説明

撮像装置及び撮像システム、その制御方法

【課題】 装置の特性変動を好適に低減可能で且つ動作制御が簡便な軽量薄型の撮像装置又はそれを用いた撮像システムを提供する。
【解決手段】 撮像装置は、半導体層を含む変換素子201を有する画素を複数備えた検出部101と、検出部101を駆動する駆動回路102と、を含み、電気信号を出力する撮像動作を行う検出器104と、変換素子201に電圧を供給する電源部107と、電源部107からの電圧の供給が開始されてから撮像動作が開始されるまでの間の少なくとも一部の期間に半導体層に与えられる電圧が、撮像動作において半導体層に与えられる電圧よりも高くなるように、電源部107を制御する制御部106と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像システム、その制御方法に関するものである。より具体的には、医療診断における一般撮影などの静止画撮影や透視撮影などの動画撮影に好適に用いられる、放射線撮像装置及び放射線撮像システム、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線による医療画像診断や非破壊検査に用いる撮像装置として、半導体材料によって形成された平面検出器(Flat Panel Detector、以下、検出器と略す)を用いた放射線撮像装置が実用化され始めている。このような放射線撮像装置は、例えば医療画像診断においては、一般撮影のような静止画撮影や、透視撮影のような動画撮影のデジタル撮像装置として用いられている。検出器としては、非晶質シリコンを用いた光電変換素子と、放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換する波長変換体とを組み合わせた変換素子が用いられた間接変換型の検出器が知られている。また、非晶質セレン等の材料を用いて放射線を直接電荷に変換する変換素子が用いられた直接変換型の検出器が知られている。
【0003】
このような撮像装置では、非晶質半導体からなる変換素子のダングリングボンドや欠陥がトラップ準位として働くことにより、暗電流が変動したり過去の放射線又は光の履歴の影響で残像(ラグ)が発生又は変動したりする可能性がある。それにより、撮像装置の特性や取得される画像信号に変動が生じる可能性があった。それに対して特許文献1では、被写体情報を担う放射線又は光を検出器に照射する前に、別途準備された光源から被写体情報を担わない光を検出器に照射することで、撮像装置の特性や取得される画像信号の変動を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−256675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の方法では、装置内部に光源及びその光源を駆動するための駆動部を別途具備する必要がある。また、検出器の特性や取得される画像信号の変動の抑制を均一化するために、光源からの光は均一な面内分布で検出器に照射されなければならない。しかしながら、光源が均一な面内分布の光を放射するためには、高い動作電圧を供給する電源を有するか、複雑な構成を有することが必要であり、光源又はその駆動部の大型化を招き、撮像装置の軽量薄型化を妨げるおそれがあった。また、光源の劣化による光源からの光の面内分布の制御や輝度の制御など、光源の動作制御が複雑となり、撮像装置の簡便な動作制御を妨げるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、上記課題を鑑み、撮像装置の特性変や取得される画像信号の動を好適に低減可能で且つ動作制御が簡便な軽量薄型の撮像装置又はそれを用いた撮像システムを提供することを目的とするものである。本発明の撮像装置は、放射線又は光を電荷に変換する半導体層を含む変換素子を複数備えた検出部と、前記電荷に応じた電気信号を前記検出部から出力するために前記検出部を駆動する駆動回路と、を含み、前記電気信号を出力する撮像動作を行う検出器と、前記撮像動作の開始の前の少なくとも一部の期間に前記半導体層に与えられる電圧が、前記撮像動作において前記半導体層に与えられる電圧よりも高くなるように、前記電源部を制御する制御部と、
を有する。
【0007】
また、本発明の撮像システムは、先に記載の撮像装置と、前記制御部に制御信号を送信する制御コンピュータと、を含む。
また、本発明の撮像装置の制御方法は、放射線又は光を電荷に変換する半導体層を含む変換素子を有する画素を複数備えた検出部と、前記電荷に応じた電気信号を前記検出部から出力するために前記検出部を駆動する駆動回路と、を含み、前記電気信号を出力する撮像動作を行う検出器を有する撮像装置の制御方法であって、前記電気信号を出力する撮像動作を行う工程と、前記撮像動作の開始の前の少なくとも一部の期間に、前記撮像動作において前記半導体層に与えられる電圧よりも高い電圧を前記半導体層に与える工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、撮像装置の特性や取得される画像信号の変動を好適に低減可能で且つ動作制御が簡便な軽量薄型の撮像装置又はそれを用いた撮像システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撮像システムの概略的ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の概略的等価回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る変換素子の暗電流量と残像量の時間依存性を説明するための特性図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る撮像システムの動作フローを説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態の他の形態に係る撮像装置の概略的等価回路図とタイミングチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置の櫂略的等価回路図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る変換素子の残像量の時間依存性を説明するための特性図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明において放射線は、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、含まれるものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本発明の概念を説明するために、図3(a)を用いて、本発明の第1の実施形態に係る変換素子が有する暗電流の特性を、図3(b)を用いて残像量の特性を、説明する。