説明

撮像装置の製造方法

【課題】固体撮像素子に付着したゴミを容易かつ確実に除去する。
【解決手段】少なくとも固体撮像素子の上面に粘着性シート形成用溶液を塗布する塗布工程1と、塗布工程1にて形成された粘着性シートに対して引き剥がす方向の力を加えて、粘着性シートを剥離する剥離工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置としての例えばカメラモジュールは、固体撮像素子を備えている。この固体撮像素子は、ウエハから切り出して製造される。具体的には、ウエハにはボンディングパッドを有する複数の固体撮像素子が形成され、ダイシング工程により複数の固体撮像素子が個々のチップとして切り出される。
【0003】
ダイシング工程では、ウエハである例えばシリコンの切りくずが固体撮像素子における光電変換部の表面に付着し易い。この切りくずが残ったままであると、切りくずがカメラモジュールによる撮影画像に写り込み、黒キズ等の不良の原因となる。この結果、カメラモジュールの歩留まりが低下する。
【0004】
そこで、このような問題を解消するために、従来から、ダイシング工程に先立って固体撮像素子の表面をシートで保護し、ダイシング工程で発生するシリコンの切りくずの、固体撮像素子の表面への付着を防止することにより、黒キズの発生を抑制するようにしている。
【0005】
例えば特許文献1では、ダイシング工程に先立って、ウエハの表面にフォトレジストを塗布している。次に、そのフォトレジストに露光および現像を施して、各固体撮像素子の光電変換部を完全に覆い、かつ素子周辺部に存在するボンディングパッドを露出させるシートを形成している。さらに、固体撮像素子をパッケージ内にマウントした後に、ワイヤボンディングを行い、その後に上記シートを剥離している。これにより、ダイシング工程にて発生するウエハの切りくずや、ワイヤボンディング時に発生する塵埃の、固体撮像素子の光電変換部への付着を抑制できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−48059号公報(1993年2月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の方法では、フォトレジストを使用した紫外線遮断装置や、その他の専用装置および工具など、多様な設備が必要となる。また、ウエハ上に回路を形成する前半工程と、ウエハを切断してチップとし、撮像装置のホルダに搭載する後半工程とでは、工場が通常別であり、露光・現像を行う場合に、前半工程の工場にて処理を行う必要がある。
【0008】
また、フォトレジストにて形成されたシートは、封止前に、洗浄工程(シートを剥離および溶解する工程)にて、剥離する必要がある。しかしながら、洗浄液の選択や使用する洗浄液の順番、洗浄時間は、設定を誤ると逆にシートからゴミが発生し、ゴミが付着する結果となるため、適切に設定することが難しい。なお、シートを剥離する洗浄工程では、シートの塗布前に既に付着していたゴミ、特に固体撮像素子の光電変換部における表面に形成されているマイクロレンズ間の奥まった部位に挟まったゴミを除去することは困難である。したがって、シート形成後のゴミの付着は予防できるものの、シート形成前のゴミを除去することはできないといった問題点を有している。
【0009】
したがって、本発明は、撮像装置の製造工程において固体撮像素子に付着したゴミを容易かつ確実に除去することができ、これにより、固体撮像素子による撮影画像でのゴミによる黒キズ不良の発生を防止し、歩留まりを向上させることができる撮像装置の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像装置の製造方法は、複数の固体撮像素子が形成されているウエハから切り出された固体撮像素子のチップを実装した撮像装置の製造方法において、少なくとも前記固体撮像素子の上面に、凝固して粘着性を有する粘着性シートとなる粘着性シート形成用溶液を塗布する塗布工程と、前記塗布工程にて形成された前記粘着性シートに対して引き剥がす方向の力を加えることにより、前記粘着性シートを剥離する剥離工程とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、粘着性シートの形成前に固体撮像素子の上面に存在するゴミは、粘着性シートによって捕らえられ、粘着性シートを剥離することにより、固体撮像素子上から除去される。また、粘着性シートの形成後に固体撮像素子の上面に付着するゴミは、固体撮像素子の上面には付着せず、粘着性シート上に付着する。したがって、このゴミも粘着性シートを剥離することにより除去される。また、剥離工程では、粘着性シートに対して引き剥がす方向の力を加えることにより、粘着性シートを剥離する。したがって、粘着性シートの剥離は、面倒な洗浄工程を要することなく容易に行うことができる。これにより、固体撮像素子に付着したゴミを容易かつ確実に除去することができ、固体撮像素子による撮影画像でのゴミによる黒キズ不良の発生を防止し、撮像装置の歩留まりを向上させることができる。
