摩擦撹拌溶接物並びに該摩擦撹拌溶接物を製造するシステム及び方法
【課題】摩擦撹拌溶接物並びに該溶接物を製造するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】金属製品は、第1中心−中立軸115を有する第1金属プレート110と、第2中心−中立軸125を有する第2金属プレート120と、第1金属プレート及び第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、を含んでおり、第1金属プレートの第1中心−中立軸は第2金属プレートの第2中心−中立軸に対して傾斜している。摩擦撹拌溶接物を作製するシステム150は、第1支持面162及び第2支持面164を有するバックアップアンビル160を含んでおり、第1支持面は第1金属プレートを受けて支持することができ、第2支持面は第2金属プレートを受けて支持することができ、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している。
【解決手段】金属製品は、第1中心−中立軸115を有する第1金属プレート110と、第2中心−中立軸125を有する第2金属プレート120と、第1金属プレート及び第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、を含んでおり、第1金属プレートの第1中心−中立軸は第2金属プレートの第2中心−中立軸に対して傾斜している。摩擦撹拌溶接物を作製するシステム150は、第1支持面162及び第2支持面164を有するバックアップアンビル160を含んでおり、第1支持面は第1金属プレートを受けて支持することができ、第2支持面は第2金属プレートを受けて支持することができ、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
摩擦撹拌溶接は、一般的には、2以上の金属ピースを、溶融を伴うことなく接合する溶接方法であり、主として、溶接熱による金属特性の変化が最小であることが必要とされる溶接仕事に適用される。プロセスは、回転ツールを、溶接が所望される位置で2以上の金属ピースの中に圧入することを含んでいる。摩擦による熱及び変形により、回転ツール近傍の金属が可塑化する。可塑化された部位は、融合して健全な金属接合が形成される。
【発明の概要】
【0002】
広義において、本発明は、非直線的で非直交である摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物並びに該溶接物を製造するシステム及び方法に関する。摩擦撹拌溶接物は、非直線的で非直交の摩擦撹拌角溶接部の存在により、様々な産業用途に適用される。
【0003】
一態様において、摩擦撹拌溶接物を含む金属製品を提供するものである。一態様において、製品は、第1中心−中立軸を有する第1金属プレートと、第2中心−中立軸を有する第2金属プレートと、第1金属プレート及び第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、を含んでおり、第1金属プレートの第1中心−中立軸は、第2金属プレートの第2中心−中立軸に対して傾斜している。それゆえ、金属製品は、角溶接されたものと考えられる。一実施例において、第1中心−中立軸と第2中心−中立軸との交差により、約5°〜約85°又は約95°〜約175°の角度が画定される。一実施例において、角溶接部は、上面と基底面を有しており、基底面に近い角溶接部の角度は約5°〜約85°又は約95°〜約175°である。
【0004】
金属プレートの材料は、摩擦撹拌溶接ツールによって溶接されるのに適した材料であれば何でもよい。一実施例において、第1金属プレートは第1アルミニウム合金を含んでおり、第2金属プレートは第2アルミニウム合金を含んでいる。一実施例において、第1アルミニウム合金は第2アルミニウム合金とは異なる(例えば、異なる例を2つを挙げると、組成又は質別(temper)である)。一実施例において、第1アルミニウム合金は、第2アルミニウムと同じである。
【0005】
他の態様において、摩擦撹拌溶接物を作製するシステムを提供する。一手法において、システムは、第1支持面及び第2支持面を有するバックアップアンビルと、第1金属プレートをバックアップアンビルの第1支持面上に拘束することができる第1セットの拘束部材と、第2金属プレートをバックアップアンビルの第2支持面上に拘束することができる第2セットの拘束部材と、第1金属プレートを第2金属プレートに溶接して、角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物を作成できる摩擦撹拌溶接ツールと、を含んでいる。この態様では、第2支持面は、一般的には、第1支持面に対向している。第1支持面は、第1金属プレートを受けて支持する作用を有し、第2支持面は、一般的には、第2金属プレートを受けて支持する作用を有する。支持面の向きは、溶接後、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようにしている。
【0006】
拘束部材は、溶接中、金属プレートの移動を制限できるあらゆる適当な向きに構成される。一実施例において、第1セット又は第2セットの拘束部材の何れか一方が金属プレートの側部を制限的に拘束することができる。関連する実施例において、第1セット及び第2セットの拘束部材の他方が金属プレートの上面部を拘束することができる。
【0007】
バックアップアンビルは、溶接中、金属プレートを支持できるように構成されており、溶接後、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している。一実施例において、バックアップアンビルは尖端部(pointed tip)を含んでいる。一実施例において、バックアップアンビルは平らな上面部を含んでいる。
【0008】
一実施例において、システムは、第1支持面と第2支持面の間に開口空間を含んでいる。一実施例において、摩擦撹拌溶接ツールはボビン型ツールであり、開口空間は、摩擦撹拌溶接中、その中をボビン型ツールの一部分が通過できるようにしている。
【0009】
他の態様において、摩擦撹拌溶接物を作製する方法を提供する。当該方法は、一実施例において、第1対向端部及び中心−中立軸を有する第1金属プレートをバックアップアンビルに対して第1の方向に拘束する第1の拘束ステップと、第2対向端部及び中心−中立軸を有する第2金属プレートをバックアップアンビルに対して第2の方向に拘束する第2の拘束ステップを含み、第2の拘束ステップの後、第1金属プレートの第1対向端部が第2金属プレートの第2対向端部に当接し、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようになし、摩擦撹拌溶接ツールにより、第1及び第2対向端部で第1金属プレートを第2金属プレートに溶接するステップを含んでおり、これによって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜する摩擦撹拌溶接物を作製する。
【0010】
拘束及び/又は溶接を行なう前に、プレートを調製することができる。一実施例において、方法は、拘束ステップの前に、金属プレートを調製することを含んでいる。調製ステップは、金属プレートの一端を機械加工して対向端部を作成することを含んでいる。機械加工ステップの後、対向端部は別の対向端部に当接することができるので、対向端部を含むプレートの中心−中立軸は互いに傾いている。方法は、一実施例において、他方の金属プレートの一端を機械加工して他方の対向端部を作成することを含んでいる。一実施例において、金属プレートの機械加工ステップは、金属プレートの上面部を機械加工してメイティング面(mating surface)を作成することを含んでいる。メイティング面は、摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である。一実施例において、メイティング面は第1のメイティング面であり、方法は、別の金属プレートの上面部を機械加工して、別のメイティング面を作成することを含んでいる。この別のメイティング面も、摩擦撹拌溶接ツールを当てられる面である。一実施例において、金属プレートが拘束された後、これらのメイティング面が略平らな表面を画定し、前記略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面となる。
【0011】
前述した本発明の様々な態様を組み合わせて、様々な摩擦撹拌溶接物が作製されることは理解されるであろう。本発明について、部分的には明細書に以下に記載されるこれらの並びにその他の態様、利点及び新規な特徴は、当該分野の専門家であれば、発明の実施に際して、以下の説明及び図示によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物の一実施例を示す斜視図である。
【0013】
【図1b】図1aの摩擦撹拌角溶接部の拡大図である。
【0014】
【図2】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの一実施例を模式的に示す斜視図である。
【0015】
【図3】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0016】
【図4】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0017】
【図5】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0018】
【図6】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
【図7】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0020】
【図8】摩擦撹拌溶接物を作製する方法の実施例を示すフローチャートである。
【0021】
【図9】金属プレートを調製する方法の実施例を示すフローチャートである。
【0022】
【図10】調製された様々な金属プレートを示す模式図である。
【0023】
【図11a】摩擦撹拌溶接物の上面を示す写真である。
【0024】
【図11b】摩擦撹拌溶接物の基底面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<詳細な説明>
本発明について、様々な態様、手法及び具体的表現の記載を補助するために、以下の限定されない定義がこの明細書の中で用いられる。
【0026】
「摩擦撹拌溶接(friction-stir welding」は、2以上の金属製品を互いに接合する固相接合プロセスを意味する。接合は、回転する摩擦撹拌溶接ツールを、接合する部位に圧入することによって行われ、ツールに近接した部位にある金属が可塑化される。可塑化された部位は一体化して冶金学的に健全な接合が得られる。
【0027】