なお、図3(a)及び(b)の横軸の時間は、変換素子に電圧が供給されてからの時間であり、電圧が供給された直後とは、図3(a)及び(b)の最も左側に相当する。また、図3(a)及び(b)の推奨電圧とは、変換素子に供給される電圧の推奨値であり、推奨動作温度とは、撮像動作における変換素子の温度の推奨値である。
【0012】
検出部から出力される電気信号及びそれに基づく画像データの質を決定する指標の一つとして、残像量が挙げられる。残像とは、後の撮像動作において放射線又は光の照射がなくても、先の撮像動作においてなされた放射線又は光の照射に基づく電気信号が、後の撮像動作で出力される電気信号及び画像データに影響をおよぼすものである。本実施形態における変換素子に用いたPIN型フォトダイオードの残像の原因としては、スイッチ素子との時定数の影響で出力しきれず残留した電気信号や、スイッチ素子による出力に際して発生したkTCノイズや分配ノイズが主に挙げられる。
本願発明者は、誠意検討の結果、残像には変換素子に電圧が供給されてからの時間によって変動する特性(以下、変動特性と称する)があり、またその変動特性は、変換素子の半導体層に与えられる電圧と相関することを見出した。
【0013】
まず、図3(a)に示すように、暗電流量は変換素子に電圧が供給された直後に大きく現れ、時間が経過するに従って小さくなり所定値に収束し、また、変換素子の半導体層に与えられる電圧が高いほど、暗電流量が多いことを見出した。
【0014】
そして、図3(b)に示すように、残像量も変換素子に電圧が供給された直後に大きく現れ、時間が経過するに従って小さくなり所定値に収束することを見出した。また、変換素子の半導体層に与えられる電圧が高いほど、残像量が小さくまた所定値に収束するまでに要する時間が短いことを見出した。これは、電圧が高ければ暗電流量が増大しそれによって変換素子が有する結晶欠陥に捕獲されるキャリアが増加する。そのため、より早く結晶欠陥が電荷によって埋め込まれて変換素子にかかる電圧が安定した状態に収束し、残像量が安定した状態となるものと、本願発明者は推測している。この残像量が安定した状態を以下に安定状態と称する。
【0015】
そこで本願発明者は、検出部の変換素子への電圧の供給が開始されてから撮像動作が開始されるまでの間に電源部から変換素子に供給される電圧を、撮像動作における電圧よりも高くすることを見出した。つまり、検出部の変換素子への電圧の供給が開始されてから撮像動作が開始されるまでの間に変換素子の半導体層に与えられる電圧を、撮像動作において変換素子の半導体層に与えられる電圧よりも高くすることを見出した。ここで、半導体層に与えられる電圧とは、変換素子の半導体層の両端の電位差を意味し、本実施形態のPIN型フォトダイオードであれば変換素子の2つの電極間の電位差に相当し、逆方向の電圧が与えられる。それにより、変換素子への電圧の供給が開始されてから変換素子が安定状態となる時間が短くなり、電圧の供給が開始されてから撮像動作が開始されるまでの間の時間に行われる撮像準備動作の期間を短くすることが可能となる。なお、撮像動作と撮像準備動作については、後で詳細に説明する。少なくとも撮像準備動作の一部の期間に電源部によって供給される半導体層の電圧は、推奨動作電圧に対して2〜5V程度上昇させればよい。ここで、推奨動作電圧とは、検出器が好適な感度を有して好適なS/N比の信号を出力するよう推奨される変換素子(の半導体層)に与えられる電圧である。そのため、従来の光源を備えたものに比べれば、少ない消費電力で同様の効果を得ることができる。また、電源部による電圧制御は、光源による光の面内分布や輝度の制御に比べると容易に行うことができる。また、同様な理由により、同様の効果を得ようとする光源及びその駆動部を設ける構成に比べて軽量小型な構成とすることができる。それにより、本発明は、装置の特性変動を好適に低減可能で且つ動作制御が簡便な軽量薄型の撮像装置又はそれを用いた撮像システムを提供することが可能となる。
【0016】
次に、図1を用いて第1の実施形態の放射線撮像システムについて説明する。図1に示す本発明の放射線撮像システムは、撮像装置100、制御コンピュータ108、放射線制御装置109、放射線発生装置110、表示装置113、制御卓114を含む。撮像装置100は、放射線又は光を電気信号に変換する画素を複数備えた検出部101と、検出部101を駆動する駆動回路102と、駆動された検出部101からの電気信号を画像データとして出力する読出回路103と、を有する平面検出器104を含む。撮像装置100は更に、平面検出器(検出器)104からの画像データを処理して出力する信号処理部105と、各構成要素に夫々制御信号を供給して検出器104の動作を制御する制御部106と、各構成要素に夫々バイアスを供給する電源部107を含む。信号処理部105は、後述する制御コンピュータ108から制御信号を受けて制御部106に提供する。制御部106は、制御コンピュータ108からの制御信号を受けて、駆動回路102、読出回路103、信号処理部105、及び、電源部107のうちの少なくとも一つを制御する。電源部107は、不図示の外部電源や内蔵バッテリーから電圧を受けて検出部101、駆動回路102、読出回路103で必要な電圧を供給するレギュレータ等の電源回路を内包する。本実施形態の電源部107は、検出部101の画素に少なくとも2以上の電位を切り替えて供給でき、撮像動作の開始の前の少なくとも一部の期間に変換素子の半導体層に供給する電圧が、撮像動作において供給する電圧よりも高くできる構成となっている。
