説明

撮像装置、撮像システムおよび交換レンズシステム

【課題】レンズ装置の持つデータが撮像装置の撮像系の仕様に対応していない場合に、変倍に伴うピントずれを少なくする。
【解決手段】撮像装置128には、変倍レンズ102の移動に伴う像面変位を補正する補正レンズ105の位置に関するデータを記憶したデータ記憶手段120、および該データに基づいて補正レンズの駆動を制御するとともに撮像装置から受信した補正情報を用いて該データを補正するレンズ制御手段116を有したレンズ装置127が取り外し可能に装着される。該撮像装置は、撮像系と、該補正情報を記憶した補正情報記憶手段142,160と、該補正情報をレンズ装置に通信する撮像制御手段114とを有する。該補正情報は、上記データと撮像系の仕様との非対応により発生するデフォーカスを補正するための第1の情報を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ交換式ビデオカメラシステム等の撮像システムに用いられる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置(以下、カメラという)に取り外し可能に装着される交換レンズには、変倍レンズと、該変倍レンズより像側に配置され、変倍レンズの移動に伴う像面変位を補正する補正レンズとを有するインナーフォーカスタイプのものがある。このようなインナーフォーカスタイプの交換レンズにおいては、変倍レンズの位置に応じた補正レンズの位置に関するカムデータをメモリに記憶し、該カムデータを用いて補正レンズの位置制御を行うことで、ピントが合った状態での変倍が行えるようにしている。
【0003】
但し、インナーフォーカスタイプの交換レンズにおいては、カメラと交換レンズのバックフォーカスの不一致に起因して、ピント位置のずれとして像ぼけが発生する。特に、ワイド側においてこのような像ぼけが顕著である。
【0004】
そこで、特許文献1には、カメラからカメラ自身のバックフォーカスに関する情報(ずれ情報)を交換レンズ側に通信し、交換レンズ側のメモリに記憶されたカムデータに補正を加えるようにしたレンズ交換式ビデオカメラシステムが提案されている。
【特許文献1】特開平9−23366号公報(段落0043〜0055、図3〜5等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示されたカメラシステムにて用いられるカムデータは、特定のカメラに搭載されている撮像系の仕様、例えば、撮像素子の解像度、該撮像素子のサイズ、該撮像系に含まれるカラーフィルタの特性を前提として決められている。このため、交換レンズが、これに記憶されたカムデータが前提としている仕様とは異なる仕様の撮像系を有するカメラに装着された場合に、カムデータを補正しきれず、変倍によってピントがずれてしまうという問題がある。
【0006】
例えば、カムデータが前提とする撮像素子の画素ピッチよりも大幅に狭い画素ピッチを有する撮像素子が用いられている場合には、特許文献1にて開示されたカムデータの補正処理を行っても、ピント状態を維持できないおそれがある。これは、カムデータを作成するときに基準となる空間周波数に大幅な違いがあるためである。
【0007】
したがって、撮像系の仕様が異なるカメラに対しては、それ専用の交換レンズが必要になる。これでは、ユーザーが、従来使用していたカメラとは撮像系の仕様が異なるカメラを新たに使用する場合に、従来使用していた交換レンズとは別の専用交換レンズを準備する必要が生じる。
【0008】
本発明は、レンズ装置の持つデータが、撮像装置の撮像系の仕様に対応していない場合であっても、変倍に伴うピントずれを少なくすることができるようにした撮像装置、撮像システムおよび交換レンズシステムを提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての撮像装置(第1の撮像装置)は、 変倍レンズ、該変倍レンズの移動に伴う像面変位を補正する補正レンズ、変倍レンズの位置に応じた補正レンズの位置に関するデータを記憶したデータ記憶手段、および該データに基づいて補正レンズの駆動を制御するとともに撮像装置から受信した補正情報を用いて該データを補正するレンズ制御手段を有するレンズ装置が取り外し可能に装着される撮像装置である。該撮像装置は、レンズ装置により形成された物体像を撮像する撮像系と、該補正情報を記憶した補正情報記憶手段と、該補正情報をレンズ装置に通信する撮像制御手段とを有する。