説明

携帯電話機

【課題】アンテナコイルが内蔵されていない面での通信成功率が高いICカード機能内蔵携帯電話機を提供する。
【解決手段】。
携帯電話機1はICカード機能内蔵携帯電話機であり、基地局との通信を行うためのアンテナ以外のアンテナコイル2を内蔵している。このアンテナコイル2が内蔵されていない面に、補正用コイル5と同調コンデンサ6とから成る補正用共振回路を内蔵することによって、アンテナコイルが内蔵されていない面での通信成功率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード機能内蔵の携帯電話機のアンテナコイルが配されていない面での通信成功率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通機関における自動改札機の入札、出札等に、近年、リサイクル使用できるICカードが利用され始めている。このようなICカードは、自動改札機等に内蔵されたカードリーダライタとの間で、非接触式で無線通信を行うように設定されている非接触式ICカードであり、例えば、定期券としての価値情報や乗車券をプリペイドするための金額情報が書き込まれていて、『Suica(登録商標)』などと呼ばれ、定期券やストアードフェア型の乗車券として広く普及し始めている。一方、携帯電話機は広く一般に普及しており、通勤・通学者の大半も所持していることから、携帯電話機に、前記のようなICカードの機能を持たせることが検討されている。
【0003】
このようなICカード機能内蔵携帯電話機としては、例えば、特許文献1(特開2005−204188号公報)に、携帯電話機能を有する通信デバイス内に、接触、非接触両用SIMを装着し、デバイス内に有するアンテナコイルを介して外部機器との間で交通運賃や取引の決済処理を可能にした非接触通信デバイスであって、SIM内の取引データを表示する表示機能面を当該デバイスの一面に有し、当該表示機能面とは反対側のデバイス面の一部もしくは全面に、クッション性素材を付与して外部機器受信部と接触した際の衝撃を緩和したことを特徴とする携帯可能な非接触通信デバイスが開示されている。
【特許文献1】特開2005−204188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接触式ICカードは、定期券入れ等に入れたままで自動改札機のカードリーダライタ部にかざすだけで、カードリーダライタ部との間で無線通信ができるようになっている。このような非接触式ICカードには、ICカード面全体をほぼカバーするようなコイル状のアンテナが内蔵されており、従って、自動改札機のカードリーダライタの無線通信可能エリアをそれほど意識することなく、カードの表面でも裏面でも、或いは定期券入れ等に入れたままで、といったような使い方をすることができる。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載されているような携帯電話機の場合には、利用者は携帯電話機に内蔵されているアンテナコイルの位置の概略を認識しておいた上で、これを自動改札機のカードリーダライタ部にかざす、という作業を意識的に行わなければならない。非接触式ICカードの場合では、カード表裏両面でカードリーダライタによる認識が可能であったのに対して、携帯電話機の場合には、コイルアンテナが内蔵されている面での認識確率は高いが、もう一方の面での認識確率がきわめて低く、通信不能に陥るという状況があり、この点、利用者が非常に不便に感じるという、問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、請求項1に係る発明は、基地局との通信を行うためのアンテナ以外のアンテナコイルを内蔵し、該アンテナコイルで外部のカードリーダライタと非接触で通信を行う携帯電話機において、該アンテナコイルが内蔵されていない面に補正用共振回路を内蔵することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、基地局との通信を行うためのアンテナ以外のアンテナコイルを内蔵し、該アンテナコイルで外部のカードリーダライタと非接触で通信を行う携帯電話機において、着脱式交換カバーに補正用共振回路を内蔵することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の携帯電話機において、該補正用共振回路は、補正用コイルと同調コンデンサとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯電話機のアンテナコイルが内蔵されていない方の面に補正用共振回路を設けるだけの単純で安価な構成により、アンテナコイルが内蔵されていない方の面をカードリーダライタにかざす際の、通信の成功率を高めることができる。
【0010】