【0017】
制御コンピュータ108は、放射線発生装置110と撮像装置100との同期や、撮像装置100の状態を決定する制御信号の送信、撮像装置100からの画像データに対する補正・保存・表示のための画像処理を行う。また、制御コンピュータ108は、制御卓114からの情報に基づき放射線の照射条件を決定する制御信号を放射線制御装置109に送信する。また、制御コンピュータ108は、制御卓114からの情報に基づき、電源部107から検出部101への電圧の供給が開始されてから撮像動作が開始されるまでの時間(以下、撮像開始時間と称する)を得ることができる。制御コンピュータ108は、得られた撮像開始時間に基づいて制御部106に制御信号を与え、また、後述する演算処理部117に撮像開始時間を送信する。
【0018】
放射線制御装置109は、制御コンピュータ108からの制御信号を受けて、放射線発生装置110に内包される放射線源111から放射線を照射する動作や、照射野絞り機構112の動作の制御を行う。照射野絞り機構112は、検出器104の検出部101に放射線又は放射線に応じた光が照射される領域である所定の照射野を変更することが可能な機能を有している。制御卓114は、制御コンピュータ108の各種制御のためのパラメータとして被検体の情報や撮像条件の入力を行い制御コンピュータ108に伝送する。表示装置113は、制御コンピュータ108で画像処理された画像データを表示する。記憶手段115は、制御部106に含まれており、変換素子に与えられる電圧又は変換素子の半導体層に与えられる電圧と、安定状態の完了の時間と、に関する情報を予め記憶している。なお、上記記憶手段は、制御部106が有しているが、制御コンピュータ108が有してもよい。これらのことは本実施形態に限定されず、本発明の他の実施形態でも同様である。
【0019】
次に、図2を用いて本発明の第1の実施形態に係る撮像装置を説明する。なお、図1を用いて説明した構成と同じものは同じ番号を付与してあり、詳細な説明は割愛する。また、図2では説明の簡便化のためにm行×n列の画素を有する検出器を含む撮像装置を示す。ここでmとnは2以上の整数であり、実際の撮像装置はより多画素であり、例えば17インチの撮像装置では約2800行×約2800列の画素を有している。
【0020】
検出部101は、行列状に複数配置された画素を有する。画素は、放射線又は光を電荷に変換する変換素子201と、その電荷に応じた電気信号を出力するスイッチ素子202と、を有する。本実施形態では、変換素子に照射された光を電荷に変換する光電変換素子として、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置されアモルファスシリコンを主材料とするPIN型フォトダイオードを用いる。変換素子としては、上述の光電変換素子の放射線入射側に放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換する波長変換体を備えた間接型の変換素子や、放射線を直接電荷に変換する直接型の変換素子が好適に用いられる。スイッチ素子202としては、制御端子と2つの主端子を有するトランジスタが好適に用いられ、本実施形態では薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。変換素子201の一方の電極はスイッチ素子202の2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極は共通のバイアス配線Bsを介してバイアス電源107aと電気的に接続される。行方向の複数のスイッチ素子、例えばT11〜T1nは、それらの制御端子が1行目の駆動配線G1に共通に電気的に接続されており、駆動回路102からスイッチ素子の導通状態を制御する駆動信号が駆動配線を介して行単位で与えられる。このように駆動回路102が行単位でスイッチ素子202の導通状態と非導通状態を制御することにより、駆動回路102は行単位で画素を走査する。列方向の複数のスイッチ素子、例えばT11〜Tm1は、他方の主端子が1列目の信号配線Sig1に電気的に接続されており、スイッチ素子が導通状態である間に、変換素子の電荷に応じた電気信号を、信号配線を介して読出回路103に出力する。列方向に複数配列された信号配線Sig1〜Signは、複数の画素から出力された電気信号を並列に読出回路103に伝送する。
【0021】
読出回路103は、検出部101から並列に出力された電気信号を増幅する増幅回路207を信号配線毎に対応して設けられている。また、各増幅回路207は、出力された電気信号を増幅する積分増幅器203と、積分増幅器203からの電気信号を増幅する可変増幅器204と、増幅された電気信号をサンプルしホールドするサンプルホールド回路205と、バッファアンプ206とを含む。積分増幅器203は、読み出された電気信号を増幅して出力する演算増幅器と、積分容量と、リセットスイッチと、を有する。積分増幅器203は、積分容量の値を変えることで増幅率を変更することが可能である。演算増幅器の反転入力端子には出力された電気信号が入力され、正転入力端子には基準電源107bから基準電圧Vrefが入力され、出力端子から増幅された電気信号が出力される。また、積分容量が演算増幅器の反転入力端子と出力端子の間に配置される。サンプルホールド回路205は、各増幅回路に対応して設けられ、サンプリングスイッチとサンプリング容量とによって構成される。また読出回路103は、各増幅回路207から並列に読み出された電気信号を順次出力して直列信号の画像信号として出力するマルチプレクサ208と、画像信号をインピーダンス変換して出力するバッファ増幅器209と、を有する。バッファ増幅器209から出力されたアナログ電気信号である画像信号Voutは、A/D変換器210によってデジタルの画像データに変換されて図1に示す信号処理部105へ出力される。そして、図1に示す信号処理部105で処理された画像データが制御コンピュータ108へ出力される。