そして、該補正情報は、上記データと撮像系の仕様との非対応により発生するデフォーカスを補正するための第1の情報を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の側面としての撮像装置は、変倍レンズ、該変倍レンズの移動に伴う像面変位を補正する補正レンズ、変倍レンズの位置に応じた補正レンズの位置に関するデータを記憶したデータ記憶手段、および該データに基づいて補正レンズの駆動を制御するとともに撮像装置から受信した補正情報を用いて該データを補正するレンズ制御手段を有するレンズ装置が取り外し可能に装着される撮像装置である。該撮像装置は、レンズ装置により形成された物体像を撮像する撮像系と、該補正情報を記憶した補正情報記憶手段と、該補正情報をレンズ装置に通信する撮像制御手段と、操作部材とを有する。そして、撮像制御手段は、操作部材の操作に応じて補正情報を変更することを特徴とする。
【0011】
なお、上記撮像装置とレンズ装置とを含む撮像システムも本発明の一側面を構成する。さらに、上記撮像装置に着脱可能なレンズ装置であって、該撮像装置の撮像系の仕様に対応した上記データを有する第1のレンズ装置と、撮像系の仕様に非対応の上記データを有する第2のレンズ装置とを含む交換レンズシステムも、本発明の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0012】
第1の撮像装置では、装着されたレンズ装置が有する補正レンズ制御用のデータが該撮像装置の撮像系の仕様に対応していない場合には、該データを補正するためにレンズ装置に送信される補正情報に上記第1の情報を含める。このため、レンズ装置における補正レンズ制御用のデータと撮像系の仕様とが非対応である場合でも、変倍に伴うピントずれを確実に少なくすることができ、高画質な映像を撮影することができる。
【0013】
また、第2の撮像装置では、レンズ装置が有する補正レンズ制御用のデータを補正するためにレンズ装置に送信される補正情報を、任意に変更することができる。したがって、例えば、レンズ装置における補正レンズ制御用のデータと撮像系の仕様とが非対応である場合でも、変倍に伴うピントずれを確実に少なくするように補正情報を変更することができ、この結果、高画質な映像を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1である撮像システムの構成を示している。該システムは、レンズ装置としての交換レンズ127と、この交換レンズ127が取り外し可能に(交換可能に)装着される撮像装置としてのビデオカメラ128とにより構成されている。
【0016】
交換レンズ127は、被写体側から順に、固定の第1レンズユニット101と、光軸方向に移動して変倍を行う第2レンズユニット(以下、変倍レンズという)102と、絞り103と、固定の第3レンズユニット104とを有する。さらに、第3レンズユニット104よりも像側には、光軸方向に移動してフォーカシングと変倍に伴う像面変位の補正とを行う第4レンズユニット(以下、補正レンズという)105を有する。
【0017】
変倍レンズ102および補正レンズ105は、エンコーダ等の絶対位置検出器102A,105Aによりそれぞれの絶対位置が検出され、その検出情報は交換レンズ127内に設けられたレンズ制御手段としてのレンズマイクロコンピュータ116に供給される。
【0018】
交換レンズ127を通過した被写体からの光束は、カメラ128に設けられたCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子106の受光面上に到達する。撮像素子106の前面には、RGBのカラーフィルタ106aが設けられている。撮像素子106とカラーフィルタ106a、および撮像素子106からの出力信号を処理する後述する増幅器109やカメラ信号処理回路112により撮像系が構成される。
【0019】
なお、本実施例では、1つの撮像素子によってRGBの各色光を光電変換する場合について説明するが、本発明は、これに限らず、3つの撮像素子によってRGBの各色光を光電変換する場合にも適用することができる。この場合、R,G,B用の撮像素子にR,G,B用のカラーフィルタがそれぞれ設けられる。
【0020】
撮像素子106の光電変換機能によって出力された信号は、増幅器109で最適なレベルに増幅され、カメラ信号処理回路112へと入力される。カメラ信号処理回路112は、増幅器109から入力された信号を、ハイビジョンテレビ信号(HD映像)に変換し、不図示の記録媒体(磁気テープ、半導体メモリ、光ディスク等)に記録する。また、カメラ信号処理回路112から出力されたテレビ信号はAF信号処理回路113に入力される。
【0021】