「可塑化(plasticize)」は、金属を実質的に液化及び/又は溶融することなく金属を軟化させることを意味する。
【0028】
「摩擦撹拌溶接ツール(friction-stir welding tool)」は、摩擦撹拌溶接を行なうことができるあらゆる装置を意味し、例えば、公知のシングルプローブツール又はボビン型ツールがある。
【0029】
「摩擦撹拌角溶接部(friction-stir corner weld)」は、摩擦撹拌溶接ツールによって第1金属製品と第2金属製品を接合して得られる摩擦撹拌溶接部であって、溶接後、第1金属製品の中心−中立軸は、第2金属製品の中心−中立軸に対して傾斜している。摩擦撹拌角溶接部は上面(top-face side)を含むことができる。完全溶込み溶接部の場合、摩擦撹拌角溶接部は基底面(bottom-root side)を含むことができる。摩擦撹拌角溶接部は、一実施例において、第1金属製品と第2金属製品の中心−中立軸との交差角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である。
【0030】
「傾斜(transverse)」は、2つの平面が交差することによって形成される角度が非直交であることを意味し、約5°〜約85°及び約95°〜約175°の範囲の全ての角度を含んでいる。
【0031】
「中心−中立軸(central-neutral axis)」は、材料(例えば、プレート)の中心部を通って延びる軸を意味する。
【0032】
「金属プレート」は、約0.5インチ以上の厚さを有する金属製品を意味する。
【0033】
「FSW」は、摩擦撹拌溶接(friction-stir welding)を意味する。
【0034】
「摩擦撹拌溶接物(friction stir weldment)」又は「FS溶接物(FSWeldment)」は、摩擦撹拌によって作られた製品を意味する。FS溶接物は、摩擦撹拌角溶接によって第2金属プレートに接合された第1金属プレートを含むことができる。
【0035】
「アルミニウム合金」は、アルミニウムに少なくとも他の一種の金属が合金化されたアルミニウム金属を意味する。アルミニウム合金は、限定するものではないが、アルミニウム協会(Aluminum Association, Inc.)に規定される1XXX〜8XXX系アルミニウム合金を挙げることができる。
【0036】
「バックアップアンビル(Backup anvil)」は、FSWツールによって付与される鍛造力(forging force)(Fz)に少なくとも部分的に反作用するブロックを意味し、摩擦撹拌角溶接部を形成するのに適した表面を有している。
【0037】
「拘束部材(restraining member)」は、摩擦撹拌溶接中、ピース(例えば、金属プレート)を拘束するのに利用可能なあらゆる種類の装置又はシステム(例えば、クランプ)を意味する。拘束部材は、摩擦撹拌溶接されるピースを位置決めしてしっかりと保持するもので、摩擦撹拌溶接されるピースは、その当接する部位で移動及び/又は分離しない。
【0038】
「当接(abutment)」は、2つの物体間における接触を意味する。
【0039】
「Z力(Z-force)」又は「プランジ力(plunging force)」又は「Fz」は、摩擦撹拌溶接されるピース及びFSWツールの周りの溶接部位で略垂直方向に可塑化された材料に対して、摩擦撹拌溶接ツールから作用する力を意味する。
【0040】
「移動速度(speed of travel)」は、摩擦撹拌溶接における摩擦撹拌溶接ツールの前進速度を意味する。
【0041】
「X力(X-force)」又は「前進力(advancing force)」又は「Fx」は、摩擦撹拌溶接の際、摩擦撹拌溶接ツールをその移動速度でピースの中を移動させるのに必要な力を意味する。
【0042】
「継手効率(joint efficiency)」は、元のピースの最大抗張力に対する溶接継手の最大抗張力の比を意味する。
【0043】
「最大抗張力(ultimate tensile strength)」は、材料が耐えることができる最大応力を意味し、例えば、ASTM E8M-04, April 2004によって測定されることができる。
【0044】
添付の図面は、本発明の様々な実施例を例示する上で少なくとも手助けとなるものであり、それを参照して以下に詳細に説明する。摩擦撹拌溶接ツールによって作られたFS溶接物の一実施例を図1a及び図1bに示している。図示の実施例において、FS溶接物(100)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)を含んでいる。摩擦撹拌角溶接部(130)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)を結合する。摩擦撹拌角溶接部(130)は、摩擦撹拌溶接ツールによって作られる。図示の実施例において、第1金属プレート(110)の中心−中立軸(115)は、第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)に対して傾斜している。それゆえ、FS溶接物の摩擦撹拌角溶接部は、非直線的で非直交である。FS溶接物の作製については、以下で詳細に説明するように、FSWツールとバックアップアンビルを用いて、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の突合せ面(本明細書中では、対向端部(complementary ends)と称することもある)が接合される。
【0045】
摩擦撹拌角溶接部(130)は、以下に詳細に説明するように、摩擦撹拌溶接ツールによって作られる。これについては、摩擦撹拌角溶接部(130)は、一般的には、上面(132)を含んでおり、例えば完全溶込み摩擦撹拌溶接部の形成が完了したとき、基底面(134)を含むこともできる。図1bに示される実施例において、摩擦撹拌角溶接部(130)は、上面(132)と基底面(134)を含んでいる。第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は、互いに、非直交で非直線的な態様で接合され、角度(136)で示される摩擦撹拌角溶接部(130)が形成される。角度(136)は、1°〜89°の間の任意の角度又は179°〜91°の間の任意の角度であってよい。一実施例において、角度(136)は、約95°〜約175°である。他の実施例において、角度(136)は約5°〜約85°である。図示の実施例において、角度は約166°である。
【0046】
第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は、摩擦撹拌溶接によって互いに接合されるのに適したものであればどんな金属プレートでもよい。一実施例において、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は同じ金属である。他の実施例において、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は異なる金属である。一実施例において、金属プレートの少なくとも一方は、アルミニウム合金(例えば、アルミニウム協会に規定される2XXX、3XXX、5XXX、6XXX、または7XXX系アルミニウム合金)である。一実施例において、第1金属プレート(110)は、5XXX及び6XXX系アルミニウム合金のうちの1種であり、第2金属プレート(120)は、5XXX及び6XXX系アルミニウム合金のうちの1種である。
【0047】
FS溶接物(100)は、様々な用途に利用されることができる。例えば幾つか例を挙げると、軍事用(例えば、装甲車)、船舶用(例えば、船のハル)、エネルギー用(貯蔵タンク)に用いられることができる。FS溶接物(100)は、一般的には、約55%以上の継手効率(joint efficiency)を有しており、これは、合金の組合せ及び溶接前後における質別(tempers)に依存する。一実施例において、FS溶接物(100)は、一般的には約55%〜約90%の範囲の継手効率を有している。
【0048】
本発明はまた、FS溶接物(100)を作製するシステムを提供するもので、その一実施例を図2に示している。図示の実施例において、システム(150)は、バックアップアンビル(160)と、第1セットの拘束部材(170)(2つの側部拘束部材(175)及び2つの上面拘束部材(174)を含む)と、第2セットの拘束部材(180)(2つの側部拘束部材(185)及び2つの上面拘束部材(184)を含む)とを含んでいる。システムはまた、摩擦撹拌溶接ツール(190)(縮尺とおりではない)を含んでいる。
【0049】
側部拘束部材(175)(185)は、第1金属プレート(110)の遠位側部(112)及び第2金属プレート(120)の遠位側部(122)の少なくとも一部分を拘束する作用を有する。上面拘束部材(174)(184)は、第1金属プレート(110)の上面部(114)及び第2金属プレート(120)の上面部(124)の少なくとも一部分を拘束する作用を有する。側部拘束部材(175)(185)及び上面拘束部材(174)(184)は、第1金属プレート(110)及び第2金属プレート(120)を位置決めしてしっかりと保持できるように構成され、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)が夫々の近位側部(113)(123)の突合せ部で分離するのを防止し、摩擦撹拌溶接中に制御不能となって任意の方向に移動するのを防止する。側部拘束部材(175)(185)の各々は、選択的に位置決め可能な部材(176)(186)(例えば、ネジ)に相互連結可能であって、遠位側部(112)(122)に関する側部拘束部材(175)(185)の位置を選択的に決めることができる。選択的に位置決め可能な部材(176)(186)は、選択的に前進及び後退し、ヘッド(図3参照)の移動(例えば、回転)等による金属プレート(110)(120)との接触が円滑に行われる。
【0050】
図示の如く、1枚の金属プレートについて4つの拘束部材が用いられる。実際には、1枚の金属プレートについて、少なくとも1つ、好ましくは複数の拘束部材が用いられる。拘束部材の種類と個数は、例えば、摩擦撹拌溶接される金属プレートの形状及び寸法(例えば、長さ、幅及び/又は厚さ)によって決められる。図示の如く、第1セット及び第2セットの拘束部材(170)(180)は、2つの上面クランプ(174)(184)と、2つの側部クランプ(175)(185)を含んでいる。しかしながら、他の適当な拘束部材を用いることもできる。
【0051】
