説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】 周期的な模様のある被写体を撮影した場合に、局所的なMTF劣化を回避する。
【解決手段】 撮像に利用するイメージセンサに対し、画素配列の行方向又は列方向の少なくとも一の方向に、行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの異なる画素開口の画素が一つおきに配置する。
そのイメージセンサを基準位置と該基準位置から1画素分より微小ステップで移動させる。そして、イメージセンサの基準位置で各画素の画素データを取得し、またイメージセンサの基準位置から1画素分より微小ステップ移動した位置で各画素の画素データを取得する。最後に、各画素位置それぞれに上記2つの異なる画素開口の画素より画素データを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スウィングイメージセンサを備える撮像装置及びその撮像方法に関し、特にスウィングイメージセンサの位置を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルスチルカメラ、カムコーダ、監視カメラなどのカメラシステム(撮像装置)では、最大に取得できる画像の解像度は、使用されるイメージセンサ(撮像素子)の画素数によって決定される。近年、高解像度の画像に対する要求の高まりを受けて、信号処理、もしくは機構的な工夫により、イメージセンサの画素数以上の解像度を生成する超解像技術が注目を浴びている。
【0003】
超解像技術の手法としては、現在、さまざまなものが提案されている。その中で、信号処理とカメラシステムの機構的な制御との組み合わせにより、精度よく解像度を向上させる技術として、イメージセンサシフト方式(または画素ずらし方式)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この手法は、イメージセンサを画素ピッチ以下のサイズで振動させ、その時に取得される僅かにずれた複数の画像から画素間のデータを再構成し、画素数以上の解像度の画像を得るものである。イメージセンサシフト方式を適用したイメージセンサはスウィングイメージセンサと呼ばれている。
【0004】
この方式のカメラシステムのイメージセンサを含む要部の構成を図1に示す。通常のカメラシステムでは、イメージセンサはカメラシステム本体に固定設置される。しかし、イメージセンサシフト方式を採用するカメラシステム1では、イメージセンサ2が駆動部となるX−Yステージ3に実装される。X−Yステージ3は、例えば縦及び横の側辺にピエゾ素子(圧電素子)4Y,4Xが設けられ、X方向及びY方向の可動機構5X,5Yを介して支持板6に設置される。また、支持板6はカメラシステム1の筺体に固定設置される。この状態でピエゾ素子4X,4Yに印加する電圧を制御することにより、イメージセンサをX方向及びY方向それぞれに画素サイズの1/2、1/3…などの微小な距離を移動させることができる。
【0005】
例えば図2(a)に示すように、イメージセンサ2を縦(X)方向、横(Y)方向、斜め45度の方向に1/2画素分ずつ移動させて、合計4枚の画像11,12,13,14を取得する。次に、得られた4つの画素データを図2(b)のように画素数を4倍に拡張した画素配列の各画素11a,11b,11c,11dに対応させて合成を行う。それにより、はめ込み後の合成画像15として、イメージセンサ2の画素数の4倍(2×2)の解像度を得ることができる。同様に画素サイズの1/3,1/4…などのステップで画像を取得すれば、それぞれ、9倍、16倍…の解像度を得ることが可能となる。
【0006】
イメージセンサシフト方式の一例として、光学平板ガラスを取り付けた光学平板ガラス保持機構の回転範囲を、2箇所の位置規制部材により制限し、イニシャル位置と1/2画素分ずらした結像位置での画像の読み取りを可能にする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。微調整用ねじを用いて一の位置規制部材の位置を調整することにより、イメージセンサ上での結像位置を正確に1/2画素分ずらすことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−270165号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】原田望他,「スウィングCCDイメージセンサ」,テレビジョン学会誌,社団法人映像情報メディア学会,1983年10月20日,Vol.37,No.10,P.826−832