AF信号処理回路113では、テレビ信号から映像のコントラスト状態を示すAF評価値を生成する。該AF評価値信号は、カメラ128内に設けられた撮像制御手段としてのカメラマイクロコンピュータ114によってAFデータ読み出しプログラム115を用いて読み出され、レンズマイクロコンピュータ116により送信される。ここで、カメラマイクロコンピュータ114とレンズマイクロコンピュータ116とは、カメラ128と交換レンズ127とのマウント結合部に設けられた通信端子190を介して、相互に通信が可能である。
【0022】
カメラマイクロコンピュータ114は、ズームスイッチ130およびAFスイッチ131の状態を読み込み、該状態を示す操作情報をレンズマイクロコンピュータ116に送信する。
【0023】
レンズマイクロコンピュータ116は、該操作情報によってAFスイッチ131が押されておらず、かつズームスイッチ130が押されていると判断したときは、変倍レンズ102をズームスイッチ130が押されている方向(テレ又はワイド方向)に駆動する。具体的には、ズームモータドライバ122に信号を送り、ズームアクチュエータ121を駆動することによって、変倍レンズ102を駆動する。
【0024】
このとき、カメラマイクロコンピュータ114は、ズーム駆動プログラム119に従い、レンズマイクロコンピュータ116内に設けられたカムデータメモリ120に予め記憶されたフォーカスカムデータに基づいて、補正レンズ105を駆動する。具体的には、フォーカスモータドライバ126に信号を送り、フォーカスアクチュエータ125を駆動することによって、補正レンズ105を駆動する。これにより、像面変位、つまりはピントずれ(デフォーカス)がほとんどない状態での変倍が行われる。
【0025】
本実施例のように、変倍レンズ102よりも補正レンズ105が像側に配置されているインナーフォーカスタイプのレンズでは、変倍時にピントを維持するための補正レンズ105の位置は被写体距離によって変化する。このため、フォーカスカムデータは、図2(a)に示すように、変倍レンズ102の絶対位置ごとおよび被写体距離ごとの補正レンズ105の駆動位置を示す。そして、ズーム駆動プログラム119は、位置検出器102A,105Aにより変倍レンズ102および補正レンズ105の絶対位置を検出する。そして、該絶対位置情報によって選択されたフォーカスカムデータを用いて、フォーカスアクチュエータ125の回転方向および回転量を決定する。
【0026】
また、このとき、ズーム駆動プログラム119は、カメラマイクロコンピュータ114から送信されてきたAF評価信号を参照し、該AF評価値が最大になる位置を保ちつつ変倍動作を行う。これにより、フォーカスカムデータを用いた補正レンズ105の駆動方向の誤判定を防止することができる。
【0027】
AFスイッチ131が押され、ズームスイッチ130が押されていないときは、レンズマイクロコンピュータ116内のAF制御部117がオートフォーカス動作を行う。具体的には、AF制御部117は、AF評価値信号が最大になるようにフォーカスモータドライバ126およびフォーカスモータ125を介して補正レンズ105を駆動する。これにより、オートフォーカスが行われる。
【0028】
ここで、上述したように変倍時にフォーカスカムデータに基づいて補正レンズ105の位置を制御する場合においては、正確なバックフォーカスを確保するためのフォーカスカムデータを定めなければならない。そして、該フォーカスカムデータは、予め所定の条件下で設定された基本フォーカスカムデータを所定の補正値を用いて補正することにより定められる。
【0029】
ここでいう所定の補正値とは、交換レンズ127自身で持っている補正値(以下、レンズ側補正値という)と、カメラ128から伝達される補正値(以下、カメラ側補正値という)との合計値である。
【0030】
レンズ側補正値とは、例えば、該交換レンズの製造誤差に起因するバックフォーカス(以下、BFと略す)のばらつきを補正するための固定的な補正値と、温度変化に起因したBF変動を補正するための変動的な補正値との合計値である。
【0031】
同様に、カメラ側補正値は、カメラ128の製造誤差に起因するBFのばらつきを補正するための固定的な補正値(以下、ばらつき測定データという)と、温度変化に起因したBF変動を補正するための変動的な補正値(以下、温度補償データという)とを含む。温度補償データは、温度補償制御部141において、温度センサ140によって検出された温度に応じたデータとして生成される。
【0032】
但し、本実施例では、さらにカメラ側補正値の1つとして、デフォーカス補正データ(第1の情報)を設けている。デフォーカス補正データは、交換レンズ127のフォーカスカムデータがカメラ128の撮像系の仕様に対応していないために発生する変倍時のピントずれを補正するための補正データである。デフォーカス補正データは、デフォーカス補正メモリ160に記憶されている。
【0033】
