説明

摺動面の表面処理方法、摺動部材の組み付け方法および摺動部材

【課題】 スティック・スリップを防止すること。
【解決手段】 シリンダ141の内周面141a上に基油成分および固体潤滑剤成分を含有した潤滑剤層Aを形成し、その後シリンダ141を80℃の恒温槽に投入して3時間放置する。これにより潤滑剤層A中の基油成分が内周面141aからシリンダ141の内部の微細孔Hに含浸し、内周面141a上の潤滑剤層中の基油成分の比率が低くなるとともに固体潤滑剤成分の比率が高くなる。このため内周面141aをコイルスプリング143の外周面が摺動するときの潤滑状態が固体潤滑状態となり、摺動時の摩擦係数が安定する。よって、スティック・スリップの発生が効果的に防止あるいは抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動面の表面処理方法、摺動部材の組み付け方法および摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に摺動部材は、摺動面を有する第一部材と、摺動面を摺動する第二部材を備える。このような摺動部材は、車両の電動パーキングブレーキに用いられるスプリングクラッチにも適用されている。上記スプリングクラッチは、円筒状の内周面が形成されたシリンダおよびシリンダの内周空間に配設されたコイルスプリングからなる摺動部材を備え、コイルスプリングがシリンダ内で回転することによって入力部材からの入力が出力部材に伝達される。このときコイルスプリングの外周面がシリンダの内周面を摺動する。このようなスプリングクラッチの構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−016600号公報
【発明の開示】
【0003】
摺動面上で円滑な摺動動作が行われるように、摺動面上に潤滑剤が塗布されることがある。しかし、潤滑状態によっては摺動時にスティック・スリップが発生することもある。スティック・スリップは「びびり」とも俗称される振動現象であり、これが発生した場合は滑らかな摺動動作が阻害される。特に上記した電動パーキングブレーキに用いられるスプリングクラッチにおいて、コイルスプリングの外周面がシリンダの内周面を摺動するときにスティック・スリップが発生すると、コイルスプリングの回転速度が変動し、それに伴って異音が発生するという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、スティック・スリップが効果的に防止あるいは抑制される摺動面の表面処理方法、そのような表面処理が施された摺動部材の組み付け方法、さらにはそのような表面処理が施された摺動部材を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の表面処理方法の特徴は、第一部材に形成されるとともに第二部材が摺動する摺動面上に、基油成分および固体潤滑剤成分を含有した潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程と、前記潤滑剤層中の基油成分を前記摺動面から前記第一部材の内部に含浸させる含浸工程とを含む摺動面の表面処理方法とすることにある。この表面処理方法によれば、第一部材の摺動面上に形成された潤滑剤層中の基油成分が、摺動面から第一部材の内部に含浸されるために、摺動面上の潤滑剤層中の基油成分の比率が低くなるとともに固体潤滑剤成分の比率が高くなる。固体潤滑剤成分の比率が高くなると摺動時の潤滑状態が固体潤滑状態となり、摺動時の摩擦係数が安定する。このためスティック・スリップの発生が効果的に防止あるいは抑制される。また、スティック・スリップによる異音の発生も防止あるいは抑制できる。
【0006】
ここで、基油成分と固体潤滑剤成分が含有された潤滑剤として一般に市販されているものは、基油成分の比率が80重量%程度と高く、流体潤滑剤として機能する。したがって、摺動面に市販の潤滑剤を塗布した場合における摺動時の潤滑状態は、摺動面に油膜が形成された潤滑状態となる。この油膜が薄い場合には潤滑状態が境界潤滑状態となって、局所的に2つの部材が直接接触し、摺動時の摩擦係数が変動する。この摩擦係数の変動によってスティック・スリップが発生する。これに対し、本発明によれば、摺動面に形成した潤滑剤層中の基油成分を第一部材の内部に含浸させることによって固体潤滑剤成分の比率が高くされているので、含浸後の潤滑剤は固体潤滑剤としての機能も発揮する。よって、固体潤滑皮膜の形成により摺動時の摩擦係数が安定してスティック・スリップが効果的に防止されるのである。
【0007】
固体潤滑剤成分の比率が高く、基油成分の比率が低い潤滑剤、たとえば基油成分の比率が60重量%程度の潤滑剤は一般に市販されていない。したがって、特別にこのような潤滑剤を製造しようとすると、製造コストが高くなる。また、最初から固体潤滑剤成分の比率が高い潤滑剤や固体潤滑剤そのものを摺動面に塗布しようとしても、高粘度であるため均一な塗布が困難であり、また塗布機により自動塗布することができない。この点につき、本発明においては、潤滑剤層中の基油成分を第一部材の内部に含浸させることによって固体潤滑剤成分の比率を高めているので、摺動面に形成する潤滑剤層に市販の潤滑剤を用いることができる。このように工法上の工夫によって固体潤滑剤成分の比率を高める本発明の方法によれば、上記した不具合も解消することができる。