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の超解像技術は、カメラの光学系の空間周波数特性(MTF:Modulation Transfer Function)が十分高域まで確保されていれば、センサーの移動ステップを小さくすることによりその分解像度を向上させることが可能となる。MTFは変調伝達関数とも呼ばれる。その一方で、イメージセンサの画素の開口に起因して、局所的な周波数領域においてMTFが0に落ち込むという問題がある。以下、その問題について説明する。
【0010】
図3は、画素の開口による入射光のサンプリングについての説明図である(出展:CCD/CMOSイメージセンサの基礎と応用,CQ出版社,P248)。図3(a)は、縞模様の光強度分布の一例を示している。また図3(b)は、イメージセンサの1次元方向の画素配列について、画素位置に対する受光感度を模式的に描いたものである。画素開口のパターンを上から見た図を模式的に描いたものを図4に示す。図3(b)は図4のZ−Z線に沿う断面に相当する。図4に示す例では、画素開口(画素開口31A)の形状が全ての画素において同等である。
【0011】
イメージセンサの各画素は光を受光できる開口部と遮光される非開口部に分けられ、開口部に入射される光のみが情報として取得できる。図3(b)では、画素サイズ(ピッチ)をp、開口部のサイズをaとする。このときのa/pを一次元方向の開口率αと定義する。この状態で、図3(a)に示すような正弦波で表わされるようなパターンの入射光がイメージセンサ上に投影された場合、各画素の開口部のサイズaの領域において正弦波パターンは積分され、高周波の正弦波パターンほどコントラスト(MTF)の劣化が生ずることとなる。この積分計算を実行すると、MTFの入射パターンの周波数fに対する様相は、数式1に示すsinc関数により表わすことができる。
【0012】
【数1】

【0013】
このsinc関数をコントラストに着目して絶対値として表すと図5のような曲線となる。図5中の周波数fnはイメージセンサの画素ピッチにより決定されるナイキスト周波数1/(2*p)を示す。また、MTFは開口率αにより曲線の形状が変化し、図5では例として、0%、50%、100%の3種を示している。ここで例えば、α=100%に着目すると、MTFは2πfnの整数倍(この例では、2×fn,4×fn,6×fn)において0となる地点が存在する。MTFが0ということは、この近辺の周波数領域では、周波数情報が失われ、格子縞などの繰り返しパターンが再現できないことを意味する。これは、物理的には、図6に示すように、画素開口と画像(縞模様)の周期が一致した場合に相当し、画素をどの位置に動かしても、光の積分値は変化しないことによる。
【0014】
図6の例では、3本の縞21と4種類の画素開口(太線)との関係を示している。周波数fn,3×fnに係る画素開口は、該画素開口を縞21と直交方向に移動させたとき、それぞれの画素開口に含まれる縞21の面積が変化する。これに対し、周波数2×fn,4×fnに係る画素開口は、該画素開口を縞21と直交方向に移動させたとき、それぞれの画素開口に含まれる縞21の面積が移動の前後で同一である。
【0015】
イメージセンサの画素開口率はイメージセンサによって異なり一概には言えないが、例えば、デジタルカメラ、カムコーダ、監視カメラなどで利用されるイメージセンサでは、開口形状は単純な矩形では表わされないが、およそ、α=80%程度と近似できる。よって、2πfnから少し高周波側に移動した箇所にMTFが0となる点が存在する。
【0016】
なお、以上のMTFは画像の2次元平面内の各1次元の方向に対し、開口率に応じてそれぞれ算出される。つまり、図4に示す開口パターンのように縦と横で開口率が異なれば、縦、横それぞれでMTFが0となる周波数領域は異なる。
【0017】
以上説明した局所的なMTF劣化は、一般的な自然画像では問題とはならないが、周期的な格子パターンなどを撮影すると格子縞が解像されないといった問題が生ずる。
【0018】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、周期的な模様のある被写体を撮影した場合に、局所的なMTF劣化を回避しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は、イメージセンサに配列された各画素の画素開口のパターンを工夫している。