【0022】
駆動回路102は、図1に示す制御部106から入力された制御信号(D−CLK、OE、DIO)に応じて、スイッチ素子を導通状態にする導通電圧Vcomと非道通状態とする非導通電圧Vssを有する駆動信号を、各駆動配線に出力する。これにより、駆動回路102はスイッチ素子の導通状態及び非導通状態を制御し、検出部101を駆動する。
【0023】
図1における電源部107は、図2に示すバイアス電源107a、増幅回路の基準電源107bを含む。バイアス電源107aは、バイアス配線Bsを介して各変換素子の他方の電極に共通に電圧Vs1,Vs2を供給する。ここで、電圧Vs1及びVs2は、互いに異なる電圧値を有する電圧である。基準電源107bは、各演算増幅器の正転入力端子に基準電圧Vrefを供給する。本実施形態では、変換素子の一方の電極にスイッチ素子を介して基準電圧Vrefが供給され、変換素子の他方の電極にVs1又はVs2が供給されることにより、変換素子の半導体層に与えられる電圧が制御される。ここで、本実施形態では、Vs2が推奨動作電圧であり、|Vs1−Vref|>|Vs2−Vref|となっている。
【0024】
図1に示す制御部106は、信号処理部105を介して装置外部の制御コンピュータ108等からの制御信号を受けて、駆動回路102、電源部107、読出回路103に各種の制御信号を与えて検出器104の動作を制御する。制御部106は、駆動回路102に制御信号D−CLKと制御信号OE、制御信号DIOを与えることによって、駆動回路102の動作を制御する。ここで、制御信号D−CLKは駆動回路として用いられるシフトレジスタのシフトクロックであり、制御信号DIOはシフトレジスタが転送するパルス、OEはシフトレジスタの出力端を制御するものである。また、制御部106は、読出回路103に制御信号RC、制御信号SH、及び制御信号CLKを与えることによって、読出回路103の各構成要素の動作を制御する。ここで、制御信号RCは積分増幅器のリセットスイッチの動作を、制御信号SHはサンプルホールド回路205の動作を、制御信号CLKはマルチプレクサ208の動作を制御するものである。
【0025】
次に、図4(a)〜(c)を用いて、本実施形態の撮像装置の動作を説明する。ここで、図4(a)は撮像装置全体の駆動タイミングを概略的に示したものであり、図4(b)は図4(a)のA−A’箇所を詳細に示したもの、図4(c)は図4(a)のB−B’箇所を詳細に示したものである。
【0026】
図4(a)及び(b)において、時刻t1において変換素子201に電圧|Vs1−Vref|又は|Vs2−Vref|が供給されると、撮像装置100は撮像準備期間に撮像準備動作を行う。ここで、撮像準備動作とは、電圧Vsの印加開始に起因する検出器104の特性変動を安定化させるために、初期化動作Kを少なくとも1回行う動作であり、本実施形態では初期化動作Kを複数回繰り返し行っている。また、初期化動作Kとは、変換素子に蓄積動作前の初期の電圧|Vs1−Vref|又は|Vs2−Vref|を与え、変換素子を初期化するための動作である。なお、図4(a)では、撮像準備動作として初期化動作K及び蓄積動作Wの一組を複数回繰り返し行う動作を行っている。ここで、本実施形態では、時刻t1から時刻t2の間の期間において、変換素子201には電圧|Vs1−Vref|が与えられて、撮像装置100は撮像準備動作を行っている。この期間の撮像準備動作により、変換素子の特性が安定化される。そして、変換素子の特性変動が安定化した時刻t2から時刻t3の間の期間において、変換素子201には|Vs2−Vref|が与えられて、撮像装置100は撮像準備動作を行っている。次に、検出器104の特性変動が安定している時刻t3において、変換素子201には|Vs2−Vref|が与えられており、撮像装置100は、撮像動作を開始する。時刻t3から時刻t5の間の撮像期間のうちの時刻t3から時刻t4の間では、撮像装置100は、初期化動作Kと、蓄積動作Wと、画像出力動作Xと、を行う。蓄積動作Wは変換素子が電荷を生成するために放射線の照射に応じた期間で行われる動作であり、画像出力動作Xは蓄積動作Wで生成された電荷に応じた電気信号に基づいて画像データを出力する動作である。ここで本実施形態において撮像動作の蓄積動作Wは、撮像準備動作の蓄積動作Wと同じ時間の長さで行っているが、本発明はそれに限定されるものではない。撮像準備動作の短縮化のためには撮像準備動作の蓄積動作Wの時間の長さが、撮像動作の蓄積動作Wの時間の長さより短い方が好ましい。また本実施形態では、放射線の照射が行われない暗状態で変換素子が電荷を生成するために、画像出力動作Xの前の蓄積動作Wと同じ時間の長さで行われる蓄積動作Wと、その蓄積動作Wで生成された電荷に基づいて暗画像データを出力する暗画像出力動作Fと、を行う。暗画像出力動作Fでは、画像出力動作Xと同様の動作が撮像装置100で行われる。暗画像出力動作Fで得られた暗画像データは、画像出力動作Xで得られた画像データと差分処理を行うためのものである。時刻t5に撮像動作が終了すると、撮像装置100は、変換素子に|Vs2−Vref|が与えられた状態で、撮像準備動作を再度開始し、次の撮像動作が開始される時刻t6まで撮像準備動作を継続する。
【0027】