【0008】
潤滑剤層形成工程においては、潤滑剤層は様々な方法により摺動面上に形成することができる。たとえば塗布により形成することができる。あるいは、噴霧や滴下などによっても形成することができる。
【0009】
上記第一部材は、摺動面に潤滑剤層が形成されたときに潤滑剤層の基油成分が摺動面から内部に含浸するように形成されている必要がある。この場合、第一部材には、摺動面に開口した微細孔(孔)が形成されており、含浸工程にて潤滑剤層中の基油成分が微細孔中に含浸するものであるとよい。摺動面に開口した微細孔が設けられていれば、摺動面に形成された潤滑剤層中の基油成分を効率よく第一部材の内部、すなわち微細孔の内部に含浸させることができる。さらにこの場合、第一部材は焼結材であるのがよい。焼結材は多孔質であり、表面に開口した微細孔を多数有する。よって、第一部材を焼結材とすることによって、より効率的に摺動面上の潤滑剤層中の基油成分を微細孔内に含浸させることができる。
【0010】
また、含浸工程は、潤滑剤層が形成された第一部材を常温で所定時間だけ自然放置することによっても行い得るが、高温雰囲気中にて行われるものであるのがよい。摺動面に開口した微細孔中には、前工程などで用いた液体、例えば防錆油などの残渣油が予め含浸されている場合がある。この場合、高温雰囲気中で含浸工程を行うことにより、予め微細孔に含浸している液体が熱により滲み出て速やかに微細孔から除去される。このようにして液体が除去された微細孔には潤滑剤層中の基油成分がスムーズに染み込むので、含浸が促進される。なお、上記高温雰囲気とは、常温の上限温度(35℃)よりも高い温度雰囲気をいい、好ましくは80℃以上の雰囲気である。この場合、含浸工程は、第一部材を温度80℃以上の雰囲気中に3時間以上放置する加熱放置工程であるのがよい。これによれば、微細孔中に予め含浸されている液体がスムーズに除去されるとともに、微細孔中に十分に基油を含浸させることができる。
【0011】
また、含浸工程は、摺動面上に形成された潤滑剤層中の基油成分の比率が60重量%以下となるように、潤滑剤層中の基油成分を摺動面から第一部材の内部に含浸させる工程であるとよい。摺動面上に形成された潤滑剤層中の基油成分の比率が60重量%以下になると、摺動時に潤滑剤層が固体潤滑剤として十分に機能する。よって、摺動時におけるスティック・スリップの発生をより一層防止することができる。
【0012】
また、本発明の組み付け方法の特徴は、上記した本発明の表面処理方法により第一部材の摺動面を表面処理する表面処理工程と、前記表面処理工程にて表面処理が施された前記摺動面に第二部材が摺動可能となるように、前記第二部材を前記第一部材に組み付ける組み付け工程とを含む摺動部材の組み付け方法とすることにある。また、本発明の摺動部材の特徴は、上記した本発明の表面処理方法により表面処理が施された摺動面を有する第一部材と、前記摺動面に摺動可能となるように前記第一部材に組み付けられた第二部材とを備える摺動部材とすることにある。このような組み付け方法および摺動部材によっても上記した作用効果を奏する。
【0013】
この場合、第一部材は、摺動面としての円筒状の内周面を有するシリンダ部材であり、第二部材は、コイル状に形成され、外周面が前記内周面を摺動するようにシリンダ部材の内周空間に嵌め込まれたコイルスプリングであるのがよい。これによれば、上記シリンダ部材および上記コイルスプリングを用いてスプリングクラッチを作製することにより、スプリングクラッチ作動時におけるスティック・スリップが防止される。このためスティック・スリップに起因した異音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の摺動部材を用いたスプリングクラッチが組み込まれた車両用の電動パーキングブレーキ装置の全体構成図である。図に示されるように、電動パーキングブレーキ装置1は、アクチュエータ部10と、電気制御部20と、ブレーキ部30とを備える。ブレーキ部30は右側ブレーキ機構31と左側ブレーキ機構32とを有する。右側ブレーキ機構31は車両の右後輪を制動し、左側ブレーキ機構32は左後輪を制動する。
【0015】
アクチュエータ部10は図1において一部断面図として示されている。このアクチュエータ部10は、ハウジング11と、電気モータ12と、減速器13と、スプリングクラッチ14と、ネジ軸15と、イコライザ16と、対のケーブル171,172と、ナット18とを備える。ハウジング11はアクチュエータ部10の外郭を構成する部材であり、内部が中空とされている。ハウジング11の内部には仕切板11aが形成されており、この仕切板11aによって、内部空間が第一室111と第二室112とに区画されている。第一室111内には減速器13およびスプリングクラッチ14が配設されている。第二室112内にはイコライザ16が配設されている。
【0016】