すなわち、光を電気信号に変換する複数の画素が配列されているイメージセンサと、前記イメージセンサを撮像面内で移動可能な駆動部とを備え、イメージセンサは、画素配列の行方向又は列方向の少なくとも一の方向に、行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの異なる画素開口の画素が一つおきに配置されている撮像装置を用いて撮像を行う。
まず、このイメージセンサを基準位置と該基準位置から1画素分より微小ステップで移動させる。そして、イメージセンサの基準位置で各画素の画素データを取得し、またイメージセンサの基準位置から1画素分より微小ステップ移動した位置で各画素の画素データを取得する。最後に、各画素位置それぞれに2つの異なる画素開口の画素より画素データを取得する。
【0020】
本発明によれば、イメージセンサに対し、画素配列の行方向又は列方向の少なくとも一の方向に、行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの異なる画素開口の画素が一つおきに配置されている。それにより、画素ずらしを実行したときに、各画素位置それぞれに2つの異なる画素開口の画素より画素データを取得することができる。それゆえ、同じ画素位置において行方向、列方向で画素開口率が異なるため、それぞれ異なる周波数帯でMTFが0となる領域を持つことになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周期的な模様のある被写体を撮影した場合に、局所的なMTF劣化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】カメラシステムの要部を示す斜視図である。
【図2】イメージセンサシフト方式の原理の説明図である。
【図3】イメージセンサの画素の開口による入射光のサンプリングについての説明図である。
【図4】一般的な画素開口のパターン例を示す平面図である。
【図5】MTF特性を示すグラフである。
【図6】画素開口と画像(縞模様)の周期についての説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における画素開口のパターン例を示す平面図である。
【図8】図7に示す画素開口のパターンにおけるMTF特性を示すグラフである。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるカメラシステムの内部構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における画素ずらしの説明図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における画素ずらしの説明図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態におけるベイヤー配列及び画素開口のパターン例を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における画素ずらしの説明図である。
【図14】第1の実施の形態の変形例1に係る画素開口のパターン例を示す説明図である。
【図15】第1の実施の形態の変形例2に係る画素開口のパターン例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順序で行う。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.第1の実施の形態(2種の画素開口を市松状に配置した例)
2.第2の実施の形態(目的画素の近傍にある画素の画素データを利用する例)
3.第3の実施の形態(ベイヤー配列に適用した例)
4.変形例1(画素開口が長方形以外の例)
5.変形例2(90度回転以外の画素開口の例)
【0024】
<1.第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係るイメージセンサの画素開口のパターン例を、図7に示す。
一般に、画素開口は画素ごとに対称に設計されるので、画素開口形状も全ての画素において同等であるが(図4参照)、本実施の形態では、新しい画素開口のパターンとして、画素開口31A,31Bの2種類の画素を市松状に配置する。
【0025】
画素開口31Aは、イメージセンサの行(X)方向のサイズaよりも列(Y)方向のサイズbの方が長い(例えば長方形)形状をしている。一方、画素開口31Bは、列方向よりも行方向が長い形状をしており、長辺と短辺の長さはそれぞれ画素開口31Aと同等である。つまり、画素開口31Aと画素開口31Bはそれぞれ90°回転させた関係であり、開口の面積は等しい。
