説明

撮像装置、その制御方法及びプログラム

【課題】マニュアルホワイトバランス処理において簡単にホワイトバランス係数を設定できるようにする。
【解決手段】撮像素子101により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔検出部401と、撮像素子101により撮像された画像データ中の特定領域を指示するMWB枠設定部403と、MWB枠設定部403により指示された特定領域が顔検出部401により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する領域判別部405と、領域判別部405による判別結果に基づいてホワイトバランス係数を決定するパラメータ決定部407、408と、決定されたホワイトバランス係数を保持するパラメータ保持手段とを備え、パラメータ保持手段により保持されているホワイトバランス係数に基づいて撮像素子101により撮像された画像データにホワイトバランス処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像データにマニュアルホワイトバランス処理を行う撮像装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マニュアル設定によるホワイトバランス(WB)補正を実施するマニュアルホワイトバランス(MWB)処理が知られている。MWB処理では、例えば撮像された画像データ中の特定領域を指示し、当該領域に含まれる画像データが画像の白色になるようなWB係数を決定し、その決定されたWB係数に基づいてWB処理を行う。具体的には、図9(A)に示すように、画像中心に特定領域(MWB設定枠)901を設定し、白い被写体がMWB設定枠901に入るようにフレーミングして、ユーザの指示によりホワイトバランス係数を決定する手法が実施されている。或いは、図9(B)に示すように、ユーザがMWB設定枠901の位置を白い被写体の位置まで移動して、ホワイトバランス係数を決定する手法が実施されている。
【0003】
また、近年では、顔検出機能を搭載したデジタルカメラが開発、実用化されている。特許文献1には、顔が検出された場合、検出された顔領域の顔色に基づいて、検出された領域の顔色が目標の顔色になるようなWB係数を決定し、顔が検出されなかった場合、画面中の白色を探し、その値からWB係数を決定して、WB処理を行うデジタルカメラが開示されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6975759号明細書
【特許文献2】特開平10−232934号公報
【特許文献3】特開2000−48184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にあるような画面中の「白領域」もしくは「顔領域」からWB係数を求めるデジタルカメラにおいては、MWB処理を実施する場合、特定領域として画面中の「白領域」を設定するのか、「顔領域」を設定するのかをユーザに予め指示させる必要がある。そのため、簡単にWB係数を設定することができなかった。
【0006】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、マニュアルホワイトバランス処理において簡単にホワイトバランス係数を設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像装置は、撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段と、前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する領域判別手段と、前記領域判別手段による判別結果に基づいてパラメータを決定するパラメータ決定手段と、前記パラメータ決定手段により決定されたパラメータを保持するパラメータ保持手段と、前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の撮像装置の制御方法は、撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段とを備えた撮像装置の制御方法であって、前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する処理と、前記特定領域が前記顔領域に含まれるか否かの判別結果に基づいてパラメータを決定する処理と、前記決定されたパラメータを保持手段に保持する処理と、前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う処理とを有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段とを備えた撮像装置を制御するためのプログラムであって、前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する処理と、前記特定領域が前記顔領域に含まれるか否かの判別結果に基づいてパラメータを決定する処理と、前記決定されたパラメータを保持手段に保持する処理と、前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定領域として画面中の「白領域」を設定するのか、「顔領域」を設定するのかをユーザに予め指示させる必要がなく、簡単にホワイトバランス係数を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る顔検出機能を搭載した撮像装置の機能構成を示す概略ブロック図である。図1において、101はCCDやCMOS等からなる固体撮像素子であり、その表面が例えばベイヤー配列のRGBカラーフィルタにより覆われて、カラー撮影可能に構成されている。102はメモリであり、撮像素子101から得られた画像信号を一旦記憶する。