【0012】
なお、上記の製造方法は、複数の固体撮像素子が形成されているウエハを準備するウエハ準備工程と、前記ウエハ準備工程後に、前記ウエハからチップ状の固体撮像素子を切り出すダイシング工程と、前記ダイシング工程にて切り出された固体撮像素子を配線基板に実装しワイヤボンディングを行うワイヤボンド工程と、前記チップ搭載基板にホルダを搭載するホルダ搭載工程とを備えていてもよい。
【0013】
上記の撮像装置の製造方法において、前記粘着性シートは、前記固体撮像素子の上面への塵埃の付着を防ぐとともに、剥離されることにより前記固体撮像素子の上面に付着していた塵埃を除去する構成である。
【0014】
上記の撮像装置の製造方法において、前記粘着性シート形成用溶液は、ポリビニルアルコールを主成分とする溶質を含んでいる構成としてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、ポリビニルアルコールは良好な水溶性を有するので、溶質の主成分としてポリビニルアルコールを含む粘着性シート形成用溶液は、塗布工程において塗布が容易である。また、溶質の主成分としてポリビニルアルコールを含む粘着性シート形成用溶液を塗布して形成された粘着性シートは、良好な粘着性を有する。したがって、粘着性シートは、固体撮像素子の上面に存在するゴミを良好に捕捉でき、剥離される際に固体撮像素子の上面のゴミを適切に除去することができる。また、固体撮像素子の上面からの剥離も容易である。
【0016】
上記の撮像装置の製造方法において、前記粘着性シートは、剥離時の粘度が1,000,000mPa以上のゲル状である構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、粘着性シートは、剥離時において、高い粘度を有し、かつゲル状であるので、固体撮像素子の上面に存在するゴミを良好に捕捉でき、剥離される際に固体撮像素子の上面のゴミを適切に除去することができる。また、固体撮像素子の上面からの剥離も容易である。
【0018】
上記の撮像装置の製造方法において、前記ウエハからチップ状の固体撮像素子を切り出すダイシング工程を備え、前記塗布工程は、前記ダイシング工程にて個片化された固体撮像素子のチップに対して行う構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、粘着性シート形成用溶液の塗布工程をダイシング工程後に行うので、固体撮像素子の必要な領域のみに、適切に粘着性シートを形成することができる。また、塗布工程をダイシング工程後に行っても、ダイシング工程により発生して、固体撮像素子の表面に付着したゴミを粘着性シートにより容易に捕捉し、除去することができる。
【0020】
上記の撮像装置の製造方法は、前記固体撮像素子のパッド部を配線基板と電気的に接続するワイヤボンド工程を含み、前記塗布工程は、前記パッド部を除く領域に前記粘着性シート形成用溶液を塗布し、前記剥離工程は前記ワイヤボンド工程後に行う構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、粘着性シートは固体撮像素子のパッド部を除く領域に形成される。したがって、ワイヤボンド工程は剥離工程の前に行うことができ、剥離工程はワイヤボンド工程後に行う。ここで、ワイヤボンド工程では個体撮像素子は封止されておらず、塵埃などのゴミが表面に付着する可能性があるので、ワイヤボンド工程において、粘着性シートが剥離されずに固体撮像素子の表面に形成されている状態としておけば、固体撮像素子の表面への上記ゴミの付着を防止することができる。
【0022】
上記の撮像装置の製造方法において、前記ウエハからチップ状の固体撮像素子を切り出すダイシング工程を備え、前記塗布工程は、前記ダイシング工程前のウエハに対して行う構成としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、塗布工程は、ダイシング工程前のウエハに対して行うので、分断された個々の固体撮像素子に対して行うよりも、効率よく行うことができる。
【0024】