【0026】
このように画素開口のパターンを設定すると、画素開口31Aを持つ画素と画素開口31Bを持つ画素は、行方向、列方向で画素開口率が異なるため、それぞれ異なる周波数帯でMTFが0となる領域を持つことになる。それぞれの開口によるMTF曲線は例えば、図8に示すようなものになる。なお、画素開口31Aを持つ画素と画素開口31Bを持つ画素のそれぞれの開口面積は等しいので、画素の感度に関して両者は全く等しい。
【0027】
ここで、本実施の形態に係るカメラシステムの構成について説明する。
本実施の形態に係るカメラシステムの要部の構成は、図1に示したカメラシステム1と同様である。イメージセンサ2は、図1に示したようにピエゾ素子4X,4Yの振動を利用して該イメージセンサ2の撮像面と平行な面内で駆動するX−Yステージに設置される。そのX−Yステージ3は駆動部の一例であり、イメージセンサ2全体を保持する支持板6の上に設置される。
【0028】
図9は、カメラシステム1の信号処理ブロックの構成例を示している。
カメラシステム1の信号処理ブロックは主に、イメージセンサ2と、信号処理部41と、駆動制御電圧印加部42と、ピエゾ素子4X,4Yと、画像処理部43を備える。イメージセンサ2から出力される電気信号(アナログ画像信号)は、図示しないフロントエンド部等によりゲインや露出が調整されてデジタル画像信号に変換され、信号処理部41に入力される。
【0029】
信号処理部41は、複数のデジタル画像信号を合成するなど所定の信号処理を行うとともに、入力されるデジタル画像信号からイメージセンサ2の位置検知や駆動制御を行うものである。信号処理部41には、DSP(Digital Signal Processor)などが用いられる。
【0030】
駆動制御電圧印加部42は、駆動制御部の一例であり、信号処理部41の制御の下でピエゾ素子4X,4Y(図1参照)に駆動制御電圧を印加するものである。ピエゾ素子4X,4Yに印加する駆動制御電圧を調整して、可動機構5X,5Yを介したX−Yステージ3の駆動を制御する。駆動制御電圧の印加は、フレーム周期に同期したタイミングで行う。
【0031】
画像処理部43は、信号処理部41から出力されるデジタル画像信号にカラー信号補間処理、カラー補正、ホワイト・バランス調整などの処理を行うものである。
【0032】
本実施の形態における画素ずらしについて詳細に説明する。
図7に示した画素開口のパターンを持つイメージセンサをセンサシフト超解像に適応した場合の概要を、図10に示す。説明の便宜上、画素開口31Aを持つ画素をA画素、画素、画素開口31Bを持つ画素をB画素とし、図10においてそれぞれ「A」「B」で表記する。
【0033】
従来のイメージセンサシフト方式では、例えば4倍(2×2)超解像を実行しようとした場合、イメージセンサ2を基準位置51から縦、横、斜めにフレーム周期と同期して1/2画素分ずつずらす。そして、イメージセンサ2移動後のそれぞれの位置にてイメージセンサ2のフレーム走査を行う。それによりイメージセンサ2から画像信号が後段の信号処理部41へ出力され、イメージセンサ2の各画素位置における1フレーム分の画像信号が信号処理部41に取り込まれる。このようにしてイメージセンサ2を基準位置51から縦、横、斜めに1/2画素分ずつずらした各画素位置における、合計4枚の画像を取得する(図10(a)〜(d))。しかし、本実施の形態では、基準位置51から1/2画素分ずらした4枚の画像(図10(a)〜(d))に加え、さらにイメージセンサ2を基準位置51から1画素分横(または縦)にずらして、その場所を新たな基準位置52として画素ずらしを実行する。すなわち、イメージセンサ2を新たな基準位置52からさらに縦、横、斜めに1/2画素分ずらして4枚の画像を取得し(図10(e)〜(h))、合計8枚の画像を取得する。
【0034】
このようにすることにより、各画素毎に、基準位置51とそこから縦、横、斜めに1/2画素分ずらした位置に対し、A画素による画素データとB画素による画素データの2種を取得することができる。つまり、画素ごとに開口率の異なる2つの画素開口から画素データを得ることが可能となる。例えば基準位置51において右下の位置51RUにおいてB画素(図10(a))の画素データとA画素(図10(e))の画素データが得られる。さらにイメージセンサ2を基準位置51から横に1/2画素分ずらしたときの右下の位置51RU´においても同様に、B画素(図10(b))の画素データとA画素(図10(f))の画素データが得られる。イメージセンサ2を基準位置51から縦、斜めに1/2画素分ずらしたときも同様である(図10(c)(d)(g)(h))。