電気モータ12は、ハウジング11の外壁のうち第一室111を形成する部分に固設されている。この電気モータ12は正逆回転可能なモータであり、その出力軸12aがハウジング11の壁面から第一室111内に突き抜けて図の左右方向に延びている。出力軸12aの先端には減速器13が連結されている。減速器13は小径歯車131と大径歯車132とを備えており、小径歯車131が出力軸12aの先端に同軸的且つ一体回転可能に取り付けられている。大径歯車132は小径歯車131に噛合可能に併設されている。大径歯車132の中心には、ネジ軸15が同軸的に挿通されている。
【0017】
ネジ軸15は、外周に雄ネジが形成されたネジ部151と、ネジ部151の図示右端から同軸的に延設された軸部152を備え、軸方向移動不能且つ回転可能にハウジング11に支持されている。ネジ部151は、その軸方向が図1の左右方向となるように第二室112内に延設されている。軸部152はネジ部151の図示右端から仕切板11aに形成されている開口部11bを経て第一室111内に延びている。この軸部152の先端部分がベアリングなどの軸受けを介して大径歯車132の中心部分に挿通されている。したがって、大径歯車132はネジ軸15に相対回転可能に支持された構造となっている。
【0018】
また、ネジ軸15の軸部152は、第一室111内にてスプリングクラッチ14にも挿通されている。スプリングクラッチ14は、減速器13と仕切り板11aとの間に配設されている。図2はスプリングクラッチ14付近の拡大図である。図3は図2の3−3断面図のうち、スプリングクラッチ14のみを示した図である。これらの図からわかるように、スプリングクラッチ14は、本発明の第一部材であるシリンダ141と、入力カム142と、本発明の第二部材であるコイルスプリング143と、出力カム144とを備えて構成されている。シリンダ141とコイルスプリング143が、本発明の摺動部材に相当する。シリンダ141は、円筒状の内周面141aを有する筒状部材であり、内周空間内にネジ軸15の軸部152が挿通されるとともに、その軸方向がネジ軸15の軸方向と一致するような姿勢で第一室111内に配設されている。シリンダ141は図示しないボルトなどの締結手段によってハウジング11に回転不能に固定されている。また、シリンダ141の両端面は開口しており、そのうちの一方の端面が仕切板11aに当接されている。シリンダ141は焼結材により形成されており、内周面141aに開口した多数の微細孔が形成されている。
【0019】
コイルスプリング143は断面が矩形のばね線材によってコイル状に形成されており、外周面がシリンダ141の内周面141aに摺動可能となるように、シリンダ141の内周空間に嵌め込まれている。また、コイルスプリング143は、シリンダ141の内周空間に嵌め込まれた状態において、シリンダ141の内周面141aに対して径方向外方に所定の押圧力を発生している。また、図3からわかるように、コイルスプリング143は、両端部143a,143bが周方向にずれた位置となるように、その巻き数が端数(1巻きに足らない数)を生じるようにコイル状に巻回されている。端数が生じている周方向領域は、図3の領域Sにより示されている。また、両端部143a,143bは、コイルスプリング143の内周側に突出するように折り曲げられている。
【0020】
入力カム142は図2からわかるように、大径歯車132の端面のうちスプリングクラッチ14に対面している側の端面であって中心から偏倚した位置から立設されており、シリンダ141内に配設されたコイルスプリング143の内周空間内に延びている。また、入力カム142は、大径歯車132の回転に伴って回転した場合にコイルスプリング143の両端部143a,143bに係合するように、シリンダ141内における径方向位置が決められている。
【0021】
出力カム144は、図3に示されるように、シリンダ141内を挿通している軸部152に形成されたキー152aに嵌り込むことによって、シリンダ141内にてネジ軸15に一体回転可能に連結している。この出力カム144は、両側部に二本の腕部144a,144bを有している。出力カム144は、ネジ軸15の回転に伴って回転した場合に腕部144a,144bがそれぞれコイルスプリング143の端部143a,143bに係合するように、そのカム形状が決められている。
【0022】
また、入力カム142は、図3の紙面方向から見て、コイルスプリング143の巻き数に端数が生じている周方向部分、つまり図3の領域Sに対し、シリンダ141の径方向に向かって面する位置に設けられている。入力カム142がこのように配置されている場合、入力カム142が大径歯車132の回転に伴って回転してコイルスプリング143のいずれかの端部に係合したときに係合部位に加えられる回転駆動力の作用方向が、コイルスプリング143をさらに巻き込む方向になる。よって、この回転駆動力によってコイルスプリング143がさらに巻き込まれて縮径する。一方、出力カム144は、図3の紙面方向から見て、コイルスプリング143の巻き数に端数が生じていない周方向部分、つまり図3の領域S以外の周方向部分に対し、シリンダ141の径方向に向かって面する位置に設けられている。出力カム144がこのように配置されている場合、出力カム144がネジ軸15の回転に伴って回転してその腕部144a,144bのいずれか一方がコイルスプリング143のいずれかの端部に係合したときに係合部位に加えられる回転駆動力の作用方向が、コイルスプリング143を巻き戻す方向になる。よって、この回転駆動力によってコイルスプリング143が拡径する。