【0010】
114は顔検出部であり、メモリ102に記憶された画像信号中の顔領域を検出する顔領域検出手段である。顔領域を検出する技術としては様々な手法が提案されており、顔の位置及びサイズ情報を取得できるのであればどのような手法を用いてもよく、本願発明は顔検出の手法により制限されるものではない。例えば、ニューラルネットワークに代表される学習を用いた手法や、目や鼻といった物理的形状に特徴のある部位を画像領域からテンプレートマッチングで抽出する手法が知られている。他にも、肌の色や目の形といった画像特徴量を検出し、統計的手法を用いて解析する手法が挙げられる(例えば特許文献2、3を参照)。さらに、現在製品として提案されているものとしては、ウェーブレット変換と画像特徴量を利用して顔検出する手法等や、テンプレートマッチング等を組み合わせた手法等がある。
【0011】
ここで、顔検出の手法として、パターン認識の一つであるテンプレートマッチングについて説明する。パターン認識とは、観測されたパターンを予め定められた概念(クラス)の一つに対応させる処理である。図2は、パターン認識処理のフローチャートであり、顔検出部114によって実行される。先ず、メモリ102から画像データを読み出して前処理し(ステップS1)、前処理した画像データから特徴的部分のパターンを抽出する(ステップS2)。そして、抽出したパターンをテンプレート(標準パターン)に対応させる(テンプレートマッチング)。例えば、図3に示すように特徴的部分のパターン63が抽出された場合、テンプレート61の中心点62を、取得したパターン63のある座標点(i,j)に置く。そして、中心点62のパターン63における位置をずらしながら、テンプレート61とパターン63との重なり部分の類似度を計算していき、類似度が最大になる位置を決定する。パターン63を例えば目や耳等の形状を含むテンプレート61にマッチングさせることにより、目の位置情報や顔領域(顔座標)を取得することができる。このようにして、認識パターンを取得して(ステップS3)、取得した認識パターンを出力し(ステップS4)、パターン認識処理を終了する。
【0012】
図1の説明に戻って、103はホワイトバランス(WB)制御部であり、メモリ102に記憶された画像信号及び顔検出部114から得られる顔情報に基づいて、本発明でいうパラメータであるWB係数(WB補正値)を算出する。そして、算出したWB係数を用いて、メモリ102に記憶された画像信号にWB補正を行う。すなわち、WB制御部103は、本発明でいうパラメータ決定手段及び画像処理手段として機能する。なお、WB制御部103で用いられるWB係数の算出方法については、詳細に後述する。
【0013】
104は色変換マトリックス(MTX)回路であり、WB制御部103によりWB補正された画像信号が最適な色で再現されるように色ゲインをかけて色差信号R−Y、B−Yに変換する。105は色差信号R−Y、B−Yの帯域を制限するローパスフィルタ(LPF)回路である。106はCSUP(Chroma Supress)回路であり、LPF回路105により帯域制限された画像信号のうち、飽和部分の偽色信号を抑圧する。
【0014】
111は輝度信号(Y)生成回路であり、WB制御部103によりWB補正された画像信号から輝度信号Yを生成する。112はエッジ強調回路であり、Y生成回路111により生成された輝度信号Yに対してエッジ強調処理を施す。
【0015】
107はRGB変換回路であり、CSUP回路106から出力される色差信号R−Y、B−Yと、エッジ強調回路112から出力される輝度信号YとをRGB信号に変換する。108はガンマ(γ)補正回路であり、RGB変換回路107により変換されたRGB信号に階調補正を施す。109は色輝度変換回路であり、γ補正回路108により階調補正されたRGB信号をYUV信号に変換する。110は圧縮回路であり、色輝度変換回路109により変換されたYUV信号を例えばJPEG圧縮し、外部記録媒体又は内部記録媒体に画像信号として記録する。
【0016】
115は全体の制御を司るCPUであり、顔検出部114から送られた信号に基づいて、顔が検出されていれば、顔が最適な明るさになるようなシャッタースピードTv、絞り値Avを計算し、また、顔に合焦するようにフォーカスレンズの駆動量を計算する。一方、顔が検出されていなければ、画像全体が最適な明るさになるようなシャッタースピードTv、絞り値Avを計算すると共に、予め設定された合焦領域内にある被写体に合焦するようなフォーカスレンズの駆動量を計算する。113は制御回路であり、CPU115により計算された露出値(Tv、Av)及びフォーカスレンズの駆動量に基づいて、不図示のレンズや絞り、シャッター、撮像素子101をそれぞれ制御する。
【0017】
ここで、図4を参照して、第1の実施形態におけるマニュアルホワイトバランス(MWB)時のWB係数決定までの手順を説明する。図4において、顔検出部401は、図1に示す顔検出部114に相当するものである。また、MWB枠設定部403、顔領域判別部405、目標値決定部407、WB係数算出部408は、図1に示すWB制御部103によりその機能が実現される。
【0018】
図4において、顔検出部401により検出された顔情報402は領域判別部405に送られる。ここでの顔情報とは、少なくとも顔の位置及びサイズ情報であり、具体的には画像中より検出された顔の個数、個数分の顔座標、顔の大きさ情報である。