【0035】
以上の2種の画素データをイメージセンサ2の後段の信号処理部41にて、例えば、A画素(画素31開口A)の画素データとB画素(画素開口31B)の画素データを加算平均して画素のデータとする処理を行う。このようにすると加算平均されたMTFは、図8の破線で示す曲線となり、MTFが0となることが無くなる。これにより、いずれの周波数領域においても撮影した被写体の画像データを超解像画像で復元することが可能となる。よって、周期的な模様のある被写体を撮影した場合でも局所的なMTFの劣化が抑えられる。なお、この例では、1/2画素分ずらしを行い2画素の画素データの加算平均を算出したが、1/3画素ずらしのときも同様に、A画素のデータとB画素のデータの2画素の加算平均を行えばよい。
【0036】
なお、上述の場合、1フレームごとにイメージセンサ2が基準位置51から縦、横、斜め方向の4か所への1/2画素分の移動を行い、4フレームサイクルで合計4枚の画像を取得する。さらにイメージセンサ2は、基準位置52から縦、横、斜め方向の4か所への1/2画素分の移動を行い、4フレームサイクルで合計4枚の画像を取得する。したがって、例えば、60fps(frames per second)のイメージセンサ2の動作を、1/2画素サイズの駆動ステップで行う場合、この8枚の画像を後段の信号処理部41にて合成すれば、8/60sec間に1枚、4倍に解像度を向上させた画像の生成が可能となる。
【0037】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、A画素の画素データとB画素の画素データの平均値を最終的な画素データとした。これに対し、第2の実施の形態では、例えばA画素の画素データのMTFが0になるような画素開口のパターンの場合は、A画素の画素データの代わりにその近傍のB画素の画素データをA画素の画素データとして扱う。このとき、本実施の形態のイメージセンサは、図7に示した画素開口のパターンを持つものとする。
【0038】
この場合、イメージセンサ2を移動させる手順として、基準位置61から縦、横、斜め方向の4か所への1/2画素分の移動(図11(a)〜(d))の4通りのみを行う(図10(a)〜(d)と同じ)。ここで、例えば、図11(a)と図11(b)におけるA2画素の画素データの値がおよそ同等であり、一方、それぞれのB1画素もしくはB2画素の画素データの値に差異があった場合(同等か否かは閾値設定による判定にて行う)を想定する。すなわち、画素ごとに移動前後で画素データの値を差分処理し、その差分値が設定された閾値よりも小さく、かつ近傍の異なる画素開口パターンにおけるデータの値が、その閾値よりも大きい場合である。この場合、信号処理部41は、A2画素の画素データは、MTFが0となる領域にあると判断し、またB1画素もしくはB2画素の画素データは、MTFが0とならない領域にあると判断する。一例としては、縦方向に縞が延在しているが、A2画素の画素開口が移動しても得られる画素データの値が変わらないような状態である。
【0039】
このように判断したとき、信号処理部41は、MTFが0でないB1画素またはB2画素の画素データの値、もしくはA2画素の上下左右両隣のB1画素及びB2画素の画素データの値の平均値を算出し、A2画素の画素データの値として採用する。なお、対象画素の上下両隣の画素の画素データの平均値を算出して置き換えるとしているが、上下のみ、左右のみでもよい。
【0040】
このようにすることにより、第2の実施の形態では超解像を維持しながら、第1の実施の形態と比較してイメージセンサ2の移動のステップ数を少なくすることができる。
【0041】
<3.第3の実施の形態>
第1の実施の形態は、イメージセンサ上にカラーフィルタが設定されていない白黒イメージセンサを前提としたものであるが、同様な手法をベイヤー配列のカラーフィルタを備えるイメージセンサにも適用可能である。
【0042】
図12(a)(b)は、本発明の第3の実施の形態におけるベイヤー配列及び適用される画素開口のパターン例を示している。この例では、ベイヤー配列のカラーフィルタ70として、2×2画素において、右上,左下にそれぞれ緑画素であるGr画素,Gb画素、左上に赤画素のR画素、右下に青画素のB画素が配置されている。図12(a)においてそれぞれ「Gr」「Gb」「R」「B」で表記する。
【0043】