次に、図4(b)を用いて、撮像準備動作を詳細に説明する。図4(b)に示すように、初期化動作Kでは、まず制御部106からリセットスイッチに制御信号RCが与えられて積分増幅器203の積分容量及び信号配線がリセットされる。次に、変換素子201に電圧Vsが与えられた状態で、駆動回路102から駆動配線G1に導通電圧Vcomが与えられ、1行目の画素のスイッチ素子T11〜T13が導通状態とされる。このスイッチ素子の導通状態により、変換素子が初期化される。その際に変換素子の電荷がスイッチ素子により電気信号として出力されるが、本実施形態では制御信号SH及び制御信号CLKが出力されずサンプルホールド回路以降の回路を動作させていないため、読出回路103からその電気信号に応じたデータは出力されない。その後に再び制御部106から制御信号RCが出力されて積分容量及び信号配線がリセットされることにより、出力された電気信号は処理される。ただし、そのデータを補正などに使用したい場合には、制御信号SH及び制御信号CLKが出力されてサンプルホールド回路以降の回路を後述する画像出力動作や暗画像出力動作と同様に動作させてもよい。このようなスイッチ素子の導通状態の制御とリセットがm行目まで繰り返し行われることにより、検出器101の初期化動作がなされる。ここで、初期化動作においては、少なくともスイッチ素子の導通状態の間もリセットスイッチを導通状態に保ちリセットし続けていてもよい。また、初期化動作におけるスイッチ素子の導通時間は、後述する画像出力動作におけるスイッチ素子の導通時間より短くてもよい。また、初期化動作では複数行のスイッチ素子を同時に導通させてもよい。これらの場合には、初期化動作全体にかかる時間を短くすることが可能となり、より早く検出器の特性の変動を安定化させることが可能となる。なお、本実施形態の初期化動作Kは、撮像準備動作の後に行われる撮像動作に含まれる画像出力動作と同じ期間で行われている。蓄積動作Wでは、変換素子201に電圧Vsが与えられた状態で、スイッチ素子202には非導通電圧Vssが与えられており、全ての画素のスイッチ素子は非導通状態とされる。
【0028】
次に、図4(c)を用いて、撮像動作を詳細に説明する。なお、先に説明した動作については割愛する。図4(c)に示すように、画像出力動作では、まず制御部106から制御信号RCが出力されて積分容量及び信号配線がリセットされる。そして、駆動回路102から駆動配線G1に導通電圧Vcomが与えられ、3行目のスイッチ素子T11〜T1nが導通状態とされる。これにより1行目の変換素子S11〜S1nで発生された電荷に基づく電気信号が各信号配線Sig1〜Signに出力される。各信号配線Sig1〜Signを介して並列に出力された電気信号は、それぞれ各増幅回路207の積分増幅器203及び可変増幅器204で増幅される。増幅された電気信号はそれぞれ、制御信号SHによりサンプルホールド回路が動作され、各増幅回路207内のサンプルホールド回路205に並列に保持される。保持された後、制御部106から制御信号RCが出力されて積分増幅器203の積分容量及び信号配線がリセットされる。リセットされた後、1行目と同様に2行目の駆動配線G2に導通電圧Vcomが与えられ、2行目のスイッチ素子T21〜T2nが導通状態とされる。2行目のスイッチ素子T21〜T2nが導通状態とされている期間内に、制御信号CLKに応じてマルチプレクサ208がサンプルホールド回路205に保持された電気信号を順次出力する。これにより並列に読み出された1行目の画素からの電気信号は直列の画像信号に変換して出力され、A/D変換器210が1行分の画像データに変換して出力する。以上の動作を1行目からn行目に対して行単位で行うことにより、1フレーム分の画像データが撮像装置から出力される。一方、暗画像出力動作Fでは、放射線の照射が行われない暗状態で画像出力動作Xと同様の動作が撮像装置100で行われる。
【0029】
本実施形態では、時刻t1において画素の変換素子201に電圧Vsの供給が開始されると、制御部106は、電源部107が変換素子に電圧|Vs1−Vref|を供給するように、電源部107を制御する。この電圧|Vs1−Vref|の供給は、時刻t1から時刻t3までの間の少なくとも一部でなされる。また、制御部106は、変換素子の特性が安定化した時刻t2から撮像動作が開始される時刻t3までの間に、電源部107が変換素子に電圧|Vs2−Vref|を供給するように、電源部107を制御する。本実施形態では、時刻t2において、変換素子に電圧|Vs2−Vref|の供給が開始される。更に、検出部101の変換素子の特性が、安定状態となったか否かを監視し、安定状態となったと判定された場合には、電源部107が変換素子に電圧|Vs2−Vref|の供給を開始するように、制御部106は電源部107を制御することが好ましい。このような監視及び判定を行う判定手段は、制御部106が有していてもよく、制御コンピュータ108が有していてもよい。安定状態となったか否かを監視及び判定する方法としては、図4(b)に示す撮像準備動作において、図4(c)に示す撮像動作と同様に読出回路103に制御信号SH及びCLKが与えられて、読出回路104から出力される画像データを監視する。そしてその画像データが、所定の閾値と比較することによって判定することが好ましい。この場合、監視の容易性の向上のために、マルチプレクサが複数列の信号を同時に出力したり、演算増幅器203や可変増幅器206の増幅率を高くしたりすることにより、検出器104から得られる信号を大きくすることが望ましい。また、監視の精度の向上のために、撮像準備動作における初期化動作及び蓄積動作の期間が、撮像動作における初期化動作及び蓄積動作の期間に比べて短くすることが望ましい。撮像準備動作における画像データの取得周期を短くすることができ、判定の周期を短くできるためである。一方、予め変換素子に供給される電圧|Vs1−Vref|と安定状態の完了の時間を測定して、電圧と安定状態の完了の時間とに関する情報として記憶手段115に記憶しておく。そして、撮像準備動作における変換素子に供給される電圧|Vs1−Vref|と、その電圧の供給が開始されてからの時間と、記憶手段に記憶された情報と、に基づいて、判定手段が安定状態となったか否かを判定してもよい。具体的には、変換素子への電圧|Vs1−Vref|の供給の開始からの時間が、記憶手段115に記憶された当該温度における安定状態の完了の時間と比較し、完了の時間を超えた場合に、安定状態となったと判定する。ここで、安定状態の完了の時間は、画像データが所定の閾値を下回った時間をタイマーなどで計測してもよく、またその画像データが得られた動作のために与えられた制御信号を基に測定してもよい。また、上記記憶手段は、制御部106が有してもよく、制御コンピュータ108が有してもよい。これらのことは本実施形態に限定されず、本発明の他の実施形態でも同様である。
【0030】