また、ウエハに対するダイシング工程の前に、粘着性シートが形成されるので、ダイシング工程にて発生するゴミは、固体撮像素子の上面には付着せず、粘着性シートの上面に付着する。したがって、ダイシング工程の前に固体撮像素子の上面に付着していたゴミ、およびダイシング工程の後に粘着性シートの上面に付着したゴミは、粘着性シートを剥離することにより除去することができる。
【0025】
上記の撮像装置の製造方法において、前記塗布工程は、前記固体撮像素子以外の光学部材の表面に対しても行い、前記剥離工程は、前記塗布工程により、前記光学部材に形成された前記粘着性シートを剥離する構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、固体撮像素子以外の光学部材の表面に対しても粘着性シートが形成されるので、撮像装置の製造工程において発生し、光学部材に付着したゴミも除去することができる。
【0027】
上記の撮像装置の製造方法において、前記剥離工程は、真空ポンプの吸引により前記粘着性シートを剥離する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、剥離工程において、粘着性シートを真空ポンプの吸引により容易に剥離することができる。
【0029】
上記の撮像装置の製造方法において、前記剥離工程は、前記粘着性シートに粘着する粘着棒により前記粘着性シートを巻き取る構成としてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、剥離工程において、粘着性シートを粘着棒にて巻き取ることにより容易に剥離することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の構成によれば、固体撮像素子に付着したゴミを容易かつ確実に除去することができ、固体撮像素子による撮影画像でのゴミによる黒キズ不良の発生を防止し、撮像装置の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における撮像装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】塗布装置を使用した、図1に示す塗布工程を示す説明図である。
【図3】図3(a)は、図1に示した塗布工程により、固体撮像素子上に粘着性シート形成用溶液を塗布して塗布層を形成した状態を示す固体撮像素子および塗布層の縦断面図、図3(b)は、図3(a)に示した塗布層が凝固して粘着性シートとなった状態を示す固体撮像素子および粘着性シートの縦断面図、図3(c)は、図1に示した剥離工程により、図3(b)に示した粘着性シートを固体撮像素子の上面から剥離した状態を示す固体撮像素子の縦断面図である。
【図4】図3(a)に示した塗布層が凝固して粘着性シートとなる過程において、ゴミを捕らえる動作を説明する、固体撮像素子のマイクロレンズと粘着性シートの縦断面である。
【図5】真空ポンプを使用した吸引装置による、図1に示した剥離工程を示す説明図である。
【図6】粘着棒を使用した巻き取りによる、図1に示した剥離工程を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態における撮像装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の製造方法によって製造される撮像装置としてのカメラモジュールの構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施形態1〕
(カメラモジュールの構造)
図8は、本発明の実施の形態の製造方法によって製造される撮像装置としてのカメラモジュールの構造を示す縦断面図である。カメラモジュールは、図8に示すように、固体撮像素子81、リッドガラス83、レンズ84、ホルダ85および配線基板86を備えている。
【0034】
光電変換素子である固体撮像素子81は配線基板86の上に設けられ、これら固体撮像素子81と配線基板86とは、ワイヤ82を使用したワイヤボンディングにより電気的に接続されている。固体撮像素子81の上方にはリッドガラス83が設けられ、さらにリッドガラス83の上方にはレンズ84が設けられている。
【0035】
リッドガラス83およびレンズ84はホルダ85によって保持され、ホルダ85は配線基板86上に設けられている。
【0036】
(撮像装置の製造方法の概要)
図1は本発明の実施の形態における撮像装置の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、撮像装置の製造方法は、ウエハテスト工程(ウエハ準備工程)11、ウエハマウント工程12、ダイシング工程13、ダイボンド工程14、ワイヤボンド工程15、ホルダ搭載工程16、塗布工程1および剥離工程2を備えている。