例えば、図12(a)に示すベイヤー配列を仮定した場合、それに対応する画素の開口配列を図12(b)に示すようにする。つまり、ベイヤー配列を構成する2つの緑画素であるGr画素とGb画素については、第1の実施の形態のB画素,A画素と同様に、それぞれ横長と縦長の画素開口31B,31Aを割り当てる。一方、R画素とB画素については、例えば、Gr画素と同様に画素開口31Bを割り当てる。
【0044】
このような画素の開口配列において、第1の実施の形態(図10(a)〜(h))と同様に図13で示すステップでイメージセンサの駆動を行う。すなわち、まずイメージセンサ2を基準位置81から1/2画素分ずらした4枚の画像(図13(a)〜(d))を取得する。さらにイメージセンサ2を基準位置81から1画素分横(または縦)にずらして、その場所を新たな基準位置82とし、イメージセンサ2を該基準位置82からさらに縦、横、斜めに1/2画素分ずらして4枚の画像を取得し(図13(e)〜(h))、合計8枚の画像を取得する。そうすると、Gr画素と同じ画素の行は画素開口31BによるGreenデータが、Gb画素と同じ行は画素開口31AによるGreenデータが全ての画素位置に対応して取得することが可能となる。
【0045】
ここで、第2の実施の形態と同様に、例えばGb画素の画素データに関して、図13(a)と図13(b)における画素データの値がおよそ同等であり、一方、図13(e)と図13(f)におけるGr画素の画素データの値に差異があった場合を想定する。この場合、信号処理部41は、Gb画素の画素データは、MTFが0となる領域にあると判断し、MTFが0でないGr画素の画素データをGb画素の画素データとして採用する。
【0046】
なお、上記の方法では、図13のR,B画素については、MTFが0となる領域を回避する処理はなされないが、一般に画像の解像度は緑(Green)の色データによりおよそ決定されるので、緑画素であるGb,Gr画素の画素データのみに着目すればよい。他の理由としては、図11の場合はカラーフィルタがなく各画素を同系色として処理したが、本実施の形態ではカラーフィルタがあるため、他の同系色でない画素の画素データを置き換えてしまうと画像の品質が劣化してしまうということもある。
【0047】
<4.変形例1>
上述した第1〜第3の実施の形態では、いずれも画素開口の形状が長方形であることを前提に説明をしたが、形状に関しては長方形に限定されない。例えば、図14に示すような楕円形としてもよい。図14に示す例では、画素開口91Aは、イメージセンサの行(X)方向が長軸(サイズa)、列(Y)方向が短軸(サイズb)の楕円形である。一方、画素開口91Bは、列方向よりも行方向が長い形状をしており、長軸と短軸の長さはそれぞれ画素開口91Aと同等である。つまり、画素開口91Aと画素開口91Bはそれぞれ90°回転させた関係であり、開口の面積は等しい。
【0048】
このように画素開口に楕円形を用いた場合、長軸方向と短軸方向で支配的な長さが異なるので、上記各実施の形態と同様な効果が得られる。また、一般に、それ以外の図形であっても、実効的に長軸(長辺)方向と短軸(短辺)方向で支配的な長さが異なれば、同様な効果を得ることが可能である。
【0049】
<5.変形例2>
また、上述した第1〜第3の実施の形態では、異なる画素開口のうち一方の画素開口は、他方の画素開口を90度回転させたことを前提に説明したが、2つの画素においてX方向とY方向で支配的な長さが異なるのであれば、回転角は90度でなくとも構わない。
【0050】
例えば、図15に示すような画素開口のパターンとしてもよい。図15の例では、2×2画素において、左上,右下にそれぞれ矩形の画素開口31B、右上,左下に画素開口31Bを反時計回りに30度回転させた画素開口92Aが配置されている。
【0051】
以上説明したように、本発明で用いられる画素開口のパターンは、異なる2種の画素開口を市松状(図7、図14、図15等)に配置した他、画素配列の少なくとも一の方向に異なる画素開口を一つおきに配置(例えば図12(b)等)したものであればよい。
【0052】
なお、一般的なカメラシステムでは、レンズ系の後段に水晶LPF(Low Pass Filter)を挿入することにより画像信号の高域成分を除去し、モアレが発生しないようにしている。しかし、上述した各実施の形態による超解像技術が適用されるカメラシステムでは、この水晶LPFは不要となり、モアレは超解像信号処理により除去される。
【0053】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0054】