次に、図5を用いて、本実施形態において撮像システムの動作フローを説明する。撮像システムの主電源を投入した後、制御用コンピュータ108からの要求に応じた制御部106が、電圧Vsを検出部101に供給するように電源部107を制御する。そして、電源部107が変換素子に電圧|Vs1−Vref|を供給して検出器104が撮像準備動作を行うように、制御部106は電源部107及び検出器104を制御する。そして、検出部101の変換素子が安定状態となったか否かを判定し、安定状態ではないと判定された場合には、変換素子に電圧|Vs1−Vref|が供給された状態での撮像準備動作が継続される。一方、安定状態となったと判定された場合には、源部107が変換素子に電圧|Vs2−Vref|を供給して検出器104が撮像準備動作を行うように、制御部106は電源部107及び検出器104を制御する。
【0031】
放射線の曝射要求がない場合(NO)は、検出器104が変換素子に電圧|Vs2−Vref|が供給された状態での撮像準備動作を継続して行うように、制御部106は電源部107及び検出器104を制御する。一方、曝射要求がある場合(YES)は、変換素子に電圧|Vs2−Vref|が供給された状態で検出器104が撮像動作を行うように、制御部106は電源部107及び検出器104を制御する。撮像動作が終了した後、終了要求がある場合(YES)は一連の動作を終了するように、制御部106が各要素を制御する。終了要求がない場合(NO)は、検出器104が変換素子に電圧|Vs2−Vref|が供給された状態での撮像準備動作を再度行うように、制御部106は検出器104を制御する。
【0032】
なお、本実施形態では、電源部107に含まれるバイアス電源107aが、Vs1とVs2とを供給可能な形態であるものとして説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。図6(a)のように、バイアス電源107aがVs1とVs2との間で複数の電圧値の電圧を出力可能な可変電圧源を有し、図6(b)のように時間t1から時間t2の間の期間に、Vs1からVs2まで段階的に変動するように電圧が供給される形態でもよい。また、基準電源107bが少なくとも2つの基準電源Vref1とVref2を出力可能な可変電圧源を含む形態としてもよい。その場合、電源部107は、|Vs1−Vref|に代えて|Vs−Vref1|を、|Vs2−Vref|に代えて|Vs−Vref2|を、変換素子に供給する。また、変換素子に電圧|Vs1−Vref|が供給されている間は、放射線の曝射を禁止するように、制御コンピュータ108が放射線制御装置109及び放射線発生装置110を制御してもよい。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、図7(a)、(b)を用いて本発明の第2の実施形態に係る撮像装置を説明する。なお、図3又は図6(a)に示す第1の実施形態の構成と同じものは同じ番号を付与してあり、詳細な説明は割愛する。また、図7(a)では図3又は図6(a)と同様に説明の簡便化のために3行×3列の画素を有する検出器を含む撮像装置を示すが、実際の撮像装置はより多画素である。また、図7(b)は1画素の概略的等価回路を示すものである。
【0034】
第1の実施形態の検出部101では、変換素子201にPIN型フォトダイオードを用いていたが、本実施形態の検出部101’では、変換素子601にMIS型変換素子としてMIS型光電変換素子を用いている。また、第1の実施形態では、変換素子201の他方の電極は共通のバイアス配線Bsを介してバイアス電源107aと電気的に接続されている。一方、本実施形態では、変換素子601の他方の電極は共通のバイアス配線Bsを介してバイアス電源107a’と電気的に接続されている。このバイアス電源107a’は、変換素子601の他方の電極に、電圧Vsとは別に変換素子601をリフレッシュするための電圧Vrを供給することが可能な構成となっている。また、本実施形態のバイアス電源107a’は、第1の実施形態の形態に加えて、変換素子601をリフレッシュするための電圧Vrを、少なくとも2つの電位Vr1,Vr2で供給できる構成となっている。
【0035】
また、図7(b)に示すように、変換素子601は、第1の電極602と第2の電極606の間に半導体層604が、第1の電極602と半導体層604との間に絶縁層603が、それぞれ設けられている。また、半導体層604と第2の電極606との間に不純物半導体層605が設けられている。第2の電極606は、バイアス配線Bsを介してバイアス電源107a’と電気的に接続される。変換素子601は、変換素子201と同様に、第2の電極606にバイアス電源107a’から電圧Vsが供給され、第1の電極602にスイッチ素子602を介して基準電圧Vrefが供給されて、蓄積動作がなされる。また、第2の電極606にバイアス電源107a’を介してリフレッシュ用の電圧Vrが供給され、変換素子601はその電圧|Vr−Vref|によりリフレッシュがなされる。なお、このリフレッシュは、MIS型変換素子の半導体層604で発生し、不純物半導体層605を通過できずに半導体層604と絶縁層603との間に蓄積された電子−正孔対の一方を、第2電極606に向けて移動させて消滅させることである。なお、リフレッシュに関しては、後で詳細に説明する。
【0036】
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施形態に係る変換素子が有する残像量の時間依存性を説明する。なお、第2の実施形態に係る変換素子が有する暗電流量の時間依存性に関しては、図4(a)で説明したものと概略等しいため、詳細な説明は割愛する。
【0037】