【0037】
本実施の形態において、ウエハテスト工程11を含むウエハ完成までの工程は、ウエハ準備工程であり、前半工程となっている。また、ウエハマウント工程12、ダイシング工程13、ダイボンド工程14、ワイヤボンド工程15およびホルダ搭載工程16は、後半工程となっている。塗布工程1および剥離工程2は後半工程に含まれる。なお、前半工程と後半工程とは、例えば互いに別の工場にて行われる。
【0038】
ウエハテスト工程11では、例えばシリコンからなるウエハに形成された固体撮像素子81の回路が正常に機能するか否かをあらかじめ検査する。その結果、ウエハに問題がなければ、ウエハ完成となる。
【0039】
ウエハマウント工程12では、ウエハテスト工程11を経たウエハをダイシングテープ上に固定する。ダイシング工程13ではウエハを複数の固体撮像素子81のチップに切断する。ダイボンド工程14では、ダイシング工程13により得られた固体撮像素子81を配線基板86上に固定する。ワイヤボンド工程15では、固体撮像素子81と配線基板86とをワイヤ82により電気的に接続するワイヤボンディングを行う。ホルダ搭載工程16では、固体撮像素子81を実装した配線基板86の上面にホルダ85を搭載する。詳細には、配線基板86上にホルダ85を配置し、接着剤により配線基板86とホルダ85とを固定する。
【0040】
塗布工程1では、図1に示した後半工程において、少なくとも固体撮像素子81の表面に被膜となる粘着性シートを形成するための粘着性シート形成用溶液を塗布する。
【0041】
塗布工程1は、ウエハマウント工程12からホルダ搭載工程16までの間の任意の段階で行うことができる。本実施の形態では、図1に示す後半工程において、ウエハマウント工程12とホルダ搭載工程16との間に行っている。
【0042】
具体的には、ウエハマウント工程12とダイシング工程13との間の塗布工程1A、ダイシング工程13とダイボンド工程14との間の塗布工程1B、ダイボンド工程14とワイヤボンド工程15との間の塗布工程1C、あるいはワイヤボンド工程15とホルダ搭載工程16との間の塗布工程1Dとして行うことができる。
【0043】
剥離工程2では、図1に示した後半工程において、塗布工程1により形成された粘着性シートを剥離する。この粘着性シートの剥離は、洗浄によるものではなく、粘着性シートに対して引き剥がす方向の力を加えることにより行う。
【0044】
剥離工程2は、塗布工程1後において、ダイシング工程13からホルダ搭載工程16までの間の任意の段階で行うことができる。具体的には、ワイヤボンド工程15とホルダ搭載工程16との間の剥離工程2A、ダイボンド工程14とワイヤボンド工程15との間の剥離工程2B、あるいはダイシング工程13とダイボンド工程14との間の剥離工程2Cとして行うことができる。
【0045】
(粘着性シート形成用溶液)
粘着性シート形成用溶液を塗布することによって固体撮像素子81の表面に形成される粘着性シートは、固体撮像素子81の表面へのゴミの付着を防止する機能を有する。また、粘着性シートは、粘着性シートの形成前に固体撮像素子81の表面に付着していたゴミを、粘着性シートの剥離に伴って除去する機能を有する。さらに、粘着性シートは、洗浄工程を要することなく、固体撮像素子81から剥離方向の力を加えて剥離できるものである。
【0046】
したがって、粘着性シート形成用溶液は、塗布後に時間経過によって凝固し、収縮し、粘着性を有する粘着性シートとしての被膜を形成するものである。また、剥離の容易さの点から、凝固してゲル状となるものが好ましい。また、塗布の容易さの点から、水溶性を有することが好ましい。このような溶液の溶質としては、粘着性および水溶性を有するポリマーが適する。
【0047】
このように、粘着性および水溶性を有するポリマーとしては、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル酸系ポリマーが好ましい。その他、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、水溶性シリコンなどの合成ポリマー、ゼラチン、でん粉、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガムなどの天然ポリマー、カルボキシセルロール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの多糖類誘導体も使用可能である。
【0048】