フォーカスカムデータがカメラ128の撮像系の仕様に対応していない場合とは、本実施例では、そのフォーカスカムデータが標準(SD)映像を撮影するための仕様の撮像系を有するSDカメラに装着されることを前提として作成された場合である。
【0034】
このように、デフォーカス補正データをカメラ側補正値に含ませることで、該カメラ側補正値を受信したレンズマイクロコンピュータ116は、HD映像を撮影するHDカメラであるカメラ128の撮像系の仕様に合うように、フォーカスカムデータを補正する。
【0035】
ここで、フォーカスカムデータについて説明する。SDカメラの仕様に対応するSD交換レンズにおいて、基本となるフォーカスカムデータは、SDカメラに使用される撮像素子のナイキスト周波数に関係し、SDカメラに対応した空間周波数によって計算されたものが用いられる。
【0036】
この基本のフォーカスカムデータに対して、SD交換レンズを基準SDカメラに装着し、該交換レンズの製造上のばらつきや温度変化に起因した変倍時のピントずれ量(デフォーカス量)を測定する。そして、この測定結果から該デフォーカスを許容範囲に収めるために必要なバックフォーカス補正の固定的および変動的補正値をそれぞれ決定する。
【0037】
しかし、HDカメラに搭載される撮像素子は、SDカメラに比べて画素が狭ピッチ化(高画素化)しているのが普通である。そして、これに伴い、撮像素子のナイキスト周波数も上がる。したがって、SDカメラを前提としたフォーカスカムデータでは、HDカメラでベストピント位置が得られない。
【0038】
この原因として、交換レンズが有する球面収差による影響が挙げられる。交換レンズが装着されるカメラがSDカメラからHDカメラに変わって撮像素子が挟ピッチ化した場合、SDカメラではベストデフォーカスとされていた最小錯乱円の位置において高周波の解像が得られず、像ぼけとして認識されてしまう。これにより、ベストデフォーカス位置が芯最小位置の方向にずれるための現象である。
【0039】
一般に、芯最小位置では、解像は最高の状態になるが、低周波の領域の画像に対してはコントラストの低い状態となることが知られている。しかし、この分のMTF等の落ち込みは、撮像素子からの出力信号を処理するカメラ信号処理部112にて補正することが可能であり、高い周波数まで十分に解像された好ましい画像を得ることができる。
【0040】
したがって、本実施例では、カメラマイクロコンピュータ114は、カメラ128に装着された交換レンズ127の種類、すなわちSDレンズかHDレンズかを識別する。そして、交換レンズ127がSDレンズの場合には、撮像系のHD仕様に対してSDレンズを使用した場合に発生し得るベストデフォーカス位置のずれ量(デフォーカス)を補正するためのデフォーカス補正データをカメラ側補正値に加えてレンズ側に供給する。該カメラ側補正値を受信したレンズマイクロコンピュータ116は、該カメラ側補正値を用いてフォーカスカムデータを補正する。
【0041】
この補正の様子を示したのが図2(b)である。図2(b)には、例として、図2(a)に示す基本フォーカスカムデータ(実線)と、該基本フォーカスカムデータが前提とするBFに比べて、BFが伸びた場合の補正後のフォーカスカムデータ(点線)とを示す。BFが伸びた場合は、この伸び分を基本フォーカスカムデータから差し引いて、フォーカスカムデータを全体として下方にシフトするように補正演算する。また、BFが縮んだ場合は、この縮み分を基本フォーカスカムデータに加えて、フォーカスカムデータを全体として上方にシフトするように補正演算する。
【0042】
これにより、ユーザーが既に所有していたSD交換レンズ127をHDカメラ128に装着した場合でも、変倍時の像面変動、つまりはデフォーカスをほとんどなくすることができ、高解像度の映像を撮影することができる。
【0043】
しかも、本実施例では、デフォーカス補正データを従来もレンズ側に送信されていたばらつき測定データおよび温度補償データに加えて1つのカメラ側補正値としてレンズ側に送信する。このため、これを受け取る交換レンズ127では、従来と同じカメラ側補正値として扱うことができる。したがって、カメラ128と交換レンズ127との間に新たな通信ラインを設けたり、レンズマイクロコンピュータ116内でのフォーカスカムデータの補正演算方法を変更する必要がない。
【0044】
なお、ベストデフォーカス位置のずれ量は、ズーム位置、補正レンズの位置(フォーカス位置)、球面収差の倒れ量の違いおよび絞り値によって変化する。このため、位置検出器102Aからのズーム位置情報151、位置検出器105Aからのフォーカス位置情報152、さらに不図示の絞り位置検出器からの絞り値情報に基づいて、デフォーカス補正データを選択又は補正する処理を行ってもよい。これにより、より精度の高いフォーカスカムデータ補正を行うことができる。