図8に示すように、残像量は変換素子に電圧が供給された直後に大きく現れ、時間が経過するに従って小さくなり所定値に収束する。これは、第1の実施形態で説明した原因に加えて、MIS型変換素子では以下の原因があることを、本願発明者は、誠意検討の結果、見出した。MIS型変換素子では、暗電流などにより発生した電子−正孔対の一方が半導体層604と絶縁層603との間に蓄積され、それにより変換素子に電圧が供給されてからの時間に応じて半導体層604と絶縁層603の界面の電位Vaが変動する。この電位Vaが変動するため、半導体層604にかかる電圧が変動することにより、MIS型変換素子では変換素子に電圧が供給されてからの時間に応じて感度が変動する。以下にこのことを感度変動と称する。この感度変動が起こっている状況で撮像動作が行われた場合、放射線又は光が照射された画素のMIS型変換素子では、照射された放射線又は光により発生した電子−正孔対の一方が半導体層604と絶縁層603との間に蓄積されて、電位Vaが大きく変動する。一方、放射線又は光が照射されない画素のMIS型変換素子では、放射線又は光によって発生する電子−正孔対に起因する電位Vaの変動は起こらない。そのため、放射線又は光が照射された画素と放射線又は光が照射されなかった画素とでは、MIS型変換素子の感度に差が生じる。この感度の差が、次の撮像動作間で得られる画像データに残像として現れる。このことは、半導体層604と絶縁層603との間に蓄積された電子−正孔対の一方のうち、消滅される量が少ないリフレッシュ動作が行われる場合には、特に顕著となる。
【0038】
一方、十分な時間経過により、暗電流などにより発生した電子−正孔対の一方が半導体層604と絶縁層603との間に十分に蓄積されると、電位Vaが変換素子に電圧が供給されてからの時間に応じて所望の電位に収束する。このことは、半導体層604と絶縁層603との間に蓄積された電子−正孔対の一方のうち、消滅される量が少ないリフレッシュ動作が行われる場合には、特に顕著となる。電位Vaが収束することにより、撮影動作によって発生する感度の差が小さくなり、感度変動も収束し、変換素子が所望の感度で安定化する。これを安定状態と呼ぶ。安定状態では、光又は放射線の照射による電位Vaの変動も、リフレッシュ動作により抑制される。すなわち、光又は放射線の照射による変換素子の感度変動が抑制され、感度変動に起因する残像量が小さくなる。従って、図7に示すように、残像量は変換素子に電圧が供給された直後に大きく現れ、時間が経過するに従って小さくなり、安定状態における所定値に収束する。
【0039】
また、本願発明者は更に以下を見出した。図8に示すように、変換素子の半導体層に与えられる電圧が高いほど、感度変動に起因する残像量が所定値に収束するまでの時間が短くなる。これは、変換素子の半導体層に与えられる電圧が高いほど暗電流が増加し、それにより発生する電子−正孔対の量が多くなる。そのため、半導体層604と絶縁層603との間に蓄積される電子−正孔対の一方の量が多くなり、電位Vaが早く所望の電位に収束するためである。
【0040】
ここで、MIS型変換素子において、変換素子の半導体層に与えられる電圧Viは、以下の式で与えられる。
【0041】
Vi =|Vs−(Vr−Vref)*Ci/(Ci+Cn)|
ここで、Ciは半導体層604の容量値、Cnは絶縁層603の容量値である。つまり、MIS型変換素子では、第1の実施形態で検討した内容に加えて、リフレッシュ動作のための電圧Vrの値が小さいほど、変換素子の半導体層に与えられる電圧Viが大きくなる。そのため、本願発明者は、MIS型変換素子では、第1の実施形態で検討したVsの値に加えて、リフレッシュ動作のための電圧Vrの値が小さいほど、感度変動に起因する残像量が所定値に収束するまでの時間が短くなることを見出した。
【0042】
次に、図9(a)〜(c)を用いて、本実施形態の撮像装置の動作を説明する。ここで、図9(a)は撮像装置全体の駆動タイミングを概略的に示したものであり、図9(b)は図8(a)のA−A’箇所を詳細に示したもの、図9(c)は図9(a)のB−B’箇所を詳細に示したものである。なお、図4(a)〜(c)に示す第1の実施形態の動作と同じものは同じ番号を付与してあり、詳細な説明は割愛する。ここで各時間には’が付与されているが図4(a)〜(c)に示す時間と同じ番号と対応するものである。
【0043】
第1の実施形態の撮像準備動作は、初期化動作K及び蓄積動作Wの一組を複数回繰り返し行う動作であったが、本実施形態の撮像準備動作は、リフレッシュ動作Rと初期化動作Kと蓄積動作Wの一組を複数回繰り返し行う動作となっている。ここで、リフレッシュ動作とは、MIS型変換素子の半導体層604で発生し、不純物半導体層605を通過できずに半導体層604と絶縁層603との間に蓄積された電子−正孔対の一方を、第2電極606に向けて移動させて消滅させるための動作である。また、第1の実施形態の撮像動作は、初期化動作Kと蓄積動作Wと画像出力動作Xと初期化動作Kと蓄積動作Wと暗画像出力動作Fとを行う動作であったが、本実施形態の撮像動作は、各初期化動作Kの前にリフレッシュ動作Rを更に行う動作である。このリフレッシュ動作では、まずバイアス配線Bsを介して第2電極604にリフレッシュ用の電圧Vrが供給される。次に、各スイッチ素子を導通して第1電極602に基準電圧Vrefが供給され、変換素子601はそのバイアス|Vr−Vref|によりリフレッシュがなされる。複数の変換素子601は行単位で順次リフレッシュされ、全てのスイッチ素子が非導通にされると全ての変換素子601のリフレッシュが終了する。その後、バイアス配線Bsを介して変換素子601の第2電極606に電圧Vsが供給され、各スイッチ素子を導通して第1電極602に基準電圧Vrefが供給され、変換素子601にはバイアス|Vs−Vref|が供給される。全てのスイッチ素子が非導通にされると全ての変換素子601が撮像可能なバイアス状態となり、リフレッシュ動作が終了する。次に、変換素子601を初期化し暗示出力を安定化させるために初期化動作Kを行い、その後蓄積動作Wに遷移する。
【0044】
本実施形態では、時刻t1’から時刻t3’までの間の撮影準備動作の間の少なくとも一部である時刻t1’から時刻t2’の間で、バイアス電源107a’からリフレッシュ動作のための電圧Vr1が供給されてリフレッシュが行われる。この電圧Vr1は、撮像動作において行われるリフレッシュ動作のための電圧Vr2よりも低い。この期間の撮像準備動作により、変換素子の特性が安定化される。そして、変換素子の特性変動が安定化した時刻t2’から時刻t3’の間の期間において、バイアス電源107a’からリフレッシュ動作のための電圧Vr2が供給されてリフレッシュが行われる。また、時刻t3’以降の撮影動作においても、同様にバイアス電源107a’からリフレッシュ動作のための電圧Vr2が供給されてリフレッシュが行われる。