粘着性シート形成用溶液の溶質としては、上記の列挙したポリマーの他、凝固してゲル状となる性質を有する他の親水性ポリマーを用いてもよい。
【0049】
また、粘着性シート形成用溶液の溶媒としては、水、アセトン、メタノール、エタノールなどの親水性溶媒を用いることができる。粘着性シート形成用溶液は、上記の各ポリマーを単独にて、または複数のポリマーを混合して、上記溶媒に溶かして生成する。溶液中の溶質は、溶媒に対して0.1〜5重量%程度である。
【0050】
粘着性シート形成用溶液には、さらに架橋剤を加えて、粘着性シートとなる凝固時に、粘着性シートの固体撮像素子81に対する接着面がゲル状になるように調節することが好ましい。このようにすることにより、粘着性シートの剥離がさらに容易になる。なお、上記の架橋剤としてはウエハに影響を与えない架橋剤であれば特に限定されない。例えば、溶質にポリビニルアルコールを使用した場合、チタンアルコキシド系化合物や、チタンキレート系化合物などのチタン系化合物を挙げることができる。また、架橋剤の代わりとして、同様の凝固させる働きを有する任意の凝集剤や固化剤を用いてもよい。
【0051】
粘着性シート形成用溶液の粘度は、塗布工程時において100〜10,000mPaであることが好ましい。粘度をこの範囲とすれば、粘着性シートを形成すべき領域に粘着性シート形成用溶液を適切に滴下し、所望の領域まで容易に広げることができる。粘度が100mPa未満であれば、塗布後、目的としない領域まで広がったり、溶液が垂れるなどの問題、滴下時に溶液が飛散したりする問題が発生する。また、10,000mPa以上であれば容易に滴下することが難しい。
【0052】
また、剥離工程2による剥離時において、粘着性シートは、表面が乾燥し固化したとしても、固体撮像素子81との接着面はゲル状となっていることが好ましい。具体的には、剥離工程2での剥離時において、粘着性シートは、凝固により架橋がすすみ、剥離時の粘度が1,000,000mPa以上のゲル状のシートとなっていることが好ましい。
【0053】
このような構成によれば、粘着性シートは、高い粘度を有し、かつゲル状であるので、固体撮像素子81の上面に存在するゴミを良好に捕捉でき、剥離される際に固体撮像素子81の上面のゴミを適切に除去することができる。また、固体撮像素子81の上面からの粘着性シートの剥離も容易である。
【0054】
(塗布工程)
次に、塗布工程1について説明する。図2は、塗布装置51を使用した塗布工程1を示す説明図である。
【0055】
塗布装置51は、回転台52、支持台53および溶液滴下装置54を備える。回転台52は、支持台53に支持されて回転し、溶液滴下装置54は、スポイトを利用して粘着性シート形成用溶液の液滴55を滴下する。回転台52上には塗布対象物56であるウエハ、またはウエハから切り出されたチップ状の固体撮像素子81が配置される。
【0056】
液滴55は、溶液滴下装置54により、塗布対象物56における固体撮像素子81の上面に選択的に滴下される。この場合、粘着性シート形成用溶液の粘度は、上記のように適切に設定されている。したがって、塗布対象物56上に滴下された液滴55は、回転台52の回転の遠心力により塗布対象物56の上面において広がり、適切な厚さと広さを有する塗布層となる。この塗布層は、その後に凝固して粘着性シートとなる。なお、塗布対象物56への粘着性シート形成用溶液の塗布層の形成は、スポイトを利用した溶液滴下装置54ではなく、刷毛を利用した塗布装置にて行ってもよい。
【0057】
また、塗布対象物56(ウエハまたは固体撮像素子81)上における塗布層の厚みの精度は、高精度である必要がなく、0.5〜500μm程度の厚さであって、固体撮像素子81の光電変換部表面が露出しない程度でよい。
【0058】
(剥離工程)
次に、剥離工程2について説明する。
図5は、真空ポンプを使用した吸引装置(真空ポンプ吸引法)による剥離工程2を示す説明図である。また、図6は、粘着棒を使用した巻き取り(粘着棒巻取法)による剥離工程2を示す説明図である。
【0059】
剥離工程2は、図5に示した真空ポンプ吸引法または図6に示した粘着棒巻取法を用いて行うことができる。これら方法による剥離工程2は、前述のように、塗布工程1後において、ダイシング工程13からホルダ搭載工程16までの間の任意の段階で行うことができる。ただし、塗布工程1において、固体撮像素子81のボンディングパッドを含むウエハ全面に粘着性シート93を形成した場合、あるいはダイシング工程13後の固体撮像素子81に対してボンディングパッドを含む上面の全面に粘着性シート93を形成した場合には、ボンディングパッドが粘着性シート93に隠れるため、ワイヤボンド工程15の前に剥離工程2を行う必要がある。