バックアップアンビル(160)は、第1面(162)と第2面(164)を含んでいる。第1面(162)は、第2面(164)と対向しており、第2面(164)の上軸(165)に対して傾斜する上軸(163)を有している。第1面(162)は、摩擦撹拌溶接中、第1金属プレート(110)を支持する作用を有し、第2面(164)は、摩擦撹拌溶接中、第2金属プレート(120)を支持する作用を有する。バックアップアンビル(160)は、第1面(162)の上軸(163)と第2面(164)の上軸(165)が交差して画定される尖端部(167)を含むことができる。以下に詳細に説明するように、他の実施例において、バックアップアンビル(160)は平らな上面部を含むことができる。バックアップアンビルは、FSWツールによってもたらされる鍛造力に反作用するのに十分に強固な材料からなり、この材料は、例えば、金属(例えば、スチール、鉄等)、セラミック又は他の適当に強固な材料である。
【0052】
以下に詳細に説明するように、摩擦撹拌角溶接部の製作を円滑に行なえるようにするために、溶接が行われる前に、金属プレート(110)(120)の少なくとも一方の1又は複数の表面を例えば機械加工することによって、機械加工表面(116)(126)が作られる。機械加工後(必要に応じて)、第1及び第2金属プレートは、バックアップアンビル(160)の上に置かれる。図示の実施例において、第1金属プレート(110)は、その中心−中立軸(115)が、アンビル(160)の第1面(162)の上軸(163)と一致する向きである(例えば、平行であるか又は僅かに上軸(163)から外れる程度)。第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)は、アンビル(160)の第2面(164)の上軸(165)と一致する。従って、摩擦撹拌溶接の場合の位置と同じように、第1金属プレート(110)の中心−中立軸(115)は第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)に対して傾斜している。第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の近位側部(113)(123)は、夫々、互いに接近しており(例えば、当接している)、これにより、摩擦撹拌溶接ツール(190)によって摩擦撹拌溶接部(130)(図2には示されていない)の形成を容易に行なうことができる。このようにして、摩擦撹拌角溶接部を有するFS溶接物が作られる。
【0053】
実施に際し、第1セットの拘束部材(170)は、一方のプレート(120)を拘束するために配置され、第2セットの拘束部材(180)は、他方の金属プレート(110)を拘束するために配置される。次に、摩擦撹拌溶接ツール(190)のピン(192)が第1金属プレート(110)の近位側部(113)と第2金属プレート(120)の近位側部(123)の間に押し込まれ(plunged)、摩擦撹拌角溶接部(130)が作られ、このようにして、FS溶接物が作られる。摩擦撹拌溶接のパラメータは用途に応じて変更されることができる。一実施例において、従来の摩擦撹拌溶接工程では、約13,000 lbf以下のZ力を利用し、約2,000 lbf以下のX力を生成する。関連実施例において、摩擦撹拌溶接ツールの回転数は約250 RPM以下であり、移動速度は約6インチ/分以下である。
【0054】
ボビン型の摩擦撹拌溶接ツール(以下で説明する)に関しては、溶接工程ではZ力をする。このZ力は、摩擦撹拌溶接ツールの2箇所の肩部の間の摩擦撹拌溶接領域における部分及び可塑化された材料に加えられる力で、約1,000 lbf以下であり、約1,300 lbf以下のX力を生成する。この実施例において、回転数は約225 RPM以下であり、移動速度は約4インチ/分以下である。
【0055】
上記の如く、尖端部(167)を含むバックアップアンビル(160)は、同じような尖った底部溶接面(例えば、第1及び第2金属面(162)(164)の上軸(top axis))が、近位側部(113)(123)の近傍位置又は境界面で交差する)を有する摩擦撹拌角溶接部(130)の形成を容易に行なうことができる。他の実施例において、平らな上面を有するバックアップアンビルは、平らな底部溶接面を有する摩擦撹拌角溶接部の形成を容易に行なうことができる。例えば、図3を参照すると、システム(155)は、第1面(162')と第2面(164')を有するバックアップアンビル(160')を含んでいるが、第1及び第2面(162')(164')の上軸(図示せず)は、第1及び第2金属プレート(110)(120)の近位側部(113)(123)間の境界面では交差しない。このように、平らな上面部(168)はバックアップアンビル(160')に含められることもできる。平らな上面部(168)は、第1及び第2金属プレート(110)(120)の少なくとも一方の底面と同一平面にすることにより、摩擦撹拌溶接中に底面を支持することができる。このようにして、平らな表面を有する摩擦撹拌角溶接面(例えば、内面又は外面)を有するFS溶接物を作ることができる。
【0056】
他の形状のバックアップアンビルを用いることもできる。例えば、図4を参照すると、バックアップアンビル(160'')は、金属プレート(110)(120)の上面部を支持するのに用いられ、空間(199)は金属プレートの下方に含まれており、そこを通る摩擦撹拌溶接ツール(190)の動きを円滑に行なうことができる。図示の実施例において、アンビルは金属プレート(110)(120)と同一平面にあり、プレート(110)(120)を安定化し拘束する。金属プレート(169)を用いることにより、溶接ゾーンの近傍でアンビルと金属プレート(110)(120)の接触を容易に行なうことができる。この実施例では、上クランプは必要でない。図示の実施例において、従来の拘束装置(197)(例えば、真空チャンネルとガスケットが交互にある)をアンビル(160)の表面に埋設することにより、プレート(110)(120)の拘束を容易に行なえる。摩擦撹拌溶接ツール(190)はまた、適当な肩部(193)を設けることにより、摩擦撹拌角溶接部の形成作業中における金属プレート(110)(120)の当接を向上させることができる。
【0057】
図5に示す他の実施例のバックアップアンビル(160''')は、内側に拘束機構を用いることなく金属プレート(110)(120)を両方とも支持することができる。この実施例において、アンビル自体は、溶接物の形状を対称にすることによってプレートを支持する作用を有する。第1及び第2クランプ(178)(188)を用いることにより、アンビル(160''')からの作用方向とは反対の方向から、第1及び第2金属プレート(110)(120)を拘束する。図4に示されるように、摩擦撹拌溶接ツール(190)は、適当な肩部(193)を設けることにより、金属プレート(110)(120)との当接が高められ、摩擦撹拌角溶接部の形成が促進される。図示の実施例において、摩擦撹拌溶接ツール(190)のピン(192)は、図2、3及び4に示されるものよりも細長い。このピン(192)は、例えば、より深い溶接部が必要なときに用いられことができる。
【0058】
上記実施例では、摩擦撹拌角溶接部を形成するのに、従来の摩擦撹拌溶接ツールを用いている。他の実施例において、摩擦撹拌角溶接部を形成するのにボビン型摩擦撹拌溶接ツールを用いることができる。例えば、図6を参照すると、システム(250)は、第1部分(262)及び第2部分(264)を有するバックアップアンビル(260)を含んでいる。第1部分(262)は、ボビン型摩擦撹拌溶接ツール(290)(縮尺とおりではない)によって摩擦撹拌溶接されるべき第1金属プレート(110)を少なくとも部分的に支持するための第1面(266)を含んでいる。第1部分(262)は、上軸(263)をさらに含んでいる。第2部分(264)は、第2金属プレート(120)を少なくとも部分的に支持するための第2面(267)を含んでいる。第2部分(264)は、上軸(265)をさらに含んでいる。上軸(263)と上軸(265)の交差部は、非直線的で非直交であるので、摩擦撹拌角溶接部の形成を容易に行なうことができる。第1部分(262)と第2部分(264)は拘束されているので、摩擦撹拌溶接中は移動することができない。例えば、第1部分(262)と第2部分(264)は、下にあるフレームにボルト留めされるか、及び/又は拘束部材は空間(299)内にあるから、第1部分(262)と第2部分(264)は、溶接中、互いに離れる方向に移動することはできない。バックアップアンビル(260)は、開口空間(299)をさらに含み、その中をボビンツール(299)が移動することができる。第1セットの拘束部材(170)と第2セットの拘束部材(180)を用いることにより、摩擦撹拌溶接中、金属プレート(110)(120)を拘束することができる。
【0059】
システム(250)は、図2を参照して説明したシステム(150)と同様な作用を有するが、システム(150)と異なるのは、ボビン型摩擦撹拌溶接ツール(290)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の突合せ端部(113)(123)によって形成される継手の中に入り、その中を移動することである。ボビン型システム(250)に関しては、摩擦撹拌角溶接部の中心面は、ボビンツール(290)の溶接ピンの中心線と略平行であってよいが、第1及び第2金属プレート(110)(120)の中心−中立軸(115)(125)は、バックアップアンビル(260)の形状により、互いに傾斜している。このように、摩擦撹拌角溶接部を有するFS溶接物は、ボビン型摩擦撹拌溶接ツールによって作られることができる。図6に示される如く、バックアップアンビルは、2つの分離したピースに分割されることができる。他の実施例において、バックアップアンビル(260')は単一材料であってよく、開口空間(299')は、図7に示される如く、前記材料内に含まれることができる。
【0060】
本発明はまた、溶接された金属プレートを作製する方法を提供するもので、その一実施例が図8に示されている。図示の実施例において、当該方法は、第1及び/又は第2金属プレートをバックアップアンビル(820)に拘束するステップと、摩擦撹拌溶接装置(830)により第1金属プレートを第2金属プレートに溶接するステップを含んでいる。方法は、所望により、第1及び/又は第2金属プレート(810)を、拘束ステップ(820)及び/又は溶接ステップ(830)のために調製するステップを含むことができる。
【0061】
第1及び/又は第2金属プレートを調製するステップ(810)に関しては、図9を参照すると、金属プレートは、第1及び/又は第2金属プレート(812)に1又は複数の対向端部を作成することによって調製されることができる。一手法として、前記端部は、公知の機械加工装置/プロセスによって機械加工される(813)。第1及び/又は第2金属プレートはまた、第1及び/又は第2金属プレート(814)上に1又は複数のメイティング面を作成することによって調製される。一手法において、メイティング面は、公知の機械加工装置/プロセス等の機械加工(813)によって作られる。一実施例において、メイティング面は略平らな表面(816)であって、これにより、摩擦撹拌溶接ツールのピンの押付けが容易に行われる。なお、メイティング面は対向端部を作成する前に作られることもできるし、対向端部とメイティング面を同時に作成することもできる。
【0062】
