説明

撮像装置およびその制御方法

【目的】暗い被写体でも顔画像を検出する。
【構成】被写体像の照度が低い場合には(ステップ32でNO),CCDの受光面前方に進入自在な赤外線カット・フィルタを退避させる(ステップ36)。赤外線カット・フィルタが退避させられるので,CCDの受光面に入射する光の量が多くなる。赤外線カット・フィルタが退避させられて得られた被写体像から顔画像部分が検出される(ステップ38)。その後,赤外線カット・フィルタがCCDの受光面前方に進入させられて(ステップ39),本撮像が行われる(ステップ35)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,撮像装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体像の中から顔などの対象画像部分を検出できるディジタル・スチル・カメラが考えられている。被写体像が暗いと,対象画像部分の検出精度が落ちることがあることから,被写体像の明るさに応じて信号処理を使い分けるものもある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−220250号公報
【0003】
しかしながら,被写体が暗い場合には被写体像を表す信号レベル自体が低いので信号処理を使い分けても対象画像部分を検出できないことがある。
【発明の開示】
【0004】
この発明は,被写体が暗い場合でも対象画像部分を検出できるようにすることを目的とする。
【0005】
第1の発明による撮像装置は,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力する固体電子撮像素子,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在な赤外線カット・フィルタ,被写体の明るさが明るいか暗いかを判定する明るさ判定手段,上記明るさ判定手段により被写体が明るいと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を撮像し,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御する第1の制御手段,ならびに上記第1の制御手段の制御のもとに上記固体電子撮像素子から出力された画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出する対象画像検出手段を備えていることを特徴とする。
【0006】
第1の発明は,上記撮像装置の制御方法も提供している。すなわち,この方法は,固体電子撮像素子が,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力し,赤外線カット・フィルタが,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在であり,明るさ判定手段が,被写体の明るさが明るいか暗いかを判定し,第1の制御手段が,上記明るさ判定手段により被写体が明るいと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を撮像し,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御し,対象画像検出手段が,上記第1の制御手段の制御のもとに上記固体電子撮像素子から出力された画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するものである。
【0007】
第1の発明によると,固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在な赤外線カット・フィルタが設けられている。被写体の明るさが明るいか暗いかが判定される。被写体の明るさが明るい場合には,固体電子撮像素子の受光面前方に赤外線カット・フィルタを進入させて被写体が撮像される。被写体の明るさが暗い場合には,固体電子撮像素子の受光面前方から赤外線カット・フィルタが退避させられて被写体が撮像される。撮像により得られた画像データによって表される被写体像から対象画像部分が検出される。被写体が暗い場合には,固体電子撮像素子の前方から赤外線カット・フィルタが退避させられるので,固体電子撮像素子の受光面に入射する光線量が多くなる。固体電子撮像素子から出力される画像データのレベルが高くなるので,被写体が暗くても対象画像部分が検出されるようになる。
【0008】
上記対象画像検出手段により対象画像部分が検出されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避されていた赤外線カット・フィルタを,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を本撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御する第2の制御手段をさらに備えるようにしてもよい。本撮像のときには,固体電子撮像素子の受光面前方に赤外線カット・フィルタが進入するので,赤外線成分がカットされた画像データを記録媒体に記録させることができる。
【0009】
上記固体電子撮像素子は,カラーの被写体像を表すカラー画像データを出力するものでもよい。この場合,上記第1の制御手段の制御のもとに上記赤外線カット・フィルタが上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入した場合に,上記固体電子撮像素子から出力されたカラー画像データを一定の割合で混合することにより輝度データを生成し,上記赤外線カット・フィルタが上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避した場合に,上記固体電子撮像素子から出力されたカラー画像データを上記一定の割合よりも赤色信号成分の割合が多くなるように混合して輝度データを生成する輝度データ生成手段をさらに備えることとなろう。そして,上記対象画像検出手段は,上記輝度データ生成手段によって生成された輝度データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するものとなろう。
【0010】