【0019】
一方、MWB枠設定部403は、MWB処理におけるWB係数を決定するための枠位置を制御する。図5は、MWB枠設定部403の動作を説明するための図であり、MWB設定時の画像表示装置(電子ビューファインダ)上の画面を示す。画面中には、顔検出部401により検出された顔領域枠502及びMWB枠設定部403により表示されるユーザが移動設定可能なMWB設定枠501が表示される。ユーザの操作によりMWB設定枠501が移動され、位置が決定されると、領域判別部405にMWB設定枠501の座標情報であるMWB枠情報404が送られる。このMWB枠設定部403が、本発明でいう特定領域指示手段として機能するものである。
【0020】
領域判別部405は、顔情報402と共にMWB枠情報404を用いて、MWB設定枠501が顔領域に含まれるか否かを判別する。この領域判別部405が、本発明でいう領域判別手段として機能するものである。ここで、領域判別について説明する。画面上のMWB設定枠501の左上の座標を(Xs,Ys)、右下の座標を(Xe,Ye)、検出された顔領域枠502の左上の座標を(Xsf,Ysf)、右下の座標を(Xef,Yef)とする。この場合、以下の式(1)〜(4)の条件を満たしたとき、MWB設定枠501が顔領域に含まれると判別する。
Xs ≧ Xsf・・・(1)
Ys ≧ Ysf・・・(2)
Xe ≦ Xef・・・(3)
Ye ≦ Yef・・・(4)
【0021】
領域判別部405は、MWB設定枠501が顔領域に含まれると判別した場合は、領域判別情報406=「1」とし、含まれないと判別した場合は、領域判別情報406=「0」として、目標値決定部407に送る。
【0022】
目標値決定部407には、MWB設定枠501が顔領域に含まれると判別された場合の目標値1(Rt1,Gt1,Bt1)と、含まれないと判別された場合の目標値2(Rt2,Gt2,Bt2)とが予め用意されている。そして、領域判別情報406に従っていずれかの目標値を目標値(Rt,Gt,Bt)として選択して設定する。目標値1及び目標値2は、CCD(撮像素子101)のRGBカラーフィルタに依存して決定されるものである。目標値1は、肌色に基づいて決定された目標値であり、肌色を撮像して得られるCCDのRGBカラーフィルタ値より決定される。また、目標値2は、白色に基づいて決定された目標値であり、CCDから得られた信号のA/D変換後の出力が10Bitの場合は(1024,1024,1024)に設定される。本実施形態における(Rt1,Gt1,Bt1)の値は、予め太陽光下にて、基準肌色パッチを撮影して得られた値を用いている。この目標値決定部407が、本発明でいう目標値決定手段として機能するものである。目標値決定部407により決定された目標値はWB係数算出部408に送られる。
【0023】
WB係数算出部408は、目標値に基づいてWB係数409を算出、決定する。このWB係数算出部408が、本発明でいうパラメータ算出手段として機能するものである。以下、WB係数の決定方法について説明する。MWB設定枠501により囲まれた領域のCCD信号の色毎の加算平均画素値(AveR,AveG,AveB)を求める。
【0024】
また、色毎の加算平均画素値から平均輝度値AveYを以下の式(5)にて求める。
AveY=(AveR+AveG+AveB)/3・・・式(5)
【0025】
平均輝度値及び加算平均画素値、目標値より、以下の式(6)〜(8)を用いてWB係数(WB_R,WB_G,WB_B)を算出する。
WB_R=AveY×Rt/AveR・・・(6)
WB_G=AveY×Gt/AveG・・・(7)
WB_B=AveY×Bt/AveB・・・(8)
【0026】
WB係数算出部408により求められたWB係数409は、再びMWB設定枠501が変更されるまで、パラメータ保持手段であるメモリに保持される。これが、本発明でいうパラメータ保持手段による処理の例である。保持されたWB係数409は、図1のWB制御部103で、以下の式(9)〜(12)に示すように、ベイヤー配列CCD信号R[i]、G1[i]、G2[i]、B[i](iは画素の位置を示す)に乗算され、WB補正処理が実施される。
Rw[i]=R[i]×WB_R・・・(9)
Gw1[i]=G1[i]×WB_G・・・(10)
Gw2[i]=G2[i]×WB_G・・・(11)
Bw[i]=Bw[i]×WB_B・・・(12)
【0027】
以上がWB係数決定及びWB補正処理となる。ここで決定されたWB係数409、領域判別情報406、目標値決定部407により決定された目標値は、図1の圧縮回路110で圧縮された画像と共にヘッダー情報の一部として記録される。本実施形態においては、Exifフォーマットのプライベートタグ領域に格納される。このように、画像の記録時に、保持されているWB係数409の決定時の領域判別部405による判別結果(領域判別情報406)、保持されているWB係数409の決定時の目標値、WB係数409(或いはそれに関連付けられる値)を画像と関連付けて記憶媒体に記録することにより、撮影された画像が「白領域」もしくは「顔領域」のどちらかで決定されたWB係数に基づいてWB処理されたのかを識別可能とする。
【0028】
次に、図5及び図6を参照して、MWB判別アイコンについて説明する。図5は、MWB設定枠501が顔領域枠502外にある状態を示す。一方、図6は、MWB設定枠501が顔領域枠502内にある状態を示す。
【0029】