【0023】
図1に示されるように、ネジ軸15のネジ部151には矩形状のナット18が螺合している。ナット18の外面には連結ピン181が差し込まれている。この連結ピン181は、イコライザ16を軸周り回転可能に連結している。したがって、ナット18は、連結ピン181を介してイコライザ16に連結され、ネジ軸15上での回転ができないようにされている。イコライザ16は、連結ピン181との連結部分からネジ軸15の軸方向に直交する方向に延びた対のアーム部161,162を備える。一方のアーム部161にはインナーワイヤ171aの一端が接続され、他方のアーム部162にはインナーワイヤ172aの一端が接続されている。
【0024】
ケーブル171,172は、それぞれインナーワイヤ171a,172aとアウターチューブ171b,172bとを備える。インナーワイヤ171aはハウジング11に形成された孔部11cからハウジング11の外部に延びており、その他端が右側ブレーキ機構31に接続されている。同様に、インナーワイヤ172aはハウジング11に形成された孔部11dからハウジング11の外部に延びており、その他端が左側ブレーキ機構32に接続されている。ハウジング11の外部に延びたインナーワイヤ171a,172aの外周は、それぞれアウターチューブ171b、172bによって被覆されている。
【0025】
電気制御部20は、制動スイッチSW1と、解除スイッチSW2と、電動パーキングブレーキ用電子制御ユニット(以下、ECUと称する)とを備える。制動スイッチSW1と解除スイッチSW2はそれぞれECUに電気的に接続されている。制動スイッチSW1は運転者によって操作され、電気モータ12を正回転させるように制動信号をECUに出力する。解除スイッチSW2も運転者によって操作され、電気モータ12を逆回転させるように解除信号をECUに出力する。ECUは電気モータ12に電気的に接続されており、電気モータ12の駆動を制御する。
【0026】
上記のように構成した電動パーキングブレーキ装置1において、運転者が制動スイッチSW1を操作すると、電気モータ12が正回転駆動し、この回転駆動力が減速器13を介して入力カム142に伝達される。これにより入力カム142が図3の反時計周り方向に回転してコイルスプリング143の端部143aと係合する。係合部位にてコイルスプリング143が入力カム142側から受ける回転駆動力はコイルスプリング143をさらに巻き込む方向の力であるので、コイルスプリング143はこの力を受けて縮径する。コイルスプリング143が縮径すると、コイルスプリング143がシリンダ141の内周面141aに及ぼしている押圧力が小さくなり、コイルスプリング143はシリンダ141内で回転可能となる。よって、コイルスプリング143は入力カム142とともに回転する。
【0027】
コイルスプリング143が回転すると、やがてその端部143aが出力カム144の腕部144aに係合する。この係合によりコイルスプリング143を介して入力カム142からの回転駆動力が出力カム144に伝達され、入力カム142、コイルスプリング143および出力カム144が一体となって図3の反時計周り方向に回転する。出力カム144の回転駆動力はネジ軸15に伝達され、ネジ軸15も回転する。ネジ軸15の回転によって、ナット18が図1の右方向にネジ送りされる。ナット18のネジ送りによりイコライザ16も右方向に移動する。イコライザ16の図示右方向移動によって、両インナーワイヤ171a,172aはバランスを取りながら張力を発生する。両ブレーキ機構31,32はこの張力により作動して、制動力を発生する。
【0028】
電気モータ12の駆動が停止されると、ネジ軸15の回転が停止されるため、イコライザ16もそれ以上の移動が停止される。この駆動停止状態において、イコライザ16はインナーワイヤ171a,172aの張力によって図1において左方に引っ張られる。この力はイコライザ16、ナット18を介してネジ軸15に伝達され、ネジ軸15および出力カム144が逆方向に回転しようとする。また出力カム144の腕部144aはコイルスプリング143の端部143aに係合しているので、この回転駆動力は出力カム144側からコイルスプリング143の端部143aに伝達される。この場合、出力カム144側からコイルスプリング143が受ける回転駆動力は、コイルスプリング143を巻き戻す方向の力であるので、コイルスプリング143はこの力を受けて拡径する。このためコイルスプリング143がシリンダ141の内周面141aに及ぼしている押圧力が大きくなって、コイルスプリング143はシリンダ141内で回転不能となる。コイルスプリング143が回転しないので、出力カム144からの力は入力カム142には伝達されない。このようにして出力カム144側からの逆入力が入力カム142側に伝達されることが阻止され、両ブレーキ機構31,32にて発生している制動力が維持される。
【0029】