第2の発明による撮像装置は,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力する固体電子撮像素子,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在な赤外線カット・フィルタ,上記固体電子撮像素子から出力される画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出する対象画像検出手段,被写体の明るさが暗いかどうかを判定する明るさ判定手段,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方に上記赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御する第1の制御手段,ならびに上記第1の制御手段の制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御する第2の制御手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は,上記撮像装置に適した制御方法も提供している。すなわち,この方法は,固体電子撮像素子が,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力し,赤外線カット・フィルタが,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在であり,対象画像検出手段が,上記固体電子撮像素子から出力される画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出し,明るさ判定手段が,被写体の明るさが暗いかどうかを判定し,第1の制御手段が,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方に上記赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御し,第2の制御手段が,上記第1の制御手段の制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御するものである。
【0012】
第2の発明においても,固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在に赤外線カット・フィルタが設けられている。被写体が暗いかどうかが判定される。暗いと判定された場合には,赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体を撮像して得られる被写体像の中から対象画像部分が検出される。対象画像部分が検出されなかった場合には,固体電子撮像素子の前方から赤外線カット・フィルタが退避させられて被写体が撮像されて得られる被写体像の中から対象画像部分が検出される。被写体が暗い場合であっても固体電子撮像素子の受光面前方に赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体が撮像され,対象画像部分の検出処理が行われる。対象画像部分が検出されなかった場合に,固体電子撮像素子の受光面前方から赤外線カット・フィルタが退避させられる。被写体が暗くても対象画像を検出できる場合には,赤外線カット・フィルタを退避させていないので,対象画像検出処理後に本撮像が行われる場合に,赤外線カット・フィルタを進入させる必要が無い。迅速に本撮像を実行できる。
【0013】
上記対象画像検出手段は,たとえば,上記第2の制御手段による制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記第1の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果(赤外線がカットされた被写体像において行われた対象画像検出処理により得られた結果)および上記第2の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果(赤外線がカットされていない被写体像において行われた対象画像検出処理)にもとづいて対象画像部分を検出するものである。赤外線がカットされていない被写体像は赤外線がカットされている被写体像に比べて解像度が低く,ぼけた画像となることが多い。ぼけた画像における対象画像検出処理により得られた結果と赤外線がカットされた画像における対象画像検出処理により得られた結果とから対象画像部分を検出できるようになる。
【0014】
上記第1の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果を表すデータおよび上記第2の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果を表すデータを記憶するメモリをさらに備えてもよい。この場合,上記対象画像検出手段は,上記メモリに記憶されているデータにもとづいて,対象画像部分を検出するものとなろう。
【実施例】
【0015】
図1は,この発明の実施例を示すもので,ディジタル・スチル・カメラの電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
ディジタル・スチル・カメラの全体の動作は,CPU1によって統括される。
【0017】
電源ボタン,シャッタ・レリーズ・ボタン,モード・スイッチなどのカメラ操作器3からの出力信号は,CPU1に入力する。入力した信号にもとづいて,ディジタル・スチル・カメラがCPU1によって制御される。
【0018】
また,CPU1には,ストロボ発光のための発光回路2が接続されている。さらに,CPU1には動作プログラム,所定のデータを記憶するためのメモリ4も接続されている。
【0019】
CCD(CMOSでもよい)14の受光面前方には撮像レンズ10,絞り11,赤外線カット・フィルタ12および光学ロウ・パス・フィルタ13が設けられている。撮像レンズ10および絞り11は,それぞれ駆動回路6および7によって制御される。この実施例によるディジタル・スチル・カメラにおいては,赤外線カット・フィルタ12をCCD14の受光面前方から退避させることができ,退避させられた赤外線カット・フィルタ12を受光面前方に進入させることができる。このように,赤外線カット・フィルタを進入および退避させるための駆動回路8が設けられている。
【0020】
撮像モードが設定されると,撮像レンズ10によって結像される光線束は絞り11,赤外線カット・フィルタ(CCD14の受光面前方に進入している場合)12,光学的ロウ・パス・フィルタ13を介してCCD14の受光面に入射する。CCD14の受光面上に被写体像が結像する。駆動回路9によってCCD14が駆動させられると,カラーの被写体像を表すRGBのカラー映像信号がCCD14から出力されアナログ・フロント・エンド回路15に入力する。カラー映像信号は,アナログ・フロント・エンド回路15において,ゲイン調整,アナログ/ディジタル変換などの所定のアナログ処理が行われ,ディジタル・カラー画像データとして出力される。