以上、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1…カメラシステム、 2…イメージセンサ、 3…X−Yステージ、 4X,4Y…ピエゾ素子、 5X,5Y…可動機構、 6…支持板、 7…レンズ、 8,8A…遮光板、 11〜14…画像、 11a〜14a…画素、 15…合成画像、 21…縞、 31A,31B…画素開口、 41…信号処理部、 42…駆動制御電圧印加部、 43…画像処理部、 51,52…基準位置、51RU,51RU´…位置、 61…基準位置、70…カラーフィルタ、 81…基準位置、81RU,81RU´…位置、 91A,91B…画素開口、 92A…画素開口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電気信号に変換する複数の画素が配列されているイメージセンサと、
前記イメージセンサを撮像面内で移動可能な駆動部と、を備え、
前記イメージセンサは、画素配列の行方向又は列方向の少なくとも一の方向に、行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの異なる画素開口の画素が一つおきに配置されている
撮像装置。
【請求項2】
前記イメージセンサから出力される各画素の画素データを処理する信号処理部、を更に備え、
前記駆動部が、前記イメージセンサを基準位置と該基準位置から1画素分より微小ステップで移動させたとき、前記信号処理部は、前記イメージセンサより得られる任意の画素の基準位置における画素データと移動後の画素データの加算平均値を算出し、その平均値を当該任意の画素の画素データとする
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記駆動部が、前記イメージセンサを基準位置と該基準位置から1画素分より微小ステップで移動させたとき、
前記信号処理部は、画素ごとに移動前後で前記イメージセンサより得られる画素データの値を差分処理し、その差分値が設定された閾値よりも小さく、かつ近傍の異なる画素開口の画素における画素データの値が、その閾値よりも大きい場合、該当画素の画素データを前記近傍の異なる画素開口の画素の画素データを利用して置き換える
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、該当画素の画素データを前記近傍の異なる画素開口の画素の画素データで置き換える
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記近傍の異なる画素開口の2以上の画素の画素データから加算平均値を求め、該当画素の画素データを該加算平均値で置き換える
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記イメージセンサは、前記2つの異なる画素開口の画素が市松状に配置されている
請求項1乃至5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記イメージセンサがベイヤー配列のカラーフィルタを備え、
前記ベイヤー配列の2つの緑画素それぞれに、前記行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの画素開口を配置する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
光を電気信号に変換する複数の画素が配列されているイメージセンサと、前記イメージセンサを撮像面内で移動可能な駆動部とを備え、前記イメージセンサは、画素配列の行方向又は列方向の少なくとも一の方向に、行方向と列方向で異なる長さに形成された2つの異なる画素開口の画素が一つおきに配置されている撮像装置による撮像方法であって、
前記イメージセンサを基準位置と該基準位置から1画素分より微小ステップで移動させることと、
前記イメージセンサの基準位置で各画素の画素データを取得することと、
前記イメージセンサの基準位置から1画素分より微小ステップ移動した位置で各画素の画素データを取得することと、
各画素位置それぞれに前記2つの異なる画素開口の画素より画素データを取得すること
を含む撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−138806(P2012−138806A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290458(P2010−290458)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】