FS溶接物の形成を容易にするための対向端部及びメイティング面を作成する方法の一例は図10に示されている。図示の実施例において、基部金属プレート(1000)の第1端部(1005)を機械加工して、金属プレート(1010)の対向端部(1015)が作成される。この対向端部(1015)は、摩擦撹拌溶接物の摩擦撹拌角溶接部を適当な角度にするために、適当なテーパ形状に機械加工されることができる。メイティング面は、プレート表面と摩擦撹拌ツールとの接触を向上させることができる。対向端部(1015)とメイティング面(1025)を有する金属プレート(1020)が、対向端部(2015)とメイティング面(2025)を有する別の金属プレート(2020)に当接するとき、対向端部(1015)(2015)は略同一平面で互いに当接し、メイティング面(1025)(2025)は略平らな面(例えば、平らな上面及び/又は底面)を形成する。略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールのピンとの接触を良好にすることができる。ボビン型ツールを用いるとき、メイティング面は金属プレートの上面及び底面に形成される。1又は複数のプレートの他方の面を機械加工することにより、FS溶接物の形成が容易に行なえる。例えば、1又は複数のプレートの境界面となる上面、底面又は側面を機械加工することにより、バックアップアンビル及び/又は拘束部材との接触が良好になる。一手法において、プレートの遠位側部が機械加工されると、側部拘束部材と金属プレートの遠位側部との接触が向上する(例えば、図3参照)。
【0063】
第1及び第2金属プレートをアンビルに拘束するステップ(820)に関して、図8を再び参照すると、例えば前述の如くの適当な要領にて、第1金属プレートはアンビルの第1面に拘束され、第2金属プレートはアンビルの第2面に拘束される。一実施例において、少なくとも1つの拘束部材を用いて、第1及び/又は第2金属プレートをアンビルに拘束することができる。拘束ステップ(820)では、一般的に、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している(822)。このようにして、溶接ステップが完了すると(830)、後記する如く、金属プレートは、摩擦撹拌溶接物の中で互いに傾斜することになる。
【0064】
溶接ステップ(830)は、あらゆる公知の摩擦撹拌溶接装置によって行なうことができる。一実施例において、公知の摩擦撹拌溶接装置は、第1金属プレートと第2金属プレートの当接端部の間に挿入され、前記当接端部を可塑化して、摩擦撹拌角溶接部が作成される。
【実施例】
【0065】
<実施例1> アルミニウム合金プレートの使用によるFS溶接物の作製
【0066】
(a) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは6013−T6系アルミニウム合金で厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6系アルミニウム合金で厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度5インチ/分、ツール回転速度224RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約11,100lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,100lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。摩擦撹拌角溶接部は、図11a及び図11bに示される如く、上面と基底面を有している。FSW溶接物は、内角が約166°である。
【0067】
(b) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチである。両プレートの当接端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度140RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約13,100lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,200lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0068】
(c) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6プレートで厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度140RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約12,500lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,000lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0069】
<実施例2> ボビン型摩擦撹拌溶接ツールの使用による摩擦撹拌角溶接部の形成
【0070】
(a) 図6と同様なシステムを準備する。第1プレートは6013−T6のプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6のプレートで厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。ボビン型摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度224RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約1,00lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が1,300lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0071】
本発明の様々な実施例を詳細に説明したが、当該分野の専門家であれば、これら実施例の変形及び適用は明らかであろう。なお、そのような変形及び適用は、本発明の精神及び範囲内であることは理解されるべきである。
【背景技術】
【0001】
摩擦撹拌溶接は、一般的には、2以上の金属ピースを、溶融を伴うことなく接合する溶接方法であり、主として、溶接熱による金属特性の変化が最小であることが必要とされる溶接仕事に適用される。プロセスは、回転ツールを、溶接が所望される位置で2以上の金属ピースの中に圧入することを含んでいる。摩擦による熱及び変形により、回転ツール近傍の金属が可塑化する。可塑化された部位は、融合して健全な金属接合が形成される。
【発明の概要】
【0002】
広義において、本発明は、非直線的で非直交である摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物並びに該溶接物を製造するシステム及び方法に関する。摩擦撹拌溶接物は、非直線的で非直交の摩擦撹拌角溶接部の存在により、様々な産業用途に適用される。
【0003】
一態様において、摩擦撹拌溶接物を含む金属製品を提供するものである。一態様において、製品は、第1中心−中立軸を有する第1金属プレートと、第2中心−中立軸を有する第2金属プレートと、第1金属プレート及び第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、を含んでおり、第1金属プレートの第1中心−中立軸は、第2金属プレートの第2中心−中立軸に対して傾斜している。それゆえ、金属製品は、角溶接されたものと考えられる。一実施例において、第1中心−中立軸と第2中心−中立軸との交差により、約5°〜約85°又は約95°〜約175°の角度が画定される。一実施例において、角溶接部は、上面と基底面を有しており、基底面に近い角溶接部の角度は約5°〜約85°又は約95°〜約175°である。
【0004】
金属プレートの材料は、摩擦撹拌溶接ツールによって溶接されるのに適した材料であれば何でもよい。一実施例において、第1金属プレートは第1アルミニウム合金を含んでおり、第2金属プレートは第2アルミニウム合金を含んでいる。一実施例において、第1アルミニウム合金は第2アルミニウム合金とは異なる(例えば、異なる例を2つを挙げると、組成又は質別(temper)である)。一実施例において、第1アルミニウム合金は、第2アルミニウムと同じである。
【0005】
他の態様において、摩擦撹拌溶接物を作製するシステムを提供する。一手法において、システムは、第1支持面及び第2支持面を有するバックアップアンビルと、第1金属プレートをバックアップアンビルの第1支持面上に拘束することができる第1セットの拘束部材と、第2金属プレートをバックアップアンビルの第2支持面上に拘束することができる第2セットの拘束部材と、第1金属プレートを第2金属プレートに溶接して、角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物を作成できる摩擦撹拌溶接ツールと、を含んでいる。この態様では、第2支持面は、一般的には、第1支持面に対向している。第1支持面は、第1金属プレートを受けて支持する作用を有し、第2支持面は、一般的には、第2金属プレートを受けて支持する作用を有する。支持面の向きは、溶接後、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようにしている。
【0006】
拘束部材は、溶接中、金属プレートの移動を制限できるあらゆる適当な向きに構成される。一実施例において、第1セット又は第2セットの拘束部材の何れか一方が金属プレートの側部を制限的に拘束することができる。関連する実施例において、第1セット及び第2セットの拘束部材の他方が金属プレートの上面部を拘束することができる。
【0007】
バックアップアンビルは、溶接中、金属プレートを支持できるように構成されており、溶接後、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している。一実施例において、バックアップアンビルは尖端部(pointed tip)を含んでいる。一実施例において、バックアップアンビルは平らな上面部を含んでいる。
【0008】
一実施例において、システムは、第1支持面と第2支持面の間に開口空間を含んでいる。一実施例において、摩擦撹拌溶接ツールはボビン型ツールであり、開口空間は、摩擦撹拌溶接中、その中をボビン型ツールの一部分が通過できるようにしている。
【0009】