【0021】
ディジタル画像データは,被写体の明るさが明るいか暗いかを判断する明るさ判断回路17に入力する。入力したディジタル画像データから検出される照度が一定の閾値以下であれば被写体が暗いと判断される。判断結果を表すデータは,CPU1および特定被写体検出回路18に与えられる。詳しくは後述するように,被写体が暗いと判断された場合には,赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方から退避させられる。これにより,CCD14の受光光量が多くなり,CCD14から出力される映像信号レベルが大きくなる。映像信号レベルが大きくなるので,後述するように被写体像の中から顔の画像部分を検出しやすくなる。被写体が明るいと判断された場合には,赤外線カット・フィルタ12はCCD14の受光面前方から退避させられずに進入させられた状態となる。赤外線カット・フィルタ12により赤外線成分がカットされることとなる。
【0022】
ディジタル・カラー画像データは,ディジタル信号処理回路20に入力する。このディジタル信号処理回路20において,ガンマ補正,白バランス調整などの所定のディジタル信号処理が行われる。ディジタル信号処理回路20から出力された画像データは,メモリ21を介して表示装置24に与えられる。表示装置24の表示画面に被写体像が表示される。
【0023】
ディジタル・カラー画像データは,メモリ16を介して特定被写体検出回路18にも入力する。特定被写体検出回路18において,入力したディジタル・カラー画像データから輝度データが生成される。特定被写体検出回路18において,生成された輝度データによって表される被写体像の中から顔の画像部分が検出される(検出される画像部分は顔の画像部分に限らず,他の画像部分でもよいのはいうまでもない)。顔の画像を表す特徴的部位(目,鼻,顔の輪郭,口など)に関する部位情報をメモリ16などに記憶しておき,入力した輝度データによって表される被写体像と部位情報とを比較することにより,顔の画像部分が検出される。輝度データが利用される場合には,明るさにもとづいて顔画像部分が検出されるであろう。また,輝度データを利用せずにカラー画像データを利用して顔画像部分を検出するようにしてもよい。カラー画像データを利用して顔画像部分が検出される場合には,色味にもとづいて顔画像部分が検出されるであろう。
【0024】
特定被写体検出回路18において検出された顔画像部分(顔画像部分の位置)を表すデータは,メモリ19に与えられ,記憶される。
【0025】
シャッタ・レリーズ・ボタンが押されるとCCD14によって本撮像が行われる。上述のようにして被写体像を表すカラー画像データが得られ,ディジタル信号処理回路20に入力する。本撮像が行われるときには,赤外線カット・フィルタ12は,CCD14の受光面前方に進入させられているのはいうまでもない。
【0026】
本撮像により得られたカラー画像データは,ディジタル信号処理回路20に入力する。ディジタル信号処理回路20には,メモリ19から顔画像部分を表すデータも入力する。ディジタル信号処理回路20において,顔画像部分がきれいな色となるように色補正が行われる。顔画像部分が色補正された画像データがメモリ21を介して圧縮/伸張回路22に入力する。圧縮/伸張回路22において圧縮された画像データがメモリ・カード23に与えられ,記録される。検出された顔画像部分については色補正だけでなく,その顔画像部分が合焦するようにフォーカシング処理,その顔画像部分が適正な明るさとなるような露出制御処理などが行われるようにしてもよい。
【0027】
再生モードが設定されると,メモリ・カード23に記録されている圧縮画像データが読み取られ,圧縮/伸張回路22において伸張される。伸張された画像データが表示装置24に与えられる。メモリ・カード23から読み取られた画像データによって表される被写体像が表示装置24の表示画面上に表示される。
【0028】
図2は,撮像モードの処理手順を示すフローチャートである。
【0029】
撮像モードが設定されると,CCD14の受光面前方に(光軸上に)赤外線カット・フィルタ12が進入させられる(ステップ31)。上述したように,照度が所定の閾値以上かどうかが確認される(ステップ32)。
【0030】
照度が所定の閾値以上であれば(ステップ32でYES),CCD14に入射する光量が少なくないと考えられるので,赤外線カット・フィルタ12はCCD14の受光面前方に進入させられた状態が維持される。被写体が撮像されることにより,上述したようにカラー画像データが得られ特定被写体検出回路18に入力する。特定被写体検出回路18において,色バランスを考慮した式1にしたがってRGB(赤,緑,青)のカラー画像データから輝度データY1が生成される(ステップ33)。
Y1=0.299R+0.587G+0.114B・・・式1
【0031】
生成された輝度データY1によって表される被写体像の中から特定画像部分である顔の画像部分が検出される(ステップ34)。その後,シャッタ・レリーズ・ボタンの押下に応じて,本撮像が行われ(ステップ35),検出された顔の画像部分がきれいな色となるような色補正が行われる。被写体像を表すの画像データがメモリ・カードに記録される。
【0032】
照度が所定の閾値未満であれば(ステップ32でNO),CCD14に入射する光量を増やすために赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方から退避させられる(ステップ36)。赤外線カット・フィルタ12が退避させられている状態で得られたカラー画像データから,式1によって表されるRGB中のRデータの割合よりもRデータの割合が多くなるような割合で輝度データY2が生成される(厳密にいえば,RGBの比率が式1とは異なるので輝度データとは言えないが,ここでは輝度データY2ということにする)(ステップ37)。赤外線カット・フィルタ12が退避させられているので,赤外線カット・フィルタ12が進入している場合に比べ,Rデータのレベルが高くなる。レベルが高いRデータをさらに,その割合を多くして輝度データを生成しているので,より顔画像部分を検出し易くなる。
【0033】