【0060】
一方、塗布工程1において、ウエハの固体撮像素子81のボンディングパッドが隠れないように、あるいはダイシング工程13後の固体撮像素子81のボンディングパッドが隠れないように、選択的に粘着性シート93を形成した場合には、ワイヤボンド工程15後であっても、ホルダ搭載工程16前であれば、剥離工程2を行うことができる。
【0061】
このホルダ搭載工程16前に関し、詳細には、固体撮像素子81の封止前であって、配線基板86へのホルダ85の搭載前である。なお、配線基板86へのホルダ85の搭載後であっても、固体撮像素子81の封止前、例えばホルダ85へのリッドガラス83の接着前であれば、剥離工程2を行うことができる。
【0062】
なお、ワイヤボンド工程16においても塵埃などのゴミが表面に付着する可能性があるため、この塵埃が固体撮像素子81の表面に付着することを防止する点から、剥離工程2は、ワイヤボンド工程16後であってホルダ搭載工程17前に行う剥離工程2Aが好ましい。
【0063】
真空ポンプ吸引法に使用する吸引装置は、図5に示すように、例えば樹脂からなる吸引部61を備え、この吸引部61は真空ポンプ(図示せず)に接続されている。吸引部61は、先端部が固体撮像素子81上の粘着性シート93に密着できるように可撓性を有している。
【0064】
吸引装置を使用した剥離工程2では、吸引部61の先端部を粘着性シート93に密着させ、真空ポンプにて吸引する。次に、吸引部61を固体撮像素子81から離れるように移動させることにより、粘着性シート93を固体撮像素子81から引き剥がす。なお、吸引部61の口径を粘着性シート93の幅と同等にして、粘着性シート93を剥離する際に、固体撮像素子81に対して物理的圧力が加わり難いようにしてもよい。
【0065】
粘着棒巻取法に使用する粘着棒71は、図6に示すように、円柱または楕円注の棒であり、粘着性シート93と接する前端側の部分に接着剤が塗布される。接着剤が塗布される範囲は、粘着棒71の使用時に粘着性シート93から接着剤がはみ出さないように、粘着性シート93の幅以下の範囲とする。また、粘着棒71に塗布する接着剤は、粘着棒71を再利用する点から、粘着棒71から粘着性シート93を溶解して除去する際に、同時に除去できるものである。なお、接着剤を完全に除去するために、粘着棒71を洗浄してもよい。
【0066】
粘着棒71を使用した剥離工程2では、図6に示すように、粘着棒71の接着剤が塗布されている前端側部分を粘着性シート93の上面に接着させ、粘着棒71を回転させて粘着性シート93を巻き取る。
【0067】
(塗布工程および剥離工程によるゴミの除去)
次に、塗布工程1および剥離工程2によるゴミ91の除去について説明する。
図3(a)は、塗布工程1により、固体撮像素子81上に粘着性シート形成用溶液を塗布して塗布層92を形成した状態を示す固体撮像素子81および塗布層92の縦断面図である。図3(b)は、図3(a)に示した塗布層92が凝固して粘着性シート93となった状態を示す固体撮像素子81および粘着性シート93の縦断面図である。図3(c)は、剥離工程2により、図3(b)に示した粘着性シート93を固体撮像素子81の上面から剥離した状態を示す固体撮像素子81の縦断面図である。
【0068】
なお、図3(a)〜図3(c)において、符合81aは、固体撮像素子81の表面に形成されているマイクロレンズであり、符合91は、マイクロレンズ81a上および粘着性シート93上に存在するゴミである。
【0069】
図3(a)および図3(b)に示すように、粘着性シート93(塗布層92)の形成前に、固体撮像素子81上に存在するゴミ91は、粘着性シート93によって捕捉される。具体的には、図4に示すように、塗布層92が凝固して粘着性シート93となる過程において、粘着性シート93によって捕らえられる。図4は、塗布層92が凝固して粘着性シート93となる過程において、ゴミ91を捕らえる動作を説明する、固体撮像素子81のマイクロレンズ81aと粘着性シート93との縦断面である。
【0070】
上記のように、ゴミ91が粘着性シート93によって捕捉されることにより、固体撮像素子81の上面、特にマイクロレンズ81a間に存在していたゴミ91は、図3(c)に示すように、粘着性シート93とともに除去される。また、粘着性シート93(塗布層92)の形成後に、発生したゴミ91は、図3(b)に示すように、固体撮像素子81の上面には付着せず、粘着性シート93上に付着する。したがって、このゴミ91も粘着性シート93を剥離することにより、除去される。
【0071】