他の態様において、摩擦撹拌溶接物を作製する方法を提供する。当該方法は、一実施例において、第1対向端部及び中心−中立軸を有する第1金属プレートをバックアップアンビルに対して第1の方向に拘束する第1の拘束ステップと、第2対向端部及び中心−中立軸を有する第2金属プレートをバックアップアンビルに対して第2の方向に拘束する第2の拘束ステップを含み、第2の拘束ステップの後、第1金属プレートの第1対向端部が第2金属プレートの第2対向端部に当接し、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようになし、摩擦撹拌溶接ツールにより、第1及び第2対向端部で第1金属プレートを第2金属プレートに溶接するステップを含んでおり、これによって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜する摩擦撹拌溶接物を作製する。
【0010】
拘束及び/又は溶接を行なう前に、プレートを調製することができる。一実施例において、方法は、拘束ステップの前に、金属プレートを調製することを含んでいる。調製ステップは、金属プレートの一端を機械加工して対向端部を作成することを含んでいる。機械加工ステップの後、対向端部は別の対向端部に当接することができるので、対向端部を含むプレートの中心−中立軸は互いに傾いている。方法は、一実施例において、他方の金属プレートの一端を機械加工して他方の対向端部を作成することを含んでいる。一実施例において、金属プレートの機械加工ステップは、金属プレートの上面部を機械加工してメイティング面(mating surface)を作成することを含んでいる。メイティング面は、摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である。一実施例において、メイティング面は第1のメイティング面であり、方法は、別の金属プレートの上面部を機械加工して、別のメイティング面を作成することを含んでいる。この別のメイティング面も、摩擦撹拌溶接ツールを当てられる面である。一実施例において、金属プレートが拘束された後、これらのメイティング面が略平らな表面を画定し、前記略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面となる。
【0011】
前述した本発明の様々な態様を組み合わせて、様々な摩擦撹拌溶接物が作製されることは理解されるであろう。本発明について、部分的には明細書に以下に記載されるこれらの並びにその他の態様、利点及び新規な特徴は、当該分野の専門家であれば、発明の実施に際して、以下の説明及び図示によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物の一実施例を示す斜視図である。
【0013】
【図1b】図1aの摩擦撹拌角溶接部の拡大図である。
【0014】
【図2】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの一実施例を模式的に示す斜視図である。
【0015】
【図3】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0016】
【図4】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0017】
【図5】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0018】
【図6】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
【図7】摩擦撹拌溶接物を作製するシステムの他の実施例を模式的に示す断面図である。
【0020】
【図8】摩擦撹拌溶接物を作製する方法の実施例を示すフローチャートである。
【0021】
【図9】金属プレートを調製する方法の実施例を示すフローチャートである。
【0022】
【図10】調製された様々な金属プレートを示す模式図である。
【0023】
【図11a】摩擦撹拌溶接物の上面を示す写真である。
【0024】
【図11b】摩擦撹拌溶接物の基底面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<詳細な説明>
本発明について、様々な態様、手法及び具体的表現の記載を補助するために、以下の限定されない定義がこの明細書の中で用いられる。
【0026】
「摩擦撹拌溶接(friction-stir welding」は、2以上の金属製品を互いに接合する固相接合プロセスを意味する。接合は、回転する摩擦撹拌溶接ツールを、接合する部位に圧入することによって行われ、ツールに近接した部位にある金属が可塑化される。可塑化された部位は一体化して冶金学的に健全な接合が得られる。
【0027】
「可塑化(plasticize)」は、金属を実質的に液化及び/又は溶融することなく金属を軟化させることを意味する。
【0028】
「摩擦撹拌溶接ツール(friction-stir welding tool)」は、摩擦撹拌溶接を行なうことができるあらゆる装置を意味し、例えば、公知のシングルプローブツール又はボビン型ツールがある。
【0029】
「摩擦撹拌角溶接部(friction-stir corner weld)」は、摩擦撹拌溶接ツールによって第1金属製品と第2金属製品を接合して得られる摩擦撹拌溶接部であって、溶接後、第1金属製品の中心−中立軸は、第2金属製品の中心−中立軸に対して傾斜している。摩擦撹拌角溶接部は上面(top-face side)を含むことができる。完全溶込み溶接部の場合、摩擦撹拌角溶接部は基底面(bottom-root side)を含むことができる。摩擦撹拌角溶接部は、一実施例において、第1金属製品と第2金属製品の中心−中立軸との交差角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である。
【0030】
「傾斜(transverse)」は、2つの平面が交差することによって形成される角度が非直交であることを意味し、約5°〜約85°及び約95°〜約175°の範囲の全ての角度を含んでいる。
【0031】
「中心−中立軸(central-neutral axis)」は、材料(例えば、プレート)の中心部を通って延びる軸を意味する。
【0032】
「金属プレート」は、約0.5インチ以上の厚さを有する金属製品を意味する。
【0033】
「FSW」は、摩擦撹拌溶接(friction-stir welding)を意味する。
【0034】
「摩擦撹拌溶接物(friction stir weldment)」又は「FS溶接物(FSWeldment)」は、摩擦撹拌によって作られた製品を意味する。FS溶接物は、摩擦撹拌角溶接によって第2金属プレートに接合された第1金属プレートを含むことができる。
【0035】
「アルミニウム合金」は、アルミニウムに少なくとも他の一種の金属が合金化されたアルミニウム金属を意味する。アルミニウム合金は、限定するものではないが、アルミニウム協会(Aluminum Association, Inc.)に規定される1XXX〜8XXX系アルミニウム合金を挙げることができる。
【0036】
「バックアップアンビル(Backup anvil)」は、FSWツールによって付与される鍛造力(forging force)(Fz)に少なくとも部分的に反作用するブロックを意味し、摩擦撹拌角溶接部を形成するのに適した表面を有している。
【0037】
「拘束部材(restraining member)」は、摩擦撹拌溶接中、ピース(例えば、金属プレート)を拘束するのに利用可能なあらゆる種類の装置又はシステム(例えば、クランプ)を意味する。拘束部材は、摩擦撹拌溶接されるピースを位置決めしてしっかりと保持するもので、摩擦撹拌溶接されるピースは、その当接する部位で移動及び/又は分離しない。
【0038】
「当接(abutment)」は、2つの物体間における接触を意味する。
【0039】
「Z力(Z-force)」又は「プランジ力(plunging force)」又は「Fz」は、摩擦撹拌溶接されるピース及びFSWツールの周りの溶接部位で略垂直方向に可塑化された材料に対して、摩擦撹拌溶接ツールから作用する力を意味する。
【0040】
「移動速度(speed of travel)」は、摩擦撹拌溶接における摩擦撹拌溶接ツールの前進速度を意味する。
【0041】
「X力(X-force)」又は「前進力(advancing force)」又は「Fx」は、摩擦撹拌溶接の際、摩擦撹拌溶接ツールをその移動速度でピースの中を移動させるのに必要な力を意味する。
【0042】
「継手効率(joint efficiency)」は、元のピースの最大抗張力に対する溶接継手の最大抗張力の比を意味する。
【0043】
「最大抗張力(ultimate tensile strength)」は、材料が耐えることができる最大応力を意味し、例えば、ASTM E8M-04, April 2004によって測定されることができる。
【0044】
添付の図面は、本発明の様々な実施例を例示する上で少なくとも手助けとなるものであり、それを参照して以下に詳細に説明する。摩擦撹拌溶接ツールによって作られたFS溶接物の一実施例を図1a及び図1bに示している。図示の実施例において、FS溶接物(100)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)を含んでいる。摩擦撹拌角溶接部(130)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)を結合する。摩擦撹拌角溶接部(130)は、摩擦撹拌溶接ツールによって作られる。図示の実施例において、第1金属プレート(110)の中心−中立軸(115)は、第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)に対して傾斜している。それゆえ、FS溶接物の摩擦撹拌角溶接部は、非直線的で非直交である。FS溶接物の作製については、以下で詳細に説明するように、FSWツールとバックアップアンビルを用いて、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の突合せ面(本明細書中では、対向端部(complementary ends)と称することもある)が接合される。
【0045】
摩擦撹拌角溶接部(130)は、以下に詳細に説明するように、摩擦撹拌溶接ツールによって作られる。これについては、摩擦撹拌角溶接部(130)は、一般的には、上面(132)を含んでおり、例えば完全溶込み摩擦撹拌溶接部の形成が完了したとき、基底面(134)を含むこともできる。図1bに示される実施例において、摩擦撹拌角溶接部(130)は、上面(132)と基底面(134)を含んでいる。第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は、互いに、非直交で非直線的な態様で接合され、角度(136)で示される摩擦撹拌角溶接部(130)が形成される。角度(136)は、1°〜89°の間の任意の角度又は179°〜91°の間の任意の角度であってよい。一実施例において、角度(136)は、約95°〜約175°である。他の実施例において、角度(136)は約5°〜約85°である。図示の実施例において、角度は約166°である。
【0046】