生成された輝度データY2によって表される被写体像の中から特定画像部分である顔の画像部分が検出される(ステップ38)。退避させられていた赤外線カット・フィルタがCCD14の受光面上に進入させられる(ステップ39)。すると,シャッタ・レリーズ・ボタンの押下に応じて,本撮像が行われ(ステップ35),検出された顔画像部分の色補正が行われる。色補正された被写体像を表す画像データがメモリ・カードに記録されることとなる。
【0034】
図3から図5は,他の実施例を示すものである。この実施例は,赤外線カット・フィルタ12を進入させて得られた被写体像と赤外線カット・フィルタ12を退避して得られた被写体像とから顔画像部分を検出するものである。
【0035】
図3は,撮像モードの処理手順を示すフローチャートである。
【0036】
赤外線カット・フィルタ12は,CCD14の受光面前方に進入させられる(ステップ41)。被写体像の照度が閾値未満であり,暗い場合であっても,赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方に進入させられた状態で得られる被写体像から特定画像部分である顔画像部分の検出処理が行われる(第1の検出処理)(ステップ43)。
【0037】
図4は,第1の検出処理の結果を示している。
【0038】
第1の検出処理により,被写体像の位置ごとに顔画像部分らしさを示す評価値が得られる。得られた評価値が所定のしきい値以上の場合に,その評価値を与える位置が顔画像部分であると判定される。たとえば,評価値が「20」以上の場合の位置が顔画像部分の位置と判定される。「20」を超える評価値が存在しない場合には,その検出処理においては顔画像部分が検出されないと判断される。
【0039】
図3に戻って,第1の検出処理において顔画像部分が検出されれば(ステップ44でYES),赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方に進入させられた状態で本撮像が行われる(ステップ50)。
【0040】
第1の検出処理において顔画像部分が検出されなければ(ステップ44でNO),上述したのと同様に赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方から退避させられる(ステップ45)。赤外線カット・フィルタ12が退避させられた状態で得られる画像データによって表される被写体像から顔画像部分が検出される(第2の検出処理)。上述したように,CCD14の受光光量が多くなるので顔画像部分が検出しやすくなる。
【0041】
図5は,第2の検出処理の結果を示している。
【0042】
第1の検出処理と同様に,第2の検出処理においても被写体像の位置ごとに顔画像部分らしさを示す評価値が得られる。第1の検出処理と同様に所定のしきい値以上の評価値を与える位置が顔画像部分であると判定される。
【0043】
図3に戻って,第2の検出処理において顔画像部分が検出されれば(ステップ47でYES),赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方に進入させられて(ステップ49),本撮像が行われる(ステップ50)。
【0044】
第2の検出処理においても顔画像部分が検出されなければ(ステップ47でNO),第1の検出処理における結果と第2の検出処理における結果(これらの結果はたとえばメモリ16に記憶されている)とを利用して顔画像検出処理が行われる(第3の検出処理)(ステップ48)。第2の検出処理においては,赤外線が含まれている被写体像から顔画像検出処理が行われているため,赤外線を反射または放射するものが被写体に含まれている場合には,顔の輪郭がぼやけ,顔の画像部分を検出できないことがある。第3の検出処理においては,赤外線がカットされている被写体像において行われた第1の検出処理を利用しているので,顔画像部分を検出できることがある。例えば,図4および図5に示す結果において,第1の検出処理および第2の検出処理のいずれの検出処理においても比較的高い評価値が得られた位置P2が顔画像部分であると判定されよう。
【0045】
第3の検出処理が終了すると,赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方に進入させられて(ステップ49),本撮像が行われる(ステップ50)。
【0046】
照度が閾値以上であれば(ステップ42でYES),赤外線カット・フィルタ12がCCD14の受光面前方に進入させられた状態で得られる被写体像から顔画像部分が検出される(ステップ51)。
【0047】
上述の実施例においては,本撮像前のいわゆるスルー画像にもとづいて顔画像の検出処理が行われているが,二段ストローク・タイプのシャッタ・レリーズ・ボタンの場合には,シャッタ・レリーズ・ボタンが半押しされたことにより上述した顔画像の検出処理が行われるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ディジタル・スチル・カメラの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】撮像モードの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】撮像モードの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】顔画像検出結果の一例である。
【図5】顔画像検出結果の一例である。
【符号の説明】
【0049】
1 CPU
8 駆動回路
12 赤外線カット・フィルタ
14 CCD
17 明るさ判定回路
18 特定被写体検出回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力する固体電子撮像素子,
上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在な赤外線カット・フィルタ,
被写体の明るさが明るいか暗いかを判定する明るさ判定手段,
上記明るさ判定手段により被写体が明るいと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を撮像し,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御する第1の制御手段,ならびに
上記第1の制御手段の制御のもとに上記固体電子撮像素子から出力された画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出する対象画像検出手段,
を備えた撮像装置。
【請求項2】