ここで、図1に示した塗布工程1Aは、ダイシング工程13前のウエハの上面に対して、粘着性シート形成用溶液を塗布し、粘着性シート93を形成するものである。この塗布工程1Aは、ウエハに対して行うので、分断された個々の固体撮像素子81に対して行うよりも、効率よく行うことができる。
【0072】
また、塗布工程1Aでは、ウエハに対するダイシング工程13の前に、粘着性シートが形成されるので、ダイシング工程13にて発生するゴミ91は、固体撮像素子81の上面には付着せず、粘着性シート93の上面に付着する。したがって、ダイシング工程13の前に固体撮像素子81の上面に付着していたゴミ91、およびダイシング工程13の後に粘着性シート93の上面に付着したゴミ91は、粘着性シート93を剥離することにより除去することができる。
【0073】
塗布工程1B〜塗布工程1Dは、ウエハに対するダイシング工程13により形成された各固体撮像素子81の上面に対して、粘着性シート形成用溶液を塗布し、粘着性シート93を形成するものである。したがって、これら塗布工程1B〜塗布工程1Dでは、固体撮像素子81の上面に、ダイシング工程13前に存在していたゴミ91に加えて、ダイシング工程13により発生したゴミ91が付着する。しかしながら、これらゴミ91は、図4に示したように、塗布工程1B〜塗布工程1Dにより固体撮像素子81の上面に形成した粘着性シート93により捕捉される。したがって、粘着性シート93の剥離によって粘着性シート93とともに除去される。
【0074】
また、剥離工程2Aでは、ワイヤボンド工程15において、固体撮像素子81の上面に粘着性シート93が存在し、固体撮像素子81の表面へのゴミ91の付着を防止することができるという利点がある。
【0075】
上記のように、本実施の形態の撮像装置の製造方法によれば、固体撮像素子81に付着したゴミを容易かつ確実に除去することができる。これにより、固体撮像素子81による撮影画像でのゴミによる黒キズ不良の発生を防止し、撮像装置の歩留まりを向上させることができる。
【0076】
なお、以上の説明では、ウエハあるいは固体撮像素子81の上面に粘着性シート93を形成する構成について説明した。しかしながら、撮像装置の製造工程において、さらに、リッドガラス83、レンズ84あるいはホルダ85など、固体撮像素子81以外の光学部材にも粘着性シート93を形成してもよい。その後、粘着性シート93を剥離可能なタイミングで粘着性シート93を剥離すれば、同様に、ゴミ91の付着を防止することができる。
【0077】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態における撮像装置の製造方法を以下に説明する。
【0078】
(固体撮像素子の製造方法の概要)
図7は本発明の他の実施の形態における撮像装置(カメラモジュール)の製造方法を示すフローチャートである。
【0079】
図7に示すように、実施の形態において、ウエハテスト工程11を含むウエハ完成までの工程、およびダイシング工程13を含む固体撮像素子81のチップ完成までの工程は前半工程となっている。したがって、後半工程には、固体撮像素子81がチップの状態で持ち込まれる。また、ダイボンド工程14、ワイヤボンド工程15およびホルダ搭載工程16は、後半工程となっている。
【0080】
塗布工程1および剥離工程2は、前述した製造方法と同様、後半工程に含まれる場合、塗布工程1における粘着性シート形成用溶液の塗布は、固体撮像素子81に対して行われる。
【0081】
塗布工程1は、本実施の形態において、ダイシング工程13(固体撮像素子81のチップ完成)とホルダ搭載工程16との間に行うことができる。
【0082】
具体的には、ダイシング工程13とダイボンド工程14との間の塗布工程11A、ダイボンド工程14とワイヤボンド工程15との間の塗布工程11B、あるいはワイヤボンド工程15とホルダ搭載工程16との間の塗布工程11Cとして行われる。したがって、塗布工程11Aは前記塗布工程1Bに対応し、塗布工程11Bは前記塗布工程1Cに対応し、塗布工程11Cは前記塗布工程1Dに対応している。
【0083】
剥離工程2は、図1に示した製造方法と同様、塗布工程1後において、ダイシング工程13からホルダ搭載工程16までの間の任意の段階で行うことができる。
【0084】
具体的には、ワイヤボンド工程15とホルダ搭載工程16との間の剥離工程21A、ダイボンド工程14とワイヤボンド工程15との間の剥離工程21B、あるいはダイシング工程13とダイボンド工程14との間の剥離工程21Cとして行うことができる。したがって、剥離工程21Aは前記剥離工程2Aに対応し、剥離工程21Bは前記剥離工程2Bに対応し、剥離工程21Cは前記剥離工程2Cに対応している。