また、運転者が解除スイッチSW2を操作すると、電気モータ12が逆回転駆動し、回転駆動力が減速器13を介して入力カム142に伝達される。これにより入力カム142が図3の時計周り方向に回転して、コイルスプリング143の端部143bに係合する。この係合によりコイルスプリング143は巻き込み方向への力を受けて縮径する。このためコイルスプリング143がシリンダ141の内周面141aに及ぼしている押圧力が小さくなり、コイルスプリング143はシリンダ141内で回転可能となる。よって、コイルスプリング143は入力カム142とともに回転する。
【0030】
コイルスプリング143が回転すると、その端部143bが出力カム144の腕部144bに係合する。この係合によりコイルスプリング143を介して入力カム142からの回転駆動力が出力カム144に伝達され、入力カム142、コイルスプリング143および出力カム144が一体となって図3の時計周り方向に回転する。出力カム144の回転駆動力はネジ軸15に伝達され、ネジ軸15も回転する。ネジ軸15の回転によってナット18が図1において左方向にネジ送りされる。ナット18のネジ送りによりイコライザ16も図1において左方向に移動する。イコライザ16の図示左方向移動によって、両インナーワイヤ171a,172aの張力が解放される。これにより両ブレーキ機構31,32にて発生されている制動力が解除される。
【0031】
上記作動からわかるようにスプリングクラッチ14は、入力カム142側から出力カム144側への回転駆動力を伝達するが、出力カム144側から入力カム142側への回転駆動力を伝達しないように構成されている。このスプリングクラッチ14において、入力カム142側からの回転駆動力によってコイルスプリング143がシリンダ141内で回転しているときに、コイルスプリング143の外周面はシリンダ141の内周面141aを摺動する。この摺動時に発生する摩擦力を低減するために、シリンダ141の内周面141aには潤滑剤層が形成されている。
【0032】
潤滑剤層を形成する潤滑剤としては、従来は、通常の市販された潤滑剤が、成分比率を変化させることなくそのまま用いられている。しかし、市販の潤滑剤は流体潤滑剤としての機能を主として果たすことを目的として調製されているため、固体潤滑材成分が含有されているものであっても基油成分の比率が80重量%程度と高い。したがって、これをそのまま使用した場合には、摺動時に摺動面に油膜が形成される。この油膜が非常に薄くなったときには潤滑状態が境界潤滑状態となって、シリンダ141の内周面141aとコイルスプリング143の外周面の直接接触が局部的に生じ、摺動面の摩擦係数が変動する。この摩擦係数の変動によってスティック・スリップが発生する。すなわち、潤滑剤として市販されたものをそのまま用いた場合には、シリンダ141とコイルスプリング143との摺動時にスティック・スリップが発生するおそれがある。
【0033】
スティック・スリップが発生すると、コイルスプリング143の回転速度が変動し、あるときには回転動作が速まり、またあるときには回転動作が遅くなり、場合によっては回転が停止する。つまりスティック・スリップの発生時にはコイルスプリング143の回転動作がスムーズに行われない。そのためコイルスプリング143の回転動作に出力カム144の回転動作が追従できずに、出力カム144の腕部144a,144bとコイルスプリング143の端部143a,143bとが衝突および離間を繰り返す。この衝突により、異音(グー音)が発生し、作動音が大きくなる。
【0034】
本実施形態では、以下に示す表面処理方法によってシリンダ141の内周面141aに表面処理を施した後にシリンダ141とコイルスプリング143とを組み付けることにより、スティック・スリップの発生が効果的に防止あるいは抑制されている。図4は、シリンダ141とコイルスプリング143とを組付けるまでの工程を表す図である。図に示されるように、シリンダ141とコイルスプリング143は、表面処理工程と組み付け工程とを経て組み付けられる。
【0035】
表面処理工程においては、まず図4(a)に示されるように、シリンダ141の摺動面である内周面141aに潤滑剤が塗布されて、潤滑剤層Aが形成される(潤滑剤層形成工程)。潤滑剤は手塗りにより塗布してもよいし、塗布機を用いて自動的に塗布してもよい。なお、本実施形態において使用した潤滑剤は、協同油脂株式会社製の製品「マルテンプ(登録商標)AC−P」である。この潤滑剤には、基油、増ちょう剤、固体潤滑剤、その他の添加剤(酸化防止剤、防錆剤等)が含有されている。基油はPAO(ポリアルファオレフィン)およびジエステル、増ちょう剤はリチウム石鹸、固体潤滑剤は二流化モリブデン、有機モリブデン、MCA(Melamine Cyanuric Acid)およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。また、潤滑剤中の基油成分の比率は70〜80重量%、増ちょう剤成分の比率は10重量%以下、固体潤滑剤成分の比率は1〜10重量%程度である。
【0036】
次に、潤滑剤層Aが内周面141aに形成されたシリンダ141が、80℃の恒温槽中に投入され、3時間放置される(加熱放置工程:図4(b))。その後、シリンダ141が恒温槽から取り出される。取り出されたシリンダ141の内周面に形成されている潤滑剤層A中の基油成分の比率を調べてみた結果、その比率は60重量%に減少していた。なお、これらの潤滑剤層形成工程と加熱放置工程とを含む表面処理工程が、本発明の表面処理方法に相当する。