上記対象画像検出手段により対象画像部分が検出されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避されていた赤外線カット・フィルタを,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を本撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御する第2の制御手段をさらに備えた請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記固体電子撮像素子は,カラーの被写体像を表すカラー画像データを出力するものであり,
上記第1の制御手段の制御のもとに上記赤外線カット・フィルタが上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入した場合に,上記固体電子撮像素子から出力されたカラー画像データを一定の割合で混合することにより輝度データを生成し,上記赤外線カット・フィルタが上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避した場合に,上記固体電子撮像素子から出力されたカラー画像データを上記一定の割合よりも赤色信号成分の割合が多くなるように混合して輝度データを生成する輝度データ生成手段をさらに備え,
上記対象画像検出手段は,上記輝度データ生成手段によって生成された輝度データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するものである,
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力する固体電子撮像素子,
上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在な赤外線カット・フィルタ,
上記固体電子撮像素子から出力される画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出する対象画像検出手段,
被写体の明るさが暗いかどうかを判定する明るさ判定手段,
上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方に上記赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御する第1の制御手段,ならびに
上記第1の制御手段の制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御する第2の制御手段,
を備えた撮像装置。
【請求項5】
上記対象画像検出手段は,
上記第2の制御手段による制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記第1の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果および上記第2の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果にもとづいて対象画像部分を検出するものである,
請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
上記第1の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果を表すデータおよび上記第2の制御手段の制御のもとに行われた対象画像検出処理により得られた結果を表すデータを記憶するメモリをさらに備え,
上記対象画像検出手段は,上記メモリに記憶されているデータにもとづいて,対象画像部分を検出するものである,
請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
固体電子撮像素子が,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力し,
赤外線カット・フィルタが,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在であり,
明るさ判定手段が,被写体の明るさが明るいか暗いかを判定し,
第1の制御手段が,上記明るさ判定手段により被写体が明るいと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入させて被写体を撮像し,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像するように上記赤外線カット・フィルタおよび上記固体電子撮像素子を制御し,
対象画像検出手段が,上記第1の制御手段の制御のもとに上記固体電子撮像素子から出力された画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出する,
撮像装置の制御方法。
【請求項8】
固体電子撮像素子が,被写体を撮像し,受光面上に結像する被写体像を表す画像データを出力し,
赤外線カット・フィルタが,上記固体電子撮像素子の受光面前方に進入および受光面前方から退避自在であり,
対象画像検出手段が,上記固体電子撮像素子から出力される画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出し,
明るさ判定手段が,被写体の明るさが暗いかどうかを判定し,
第1の制御手段が,上記明るさ判定手段により被写体が暗いと判定されたことに応じて,上記固体電子撮像素子の受光面前方に上記赤外線カット・フィルタを進入させた状態で被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御し,
第2の制御手段が,上記第1の制御手段の制御のもとに行われた上記対象画像検出手段の検出処理により対象画像部分が検出されなかったことに応じて,上記赤外線カット・フィルタを上記固体電子撮像素子の受光面前方から退避させて被写体を撮像して得られる画像データによって表される被写体像の中から対象画像部分を検出するように上記固体電子撮像素子,上記赤外線カット・フィルタおよび上記対象画像検出手段を制御する,
撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−259177(P2007−259177A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82087(P2006−82087)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】