上記金属フレームは、マグネシウムフレームで構成されている。
【0022】
上記の構成によると、マグネシウムフレームは、軽量で剛性が高いので、薄型に成形でき、携帯する必要性のある携帯電子機器の金属フレームとして適している。
【0023】
第6の発明では、携帯電子機器は、携帯電話機とする。
【0024】
上記の構成によると、軽量で薄型化が要求されると共に、携帯する頻度の多い携帯電話機は、意図せず落下させてしまう場面が多いが、本発明により、落下等の衝撃に強い薄型の携帯電話機が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、板状の表示ディスプレイをディスプレイホルダに嵌め込んだ状態で、金属フレームにおける、中央部が最も低くなるように湾曲したフレーム底面に当接させた上で液晶側筐体内部に固定することにより、表示ディスプレイ周辺の強度を保ちながら、外部からの衝撃が直接表示ディスプレイに伝わらないようにしている。このため、携帯電子機器を不用意に落下させても、表示ディスプレイにクラックが発生しないので、落下等の衝撃に強い携帯電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯用電子機器としての携帯電話機1の開いた状態を右方向から見た斜視図である。図2は、図1の閉じた状態を右方向から見た斜視図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の携帯電話機1は、ディスプレイ側筐体としての第1の筐体2と、第2の筐体3とを有し、これらがヒンジ部4によって折り畳自在に結合されている。また、第1の筐体2には、回転機構5が設けられ、この回転機構5により、略矩形板状の液晶表示部6が縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持されている。この液晶表示部6の表面側にLCD14、受話部7等が設けられ、裏面側にはサブ表示部11が設けられている。
【0029】
上記第2の筐体3の表面側には、送話部8、入力ボタン9、機能ボタン10等が設けられている。
【0030】
そして、電話やメールするときには図1のように開いた状態で行い、電話やメールが終われば図2のように閉じた状態で待機し、着信があればサブ表示部11に着信があったことを知らせる表示が出るようになっている。
【0031】
また、TVを見たり、メールを横長状態で行いたいときは、図示しないが、液晶表示部6を回転機構5によって横長状態に回転して行うようになっている。
【0032】
図3は、液晶表示部の金属フレームとしてのマグネシウムフレームを示す斜視図である。図4は、図3の平面図である。
【0033】
第1の筐体2における液晶表示部6は、樹脂製のキャビネット6aで覆われている。このキャビネット6aの内部には、マグネシウムフレーム17が嵌め込まれている(図7参照)。
【0034】
図3及び図4に示すように、マグネシウムフレーム17は、略矩形板状に形成され、フレーム底面22と、このフレーム底面22を囲むフレーム枠23とを備えている。このように箱形構造とすることで、フレーム(構造体)としての強度を確保している。マグネシウムフレーム17は、例えば、カメラ(図示せず)を位置決めするカメラ窓26、ビス挿通孔27、ディスプレイホルダ15を固定するための係合用孔28、後述する信号線を通す信号線貫通孔29,30、ストロボ(図示せず)の位置決めするストロボ窓孔31、受話部の音声を通す受話部孔32等を備えている。マグネシウムフレーム17は、例えば、マグネシウムダイキャストであるAZ91Dよりなる。
【0035】
図5は、図4のV−V線断面図である。図6は、図4のVI−VI線断面図である。図7は、液晶表示部6の分解斜視図である。図8は、図1のVIII−VIII線断面図である。図9は、図8のIX部拡大断面図である。
【0036】
図5及び図6に示すように、マグネシウムフレーム17のフレーム底面22は、中央が最も低くなるように湾曲している。
【0037】
図7に示すように、矩形板状の表示ディスプレイとしてのLCD14は、表面がガラス等の透明な部材で覆われ、比較的衝撃に弱いものとなっている。LCD14は、矩形枠状の樹脂製ディスプレイホルダ15に嵌め込まれた状態でマグネシウムフレーム17に保持されている。その状態で、キャビネット6aの内部に嵌め込まれている。
【0038】
ディスプレイホルダ15は、樹脂成形品よりなり、その側面から例えば4本の係止用爪20が突出するように設けられている。LCD14が電気的に接続されるディスプレイ用基板としてのLCD基板16は、マグネシウムフレーム17のLCD14と反対側面に、ディスプレイホルダ15の係止用爪20によって取り付けられている。
【0039】
図8及び図9に示すように、ディスプレイホルダ15は、その裏面でフレーム底面22と接触しているが、LCD14の中央部は、一切、フレーム底面22には接触せず、その周縁のみがフレーム底面22に当接している。
【0040】
−液晶表示部の組立手順−
次に、液晶表示部6の組立手順について説明すると、図7に示すように、まず、LCD14をディスプレイホルダ15に組み込む。
【0041】
次いで、ディスプレイホルダ15の4つの係止用爪20をマグネシウムフレーム17の4つの係合用孔28に挿入して、ディスプレイホルダ15の固定と位置決めとを行う。
【0042】
次いで、LCD基板16をマグネシウムフレーム17の裏面側から取り付ける。このとき、LCD14から延びる信号線19をマグネシウムフレーム17の信号線貫通孔29を通してLCD基板16に接続する。ディスプレイホルダ15の4つの係止用爪20でLCD基板16をマグネシウムフレーム17と共に嵌合させることで、ディスプレイホルダ15とLCD基板16とをマグネシウムフレーム17に固定する。
【0043】