第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は、摩擦撹拌溶接によって互いに接合されるのに適したものであればどんな金属プレートでもよい。一実施例において、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は同じ金属である。他の実施例において、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)は異なる金属である。一実施例において、金属プレートの少なくとも一方は、アルミニウム合金(例えば、アルミニウム協会に規定される2XXX、3XXX、5XXX、6XXX、または7XXX系アルミニウム合金)である。一実施例において、第1金属プレート(110)は、5XXX及び6XXX系アルミニウム合金のうちの1種であり、第2金属プレート(120)は、5XXX及び6XXX系アルミニウム合金のうちの1種である。
【0047】
FS溶接物(100)は、様々な用途に利用されることができる。例えば幾つか例を挙げると、軍事用(例えば、装甲車)、船舶用(例えば、船のハル)、エネルギー用(貯蔵タンク)に用いられることができる。FS溶接物(100)は、一般的には、約55%以上の継手効率(joint efficiency)を有しており、これは、合金の組合せ及び溶接前後における質別(tempers)に依存する。一実施例において、FS溶接物(100)は、一般的には約55%〜約90%の範囲の継手効率を有している。
【0048】
本発明はまた、FS溶接物(100)を作製するシステムを提供するもので、その一実施例を図2に示している。図示の実施例において、システム(150)は、バックアップアンビル(160)と、第1セットの拘束部材(170)(2つの側部拘束部材(175)及び2つの上面拘束部材(174)を含む)と、第2セットの拘束部材(180)(2つの側部拘束部材(185)及び2つの上面拘束部材(184)を含む)とを含んでいる。システムはまた、摩擦撹拌溶接ツール(190)(縮尺とおりではない)を含んでいる。
【0049】
側部拘束部材(175)(185)は、第1金属プレート(110)の遠位側部(112)及び第2金属プレート(120)の遠位側部(122)の少なくとも一部分を拘束する作用を有する。上面拘束部材(174)(184)は、第1金属プレート(110)の上面部(114)及び第2金属プレート(120)の上面部(124)の少なくとも一部分を拘束する作用を有する。側部拘束部材(175)(185)及び上面拘束部材(174)(184)は、第1金属プレート(110)及び第2金属プレート(120)を位置決めしてしっかりと保持できるように構成され、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)が夫々の近位側部(113)(123)の突合せ部で分離するのを防止し、摩擦撹拌溶接中に制御不能となって任意の方向に移動するのを防止する。側部拘束部材(175)(185)の各々は、選択的に位置決め可能な部材(176)(186)(例えば、ネジ)に相互連結可能であって、遠位側部(112)(122)に関する側部拘束部材(175)(185)の位置を選択的に決めることができる。選択的に位置決め可能な部材(176)(186)は、選択的に前進及び後退し、ヘッド(図3参照)の移動(例えば、回転)等による金属プレート(110)(120)との接触が円滑に行われる。
【0050】
図示の如く、1枚の金属プレートについて4つの拘束部材が用いられる。実際には、1枚の金属プレートについて、少なくとも1つ、好ましくは複数の拘束部材が用いられる。拘束部材の種類と個数は、例えば、摩擦撹拌溶接される金属プレートの形状及び寸法(例えば、長さ、幅及び/又は厚さ)によって決められる。図示の如く、第1セット及び第2セットの拘束部材(170)(180)は、2つの上面クランプ(174)(184)と、2つの側部クランプ(175)(185)を含んでいる。しかしながら、他の適当な拘束部材を用いることもできる。
【0051】
バックアップアンビル(160)は、第1面(162)と第2面(164)を含んでいる。第1面(162)は、第2面(164)と対向しており、第2面(164)の上軸(165)に対して傾斜する上軸(163)を有している。第1面(162)は、摩擦撹拌溶接中、第1金属プレート(110)を支持する作用を有し、第2面(164)は、摩擦撹拌溶接中、第2金属プレート(120)を支持する作用を有する。バックアップアンビル(160)は、第1面(162)の上軸(163)と第2面(164)の上軸(165)が交差して画定される尖端部(167)を含むことができる。以下に詳細に説明するように、他の実施例において、バックアップアンビル(160)は平らな上面部を含むことができる。バックアップアンビルは、FSWツールによってもたらされる鍛造力に反作用するのに十分に強固な材料からなり、この材料は、例えば、金属(例えば、スチール、鉄等)、セラミック又は他の適当に強固な材料である。
【0052】
以下に詳細に説明するように、摩擦撹拌角溶接部の製作を円滑に行なえるようにするために、溶接が行われる前に、金属プレート(110)(120)の少なくとも一方の1又は複数の表面を例えば機械加工することによって、機械加工表面(116)(126)が作られる。機械加工後(必要に応じて)、第1及び第2金属プレートは、バックアップアンビル(160)の上に置かれる。図示の実施例において、第1金属プレート(110)は、その中心−中立軸(115)が、アンビル(160)の第1面(162)の上軸(163)と一致する向きである(例えば、平行であるか又は僅かに上軸(163)から外れる程度)。第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)は、アンビル(160)の第2面(164)の上軸(165)と一致する。従って、摩擦撹拌溶接の場合の位置と同じように、第1金属プレート(110)の中心−中立軸(115)は第2金属プレート(120)の中心−中立軸(125)に対して傾斜している。第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の近位側部(113)(123)は、夫々、互いに接近しており(例えば、当接している)、これにより、摩擦撹拌溶接ツール(190)によって摩擦撹拌溶接部(130)(図2には示されていない)の形成を容易に行なうことができる。このようにして、摩擦撹拌角溶接部を有するFS溶接物が作られる。
【0053】
実施に際し、第1セットの拘束部材(170)は、一方のプレート(120)を拘束するために配置され、第2セットの拘束部材(180)は、他方の金属プレート(110)を拘束するために配置される。次に、摩擦撹拌溶接ツール(190)のピン(192)が第1金属プレート(110)の近位側部(113)と第2金属プレート(120)の近位側部(123)の間に押し込まれ(plunged)、摩擦撹拌角溶接部(130)が作られ、このようにして、FS溶接物が作られる。摩擦撹拌溶接のパラメータは用途に応じて変更されることができる。一実施例において、従来の摩擦撹拌溶接工程では、約13,000 lbf以下のZ力を利用し、約2,000 lbf以下のX力を生成する。関連実施例において、摩擦撹拌溶接ツールの回転数は約250 RPM以下であり、移動速度は約6インチ/分以下である。
【0054】
ボビン型の摩擦撹拌溶接ツール(以下で説明する)に関しては、溶接工程ではZ力をする。このZ力は、摩擦撹拌溶接ツールの2箇所の肩部の間の摩擦撹拌溶接領域における部分及び可塑化された材料に加えられる力で、約1,000 lbf以下であり、約1,300 lbf以下のX力を生成する。この実施例において、回転数は約225 RPM以下であり、移動速度は約4インチ/分以下である。
【0055】
上記の如く、尖端部(167)を含むバックアップアンビル(160)は、同じような尖った底部溶接面(例えば、第1及び第2金属面(162)(164)の上軸(top axis))が、近位側部(113)(123)の近傍位置又は境界面で交差する)を有する摩擦撹拌角溶接部(130)の形成を容易に行なうことができる。他の実施例において、平らな上面を有するバックアップアンビルは、平らな底部溶接面を有する摩擦撹拌角溶接部の形成を容易に行なうことができる。例えば、図3を参照すると、システム(155)は、第1面(162')と第2面(164')を有するバックアップアンビル(160')を含んでいるが、第1及び第2面(162')(164')の上軸(図示せず)は、第1及び第2金属プレート(110)(120)の近位側部(113)(123)間の境界面では交差しない。このように、平らな上面部(168)はバックアップアンビル(160')に含められることもできる。平らな上面部(168)は、第1及び第2金属プレート(110)(120)の少なくとも一方の底面と同一平面にすることにより、摩擦撹拌溶接中に底面を支持することができる。このようにして、平らな表面を有する摩擦撹拌角溶接面(例えば、内面又は外面)を有するFS溶接物を作ることができる。
【0056】
他の形状のバックアップアンビルを用いることもできる。例えば、図4を参照すると、バックアップアンビル(160'')は、金属プレート(110)(120)の上面部を支持するのに用いられ、空間(199)は金属プレートの下方に含まれており、そこを通る摩擦撹拌溶接ツール(190)の動きを円滑に行なうことができる。図示の実施例において、アンビルは金属プレート(110)(120)と同一平面にあり、プレート(110)(120)を安定化し拘束する。金属プレート(169)を用いることにより、溶接ゾーンの近傍でアンビルと金属プレート(110)(120)の接触を容易に行なうことができる。この実施例では、上クランプは必要でない。図示の実施例において、従来の拘束装置(197)(例えば、真空チャンネルとガスケットが交互にある)をアンビル(160)の表面に埋設することにより、プレート(110)(120)の拘束を容易に行なえる。摩擦撹拌溶接ツール(190)はまた、適当な肩部(193)を設けることにより、摩擦撹拌角溶接部の形成作業中における金属プレート(110)(120)の当接を向上させることができる。
【0057】
図5に示す他の実施例のバックアップアンビル(160''')は、内側に拘束機構を用いることなく金属プレート(110)(120)を両方とも支持することができる。この実施例において、アンビル自体は、溶接物の形状を対称にすることによってプレートを支持する作用を有する。第1及び第2クランプ(178)(188)を用いることにより、アンビル(160''')からの作用方向とは反対の方向から、第1及び第2金属プレート(110)(120)を拘束する。図4に示されるように、摩擦撹拌溶接ツール(190)は、適当な肩部(193)を設けることにより、金属プレート(110)(120)との当接が高められ、摩擦撹拌角溶接部の形成が促進される。図示の実施例において、摩擦撹拌溶接ツール(190)のピン(192)は、図2、3及び4に示されるものよりも細長い。このピン(192)は、例えば、より深い溶接部が必要なときに用いられことができる。