【0045】
なお、本実施形態では、リフレッシュ動作のための電圧Vrについて説明したが、第1の実施形態と同様に、Vs1とVs2とを供給可能な形態であってもよい。また、バイアス電源107a’がVs1とVs2との間で複数の電圧値の電圧を出力可能な可変電圧源を有し、時刻t1’から時刻t2’の間の期間に、Vs1からVs2まで段階的に変動するように、電圧が供給される形態でもよい。また、バイアス電源107a’がVr1とVr2との間で複数の電圧値の電圧を出力可能な可変電圧源を有し、時刻t1’から時刻t2’の間の期間に、Vr1からVr2まで段階的に変動するように、電圧が供給される形態でもよい。また、基準電源107bが少なくとも2つの基準電源Vref1とVref2を出力可能な可変電圧源を含む形態としてもよい。
【0046】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、撮像装置の特性の変動を好適に低減可能で且つ動作制御が簡便な軽量薄型の撮像装置又はそれを用いた撮像システムを提供することが可能となる。
【0047】
なお、本発明の各実施形態は、例えば制御部106に含まれるコンピュータや制御コンピュータ108がプログラムを実行することによって実現することもできる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。また、第1又は第2の実施形態から容易に想像可能な組み合わせによる発明も本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100 撮像装置
101 検出部
102 駆動回路
103 読出回路
104 平面検出器
105 信号処理部
106 制御部
107 電源部
108 制御コンピュータ
109 放射線制御装置
110 放射線発生装置
111 放射線源
112 照射野絞り機構
113 表示装置
114 制御卓
115 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線又は光を電荷に変換する半導体層を含む変換素子を複数備えた検出部と、前記電荷に応じた電気信号を前記検出部から出力するために前記検出部を駆動する駆動回路と、を含み、前記電気信号を出力する撮像動作を行う検出器と、
前記変換素子に電圧を供給する電源部と、
前記撮像動作の開始の前の少なくとも一部の期間に前記半導体層に与えられる電圧が、前記撮像動作において前記半導体層に与えられる電圧よりも高くなるように、前記電源部を制御する制御部と、
を有する撮像装置。
【請求項2】
前記変換素子に電圧を供給する電源部を更に有し、
前記制御部は、前記電源部から前記検出部に前記電圧の供給が開始されてから前記撮像動作が開始されるまでの間の少なくとも一部の期間に前記半導体層に与えられる電圧が、前記撮像動作において前記半導体層に与えられる電圧よりも高くなるように、前記電源部を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記変換素子が安定状態となったか否かを判定する判定手段を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記変換素子に供給される電圧と安定状態の完了の時間とに関する情報を記憶した記憶手段を更に含み、
前記判定手段は、前記変換素子に供給される電圧と、前記電源部から前記検出部に前記電圧の供給が開始されてからの時間と、前記記憶手段に記憶された前記情報と、に基づいて前記変換素子が安定状態となったか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記電源部は、前記撮像動作において前記変換素子に供給される電圧と、前記少なくとも一部の期間において前記変換素子に供給される電圧と、の間で複数の電圧値の電圧を段階的に出力可能な可変電圧源を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記変換素子はPIN型フォトダイオードを含む請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記変換素子はMIS型光電変換素子を含み、
前記電源部は、前記MIS型光電変換素子をリフレッシュするための電圧をMIS型光電変換素子に供給し、
前記少なくとも一部の期間において前記MIS型変換素子に供給されるリフレッシュするための電圧は、前記撮像動作において前記MIS型変換素子に供給されるリフレッシュするための電圧に比べて低いことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記制御部に制御信号を送信する制御コンピュータと、
を含む撮像システム。
【請求項9】
放射線又は光を電荷に変換する半導体層を含む変換素子を複数備えた検出部と、前記電荷に応じた電気信号を前記検出部から出力するために前記検出部を駆動する駆動回路と、を含み、前記電気信号を出力する撮像動作を行う検出器を有する撮像装置の制御方法であって、
前記電気信号を出力する撮像動作を行う工程と、
前記撮像動作の開始の前の少なくとも一部の期間に、前記撮像動作において前記半導体層に与えられる電圧よりも高い電圧を前記半導体層に与える工程と、
を含む撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204965(P2012−204965A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65981(P2011−65981)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】