【0085】
なお、粘着性シート形成用溶液、塗布工程1、剥離工程2、並びに塗布工程1および剥離工程2によるゴミ91の除去に関する具体的な内容については、前述のとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、塵や埃を防止すべき特に光学製品の製造工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
11 ウエハテスト工程(ウエハ準備工程)
12 ウエハマウント工程
13 ダイシング工程
14 ダイボンド工程
15 ワイヤボンド工程
16 ホルダ搭載工程
51 塗布装置
52 回転台
53 支持台
54 溶液滴下装置
55 液滴
56 塗布対象物
61 吸引部
71 粘着棒
81 固体撮像素子
81a マイクロレンズ
82 ワイヤ
83 リッドガラス
84 レンズ
85 ホルダ
86 配線基板
91 ゴミ
92 塗布層
93 粘着性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固体撮像素子が形成されているウエハから切り出された固体撮像素子のチップを実装した撮像装置の製造方法において、
少なくとも前記固体撮像素子の上面に、凝固して粘着性を有する粘着性シートとなる粘着性シート形成用溶液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程にて形成された前記粘着性シートに対して引き剥がす方向の力を加えることにより、前記粘着性シートを剥離する剥離工程とを備えていることを特徴とする撮像装置の製造方法。
【請求項2】
前記粘着性シートは、前記固体撮像素子の上面への塵埃の付着を防ぐとともに、剥離されることにより前記固体撮像素子の上面に付着していた塵埃を除去することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項3】
前記粘着性シート形成用溶液は、ポリビニルアルコールを主成分とする溶質を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項4】
前記粘着性シートは、剥離時の粘度が1,000,000mPa以上のゲル状であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項5】
前記ウエハからチップ状の固体撮像素子を切り出すダイシング工程を備え、
前記塗布工程は、前記ダイシング工程にて個片化された固体撮像素子のチップに対して行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項6】
前記固体撮像素子のパッド部を配線基板と電気的に接続するワイヤボンド工程を含み、
前記塗布工程は、前記パッド部を除く領域に前記粘着性シート形成用溶液を塗布し、
前記剥離工程は前記ワイヤボンド工程後に行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項7】
前記ウエハからチップ状の固体撮像素子を切り出すダイシング工程を備え、
前記塗布工程は、前記ダイシング工程前のウエハに対して行うことを特徴とする請求項1〜4のうち1項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項8】
前記塗布工程は、前記固体撮像素子以外の光学部材の表面に対しても行い、
前記剥離工程は、前記塗布工程により、前記光学部材に形成された前記粘着性シートを剥離することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項9】
前記剥離工程は、真空ポンプの吸引により前記粘着性シートを剥離することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項10】
前記剥離工程は、前記粘着性シートに粘着する粘着棒により前記粘着性シートを巻き取ることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の撮像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45906(P2013−45906A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183070(P2011−183070)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】