【0058】
上記実施例では、摩擦撹拌角溶接部を形成するのに、従来の摩擦撹拌溶接ツールを用いている。他の実施例において、摩擦撹拌角溶接部を形成するのにボビン型摩擦撹拌溶接ツールを用いることができる。例えば、図6を参照すると、システム(250)は、第1部分(262)及び第2部分(264)を有するバックアップアンビル(260)を含んでいる。第1部分(262)は、ボビン型摩擦撹拌溶接ツール(290)(縮尺とおりではない)によって摩擦撹拌溶接されるべき第1金属プレート(110)を少なくとも部分的に支持するための第1面(266)を含んでいる。第1部分(262)は、上軸(263)をさらに含んでいる。第2部分(264)は、第2金属プレート(120)を少なくとも部分的に支持するための第2面(267)を含んでいる。第2部分(264)は、上軸(265)をさらに含んでいる。上軸(263)と上軸(265)の交差部は、非直線的で非直交であるので、摩擦撹拌角溶接部の形成を容易に行なうことができる。第1部分(262)と第2部分(264)は拘束されているので、摩擦撹拌溶接中は移動することができない。例えば、第1部分(262)と第2部分(264)は、下にあるフレームにボルト留めされるか、及び/又は拘束部材は空間(299)内にあるから、第1部分(262)と第2部分(264)は、溶接中、互いに離れる方向に移動することはできない。バックアップアンビル(260)は、開口空間(299)をさらに含み、その中をボビンツール(299)が移動することができる。第1セットの拘束部材(170)と第2セットの拘束部材(180)を用いることにより、摩擦撹拌溶接中、金属プレート(110)(120)を拘束することができる。
【0059】
システム(250)は、図2を参照して説明したシステム(150)と同様な作用を有するが、システム(150)と異なるのは、ボビン型摩擦撹拌溶接ツール(290)は、第1金属プレート(110)と第2金属プレート(120)の突合せ端部(113)(123)によって形成される継手の中に入り、その中を移動することである。ボビン型システム(250)に関しては、摩擦撹拌角溶接部の中心面は、ボビンツール(290)の溶接ピンの中心線と略平行であってよいが、第1及び第2金属プレート(110)(120)の中心−中立軸(115)(125)は、バックアップアンビル(260)の形状により、互いに傾斜している。このように、摩擦撹拌角溶接部を有するFS溶接物は、ボビン型摩擦撹拌溶接ツールによって作られることができる。図6に示される如く、バックアップアンビルは、2つの分離したピースに分割されることができる。他の実施例において、バックアップアンビル(260')は単一材料であってよく、開口空間(299')は、図7に示される如く、前記材料内に含まれることができる。
【0060】
本発明はまた、溶接された金属プレートを作製する方法を提供するもので、その一実施例が図8に示されている。図示の実施例において、当該方法は、第1及び/又は第2金属プレートをバックアップアンビル(820)に拘束するステップと、摩擦撹拌溶接装置(830)により第1金属プレートを第2金属プレートに溶接するステップを含んでいる。方法は、所望により、第1及び/又は第2金属プレート(810)を、拘束ステップ(820)及び/又は溶接ステップ(830)のために調製するステップを含むことができる。
【0061】
第1及び/又は第2金属プレートを調製するステップ(810)に関しては、図9を参照すると、金属プレートは、第1及び/又は第2金属プレート(812)に1又は複数の対向端部を作成することによって調製されることができる。一手法として、前記端部は、公知の機械加工装置/プロセスによって機械加工される(813)。第1及び/又は第2金属プレートはまた、第1及び/又は第2金属プレート(814)上に1又は複数のメイティング面を作成することによって調製される。一手法において、メイティング面は、公知の機械加工装置/プロセス等の機械加工(813)によって作られる。一実施例において、メイティング面は略平らな表面(816)であって、これにより、摩擦撹拌溶接ツールのピンの押付けが容易に行われる。なお、メイティング面は対向端部を作成する前に作られることもできるし、対向端部とメイティング面を同時に作成することもできる。
【0062】
FS溶接物の形成を容易にするための対向端部及びメイティング面を作成する方法の一例は図10に示されている。図示の実施例において、基部金属プレート(1000)の第1端部(1005)を機械加工して、金属プレート(1010)の対向端部(1015)が作成される。この対向端部(1015)は、摩擦撹拌溶接物の摩擦撹拌角溶接部を適当な角度にするために、適当なテーパ形状に機械加工されることができる。メイティング面は、プレート表面と摩擦撹拌ツールとの接触を向上させることができる。対向端部(1015)とメイティング面(1025)を有する金属プレート(1020)が、対向端部(2015)とメイティング面(2025)を有する別の金属プレート(2020)に当接するとき、対向端部(1015)(2015)は略同一平面で互いに当接し、メイティング面(1025)(2025)は略平らな面(例えば、平らな上面及び/又は底面)を形成する。略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールのピンとの接触を良好にすることができる。ボビン型ツールを用いるとき、メイティング面は金属プレートの上面及び底面に形成される。1又は複数のプレートの他方の面を機械加工することにより、FS溶接物の形成が容易に行なえる。例えば、1又は複数のプレートの境界面となる上面、底面又は側面を機械加工することにより、バックアップアンビル及び/又は拘束部材との接触が良好になる。一手法において、プレートの遠位側部が機械加工されると、側部拘束部材と金属プレートの遠位側部との接触が向上する(例えば、図3参照)。
【0063】
第1及び第2金属プレートをアンビルに拘束するステップ(820)に関して、図8を再び参照すると、例えば前述の如くの適当な要領にて、第1金属プレートはアンビルの第1面に拘束され、第2金属プレートはアンビルの第2面に拘束される。一実施例において、少なくとも1つの拘束部材を用いて、第1及び/又は第2金属プレートをアンビルに拘束することができる。拘束ステップ(820)では、一般的に、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している(822)。このようにして、溶接ステップが完了すると(830)、後記する如く、金属プレートは、摩擦撹拌溶接物の中で互いに傾斜することになる。
【0064】
溶接ステップ(830)は、あらゆる公知の摩擦撹拌溶接装置によって行なうことができる。一実施例において、公知の摩擦撹拌溶接装置は、第1金属プレートと第2金属プレートの当接端部の間に挿入され、前記当接端部を可塑化して、摩擦撹拌角溶接部が作成される。
【実施例】
【0065】
<実施例1> アルミニウム合金プレートの使用によるFS溶接物の作製
【0066】
(a) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは6013−T6系アルミニウム合金で厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6系アルミニウム合金で厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度5インチ/分、ツール回転速度224RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約11,100lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,100lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。摩擦撹拌角溶接部は、図11a及び図11bに示される如く、上面と基底面を有している。FSW溶接物は、内角が約166°である。
【0067】
(b) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチである。両プレートの当接端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度140RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約13,100lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,200lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0068】
(c) 図2と同様なシステムを準備する。第1プレートは5083−Oプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6プレートで厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度140RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約12,500lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が2,000lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0069】
<実施例2> ボビン型摩擦撹拌溶接ツールの使用による摩擦撹拌角溶接部の形成
【0070】
(a) 図6と同様なシステムを準備する。第1プレートは6013−T6のプレートで厚さ0.84インチであり、第2プレートは6013−T6のプレートで厚さ0.84インチである。両プレートの突合せ端部は、突合せ部で厚さ0.75インチである。ボビン型摩擦撹拌溶接ツールを用いて、第1プレートが第2プレートに溶接される。バックアップアンビルは、プレートの突合せ部で測定した角度が165°である。動作パラメータは、移動速度3.5インチ/分、ツール回転速度224RPM、FSWツール角度2°、鍛造力(Fz)約1,00lbfであって移動するFSWツールへの作用力(Fx)が1,300lbfであり、これによって摩擦撹拌角溶接部を有するFSW溶接物が作られる。
【0071】
本発明の様々な実施例を詳細に説明したが、当該分野の専門家であれば、これら実施例の変形及び適用は明らかであろう。なお、そのような変形及び適用は、本発明の精神及び範囲内であることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心−中立軸を有する第1金属プレートと、
第2中心−中立軸を有する第2金属プレートと、
第1金属プレートと第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、