【0037】
次に、図4(c)に示されるように、シリンダ141の内周空間にコイルスプリング143が嵌め込まれる(組み付け工程)。このときシリンダ141の内周面141aにコイルスプリング143の外周面が摺動するように、コイルスプリング143が嵌め込まれる。これによりシリンダ141とコイルスプリング143とが組み付けられる。この場合において、コイルスプリング143にも予め潤滑剤を塗布しておいてもよい。この潤滑剤は、シリンダ141の内周面141aに塗布した潤滑剤であるのが好ましいが、その他の潤滑剤でもよい。以上の工程を経て、シリンダ141とコイルスプリング143との組み付けが完了される。
【0038】
図5は、シリンダ141とコイルスプリング143との組み付けが完了するまでの工程において、シリンダ141の内周面141aの表面状態を表した模式図である。図5(a)は、潤滑剤層Aが形成される前のシリンダ141の内周面141aの表面状態を示している。この図に示されるように、シリンダ141は焼結材であるため多数の微細孔を有し、内周面141aに開口した微細孔Hも多数形成されている。これらの微細孔H内には、前工程にて用いられる防錆油等の残渣油が含浸している。この残渣油は、図において微細孔Hを黒く塗り潰すことにより表わされている。
【0039】
図5(b)は、潤滑剤層形成工程後のシリンダ141の内周面141aの表面状態を表す模式図である。この工程では、シリンダ141の内周面141a上に潤滑剤層Aが形成される。この潤滑剤層Aには基油成分OLと固体潤滑剤成分SLが含有されている。なお、微細孔Hの開口径は、固体潤滑剤成分SLの劈開状態や、使用する固体潤滑剤により異なるために一概には言えないが、固体潤滑剤成分SLが微細孔H内に進入しない程度の径であるのが好ましい。
【0040】
図5(c−1)および図5(c−2)は、加熱放置工程中のシリンダ141の内周面141aの表面状態を表す模式図である。この加熱放置工程では、まず図5(c−1)に示されるように、加熱によって微細孔H内の残渣油が内周面141a上に滲み出てくる。これにより残渣油が微細孔Hから除去されていく。次いで図5(c−2)に示されるように、残渣油が除去された微細孔H内に潤滑剤層A中の基油成分OLが含浸していく。すなわち本実施形態の加熱放置工程は、潤滑剤層A中の基油成分OLを内周面141aから微細孔H内に含浸させる含浸工程に相当する。基油成分OLの含浸により、潤滑剤層A中の基油成分OLの比率が60重量%まで低下し、基油成分OLの比率の減少分に相応した分だけ固体潤滑剤成分SLの比率が高くなる。
【0041】
図5(d)は、組み付け工程後のシリンダ141の内周面141aの表面状態を表す模式図である。組み付け工程では、シリンダ141の内周面141aにコイルスプリング143が嵌め込まれる。これにより組み付けが完了する。組み付け完了時における潤滑剤層A中の固体潤滑剤成分SLの比率は、加熱放置工程中に行われる基油成分OLの含浸により、塗布した当初の潤滑剤中の固体潤滑剤成分SLの比率よりも高くなっている。固体潤滑剤成分SLの比率が高くなると、摺動時に内周面141aとコイルスプリング143の外周面との間に固体潤滑剤成分SLが入り込んで固体潤滑膜が形成される。すなわち潤滑剤層は固体潤滑剤としても機能する。これにより摩擦係数が安定し、スティック・スリップが起こり難くなる。
【0042】
スティック・スリップが起こり難くなれば、シリンダ141内でのコイルスプリング143の回転動作がスムーズに行われる。このため出力カム144もコイルスプリング143に追従してスムーズに回転し、出力カム144の腕部144a,144bとコイルスプリング143の端部143a,143bとの衝突が防止される。よって、スプリングクラッチ14の作動中における異音(グー音)の発生も防止されて、作動音の低減を図ることができる。
【0043】
作動音の低減効果を実証するため、上記表面処理工程および組み付け工程を経て組み付けられたシリンダ141とコイルスプリング143とを用いて作製された本実施形態のスプリングクラッチ14が複数個用意され、それぞれのスプリングクラッチ14について、作動時の作動音圧レベルが測定された。測定結果を図6に示す。図において横軸が作動音圧レベル(単位:デシベル)、縦軸が入力カム142に入力する軸トルク(単位:Nm)である。また、図中白抜きの三角の点が測定点である。図に示されるように、いずれの測定サンプルにおいても、作動音は上限値である60デシベルよりもはるかに小さい50デシベル以下となった。この結果から、本実施形態のスプリングクラッチ14においては、作動時にスティック・スリップは発生せず、そのため異音の発生が抑えられて、作動音も小さくなることがわかる。
【0044】