【0045】
また、フォーカスカムデータは、先に説明したように、交換レンズ127の製造誤差に起因するBFのばらつきや温度変化に起因したBF変動によっても補正する必要がある。このため、上述したカメラ側補正値によるフォーカスカムデータの補正に加えて、レンズ側補正値によるフォーカスカムデータの補正も行われる。
【0046】
次に、本実施例において、カメラ128からカメラ側補正値を交換レンズ127側に伝達する通信動作について説明する。
【0047】
カメラ128における構造部品の製造精度、取り付け誤差等により発生するBFのばらつきは、ばらつき測定データとしてカメラ128の製造段階で測定される。そして、このばらつき測定データは、書き換え可能なばらつきデータメモリ142に書き込まれる。
【0048】
撮影動作中に発生する環境温度の変化は、カメラ128に設けられた温度センサ140によって計測し、カメラマイクロコンピュータ114内の温度補償制御部141の作動プログラムによってBFの変動量データ、つまりは温度補償データに変換される。
【0049】
さらに、前述したようにカメラマイクロコンピュータ114は、レンズマイクロコンピュータ116から送信されてきた該交換レンズ127の種類を示す情報に基づいて、該交換レンズ127がSD交換レンズかHD交換レンズかを判定する。交換レンズ127の種類を示す情報は、レンズマイクロコンピュータ116内の機種情報メモリ150にレンズ機種情報として記憶されている。
【0050】
そして、SD交換レンズであると判定したときは、ばらつき測定データおよび温度補償データに、デフォーカス補正データを加えてカメラ側補正値とし、所定のタイミングで交換レンズ127に送信する。なお、交換レンズ127がHD交換レンズであると判定したときは、ばらつき測定データおよび温度補償データのみをカメラ側補正値とし、交換レンズ127に送信する。
【0051】
レンズマイクロコンピュータ116において、ズーム駆動プログラム119は、送信されてきたカメラ側補正値を用いて、フォーカスカムデータを補正する。
【0052】
次に、図3のフローチャートを用いて上記通信および処理の流れを説明する。カメラ128と交換レンズ127の通信における関係は、本実施例ではカメラ128がマスターで、交換レンズ127がスレーブとなっている。レンズマイクロコンピュータ116は、カメラ側のクロック出力に同期して転送されてくるデータ内の識別情報によって、その通信が初期通信かその後の逐次通信かを判断する。
【0053】
図3(a),(b)のフローチャートには、カメラ128の通信動作を示している。図3(a)に示すように、電源投入時又はレンズ交換の直後(ステップ〔図中ではSと略記する〕0)、カメラマイクロコンピュータ114は、交換レンズ127が装着されているか否かをチェックする(ステップ1)。装着されていれば、レンズマイクロコンピュータ116から初期情報として送信されてきたレンズ機種情報に基づいて、該交換レンズがHDレンズかSDレンズかを判別する(ステップ2)。
【0054】
SDレンズである場合は、カメラ側補正値として、ばらつき測定データ+温度補償データ+デフォーカス補正データを設定する(ステップ3)。また、HDレンズである場合は、カメラ側補正値として、ばらつき測定データ+温度補償データを設定する(ステップ4)。
【0055】
次に、カメラマイクロコンピュータ114は、上記カメラ側補正値とその他の初期通信すべき情報とを初期情報としてセットする(ステップ5)。そして、レンズマイクロコンピュータ116に対して初期通信を行う(ステップ6)。
【0056】
また、初期通信完了後は、図3(b)に示すように、通信開始割り込みを逐次かける(ステップ7)。これに応じて交換レンズ127の装着状態がチェックされ(ステップ8)、装着されていれば、逐次情報をセットし(ステップ9)、レンズマイクロコンピュータ116に逐次通信を行う(ステップ10)。逐次通信には、カメラシステムの使用中に変化し得る温度補償データのみのカメラ側補正値が逐次情報の1つとして含まれる。ステップ8において、交換レンズ127が取り外された場合は、ステップ1に戻る。
【0057】
図3(c)のフローチャートには、交換レンズ127の通信動作を示している。レンズマイクロコンピュータ116内でのほとんどの処理は、AFやレンズ移動制御が占め、所定タイミングで行われるカメラマイクロコンピュータ114との通信が完了した時点で、通信完了の割り込みをかけ(ステップ20)、一時的に通信処理を行う。
【0058】