図5の状態にMWB設定枠501が設定された場合は、画面左上にあるMWB判別アイコン503として、MWBによって決定されたWB係数が目標値2(MWB設定枠501が画面中の白領域に設定)にて決定されたことを表すアイコンが表示される。一方、図6の状態にMWB設定枠501が設定された場合は、MWB判別アイコン503として、MWBによって決定されたWB係数が目標値1(MWB設定枠501が画面中の顔領域に設定)にて決定されたことを表すアイコンが表示される。このように、パラメータ決定時の領域判別部405による判別結果を表示し、ユーザに告知することにより、現在保持されているWB係数が「白領域」をもとに決定されたものであるか、「顔領域」をもとに決定されたものであるかを明示することが可能となる。この処理が、本発明でいう第2の領域判別結果表示手段による処理例である。
【0030】
図5、図6のMWB判別アイコン503は、MWB設定枠501が設定されたときの領域判別情報を表示するものである。図7に示すように、MWB判別アイコン503とは別に、MWB判別補助アイコン504を表示するようにしても良い。このMWB判別補助アイコン504は、MWB設定枠501の位置を決定する前の枠移動中に、現在の枠設定が顔領域に含まれているか、含まれていないかをリアルタイムに表すものである。MWB判別補助アイコン504は、領域判別情報406をリアルタイムに求めることにより表示される。このように、領域判別部405の結果(領域判別情報406)を表示し、ユーザに告知することにより、その時点でMWB設定を実施した場合に、「白領域」の目標値にてWB係数が決定されるのか、「顔領域」の目標値にてWB係数が決定されるのかを明示することが可能となる。なお、本実施形態では、MWB設定枠501が設定されたときの領域判別情報406をユーザに告知するため、MWB判別補助アイコン504を表示するようにしたが、これに限られるものではない。例えばLED等の色や点滅の方法等を用いて領域判別情報406をリアルタイムに表現することも可能である。この処理が、本発明でいう第1の領域判別結果表示手段による処理例である。
【0031】
また、MWB設定枠501が顔領域に含まれるか否かを判別するのに、式(1)〜(4)(MWB設定枠501が顔領域に完全に含まれる条件)を用いたが、これに限られるものではない。例えばMWB設定枠501内に顔領域が一部でも含まれる場合は、MWB設定枠501が顔領域に含まれると判別するようにしても良い。
【0032】
以上述べたように、本発明を適用することにより、「白領域」、「顔領域」が設定されたときの目標値を設定し、特定領域が顔領域に含まれている場合には、顔領域用の目標値、それ以外の場合は白領域用の目標値と2つの目標値を切り替える。これにより、ユーザに画面中の「白領域」を設定するのか、「顔」領域を設定するのかを指示させることなく自動的に最適なマニュアルホワイトバランス係数を設定することが可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では、第1の実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1の実施形態と同等の部分に関しては説明を省略する。
【0034】
図8を参照して、第2の実施形態におけるMWB時のWB係数決定までの手順を説明する。図8において、顔検出部801より検出された顔情報802は領域判別部805に送られる。ここでの顔情報とは、画像中より検出された顔の個数、個数分の顔座標、顔の大きさ情報である。
【0035】
一方、MWB枠設定部803は、MWB処理におけるWB係数を決定するための枠位置を制御する。MWB枠設定部803の動作は、第1の実施形態で図5、6により説明したとおりである。ユーザの操作によりMWB設定枠501が移動され、位置が決定されると、領域判別部805にMWB設定枠501の座標情報であるMWB枠情報804が送られる。
【0036】
領域判別部805は、顔情報802と共にMWB枠情報804を用いて、MWB設定枠501に顔領域が含まれるか否かを判別する。領域判別については第1の実施形態で説明したとおりである。
【0037】
領域判別部805は、MWB設定枠501が顔領域に含まれると判別した場合は、領域判別情報806=「1」、含まれないと判別した場合は、領域判別情報806=「0」として、WB係数決定部807に送る。
【0038】
WB係数決定部807は、2つのWB係数決定方法を有し、領域判別情報806に基づいてWB係数決定方法を選択する。
【0039】
MWB設定枠501により囲まれた領域のCCD信号の色毎の加算平均画素値(AveR,AveG,AveB)とし、色毎の加算平均画素値から平均輝度値をAveYとした場合、領域判別情報806=「1」のときは、第1のWB係数決定方法である以下の式(13)〜(15)を用いてWB係数808を決定する。この処理が、本発明でいう第1のパラメータ決定方法の例である。なお、Rf、Gf、Bfは肌色に基づき求められる目標値である。
WB_R=AveY×Rf/AveR・・・(13)
WB_G=AveY×Gf/AveG・・・(14)
WB_B=AveY×Bf/AveB・・・(15)
【0040】
それに対して、領域判別情報806=「0」のときは、第2のWB係数決定方法である以下の式(16)〜(18)を用いてWB係数808を決定する。この処理が、本発明でいう第2のパラメータ決定方法の例である。
WB_R=AveY×1024/AveR・・・(16)
WB_G=AveY×1024/AveG・・・(17)
WB_B=AveY×1024/AveB・・・(18)
【0041】
以上がWB係数決定及びWB補正処理となる。ここで決定されたWB係数808、領域判別情報806、WB係数決定方法は、図1の圧縮回路110で圧縮された画像と共にヘッダー情報の一部として記録される。本実施形態においては、Exifフォーマットのプライベートタグ領域に格納される。