また、比較例として、上記加熱放置工程を経ずに組み付けられたシリンダとコイルスプリングを用いて作製されたスプリングクラッチが複数個用意され、同様の条件で作動音圧が測定された。測定結果を図7に示す。図中のバツ印が測定点である。この図からわかるように、各測定サンプルの作動音圧はバラツキが大きく、また上限値(60デシベル)を越えている作動音圧を示した測定サンプルもあることがわかる。このような作動音圧のバラツキや上限値を越えた作動音圧の発生は、スプリングクラッチの作動中にスティック・スリップが起こって異音が発生していることが原因と考えられる。このことから、本実施形態にて説明した加熱放置工程における表面処理、特に潤滑剤層中の基油をシリンダ内部に含浸させる処理を施すことにより、効果的にスティック・スリップが防止され、スプリングクラッチ作動時の異音の発生も抑えられることがわかる。
【0045】
図8は、サンプル数を増加してスプリングクラッチ作動時の作動音圧レベルの最大値を測定し、音圧レベルの大きい方から積算したグラフである。図において、白抜きの丸印で示した点を結んだグラフが本実施形態に係るスプリングクラッチの作動音圧の積算グラフであり、黒塗りの点を結んだグラフが比較例に係るスプリングクラッチの作動音圧の積算グラフである。図に示されるように、本実施形態に係るスプリングクラッチにおいて作動音圧が60デシベル以上であるものの割合はほぼ1%程度である。一方、比較例に係るスプリングクラッチにおいては、作動音圧が60デシベル以上のものの割合が約8%程度である。このグラフからも、本実施形態のスプリングクラッチにおいては効果的にスティック・スリップによる異音の発生が防止され、スプリングクラッチ作動中の作動音も十分に低減されていることがわかる。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るシリンダ内周面141aの表面処理方法は、内周面141a上に基油成分OLおよび固体潤滑剤成分SLを含有した潤滑剤層Aを形成する潤滑剤層形成工程と、潤滑剤層A中の基油成分OLを内周面141aからシリンダ141の内部(微細孔H)に含浸させる加熱放置工程(含浸工程)とを含む。この表面処理方法によれば、基油成分OLの含浸により内周面141a上の潤滑剤層A中の基油成分OLの比率が低くなるとともに固体潤滑剤成分SLの比率が高くなる。このため摺動時の潤滑状態が固体潤滑状態となり、摩擦係数が安定する。よって、スティック・スリップの発生を効果的に防止あるいは抑制することができる。また、スティック・スリップが原因で生じる異音の発生も防止あるいは抑制できる。
【0047】
また、シリンダ141には、内周面141aに開口した微細孔Hが多数形成されている。よって、潤滑剤層A中の基油成分OLを効率よく微細孔H中に含浸させることができる。また、シリンダ141は多孔質の焼結材であるので、より効率的に内周面141a上の潤滑剤層A中の基油成分OLを微細孔内に含浸させることができる。
【0048】
また、本実施形態の加熱放置工程では、シリンダ141が温度80℃の雰囲気中に少なくとも3時間加熱放置される。このため、シリンダ141の微細孔H中に予め含浸している液体、たとえば防錆油などの残渣油が熱により速やかに除去される。こうして液体が除去された微細孔Hに潤滑剤層A中の基油成分OLがスムーズに染み込む。よって、基油成分OLの含浸が促進される。
【0049】
また、本実施形態の加熱放置工程では、シリンダ141の内周面141a上に形成された潤滑剤層A中の基油成分OLの比率が60重量%以下とされる。このため摺動時に潤滑剤層Aが固体潤滑剤として十分に機能する。よって、摺動時におけるスティック・スリップの発生をより一層防止することができる。
【0050】
また、本実施形態におけるシリンダ141とコイルスプリング143の組み付け方法は、上記した表面処理方法によりシリンダ141の内周面141aを表面処理する表面処理工程と、上記表面処理工程にて表面処理が施されたシリンダ141の内周面141aに摺動可能となるように、コイルスプリング143をシリンダ141に組み付ける組み付け工程とを含む。また、本実施形態における摺動部材は、上記した表面処理方法により表面処理が施された摺動面である内周面141aを有するシリンダ141と、内周面141aに摺動可能となるようにシリンダ141に組み付けられたコイルスプリング143とを備える。このような組付け方法および摺動部材においても、摺動時のスティック・スリップが効果的に防止される。また、スプリングクラッチに上記のように構成された摺動部材を用いることにより、作動時の異音発生を抑え、作動音を低減することができる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態の表面処理工程は、まずシリンダ141の内周面141aに潤滑剤層Aを形成し、その後加熱放置して微細孔H中の残渣油を除去し、残渣油が除去された微細孔H中に潤滑剤層A中の基油成分OLを含浸させている。しかし、最初にシリンダ141を加熱して微細孔Hから残渣油を除去し、次いで内周面141aに潤滑剤層Aを形成し、その後所定時間放置するようにしてもよい。このようにしても、潤滑剤層A中の基油成分OLが内周面141aに開口した微細孔Hに効率的に含浸される。また、最初にシリンダ141を加熱放置して微細孔H内に含浸している残渣油を除去し、次いで潤滑剤が塗布されたコイルスプリング143を組み付けることにより組み付けと同時に内周面141aに潤滑剤層Aを形成し、その後しばらく放置することによっても、微細孔H内に潤滑剤層A中の基油成分OLを含浸させることができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る電動パーキングブレーキ装置の全体図である。