また、本発明によれば、補正用共振回路を内蔵した着脱式交換カバーを携帯電話機に取り付けるだけで、アンテナコイルが内蔵されていない方の面である携帯電話機の正面での、通信の成功率を高めることができるように携帯電話機を改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る携帯電話機の外観図である。本実施形態を、折りたたみ式の携帯電話機に基づいて説明するが、本発明は、折りたたみ式携帯電話機以外の携帯電話機にも適用し得るものである。図1(a)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で正面から見たものである。また、図1(b)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で裏面から見たものである。また、図1(c)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で側面から見たものである。
【0012】
図1において、1は本実施形態に係る携帯電話機であり、2はアンテナコイル、3はこのアンテナコイル2に接続されたICチップ、4はヒンジ、5は補正用コイル、6は同調コンデンサである。アンテナコイル2は、自動改札機等に内蔵されたカードリーダライタとの間で通信を行うためのアンテナであり、このアンテナコイル2に接続されたICチップ3にはICチップ3毎の識別番号や金銭情報等が記憶されている。携帯電話機1は、アンテナコイル2以外に、基地局との間の通信のために用いる、図示しない通信用メインアンテナを備えている。
【0013】
携帯電話機1はヒンジ4を利用し開閉できるようになっており、通話時には開状態として利用し、携帯電話機1を携行する際には閉状態とする。自動改札機等を通過する際には、携行している携帯電話機1をカードリーダライタにかざすように用いるので、このときは図1に示すように携帯電話機1は、折りたたんだ状態である、閉状態となっている。携帯電話が折りたたまれた状態であると、携帯電話機1の正面か裏面かの見分けがつきにくい。アンテナコイル2は携帯電話機1の裏面に設けられているので、裏面の方をカードリーダライタにかざすと通信の成功確率が高いわけであるが、上述のように見分けがつきにくいため利用者は、携帯電話機1の正面側をカードリーダライタにかざすことがままある。
【0014】
そこで本実施形態においては、図1に示すように携帯電話機1の正面側に、補正用コイル5と同調コンデンサ6とが並列接続されてなる補正用共振回路を内蔵しておくことによりこれに対処する。なお、本明細書において、「コイルが内蔵される面」とは、そのコイルから最も近い携帯電話機の表面のことをいう。
【0015】
このような補正用共振回路が内蔵されていない場合の現象につき説明する。携帯電話機の正面側の筐体部分の金属部品が、カードリーダライタのアンテナに近づくことによって、カードリーダライタのアンテナの共振周波数が高くずれてしまい、このアンテナと送信回路終段部とのインピーダンスの整合がとれなくなってしまう。そうすると送信信号に反射が生じ、結果としてカードリーダライタからの送信信号の変調波形にひずみが生じて通信不能となっていた。
【0016】
このように携帯電話機の正面側の筐体部分の金属部品がリーダライタに近づくと、リーダライタのアンテナの共振周波数は高くずれる。一方、共振回路に、他の共振回路が近づき相互誘導が生じると共振周波数は下がることが知られている。本実施形態では、この現象を利用して、携帯電話機内に補正用コイル5と同調コンデンサ6とからなる補正用共振回路を設け、筐体の金属によるリーダライタのアンテナの共振周波数の上側への偏移を、相互誘導によって打ち消すように構成することによって、リーダライタの送信信号の変調波形のひずみを軽減する。
【0017】
次に、本実施形態のように携帯電話機に補正用共振回路を設ける効果について図3乃至図5を用いて説明する。図3は、補正用共振回路が設けられていない携帯電話機の裏面(アンテナコイル内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。また、図4は、補正用共振回路が設けられていない携帯電話機の正面(アンテナコイル非内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。また、図5は、本実施形態に係る補正用共振回路が内蔵された携帯電話機1の正面(アンテナコイル非内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。図3乃至図5において、縦軸は、1V/div、横軸は4μs/divである。また、カードリーダライタ面から10mmでの測定結果である。
【0018】
図3に示されるように、携帯電話機の裏面(アンテナコイル内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合については、問題なく信号波形を読み取ることができることが分かる。これに対して、図4に示されるように、携帯電話機の正面(アンテナコイル非内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合については、位相が反転していることに加え、信号レベルが小さすぎて通信不能状態となることがわかる。図5の本実施形態のように、補正用共振回路が設けられていれば、例えアンテナコイル非内蔵側をカードリーダライタで読み取ったとしても、位相反転を起こすことなく、通信可能なレベルの信号波形を得ることができる。