【0042】
以上述べたように、本発明を適用することにより、特定領域が顔領域に含まれている場合とそれ以外の場合とでWB係数決定方法を切り替える。これにより、ユーザに画面中の「白領域」を設定するのか、「顔」領域を設定するのかを指示させることなく自動的に最適なマニュアルホワイトバランス係数を設定することが可能となる。
【0043】
本発明による効果をまとめると、顔検出を用いて顔が存在する場合に顔に最適なWB係数と、顔が存在しない場合に画像の白領域を検出してWB係数を決定するデジタルカメラにおけるマニュアルホワイトバランス設定を行う場合に、ユーザがどちらの手段でマニュアルホワイトバランス処理を実施したいかを設定することなく、自動にマニュアルホワイトバランスのWB係数決定のための目標値もしくは決定方法を切り換えることが可能になる。
【0044】
なお、本発明の目的は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても達成される。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
【0045】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0046】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0047】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけに限らない。例えば、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(基本システム或いはオペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現されてもよい。
【0048】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる形態でもよい。この場合メモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
【図2】テンプレートマッチングによるパターン認識処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】テンプレートマッチングの概念を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態におけるマニュアルホワイトバランス時のホワイトバランス係数決定のための構成を示す図である。
【図5】マニュアルホワイトバランス設定枠の設定時の画面表示例を示す図である。
【図6】マニュアルホワイトバランス設定枠の設定時の画面表示例を示す図である。
【図7】マニュアルホワイトバランス設定枠の設定時の画面表示例を示す図である。
【図8】第2の実施形態におけるマニュアルホワイトバランス時のホワイトバランス係数決定のための構成を示す図である。
【図9】従来のマニュアルホワイトバランス設定枠について説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
101:固体撮像素子
102:メモリ
103:ホワイトバランス制御部
104:色変換マトリックス回路
105:ローパスフィルタ回路
106:CSUP回路
107:RGB変換回路
108:ガンマ補正回路
109:色輝度変換回路
110:圧縮回路
111:輝度信号生成回路
112:エッジ強調回路
113:制御回路
114:顔検出部
115:CPU
401:顔検出部
403:マニュアルホワイトバランス枠設定部
405:領域判別部
407:目標値決定部
408:ホワイトバランス係数算出部
801:顔検出部
803:マニュアルホワイトバランス枠設定部
805:領域判別部
807:ホワイトバランス係数決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像を行う撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段と、
前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する領域判別手段と、
前記領域判別手段による判別結果に基づいてパラメータを決定するパラメータ決定手段と、
前記パラメータ決定手段により決定されたパラメータを保持するパラメータ保持手段と、
前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記パラメータ決定手段は、前記領域判別手段による判別結果に基づいて目標値を決定する目標値決定手段と、前記特定領域に含まれる画像データと前記目標値決定手段により決定された目標値とに基づいてパラメータを算出するパラメータ算出手段とにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記目標値決定手段は、少なくとも2つ以上の目標値を有し、前記領域判別手段による判別結果に基づいて目標値を選択することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つ以上の目標値のうち、少なくとも一つは肌色に基づいて決定された目標値であり、少なくとも一つは白色に基づいて決定された目標値であることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記パラメータ決定手段は、前記領域判別手段により前記特