最後に、LCD14、ディスプレイホルダ15、LCD基板16及びマグネシウムフレーム17を組み込んだものを液晶表示部6のキャビネット6aに嵌め込み、マグネシウムフレーム17のビス挿通孔27にビス(図示せず)を挿通させてフレーム取付用ボス18にビス止めし、透明なディスプレイカバー13を貼り付ける。
【0044】
−実施形態の効果−
このように、本実施形態にかかる携帯電話機1によると、板状のLCD14をディスプレイホルダ15に嵌め込んだ状態で、マグネシウムフレーム17における、中央部が最も低くなるように湾曲したフレーム底面22に当接させた上でキャビネット6a内部に固定することにより、LCD14周辺の強度を保ちながら、外部からの衝撃が直接LCD14に伝わらないようにしている。このため、携帯電話機1を不用意に落下させても、その衝撃がまずLCD14の周縁に伝わるようにすることで、中央部に衝撃が入ってLCD14を構成するガラスが割れるのを防ぐことができる。したがって、第1の筐体2(液晶表示部6)全体の厚味を薄く保ちながら、落下等の衝撃に強い携帯電話機1が得られる。
【0045】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0046】
すなわち、上記実施形態では、図5及び図6のいずれの断面においても、マグネシウムフレーム17のフレーム底面22は、中央が最も低くなるように湾曲しているものとしたが、図5又は図6のいずれか一方のみの断面において、フレーム底面22の中央が最も低くなるように湾曲させてもよい。要は、LCD14の中央部とフレーム底面22とが直接接触しなければよい。
【0047】
上記実施形態では、LCD14の例を示したが、表示部6は、有機EL表示ディスプレイを備えていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、回転機構5を設けて第1の筐体2を縦長状態から横長状態に回転可能としているが、回転機構5を設けなくてもよい。また、ヒンジ部4を設けて第1の筐体2と第2の筐体3とを折り畳み自在に結合しているが、ストレートタイプの携帯電話機であってもよい。
【0049】
上記実施形態では、携帯電子機器のうち、特に携帯電話機としたが、PHS、PC、モバイルツール、電子辞書、電卓、複写機等でもよい。
【0050】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、表示ディスプレイを備えた携帯電話機などの携帯電子機器について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の開いた状態を右方向から見た斜視図である。
【図2】図1の閉じた状態を右方向から見た斜視図である。
【図3】マグネシウムフレームを示す斜視図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】液晶表示部の分解斜視図である。
【図8】図1のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図8のIX部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 携帯電話機(携帯電子機器)
2 第1の筐体(ディスプレイ側筐体)
14 LCD(表示ディスプレイ)
15 ディスプレイホルダ
16 LCD基板(ディスプレイ用基板)
17 マグネシウムフレーム(金属フレーム)
20 係止用爪
22 フレーム底面
23 フレーム枠
28 係合用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示ディスプレイを備えた携帯電子機器において、
板状の上記表示ディスプレイが嵌め込まれる枠状のディスプレイホルダと、
フレーム底面及び該フレーム底面を囲むフレーム枠を備えた箱形状の金属フレームと、
上記表示ディスプレイ及び金属フレームを覆うディスプレイ側筐体とを備え、
上記表示ディスプレイは、上記ディスプレイホルダに嵌め込まれた状態で、該ディスプレイホルダと共に金属フレームの底面に当接しながら該金属フレームに保持された上で、上記ディスプレイ側筐体内部に固定されるように構成され、
上記金属フレームのフレーム底面は、中央部が最も低くなるように湾曲した形状を有する
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯電子機器において、
上記ディスプレイホルダは、裏面側へ突出する複数の係合用爪を備え、
上記金属フレームは、上記係合用爪が挿入される係合用孔を備えている
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯電子機器において、
上記表示ディスプレイが電気的に接続されるディスプレイ用基板は、上記金属フレームの表示ディスプレイと反対側面に、上記ディスプレイホルダの係止用爪によって取り付けられている
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の携帯電子機器において、
上記ディスプレイホルダは、樹脂成形品である
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の携帯電子機器において、
上記金属フレームは、マグネシウムフレームで構成されている
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の携帯電子機器において、
携帯電子機器である
ことを特徴とする携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−226285(P2007−226285A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43390(P2006−43390)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】