【0019】
このように、本実施形態では、携帯電話機1のアンテナコイルが内蔵されていない方の面に補正用共振回路を設けるだけの単純で安価な構成により、アンテナコイルが内蔵されていない方の面をカードリーダライタにかざす際の、通信の成功率を高めることができる。
【0020】
次に、本発明の他の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図2は、本発明の他の実施の形態に係る携帯電話機の外観図である。この実施形態でも、折りたたみ式の携帯電話機に基づいて説明する。図1(a)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で正面から見たものである。また、図1(b)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で裏面から見たものである。また、図1(c)は、本実施形態の携帯電話機を折りたたんだ状態で側面から見たものである。
【0021】
図2において、1は他の実施形態に係る携帯電話機であり、2はアンテナコイル、3はこのアンテナコイル2に接続されたICチップ、4はヒンジ、5は補正用コイル、6は同調コンデンサ、7は着脱式交換カバーである。
【0022】
この実施形態は、5は補正用コイルと6は同調コンデンサとからなる補正用共振回路が着脱式交換カバー7に設けられている点が、先の実施形態と異なる。着脱式交換カバー7は、図1(a)に示すように、携帯電話機1の正面に取り付けるようにして用いる。このような着脱式交換カバー7は、様々なデザインのものと交換することにより携帯電話機1のデザインを楽しむための利用が本来的な利用方法であるが、着脱式交換カバー7に本発明の補正用共振回路を内蔵することにより、カードリーダライタとの通信の成功率が低かった、アンテナコイルが内蔵されていない方の面である携帯電話機1の正面での、通信の成功率を高めることができる。このような着脱式交換カバー7に本発明の補正用共振回路を内蔵するようにして用いても、図3乃至図5で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0023】
このように他の実施形態によれば、補正用共振回路を内蔵した着脱式交換カバー7を携帯電話機1に取り付けるだけで、アンテナコイルが内蔵されていない方の面である携帯電話機1の正面での、通信の成功率を高めることができるように携帯電話機1を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯電話機の外観図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る携帯電話機の外観図である。
【図3】補正用共振回路が設けられていない携帯電話機の裏面(アンテナコイル内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。
【図4】補正用共振回路が設けられていない携帯電話機の正面(アンテナコイル非内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。
【図5】本実施形態に係る補正用共振回路が内蔵された携帯電話機1の正面(アンテナコイル非内蔵側)をカードリーダライタで読み取った場合の信号波形である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・携帯電話機、2・・・アンテナコイル、3・・・ICチップ、4・・・ヒンジ、5・・・補正用コイル、6・・・同調コンデンサ、7・・・着脱式交換カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局との通信を行うためのアンテナ以外のアンテナコイルを内蔵し、該アンテナコイルで外部のカードリーダライタと非接触で通信を行う携帯電話機において、
該アンテナコイルが内蔵されていない面に補正用共振回路を内蔵することを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
基地局との通信を行うためのアンテナ以外のアンテナコイルを内蔵し、該アンテナコイルで外部のカードリーダライタと非接触で通信を行う携帯電話機において、
着脱式交換カバーに補正用共振回路を内蔵することを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
該補正用共振回路は、補正用コイルと同調コンデンサとからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−221419(P2007−221419A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39041(P2006−39041)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】