ステップ21では、今回の通信が初期通信か否かを判別する。初期通信であるときは、カメラマイクロコンピュータ114から送信されてきた初期情報のうち、ばらつき測定データ、温度補償データおよびデフォーカス補正データを含むカメラ側補正値を不図示のメモリ1に転送する(ステップ22)。一方、逐次通信であるときは、カメラマイクロコンピュータ114から送信されてきた逐次情報のうち温度補償データのみのカメラ補正値を不図示のメモリ2に転送する(ステップ23)。そして、割り込み処理を完了する。
【0059】
メモリ1とメモリ2に書き込まれたカメラ補正値は、フォーカスカムデータの補正に用いられる。
【0060】
なお、本実施例では、カメラマイクロコンピュータ114内でばらつき測定データ、温度補償データ(およびデフォーカス補正データ)を合計してカメラ側補正値を求め、その上でレンズマイクロコンピュータ116に送信する場合について説明した。しかし、本発明では、ばらつき測定データ、温度補償データ(およびデフォーカス補正データ)を個別に3つのカメラ側補正値としてレンズマイクロコンピュータ116に送信し、レンズマイクロコンピュータ116においてこれらを合計して補正に使用してもよい。
【実施例2】
【0061】
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、カメラにおいて、装着された交換レンズの種類を判別し、所定種類の交換レンズであった場合に、ばらつき測定データ、温度補償データおよびデフォーカス補正データを合計してカメラ側補正値とする場合について説明した。しかし、本実施例では、交換レンズの種類の判別を行うことなく、フォーカスカムデータの適正な補正を行う。
【0062】
図4には、本実施例のビデオカメラシステムの構成を示している。なお、本実施例において、実施例1と同じ構成要素については実施例1と同符号を付して説明に代える。
【0063】
本実施例では、カメラ側補正値をばらつき測定データと温度補償データのみとし、ユーザーの操作に応じて該ばらつき測定データの書き換えを可能としている。すなわち、FB補正スイッチ143を設け、該FB補正スイッチ143が操作されることによって、メモリ142内のばらつき測定データを書き換えることができるようにしている。
【0064】
具体的には、まずユーザーは、テレ側でピントを合わせ、マニュアルズームによってワイド側まで変倍する。次に、FB補正スイッチ143が操作されると、カメラマイクロコンピュータ116はAF動作を行ってピントを取り直す。そして、AFでピントを取り直したときの補正レンズ105の移動量を用いてばらつき測定データを書き換える。ばらつき測定データが変更されることにより、結果的にフォーカスカムデータの補正が行われる。
【0065】
このようにカメラ側補正値であるばらつき測定データをユーザーの操作に応じて変更できるようにすれば、実施例1にて説明したデフォーカス補正データやこれを記憶しておくメモリを不要とすることができる。しかも、実施例1と同様に、ユーザーが既に所有していたSD交換レンズ127をHDカメラ128に装着した場合でも、変倍時の像面変動をほとんどなくすることができる。
【実施例3】
【0066】
以上説明した実施例1,2のビデオカメラを用いれば、図5に示すようなビデオカメラシステムおよび交換レンズシステム180を構築することができる。
【0067】
図5において、交換レンズA,Bはともに、実施例1,2に示したビデオカメラ(HDカメラ)128に装着可能なレンズである。交換レンズAは、そのフォーカスカムデータがHDカメラ128の撮像系の仕様に非対応であるSDレンズ127である。交換レンズBは、そのカムデータがHDカメラ128の撮像系の仕様に対応したHDレンズを示す。
【0068】
すなわち、ユーザーは既に所有していたSD交換レンズA(127)と、新たに準備したHD交換レンズB(170)とを用途(必要な焦点距離範囲等)に応じてHDカメラ128に対して使い分けることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、請求項に記載した内容の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1であるビデオカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1におけるフォーカスカムデータを示す図。
【図3】実施例1における通信動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例2であるビデオカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図5】本発明の実施例3であるビデオカメラシステムの構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0071】