【図2】スプリングクラッチ付近の拡大図である。
【図3】図2の3−3断面図である。
【図4】シリンダとコイルスプリングとを組み付けるまでの工程を表わす図である。
【図5】シリンダとコイルスプリングとの組み付けが完了するまでの工程における、シリンダの内周面の表面状態を表す模式図である。
【図6】本実施形態に係るスプリングクラッチの作動音圧の測定結果を示したグラフである。
【図7】比較例に係るスプリングクラッチの作動音圧の測定結果を示したグラフである。
【図8】本実施形態に係るスプリングクラッチの作動音圧の積算グラフと比較例に係るスプリングクラッチの作動音圧の積算グラフを併記した図である。
【符号の説明】
【0053】
1…電動パーキングブレーキ装置、10…アクチュエータ部、11…ハウジング、11a…仕切板、11b…開口部、12…電気モータ、13…減速器、14…スプリングクラッチ、141…シリンダ(第一部材、摺動部材)、141a…内周面(摺動面)、142…入力カム、143…コイルスプリング(第二部材、摺動部材)、144…出力カム、15…ネジ軸、20…電気制御部、30…ブレーキ部、OL…基油成分、SL…固体潤滑剤成分、H…微細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に形成されるとともに第二部材が摺動する摺動面上に、基油成分および固体潤滑剤成分を含有した潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程と、
前記潤滑剤層中の基油成分を前記摺動面から前記第一部材の内部に含浸させる含浸工程と、
を含む、摺動面の表面処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の摺動面の表面処理方法において、
前記第一部材には、前記摺動面に開口した微細孔が形成され、
前記含浸工程は、前記潤滑剤層中の基油成分を前記微細孔中に含浸させる工程であることを特徴とする、摺動面の表面処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の摺動面の表面処理方法において、
前記第一部材は焼結材であることを特徴とする、摺動面の表面処理方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の摺動面の表面処理方法において、
前記含浸工程は、高温雰囲気中にて行われることを特徴とする、摺動面の表面処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の摺動面の表面処理方法において、
前記含浸工程は、前記第一部材を温度80℃以上の雰囲気中に3時間以上放置する加熱放置工程であることを特徴とする、摺動面の表面処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の摺動面の表面処理方法において、
前記含浸工程は、前記摺動面上に形成された前記潤滑剤層中の基油成分の比率が60重量%以下となるように、前記潤滑剤層中の基油成分を前記摺動面から前記第一部材の内部に含浸させることを特徴とする、摺動面の表面処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表面処理方法により第一部材の摺動面を表面処理する表面処理工程と、
前記表面処理工程にて表面処理が施された前記摺動面に第二部材が摺動可能となるように、前記第二部材を前記第一部材に組み付ける組み付け工程と、
を含む、摺動部材の組み付け方法。
【請求項8】
請求項7に記載の摺動部材の組み付け方法において、
前記第一部材は、前記摺動面としての円筒状の内周面を有するシリンダ部材であり、
前記第二部材は、コイル状に形成され、外周面が前記内周面を摺動するように前記シリンダ部材の内周空間に嵌め込まれたコイルスプリングであることを特徴とする、摺動部材の組み付け方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表面処理方法により表面処理が施された摺動面を有する第一部材と、前記摺動面に摺動可能となるように前記第一部材に組み付けられた第二部材と、を備える摺動部材。
【請求項10】
請求項9に記載の摺動部材において、
前記第一部材は、前記摺動面としての円筒状の内周面を有するシリンダ部材であり、
前記第二部材は、コイル状に形成され、外周面が前記内周面を摺動するように前記シリンダ部材の内周空間に嵌め込まれたコイルスプリングであることを特徴とする、摺動部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−60046(P2010−60046A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226054(P2008−226054)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】