を具えており、第1金属プレートの第1中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している、金属製品。
【請求項2】
第1中心−中立軸と第2中心−中立軸が交差する角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である請求項1の金属製品。
【請求項3】
角溶接部は、上面と基底面を有しており、基底面近傍の角溶接部の角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である請求項1の金属製品。
【請求項4】
第1金属プレートは第1アルミニウム合金を含み、第2金属プレートは第2アルミニウム合金を含んでいる請求項1の金属製品。
【請求項5】
第1アルミニウム合金と第2アルミニウム合金とは異なる合金である請求項4の金属製品。
【請求項6】
第1支持面及び第2支持面を有するバックアップアンビルであって、第2支持面は第1支持面と対向し、第1支持面は第1金属プレートを受けて支持することができ、第2支持面は第2金属プレートを受けて支持することができるようになし、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜しているバックアップアンビルと、
第1金属プレートをバックアップアンビルの第1支持面上で制限的に拘束することができる第1セットの拘束部材と、
第2金属プレートをバックアップアンビルの第2支持面上で制限的に拘束することができる第2セットの拘束部材と、
第1金属プレートと第2金属プレートを溶接することができる摩擦撹拌溶接ツールであって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜した摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物を作製する摩擦撹拌溶接ツールと、
を具えているシステム。
【請求項7】
第1支持面と第2支持面との間に開口空間をさらに有している請求項6のシステム。
【請求項8】
摩擦撹拌溶接ツールはボビン型ツールであって、摩擦撹拌溶接中、ボビン型ツールの一部は開口空間を通過することができる請求項7のシステム。
【請求項9】
第1セットの拘束部材のうちの1つは、第1金属プレートの側部を制限的に拘束することができる請求項6のシステム。
【請求項10】
第1セットの拘束部材のうちの1つは、第1金属プレートの上面部を制限的に拘束することができる請求項6のシステム。
【請求項11】
バックアップアンビルは尖端部を含んでいる請求項6のシステム。
【請求項12】
バックアップアンビルは平らな上面部を含んでいる請求項7のシステム。
【請求項13】
摩擦撹拌溶接物を作製する方法であって、
第1対向端部及び中心−中立軸を有する第1金属プレートをバックアップアンビルに対して第1の方向に拘束する第1拘束ステップと、
第2対向端部及び中心−中立軸を有する第2金属プレートをバックアップアンビルに対して第2の方向に拘束する第2拘束ステップと、を含み、
第2拘束ステップの後、第1金属プレートの第1対向端部は第2金属プレートの第2対向端部に当接し、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようになし、
摩擦撹拌溶接ツールにより、第1及び第2対向端部で第1金属プレートと第2金属プレートを溶接するステップを含み、これによって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜する摩擦撹拌溶接物を作製する、方法。
【請求項14】
第1拘束ステップの前に、第1金属プレートを調製するステップをさらに含んでおり、
前記調製ステップは、第1金属プレートの端部を機械加工して第1対向端部を作成することを含んでおり、機械加工の後、第1対向端部と第2対向端部は、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するように当接することができる請求項13の方法。
【請求項15】
第1金属プレートを機械加工するステップは、第1金属プレートの上面部を機械加工してメイティング面を作成することを含んでおり、メイティング面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項14の方法。
【請求項16】
第2金属プレートの端部を機械加工して、第2対向端部を作成することをさらに含んでいる請求項14の方法。
【請求項17】
メイティング面は第1メイティング面であり、
第2金属プレートの上面部を機械加工して第2メイティング面を作成することをさらに含んでおり、第2メイティング面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項15の方法。
【請求項18】
第1拘束ステップ及び第2拘束ステップの後、第1及び第2金属プレートの第1メイティング面及び第2メイティング面は、略平らな表面を画定し、略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項17の方法。
【請求項1】
第1中心−中立軸を有する第1金属プレートと、
第2中心−中立軸を有する第2金属プレートと、
第1金属プレートと第2金属プレートを結合する摩擦撹拌角溶接部と、
を具えており、第1金属プレートの第1中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜している、金属製品。
【請求項2】
第1中心−中立軸と第2中心−中立軸が交差する角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である請求項1の金属製品。
【請求項3】
角溶接部は、上面と基底面を有しており、基底面近傍の角溶接部の角度は、約5°〜約85°又は約95°〜約175°である請求項1の金属製品。
【請求項4】
第1金属プレートは第1アルミニウム合金を含み、第2金属プレートは第2アルミニウム合金を含んでいる請求項1の金属製品。
【請求項5】
第1アルミニウム合金と第2アルミニウム合金とは異なる合金である請求項4の金属製品。
【請求項6】
第1支持面及び第2支持面を有するバックアップアンビルであって、第2支持面は第1支持面と対向し、第1支持面は第1金属プレートを受けて支持することができ、第2支持面は第2金属プレートを受けて支持することができるようになし、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜しているバックアップアンビルと、
第1金属プレートをバックアップアンビルの第1支持面上で制限的に拘束することができる第1セットの拘束部材と、
第2金属プレートをバックアップアンビルの第2支持面上で制限的に拘束することができる第2セットの拘束部材と、
第1金属プレートと第2金属プレートを溶接することができる摩擦撹拌溶接ツールであって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜した摩擦撹拌角溶接部を有する摩擦撹拌溶接物を作製する摩擦撹拌溶接ツールと、
を具えているシステム。
【請求項7】
第1支持面と第2支持面との間に開口空間をさらに有している請求項6のシステム。
【請求項8】
摩擦撹拌溶接ツールはボビン型ツールであって、摩擦撹拌溶接中、ボビン型ツールの一部は開口空間を通過することができる請求項7のシステム。
【請求項9】
第1セットの拘束部材のうちの1つは、第1金属プレートの側部を制限的に拘束することができる請求項6のシステム。
【請求項10】
第1セットの拘束部材のうちの1つは、第1金属プレートの上面部を制限的に拘束することができる請求項6のシステム。
【請求項11】
バックアップアンビルは尖端部を含んでいる請求項6のシステム。
【請求項12】
バックアップアンビルは平らな上面部を含んでいる請求項7のシステム。
【請求項13】
摩擦撹拌溶接物を作製する方法であって、
第1対向端部及び中心−中立軸を有する第1金属プレートをバックアップアンビルに対して第1の方向に拘束する第1拘束ステップと、
第2対向端部及び中心−中立軸を有する第2金属プレートをバックアップアンビルに対して第2の方向に拘束する第2拘束ステップと、を含み、
第2拘束ステップの後、第1金属プレートの第1対向端部は第2金属プレートの第2対向端部に当接し、第1金属プレートの中心−中立軸は第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するようになし、
摩擦撹拌溶接ツールにより、第1及び第2対向端部で第1金属プレートと第2金属プレートを溶接するステップを含み、これによって、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜する摩擦撹拌溶接物を作製する、方法。
【請求項14】
第1拘束ステップの前に、第1金属プレートを調製するステップをさらに含んでおり、
前記調製ステップは、第1金属プレートの端部を機械加工して第1対向端部を作成することを含んでおり、機械加工の後、第1対向端部と第2対向端部は、第1金属プレートの中心−中立軸が第2金属プレートの中心−中立軸に対して傾斜するように当接することができる請求項13の方法。
【請求項15】
第1金属プレートを機械加工するステップは、第1金属プレートの上面部を機械加工してメイティング面を作成することを含んでおり、メイティング面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項14の方法。
【請求項16】
第2金属プレートの端部を機械加工して、第2対向端部を作成することをさらに含んでいる請求項14の方法。
【請求項17】
メイティング面は第1メイティング面であり、
第2金属プレートの上面部を機械加工して第2メイティング面を作成することをさらに含んでおり、第2メイティング面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項15の方法。
【請求項18】
第1拘束ステップ及び第2拘束ステップの後、第1及び第2金属プレートの第1メイティング面及び第2メイティング面は、略平らな表面を画定し、略平らな表面は摩擦撹拌溶接ツールが当てられる面である請求項17の方法。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【公開番号】特開2009−148821(P2009−148821A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−290574(P2008−290574)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290574(P2008−290574)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】
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