定領域が前記顔領域に含まれると判別された場合に、前記特定領域に含まれる画像データを用いて第1のパラメータを算出する第1のパラメータ決定方法と、前記領域判別手段により前記特定領域が前記顔領域に含まれないと判別された場合に、前記特定領域に含まれる画像データを用いて第2のパラメータを算出する第2のパラメータ決定方法とを実行することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1のパラメータ決定手段には第1の目標値が、前記第2のパラメータ決定手段には第2の目標値が予め設定されており、それぞれの目標値に応じてパラメータが決定されることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記パラメータ決定手段により決定されるパラメータは、画像データのホワイトバランス補正を行うホワイトバランス係数であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記領域判別手段による判別結果を表示装置に表示する第1の領域判別結果表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の領域判別結果表示手段は、前記特定領域が前記顔領域に含まれていることを表すアイコンと、前記特定領域が前記顔領域に含まれていないことを表すアイコンとを表示することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記パラメータ保持手段が保持するパラメータ決定時の前記領域判別手段による判別結果を表示装置に表示する第2の領域判別結果表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第2の領域判別結果表示手段は、パラメータ決定時に前記特定領域が前記顔領域に含まれていたことを表すアイコンと、パラメータ決定時に前記特定領域が前記顔領域に含まれていないことを表すアイコンとを表示することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像手段により撮像された画像データを記録する記憶媒体を備え、
前記画像データの記録時に、前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータの決定時の前記領域判別手段による判別結果、前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータの決定時に前記目標値決定手段により決定された目標値、及び前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータ又は該パラメータに関連付けられる値のうち少なくともいずれかを該画像データと関連付けて前記記憶媒体に記録することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像手段により撮像された画像データを記録する記憶媒体を備え、
前記画像データの記録時に、前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータの決定時の前記領域判別手段による判別結果、前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータの決定方法、及び前記パラメータ保持手段に保持されているパラメータ又は該パラメータに関連付けられる値のうち少なくともいずれかを該画像データと関連付けて前記記憶媒体に記録することを特徴とする請求項5又は6に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段とを備えた撮像装置の制御方法であって、
前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する処理と、
前記特定領域が前記顔領域に含まれるか否かの判別結果に基づいてパラメータを決定する処理と、
前記決定されたパラメータを保持手段に保持する処理と、
前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う処理とを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項15】
撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の顔領域を検出する顔領域検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像データ中の特定領域を指示する特定領域指示手段とを備えた撮像装置を制御するためのプログラムであって、
前記特定領域指示手段により指示された特定領域が前記顔領域検出手段により検出された顔領域に含まれるか否かを判別する処理と、
前記特定領域が前記顔領域に含まれるか否かの判別結果に基づいてパラメータを決定する処理と、
前記決定されたパラメータを保持手段に保持する処理と、
前記パラメータ保持手段により保持されているパラメータに基づいて前記撮像手段により撮像された画像データに画像処理を行う処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−87999(P2010−87999A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256806(P2008−256806)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】