106 撮像素子
106a カラーフィルタ
114 カメラマイクロコンピュータ
116 レンズマイクロコンピュータ
120 カムデータメモリ
127 交換レンズ
128 ビデオカメラ
141 温度補償制御部
142 ばらつきデータメモリ
150 機種情報メモリ
160 デフォーカス補正メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍レンズ、該変倍レンズの移動に伴う像面変位を補正する補正レンズ、前記変倍レンズの位置に応じた前記補正レンズの位置に関するデータを記憶したデータ記憶手段、および前記データに基づいて前記補正レンズの駆動を制御するとともに撮像装置から受信した補正情報を用いて前記データを補正するレンズ制御手段を有するレンズ装置が取り外し可能に装着される撮像装置であって、
前記レンズ装置により形成された物体像を撮像する撮像系と、
前記補正情報を記憶した補正情報記憶手段と、
該補正情報を前記レンズ装置に通信する撮像制御手段とを有し、
前記補正情報は、前記データと前記撮像系の仕様との非対応により発生するデフォーカスを補正するための第1の情報を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像制御手段は、前記レンズ装置の種類を判別し、該判別結果に応じて、前記補正情報に前記第1の情報を含ませるか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
操作部材を有し、
前記撮像制御手段は、該操作部材が操作されたか否かに応じて、前記補正情報に前記第1の情報を含ませるか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像系の仕様は、該撮像系に含まれる撮像素子の解像度、該撮像素子のサイズ、該撮像系に含まれるカラーフィルタの特性のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の情報は、前記撮像系の仕様に応じて異なるバックフォーカスの差に対応する情報であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の情報を除く前記補正情報は、温度に応じたバックフォーカス補正のための情報および製造誤差に起因するバックフォーカス補正のための情報のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像制御手段は、前記レンズ装置からズーム位置に関する情報を受信し、該ズーム位置情報に応じて前記第1の情報を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像制御手段は、前記レンズ装置からフォーカス位置に関する情報を受信し、該フォーカス位置情報に応じて前記第1の情報を変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項9】
変倍レンズ、該変倍レンズの移動に伴う像面変位を補正する補正レンズ、前記変倍レンズの位置に応じた前記補正レンズの位置に関するデータを記憶したデータ記憶手段、および前記データに基づいて前記補正レンズの駆動を制御するとともに撮像装置から受信した補正情報を用いて前記データを補正するレンズ制御手段を有するレンズ装置が取り外し可能に装着される撮像装置であって、
前記レンズ装置により形成された物体像を撮像する撮像系と、
前記補正情報を記憶した補正情報記憶手段と、
該補正情報を前記レンズ装置に通信する撮像制御手段と、
操作部材とを有し、
前記撮像制御手段は、前記操作部材の操作に応じて前記補正情報を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の撮像装置と、
前記レンズ装置とを含むことを特徴とする撮像システム。
【請求項11】
それぞれ請求項1から9のいずれか1つに記載の撮像装置に着脱可能なレンズ装置であって、前記撮像装置の撮像系の仕様に対応した前記データを有する第1のレンズ装置と、前記撮像系の仕様に非対応の前記データを有する第2のレンズ装置とを含むことを特徴とする交換レンズシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108215(P2007−108215A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296202(P2005−296202)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】